(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068741
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】吸着材の分類方法
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20240514BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240514BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240514BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240514BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20240514BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
B01J20/26 E
B01D21/01 102
B01D21/01 103
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179302
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】梶原 史洋
(72)【発明者】
【氏名】カンチャン スラン
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮栄
(72)【発明者】
【氏名】友口 勝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】湯本 徹也
(72)【発明者】
【氏名】日野 成雄
【テーマコード(参考)】
4D015
4D071
4G066
【Fターム(参考)】
4D015BA23
4D015BB05
4D015BB08
4D015BB12
4D015BB13
4D015CA17
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4D071AB14
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4D071DA15
4G066AA72B
4G066AC13B
4G066AC17B
4G066AC21B
4G066AC23B
4G066AC26B
4G066CA46
4G066CA47
4G066DA08
(57)【要約】
【課題】有害重金属が吸着された吸着材の廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らす。
【解決手段】有害重金属を吸着した吸着材を、有害重金属の濃度が低い低濃度物と、有害重金属の濃度が高い高濃度物と、に分類する方法であって、水のみ又はアルカリ洗剤と水との組み合わせで吸着材を洗浄する洗浄工程と、洗浄済み吸着材から水分を分離する第1固液分離工程と、第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、第1固液分離工程にて分離された水分中の微細産物を高濃度物に分類する分類工程と、を有する、吸着材の分類方法及びその関連技術を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害重金属を吸着した吸着材を、有害重金属の濃度が低い低濃度物と、有害重金属の濃度が高い高濃度物と、に分類する方法であって、
洗浄液で前記吸着材を洗浄して粗大産物及び微細産物を形成する洗浄工程と、
微細産物を含む洗浄后液を分離する第1固液分離工程と、
前記第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、前記第1固液分離工程にて分離された洗浄后液中の微細産物を高濃度物に分類する分類工程と、
を有する、吸着材の分類方法。
【請求項2】
前記有害重金属は、水銀、ヒ素及びアンチモンの少なくともいずれかである、請求項1に記載の吸着材の分類方法。
【請求項3】
前記有害重金属は水銀であり、
前記低濃度物と前記高濃度物とを分ける水銀濃度の閾値は1000ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内の一つの数値である、請求項1に記載の吸着材の分類方法。
【請求項4】
前記吸着材は粒状の触媒であり、
前記第1固液分離工程は、洗浄后液、粗大産物及び微細産物を篩にて分級する湿式篩選別工程であり、
前記分類工程において、
前記粗大産物は、前記湿式篩選別工程にて篩上に残る粗大な洗浄済み触媒であり、
前記微細産物は、前記湿式篩選別工程にて篩下に落下する微細な洗浄済み触媒及び触媒から脱離した有害重金属の少なくともいずれかを含む、請求項3に記載の吸着材の分類方法。
【請求項5】
前記触媒の主素材は、銅又はセラミックスである、請求項4に記載の吸着材の分類方法。
【請求項6】
前記触媒の平均粒径は1~10mmであり、
前記篩の目開きは1.0~3.0mmである、請求項4に記載の吸着材の分類方法。
【請求項7】
前記吸着材はフィルターであり、
前記第1固液分離工程前に前記フィルターを破砕する破砕工程を有し、
前記第1固液分離工程は、洗浄済みフィルターから水分を搾り取る脱水工程であり、
前記分類工程において、
前記粗大産物は、前記脱水工程にて水分を搾り取られた後の粗大な洗浄済みフィルターであり、
前記微細産物は、前記脱水工程にて搾り取られた水分中の微細な洗浄済みフィルター及びフィルターから脱離した有害重金属の少なくともいずれかを含む、請求項3に記載の吸着材の分類方法。
【請求項8】
前記フィルターの主素材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、及びセルロースエステルの少なくとも1種である、請求項7に記載の吸着材の分類方法。
【請求項9】
前記洗浄工程前の前記吸着材に対する前記低濃度物の割合は70~99質量%であり、
前記洗浄工程前の前記吸着材に対する前記高濃度物の割合は1~30質量%である、請求項4又は7に記載の吸着材の分類方法。
【請求項10】
前記第1固液分離工程では、前記洗浄工程の洗浄后液も含んだ状態で洗浄済み吸着材から水分を分離する、請求項4又は7に記載の吸着材の分類方法。
【請求項11】
前記第1固液分離工程にて分離される水分に対して1回以上固液分離処理を行う中間固液分離工程と、
前記中間固液分離工程中に分離される水分及び前記中間固液分離工程を経て分離される水分の少なくともいずれかに凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、
前記中間固液分離工程及び凝集剤添加工程を経て得られる水分に対して固液分離処理を行う最終固液分離工程と、
を有し、
