(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068726
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】蓄電装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/516 20210101AFI20240514BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240514BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240514BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240514BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240514BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M10/54
H01M50/209
H01M50/55 101
H01M50/505
H01M50/503
H01G4/228 J
H01G11/74
H01G11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179279
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏紀
【テーマコード(参考)】
5E078
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078JA02
5E078JA06
5H031RR04
5H040AA36
5H040AS01
5H040AS02
5H040AS04
5H040AS05
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040DD03
5H040JJ01
5H040JJ03
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA09
5H043FA04
5H043FA26
5H043HA11F
5H043JA02F
(57)【要約】 (修正有)
【課題】蓄電素子を容易にリサイクルできる蓄電装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、端子240を有する蓄電素子200と、端子に溶接された導電部材33と、端子とともに導電部材を挟む位置に配置されたバスバー34とを備え、バスバーは、端子及び導電部材の少なくとも一方に溶接されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有する蓄電素子と、
前記端子に溶接された導電部材と、
前記端子とともに前記導電部材を挟む位置に配置されたバスバーとを備え、
前記バスバーは、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に溶接されている
蓄電装置。
【請求項2】
前記バスバーは前記導電部材に溶接されている
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記端子の平面視において、前記端子と前記導電部材との溶接部である第一溶接部と、前記導電部材と前記バスバーとの溶接部である第二溶接部とは離れている
請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記バスバーは貫通孔を有しており、
前記第一溶接部は、前記貫通孔内に配置されている
請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
蓄電装置の製造方法において、
他の機器と蓄電素子の端子とを電気的に接続するバスバーであって前記端子に溶接されたバスバーを切断することと、
前記切断することの後に、前記バスバーを導電部材として前記端子に残した状態の前記蓄電素子に対して、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に、他のバスバーを溶接することを含む、
蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池部と、複数の単電池部を電気的に接続する複数のバスバーと、これらを収容する筐体とを有する組電池が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バスバーは、単電池部に対して溶接されている場合があるが、単電池部をリサイクルする際には、この溶接を解除しなければならず、リサイクル作業が煩雑となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、蓄電素子のリサイクルの容易化が可能な蓄電装置などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、端子を有する蓄電素子と、前記端子に溶接された導電部材と、前記端子とともに前記導電部材を挟む位置に配置されたバスバーとを備え、前記バスバーは、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に溶接されている。