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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068761
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20240514BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240514BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/0432
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179334
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓也
【テーマコード(参考)】
5H030
5H127
【Fターム(参考)】
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC96
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムにおいて、蓄電装置の温度が適度な温度になるまでの時間の短縮を図る。
【解決手段】蓄電装置Bと、蓄電装置Bの温度を検出する温度検出部Stと、蓄電装置Bに電力を供給する燃料電池FCと、燃料電池FCの発電電力を制御する制御部Cntとを備えて燃料電池システムFCSを構成し、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係における所定の充電率を含む通常時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御し、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、通常時使用範囲における内部抵抗の最大値より大きい内部抵抗を含む昇温時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出部と、
前記蓄電装置に電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池の発電電力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度検出部により検出される温度が温度閾値以上である場合、前記蓄電装置の充電率と内部抵抗との対応関係における所定の充電率を含む通常時使用範囲内を前記蓄電装置の充電率が変動するように、前記燃料電池の発電電力を制御し、
前記温度検出部により検出される温度が前記温度閾値より小さい場合、前記通常時使用範囲における内部抵抗の最大値より大きい内部抵抗を含む昇温時使用範囲内を前記蓄電装置の充電率が変動するように、前記燃料電池の発電電力を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記昇温時使用範囲は、前記通常時使用範囲における充電率の最大値より大きい充電率を含む
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記昇温時使用範囲は、前記対応関係における内部抵抗の最小値に対応する充電率より大きい充電率を含む第1昇温時使用範囲、及び、前記対応関係における内部抵抗の最小値に対応する充電率より小さい充電率を含む第2昇温時使用範囲のうち、単位充電率あたりの内部抵抗の変化量が大きい方である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、燃料電池システム内の蓄電装置の充電率(蓄電装置の満充電容量に対する残容量の割合)に応じて燃料電池の発電電力を制御するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、蓄電装置の性能を十分に発揮させるために、蓄電装置の温度を比較的高くする必要があり、蓄電装置の温度を上昇させるために、例えば、蓄電装置を充電または放電させることで蓄電装置の内部抵抗に電流を流し蓄電装置を自己発熱させることが考えられる。なお、蓄電装置の自己発熱量=蓄電装置の内部抵抗×(蓄電装置に流れる電流)とする。
【0004】
しかしながら、蓄電装置の温度が比較的低い場合、蓄電装置の内部抵抗が増大し蓄電装置に流すことが可能な最大電流が低下するため、蓄電装置の温度が適度な温度(例えば、蓄電装置の性能を十分に発揮させることが可能な温度)に上昇するまでに時間がかかるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-106138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池システムにおいて、蓄電装置の温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、蓄電装置と、前記蓄電装置の温度を検出する温度検出部と、前記蓄電装置に電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池の発電電力を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度が温度閾値以上である場合、前記蓄電装置の充電率と内部抵抗との対応関係における所定の充電率を含む通常時使用範囲内を前記蓄電装置の充電率が変動するように、前記燃料電池の発電電力を制御し、前記温度検出部により検出される温度が前記温度閾値より小さい場合、前記通常時使用範囲における内部抵抗の最大値より大きい内部抵抗を含む昇温時使用範囲内を前記蓄電装置の充電率が変動するように、前記燃料電池の発電電力を制御する。
【0008】
これにより、温度検出部により検出される温度が閾値以下である場合、充電時または放電時の蓄電装置の内部抵抗を増大させることができるため、蓄電装置の自己発熱量を増加させることができ、蓄電装置の温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができる。
【0009】
また、前記昇温時使用範囲は、前記通常時使用範囲における充電率の最大値より大きい充電率を含んでもよい。
【0010】
また、前記昇温時使用範囲は、前記対応関係における内部抵抗の最小値に対応する充電率より大きい充電率を含む第1昇温時使用範囲、及び、前記対応関係における内部抵抗の最小値に対応する充電率より小さい充電率を含む第2昇温時使用範囲のうち、単位充電率あたりの内部抵抗の変化量が大きい方であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料電池システムにおいて、蓄電装置の温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2】充電時または放電時における蓄電装置の充電率と内部抵抗との対応関係の一例を示す図である。
図3】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】多段階発電制御による燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図5】昇温時使用範囲の他の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0014】
図1は、実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0015】
図1に示す燃料電池システムFCSは、例えば、フォークリフト、トーイングカー、または無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などの車両に搭載され、その車両に搭載される負荷Loに電力を供給する。