前記中間固液分離工程で得られる微細産物及び前記最終固液分離工程で得られる微細産物を前記高濃度物に加える、請求項4又は7に記載の吸着材の分類方法。
【請求項12】
前記凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PACl)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、水道用ポリシリカ鉄(PSI)、ポリマー系凝集剤、及びキレート剤から選ばれる任意の1種以上からなる、請求項11に記載の吸着材の分類方法。
【請求項13】
前記高濃度物において吸着材の素材が50質量%以上を占め、
前記低濃度物における吸着材の素材の質量%は、前記高濃度物における吸着材の素材の質量%よりも大きい、請求項4又は7に記載の吸着材の分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着材の分類方法に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃水等に含まれる重金属は、キレート化剤を用いた吸着法で処理することが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
吸着法により重金属イオンを除去する方法として、ゼオライトなどの酸化物吸着材を用いることが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-309392号公報
【特許文献2】特開2005-28245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バーゼル条約に基づく、有害重金属が吸着された吸着材の輸出入の規制は、各国において強化され続けている。
【0006】
また、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、貨物の輸送事情は混乱しており、迅速確実な輸送が不可能な状況である。更に、紛争による国際情勢の不安定さがその混乱を増大させている。
【0007】
バーゼル条約に基づく規制強化及び前記混乱の増大により、輸送費は増加し続けている。
【0008】
従来、有害重金属が吸着された吸着材は廃棄物であり、前記吸着材(ひいては前記有害重金属)を処分可能な地域に集められる。この「処分」とは、吸着材からの有害重金属の分離回収、或いは、最終処分場への吸着材の埋設、等々を指す。
【0009】
かかる廃棄物は、大抵の場合、車両や船舶を用いた輸送が採用される。前記の通り、輸送費は増加し続けていることに加え、迅速確実な輸送も不安定な昨今である。そうなると、前記輸送の混乱の影響を受ける輸送量を減らすのが得策である。
また、廃棄物は、含有する有害重金属の量や種類によって、処分の取扱いが変わる。
【0010】
本発明の課題は、有害重金属が吸着された吸着材の廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
有害重金属が吸着された吸着材の廃棄物の輸送量を減らすには、有害重金属が吸着された吸着材が廃棄された地域で前記吸着材を再利用する量を増やすことが得策であると、本発明者らは知見した。その一方、前記吸着材が廃棄された地域では処理できないとして輸送される場合でも、輸送前に処理を施すことで再利用できる部分を分離回収できることがある。
【0012】
そこで、本発明者らは前記輸送前の処理について鋭意検討した。吸着材が廃棄された地域で前記吸着材を再利用する量を増やすには、有害重金属の濃度が、その地域で再利用な濃度となればよい。それを実現するためには、有害重金属の濃度が所定濃度以下である吸着材を吸着材全体からピックアップすればよいことを本発明者らは知見した。
【0013】
なお、特許文献1の有害重金属の吸着後のキレート樹脂から有害重金属を分離して再使用する技術を応用することも考えられる。但し、前記再使用のためには、吸着した重金属イオンの分離処理、吸着能力を回復するための再生処理を行わなければならない。そもそも、特許文献1に記載のように、有害重金属のみを選択的に分離するには費用に加えて時間がかかる。これは、前記リスクヘッジの前提となる前記迅速確実な輸送を更に困難にする。
【0014】
また、特許文献2で使用されるゼオライトからなる吸着材では、他の種類の吸着材で必要となるpH調整は不要であるが、吸着材自体が高価であるという問題があるし、そもそも特許文献2に記載の吸着材は本発明の課題に対応していない。
【0015】
そこで、本発明者らは更に鋭意検討を加え、その結果、有害重金属が吸着された吸着材に対し、洗浄工程と第1固液分離工程とを行うことにより、有害重金属が吸着された吸着材を、ピックアップ対象である所定濃度以下の吸着材と、それ以外の吸着材とに容易に低コストで分類するという手法を想到した。
【0016】
第1の発明は、
有害重金属を吸着した吸着材を、有害重金属の濃度が低い低濃度物と、有害重金属の濃度が高い高濃度物と、に分類する方法であって、
洗浄液で前記吸着材を洗浄して粗大産物及び微細産物を形成する洗浄工程と、
微細産物を含む洗浄后液を分離する第1固液分離工程と、
前記第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、前記第1固液分離工程にて分離された洗浄后液中の微細産物を高濃度物に分類する分類工程と、
を有する、吸着材の分類方法である。
【0017】
第2の発明は、
前記有害重金属は、水銀、ヒ素及びアンチモンの少なくともいずれかである、第1の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0018】
第3の発明は、
前記有害重金属は水銀であり、
前記低濃度物と前記高濃度物とを分ける水銀濃度の閾値は1000ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内の一つの数値である、第1の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0019】
第4の発明は、
前記吸着材は粒状の触媒であり、
前記第1固液分離工程は、洗浄后液、粗大産物及び微細産物を篩にて分級する湿式篩選別工程であり、
前記分類工程において、
前記粗大産物は、前記湿式篩選別工程にて篩上に残る粗大な洗浄済み触媒であり、
前記微細産物は、前記湿式篩選別工程にて篩下に落下する微細な洗浄済み触媒及び触媒から脱離した有害重金属の少なくともいずれかを含む、第3の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0020】
第5の発明は、
前記触媒の主素材は、銅又はセラミックスである、第4の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0021】
第6の発明は、