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、他の機器と蓄電素子の端子とを電気的に接続するバスバーであって前記端子に溶接されたバスバーを切断することと、前記切断することの後に、前記バスバーを導電部材として前記端子に残した状態の前記蓄電素子に対して、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に、他のバスバーを溶接することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蓄電素子のリサイクルの容易化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電装置を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る蓄電素子と第一バスバーとの接合構造をY軸方向から見た平面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る蓄電素子と第一バスバーとの接合構造を示す上面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る蓄電素子の端子上に残存する第一バスバーと、第二バスバーとの接合構造をY軸方向から見た平面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る蓄電素子の端子上に残存する第一バスバーと、第二バスバーとの接合構造を示す上面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る蓄電素子の端子上に残存する第一バスバーと、第二バスバーとの接合構造をY軸方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)発明の一態様に係る蓄電装置は、端子を有する蓄電素子と、前記端子に溶接された導電部材と、前記端子とともに前記導電部材を挟む位置に配置されたバスバーとを備え、前記バスバーは、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に溶接されている。
【0011】
これによれば、蓄電素子のリサイクル時においては、当該蓄電素子の端子には、切断されたバスバー(導電部材)が溶接されたままである。この端子及び導電部材の少なくとも一方に、当該導電部材とは異なる他のバスバーを溶接することで、蓄電素子のリサイクルを容易に行うことが可能である。
【0012】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記バスバーは前記導電部材に溶接されている、としてもよい。
【0013】
これによれば、端子に溶接された導電部材にバスバーが溶接されているので、バスバー溶接時の熱が端子に直接伝達されない。したがって、端子近傍の気密構造に対する溶接時の熱影響を抑制できる。
【0014】
(3)上記(2)に記載の蓄電装置において、前記端子の平面視において、前記端子と前記導電部材との溶接部である第一溶接部と、前記導電部材と前記バスバーとの溶接部である第二溶接部とは離れている、としてもよい。
【0015】
これによれば、端子の平面視において第一溶接部と第二溶接部とが離れているので、導電部材にバスバーを溶接する際には、第一溶接部を避けて第二溶接部を形成できる。したがって、第二溶接部の形成時に第一溶接部が邪魔となることを抑制できる。
【0016】
(4)上記(3)に記載の蓄電装置において、前記バスバーは貫通孔を有しており、前記第一溶接部は、前記貫通孔内に配置されている、としてもよい。
【0017】
これによれば、バスバーの貫通孔内に第一溶接部が配置されているので、第一溶接部の膨らみを避けてバスバーを導電部材に重ねることができる。したがって、導電部材とバスバーとの溶接を安定して行うことが可能である。
【0018】
(5)本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、他の機器と蓄電素子の端子とを電気的に接続するバスバーであって前記端子に溶接されたバスバーを切断することと、前記切断することの後に、前記バスバーを導電部材として前記端子に残した状態の前記蓄電素子に対して、前記端子及び前記導電部材の少なくとも一方に、他のバスバーを溶接することを含む。
【0019】
これによれば、蓄電素子のリサイクル時においては、当該蓄電素子の端子には、切断されたバスバー(導電部材)が溶接されたままである。この端子及び導電部材の少なくとも一方に、当該導電部材とは異なる他のバスバーを溶接することで、蓄電素子のリサイクルを容易に行うことが可能である。
【0020】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。本実施の形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施の形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0021】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をX軸方向と定義する。1つの蓄電素子における端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をY軸方向と定義する。蓄電装置の外装体における外装体本体と外蓋との並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(以下実施の形態では、直交)する方向である。ここで、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0022】
[蓄電装置の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態に係る蓄電装置1の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【0023】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。ここでいう直方体とは、すべての面が長方形または正方形で構成された六面体である。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV)または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電素子200と、複数の蓄電素子200を収容する外装体10とを備える。この蓄電装置1に備わる全ての蓄電素子200はリサイクル前のものである。外装体10は、複数の蓄電素子200を収容する外装体本体11と、外装体本体11の開放部分(後述の本体開口部111)を覆う外蓋12とを有する。
