IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006872
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/52 20230101AFI20240110BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240110BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240110BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240110BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
H04N5/225 430
H04N5/232
G03B17/02
G03B30/00
G03B15/00 V
G03B15/00 P
G03B15/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168398
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022106369
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗明
(72)【発明者】
【氏名】山田 司
【テーマコード(参考)】
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H100CC04
2H100EE05
2H100EE06
5C122DA11
5C122DA14
5C122EA36
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122HA82
5C122HA84
5C122HA86
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】光透過部材に付着した付着物の除去精度に優れた撮像装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る撮像装置(100)は、撮像方向(+Z方向)に光透過部材(11)を有する撮像部(1)と、撮像部(1)を支持する支持部材(2)と、支持部材(2)によって支持された撮像部(1)を振動させる振動体(3)と、第1電圧波形(W1)と、第2電圧波形(W2)と、を含む駆動電圧(Dr)を振動体(3)に印加することにより、振動体(3)を駆動させる駆動部(150)と、を有し、第1電圧波形(W1)は、所定周期(T1/2)で電圧極性が反転し、第2電圧波形(W2)は、振動体(3)を駆動させる所定の駆動期間(T0)の途中および駆動期間(T0)の終了時の少なくとも一方に、撮像部(1)が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力(H)を撮像部(1)に付与する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像方向に光透過部材を有する撮像部と、
前記撮像部を支持する支持部材と、
前記支持部材によって支持された前記撮像部を振動させる振動体と、
第1電圧波形と、第2電圧波形と、を含む駆動電圧を前記振動体に印加することにより、前記振動体を駆動させる駆動部と、を有し、
前記第1電圧波形は、所定周期で電圧極性が反転し、
前記第2電圧波形は、前記振動体を駆動させる所定の駆動期間の途中および前記駆動期間の終了時の少なくとも一方に、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、撮像装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第1電圧波形の電圧極性が反転する際に、前記第2電圧波形を印加する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記振動体は、前記撮像部を振動させることにより、前記光透過部材に付着した付着物に慣性力を付与する、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記付着物は、液滴である請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2電圧波形は、前記第1電圧波形に対して前記所定周期、位相が遅延した第1遅延波形を含む、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第2電圧波形は、前記第1遅延波形に対して前記所定周期から1/2さらに位相が遅延した第2遅延波形を、前記第1遅延波形の後に含む、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、
前記弾性部の縦弾性係数は、1.7×10(kgf/cm)以上で2.0×10(kgf/cm)以下である、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、
前記振動体は、前記弾性部の共振周波数で前記撮像部を振動させる、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記支持部材は、第1弾性部と、第2弾性部と、を含み、
前記振動体は、前記第1弾性部の共振周波数である第1周波数、または前記第2弾性部の共振周波数である第2周波数のどちらか一方で前記撮像部を振動させる、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記駆動部は、前記第1電圧波形を前記振動体に所定期間、印加した後、前記第2電圧波形を1回以上印加する、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、
前記所定期間は、前記弾性部の縦弾性係数に応じて定められる、請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記駆動部の動作を制御する制御部を有し、
前記駆動部は、前記制御部により生成されたデジタル波形データに基づく前記駆動電圧を印加する、請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項13】
第1の周期をT1とし、第2の周期をT2とすると、前記所定周期は、T1とT2に切替可能であり、
前記第2電圧波形は、前記振動体を駆動させる前記駆動期間の途中、前記駆動期間の終了時、および、前記所定周期がT1からT2へ、またはT2からT1へ切り替わる時、の少なくとも1つに、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記所定周期は、前記第1の周期T1/2と、第2の周期T2/2の間で相互に切り替え可能であり、
前記第2電圧波形は、前記所定周期がT1/2からT2/2へ、またはT2/2からT1/2へ切り替わる時、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記第2電圧波形は、第3遅延波形と第4遅延波形とを含み、
前記第3遅延波形および前記第4遅延波形のそれぞれは、前記第1電圧波形に対して、T1/2またはT2/2のどちらか一方、位相が遅延している、請求項14に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像方向にレンズまたはガラス板等の光透過部材を有する撮像部を有し、対象を撮像する撮像装置が知られている。このような撮像装置は、自動車等の車両に取り付けられ、車両の周囲を撮像する車載カメラや、所定の対象を監視するために撮像する監視カメラ等の用途において使用される。
【0003】
上記の撮像装置として、撮像装置におけるレンズやレンズの保護部材に付着した水滴等を吹き飛ばすために、噴射手段から噴射された空気を、通気筒を通してレンズまたは保護部材に吹き付ける構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、撮像装置におけるドーム型カバーやレンズに付着した水滴等を除去するために、筒状部材を含む筒状振動体と、この筒状振動体に連結された筒状のモード変換結合部を含み、筒状振動体の一方の開口部を覆うレンズカバーと、を備え、モード変換結合部が筒状部材よりも厚みの薄い薄肉部を有する構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-83730号公報
【特許文献2】国際公開第2017/110563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮像装置では、光透過部材に付着した水滴等の液滴、あるいは埃や塵等の汚れ等の付着物によって撮像画像の品質が低下することを抑制するために、該付着物の除去精度に優れたものが求められる。
【0007】
