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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006875
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】食品製造装置、食品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/20 20160101AFI20240110BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 35/52 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/07 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/1143 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/1144 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/171 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/192 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/2322 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/721 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/726 20220101ALI20240110BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20240110BHJP
   A23J 3/26 20060101ALN20240110BHJP
   A23J 3/16 20060101ALN20240110BHJP
   A23J 3/00 20060101ALN20240110BHJP
   B01F 101/02 20220101ALN20240110BHJP
【FI】
A23P30/20
B01F23/53
B01F35/92
B01F35/52
B01F27/07
B01F27/1143
B01F27/1144
B01F27/171
B01F27/191
B01F27/192
B01F27/2322
B01F27/721
B01F27/726
A23L13/00 A
A23J3/26 501
A23J3/16 501
A23J3/00 503
B01F101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173707
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2022106624
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勢
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 心
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貞一郎
【テーマコード(参考)】
4B042
4B048
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AD36
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP30
4B042AT10
4B048PE03
4B048PM02
4B048PM11
4B048PM16
4B048PS01
4B048PS02
4B048PS13
4B048PS15
4G035AB46
4G035AE13
4G035AE15
4G037CA03
4G037CA11
4G037DA25
4G037EA03
4G078AB09
4G078BA01
4G078BA07
4G078DA08
4G078DA09
4G078DB10
4G078EA03
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】搾油していない大豆を原料とする植物性蛋白食品を製造可能な技術を提供する。
【解決手段】投入された投入物をシリンダ30内においてスクリュ40により上流側から下流側にかけて搬送すると共に加熱混錬するエクストルーダー1であって、シリンダ30内に投入され下流側に搬送される投入物の充填密度を略均一にすると共に粉砕する搬送部71及び原料粉砕部72と、粉砕された投入物を下流に搬送する加熱混錬部74と、搬送された投入物に対して、加熱混錬部74よりも高い剪断力を加える滞留剪断部75とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された投入物をシリンダ内においてスクリュにより上流側から下流側にかけて搬送すると共に加熱混錬する食品製造装置であって、
前記シリンダ内に投入され下流側に搬送される前記投入物の充填密度を略均一にすると共に粉砕する搬送粉砕部と、