前記触媒の平均粒径は1~10mmであり、
前記篩の目開きは1.0~3.0mmである、第4の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0022】
第7の発明は、
前記吸着材はフィルターであり、
前記第1固液分離工程前に前記フィルターを破砕する破砕工程を有し、
前記第1固液分離工程は、洗浄済みフィルターから水分を搾り取る脱水工程であり、
前記分類工程において、
前記粗大産物は、前記脱水工程にて水分を搾り取られた後の粗大な洗浄済みフィルターであり、
前記微細産物は、前記脱水工程にて搾り取られた水分中の微細な洗浄済みフィルター及びフィルターから脱離した有害重金属の少なくともいずれかを含む、第3の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0023】
第8の発明は、
前記フィルターの主素材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、及びセルロースエステルの少なくとも1種である、第7の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0024】
第9の発明は、
前記洗浄工程前の前記吸着材に対する前記低濃度物の割合は70~99質量%であり、
前記洗浄工程前の前記吸着材に対する前記高濃度物の割合は1~30質量%である、第4又は第7の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0025】
第10の発明は、
前記第1固液分離工程では、前記洗浄工程の洗浄后液も含んだ状態で洗浄済み吸着材から水分を分離する、第4又は第7の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0026】
第11の発明は、
前記第1固液分離工程にて分離される水分に対して1回以上固液分離処理を行う中間固液分離工程と、
前記中間固液分離工程中に分離される水分及び前記中間固液分離工程を経て分離される水分の少なくともいずれかに凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、
前記中間固液分離工程及び凝集剤添加工程を経て得られる水分に対して固液分離処理を行う最終固液分離工程と、
を有し、
前記中間固液分離工程で得られる微細産物及び前記最終固液分離工程で得られる微細産物を前記高濃度物に加える、第4又は第7の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0027】
第12の発明は、
前記凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PACl)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、水道用ポリシリカ鉄(PSI)、ポリマー系凝集剤、及びキレート剤から選ばれる任意の1種以上からなる、第11の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【0028】
第13の発明は、
前記高濃度物において吸着材の素材が50質量%以上を占め、
前記低濃度物における吸着材の素材の質量%は、前記高濃度物における吸着材の素材の質量%よりも大きい、第4又は第7の発明に記載の吸着材の分類方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、有害重金属が吸着された吸着材の廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らす。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本実施形態の吸着材の分類方法の態様1(触媒)を説明するためのフロー図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の態様1(触媒)の洗浄工程の前(a)と後(b)の吸着材の状態を示すイメージ図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の態様1(触媒)の湿式篩選別工程の前(a)と後(b)のイメージ図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の吸着材の分類方法の態様2(フィルター)を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態に係る吸着材の分類方法について説明する。「~」は所定の数値以上且つ所定の数値以下を指す。
【0032】
[有害重金属を吸着した吸着材]
本実施形態における「有害重金属を吸着した吸着材」の具体的な種類(例えば廃棄物となる前の用途)には本発明は限定されない。以下、各項目について例示する。
【0033】
前記有害重金属は、人体に有害な重金属であれば限定は無いが、一例を挙げると、水銀、ヒ素及びアンチモンの少なくともいずれかである。本実施形態では水銀の場合を例示する。
【0034】
有害重金属の1つである水銀は、ほとんどの天然ガス田に、単体(金属)、有機化合物及び無機化合物として10ppb~1ppmの濃度で存在する。水銀は毒性があり、主にアルミニウム製の機器を腐食させるため、極微量なレベルまでの水銀除去が要求される。このような天然ガスからの水銀除去は、例えば、吸着作用のある触媒又はフィルターを用いて行われている。
【0035】
以下、有害重金属を吸着した吸着材が触媒である場合と、当該吸着材がフィルターである場合とで分けて説明する。
【0036】
[態様1:吸着材が触媒である場合]
触媒自体の素材には本発明は限定されない。一例を挙げると、触媒は、担体と触媒粒子により構成される。担体は銅又はセラミックスからなる。その関係上、触媒の主素材は銅又はセラミックスである。本明細書における「主素材」とは、例えば触媒を構成する化合物(金属元素含む)のうち最も多くの質量%を占める(好適には過半数を超える)ものを指す。本明細書の別の用語「主成分」についても同様の定義付けとする。
【0037】
触媒の具体的な形状には限定は無いが、例えば粒状(特に顆粒状)が挙げられる。平均粒径にも限定は無いが、例えば平均粒径が1~10mm程度であってもよい。平均粒径の算出方法には限定は無く、複数の篩を用いて大体の平均粒径を算出してもよい。また、触媒の各メーカーが製品情報として公表している平均粒径の値と、処理対象の触媒の総量における各メーカー製の触媒の量の大体の割合とから、廃棄物の触媒の平均粒径を算出してもよい。また、平均粒径が上記範囲になく後掲の湿式篩選別工程で扱いにくい粒径の場合、上記平均粒径の範囲内に設定すべく、後掲の洗浄工程の前に別途、触媒に対する破砕工程を行っても構わない。破砕工程の具体的手法には限定は無い。
【0038】