本発明は、光透過部材に付着した付着物の除去精度に優れた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る撮像装置(100)は、撮像方向(+Z方向)に光透過部材(11)を有する撮像部(1)と、撮像部(1)を支持する支持部材(2)と、支持部材(2)によって支持された撮像部(1)を振動させる振動体(3)と、第1電圧波形(W1)と、第2電圧波形(W2)と、を含む駆動電圧(Dr)を振動体(3)に印加することにより、振動体(3)を駆動させる駆動部(150)と、を有し、第1電圧波形(W1)は、所定周期(T1/2)で電圧極性が反転し、第2電圧波形(W2)は、振動体(3)を駆動させる所定の駆動期間(T0)の途中および駆動期間(T0)の終了時の少なくとも一方に、撮像部(1)が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力(H)を撮像部(1)に付与する。
【0009】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光透過部材に付着した付着物の除去精度に優れた撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る撮像装置が車両に取り付けられた状態を例示する図である。
図2】実施形態に係る撮像装置の構成を例示する斜視図である。
図3】実施形態に係る振動体を例示する斜視図である。
図4】実施形態に係る処理部のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図5】実施形態に係る制御部の機能構成を例示するブロック図である。
図6】実施形態に係る処理部による処理例を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る駆動電圧を例示する図である。
図8図7における第2電圧波形W2を拡大して示す図である。
図9】第1実施形態に係るカウンタ制御の作用を示す図であり、図9(a)は駆動電圧を示す図、図9(b)は撮像部の変位を示す図である。
図10】実施形態が適用されない場合を示す図であり、図10(a)は駆動電圧を示す図、図10(b)は撮像部の変位を示す図である。
図11】カウンタ制御の他の例を示す図であり、図11(a)は駆動電圧を示す図、図11(b)は撮像部の変位を示す図である。
図12】液滴が付着した撮像部を例示する図である。
図13】撮像部の振動周波数と液滴サイズとの関係を例示する図である。
図14】撮像部の振動の周波数および振幅と光透過部材変位量の関係例の図である。
図15】第1実施形態に係る撮像部の振動周波数に応じた光透過部材の変位量変化を例示する図である。
図16】第1実施形態に係る液滴が付着した光透過部材を例示する図である。
図17図16の状態の撮像装置による撮像画像を例示する図である。
図18】第1実施形態に係る液滴が除去された光透過部材を例示する図である。
図19図18の状態の撮像装置による撮像画像を例示する図である。
図20】第1実施形態に係る第2電圧波形の他の例を示す図である。
図21】変形例に係る撮像装置の構成を例示する斜視図である。
図22】第2実施形態に係る駆動電圧を例示する図である。
図23】第2実施形態に係る撮像部の振動周波数に応じた光透過部材の変位量変化を例示する図である。
図24】第2実施形態に係るカウンタ制御の作用を例示する図である。
図25】第2実施形態に係る液滴が付着した光透過部材を例示する模式図である。
図26】第2実施形態に係る液滴が除去された光透過部材を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0013】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための撮像装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0014】
以下に示す図において、Z軸に沿うZ方向は、撮像方向に沿う方向を示す。撮像方向とは、実施形態に係る撮像装置により撮像する方向をいう。換言すると、撮像方向は、撮像対象となる被写体が位置する方向を意味する。X軸に沿うX方向は、Z軸に略直交する方向を示す。Y軸に沿うY方向は、X軸およびZ軸の両方に略直交する方向を示す。
【0015】
X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記する。Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記する。Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。実施形態に係る撮像装置は、+Z方向を撮像方向とする。但し、これらは撮像装置の使用時における向きを制限するものではなく、撮像装置は任意の向きで使用可能である。
【0016】
実施形態に係る撮像装置は、対象を撮像する装置である。該撮像装置は、車両に取り付けられ、車両の周囲を撮像する車載カメラや、所定の対象を監視するために撮像する監視カメラ等の用途において使用される。
【0017】
車載カメラには、車両の前方撮像カメラや後方撮像カメラの他、シャークフィンアンテナに内蔵されるカメラ、車両の全周囲を撮像可能なカメラ、サイドミラーまたはバックミラーにより車両周囲を視認する機能を実現するカメラ等が含まれる。前方撮像カメラはフロントビューカメラ、後方撮像カメラはリアビューカメラとも呼ばれる。シャークフィンアンテナは、自動車の屋根の後方に取り付けられたヒレ状のアンテナであり、ドルフィンアンテナとも呼ばれる。
【0018】
監視カメラには、防犯カメラまたは防災カメラ等が含まれる。防犯カメラは、主に人間を監視し、犯罪を抑止する目的のために使用されるカメラである。防災カメラは、火山や天候、河川等を監視して災害を防ぐために使用されるカメラである。
【0019】
図1は、実施形態に係る撮像装置100の利用シーンの一例として、撮像装置100が車両200に取り付けられた状態を例示する図である。図1の撮像装置100は、車両200の車体の背面部に、車両200の後方を撮像可能に取り付けられ、車載用のリアビューカメラとして使用される。図1において破線の丸で囲った図は、車両200の後方に取り付けられた撮像装置100を拡大表示したものである。
【0020】
撮像装置100は、撮像方向に光透過部材11を有する。光透過部材11は、レンズまたはガラス板等の光透過性を有する部材である。図1に示すように撮像装置100が屋外に設置されると、雨天時等に雨滴が光透過部材11に付着したり、埃や塵等の汚れが光透過部材11に付着したり、道路に溜まった水滴または油滴が飛散して光透過部材11に付着したりする場合がある。
【0021】
光透過部材11に、上記の雨滴、汚れ、水滴または油滴等の付着物が付着すると、該付着物により被写体からの光が反射、吸収、屈折または散乱されることによって、撮像装置100により得られる撮像画像の一部または全体の画質が低下する場合がある。
【0022】
実施形態では、上記のような光透過部材11に付着した付着物の除去精度に優れた撮像装置100を提供することができる。本明細書において、付着物とは、光透過部材11に付着するものを意味する。付着物は、例えば、雨滴、水滴または油滴等の液体が滴化したものの総称としての液滴や、埃や塵等の汚れ等である。以下、液滴を付着物の一例として、実施形態に係る撮像装置100を詳細に説明する。
【0023】
<撮像装置100の構成例>
図2および図3を参照して、撮像装置100の構成について説明する。図2は、撮像装置100の構成を例示する斜視図である。図3は、撮像装置100が備える振動体3を例示する斜視図である。
【0024】
図2に示すように、撮像装置100は、撮像部1と、支持部材2と、振動体3と、を有する。撮像装置100は、支持部材2により支持された撮像部1を、振動体3を用いて振動させることにより、撮像部1に含まれる光透過部材11に付着した液滴を除去する。
【0025】
振動方向31は、撮像部1が振動により移動する方向を表す。実施形態に係る撮像装置100は、振動体3を駆動させる所定の駆動期間の途中および該駆動期間の終了時の少なくとも一方に、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与する。振動体3の駆動は、本実施形態では、振動体3の振動を意味する。
【0026】
撮像装置100は、撮像部1が振動により+Y方向に移動する場合には、撮像部1に-Y方向への力Hを付与する。撮像装置100は、撮像部1が振動により-Y方向に移動する場合には、撮像部1に+Y方向への力Hを付与する。撮像装置100は、力Hを付与することにより、撮像部1に働く慣性力を大きくし、光透過部材11に付着した液滴の除去精度を向上させることができる。
【0027】
(撮像部1)
撮像部1は、撮像方向(+Z方向)に光透過部材11を有する。撮像部1は、対象とする被写体を撮像した撮像画像を出力する。撮像とは画像を撮ることをいう。画像を撮るという意味においては、「撮像」の用語は、「撮影」に置き換えられてもよい。
【0028】
撮像装置100は、例えば筐体の内部に、撮像素子、および該撮像素子を駆動させる電気回路等を含む。撮像素子は、一次元または二次元に画素として整列するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の受光素子を有し、被写体の像を撮像する。
【0029】
光透過部材11は、光透過性を有する部材である。ここでの光透過性は、例えば被写体からの光に対して60%以上の透過率であることが好ましい。光透過部材11は、撮像部1における撮像方向に設けられている。換言すると、光透過部材11は、撮像部1に含まれる撮像素子と、撮像方向にある被写体と、の間に設けられている。
