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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068725
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】床暖房コントローラ
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/37 20220101AFI20240514BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240514BHJP
   F24H 15/208 20220101ALI20240514BHJP
   F24H 15/421 20220101ALI20240514BHJP
   F24D 13/02 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
F24H15/37
F24H15/10
F24H15/208
F24H15/421
F24D13/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179278
(22)【出願日】2022-11-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000108557
【氏名又は名称】タイム技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牧野瀬 公一
(72)【発明者】
【氏名】稲本 幸作
【テーマコード(参考)】
3L072
【Fターム(参考)】
3L072AA04
3L072AB03
3L072AC02
3L072AD16
3L072AE10
3L072AF02
3L072AG01
(57)【要約】
【課題】室外の温度変化による外乱の影響を受ける壁埋込型のコントローラであっても、求めた室温の誤差を許容範囲に収めることを可能にする床暖房コントローラを提供すること。
【解決手段】床暖房コントローラ1は、壁W内に埋め込まれるリア部20内に配置した第1温度センサ24と、フロント部10内の制御基板15に配置した第2温度センサ16と、制御基板15とは隔離された通気口18の直内側に配置した第3温度センサ17と、ヒータAおよびBの供給電力を制御するリレーAおよびBとを備え、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態およびリレーBのON/OFF状態の、各々、現在の検出値とメモリに記憶された過去の検出値を用いて室温を推定する演算手段を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内温度を制御する壁埋込型の床暖房コントローラにおいて、該コントローラには、
前記コントローラ内において壁の内部位置に配置され、その位置における前記コントローラ内の温度を検出する第1温度センサと、
前記コントローラ内において壁外の室内側であって、前記コントローラの中央部に配置され、その位置における前記コントローラ内の温度を検出する第2温度センサと、
前記コントローラ内において壁外の室内側であって、前記コントローラの外周部に配置され、その位置における前記コントローラ内の温度を検出する第3温度センサと、
所定の時間間隔で複数検出した前記第1温度センサ、第2温度センサおよび第3センサの各々の過去の検出温度を記憶するメモリと、
(ヒータに流れる電流をON/OFFして)温度の制御を行う発熱性切換素子とを備え、
前記第1温度センサ、第2温度センサおよび第3センサの、前記メモリに記憶した各々の過去の検出温度と、各々の現在の検出温度と、前記発熱性切換素子のON/OFF状態信号とを用いて室温を推定する演算手段を備えたことを特徴とする床暖房コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、室温を検出して発熱量を制御する床暖房コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から床暖房コントローラ内に備えた温度センサで検出した室温を補正する方法が、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0003】
特許文献1には、コントローラ内の温度を検出する第1温度センサによる温度信号と雰囲気温度を検出する(外気に晒される)第2温度センサの温度信号に基づき演算手段によってその差を検出して、その差に基づき第2温度センサの補正を行い、本来の室温により近い室温を算出する方法の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3162810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床暖房装置おいて、室温を適値に制御するコントローラは居住者の邪魔にならないよう、その筐体の半分程度を内壁と外壁の中間部(以下「室外」と略称)に埋め込まれるのが一般的である。そして、壁に埋め込まれるコントローラにおいては、室外の温度変化による外乱を強く受ける。
【0006】
特許文献1に開示されたコントローラは壁に埋め込まれたものではない。そのため、室外の温度変化による外乱の影響を受ける上記のような壁埋込型のコントローラでは、文献1に開示されたような温度補正方法を用いることができず、室温の誤差を許容範囲に収めることは困難であるという問題があった。