【0025】
外装体10は、蓄電装置1の外装体を構成する略直方体形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、複数の蓄電素子200を所定の位置に固定し、これら要素を衝撃などから保護する部材である。
【0026】
外装体本体11は、上部が開放された有底矩形筒状の部材であり、その開放部分が本体開口部111である。本体開口部111は、平面視において略四角形状である。外装体本体11の本体開口部111内には、複数の蓄電素子200に加えて、各蓄電素子200に接続された複数の第一バスバー33と、制御回路等を含む接続ユニット(図示省略)と、一対のエンド部材39とが収容されている。図示は省略しているが、外装体本体11には、各第一バスバー33を保持するバスバーフレーム、蓄電素子200同士の間に配置される絶縁性のセル間スペーサ、蓄電素子200とエンド部材39との間に配置される絶縁性の端部スペーサの少なくともひとつが収容されていてもよい。
【0027】
外蓋12は、外装体本体11の本体開口部111を閉塞する部材である。外蓋12は、外装体本体11の本体開口部111を覆った状態で外装体本体11に接合されている。外蓋12は、正極の外部端子91及び負極の外部端子92を有している。外部端子91、92は、接続ユニット及び第一バスバー33を介して複数の蓄電素子200と電気的に接続されており、蓄電装置1は、この外部端子91、92を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子91、92は、例えば、真鍮などの銅合金、銅、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0028】
外装体10の外装体本体11及び外蓋12は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。外装体10は、これにより、蓄電素子200等が外部の金属部材等に接触することを回避する。蓄電素子200等の電気的絶縁性が保たれる構成であれば、外装体10は、金属等の導電部材で形成されていてもよい。
【0029】
蓄電素子200は、二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子200は、扁平な直方体形状(角形)を有しており、本実施の形態では、8個の蓄電素子200がX軸方向に配列されている。蓄電素子200の形状、及び、配列される蓄電素子200の個数は限定されない。蓄電素子200は、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよく、一次電池であってもよい。蓄電素子200は、固体電解質電池であってもよい。
【0030】
図3は、実施の形態に係る蓄電素子200の外観を示す斜視図である。蓄電素子200は、容器210と、一対(正極及び負極)の端子240と、上部ガスケット250と、を備えている。容器210の内方には、下部ガスケット、電極体、一対(正極及び負極)の集電体、及び、電解液(非水電解質)等が収容されているが、これらの図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子200の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択できる。
【0031】
蓄電素子200は、上記の構成要素の他、電極体の側方または下方等に配置されるスペーサ、及び、電極体等を包み込む絶縁フィルム等を有していてもよい。さらに、容器210の周囲には、容器210の外面を覆う絶縁フィルム(シュリンクチューブ等)が配置されていてもよい。当該絶縁フィルムの材質は、蓄電素子200に必要な絶縁性を確保できるものであれば特に限定されないが、例えば、PC、PP、PE、PPS、PET、PBTまたはABS樹脂等の絶縁性の樹脂、エポキシ樹脂、カプトン(登録商標)、テフロン(登録商標)、シリコン、ポリイソプレン、及びポリ塩化ビニルなどを例示できる。
【0032】
容器210は、開口が形成された容器本体220と、容器本体220の当該開口を閉塞する蓋230と、を有する直方体形状(角形または箱形)のケースである。容器本体220は、容器210の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Z軸プラス方向に開口が形成されている。蓋230は、容器210の蓋部を構成する矩形状の平板であり、容器本体220のZ軸プラス方向に配置され、Y軸方向に延びて設けられている。蓋230には、容器210内方の圧力が過度に上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁231、及び、容器210内方に電解液を注液するための注液部(図示せず)等が設けられている。容器210(容器本体220及び蓋230)の材質は、特に限定されず、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能(接合可能)な金属とすることができるが、樹脂を用いることもできる。容器210は、電極体等を容器本体220の内方に収容後、容器本体220と蓋230とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。
【0033】
容器210は、X軸方向両側の側面に一対の長側面211を有し、Y軸方向両側の側面に一対の短側面212を有し、Z軸マイナス方向側に底面213を有している。長側面211は、容器210の長側面を形成する矩形状の平面部である。長側面211は、短側面212及び底面213に隣接している。短側面212は、容器210の短側面を形成する矩形状の平面部である。底面213は、容器210の底面を形成する矩形状の平面部であり、長側面211及び短側面212に隣接して配置される。