【0030】
光透過部材11は、被写体からの光を透過させ、撮像素子の撮像面上において集光させるレンズ、あるいは撮像部1内に設けられたレンズや撮像素子、電気回路等を、外部の雨滴や粉塵等から保護するための保護板等である。但し、光透過部材11は、これらに限定されるものではなく、撮像装置100の撮像方向に設けられ、光透過性を有するものであれば、如何なるものであってもよい。
【0031】
光透過部材11の材質には特段の制限はなく、ガラス材料や樹脂材料を適用できる。撮像装置100が屋外で使用される場合には、耐候性の観点において、光透過部材11の材質にガラス材料を用いることが好ましい。
【0032】
(支持部材2)
支持部材2は、撮像部1を支持する。本実施形態では、支持部材2は、第1弾性部21と、第2弾性部22と、接続部23と、取付部24と、背面部25と、ネジ部材26と、を有する。支持部材2の材質はステンレス鋼等である。第1弾性部21、第2弾性部22、接続部23、取付部24および背面部25は、ステンレス鋼の素材を曲げ加工することにより一体に形成されている。
【0033】
支持部材2の材質は、錆びにくく、また好適に弾性が得られる観点では、ステンレス鋼の中でもSUS304を用いることが特に好ましい。但し、支持部材2の材質は、ステンレス鋼に限定されるものではなく、撮像装置100を使用する用途、状態または環境等に応じて他の金属材料や樹脂材料等を適宜選択できる。また、第1弾性部21、第2弾性部22、接続部23、取付部24および背面部25の少なくとも一部が別部材として製作され、支持部材2は、複数の部材がネジ部材等で結合することによって構成されてもよい。
【0034】
第1弾性部21の-Z方向側の端部は、固定部4に固定されている。固定部4は、図1に示した車両200に撮像装置100を固定するために、車両200に接触または向き合う部位である。第1弾性部21は接続部23に繋がっている。接続部23は取付部24に繋がっている。取付部24は背面部25に繋がっている。背面部25は第2弾性部22に繋がっている。
【0035】
第1弾性部21および第2弾性部22のそれぞれは、弾性を有する部位である。第1弾性部21および第2弾性部22のそれぞれは、Z方向に延在する。第1弾性部21の+Z方向側の端部は、第1弾性部21の曲がりによりY方向に変位可能である。第2弾性部22の+Z方向側の端部は、第2弾性部22の曲がりによりY方向に変位可能である。
【0036】
第1弾性部21は、撮像部1の+X方向および-X方向に、撮像部1を挟んで対になるように設けられた2つの部位を含む。第2弾性部22も同様に、撮像部1の+X方向および-X方向に、撮像部1を挟んで対になるように設けられた2つの部位を含む。撮像部1は、第2弾性部22における撮像部1を挟む2つの部位に、ネジ部材26を用いて固定される。
【0037】
接続部23は、第1弾性部21と、取付部24と、を接続する板状の部位である。本実施形態では、接続部23は、撮像部1を挟んで対になるように設けられ、撮像部1の+X方向側および-X方向側の両側において第1弾性部21と、取付部24と、を接続する。
【0038】
取付部24は、撮像部1が固定される板状の部位である。撮像部1は、-Y方向側から取付部24を貫通したネジ部材により取付部24の+Y方向側の面に固定される。支持部材2は、第2弾性部22および取付部24に撮像部1が固定されることによって撮像部1を支持する。背面部25は、取付部24に固定された撮像部1の-Z方向に位置する。
【0039】
第1弾性部21および第2弾性部22のそれぞれの厚みは、例えば0.8mmである。接続部23、取付部24および背面部25のそれぞれの厚みは、例えば1.2mmである。この厚みの差により、第1弾性部21および第2弾性部22は、接続部23、取付部24および背面部25と比較して曲がりやすくなり、弾性を有する。但し、支持部材2は、第1弾性部21および第2弾性部22を有する構成に限定されず、弾性を有する部位を少なくとも一部に含んで構成されればよい。
【0040】
(振動体3)
振動体3は、支持部材2によって支持された撮像部1を振動させる。図2および図3に示すように、振動体3は、取付部24の-Y方向側の面にネジ部材等によって固定される。振動体3は、取付部24を挟んで撮像部1に向き合うように配置される。
【0041】
振動体3は、例えば、回転軸に振動子を取付け、振動子を回転軸方向に上下運動させることによって振動を発生させる振動モータである。図3に示すように、振動体3は、振動方向31に自身が往復変位するように振動することにより、撮像部1が振動方向31に往復変位するように撮像部1を振動させる。振動体3の振動振幅および振動周波数等の振動特性は、振動体3を駆動させる駆動電圧に応じて適宜変更可能である。
【0042】
振動体3には、形状に偏りがあるおもりをモータの回転軸に取り付け、おもりを回転させることによって振動を生じさせる偏心モータや、印加電圧に応じて伸縮変形することによって振動を生じさせる圧電アクチュエータ等も使用可能である。
【0043】
<処理部110の構成例>
(ハードウェア構成)
図4は、撮像装置100が有する処理部110のハードウェア構成を例示するブロック図である。図8に示すように、処理部110は、DDC(Direct Current/Direct Current Converter)120と、制御部130と、ロジックIC(Integrated Circuit)140と、駆動部150と、を有する。但し、DDC120およびロジックIC140は、実施形態に係る撮像装置100の必須構成部ではない。
【0044】
処理部110は、制御部130の制御下において、駆動部150から駆動電圧Drを振動体3に印加することにより、振動体3を駆動させる処理を行う。本実施形態では、振動体3を「駆動」させる処理は、振動体3を「振動」させる処理である。
【0045】
DDC120は、直流電圧を直流電圧に変換する電気回路または電子回路である。例えばDDC120は、車両200に搭載されている外部電源としての車載電源から供給される+12Vの入力直流電圧Po1を+5Vの出力直流電圧Po2に変換し、制御部130および駆動部150のそれぞれに供給する。外部電源から供給される入力直流電圧は変動するため、DDC120は、例えば9Vから14Vの入力直流電圧Po1を+5Vの出力直流電圧Po2に変換可能に構成される。
【0046】
制御部130は、図5を参照して次述する所定の機能を実現するための電気回路または電子回路である。制御部130は、車両200に搭載されている外部装置としてのECU(Electronic Control Unit)等から外部制御信号Soを入力する。制御部130は、所定の処理を実行後、デジタル波形データSwおよびPWM(Pulse Width Modulation)デューティ制御信号PwをロジックIC140に出力する。駆動部150は、入力されるデジタル波形データSwおよびPWM(Pulse Width Modulation)デューティ制御信号Pwに基づいて、駆動電圧Drを生成する。
【0047】
本実施形態では、駆動部150は、第1電圧波形と、第2電圧波形と、を含む駆動電圧Drを振動体3に印加することにより、振動体3を駆動させる。駆動電圧Drはアナログ電圧信号である。第1電圧波形は、所定周期で電圧極性が反転する。第1電圧波形は、例えば、所定周期で電圧値が-5[V]から+5[V]の間を正弦波状に変化する。但し、第1電圧波形は、正弦波状のものに限らず、三角波、矩形波等であってもよい。第2電圧波形は、振動体3を駆動させる所定の駆動期間の途中および該駆動期間の終了時の少なくとも一方において、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を撮像部1に付与する。駆動部150は、制御部130により生成されたデジタル波形データSwに基づく駆動電圧Drを振動体3に印加する。なお、駆動電圧Drの詳細については、図7から図11を参照して別途説明する。
【0048】
デジタル波形データSwとは、複数の振動周波数のうちの少なくとも1つの振動周波数と、複数の振動振幅のうちの少なくとも1つの振動振幅と、の組み合わせからなり、駆動電圧Drの元になるデジタルデータをいう。デジタル波形データSwは、矩形波、正弦波、三角波または様々なデューティ比の矩形波等を含んで構成できる。デジタル波形データSwは波形の変更が容易である。撮像装置100は、デジタル波形データSwに基づき駆動電圧Drを生成することにより、駆動電圧Drの波形の変更を容易に行うことができる。
【0049】
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)131と、ROM(Read Onlu Memory)132と、RAM(Random Access Memory)133と、I/F(Interface)134と、を有する。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続している。
【0050】
CPU131は、RAM133を作業領域として使用し、ROM132に格納されているプログラムを実行することにより、制御部130全体の動作を制御する。CPU131には、例えば、16ビットマイクロコントローラ等を適用可能である。