【0007】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、3つの温度センサをコントロール内の温度環境が異なる位置に配置し、各温度センサの値の過去の測定値、現在の測定値、およびコントール内のリレーのON/OFF状態の信号を用いて室温を求めてその誤差を許容範囲に収めることを可能にする床暖房コントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係る床暖房コントローラは、室内温度を制御する壁埋込型の床暖房コントローラにおいて、該コントローラには、コントローラ内において壁の内部位置に配置され、その位置におけるコントローラ内の温度を検出する第1温度センサと、コントローラ内において壁外の室内側であって、コントローラの中央部に配置され、その位置におけるコントローラ内の温度を検出する第2温度センサと、コントローラ内において壁外の室内側であって、コントローラの外周部に配置され、その位置におけるコントローラ内の温度を検出する第3温度センサと、所定の時間間隔で複数検出した第1温度センサ、第2温度センサおよび第3センサの各々の過去の検出温度を記憶するメモリと、(ヒータに流れる電流をON/OFFして)温度の制御を行う発熱性切換素子とを備え、第1温度センサ、第2温度センサおよび第3温度センサの、メモリに記憶した各々の過去の検出温度と、各々の現在の検出温度と、発熱性切換素子のON/OFF状態信号とを用いて室温を推定する演算手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る床暖房コントローラでは、コントローラ内において壁外の室内側であって、コントローラの中央部(室温より高温になりやすい位置)に配置された第2温度センサとコントローラ内において壁外の室内側であって、コントローラの外周部(室温に近い位置)に配置された第3温度センサに追加して、コントローラ内において壁の内部位置(室外の温度変化を受けやすい位置)に第1温度センサを配置することにより、室外の温度変化による外乱の影響も加味した室温の推定が可能になる。さらに、これら3つの温度センサが所定の時間間隔で複数検出した過去の検出値やコントローラ内の温度の変化の大きな起因となる発熱性切換素子(リレーなど)のON/OFF状態信号を用いることにより、室外の温度変化による外乱の影響を受ける壁埋込型のコントローラであっても、より的確に室温を推定することが可能となり、(コントローラの)演算手段で求めた室温の誤差を許容範囲に収めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかる一実施形態である床暖房コントローラの(A)正面、(B)側面の外観図である。
図2】壁に埋め込み設置された床暖房コントローラの側面透視図である。
図3】床暖房コントローラの内部回路を説明するダイヤグラムである。
図4】床暖房コントローラにおける室温制御の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明にかかる一実施形態である床暖房コントローラ1について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、床暖房コントローラ1の外観図を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。図中には、本発明の特徴である3つの温度センサ(第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17)の配置位置も図示している。また、図2は、壁に埋め込み設置された床暖房コントローラ1の側面透視図である。
【0013】
床暖房コントローラ1は、フロント部10と、フロント部10の後面側に連続して設けられたリア部20とからなる。図2に示すように、床暖房コントローラ1は、リア部20が壁Wの中に埋め込まれて壁Wに設置される。
【0014】
フロント部10は、本体カバー11、操作カバー14および電源スイッチ19を備えている。そして、図1の(B)に示すように本体カバー11の正面に向かって右側面下方部に室内空間と連通する通気口18が設けられている。操作カバー14は開閉可能に設けられており、両側面にある操作カバー取手14a、14aを用いて開閉する。また、フロント部10には、運転状態や室温などを表示する表示装置12、(操作カバー14直下にある)温度設定や運転切替、タイマー設定などを行う操作盤13、および、これら表示装置12や操作盤13などが配置される制御基板15が収納されている。
【0015】
リア部20は略箱型の底部カバー21を備えている。底部カバー21の内部には、後述する電源回路やリレー(リレーA、リレーB)などが配置される電源基板23が収納されており、AC100/200Vの電源ラインL1、L2および温度制御される床暖房用のヒータAおよびBに接続するヒータ線LHが接続されている。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明の特徴である3つの温度センサの内、第1温度センサ24は、リア部20の電源基板23の側面に配置された(図示しない)中継基板に配置され、リア部20の内部の温度を検出するようになっている。第1温度センサ24の出力値は、フロント部10内の制御基板15に入力される。第2温度センサ16は、フロント部10の下方の操作盤13のほぼ中央の制御基板15に配置され、フロント部10の内部の温度を検出するようになっている。第3温度センサ17は、制御基板15の外側に配置された(図示しない)中継基板に配置され、制御基板15とは(図示しない)隔壁で隔離された通気口18の直内側に配置されている。これにより、第3温度センサ17は、通気口18を介して室内空間と連通し、室内空間の室温に近い温度を検出するようになっている。本実施形態である床暖房コントローラ1では、第1温度センサ24、第2温度センサ16および第3温度センサ17は、温度で抵抗値が変化するサーミスタを採用しているが、温度センサはサーミスタに限定されず、他の温度センサを採用してもよい。
【0017】