【0034】
端子240は、蓋230に配置される蓄電素子200の端子部材(正極端子及び負極端子)であり、集電体を介して、電極体の正極板及び負極板に電気的に接続されている。つまり、端子240は、電極体に蓄えられている電気を蓄電素子200の外部空間に導出し、また電極体に電気を蓄えるために蓄電素子200の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。端子240は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などで形成されている。
【0035】
電極体は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成された蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属からなる正極集電箔上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅または銅合金等の金属からなる負極集電箔上に負極活物質層が形成されたものである。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なものであれば、適宜公知の材料を使用できる。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートまたは不織布等を用いることができる。本実施の形態では、電極体は、極板(正極板及び負極板)がX軸方向に積層されて形成されている。電極体は、極板(正極板及び負極板)が巻回されて形成された巻回型の電極体、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体等、どのような形態の電極体でもよい。
【0036】
集電体は、端子240と電極体とに電気的に接続される導電性の部材(正極集電体及び負極集電体)である。正極集電体は、正極板の正極集電箔と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体は、負極板の負極集電箔と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0037】
上部ガスケット250は、蓋230と端子240との間に配置され、蓋230と端子240との間を絶縁し、かつシールするガスケットである。下部ガスケットは、蓋230と集電体との間に配置され、蓋230と集電体との間を絶縁し、かつシールするガスケットである。上部ガスケット250及び下部ガスケットは、電気的絶縁性を有していればどのような素材で形成されていてもよい。
【0038】
図2に示すように、第一バスバー33は、少なくとも2つの蓄電素子200上に配置され、当該少なくとも2つの蓄電素子200の端子240(正極端子及び負極端子)を電気的に接続する板状部材である。第一バスバー33は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、クラッド材等の金属製の導電部材で形成されている。本実施の形態では、5つの第一バスバー33を用いて、蓄電素子200を2個ずつ並列に接続して4セットの蓄電素子群を構成し、かつ、当該4セットの蓄電素子群を直列に接続している。
【0039】
接続ユニットは、複数の導電部材及び制御基板等を有するユニットであり、8個の蓄電素子200からなる蓄電素子群と、外部端子91、92とを接続する。接続ユニットが有する制御基板は複数の電気部品を有し、これら複数の電気部品により、各蓄電素子200の状態を検出する検出回路、及び、充電及び放電を制御する制御回路等が形成されている。検出回路及び制御回路は個別の基板に形成されていてもよい。接続ユニットは、制御基板を有しなくてもよい。この場合、例えば、蓄電装置1の外部に配置された制御装置が各蓄電素子200の充電及び放電を制御してもよい。検出回路には、蓄電素子200に取り付けられるセンサ(図示省略)が電気的に接続されている。ここで、センサは、蓄電素子200の状態を検出するセンサである。具体的に、センサとしては、蓄電素子200の温度を検出する温度センサ(サーミスタ)、蓄電素子200の電圧を検出する電圧センサなどが挙げられる。
【0040】
一対のエンド部材39は、外装体本体11内において複数の蓄電素子200を一括して挟む位置に配置される平板状の部材である。具体的には、一対のエンド部材39は、複数の蓄電素子200をX軸方向で挟む位置に配置されている。つまり、一対のエンド部材39は、最も外側に配置された蓄電素子200の容器210の長側面211に対して重なるように配置されている。エンド部材39は、例えば絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0041】
[蓄電素子とバスバーとの接合構造]
次に、蓄電素子200と第一バスバー33との接合構造について説明する。
図4は、実施の形態に係る蓄電素子200と第一バスバー33との接合構造をY軸方向から見た平面図である。
図4では第一バスバー33を断面図で図示している。
図5は、実施の形態に係る蓄電素子200と第一バスバー33との接合構造を示す上面図である。
【0042】
図4及び
図5に示すように、第一バスバー33は、X軸方向に並んだ複数の第一接続部331と、隣り合う一対の第一接続部331の間に配置された複数の第一連結部332とを備えている。第一接続部331は、平板状に形成されており、各蓄電素子200の端子240の上面に溶接されて接続されている。具体的には、第一接続部331には、中央部に第一貫通孔333が形成されている。第一接続部331には、第一貫通孔333の外周に沿う一対の第一溶接部334が形成されている。第一溶接部334は、第一接続部331と端子240とが溶接された溶接部である。第一接続部331と端子240との溶接には、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接などを採用できる。一対の第一溶接部334は、Y軸方向で第一貫通孔333を挟むように、第一貫通孔333の近傍に配置されている。本実施の形態では、第一貫通孔333が円形であるので、第一溶接部334は第一貫通孔333の外周に沿う曲線状に形成されているが、第一溶接部334は直線状であってもよい。第一溶接部334の設置個数は1つであっても3つ以上であってもよい。第一溶接部334の設置箇所は、第一接続部331と端子240とを溶接できるのであれば如何様でもよく、第一貫通孔333の内縁上であってもよい。