【0051】
ROM132は、CPU131への記録動作等の制御を実行するためのプログラムおよびその他の固定データを格納する不揮発性のメモリである。RAM133は、デジタル波形データ等を一時格納する揮発性のメモリである。I/F134は、ECU等の外部装置と、制御部130と、を通信可能にするインターフェースである。
【0052】
ロジックIC140は、制御部130から入力されるデジタル波形データSwおよびPWMデューティ制御信号Pwの論理積演算を実行し、演算実行後に得られる制御信号Ctを駆動部150に出力する集積回路である。
【0053】
駆動部150は、駆動電圧Drを振動体3に印加することにより、振動体3を駆動させる電気回路または電子回路である。駆動部150は、制御信号CtをA/D(Analog/Digital)変換することによって駆動電圧Drを生成し、振動体3に印加する。また駆動部150は、駆動電圧Drを電流増幅することができる。
【0054】
(機能構成)
図5は、制御部130の機能構成を例示するブロック図である。図5に示すように、制御部130は、入出力部135と、設定部136と、判定部137と、生成部138と、PWMデューティ制御部139と、を有する。なお、制御部130は、これらの機能構成部の他、撮像部1による撮像画像を取り込む画像取得部や、撮像画像を処理する画像処理部等を有してもよい。
【0055】
制御部130は、入出力部135および設定部136の各機能をI/F134等により実現する。また制御部130は、判定部137、生成部138およびPWMデューティ制御部139の各機能を、ROM132に格納されたプログラムをCPU131が読み出して実行すること等により実現する。
【0056】
設定部136は、駆動部150により駆動される振動体3の振動周波数、振動振幅および振動期間等を設定する。設定部136は、入出力部135を介して入力される、ユーザ(撮像装置100の操作者)による選択操作信号等に応じて、振動周波数、振動振幅および振動期間等を任意に設定できる。入出力部135は、ユーザからの選択操作信号が入力される入力部に対応する。この場合のユーザは、撮像装置100のユーザである。撮像装置100のユーザは、例えば車両200の所有者または運転者、あるいは車両200の製造業者または販売業者等である。
【0057】
判定部137は、駆動部150による振動体3の駆動を開始させるか否かを判定する。制御部130は、判定部137により開始させると判定された場合に、駆動部150による振動体3の駆動制御を開始する。
【0058】
例えば、撮像装置100が車両200の後方を撮像するリアビューカメラであるすると、車両200において雨天時にワイパーが使用され、且つギアがバックギアに入れられて車両200が後進する際に、車両200の後方視界を確保するために、光透過部材11に付着した液滴の除去が求められる。判定部137は、ワイパーおよびバックギアの両方が使用されることに対応する外部制御信号Soが制御部130に入力された場合に、駆動部150による振動体3の駆動を開始させると判定する。制御部130は、この外部制御信号Soをトリガー信号として駆動部150による振動体3の駆動制御を開始する。なお、ワイパーは払拭部材に対応し、バックギアは後進時に用いられる後進変速機に対応する。
【0059】
生成部138は、デジタル波形データSwを生成する。生成部138は、生成したデジタル波形データSwを、入出力部135を介してロジックIC140に出力する。
【0060】
PWMデューティ制御部139は、PWMデューティ制御を実行することにより、デジタル波形データSwのデューティ比を設定するPWMデューティ制御信号Pwを生成する。PWMデューティ制御部139は、生成したPWMデューティ制御信号Pwを、入出力部135を介してロジックIC140に出力する。
【0061】
PWMデューティ制御は、デジタル波形データSwの1サイクル又は単位時間当たりの信号のオンまたはオフの割合を調整する制御処理方式である。PWMデューティ制御では、パルス列のオンとオフの切替周期が生成され、オンの時間幅が変化する。PWMデューティ制御処理では、早い切替周期でスイッチングを行うことにより、オンのパルス幅に比例した任意の電圧を得ることができる。
【0062】
駆動制御開始のトリガー信号は、ワイパーおよびバックギアの両方が使用されることに対応する外部制御信号Soに限定されない。例えば、駆動制御開始のトリガー信号は、シリアル通信により入力される信号であってもよい。また、制御部130による駆動部150の制御は、デジタル波形データSwに対するPWMデューティ制御に限らず、DAC(Digital/Analog Convertor)を用いた振幅制御等であってもよい。
【0063】
<処理部110による処理例>
図6は、処理部110による処理の一例を示すフローチャートである。図6は、撮像装置100が、光透過部材11に付着した液滴を除去するために、振動体3により撮像部1を振動させる処理を示している。
【0064】
処理部110は、車両200に搭載されたECU等の外部装置から入力される外部制御信号Soをトリガーにして図6の処理を開始する。但し、処理部110は、ユーザによる操作入力信号等の他の信号をトリガーにして処理を開始してもよい。また、処理部110は、振動体3の振動周波数、振動期間および振動振幅等を設定部136により設定し、それぞれに対応する情報をROM132またはRAM133に記憶させているものとする。
【0065】
まず、ステップS61において、処理部110は、ワイパーおよびバックギアの両方が使用されることに対応する外部制御信号Soが入力されたか否かを、判定部137により判定する。
【0066】
ステップS61において、ワイパーおよびバックギアの両方が使用されることに対応する外部制御信号Soが入力されていない場合には(ステップS61、No)、処理部110は、ステップS61の処理を再度実行し、振動体3の駆動を開始しない。一方、ワイパーおよびバックギアの両方が使用されることに対応する外部制御信号Soが入力された場合には(ステップS61、Yes)、処理部110は、ステップS62において、生成部138によりデジタル波形データSwを生成し、振動体3の駆動を開始する。処理部110は、生成されたデジタル波形データSwを、入出力部135を介してロジックIC140に出力する。
【0067】
続いて、ステップS63において、処理部110は、デジタル波形データSwの生成が完了したか否かを判定する。デジタル波形データSwの生成の完了条件は、撮像装置100による液滴の除去動作等に応じて適宜設定できる。
【0068】
ステップS63において、生成が完了していないと判定された場合には(ステップS63、No)、処理部110は、ステップS62の処理を再度実行する。一方、生成が完了したと判定された場合には(ステップS63、Yes)、処理部110は、ステップS64において、PWMデューティ制御部139により、デジタル波形データSwのデューティ比を設定するためのPWMデューティ制御信号Pwを生成する。処理部110は、生成されたPWMデューティ制御信号Pwを、入出力部135を介してロジックIC140に出力する。ロジックIC140は、制御部130から入力されるデジタル波形データSwおよびPWMデューティ制御信号Pwの論理積演算を実行し、演算実行後に得られる制御信号Ctを駆動部150に出力する。
【0069】
続いて、ステップS65において、処理部110は、駆動部150により、制御信号CtをA/D変換することによって駆動電圧Drを生成する。
【0070】
続いて、ステップS66において、処理部110は、駆動部150により、駆動電圧Drを振動体3に出力し、振動体3を駆動させる。撮像部1は、振動体3の駆動により振動する。光透過部材11に付着した液滴は、撮像部1の振動により除去される。
【0071】
以上のようにして、処理部110は、光透過部材11に付着した液滴を除去するために、振動体3を駆動させ、撮像部1を振動させる処理を実行することができる。
【0072】
[第1実施形態]
<駆動電圧Drの一例>
図7は、第1実施形態に係る駆動電圧Drを例示する図である。なお、以下では、上述した撮像装置100の構成を示す図2および図4も適宜参照して説明する。
【0073】
図7は、駆動電圧Drにおける電圧の時間変化を示している。駆動電圧Drは、アナログ電圧信号である。駆動電圧Drは、第1電圧波形W1と、第2電圧波形W2と、を含む。第1電圧波形W1は、第1弾性部21の共振周波数である第1周波数f1で電圧が正弦波状に変化するものである。
【0074】
駆動電圧Drは、デジタル波形データSwに基づいて生成される。デジタル波形データSwは、デジタル電圧信号である点を除いて駆動電圧Drと同じ電圧波形を有する。このため、図7では、駆動電圧Drの符号に対し、デジタル波形データSwの符号を括弧書きにより併記している。
【0075】
図2に示した振動体3は、第1電圧波形W1の印加により、第1周波数f1で撮像部1を振動させる。第1弾性部21は、弾性部に対応する。第1周波数f1は、弾性部の共振周波数に対応する。
【0076】
振動体3は、第1弾性部21の共振周波数である第1周波数f1または第2弾性部22の共振周波数である第2周波数f2のどちらか一方で撮像部1を振動させてもよい。第1電圧波形W1は、第1周波数f1により電圧が正弦波状に変化する電圧波形と、第2弾性部22の共振周波数である第2周波数f2により電圧が正弦波状に変化する電圧波形と、を含んでもよい。