以下、本実施形態に係る吸着材が触媒である場合の分類方法について、フロー図である
図1を参照しながら説明する。後掲の
図2、
図3中の符号1は触媒を指し、符号2は篩を指し、符号3は低濃度物を指し、符号4は高濃度物を指し、Hgは水銀を指すが、符号は以降省略する。
【0039】
<洗浄工程>
本実施形態においては、水銀を吸着した触媒を洗浄液で洗浄して粗大産物及び微細産物を形成する。本工程により、触媒に吸着した水銀粒子を洗い落とす(
図2参照)。その結果、水銀粒子を吸着した触媒の一つの塊に着目した時、前記塊において水銀濃度は低下する。今回の発明において処理対象となる触媒を構成するほぼ全ての前記塊において、同様の水銀濃度の低下が起きる。本工程により、最終的に、水銀濃度が低い低濃度物の量を増やせる。つまり、本発明の主旨である触媒の分類において、低濃度物の割合を増やせる。一例としては、本工程前の触媒に含有される水銀濃度が約70000ppmであるのに対し、本工程後の洗浄済み触媒に含有される水銀濃度は約20000~30000ppmとなる。
【0040】
本明細書の「洗浄済み触媒(洗浄済み吸着材)」は、洗浄工程中の触媒(吸着材)も含む。
【0041】
また、水のみ又はアルカリ洗剤と水との組み合わせで洗浄することにより湿式処理となり、引き続き後掲の篩選別工程が湿式で行われることと合わせ、触媒から脱離する水銀粒子が空中に舞うことを防げる。
【0042】
洗浄工程の具体的な手法には限定は無い。一例としては、前記洗浄工程は回転ドラム式洗浄機にて行ってもよい。回転ドラム式洗浄機の具体例は公知のドラムスクラバーが挙げられる。ドラムスクラバーを使用することにより、触媒同士がこすり合う。このこすり合いにより、吸着していた水銀粒子が効率的に脱離する。この水銀粒子は、元は触媒に吸着していたことから、触媒(吸着材)脱離物と本明細書ではみなす。
【0043】
ドラムスクラバーを使用することにより触媒は適度に解(ほぐ)れる。そのため、ドラムスクラバーを使用する場合、破砕工程を別途設けなくとも済む場合が多い。その一方、触媒の種類によっては容易に解れない場合もあり、その場合は、別途、水と触媒とを撹拌して解す工程を追加してもよい。
【0044】
洗浄工程で使用する洗浄液はアルカリ洗剤と水との組み合わせであるのが好ましい。アルカリ洗剤には界面活性剤が含有されている。この界面活性剤により、触媒に吸着した水銀粒子を触媒から効果的に脱離させられる。アルカリ洗剤の組成には本発明は限定されない。アルカリ洗剤の一例としては、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを主成分とする洗剤が挙げられる。アルカリ洗剤のpHはアルカリ性(例えばpH>7)であってもよいが、強アルカリ(例えば9≦pH≦11)であれば触媒からの水銀粒子の脱離を更に効果的に行える。
【0045】
その一方、洗浄液は単純に水を使用する場合であっても、前記ドラムスクラバーを使用して触媒同士をこすり合わせることにより、触媒に吸着した水銀粒子を触媒から効果的に脱離させられる。水のpHは例えば6~7である。
【0046】
触媒の種類に応じて本工程の具体的手法を選択してもよい。
【0047】
例えば、顆粒状の触媒を処理する場合、触媒の顆粒同士が互いに容易にこすれ合うので、ドラムスクラバーの代わりに振とう装置を採用してもよい。その場合、振とう時間は例えば30分間としてもよい。
【0048】
なお、本工程の洗浄后液に含有される微細産物(具体的には吸着されていた水銀粒子)を回収して、後掲の湿式篩選別工程で篩下の水分中から得られる高濃度物に加えてもよい。また、本工程の洗浄后液に含有される微細産物全部を当該高濃度物に加えれば、手間が減るという点で好ましい。この微細産物は、前記湿式篩選別工程にて水分と共に篩下に落下する微細な洗浄済み触媒及び触媒からの脱離物を含む。その一方、本工程の洗浄后液に含有される粗大産物における水銀濃度は比較的低いので、当該粗大な洗浄済み触媒は後掲の低濃度物に加えてもよい。
【0049】
<第1固液分離工程(湿式篩選別工程)>
本工程では、洗浄済み触媒を湿式にて分級する。この分級により、水銀を吸着した触媒を、水銀濃度が低い粗大な洗浄済み触媒と、水銀濃度が高い微細産物を含む洗浄后液と、に分類する。
【0050】
先の洗浄工程により、粗大な洗浄済み触媒においてはほぼ全ての触媒の塊において水銀濃度が低下している。そのうえで、湿式篩選別工程にて触媒の塊が分級基準値より大きいものと分級基準値より小さいものに分かれる。分級基準値より小さいものは水分と共に篩下に落下する。触媒の塊が大きければ、それだけ、一つの塊で見たとき、水銀濃度(具体的には質量%)は低くなる(
図3参照)。本発明はこの現象を利用し、創出されている。
【0051】
つまり、本工程にて得られた粗大な洗浄済み触媒を前記低濃度物に分類する。逆に、本工程にて得られた微細な洗浄済み触媒を前記高濃度物に分類する。前記粗大な洗浄済み触媒のことを粗粒ともいい、前記微細な洗浄済み触媒のことを細粒ともいう。
【0052】
本実施形態においては、前記低濃度物と前記高濃度物とを分ける水銀濃度の閾値は1000ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内の一つの数値を例示し、更に具体的には20000ppmを例示する。これは一例であり、後掲の実施例のように18000ppmを採用しても構わない。
【0053】
前記第1固液分離工程では、前記洗浄工程の洗浄后液も含んだ状態で洗浄済み触媒から水分を分離してもよい。これにより、洗浄后液中の微細産物(触媒脱離物である水銀粒子、及び、場合によっては非常に微細な洗浄済み触媒)に対しても第1固液分離工程を行える。仮に、洗浄后液中の微細産物に対して別途固液分離処理を行うと二度手間になるところ、その手間が省ける。
【0054】
本実施形態では水銀を吸着した触媒を低濃度物と高濃度物と2つに分類したが、前記低濃度物内において更に低濃度、高濃度に分類することは妨げない。同様に、前記高濃度物内において更に低濃度、高濃度に分類することは妨げない。いずれにせよ、水銀濃度の基準値が20000ppmの地域内では、前記低濃度物を処理可能である。
【0055】
前記洗浄工程前の前記触媒に対する前記低濃度物の割合は70~99質量%であり、前記洗浄工程前の前記触媒に対する前記高濃度物の割合は1~30質量%であってもよい。
【0056】
なお、この質量割合は水分を含む値である。本来ならば水分を除いた質量割合を算出するのが正確ではあるが、そのような算出は本発明の技術分野では現実的ではない。その理由は、本実施形態において処理対象となる触媒は廃棄物であり、厳密に水分管理(例えば大気非暴露管理)が行われているわけではない。本実施形態において処理対象となる触媒の含水率は、大抵の場合、15~20質量%である。大気雰囲気下では、廃棄物である触媒は、本実施形態の適用前であっても適用後であっても、別途乾燥処理を行わない限り、含水率は15~20質量%である。本明細書で規定した質量割合の数値範囲はこのことを加味したうえでの数値範囲である。