前記搬送粉砕部により粉砕された投入物を下流に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された投入物に対して、前記搬送部よりも高い剪断力を加える剪断部と
を備えることを特徴とする食品製造装置。
【請求項2】
前記搬送部に含まれるスクリュのスクリュピッチは、前記搬送粉砕部に隣接する部分よりも前記剪断部に隣接する部分の方が狭い
ことを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項3】
前記搬送粉砕部は、前記投入物に対して液体を供給する供給部よりも上流側に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項4】
前記剪断部の下流側に位置し、前記剪断部により剪断力が加えられた投入物を滞留させる滞留部
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項5】
前記シリンダは、上流から下流にかけて直列状に連結された複数のシリンダブロックを有し、
前記複数のシリンダブロックのうち、最下流に位置するシリンダブロックは、その上流側に隣接するシリンダブロックよりも高温であり、
前記剪断部は、前記最下流に位置するシリンダブロック内に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項6】
前記搬送粉砕部は、前記投入物を前記シリンダ内に投入するためのホッパの下方に位置する第1スクリュエレメントと、前記投入物を粉砕する第2スクリュエレメントと、該第1スクリュエレメントと前記第2スクリュエレメントとの間に位置する第3スクリュエレメントとを含み、
前記第2スクリュエレメントは、そのブレードが逆ねじ方向に角度をもたせて傾斜されており、
前記第3スクリュエレメントは、そのブレードが順ねじ方向に角度をもたせて傾斜されている
ことを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項7】
前記シリンダ内に投入される投入物は、乾燥された未搾油の大豆のみである
ことを特徴とする請求項1記載の食品製造装置。
【請求項8】
前記剪断部の下流側に設けられ、前記剪断部から搬送された投入物を冷却すると共に外部に排出する冷却部
を更に備えることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項記載の食品製造装置。
【請求項9】
投入された投入物をシリンダ内においてスクリュにより上流側から下流側にかけて搬送すると共に加熱混錬する食品製造方法であって、
前記シリンダ内に投入され下流側に搬送される前記投入物の充填密度を略均一にすると共に粉砕し、
粉砕された投入物を下流に搬送し、
搬送された投入物に対して、該搬送時よりも高い剪断力を加える
ことを特徴とする食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、押出機を用いた食品、特に植物性蛋白食品を製造する食品製造装置、食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物性蛋白の代替物として植物性蛋白からなる蛋白食品が製造されている。このような植物性蛋白食品は、植物性蛋白を主成分とする大豆粉末等を原料とし、押出機(エクストルーダー)を用いて高熱高圧下で混錬を行うことにより製造する手法が広く実施されている。この手法によれば、繊維状の組織を有して肉様の食感を実現することができ、多様な用途に供することができる。
【0003】
この種の技術として、下記特許文献1に示される処理方法が知られている。この処理方法は、原料を、水とともにエクストルーダーを用いて加圧加熱下に混捏し、これを先端ダイから円周方向に押出成型したのち、この成型物を押出方向に対して平行方向に切断することを特徴としている。この方法によれば、繊維状構造に優れた食品素材を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-108338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、搾油していない大豆を原料とする植物性蛋白食品を製造可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、投入された投入物をシリンダ内においてスクリュにより上流側から下流側にかけて搬送すると共に加熱混錬する食品製造装置であって、前記シリンダ内に投入され下流側に搬送される前記投入物の充填密度を略均一にすると共に粉砕する搬送粉砕部と、前記搬送粉砕部により粉砕された投入物を下流に搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された投入物に対して、前記搬送部よりも高い剪断力を加える剪断部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搾油していない大豆を主原料とする植物性蛋白食品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るエクストルーダーの構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る植物性蛋白食品の製造方法を示すフローチャートである。