【0043】
第一連結部332は、隣り合う一対の第一接続部331を連結する部位である。第一連結部332は、Y軸方向視でZ軸プラス方向に向けて凸となる凸曲線状に形成されており、そのX軸方向の両端部が一対の第一接続部331に連続している。
【0044】
[蓄電素子のリサイクルについて]
例えば、所定期間使用された蓄電装置1から各蓄電素子200を回収する際においては、全ての第一バスバー33の各第一連結部332を切断する。この切断には、レーザ切断、プラズマ切断、ガス切断などを採用できる。このとき、第一連結部332は、第一接続部331よりも突出していて蓄電素子200から離れているので、切断時の噴出物(レーザ、プラズマ、ガスなど)に蓄電素子200が晒されにくくなっている。これにより、切断時における蓄電素子200への熱影響が抑制されている。切断後には、端子240に残存した第一バスバー33の第一連結部332は、端子240の平面視(Z軸方向視)で端子240から外方に突出している。第一連結部332の切断面には切断痕が形成されている。
【0045】
その後、作業者により各蓄電素子200のリサイクル可否の検査が行われる。この検査によりリサイクル可と判断された蓄電素子200は、新たな蓄電装置1に組み込まれることになる。このとき、蓄電素子200の端子240には、切断された第一バスバー33の第一接続部331が溶接されたままとなっている。この端子240に残存した第一バスバー33は導電部材の一例である。
【0046】
新たな蓄電装置1が製造される際には、リサイクル可と判断された蓄電素子200が外装体本体11内に収容される。収容後においては、各蓄電素子200が第二バスバー34により電気的に接続される。第二バスバー34は、第一バスバー33とは異なる他のバスバーの一例である。
【0047】
図6は、実施の形態に係る蓄電素子200の端子240上に残存する第一バスバー33と、第二バスバー34との接合構造をY軸方向から見た平面図である。
図6は
図4に対応する図である。
図7は、実施の形態に係る蓄電素子200の端子240上に残存する第一バスバー33と、第二バスバー34との接合構造を示す上面図である。
図7は
図5に対応する図である。
【0048】
ここでは、リサイクル可能な2つ蓄電素子200が第二バスバー34で接続される場合を例示するが、隣り合う一対の蓄電素子のうち、一方がリサイクル可能な蓄電素子200であり、他方が新品の蓄電素子であってもよい。つまり、新たな蓄電装置1では、リサイクル可能な蓄電素子200と、新品の蓄電素子とが混在して収容される場合と、リサイクル可能な蓄電素子200のみが収容される場合とがある。新品の蓄電素子か、リサイクル可能な蓄電素子200かの判断は、端子240に第一バスバー33が残存しているか否かで行うことができる。特に、第一バスバー33には切断痕が形成されているので、リサイクルされる蓄電素子200であることを作業者が容易に判断できる。
【0049】
図6及び
図7に示すように、第二バスバー34は、X軸方向に並んだ複数の第二接続部341と、隣り合う一対の第二接続部341の間に配置された第二連結部342とを備えている。第二接続部341は、平板状に形成されており、各蓄電素子200の端子240上に残存する第一バスバー33の第一接続部331に重ねられている。第二接続部341は、対応する第一接続部331に溶接されて接続されている。第二接続部341には、第一貫通孔333に対応する位置に第二貫通孔343が形成されている。第二貫通孔343は、Y軸方向に長い長孔であり、X軸方向の幅が第一貫通孔333の直径と同じ長さになっている。Z軸方向視において第二貫通孔343内には、第一貫通孔333及び各第一溶接部334が配置されている。このため、各第一溶接部334の膨らみを避けて第二バスバー34を第一接続部331に重ねることができる。
【0050】
第二接続部341には、第二貫通孔343の外周に沿う一対の第二溶接部344が形成されている。第二溶接部344は、第二接続部341と第一接続部331とが溶接された溶接部である。第二接続部341と第一接続部331との溶接には、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接などを採用できる。第二接続部341と第一接続部331との溶接に貫通溶接が採用された場合には、第二溶接部344には、第二接続部341と第一接続部331とに加えて、端子240も溶接されることになる。
【0051】
一対の第二溶接部344は、Y軸方向で第二貫通孔343を挟むように、第二貫通孔343の近傍に配置されている。このため、端子240の平面視(Z軸方向視)では第二溶接部344が第一溶接部334から離れて配置される。本実施の形態では、第二貫通孔343が長円形であるので、第二溶接部344は第二貫通孔343の弧状部に沿う曲線状に形成されているが、第二溶接部は直線状であってもよい。第二溶接部344の設置個数は1つであっても3つ以上であってもよい。第二溶接部344の設置箇所は、第二接続部341と第一接続部331とを溶接できるのであれば如何様でもよく、第二貫通孔343の内縁上であってもよい。
【0052】
第二連結部342は、隣り合う一対の第二接続部341を連結する部位である。第二連結部342は、Y軸方向視でZ軸プラス方向に向けて凸となる凸曲線状に形成されており、そのX軸方向の両端部が一対の第二接続部341に連続している。第二連結部342は、第一接続部331に残る第一連結部332の一部を回避可能な大きさに形成されている。
【0053】