【0057】
触媒の処理の手法には限定は無いが、一例としては低濃度物をセメント原料とすることが挙げられる。本明細書の「再利用可能なもの」の一例が、セメント原料となる低濃度物である。
【0058】
前記高濃度物において触媒の素材が50質量%以上を占め、前記低濃度物における触媒の素材の質量%は、前記高濃度物における触媒の素材の質量%よりも大きくてもよい。この規定により、態様1はあくまで触媒の分類方法に係ることが明確になり、単に有害重金属を触媒から回収する技術とは一線を画すことが明確になる。なお、一例としては前記低濃度物においてフィルターの素材が70質量%以上である。
【0059】
本工程の具体的手法には限定は無く、前記分級基準値の設定手法にも限定は無いが、以下、一例を挙げて説明する。
【0060】
湿式篩選別工程の篩上に残った前記粗大な洗浄済み触媒を低濃度物に分類し、篩下に落下した微細産物(微細な洗浄済み触媒及び触媒から脱離した有害重金属)を高濃度物に分類する。
【0061】
前記篩の目開きは1.0~3.0mmであってもよい。一例を挙げると2.0mmである。前記篩は、振動コンベアの構成の一部である。具体的には、当該篩を床部としてその床部の上を洗浄済み触媒が通過する。その際、洗浄済み触媒は、振動により前方に搬送される。その搬送の際に、振動コンベアの篩上の粗大産物である低濃度物は前方に搬送される一方、高濃度物は水分と共に篩である床部から落下する。
【0062】
前記湿式篩選別工程での篩下への落下物のうち微細産物(言い換えると固形分全部)を高濃度物と分類する。その際、前記湿式篩選別工程での篩下への落下物に対して1回だけ固液分離工程を行っても構わない。その一方、前記落下物に対して以下の処理を行っても構わない。
【0063】
前記湿式篩選別工程での篩下への落下物から前記微細な洗浄済み触媒を高濃度物に分離する第2固液分離工程(例えばハイメッシュセパレータを使用)を行ってもよい。
【0064】
前記第2固液分離工程を経た前記落下物である水分に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、前記凝集剤添加工程を経た前記水分に対して固液分離処理を行う第3固液分離工程(例えばフィルタープレスを使用)とを行ってもよい。
【0065】
そして、前記第3固液分離工程で得られた微細産物を前記高濃度物に加えても構わない。
【0066】
前記第2固液分離工程以降の処理は、例えば特開2001-87739号公報に記載の技術を採用して行っても構わない。
【0067】
前記凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PACl)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、水道用ポリシリカ鉄(PSI)、ポリマー系凝集剤、及びキレート剤(例えば硫黄含有(S系))から選ばれる任意の1種以上からなってもよい。
【0068】
前記第2、第3固液分離工程では公知の手法の固液分離工程を採用してもよい。例えば、ろ過、遠心分離等を採用すればよい。
【0069】
前記第2固液分離工程は、厳密な固液分離でなくともよい。その後の凝集剤添加工程及び第3固液分離工程にて最終的には微細産物は分離されるためである。
【0070】
前記第2固液分離工程は、前記第1固液分離工程にて分離された水分中から洗浄済み吸着材に対して1回以上固液分離処理を行う中間固液分離工程とも言う。
前記第3固液分離は、前記凝集剤添加工程を経て分離される水分に対して固液分離処理を行う最終固液分離工程とも言う。
最終的に、前記中間固液分離工程及び前記最終固液分離工程で得られた微細産物を前記高濃度物に分類する。
後掲の実施例2(フィルター)に記載のように、中間固液分離工程中に分離される水分に凝集剤(実施例2だと硫酸アルミニウム)を添加する凝集剤添加工程を行ってもよい。そして、最終固液分離工程では、中間固液分離工程及び凝集剤添加工程を経て分離される水分に対して固液分離を行ってもよい。
【0071】
例えば、前記洗浄工程の洗浄后液に含まれる水銀粒子と、前記第3固液分離工程で得られた微細産物とを前記高濃度物に加えたうえで得られる高濃度物を処理可能な地域で処分することになる。但し、本実施形態に記載の手法のおかげで、水銀を吸着した触媒の大半が洗浄工程により低濃度物へと変化しており、しかもこの低濃度物は湿式篩選別工程により篩上にピックアップ可能である。その分、高濃度物における水銀濃度は高くなる。その一方、本実施形態により、高濃度物の量自体は減っている。つまり、有害重金属が吸着された触媒の廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らせる。具体的には、吸着材が廃棄された地域の外への吸着材の輸送量は減らせるため、前記混乱に伴う輸送のリスクは軽減できる。
【0072】
<分類工程>
上記各工程により、廃棄物である触媒を低濃度物と高濃度物とに分類可能となる。それを受け、本実施形態における分類工程では、前記第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、前記第1固液分離工程にて分離された水分中の微細産物を高濃度物に分類する。その際、高濃度物への分類に関し、前記洗浄工程の洗浄后液中の微細産物のうち少なくとも触媒(吸着材)脱離物である水銀粒子も高濃度物としてまとめて分類してもよい。
【0073】
本実施形態における分類工程は、低濃度物を低濃度物としてラベリングし、高濃度物を高濃度物としてラベリングすることを指す。この「ラベリング」とは、物理的なラベリングでもデータ上のラベリングでもよい。例えば、低濃度物で構成されるブロックに対して、低濃度物である旨(例:当該地域内処理予定の旨の記載)を記載した紙やシールを貼り付けても構わないし、低濃度物で構成されるブロックをデータ上で低濃度物であることを管理しても構わない。
【0074】
[態様2:吸着材がフィルターである場合]
以下、有害重金属を吸着した吸着材がフィルターである場合について説明する。以下の説明で記載が無い内容は、上記態様1で述べた内容と同内容又は同手法を採用してもよい。
【0075】
フィルター自体の素材には本発明は限定されない。一例を挙げると、前記フィルターの主素材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、及びセルロースエステルの少なくとも1種である。
【0076】
<破砕工程>
フィルターの具体的な形状には限定は無いが、触媒とは異なりフィルターの最初の形状は顆粒状ではない。そのため、後掲の洗浄工程前に前記フィルターを破砕する破砕工程を有するのが好ましい。
【0077】