図3】第2の実施形態に係るエクストルーダーの構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
本実施形態に係る食品製造装置は、搾油されていない未搾油の大豆(以後、大豆と称する)を原料、つまり100%大豆を使用し、これを加熱加圧下で混錬して押出成形することにより、繊維状の組織を有する肉様の植物性蛋白食品、所謂大豆ミートを得るエクストルーダーとして構成される。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエクストルーダーを模式的に示す縦断面図である。なお、図1は、エクストルーダー1の押出方向(スクリュ40の延在方向)に直交する側方から見た縦断面図となっている。
【0012】
本実施形態におけるエクストルーダー1は、上流側の上部にホッパ20が設けられた中空のシリンダ(バレル)30を有し、シリンダ30内に同一構成であり且つ互いに同一方向に回転する一対のスクリュ40を有する二軸型となっている。なお、図1では、エクストルーダー1を側方から見た断面図が示されていることから、一対のスクリュ40における一方のみが示されている。この一対のスクリュ40が回転することによりホッパ20に投入された主原料とシリンダ30内に注入される水などの液体原料との混合物をシリンダ30内において加熱混錬し、上流から下流にかけて搬送する。なお、二軸型でなく、一軸型のエクストルーダーを用いてもよいが、主原料から繊維状の組織を得るためには、高い剪断力により強く組織化を行うことができる二軸型エクストルーダーを用いることが好ましい。
【0013】
シリンダ30は、上流から下流にかけて直列状に第1シリンダブロック310、第2シリンダブロック320、第3シリンダブロック330、第4シリンダブロック340、及び第5シリンダブロック350を有しており、これらの内、第2シリンダブロック320、第3シリンダブロック330、第4シリンダブロック340、及び第5シリンダブロック350は個別に不図示のヒータと冷却水とにより温度調節可能となっている。なお、第1シリンダブロック310は、本実施形態において加熱温度調節がなされず、常時冷却している。
【0014】
第1シリンダブロック310には、その上部に原料を投入するためのホッパ20が設けられている。第2シリンダブロック320には、水や調味液などを液体原料として注入可能な注入孔321が設けられており、ホッパ20への原料投入に応じて適宜注入が可能となっている。第5シリンダブロック350の下流部分にはアダプタ50が設けられている。アダプタ50は、冷却ダイ60とシリンダ30とを連結する連結部材であり、内部にスクリュ40の先端を収容すると共に、シリンダ30の内径よりも小径に形成されてシリンダ30内の加熱混錬された混合物である混錬物を冷却ダイ60に吐出する吐出口510が設けられている。
【0015】
冷却ダイ60は、内部に平板状の空間が画成された中空部材であり、当該空間が吐出口510と連通することで加熱混錬されスクリュ40により押し出される混錬物を受容し、吐出口610から外部に吐出する。冷却ダイ60は、不図示のポンプより冷却媒体が流入可能な流路が形成されており、当該流路は冷却ダイ60の内部空間に近接するよう設けられている。アダプタ50から押し出された冷却ダイ60内の混錬物は、流路内の冷却媒体と熱交換を行うことにより冷却されることとなる。本実施形態においては、冷却媒体として水が用いられる。
【0016】
以下、本実施形態に係るシリンダ30と、一対のスクリュ40と、これらにより実現される機能とについて詳細に説明する。
【0017】
(スクリュ40)
本実施形態におけるスクリュ40は、不図示のスクリュ軸にスクリュエレメント401~412が挿通嵌合される形で直列状に連結して構成される。各スクリュエレメント401~412と第1~第5シリンダブロック310~350とが協働することにより、搬送部71、原料粉砕部72、注入混錬部73、加熱混錬部74、滞留剪断部75、及び溶融混錬部76が形成される。
【0018】
搬送部71は、ホッパ20により投入された原料を、混錬しながら下流に搬送すると共に、下流に位置する原料粉砕部72直前で原料の充填密度を略均一にする。搬送部71は、第1シリンダブロック310内に位置するスクリュエレメント401,402を有する。
【0019】
スクリュエレメント401は、ホッパ20の下方に位置する順ねじの送りスクリュであり、ホッパの下方に配置される一般的なスクリュエレメントと比較して、スクリュピッチが狭く(例えば、その50%前後)形成されている。したがってスクリュエレメント401は、原料の粒形に問わず大粒(例えば粉砕前の状態)や小粒(例えば3~5mm等)であっても確実に下流側に原料を搬送することができる。
【0020】
スクリュエレメント402は、スクリュエレメント401の下流側に位置する順ねじの送りスクリュであり、当該スクリュエレメント401と比較して更にスクリュピッチが狭く(例えば、その40%前後)形成されている。これによりスクリュエレメント402は、スクリュエレメント401により搬送された原料をスクリュ40のブレード(翼部)間の空隙に略均一に充填させることができ、したがって当該空隙の単位体積当たりの原料の密度である充填密度を略均一にすることができる。また、原料の送り力がスクリュエレメント401よりも増強されるため、下流に位置する後に詳述するスクリュエレメント403の作用により上流側へ戻ろうとする原料を下流に押し出すことができる。なお、スクリュピッチに代わりねじの条数を増加、またはこれら双方を取り入れて原料の送り力を増加させてもよい。