このように、リサイクル可能な蓄電素子200を備える新たな蓄電装置1の製造方法では、まず、複数の蓄電素子200の端子240同士を電気的に接続する第一バスバー33であって端子240に溶接された第一バスバー33を切断する。その後、リサイクル可能な蓄電素子200の端子240に残存している第一バスバー33(導電部材)の第一接続部331に対して、第二バスバー34を溶接する。これにより、リサイクル可能な蓄電素子200と、他の機器(本実施の形態ではリサイクル可能な他の蓄電素子200)とが第二バスバー34によって電気的に接続される。
【0054】
[効果など]
例えば、リサイクル前の状態では、蓄電装置1内で隣り合う2つの蓄電素子200の端子240同士が第一バスバー33に溶接されて電気的に接続されている。このため、蓄電素子200をリサイクルする際には、端子240と第一バスバー33との溶接を解除するには煩雑であり、第一バスバー33を切断して蓄電素子200を個片化するのが好適である。つまり、個片化した蓄電素子200のリサイクル時においては、当該蓄電素子200の端子240には、切断された第一バスバー33(導電部材)の第一接続部331が溶接されたままである。この第一接続部331に、第二バスバー34を溶接すれば、蓄電素子200のリサイクルを容易に行うことが可能である。
【0055】
端子240に溶接された第一接続部331に第二バスバー34が溶接されているので、第二バスバー34の溶接時の熱が端子240に直接伝達されない。したがって、端子240近傍の気密構造(上部ガスケット250及び下部ガスケット)に対する溶接時の熱影響を抑制できる。さらに、端子240に重なったままの第一接続部331に第二バスバー34を溶接すればよいので、溶接箇所の確保も容易である。
【0056】
端子240の平面視において第一溶接部334と第二溶接部344とが離れているので、第一接続部331に第二バスバー34を溶接する際には、第一溶接部334を避けて第二溶接部344を形成できる。したがって、第二溶接部344の形成時に第一溶接部334が邪魔となることを抑制できる。
【0057】
第二バスバー34の第二貫通孔343内に第一溶接部334が配置されているので、第一溶接部334の膨らみを避けて第二バスバー34を第一接続部331に重ねることができる。したがって、第一接続部331と第二バスバー34との溶接を安定して行うことが可能である。
【0058】
[変形例]
以下に、上記実施の形態の各変形例について説明する。以降の説明において上記実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0059】
上記実施の形態では、第二バスバー34の第二接続部341が、導電部材である第一バスバー33の第一接続部331に溶接される場合について説明した。この変形例では、第二バスバー34aが端子240に溶接される場合について説明する。
図8は、変形例に係る蓄電素子200の端子240上に残存する第一バスバー33と、第二バスバー34aとの接合構造をY軸方向から見た平面図である。
図8は
図6に対応する図である。
【0060】
図8に示すように、第二バスバー34aの各第二接続部341aは、第一接続部331の第一貫通孔333内に配置され、端子240に重ねられた状態で、当該端子240に溶接されている。第二バスバー34aの第二連結部342aは、第一接続部331及び第一連結部332を回避するように、Z軸プラス方向に段階的に突出している。この場合においても、蓄電素子200の端子240には、切断された第一バスバー33(導電部材)の第一接続部331が溶接されたままであるので、蓄電素子200のリサイクルを容易に行うことが可能である。
【0061】
[その他]
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0062】
例えば、上記実施の形態では、第一バスバー33が複数の蓄電素子200の端子240に接続されている場合を例示した。しかしながら、第一バスバー33の接続対象は、蓄電素子200と他の機器とであればよい。蓄電素子200以外の他の機器としては、BMU(Battery Management Unit)、外部端子、ヒューズ等が挙げられる。第二バスバー34の接続対象も同様である。
【0063】
上記実施の形態では、第一連結部332が第一接続部331よりも突出した第一バスバーを例示した。しかしながら、第一バスバーは接続対象同士を電気的に接続できるのであれば、その形状は如何様でもよい。第一バスバーのその他の形状としては、全体として平板な形状、貫通孔を有さない形状などが挙げられる。これは第二バスバーにおいても同様である。
【0064】
上記実施の形態では、端子240の平面視において第一溶接部334と第二溶接部344とが離れている場合を例示した。しかしながら第一溶接部と第二溶接部とは少なくとも一部が重なっていてもよい。
【0065】
上記実施の形態では、第一溶接部334が第二バスバー34の第二貫通孔343内に配置されている場合を例示した。しかしながら、第一溶接部は第二貫通孔外に配置されていてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、第二バスバー34が2つの蓄電素子20を電気的に接続する場合を例示した。しかし、第二バスバーは3つ以上の蓄電素子を電気的に接続してもよい。
【0067】
上記実施の形態に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 蓄電装置
10 外装体
11 外装体本体
12 外蓋
33 第一バスバー(導電部材)
34、34a 第二バスバー(バスバー)
39 エンド部材
91、92 外部端子
111 本体開口部
200 蓄電素子
210 容器
211 長側面
212 短側面
213 底面
220 容器本体
230 蓋
231 ガス排出弁
240 端子
250 上部ガスケット
331 第一接続部
332 第一連結部
333 第一貫通孔
334 第一溶接部
341、341a 第二接続部
342、342a 第二連結部
343 第二貫通孔(貫通孔)
344 第二溶接部