破砕工程にて採用する装置には限定は無く、公知の破砕機を使用すればよい。本実施形態では、後掲の洗浄工程と同時に破砕を行える湿式破砕機を使用する場合を例示する。その一方、破砕工程を行った後に洗浄工程を行う場合を本発明は排除しない。
【0078】
破砕工程後のフィルターの平均粒径にも限定は無いが、例えば平均粒径が20~150mm程度であってもよい。平均粒径の算出方法には限定は無く、複数の篩を用いて大体の平均粒径を算出してもよい。
【0079】
<洗浄工程>
本実施形態においては、水銀を吸着した破砕済みフィルターを洗浄液で洗浄して粗大産物及び微細産物を形成する。この洗浄水には上述と同様に水のみ又はアルカリ洗剤と水との組み合わせが使用できる。本工程により、破砕済みフィルターに吸着された水銀粒子を洗い落とす。その結果、水銀を吸着した破砕済みフィルターの一つの塊に着目した時、前記粗大産物において水銀濃度は低下する。今回の発明において処理対象となる破砕済みフィルターを構成するほぼ全ての前記粗大産物において、同様の水銀濃度の低下が起きる。本工程により、最終的に、水銀濃度が低い低濃度物の量を増やせる。つまり、低濃度物の割合を増やせる。一例としては、本工程前のフィルターに含有される水銀濃度が約70000ppmであるのに対し、本工程後の破砕済み且つ洗浄済みフィルターに含有される水銀濃度は約20000~30000ppmとなる。
【0080】
前記第1固液分離工程では、前記洗浄工程の洗浄后液も含んだ状態で破砕済み且つ洗浄済みフィルターから水分を分離してもよい。これにより、洗浄后液中の微細産物(フィルター脱離物である水銀粒子、及び、場合によっては非常に微細な洗浄済みフィルター)に対しても第1固液分離工程を行える。仮に、洗浄后液中の微細産物に対して別途固液分離処理を行うと二度手間になるところ、その手間が省ける。
【0081】
本明細書の「破砕済み且つ洗浄済みフィルター」は、洗浄工程中の破砕済みフィルター(吸着材)も含む。
【0082】
洗浄工程の具体的な手法には限定は無い。一例としては、前記洗浄工程は湿式破砕機にて行ってもよい。湿式破砕機を使用することにより、破砕済みフィルター同士がこすり合う。このこすり合いにより、吸着されていた水銀粒子が効率的に脱離する。この水銀粒子をフィルター脱離物とも言う。
【0083】
フィルターの種類に応じて、先の破砕工程及び本工程の具体的手法を選択してもよい。
【0084】
なお、本工程の洗浄后液に含有される微細産物、言い換えればフィルター脱離物(具体的には吸着されていた水銀粒子)を回収して、後掲の脱水工程で搾り取られた水分中から得られる破砕済み且つ洗浄済みフィルター(高濃度物)に加えてもよい。また、本工程の洗浄后液に含有される微細産物全部を当該高濃度物に加えれば、手間が減るという点で非常に好ましい。この微細産物は、後掲の脱水工程で搾り取られた水分中の微細な破砕済み且つ洗浄済みフィルター及び該フィルターからの脱離物の少なくともいずれかを含む。その一方、本工程の洗浄后液に含有される破砕済み且つ洗浄済みフィルターのうち粗大産物における水銀濃度は比較的低いので、当該粗大産物は後掲の低濃度物に加えてもよい。
【0085】
<第1固液分離工程(脱水工程)>
本工程では、洗浄済みフィルターから水分を搾り取る。最終的に、水分を搾り取られた後の粗大産物が低濃度物に分類され、搾り取られた水分中の微細産物(言い換えると固形分全部)が高濃度物に分類される。
【0086】
先の洗浄工程により、破砕済み且つ洗浄済みフィルターにおいてはほぼ全ての破砕済みフィルターの粗大産物において水銀濃度が低下している。そのうえで、脱水工程にて、水銀濃度が高い微細な洗浄済みフィルターは、搾り取られる水分と共に落下する。その一方、粗大な洗浄済みフィルターは、水分を搾り取られたあとの粗大産物となる。
【0087】
この作業により、水銀濃度が低濃度である破砕済み且つ洗浄済みフィルターを破砕済み且つ洗浄済みフィルター全体からピックアップできる。その結果、有害重金属が吸着されたフィルターの廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らせる。
【0088】
具体的には、このピックアップにより低濃度物に分類されたフィルターを、水銀粒子を吸着したフィルターが廃棄された地域内での処理可能濃度に設定できる。その結果、水銀が吸着されたフィルターが廃棄された地域内で前記フィルターを処理する量を増やすことが可能となり、最終的に、水銀粒子が吸着されたフィルターに関し、当該地域外に輸送する量を減らせる。
【0089】
本実施形態においては、前記低濃度物と前記高濃度物とを分ける水銀濃度の閾値は1000ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内の一つの数値を例示し、更に具体的には20000ppmを例示する。
【0090】
本実施形態では水銀粒子が吸着したフィルターを低濃度物と高濃度物と2つに分類したが、前記低濃度物内において更に低濃度、高濃度に分類することは妨げない。同様に、前記高濃度物内において更に低濃度、高濃度に分類することは妨げない。いずれにせよ、水銀濃度の基準値が20000ppmの地域内では、前記低濃度物を処理可能である。
【0091】
前記洗浄工程前の前記フィルターに対する前記低濃度物の割合は70~99質量%であり、前記洗浄工程前の前記破砕済みフィルターに対する前記高濃度物の割合は1~30質量%であってもよい。
【0092】
前記高濃度物においてフィルターの素材が50質量%以上を占め、且つ、前記低濃度物におけるフィルターの素材の質量%は、前記高濃度物におけるフィルターの素材の質量%よりも大きくてもよい。この規定により、態様2はあくまでフィルターの分類方法に係ることが明確になり、単に有害重金属をフィルターから回収する技術とは一線を画すことが明確になる。なお、一例としては前記低濃度物においてフィルターの素材が70質量%以上である。
【0093】
本工程の具体的手法には限定は無く、前記脱水工程で採用する様式にも限定は無い。本実施形態ではスクリュープレスを採用した場合を例示するが、それ以外の、水分を搾り取る様式(例えばプレス式)の脱水工程を採用しても構わない。いずれにせよ、高濃度の微細な破砕済み且つ洗浄済みフィルター及びフィルター脱離物は水分(洗浄后液含む)と共に落下する。
【0094】
前記脱水工程にて搾り取った水分中の固形分全体を高濃度フィルターと分類しても構わない。その一方、搾り取った水分に対して別途処理を行っても構わない。具体的には、態様1で述べた第2固液分離工程、凝集剤添加工程、第3固液分離工程を行っても構わない。
【0095】
<分類工程>
上記各工程により、廃棄物であるフィルターを低濃度物と高濃度物とに分類可能となる。それを受け、本実施形態における分類工程では、前記第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、前記第1固液分離工程にて分離された水分中の微細産物を高濃度物に分類する。その際、高濃度物への分類に関し、前記洗浄工程の洗浄后液中の微細産物のうち少なくともフィルター(吸着材)脱離物である水銀粒子も高濃度物としてまとめて分類してもよい。