上述のように、本実施形態である床暖房コントローラ1では、室内空間の室温に近い温度を検出する第3温度センサ17および室内空間側のフロント部10内の温度を検出する第2温度センサ16に加えて、壁W内に埋め込まれるリア部20内に第1温度センサ24を配置することにより、室外の温度変化による外乱の要素も含めて室温を推定するため、(コントローラの)演算手段で求めた室温の誤差を許容範囲に収めることを可能にできるのである。
【0018】
次に、床暖房コントローラ1の内部回路について説明する。図3は床暖房コントローラ1の回路構成を示すダイヤグラムである。ダイヤグラムに図示した部品以外に様々な部品が床暖房コントローラ1において組み込まれているが、本発明の特徴を説明するため、図3のダイヤグラムには主な部品のみ図示している。
【0019】
電源ラインL1、L2により商用電力であるAC100Vあるいは200Vがリア部20の電源基板23内の電源回路およびリレーA、リレーBに入力される。電源回路では、電源基板23内のリレーA、リレーBを駆動制御する回路に供給する電圧やフロント部10内の制御基板15内の演算処理部や表示装置12、操作盤13、また、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17などに供給する電圧を出力する。制御基板15内の演算処理部では、操作盤13や第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17などから入力された値を演算処理して、運転状態や室温などを表示装置12に出力するとともに、リレーAおよびリレーBをON/OFF制御し、ヒータ線LHを介してヒータAおよびヒータBに供給する電力を制御するようになっている。メモリ25は、操作盤13から入力されたデータや演算処理中のデータ、下述する室温推定時に用いるデータなどを保存されるとともに、演算処理部に出力される。
【0020】
次に、床暖房コントローラ1における室温制御の手順について説明する。図4は床暖房コントローラ1における室温制御の手順を説明するフローチャートである。
【0021】
まず、床暖房コントローラ1の電源をONする(START)。ステップS1では、現時点における第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RAの値(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)を取得して保存する。すなわち、予め設定された時間間隔で制御基板15内の演算処理部によりこれらのデータ(T1、T2、T3、RA、RB)を取得して、随時メモリ25に保存される。本実施形態では、室温推定に過去のデータである4分前のデータおよび8分前のデータを用いるため、メモリ25には少なくとも過去8分間のデータが保存される。8分経過後は、一番古いデータが消去され、新しいデータを保存するように順次メモリ25に保存されたデータが置き換えられるようになっている。
【0022】
次に、ステップS2およびステップS3で「起動後8分以上経過しているか」(S2)「起動後4分以上経過しているか」(S3)を判定する。電源をONして4分未満の場合は、ステップS2およびステップS3が共にNO(N)となるため、ステップS4に進む。また、電源をONして4分以上8分未満の場合はステップS2でNO(N)、ステップS3でYES(Y)となるため、ステップS5に進む。さらに、電源をONして8分経過している場合は、ステップS2およびステップS3が共にYES(Y)になるため、ステップS6に進む。
【0023】
ステップS4では、電源をONして4分経過していないので、ステップS1でメモリ25に保存した、現時点における第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RA(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)の5つのデータを5変数とする「5変数1次関数による室温推定」を行う。これら5変数をX1(T1)、X2(T2)、X3(T3)、X4(RA)、X5(RB)とし、予め求められてメモリ25に保存された定数a0、a1、a2、a3、a4、a5とからなる5変数1次関数である次式(式A)から室温の推定値Tを求める。
【0024】
T=a0+a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+a5X5・・・(式A)
【0025】
ステップS5では、電源をONして4分以上(8分未満)経過しているので、ステップS1でメモリ25に保存した現時点における第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RA(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)と、メモリ25に保存した現時点の4分前のデータT1(4)、T2(4)、T3(4)、RA(4)、RB(4)の計10個のデータを10変数とする「10変数1次関数による室温推定」を行う。これら10変数をX1(T1)、X2(T2)、X3(T3)、X4(RA)、X5(RB)、X6(T1(4))、X7(T2(4))、X8(T3(4))、X9(RA(4))、X10(RA(4))とし、予め求められてメモリ25に保存された定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10とからなる10変数1次関数である次式(式B)から室温の推定値Tを求める。
【0026】
T=b0+b1X1+b2X2・・+b8X8+b9X9+b10X10・・・(式B)
【0027】