【0016】
また、燃料電池システムFCSは、燃料電池FCと、水素タンクHTと、水素タンク弁HTVと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、水素循環ポンプHPと、排気排水弁EDVと、希釈器DILと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、エアシャット弁ASVとを備える。
【0017】
また、燃料電池システムFCSは、さらに、ラジエタRと、ファンFと、ウォータポンプWPと、インタークーラICと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、温度検出部Stと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、電流センサSibと、電圧センサSvbと、記憶部Stgと、制御部Cntとを備える。
【0018】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0019】
水素タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された燃料ガスは水素タンク弁HTV及びインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0020】
水素タンク弁HTVは、燃料電池FCに供給される燃料ガスを減圧する。
【0021】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの流量を調整する。
【0022】
気液分離機GLSは、燃料電池FCから排出される燃料ガスと液水とを分離する。
【0023】
水素循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された燃料ガスを燃料電池FCに再度供給する。
【0024】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を希釈器DILに送る。希釈器DILに送られた液水は、希釈器DIL内のタンクに溜まる。また、燃料電池FCから排出された燃料ガスと酸化剤ガスは希釈器DILで合流し、燃料電池システム1の外部または内部に排出される。
【0025】
エアコンプレッサACPは、燃料電池システムFCSの周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮しインタークーラIC及びエアシャット弁ASVを介して燃料電池FCに供給する。なお、エアコンプレッサACPの圧縮率は、燃料電池FCの下流に設けられるエア調圧弁ARVの開度を調節することで制御される。
【0026】
インタークーラICは、圧縮により高温になった酸化剤ガスをインタークーラICに流れる冷却水などの冷媒と熱交換させる。
【0027】
エアシャット弁ASVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスを遮断する。
【0028】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。
【0029】
ラジエタRは、燃料電池FCの発熱により温められた冷媒を外気と熱交換させる。
【0030】
ファンFは、ラジエタRの放熱量を上昇させる。
【0031】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷媒をインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0032】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの後段に接続され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを所定の電圧に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Lo、水素循環ポンプHPなどの補機、及び蓄電装置Bに供給される。例えば、DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの電圧を48[V]に変換する。
【0033】
蓄電装置Bは、リチウムイオン電池またはリチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池システム1の外部(例えば、負荷Loの動作を制御する車両側制御部)から要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が負荷Loに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率(蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%])が増加する。また、負荷Loから燃料電池システムFCSに供給される回生電力が蓄電装置Bに供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率が増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池システム1の外部から要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに、足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電率が減少する。
【0034】
温度検出部Stは、サーミスタなどにより構成され、蓄電装置Bの温度を検出し、その検出した温度を制御部Cntに送る。
【0035】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVに流れる電流Ifを検出し、その検出した電流Ifを制御部Cntに送る。
【0036】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを検出し、その検出した電圧Vfを制御部Cntに送る。制御部Cntは、電圧Vfと電流Ifとの乗算結果を燃料電池FCの発電電力とする。
【0037】
電流センサSibは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに流れる電流Ibまたは蓄電装置Bから負荷Loに流れる電流Ibを検出し、その検出した電流Ibを制御部Cntに送る。
【0038】
電圧センサSvbは、分圧抵抗などにより構成され、蓄電装置Bの電圧Vbを検出し、その検出した電圧Vbを制御部Cntに送る。制御部Cntは、電圧Vbと蓄電装置Bの充電率との対応関係を示す情報や電流Ibの積算値などを用いて蓄電装置Bの充電率を求める。
【0039】
記憶部Stgは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成され、後述する通常時閾値Cth10などを記憶する。
【0040】
制御部Cntは、マイクロコンピュータなどにより構成され、燃料電池FCの発電を制御する。
【0041】
例えば、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電率と複数の閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させるとともに、PI(Proportional-Integral)制御などにより燃料電池FCの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、各補機の動作を制御する。
【0042】
このように、蓄電装置Bの充電率に応じて燃料電池FCの発電電力を段階的に変化させることにより、燃料電池FCの出力電圧の単位時間あたりの変動回数を抑えることができるため、燃料電池FCの劣化を抑制することができる。