【0021】
搬送部71の下流側に隣接する原料粉砕部72は、搬送部71から搬送される原料を粉砕する。原料粉砕部72は、第1シリンダブロック310内に位置するスクリュエレメント403を有し、スクリュエレメント403により原料を粉砕する。
【0022】
スクリュエレメント403は、楕円形をなす円盤状のブレード(ロータ)がスクリュ回転方向に沿って互いに角度を変えて配置された所謂ニーディングエレメントであり、原料を粉砕することができる。本実施形態においては、スクリュエレメント403は、ブレードが逆ねじ方向に角度をもたせて傾斜された逆ねじタイプ(左ねじタイプ:Lニーディング)に形成されており、粉砕した原料を上流側に戻す作用がある。したがって、搬送部71におけるスクリュエレメント402による上述した押し出し効果と相まって、原料粉砕部72において確実に原料を粉砕、粉末状に加工することができる。
【0023】
原料粉砕部72の下流側に隣接する注入混錬部73は、原料粉砕部72において粉砕された原料を下流に搬送しつつ原料と注入孔321から注入される液体原料とを混合する。注入混錬部73は、上流側先端部が第1シリンダブロック310内に位置し、他の部分が第2シリンダブロック320内に位置する順ねじの送りスクリュであるスクリュエレメント404を有する。スクリュエレメント404により原料と液体原料とを混錬しつつ第2シリンダブロック320により加熱し、下流側に搬送する。本実施形態においては、第2シリンダブロック320は、不図示のヒータにより40℃~80℃の温度に設定されることが好ましい。
【0024】
注入混錬部73の下流側に隣接する加熱混錬部74は、注入混錬部73において原料と液体原料とが混錬された混合物を更に混錬して下流に搬送する。加熱混錬部74は、第2シリンダブロック320内に位置するスクリュエレメント405と、上流側先端部が第2シリンダブロック320内に位置し、他の部分が第3シリンダブロック330内に位置するスクリュエレメント406と、第3シリンダブロック330内に位置するスクリュエレメント407と、上流側先端部が第3シリンダブロック330内に位置し、他の部分が第4シリンダブロック340内に位置するスクリュエレメント408とを有する。
【0025】
スクリュエレメント405~408は、順ねじの送りスクリュであり、原料と液体原料とが混合された混合物を混錬し、下流側へ搬送する。この混錬時において第2シリンダブロック320~第4シリンダブロック340において混合物が加熱される。第2シリンダブロック320、第3シリンダブロック330、第4シリンダブロック340の順に温度が高温となっており、下流側に搬送されるにつれてシリンダ30内の加熱とスクリュエレメント405~スクリュエレメント408の混錬によって生じる圧縮力とにより、混合物を高温高圧状態とすることができる。本実施形態においては、第3シリンダブロック330は、不図示のヒータにより60℃~120℃の温度に設定されることが好ましい。また、第4シリンダブロック340は、不図示のヒータにより140℃~180℃の温度に設定されることが好ましい。この第4シリンダブロック340の温度帯は、原料である大豆たんぱくの熱変性を起こすに十分な温度帯となっている。
【0026】
なお、スクリュエレメント408は、スクリュエレメント405~407と比較して、スクリュピッチを狭くすることが好ましく、これにより次工程の滞留剪断部75に備えて押し出し力を高めることが可能となる。
【0027】
加熱混錬部74の下流側に隣接する滞留剪断部75は、加熱混錬部74において溶融状態とされた混合物に対して、加熱混錬部74において加わる剪断力よりも高い剪断力を加えると共に、滞留させることで混合物に加わる剪断作用を一層強め、これらにより肉様組織を得るための前工程として細かく混合物を分断する。滞留剪断部75は、第4シリンダブロック340内に位置するスクリュエレメント409,410とを有する。
【0028】
スクリュエレメント409は、混合物に対して高い剪断力を加えて分断することが可能なものであり、スクリュエレメント401~412のうち最も原料(混合物)に対して高い剪断力を付与可能に構成されることが好ましい。このようなものとしては、例えばパイナップル型のスクリュエレメントが挙げられる。その他、ピン型、フィン型等を用いてもよく、加熱混錬部74に含まれるような送りタイプのスクリュエレメントと比較して高い剪断力を混合物に与えることができるものであれば、どのようなエレメントを用いてもよい。
【0029】
スクリュエレメント410は、楕円形をなす円盤状のブレードがスクリュ回転方向に沿って互いに角度を変えて配置された所謂ニーディングエレメントであり、本実施形態においては、ブレードが順ねじ方向に角度をもたせて傾斜された順ねじタイプ(右ねじタイプ:Rニーディング)に形成されている。このようなスクリュエレメント410によれば、混合物を堰き止めて滞留させることができるため、スクリュエレメント409による剪断作用をより高めることが可能となる。
【0030】