【0077】
図7において、tsは、光透過部材11に付着した液滴を除去するために、振動体3により撮像部1を振動させる液滴除去動作の開始時刻を示す。teは、液滴除去動作の終了時刻を示す。駆動期間T0は所定の駆動期間に対応する。T1/2は、第1電圧波形W1において電圧極性が反転する所定周期に対応する。第1電圧波形W1では、電圧値の正負が所定周期T1/2ごとに入れ替わる。駆動期間T0は例えば約1秒である。
【0078】
所定周期T1/2は、第1周波数f1の逆数である駆動周期の1/2となる周期である。所定周期T1/2ごとに電圧極性、すなわち電圧値の正負が反転する。第2周波数f2で撮像部1を振動させる場合には、所定周期は、第2周波数f2の逆数である第2の周期T2の1/2になる。
【0079】
駆動期間T0は、撮像装置100が、撮像部1の光透過部材11に付着した液滴を除去するための液滴除去動作を行う期間である。駆動期間の途中は、駆動期間の開始時刻と終了時刻との間の時刻を意味する。駆動期間の終了時とは、駆動期間が終了する時を意味し、より詳しくは、液滴除去動作のための振動体3への駆動電圧Drの印加を終了する直前を意味する。
【0080】
第1カウンタ制御期間F1、第2カウンタ制御期間F2および第3カウンタ制御期間F3のそれぞれは、第2電圧波形W2によって、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hが撮像部1に付与される期間を示す。カウンタ制御とは、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与するために行う制御をいう。第1カウンタ制御期間F1、第2カウンタ制御期間F2および第3カウンタ制御期間F3のそれぞれにおいて破線枠により囲まれた電圧波形は、第2電圧波形W2としていずれも同じである。
【0081】
第1カウンタ制御期間F1および第2カウンタ制御期間F2は、駆動期間T0の途中に対応するものである。第3カウンタ制御期間F3は、駆動期間T0の終了時に対応するものである。つまり、図7の例では、駆動期間T0の途中に2回、駆動期間T0の終了時に1回の合計3回、カウンタ制御が行われる。
【0082】
第1電圧波形W1は、開始時刻tsから始まる第1振動期間t1に印加される。第1振動期間t1は所定期間に対応する。第1振動期間t1とは、撮像部1が静止している状態から振動を開始し、徐々に振動振幅が大きくなった後、該振動振幅が最大になるまでの期間をいう。振動振幅が最大になるまでにかかる時間の長さは、図2に示した支持部材2に含まれる第1弾性部21および第2弾性部22それぞれの縦弾性係数に依存する。ここでの第1振動期間t1は、第1弾性部21の縦弾性係数に応じて定められている。
【0083】
第1振動期間t1の後、撮像部1の振動振幅がほぼ最大になった際に、第1カウンタ制御期間F1内において、1回目のカウンタ制御が実行される。カウンタ制御によって、カウンタ制御を行わない場合と比較して大きくなった慣性力により、光透過部材11に付着している液滴は、光透過部材11から除去されるか、または除去されやすい状態になる。液滴が除去されやすい状態とは、光透過部材11への付着力が弱まって、液滴が動きやすくなった状態をいう。
【0084】
第1カウンタ制御期間F1の後の第2振動期間t2において、第1電圧波形W1が印加される。第2振動期間t2では、1回目のカウンタ制御によって光透過部材11から除去されやすい状態になった液滴のうちの一部が撮像部1の振動によって移動し、光透過部材11から除去される。
【0085】
第2振動期間t2の後の第2カウンタ制御期間F2内において、2回目のカウンタ制御が実行される。2回目のカウンタ制御の作用は、1回目のカウンタ制御の作用と同じである。第2カウンタ制御期間F2の後の第3振動期間t3において、第1電圧波形W1が印加される。第3振動期間t3の作用は、第2振動期間t2の作用と同じである。
【0086】
第3振動期間t3の後の第3カウンタ制御期間F3内において、3回目のカウンタ制御が行われる。3回目のカウンタ制御の作用は、1回目のカウンタ制御の作用と同じである。3回目のカウンタ制御の終了とともに液滴除去動作が終了する。
【0087】
撮像装置100は、第1振動期間t1が経過後にカウンタ制御を実行することが好ましい。このようにすることで、第1振動期間t1が経過し、撮像部1の振動振幅が最大になった状態においてカウンタ制御を実行できるため、撮像装置100は、カウンタ制御の作用を好適に得ることができる。
【0088】
第1振動期間t1が経過した後に実行されるカウンタ制御の回数は、3回に限らず、適宜変更可能である。換言すると、図4に示した駆動部150は、第1振動期間t1の経過後、カウンタ制御を1回以上行ってもよい。駆動部150は、第1電圧波形W1を振動体3に第1振動期間t1印加した後、第2電圧波形W2を1回以上印加してもよい。
【0089】
カウンタ制御の回数が多いほど、液滴を除去する作用が大きくなるため、カウンタ制御の回数は多いことが好ましい。撮像装置100は、液滴の除去作用を大きく得るためには、予め定められた駆動期間T0内において、可能な限りカウンタ制御を多く実行することが好ましい。カウンタ制御の回数、カウンタ制御を行うタイミング、次述するカウンタ制御を行うための電圧波形の形状等は、デジタル波形データSwを変更することによって任意に変更可能である。
【0090】
駆動部150は、第1電圧波形W1の電圧極性が反転する際に、第2電圧波形を印加することが好ましい。第1電圧波形W1の電圧極性が反転する際とは、第1電圧波形W1の電圧が0Vを横切るタイミングを意味する。このタイミングでは、第1電圧波形W1の印加により変位する撮像部1の変位速度が最速になる。撮像部1の変位速度が最速であるタイミングでカウンタ制御を実行することにより、撮像部1の変位速度が遅いタイミングでカウンタ制御を実行する場合と比較して、大きな慣性力が得られる。この結果、液滴の除去効果が大きくなる。但し、駆動部150は、第1電圧波形W1の電圧極性が反転する際以外のタイミングに第2電圧波形を印加しても、カウンタ制御の効果を得ることができる。
【0091】
<カウンタ制御の一例>
図8から図11を参照してカウンタ制御について詳細に説明する。図8は、図7における第2電圧波形W2を拡大して示す図である。図9は、第1実施形態に係るカウンタ制御の作用を示す図であり、図9(a)は駆動電圧を示す図、図9(b)は撮像部の変位を示す図である。図10は、実施形態が適用されない場合を示す図であり、図10(a)は駆動電圧を示す図、図10(b)は撮像部の変位を示す図である。図11は、カウンタ制御の他の例を示す図であり、図11(a)は駆動電圧を示す図、図11(b)は撮像部の変位を示す図である。
【0092】
図8に示すように、第2電圧波形W2は、第1遅延波形e1と、第2遅延波形e2と、を含む。第2遅延波形e2は、第1遅延波形e1よりも後に印加される。第1遅延波形e1は、第1電圧波形W1に対して所定周期T1/2に対応する第1遅延時間d1位相が遅延した、所定周期T1/2分の第1電圧波形W1と同じ電圧波形である。第2遅延波形e2は、第1遅延波形e1に対して所定周期T1/2のさらに1/2に対応する第2遅延時間d2位相が遅延した、所定周期T1/2分の第1電圧波形W1と同じ電圧波形である。
【0093】
図9(a)および図9(b)において、振動w1は、図8の第2電圧波形W2を含む駆動電圧Drが印加された場合の撮像部1の振動を表している。図10(a)および図10(b)において、振動wxは、カウンタ制御を行わない場合、すなわち第2電圧波形W2を含まない駆動電圧Drxが印加された場合の撮像部1の振動を表している。
【0094】
図9において、撮像部1は、第1電圧波形W1の印加に応じて第1の周期T1で振動する。カウンタ制御において第2電圧波形W2が印加されると、第1遅延波形e1が第1電圧波形W1に対して第1遅延時間d1位相が遅延することにより、撮像部1の振動w1の位相と第1遅延波形e1の位相とはほぼ逆位相になる。この結果、第1遅延波形e1の印加によって撮像部1に作用する力は、撮像部1の振動w1を打ち消すように働き、撮像部1の振動振幅が急激に減衰する。
【0095】
カウンタ制御が実行された場合の減衰振動a1は、カウンタ制御が実行されていない場合の減衰振動axと比較して、減衰時間が短くなる。減衰時間が短くなることにより、光透過部材11に付着している液滴には、カウンタ制御が実行されていない場合と比較して大きな慣性力が働く。この慣性力によって、光透過部材11に付着している液滴は、光透過部材11から外れるか、または外れやすい状態になる。
【0096】
第1遅延波形e1が印加された後、さらに第2遅延波形e2が印加されると、第2遅延波形e2が第1遅延波形e1に対して第2遅延時間d2位相が遅延することにより、残留している撮像部1の振動w1の位相と、第2遅延波形e2と、がほぼ逆位相になる。この結果、第2電圧波形W2の印加によって撮像部1に作用する力は、再び撮像部1の振動を打ち消すように働き、減衰振動の減衰時間がさらに短くなる。
【0097】