【0043】
なお、目標発電電力Ptが大きくなるほど、燃料電池FCの発電電力が大きくなり、目標発電電力Ptが小さくなるほど、燃料電池FCの発電電力が小さくなるものとする。
【0044】
また、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値(例えば、蓄電装置の性能を十分に発揮させることができるときの蓄電装置Bの温度の最小値)以上である場合、蓄電装置Bの充電率が所定の充電率付近に保たれるように燃料電池FCの発電電力を制御する。なお、蓄電装置Bの充電率が所定の充電率付近に保たれているとき、蓄電装置Bの電圧が所望の電圧付近に保たれるように蓄電装置Bが構成されているものとする。
【0045】
例えば、蓄電装置Bの充電率が50[%]付近に保たれるように燃料電池FCの発電電力が制御される場合では、蓄電装置Bの充電率が100[%]付近に保たれる場合や蓄電装置Bの充電率が0[%]付近に保たれる場合に比べて、蓄電装置Bの入出力電力の最大値を増加させることができる。すなわち、蓄電装置Bの充電率が50[%]付近に保たれるように燃料電池FCの発電電力が制御される場合では、負荷Loから蓄電装置Bに電力が供給されることや蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されることに余裕をもって対応することができる。
【0046】
ところで、上述したように、蓄電装置Bの温度を自己発熱により上昇させる場合で、かつ、蓄電装置Bの温度が比較的低い場合、蓄電装置Bの温度が適度な温度(例えば、蓄電装置Bの性能を十分に発揮させることが可能な温度)になるまでに時間がかかるおそれがある。
【0047】
そこで、実施形態の燃料電池システムFCSでは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、すなわち、蓄電装置Bの温度が蓄電装置Bの性能を十分に発揮させることが難しい、比較的低い温度である場合、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合に比べて、蓄電装置Bの内部抵抗を増加させることが可能な蓄電装置Bの充電率付近で蓄電装置Bの充電率が保たれるように燃料電池FCの発電電力を制御する。
【0048】
これにより、蓄電装置Bの自己発熱量を増加させることができるため、蓄電装置Bの温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができる。
【0049】
図2は、蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係の一例を示す図である。
【0050】
なお、図2に示す二次元座標の横軸は蓄電装置Bの充電率[%]を示し、縦軸は蓄電装置Bの内部抵抗[mΩ]を示している。また、図2に示す実線は充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示し、図2に示す破線は放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示している。また、内部抵抗として、R0<R1<R2<R3<R4<R5<R6<R7<R8<R9<R10とする。
【0051】
制御部Cntは、図2に示す充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係において、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、下限値を40[%]とし上限値を60[%]とする通常時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御する。
【0052】
これにより、通常時(例えば、蓄電装置Bの温度が蓄電装置Bの性能を十分に発揮させることが可能な温度であるとき)において、蓄電装置Bの充電率が50[%]を中心とする前後20[%]の範囲内、すなわち、50[%]付近に保たれるように燃料電池FCの発電電力を制御することができる。
【0053】
図2に示す充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係では、50[%]の充電率に対応する内部抵抗が最も小さい値となっている。
【0054】
また、図2に示す充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係では、充電率が50[%]より小さくなるほど、または、充電率が50[%]より大きくなるほど、内部抵抗が大きくなっている。
【0055】
そのため、充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係では、60[%]から80[%]までの充電率の範囲における内部抵抗の最大値は、40[%]から60[%]までの充電率の範囲における内部抵抗の最大値より大きくなる。
【0056】
そこで、制御部Cntは、図2に示す充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係において、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、下限値を60[%]とし上限値を80[%]とする昇温時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御する。言い換えると、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、通常時使用範囲における内部抵抗の最大値より大きい内部抵抗を含む昇温時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御する。なお、図2に示す例では、昇温時使用範囲は、通常時使用範囲の充電率の最大値より大きい充電率を含む。
【0057】
このように、昇温時使用範囲内を充電率が変動するように燃料電池FCの発電電力を制御することで、通常時使用範囲内を充電率が変動するように燃料電池FCの発電電力を制御する場合に比べて、充電時または放電時の蓄電装置Bの内部抵抗を増加させることができるため、蓄電装置Bの自己発熱量を増加させることができ、蓄電装置Bの温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができる。
【0058】
図3は、制御部Cntの動作の一例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合(ステップS1:No)、蓄電装置Bの充電率と複数の通常時閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させる(ステップS2)。
【0060】
一方、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合(ステップS1:Yes)、蓄電装置Bの充電率と複数の昇温時閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させる(ステップS3)。
【0061】
例えば、燃料電池FCの発電開始時、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、蓄電装置Bの充電率が70[%]付近で変動するように燃料電池FCの発電電力が制御されることで蓄電装置Bが昇温し、その後、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上になると、蓄電装置Bの充電率が50[%]付近で変動するように燃料電池FCの発電電力が制御される。
【0062】
図4(a)は、通常時閾値を使用した多段階発電制御を説明するための図であり、図4(b)は、昇温時閾値を使用した多段階発電制御を説明するための図である。