ステップS6では、電源をONして8分以上経過しているので、ステップS1でメモリ25に保存した現時点における第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RA(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)と、メモリ25に保存した現時点の4分前のデータT1(4)、T2(4)、T3(4)、RA(4)、RB(4)と、メモリ25に保存した現時点の8分前のデータT1(8)、T2(8)、T3(8)、RA(8)、RB(8)の計15個のデータを15変数とする「15変数1次関数による室温推定」を行う。これら15変数をX1(T1)、X2(T2)、X3(T3)、X4(RA)、X5(RB)、X6(T1(4))、X7(T2(4))、X8(T3(4))、X9(RA(4))、X10(RA(4))、X11(T1(8))、X12(T2(8))、X13(T3(8))、X14(RA(8))、X15(RA(8))とし、予め求められてメモリ25に保存された定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15とからなる10変数1次関数である次式(式C)から室温の推定値Tを求める。
【0028】
T=c0+c1X1+c2X2・・+c14X14+c15X15・・・(式C)
【0029】
ステップS4またはステップS5、ステップS6で室温推定値を求めたら、ステップS7に進む。ステップS7では、求めた室温推定値Tと、操作盤13により予め設定されてメモリ25に保存された設定室温の値の上限目標値とを比較する。ステップS4などで求めた室温推定値Tが設定室温の値の上限目標値より大きい場合(Y)は、ステップS9に進み、リレーA又は/及びリレーBをOFFにしてヒータA又は/及びヒータBへの電力供給を遮断してステップS1に戻る。ステップS4などで求めた室温推定値Tが設定室温の値の上限目標値以下の場合(N)は、ステップS8に進む。
【0030】
ステップS8では、求めた室温推定値Tと、操作盤13により予め設定されてメモリ25に保存された設定室温の値の下限目標値とを比較する。ステップS4などで求めた室温推定値Tが設定室温の値の下限目標値より小さい場合(Y)は、ステップ10に進み、リレーA又は/及びリレーBをONにしてヒータA又は/及びヒータBへの電力を供給してステップS1に戻る。ステップS3で求めた室温推定値Tが設定室温の値の下限目標値以上の場合(N、すなわち、室温推定値Tが設定室温の値の下限目標値以上、上限目標値以下の場合)は、そのままステップS1に戻る。
【0031】
ステップS1に戻ったら、現時点における第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RAの値(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)を取得してメモリ25に保存する。
【0032】
以上のように、第1温度センサ24で検出した温度T1、第2温度センサ16で検出した温度T2、第3温度センサ17で検出した温度T3、リレーAのON/OFF状態RAの値(1/0)およびリレーBのON/OFF状態RBの値(1/0)を用いて推定した室温が設定室温の値の下限目標値と上限目標値との間になるように、リレーA及びリレーBをON/OFF制御してヒータA及びヒータBへの電力供給を加減する。
【0033】
次に、上記「5変数1次関数」における定数a0、a1、a2、a3、a4、a5の求め方について説明する。ここで、定数a0、a1、a2、a3、a4、a5は対象の床暖房コントローラ固有の定数であり、本実施形態では、床暖房コントローラ1で室温制御する前に、別途室温計を用いて、以下の手順で定数a0、a1、a2、a3、a4、a5を求める。
【0034】
所定の時間間隔で、n回、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態(1/0)、リレーBのON/OFF状態(1/0)および室温計の実測値Fの時系列データを取得する。第1温度センサ24の時系列データ(X11,・・,X1n)、第2温度センサ16の時系列データ(X21,・・,X2n)、第3温度センサ17の時系列データ(X31,・・,X3n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X41,・・,X4n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X51,・・,X5n)および室温計の実測値Fの時系列データ(Y1,・・,Yn)から求めた、(X11,・・,X51,Y1)、・・・、(X1n,・・,X5n,Yn)という6次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面Y=a0+a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+a5X5を求めることにより、定数a0、a1、a2,a3、a4、a5の値を決定する。
【0035】
ここで、
X0j:(j=1,・・,n)X0j=1
X1j:(j=1,・・,n):第1温度センサ24の所定時間間隔で取得した時系列データ
X2j:(j=1,・・,n):第2温度センサ16の所定時間間隔で取得した時系列データ
X3j:(j=1,・・,n):第3温度センサ17の所定時間間隔で取得した時系列データ
X4j:(j=1,・・,n):リレーAのON/OFF状態を所定時間間隔で取得した時系列データ
X5j:(j=1,・・,n):リレーBのON/OFF状態を所定時間間隔で取得した時系列データ
Yj:(j=1,・・,n):室温計の実測値を所定時間間隔で取得した時系列データ
とし、最小二乗法を適用すると、次式(数式1)が成立する。
【0036】
【数1】
【0037】
そして、X0j=1を代入すると、次式(数式2)となる。
【0038】
【数2】
【0039】
左辺の6×6正方行列部の逆行列(Rとする)を、両辺左から乗ずれば、超平面の全係数が次の形(数式3)で求まる。