図11は、カウンタ制御の他の例として、駆動電圧Dr2を印加した場合を示している。駆動電圧Dr2は、第1電圧波形W1に対して所定周期T1/2に対応する第1遅延時間d1位相が遅延した、第1の周期T1の2周期分の第1電圧波形W1と同じ電圧波形の第2電圧波形W2を含む。この場合には、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力が大きくなりすぎ、減衰時間が長くなる。この結果、図8に示した第2電圧波形W2を印加した場合と比較して、液滴に作用する慣性力は小さくなる。
【0098】
以上より、液滴の除去精度を向上させる観点では、図8に示した第2電圧波形W2を用いることが好適である。なお、本実施形態では、所定周期T1/2の1/2に対応する第2遅延時間d2を示したが、第2遅延時間d2は、第1弾性部21の縦弾性係数に合わせて適宜変更可能である。本実施形態における第1弾性部21の縦弾性係数は、1.7×10(kgf/cm)以上で2.0×10(kgf/cm)以下である。この場合には、第2遅延時間d2を所定周期T1/2の1/2にすると、減衰振動の減衰時間を短くでき、液滴の除去精度を向上させることができる。
【0099】
<液滴と撮像部1の振動との関係>
次に、図12から図15を参照して、除去対象としての液滴と、撮像装置100における撮像部1の振動との関係について説明する。
【0100】
図12は、液滴Qが付着した撮像部1を例示する図である。図12は、撮像方向(+Z方向)から視た撮像部1を示している。撮像部1の筐体15および光透過部材11の表面には、液滴Qが付着している。液滴Qは例えば雨滴である。
【0101】
光透過部材11に液滴Qが付着すると、被写体からの光が光透過部材11の一部または全体に付着した液滴Qによって反射、屈折または散乱する。これにより、撮像装置100により得られる撮像画像の画質が低下する。撮像装置100は、振動体3により撮像部1を振動させることにより、光透過部材11に付着した液滴Qに慣性力を付与して液滴Qを除去することができる。
【0102】
より詳しくは、液滴Qの表面張力をFs[mN/m]、撮像部1の振動により液滴Qに作用する慣性力をFi[N]とすると、Fi>Fsが成立すると、液滴Qが光透過部材11状を移動または落下する。従って、撮像装置100は、振動体3により撮像部1を振動させ、光透過部材11に付着した液滴Qに液滴Qの表面張力Fsよりも大きい慣性力Fiを付与することにより、光透過部材11から液滴Qを除去できる。
【0103】
但し、図12に示すように、光透過部材11に付着する液滴Qには様々なサイズのものがある。サイズに応じて液滴Qの質量が異なるため、単一の振動周波数および振動振幅の振動によって付与される慣性力Fiでは、除去できないサイズの液滴Qが生じ得る。
【0104】
液滴Qの質量m、液滴Qに付加される加速度をq[m/s]とすると、Fi=m×qであるため、サイズが小さく、質量mが小さい液滴Qを除去するためには、大きい加速度qが求められる。一方、サイズが大きく、質量mが大きい液滴Qは、小さい加速度qにより除去可能である。従って、様々なサイズの液滴Qを除去可能に、様々な加速度qを液滴Qに付加することが好ましい。
【0105】
本実施形態では、複数の振動周波数および複数の振動振幅の少なくとも1つを有するデジタル波形データSwに基づいて生成される駆動電圧Drにより撮像部1を振動させることにより、様々な加速度qを生成して液滴Qに付加可能である。
【0106】
図13は、撮像装置100における撮像部1の振動周波数と液滴Qのサイズとの関係を調べた実験結果の一例を示す図である。図13において、横軸は撮像部1の振動周波数を表し、縦軸は液滴Qのサイズを表している。なお、図13は、基準周波数aに対する比率により撮像部1の振動周波数を表示し、基準サイズbに対する比率により液滴Qのサイズを表示している。
【0107】
図13は、撮像部1として、製造業者、サイズ、重量または仕様等が異なる3種類の撮像部を用い、それぞれを振動させた場合に、光透過部材11から液滴Qを除去できた振動周波数をプロットした実験結果を示している。実線グラフ191、破線グラフ192および一点鎖線グラフ193は、3種類の撮像部1ごとでの実験結果を表している。
【0108】
図13に示すように、撮像部1の振動周波数が高くなるにつれ、除去できた液滴Qのサイズが略線形に小さくなった。このことから、撮像部の振動周波数と液滴Qのサイズは、略比例することが分かった。
【0109】
また、図13に示すように、3種類の撮像部1のいずれにおいても略比例関係が得られた。このことから、撮像装置100は、撮像部1の製造業者、サイズ、重量または仕様等が異なる場合にも、撮像部1の振動周波数を変化させることにより、さまざまなサイズの液滴Qを光透過部材11から除去できることが分かった。
【0110】
図14は、撮像装置100における撮像部1の振動振幅および振動周波数に応じた光透過部材11の変位量変化の一例を示す図である。図14において、横軸は撮像部1の振動周波数を表し、縦軸は光透過部材11における中心軸10近傍位置の変位量を表している。実線グラフ201、一点鎖線グラフ202および二点鎖線グラフ203は、3通りの振動振幅ごとでの振動周波数に応じた光透過部材11の変位量変化を示している。
【0111】
図14に示すように、第2周波数f2において、光透過部材11の変位量が顕著に大きくなった。この第2周波数f2は、第2弾性部22の共振周波数に対応する。また振動振幅を大きくするにつれ、光透過部材11の変位量が大きくなった。第1弾性部21の共振周波数である第1周波数f1においても同様に、光透過部材11の変位量が顕著に大きくなる。
【0112】
光透過部材11の変位量が大きいほど液滴Qの除去精度は向上するため、図14に示した実験結果から、振動周波数を第1弾性部21または第2弾性部22の共振周波数に一致させると、光透過部材11の変位量を顕著に大きくでき、液滴Qの除去精度を向上可能であることが分かった。また、振動振幅を大きくすると、光透過部材11の変位量が大きくでき、液滴の除去精度を向上可能であることが分かった。
【0113】
図15は、第1実施形態に係る撮像部1の振動周波数に応じた光透過部材11の変位量変化の一例を示す図である。図15は、図14と比較して、撮像部1の振動周波数を広い範囲に変化させたものであり、横軸および縦軸の意味は、図14と同様である。図15に示すように、第1周波数f1および第2周波数f2において光透過部材11の変位量が大きくなった。
【0114】
図13を参照して述べたように、撮像部1の振動周波数と液滴Qのサイズは略比例関係にあるため、撮像装置100は、第1周波数f1および第2周波数f2のそれぞれに対応するサイズの液滴Qの除去精度を特に向上させることができる。
【0115】
<液滴Qの除去結果例>
次に、図16から図19を参照して、撮像装置100における光透過部材11から液滴Qを除去する実験を行った結果について説明する。図16は、第1実施形態に係る液滴Qが付着した光透過部材11を例示する図である。図17は、図16の状態の撮像装置100による撮像画像230を例示する図である。図18は、第1実施形態に係る液滴Qが除去された光透過部材11を例示する図である。図19は、図18の状態の撮像装置100による撮像画像250を例示する図である。なお、図16および図17は、撮像部1における光透過部材11周辺を取り出して示している。
【0116】
図16および図17に示すように、光透過部材11に液滴Qが付着していると、被写体からの光が、光透過部材11に付着した液滴Qにより反射、屈折または散乱する。この結果、撮像画像230における該液滴Qに対応する画像領域231および232等において画像がぼけたり、歪んだりして、撮像画像230の画質が低下する。撮像画像230の画質低下により、ユーザは鮮明な撮像画像230を視認できなくなる。
【0117】
図18および図19に示すように、撮像装置100は、振動体3により撮像部1を振動させることにより、様々なサイズの液滴Qを光透過部材11から好適に除去できる。この結果、撮像画像250の画像領域251および252に示すように、液滴Qによる画質低下を抑制でき、ユーザは、鮮明な撮像画像250を視認できる。
【0118】
<撮像装置100の主な作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、第1電圧波形W1と第2電圧波形W2とを含む駆動電圧Drを振動体3に印加することにより、振動体3を駆動させる所定の駆動期間T0の途中および駆動期間の終了時に、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与する。力Hを付与することにより、撮像部1の振動振幅を急激に減衰させ、光透過部材11に付着した液滴に大きな慣性力を働かせることができる。この結果、光透過部材11に付着した液滴の除去精度に優れた撮像装置100を提供できる。
【0119】
ここで、力Hを撮像部1に付与するための第2電圧波形W2は、第1遅延波形e1と第2遅延波形e2とを含むものに限定されない。例えば、図20に示すように、第2電圧波形W2は、第1電圧波形W1に対して逆位相となる電圧波形を、遅延を含まずに備えてもよい。この場合にも、第2電圧波形W2は、時刻ttにおいて力Hを撮像部1に付与できる。但し、力Hを効率的に付与する観点では、第1遅延波形e1を含む第2電圧波形W2か、または、第1遅延波形e1と、第2遅延波形e2と、を含む第2電圧波形W2を用いることが好ましい。
【0120】