滞留剪断部75の下流側に隣接する溶融混錬部76は、滞留剪断部75により搬送された混合物を、加熱混錬部74と同様に、更に混錬して下流に搬送する。溶融混錬部76は、第5シリンダブロック350内に位置するスクリュエレメント411,412を有する。
【0031】
スクリュエレメント411,412は、順ねじの送りスクリュであり、加熱混錬された混合物である混錬物を下流側へ搬送することにより、冷却ダイ60へ押し出す。この混錬時において第5シリンダブロック350において混合物が加熱され、混合物を高温高圧状態、延いては溶融状態とすることができる。本実施形態においては、第5シリンダブロック350は、不図示のヒータにより160℃~200℃の温度に設定されることが好ましい。この第5シリンダブロック350の温度帯は、原料である大豆たんぱくの熱変性を起こすに十分な温度帯となっている。
【0032】
次に、本実施形態に係る食品製造装置による植物性蛋白食品の製造方法を詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る植物性蛋白食品の製造方法を示すフローチャートである。図2に示されるように、本実施形態に係る植物性蛋白食品の製造方法は、先ずエクストルーダー1に原料を投入するに先立って、原料に対して粉砕処理を施す(S101)。
【0033】
本実施形態においては、乾燥された大豆を原料とし、脱皮した状態とすることが好ましい。乾燥大豆は脱皮した状態のまま、つまり丸い粒形にある丸大豆のものを用いてもよいが、ムラがなく良好な状態にある植物性蛋白食品を安定して得るには乾燥大豆の粒度を均一に揃え、且つ乾燥大豆を粉砕状態とすることが好ましい。粉砕された乾燥大豆である乾燥挽割大豆の粒度は、1~7mmであることが好ましく、2~6mmであることがより好ましく、3~5mmであることが特に好ましい。なお、乾燥大豆の粉砕には、既存の粉砕機を用いればよい。また、乾燥挽割大豆の水分量は、9~13重量%であることが好ましく、11~13重量%であることが特に好ましい。
【0034】
粉砕処理後、エクストルーダー1を起動し、運転条件を設定する(S102)。設定する運転条件としては、混合物の送り出し量を決定する一対のスクリュ40の回転数の他、シリンダ30の各シリンダブロックの温度、アダプタ50の温度、冷却ダイ60への冷却水の供給量、冷却水の温度が挙げられる。
【0035】
一対のスクリュ40の回転数は、毎分120回転~180回転の範囲に設定することが好ましい。シリンダ30は、上述したとおり、5つの第1~第5シリンダブロック310~350に分割されて個別に温度設定可能となっており、上流から下流にかけて温度が上昇するように温度設定される。各シリンダブロックにおいて設定される温度については上述したため、ここでの説明は省略する。
【0036】
アダプタ50は、60℃~110℃の温度範囲とすることが好ましい。
【0037】
冷却ダイ60への冷却水の供給量は、毎分4リットル~10リットルに設定することが好ましい。また、冷却水の温度は、5℃~40℃に設定することが好ましく、5℃~25℃に設定することがより好ましい。
【0038】
運転条件の設定後、不図示のヒータによりシリンダ30の各シリンダブロックがステップS102において設定した温度に加熱され、一対のスクリュ40が回転駆動する状態において、ステップS101にて生成した乾燥挽割大豆をホッパ20に投入する(S103)。この時、乾燥挽割大豆(原料)の供給量は、毎分80グラム~240グラムとすることが好ましく、毎分110グラム~210グラムとすることがより好ましい。また、ホッパ20または注入孔321から注入する液体原料としての水の供給量は、原料の供給重量に対して40~70重量%とすることが好ましく、45~65重量%とすることがより好ましい。投入後、エクストルーダー1により乾燥挽割大豆が加熱混錬された後に冷却され(S104)、吐出口610から板状の植物性蛋白食品が吐出され(S105)、本製造方法は終了となる。なお、得られた板状の植物性蛋白食品は適宜カットされ、常温水や湯に浸されることで適宜水分を吸収させることが好ましい。
【0039】
以上に説明した本実施形態によれば、大豆のみを原料とした場合であっても、繊維状の組織を有する肉様の植物性蛋白食品を製造することができる。特に、滞留剪断部75により高い剪断力を混合物に対して加えることができるため、繊維化を促進することが可能となり、良質な食感を有する肉様の植物性蛋白食品を得ることが可能となる。
【0040】
さらに、冷却ダイ60による混錬物の冷却工程を組み込むことにより、混錬物が冷却されながら排出されることで、排出方向(搬送方向)と同一方向に繊維化し、緻密でかつ方向性に優れた組織を有する良好な植物性蛋白食品を安定して得ることができる。また、冷却により吐出された混錬物の膨化を抑えることも可能となる。
【0041】
なお、本実施形態においては、スクリュエレメント403,410がニーディングエレメントであると説明したが、原料を適切に粉砕及び/又は滞留可能なものであれば、どのようなスクリュエレメントを用いてもよい。また、これらのエレメントのブレード数は、3枚や5枚等、条件に応じて適宜設定すればよい。
【0042】
また、本実施形態に係るエクストルーダー1は、大豆を原料としたが、これに限定するものでない。大豆蛋白からなる粉体を含む混合物を原料としても植物性蛋白食品を得ることが可能である。また、その他の豆類を原料としてもよい。