【0040】
【数3】
【0041】
数式3から、定数a0、a1、a2,a3、a4、a5の値を求めることができる。求めた定数a0、a1、a2,a3、a4、a5はメモリ25に保存される。
【0042】
次に、「10変数1次関数」における定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10の求め方について説明する。定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10も対象の床暖房コントローラ固有の定数であり、上記「5変数1次関数」の場合と同様、床暖房コントローラ1で室温制御する前に、別途室温計を用いて、以下の手順で定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10を求める。
【0043】
「10変数1次関数」の場合は4分前のデータを用いるため、リレーA及びリレーBを任意のタイミングでランダムにON/OFFさせながら、所定の時間間隔で、4分間以上、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態(1/0)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の時系列データを取得した後に、所定の時間間隔で、n回、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態(1/0)、リレーBのON/OFF状態(1/0)および室温計の実測値Fの時系列データを取得する。第1温度センサ24の時系列データ(X11,・・,X1n)、第2温度センサ16の時系列データ(X21,・・,X2n)、第3温度センサ17の時系列データ(X31,・・,X3n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X41,・・,X4n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X51,・・,X5n)、第1温度センサ24の4分前の時系列データ(X61,・・,X6n)、第2温度センサ16の4分前の時系列データ(X71,・・,X7n)、第3温度センサ17の4分前の時系列データ(X81,・・,X8n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の4分前の時系列データ(X91,・・,X9n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の4分前の時系列データ(X101,・・,X10n)、および室温計の実測値Fの時系列データ(Y1,・・,Yn)から求めた、(X11,・・,X101,Y1)、・・・、(X1n,・・,X10n,Yn)という11次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面T=b0+b1X1+b2X2・・+b8X8+b9X9+b10X10を求めることにより、定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10の値を決定する。
【0044】
「10変数1次関数」の場合は、上記「5変数1次関数」の場合に対して4分前の時系列データ(X61,・・,X6n)、(X71,・・,X7n)、(X81,・・,X8n)、(X91,・・,X9n)、(X101,・・,X10n)を追加した、11×11正方行列を用いて求めることになるが、求め方自体は上記「5変数1次関数」の場合と同様なので、ここでは、詳細は省略する。求めた定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10はメモリ25に保存される。
【0045】
次に、「15変数1次関数」における定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15の求め方について説明する。定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15も対象の床暖房コントローラ固有の定数であり、上記「5変数1次関数」の場合と同様、床暖房コントローラ1で室温制御する前に、別途室温計を用いて、以下の手順で定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15を求める。
【0046】
「15変数1次関数」の場合は4分前と8分前のデータを用いるため、リレーA及びリレーBを任意のタイミングでランダムにON/OFFさせながら、所定の時間間隔で、8分間以上、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態(1/0)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の時系列データを取得した後に、所定の時間間隔で、n回、第1温度センサ24、第2温度センサ16、第3温度センサ17、リレーAのON/OFF状態(1/0)、リレーBのON/OFF状態(1/0)および室温計の実測値Fの時系列データを取得する。
【0047】