撮像装置100の構成も様々な変形が可能である。図21は、変形例に係る撮像装置100aの構成の一例を示す斜視図である。撮像装置100aは、支持部材2aを有する。支持部材2aは、第1弾性部21と、接続部23と、取付部24と、ネジ部材26と、を有する。つまり、上述した実施形態に係る支持部材2と比較して、支持部材2aは、第2弾性部22および背面部25を有さない。このような撮像装置100aにおいても上述した実施形態を適用し、同じ作用効果を得ることができる。
【0121】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1電圧波形W1aにおける所定周期Taは、第1の周期T1または第2の周期T2のどちらか一方に切替可能であり、第2電圧波形W2は、振動体3を駆動させる所定の駆動期間T0の途中、駆動期間T0の終了時、および、第1の周期T1と第2の周期T2とが切り替わる時、の少なくとも1つに、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与する。上記の点が、図2等を参照して説明した第1実施形態とは異なる。
【0122】
図22は、本実施形態に係る駆動電圧Dr1を例示する図である。図22は、駆動電圧Dr1の時間変化を示している。図22に示すように、本実施形態では、駆動電圧Dr1は、第1電圧波形W1aと、第2電圧波形W2aと、を含む。図22における上段のグラフは、主に第1電圧波形W1aを説明するためのものである。図22における下段の2つのグラフは、上段のグラフの一部を拡大表示したものであり、第1電圧波形W1aにおける所定周期Taと第2電圧波形W2aとを主に説明するためのものである。なお、図22における符号の括弧書きは、符号に対応する構成が、括弧書き内に示す符号に対応する構成に含まれるか、または同じであることを意味する。
【0123】
図22に示すように、本実施形態では、第1の周期をT1とし、第2の周期をT2とすると、第1電圧波形W1aにおける所定周期Taは、T1/2とT2/2との間で相互に切替可能である。第1電圧波形W12は、所定周期Taが第2の周期T2である第1電圧波形W1aを表す。第1電圧波形W11は、所定周期Taが第1の周期T1である第1電圧波形W1aを表す。第2の周期T2は、第1の周期T1よりも長い。第1の周期T1は、第1弾性部21の共振周波数である第1周波数f1の逆数に対応する。第2の周期T2は、第2弾性部22の共振周波数である第2周波数f2の逆数に対応する。
【0124】
図22に示す例では、第1電圧波形W1aは、第1電圧波形W12、第1電圧波形W11、第1電圧波形W12、第1電圧波形W11、第1電圧波形W12、第1電圧波形W11、第1電圧波形W12の順に切り替わっている。つまり、所定周期Taは、第2の周期T2、第1の周期T1、第2の周期T2、第1の周期T1、第2の周期T2、第1の周期T1および第2の周期T2の順に切り替わっている。但し、所定周期Taが切り替わる順番は、上記に限らず、第1の周期T1と第2の周期T2とが交互に切り替わればよい。また切り替わる回数も、光透過部材11への液滴の付着状態等に応じて適宜変更可能である。
【0125】
図22の下段における2つのグラフは、T1/2とT2/2との間で相互に切り替わる際の第1電圧波形W1aおよび第2電圧波形W2aを示している。図22の下段における2つのグラフのうち、時系列で先の時刻における駆動電圧Dr1を示すグラフ、すなわち図22における下段左側のグラフでは、第1電圧波形W1aにおける所定周期Taが、T2/2からT1/2へ切り替わっている。本実施形態では、所定周期TaがT2/2からT1/2へ切り替わる際に、第2電圧波形W2aが振動体3に印加される。第2電圧波形W2aは、振動体3に印加されることにより、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与する。
【0126】
第2電圧波形W2aは、第3遅延波形W3と第4遅延波形W4とを含む。図22の下段左側のグラフに示す例では、第2電圧波形W2aは、第4遅延波形W4と第3遅延波形W3とを、時系列に連続してこの順で含む。第4遅延波形W4および第3遅延波形W3のそれぞれは、第1電圧波形W1aに対して、T2/2、位相が遅延している。第2電圧波形W2aは、この位相遅延により、第1電圧波形W1aの印加に応じた振動体3の振動を打ち消すように、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与することができる。
【0127】
一方、図22の下段における2つのグラフのうち、時系列で後の時刻における駆動電圧Dr1を示すグラフ、すなわち図22における下段右側のグラフでは、第1電圧波形W1aにおける所定周期Taが、T1/2からT2/2へ切り替わっている。本実施形態では、所定周期TaがT1/2からT2/2へ切り替わる際に、第2電圧波形W2aが振動体3に印加されることにより、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与する。
【0128】
図22の下段左側のグラフに示す例では、第2電圧波形W2aは、第3遅延波形W3と第4遅延波形W4とを、時系列に連続してこの順で含む。第3遅延波形W3および第4遅延波形W4のそれぞれは、第1電圧波形W1aに対して、T1/2、位相が遅延している。第2電圧波形W2aは、この位相遅延により、第1電圧波形W1aの印加に応じた振動体3の振動を打ち消すように、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に付与することができる。
【0129】
第2電圧波形W2aは、第3遅延波形W3または第4遅延波形W4のいずれか1つのみを含んでもよい。また第2電圧波形W2aは、第3遅延波形W3および第4遅延波形W4の他に電圧波形をさらに含んでもよい。この「さらに含まれる他の電圧波形」は、第3遅延波形W3および第4遅延波形W4のどちらか一方と同じ電圧波形であってもよいし、第3遅延波形W3および第4遅延波形W4のどちらとも異なる電圧波形であってもよい。但し、撮像部1が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力Hを撮像部1に効率的に付与する観点では、第2電圧波形W2aが第3遅延波形W3と第4遅延波形W4とを含むことが好ましい。なお、ここでの「力Hを効率的に付与すること」には、簡単な波形形状を有する電圧波形により大きな力Hを得ること、並びに、時間的に短い第2電圧波形W2aにより大きな力Hを得ることが含まれる。
【0130】
図23は、撮像部1の振動周波数に応じた光透過部材11の変位量変化を例示する図である。第2周波数f2は、第1電圧波形W1aにおける第2の周期T2に対応する振動周波数である。第1周波数f1は、第1電圧波形W1aにおける第1の周期T1に対応する振動周波数である。
【0131】
第1周波数f1よりも低い第2周波数f2は、第1周波数f1で撮像部1を振動させる場合に除去される液滴の直径よりも、大きな直径の液滴を除去することに適している。一方、第1周波数f1は、第2周波数f2で撮像部1を振動させる場合に除去される液滴の直径よりも、小さな直径の液滴を除去することに適している。例えば、第2周波数f2を58Hzにすると、直径1.0mm以上の液滴を好適に除去でき、第1周波数f1を108Hzにすると、直径が0.50mm以上1.0mm未満の液滴を好適に除去できる。なお、図23における第3周波数f3は、例えば耳障りな音を生じさせる振動周波数である。このような振動周波数は、振動体3を駆動させる周波数として採用せず、除外することが好ましい。
【0132】
図24は、本実施形態に係るカウンタ制御の作用を例示する図である。図24は、図22に示した駆動電圧Dr1を振動体3(図2参照)に印加した時の光透過部材11の変位の時間変化を示している。光透過部材11の変位測定には、レーザードップラー流速計(LDV:Laser Doppler Velocimeter)等を使用できる。図24の下段のグラフは、図24の上段のグラフにおける時間領域A1を拡大表示したものである。
【0133】
図24の上段のグラフに示すように、光透過部材11は、第1周波数f1および第2周波数f2で交互に振動している。第1周波数がf1とf2との間で相互に切り替わる時、換言すると、所定周期TaがT1/2とT2/2との間で相互に切り替わる時に、第2電圧波形W2aが振動体3に印加されている。
【0134】
図24の下段のグラフに示すように、駆動電圧Dr1によるカウンタ制御により、第2周波数f2で振動している時の変位量および第1周波数f1で振動しているときの変位量のそれぞれと比較して、第2電圧波形W2aが印加された時(時間領域A2)における変位量が急減している。図24に示す例では、振動周波数がf2からf1に切り替わる3回のタイミングそれぞれにおいて第2電圧波形W2aが印加され、光透過部材11の変位量が急減している。光透過部材11の変位量が急減する際に、光透過部材11に付着している液滴に大きな慣性力が作用する。
【0135】
以下、本実施形態に係る光透過部材11からの液滴の除去動作の一例を説明する。本実施形態では、まず第2周波数f2で光透過部材11を振動させることにより、光透過部材11に付着している直径1mm以上の大きな液滴を慣性力で光透過部材11から振り落として除去する。
【0136】