【0096】
本実施形態における分類工程は、低濃度物を低濃度物としてラベリングし、高濃度物を高濃度物としてラベリングすることを指す。この「ラベリング」とは、物理的なラベリングでもデータ上のラベリングでもよい。例えば、低濃度物で構成されるブロックに対して、低濃度物である旨(例:当該地域内処理予定等の記載)を記載した紙やシールを貼り付けても構わないし、低濃度物で構成されるブロックをデータ上で低濃度物であることを管理しても構わない。
【0097】
[小括]
態様1にしても態様2にしても、前記第1固液分離工程にて得られた粗大産物を低濃度物に分類し、且つ、前記第1固液分離工程にて分離された水分中の微細産物を高濃度物に分類する分類工程を行う。
【0098】
この微細産物は、態様1だと、前記湿式篩選別工程にて水分と共に篩下に落下する微細な洗浄済み吸着材及び吸着材からの脱離物の少なくともいずれか(好適には両方)を含み、態様2だと、前記脱水工程にて搾り取られた水分中の洗浄済み吸着材及び吸着材からの脱離物の少なくともいずれか(好適には両方)を含む。
洗浄工程、第1固液分離工程及び分類工程(更には他の好適な工程)により、水銀濃度が低濃度である触媒又はフィルターを吸着材全体からピックアップできる。その結果、有害重金属が吸着された吸着材の廃棄物に関し、廃棄物を所望の濃度ごとに分けて、再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるものをできる限り減らせる。
【0099】
具体的には、このピックアップにより低濃度物吸着材に分類された吸着材を、容易且つ低コストに、水銀粒子が吸着された吸着材が廃棄された地域内での処理可能濃度に設定できる。その結果、水銀粒子が吸着された吸着材が廃棄された地域内で前記吸着材を処理する量を増やすことが可能となり、最終的に、水銀粒子が吸着された吸着材に関し、当該地域外に輸送する量を減らせる。
【0100】
[その他]
本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0101】
触媒又はフィルターの当該地域内処理の手法には限定は無いが、一例としては低濃度物をセメント原料とすることが挙げられる。なお、触媒における低濃度物とフィルターにおける低濃度物とをまとめて、処理可能な地域で処理しても構わない。同様に、触媒における高濃度物とフィルターにおける高濃度物とをまとめて、処理可能な地域で処理しても構わない。
【0102】
本実施形態によれば、処理対象となる吸着材の大半を、吸着材が廃棄された地域内で処理可能である。ちなみに、本発明が創出される前は、数値としては、廃棄物である吸着材の5質量%程度しか当該地域内処理できず、95質量%が地域外処分の対象であった。ちなみに、吸着材が触媒の場合、当該触媒を封入する容器の端部は、明らかに水銀を含まないため、当該地域内処理の対象となる。吸着材がフィルターの場合、フィルターの端部は、明らかに水銀を含まないため、当該地域内処理の対象となる。
【0103】
それ以前の問題として、本発明の技術分野においては、従来の発想だと、そのまま処理可能な地域で処理に回されるはずの吸着材を、本実施形態のようにわざわざ洗浄する理由が無い。洗浄を経ると、洗浄后液に水銀粒子が混入することになり、手間が増える。その一方、本発明の技術的思想は、(例えばセメント原料として)再利用可能なものをより多く回収し、最終処分されるもの(水銀を高濃度で含む吸着材)をできる限り減らす、という課題の解決に基づいている。この課題を解決すべく、上記洗浄工程、第1固液分離工程を含め、上記各工程を実施する。
【0104】
第1固液分離工程として、態様1(触媒)では湿式篩選別工程を採用し、態様2(フィルター)では脱水工程を採用したが、両者とも、水銀を高濃度で含む微細な吸着材を水分と共に、低濃度物から分離する(水分を落下させる)という意図がある。吸着材が小さければ小さいほど、水と共に移動することを、本発明では利用している。そのため、両者を含む表現として水分脱液(又は水分落下)工程という表現を使用しても差し支えない。
【0105】
本実施形態における具体例は、吸着材のうち触媒(態様1)又はフィルター(態様2)に対応する例である。吸着材の用途(どれだけ有害重金属が通常含有されているか等)、素材や形態が変われば、上記各具体例は適宜変形すべきである。
【0106】
例えば、触媒(態様1)もフィルター(態様2)も、有害重金属を含む粉塵を発生させないよう、本実施形態の初期(触媒だと洗浄工程、フィルターだと破砕工程)から第3固液分離工程に至るまで、湿式で行っている。
【0107】
そして、触媒は粒状なので、篩を採用した方が分級を行う際に都合が良いと考え、第1固液分離工程として湿式篩選別工程を行っている。
また、フィルター(態様2)だと、破砕工程を経てフィルターは破片化している。その一方で、もともと粒状だった触媒に比べて当該破片の各々は大小に差がある。そこで、フィルター(態様2)では、篩を採用するよりも水分を搾り取る工程(例:スクリュープレスを用いた脱水工程)を行っている。これにより、フィルターのある程度粗大な破片は搾り残渣にまとめることができ、フィルターの微細な破片及びフィルター脱離物は搾り取られた水分と共に落下可能となると考え、第1固液分離工程として脱水工程を行っている。
このように、吸着材の種類に応じて、適宜、各工程の具体的な内容は変形可能である。
【0108】
変形の対象の一例としては、例えば篩の目開きの大きさ、洗浄に水のみを使用するかアルカリ洗剤と水との組み合わせを使用するか、洗浄工程の前に破砕工程を行うか否か、吸着材が廃棄された所定の地域における有害重金属の濃度の基準値等が挙げられる。
【0109】
態様1(触媒)において、例えば、洗浄工程の前、乾式篩選別工程を行い、明らかに水銀を含まない吸着材の塊であって洗浄工程及び湿式篩選別工程に支障を生じさせる塊(例えば触媒封入容器)を、低濃度物のピックアップの候補から予め除外しても構わない。当該触媒を封入する容器の端部は、明らかに水銀を含まないため、当該地域内処理の対象となる。
逆に、明らかに水銀を含む(というより大半が水銀粒子により構成される吸着材の)塊を乾式にて篩から落下させ、低濃度物のピックアップの候補から前記明らかに水銀を含む塊を予め除外しても構わない。
【0110】
この変形例に関し、態様2(フィルター)では、明らかに水銀を含まないフィルターの部品であって洗浄工程及び脱水工程に支障を生じさせる塊(例えばフィルターの端部)を、破砕工程の前に、低濃度物のピックアップの候補から予め除外しても構わない。
【実施例0111】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、使用済み吸着材を連続的に処理する例を挙げる。
以下のppm、及びこれまで述べてきたppmは、mg/kgを意味する。