第1温度センサ24の時系列データ(X11,・・,X1n)、第2温度センサ16の時系列データ(X21,・・,X2n)、第3温度センサ17の時系列データ(X31,・・,X3n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X41,・・,X4n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の時系列データ(X51,・・,X5n)、第1温度センサ24の4分前の時系列データ(X61,・・,X6n)、第2温度センサ16の4分前の時系列データ(X71,・・,X7n)、第3温度センサ17の4分前の時系列データ(X81,・・,X8n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の4分前の時系列データ(X91,・・,X9n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の4分前の時系列データ(X101,・・,X10n)、第1温度センサ24の8分前の時系列データ(X111,・・,X11n)、第2温度センサ16の8分前の時系列データ(X121,・・,X12n)、第3温度センサ17の8分前の時系列データ(X131,・・,X13n)、リレーAのON/OFF状態(1/0)の8分前の時系列データ(X141,・・,X14n)、リレーBのON/OFF状態(1/0)の8分前の時系列データ(X151,・・,X15n)、および室温計の実測値Fの時系列データ(Y1,・・,Yn)から求めた、(X11,・・,X151,Y1)、・・・、(X1n,・・,X15n,Yn)という16次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面T=c0+c1X1+c2X2・・+c14X14+c15X15を求めることにより、定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15の値を決定する。
【0048】
「15変数1次関数」の場合は、上記「5変数1次関数」の場合に対して4分前の時系列データ(X61,・・,X6n)、(X71,・・,X7n)、(X81,・・,X8n)、(X91,・・,X9n)、(X101,・・,X10n)および8分前の時系列データ(X111,・・,X11n)、(X121,・・,X12n)、(X131,・・,X13n)、(X141,・・,X14n)、(X151,・・,X15n)、を追加した、16×16正方行列を用いて求めることになるが、求め方自体は上記「5変数1次関数」の場合と同様なので、ここでは、詳細は省略する。求めた定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15はメモリ25に保存される。
【0049】
上述のように、「5変数1次関数」における定数a0、a1、a2、a3、a4、a5、「10変数1次関数」における定数b0、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10、「15変数1次関数」における定数c0、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、c12、c13、c14、c15が求められる。これら求めた定数は、環境が異なる3つの温度センサやコントローラ内部の温度上昇の大きな起因である発熱性切換素子の一つであるリレーA、リレーBのON/OFFの状態、さらに、過去のデータ(4分前、8分前)と、室温計の実測値との関連性に基いて求められたものであるため、上述したような、これら定数を用いた室温推定式である式A、式Bおよび式Cにより、室外の温度変化による外乱の影響を受ける壁埋込型のコントローラであっても、より的確に室温を推定することが可能となり、(推定した)室温の誤差を許容範囲に収めることが可能となる。
【0050】
ここで、床暖房コントローラ1は床暖房コントローラの一例であり、第1温度センサ24は第1温度センサの一例であり、第2温度センサ16は第2温度センサの一例であり、第3温度センサ17は第3温度センサの一例であり、メモリ25はメモリの一例であり、リレーAおよびリレーB25は発熱性切換素子の一例である。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0052】
例えば、本実施形態では、過去のデータとして4分前と8分前のデータの2つのデータを採用したが、過去のデータはこれに限定するものではなく、室温を推定する床暖房コントローラの特性に応じて有効な過去のデータ(時間や数)を適宜設定すればよい。
【0053】
また、本実施形態では、上述のように、電源をONして4分以内では、6次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面Y=a0+a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+a5X5、電源をONして4分以上8分未満では、11次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面T=b0+b1X1+b2X2・・+b8X8+b9X9+b10X10、電源をONして8分以上では、16次元空間内のn個の点に対して、最小二乗法を適用し、最小二乗法の意味で最も近くを通過する超平面T=c0+c1X1+c2X2・・+c14X14+c15X15を求めて、室温を推定する方法を提示したが、室温の推定方法は、上述した方法に限定するものではなく、壁埋込型の床暖房コントローラでは、室温を推定する際に、本実施形態にかかるように、環境が異なる3つの温度センサやコントローラ内部の温度上昇の大きな起因である発熱性切換素子の一つであるリレーA、リレーBのON/OFFの状態、さらに、過去のデータ(例えば、本実施形態における4分前、8分前)を用いることが重要なのであって、これらのデータを用いて室温を推定する方法については、他の手法、例えば、近似式などから室温を推定してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・床暖房コントローラ
10・・フロント部
11・・本体カバー
12・・表示装置
13・・操作盤
14・・操作カバー
15・・制御基板
16・・第2温度センサ
17・・第3温度センサ
18・・通気口
19・・電源スイッチ
20・・リア部
21・・底部カバー
23・・電源基板
24・・第1温度センサ
25・・メモリ
図1
図2
図3
図4