続いて、振動周波数をf2からf1に切り替える際に、第2電圧波形W2aを用いたカウンタ制御を行うことにより、光透過部材11に付着している様々な直径の液滴を大きな慣性力で振り落として除去する。また、これとともに、光透過部材11に付着している直径1mmよりも小さい液滴が光透過部材11上を移動するきっかけを与える。なお、「移動するきっかけを与える」とは、光透過部材11に付着している液滴の付着力を慣性力で低減することにより、光透過部材11上を液滴が移動しやすい状態にすることをいう。
【0137】
続いて、第1周波数f1で光透過部材11を振動させることにより、光透過部材11に付着している直径1mmより小さい液滴を光透過部材11から振り落として除去する。この際に、カウンタ制御により移動しやすくなった直径0.8mm以下等のさらに小さい液滴をも振り落として除去することができる。以上の動作を予め定めた回数繰り返し行うことにより、光透過部材11上の大きい液滴から小さい液滴までを好適に除去することができる。
【0138】
第2電圧波形W2aの印加によるカウンタ制御は、所定周期Taが、T1/2からT2/2へ、またはT2/2からT1/2へ切り替わる時、の少なくとも1つに行われればよい。第1周波数f1で振動させる回数、第2周波数f2で振動させる回数、カウンタ制御を行う回数等は、実施形態に係る撮像装置の使用環境、使用形態等に応じて適宜変更されてもよい。
【0139】
図25は、本実施形態に係る液滴が付着した光透過部材11を例示する撮像部1の模式図である。図26は、本実施形態に係る液滴が除去された光透過部材11を例示する撮像部1の模式図である。
【0140】
図25に示すように、光透過部材11には、様々な直径の液滴Q1~Q5が付着している。例えば、液滴Q1の直径は略0.50mm、液滴Q2の直径は略0.60mm、液滴Q3の直径は略0.85mm、液滴Q4の直径は略0.75mm、液滴Q5の直径は略1.35mmである。本実施形態では、液滴Q2~Q5だけでなく、液滴Q1等の直径が小さいものも好適に光透過部材11から除去できる。車載カメラ等の用途では、直径略0.50mmよりも小さい液滴は撮像部1による撮像画像上でほぼ視認できないため、本実施形態では、車載カメラ等の撮像画像で視認される液滴を実質的にほぼすべて除去することができる。
【0141】
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0142】
実施形態では、撮像装置100の使用用途として車載カメラおよび監視カメラを例示したが、これらに限定されるものではない。例えば、撮像装置100は、飛行機やドローン、船舶、電車、列車等の移動体に設けられ、これらの移動体の周囲を撮像するものであってもよい。
【0143】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【0144】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、又は一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0145】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 撮像方向に光透過部材を有する撮像部と、前記撮像部を支持する支持部材と、前記支持部材によって支持された前記撮像部を振動させる振動体と、第1電圧波形と、第2電圧波形と、を含む駆動電圧を前記振動体に印加することにより、前記振動体を駆動させる駆動部と、を有し、前記第1電圧波形は、所定周期で電圧極性が反転し、前記第2電圧波形は、前記振動体を駆動させる所定の駆動期間の途中および前記駆動期間の終了時の少なくとも一方に、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、撮像装置である。
<2> 前記駆動部は、前記第1電圧波形の電圧極性が反転する際に、前記第2電圧波形を印加する、前記<1>に記載の撮像装置である。
<3> 前記振動体は、前記撮像部を振動させることにより、前記光透過部材に付着した付着物に慣性力を付与する、前記<1>または前記<2>に記載の撮像装置である。
<4> 前記付着物は、液滴である前記<3>に記載の撮像装置である。
<5> 前記第2電圧波形は、前記第1電圧波形に対して前記所定周期、位相が遅延した第1遅延波形を含む、前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<6> 前記第2電圧波形は、前記第1遅延波形に対して前記所定周期から1/2さらに位相が遅延した第2遅延波形を、前記第1遅延波形の後に含む、前記<5>に記載の撮像装置である。
<7> 前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、前記弾性部の縦弾性係数は、1.7×10(kgf/cm)以上で2.0×10(kgf/cm)以下である、前記<6>に記載の撮像装置である。
<8> 前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、前記振動体は、前記弾性部の共振周波数で前記撮像部を振動させる、前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<9> 前記支持部材は、第1弾性部と、第2弾性部と、を含み、前記振動体は、前記第1弾性部の共振周波数である第1周波数、または前記第2弾性部の共振周波数である第2周波数のどちらか一方で前記撮像部を振動させる、前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<10> 前記駆動部は、前記第1電圧波形を前記振動体に所定期間、印加した後、前記第2電圧波形を1回以上印加する、前記<1>から前記<9>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<11> 前記支持部材は、弾性部を少なくとも一部に含み、前記所定期間は、前記弾性部の縦弾性係数に応じて定められる、前記<10>に記載の撮像装置である。
<12> 前記駆動部の動作を制御する制御部を有し、前記駆動部は、前記制御部により生成されたデジタル波形データに基づく前記駆動電圧を印加する、前記<1>から前記<11>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<13> 第1の周期をT1とし、第2の周期をT2とすると、前記所定周期は、T1とT2に切替可能であり、前記第2電圧波形は、前記振動体を駆動させる前記駆動期間の途中、前記駆動期間の終了時、および、前記所定周期がT1/2からT2/2へ、またはT2/2からT1/2へ切り替わる時、の少なくとも1つに、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、前記<1>から前記<12>のいずれか1つに記載の撮像装置である。
<14> 前記所定周期は、前記第1の周期T1/2と、第2の周期T2/2の間で相互に切り替え可能であり、前記第2電圧波形は、前記所定周期がT1/2からT2/2へ、またはT2/2からT1/2へ切り替わる時、前記撮像部が振動により動く方向とは逆方向へ作用する力を前記撮像部に付与する、前記<13>に記載の撮像装置である。
<15> 前記第2電圧波形は、第3遅延波形と第4遅延波形とを含み、前記第3遅延波形および前記第4遅延波形のそれぞれは、前記第1電圧波形に対して、T1/2またはT2/2のどちらか一方、位相が遅延している、前記<14>に記載の撮像装置である。
【符号の説明】
【0146】
1・・・撮像部、2、2a・・・支持部材、3・・・振動体、4・・・固定部、11・・・光透過部材、15・・・筐体、21・・・第1弾性部、22・・・第2弾性部、23・・・接続部、24・・・取付部、25・・・背面部、26・・・ネジ部材、31・・・振動方向、100、100a・・・撮像装置、110・・・処理部、120・・・DDC、130・・・制御部、131・・・CPU、132・・・ROM、133・・・RAM、134・・・I/F、135・・・入出力部、136・・・設定部、137・・・判定部、138・・・生成部、139・・・PWMデューティ制御部、140・・・ロジックIC、150・・・駆動部、200・・・車両、A1、A2・・・時間領域、H・・・力、So・・・外部制御信号、Sw・・・デジタル波形データ、Po1・・・入力直流電圧、Po2・・・出力直流電圧、Pw・・・PWMデューティ制御信号、Ct・・・制御信号、Dr、Dr1・・・駆動電圧、Q、Q1~Q5・・・液滴、T1・・・第1の周期、T2・・・第2の周期、T1/2、Ta・・・所定周期、W1、W1a、W11、W12・・・第1電圧波形、W2、W2a・・・第2電圧波形、W3・・・第3遅延波形、W4・・・第4遅延波形、ts・・・開始時刻、te・・・終了時刻、T0・・・駆動期間、F1・・・第1カウンタ制御期間、F2・・・第2カウンタ制御期間、F3・・・第3カウンタ制御期間、t1・・・第1振動期間(所定期間の一例)、t2・・・第2振動期間、t3・・・第3振動期間、d1・・・第1遅延時間、d2・・・第2遅延時間、e1・・・第1遅延波形、e2・・・第2遅延波形、w1、w2・・・振動、a1・・・減衰振動、f1・・・第1周波数、f2・・・第2周波数、f3・・・第3周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26