【0043】
<第2の実施形態>
図3は、本実施形態に係るエクストルーダーの構成を模式的に示す縦断面図である。図3に示されるように、本実施形態に係るエクストルーダー1Aは、第1の実施形態に係るエクストルーダー1と比較して、スクリュエレメント402及びスクリュエレメント410に代わり、スクリュエレメント402A及びスクリュエレメント410Aを備える。
【0044】
スクリュエレメント402Aは、楕円形をなす円盤状のブレードがスクリュ回転方向に沿って互いに角度を変えて配置された所謂ニーディングエレメントであり、本実施形態においては、ブレードが順ねじ方向に角度をもたせて傾斜された順ねじタイプ(右ねじタイプ:Rニーディング)に形成されている。これによりスクリュエレメント402と比較してスクリュエレメント402Aは、混合物を堰き止めて滞留させる能力が高いことから、スクリュエレメント401により搬送された原料をブレード(翼部)間の空隙に略均一に充填させることができ、したがって当該空隙の単位体積当たりの原料の密度である充填密度を略均一にすることができる。さらに、原料の送り力についてはスクリュエレメント402よりも減少するものの、原料の粉砕能力が飛躍的に上昇するため、スクリュエレメント403による原料粉砕に先立って、原料粉砕を行うことができ、スクリュエレメント403による上流に押し戻す作用と相まって確実に原料を粉砕、粉末状に加工することができる。
【0045】
したがって、スクリュエレメント402Aを有する搬送部71Aは、搬送部71と同様の原料搬送機能、及び原料粉砕部72直前で原料の充填密度を略均一にする機能を確保しつつ、更に原料の粉砕機能を有する。
【0046】
スクリュエレメント410Aは、楕円形をなす円盤状のブレード(ロータ)がスクリュ回転方向に沿って互いに角度を変えて配置された所謂ニーディングエレメントである点はスクリュエレメント410と同様であるが、ブレードが逆ねじ方向に角度をもたせて傾斜された逆ねじタイプ(左ねじタイプ:Lニーディング)に形成されている点で異なる。これによりスクリュエレメント410と比較してスクリュエレメント410Aは、混合物を堰き止めて滞留させる能力が一層高まり、上流側に混合物を押し戻す作用が強く働くため、スクリュエレメント409による剪断作用をより一層高めることが可能となる。
【0047】
したがって、スクリュエレメント410Aを有する滞留剪断部75Aは、滞留剪断部75と比較して、混合物に対する剪断作用をより一層強めることができる。
【0048】
また、本実施形態においては、スクリュエレメント409及びスクリュエレメント410Aからなる滞留剪断部75Aと溶融混錬部76との位置が入れ替わっている。位置が入れ替わることにより、溶融混錬部76が第4シリンダブロック340及び第5シリンダブロック350に亘って配置され、滞留剪断部75Aが第5シリンダブロック350に配置されることとなる。したがって、本実施形態に係る溶融混錬部76は、混合物を混錬して下流に搬送する加熱混錬部74として機能すると言える。このように配置することにより、溶融混錬部76において混合物に加えられる熱が第1の実施形態と比較すると低下するものの、滞留剪断部75Aにおいて高い熱が混合物に加えられつつ高い剪断力で細かく混合物を分断することができ、より良好な肉様組織を得ることができる。
【0049】
以上に説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、大豆のみを原料とした場合であっても、繊維状の組織を有する肉様の植物性蛋白食品を製造することができる。特に、搬送部71A及び滞留剪断部75Aを有することにより、より繊維化が促進された良質な肉様の植物性蛋白食品を得ることができる。
【0050】
なお、第1の実施形態においてはスクリュ40が上流側からスクリュエレメント401~412を有し、第2の実施形態においてはスクリュ40が上流側からスクリュエレメント401,402A,403~408,411,412,409,410Aを有すると説明したが、これに限定されるものではない。これらスクリュエレメントに代わり、適宜効果の向上、異なる他の効果が見込める新たなスクリュエレメントを組み込んでも良く、現状のスクリュエレメントの位置を入れ替える等してもよい。つまり、シリンダ内に投入され下流側に搬送される投入物の充填密度を略均一にすると共に粉砕する機能と、粉砕された投入物を下流に搬送する機能と、搬送された投入物に対してより高い剪断力を加える機能とを実現可能であれば、適宜スクリュエレメントを変更することも可能である。
【0051】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0052】
1 エクストルーダー(食品製造装置)
20 ホッパ(投入部)
30 シリンダ
40 スクリュ
401 スクリュエレメント(第1スクリュエレメント)
402,402A スクリュエレメント(第3スクリュエレメント)
403 スクリュエレメント(第2スクリュエレメント)
410,410A スクリュエレメント(滞留部)
60 冷却ダイ(冷却部)
71,71A 搬送部(搬送粉砕部)
72 原料粉砕部(搬送粉砕部)
73 注入混錬部(供給部)
74 加熱混錬部(搬送部)
75,75A 滞留剪断部(剪断部)
図1
図2
図3