また、水銀濃度に関しては、加熱気化水銀測定装置(日本インスツルメンツ株式会社製のMA-3000)にて測定した。
また、 前記低濃度物と前記高濃度物とを分ける水銀濃度の閾値は1000ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内の一つの数値である18000ppmに設定した。実際のところ、実施例が行われた場所での法定基準値は20000ppmであるが、余裕をもって以降の実施例では閾値を18000ppmに設定した。
【0112】
(実施例1)
有害重金属が吸着された吸着材として、水銀粒子が吸着された触媒を採用した。本実施例における前記触媒は、天然ガスから水銀を除去するために使用された使用済みの触媒(廃棄物)である。触媒の主材料はセラミックスである。触媒の形状は直径が約1~10mmの顆粒状であった。
【0113】
実施例1にて処理する触媒の合計物量は1.08t/hであり、合計物量に対する水銀濃度は28413ppmであり、水銀物量は31kgであった。
【0114】
前記触媒に対し、洗浄工程を行った。水道水の供給量は25L/minとした。装置としては回転ドラム式洗浄機としてドラムスクラバー(別名ドラムウォッシャー、以下HP参照http://www.dowa-ecoj.jp/catalog/2017/pdf/20170801_pdf05.pdf)を使用した。洗浄時間は1分とした。
【0115】
実施例1では、処理対象となる触媒の供給量と洗浄工程で使用する水道水の供給量は、質量比で1:1とした。
【0116】
洗浄済み触媒に対し、湿式篩選別工程を行った。具体的には、篩の目開きを2.0mmとした振動コンベアにより洗浄済み触媒を移送し、篩上に残った粗大な洗浄済み触媒を一箇所に集めた。
【0117】
篩上に残った粗大な洗浄済み触媒を低濃度物と分類した。実際、低濃度物篩上に残った粗大な洗浄済み触媒の水銀濃度は13941ppmであり、閾値の18000ppm未満であった。なお、篩上に残った粗大な洗浄済み触媒の合計物量は1.08t/hであり、水銀物量は15kgであり、最初の触媒における水銀の分配率は49.1%であった。
【0118】
そして、前記湿式篩選別工程での篩下への落下物から前記微細な洗浄済み触媒を高濃度物として分離する第2固液分離工程を行った。具体的には、ハイメッシュセパレータ(型番KUC-102S、氣工社製、分級点75μm)に前記落下物を通過させ、固液分離を行った。残渣として得られた微細な洗浄済み触媒における水銀濃度は20000ppmであり、閾値の18000ppmを超えていた。残渣(固体)を高濃度物に分類した。なお、残渣の合計物量は0.06t/hであり、水銀物量は1kgであり、最初の触媒における水銀の分配率は3.3%であった。
【0119】
そして、前記第2固液分離工程での落下物であるスラリーをシックナーに入れ、凝集剤を添加する凝集剤添加工程を行った。凝集剤としては、塩化第二鉄(46%)(VS Chem (1970) Limited製)、キレート剤(製品名Welclean K-900、KURITA-GK CHEMICAL CO.,LTD.製)、ポリマー系凝集剤(ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、Sipchem Chemical Company製)を用いた。また、硫酸(20%、w/w、LabChem Inc製)及び水酸化ナトリウム(50%、w/w、LabChem Inc製)もpH調整のために加えた。
【0120】
前記凝集剤添加工程を経た前記スラリーに対して固液分離処理を行う第3固液分離工程を行った。この固液分離にはフィルタープレスを用いた。第3固液分離工程後に得られた脱水ケーキにおける水銀濃度は18000ppmを超えていた。前記脱水ケーキを前記高濃度物に加えた。
【0121】
(実施例2)
有害重金属が吸着された吸着材として、水銀が吸着されたフィルターを採用した。本実施例における前記フィルターは、車に使用された使用済みのフィルター(廃棄物)である。フィルターの主材料は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、及びセルロースエステルの少なくとも1種である。
【0122】
実施例2にて処理するフィルターの合計物量は0.25t/hであり、合計物量に対する水銀濃度は25415ppmであり、水銀物量は6.35kgであった。
【0123】
フィルターに対し、破砕工程と洗浄工程とを同時に行った。装置としては湿式破砕機を使用した。破砕済みフィルターの平均粒径は20~150mm程度とした。洗浄工程では、水道水とアルカリ洗剤(製品名JetCleen、強アルカリ、タイ製)を使用した。
【0124】
実施例2では、処理対象となるフィルターの供給量と、洗浄工程で使用する水道水の供給量と、アルカリ洗剤の供給量は、質量比で、2:10:1とした。
【0125】
破砕済み且つ洗浄済みフィルターに対し、スクリュープレスを用いて脱水工程を行った。粗大産物である搾り残渣(搾りかす)を低濃度物と分類した。実際、搾り残渣である低濃度物の水銀濃度は10506ppmであり、閾値の18000ppm未満であった。なお、搾り残渣の合計物量は0.23t/hであり、水銀物量は1.83kgであり、最初の触媒における水銀に対する分配率は28.8%であった。
【0126】
そして、脱水工程にて搾り取った水分に対し、実施例1と同様の手法で第2固液分離工程、凝集剤添加工程、第3固液分離工程を行った。但し、実施例2では、前記第2固液分離工程での落下物であるスラリーに対し、硫酸アルミニウム(1.2%)(富士フイルム和光純薬製)を、触媒の供給量の3質量%分、凝集剤として添加した。
【0127】
第2固液分離工程(ハイメッシュセパレータ)で得られた残渣として得られた微細な破砕済み且つ洗浄済みフィルターにおける水銀濃度は19000ppmであり、閾値の18000ppmを超えていた。残渣(固体)を高濃度物に分類した。なお、残渣の合計物量は0.03t/hであり、水銀物量は0.29kgであり、最初の触媒における水銀の分配率は4.5%であった。
【0128】
前記凝集剤添加工程を経た前記スラリーに対して固液分離処理を行う第3固液分離工程を行った。この固液分離にはフィルタープレスを用いた。第3固液分離工程後に得られた脱水ケーキにおける水銀濃度は18000ppmを超えていた。具体的には、水銀濃度は34392ppmであり、合計物量は0.123t/hであり、水銀物量は4.24kgであり、最初のフィルターにおける水銀の分配率は66.7%であった。前記脱水ケーキを前記高濃度物に加えた。
【0129】
以上の各工程を経た結果、前記洗浄工程前の前記吸着材(触媒又はフィルター)に対する低濃度物の割合は70質量%以上であった。
前記洗浄工程前の前記吸着材に対する前記高濃度物の割合は30質量%以下であった。なお、前記高濃度物において吸着材の素材は50質量%以上を占めた。