【0063】
なお、通常時閾値Cth10、通常時閾値Cth21、及び通常時閾値Cth32は、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上であるときに蓄電装置Bの充電率と比較される充電側の通常時閾値とし、通常時閾値Cth01、通常時閾値Cth12、及び通常時閾値Cth23は、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上であるときに蓄電装置Bの充電率と比較される放電側の通常時閾値とする。
【0064】
また、昇温時閾値Cth10´、昇温時閾値Cth21´、及び昇温時閾値Cth32´は、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さいときに蓄電装置Bの充電率と比較される充電側の昇温時閾値とし、昇温時閾値Cth01´、昇温時閾値Cth12´、及び昇温時閾値Cth23´は、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さいときに蓄電装置Bの充電率と比較される放電側の昇温時閾値とする。
【0065】
また、通常時閾値Cth23<通常時閾値Cth32≦通常時閾値Cth12<通常時閾値Cth21≦通常時閾値Cth01<通常時閾値Cth10とする。
【0066】
また、昇温時閾値Cth23´<昇温時閾値Cth32´≦昇温時閾値Cth12´<昇温時閾値Cth21´≦昇温時閾値Cth01´<昇温時閾値Cth10´とする。
【0067】
また、目標発電電力Pt0<目標発電電力Pt1<目標発電電力Pt2<目標発電電力Pt3とし、目標発電電力Pt0をゼロとする。目標発電電力Pt3と目標発電電力Pt2との差、目標発電電力Pt2と目標発電電力Pt1との差、目標発電電力Pt1と目標発電電力Pt0との差は、それぞれ、一定値でもよいし、異なる値でもよい。目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0になると、燃料電池FCの発電が停止して燃料電池FCから出力される電力がゼロになるものとする。目標発電電力Ptの変化数は4つに限定されない。
【0068】
図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth32以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0069】
また、図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth21以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0070】
また、図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth10以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化させる。
【0071】
また、図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth01以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0072】
また、図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth12以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0073】
また、図3(a)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値以上である場合、充電率が通常時閾値Cth23以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化させる。
【0074】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth32´以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0075】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth21´以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0076】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth10´以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化させる。
【0077】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth01´以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0078】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth12´以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0079】
また、図3(b)に示すように、制御部Cntは、蓄電装置Bの放電時において温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、充電率が昇温時閾値Cth23´以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化させる。
【0080】
すなわち、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電率が大きくなるほど、燃料電池FCから出力される電力が段階的に小さくなるように、燃料電池FCの発電を制御し、充電率が小さくなるほど、燃料電池FCから出力される電力が段階的に大きくなるように、燃料電池FCの発電を制御する。
【0081】
また、制御部Cntは、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さくなると、充電率と比較される閾値を、通常時閾値から昇温時閾値に変化させる。
【0082】
例えば、通常時閾値Cth10を60[%]に、通常時閾値Cth21を55[%]に、通常時閾値Cth32を45[%]に、通常時閾値Cth01を55[%]に、通常時閾値Cth12を45[%]に、通常時閾値Cth23を40[%]に設定する場合では、図2に示すように、下限値を40[%]とし上限値を60[%]とする通常時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御することができる。
【0083】
また、昇温時閾値Cth10´を80[%]に、昇温時閾値Cth21´を75[%]に、昇温時閾値Cth32´を65[%]に、昇温時閾値Cth01´を75[%]に、昇温時閾値Cth12´を65[%]に、昇温時閾値Cth23´を60[%]に設定する場合では、図2に示すように、下限値を60[%]とし上限値を80[%]とする昇温時使用範囲内を蓄電装置Bの充電率が変動するように、燃料電池FCの発電電力を制御することができる。
【0084】
実施形態の燃料電池システムFCSによれば、充電時または放電時の蓄電装置Bの温度が比較的低い場合、蓄電装置Bの内部抵抗を増加させることができるため、蓄電装置Bの自己発熱量を増加させることができ、蓄電装置Bの温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができる。
【0085】
また、実施形態の燃料電池システムFCSによれば、蓄電装置Bを昇温させるためにヒータなどを新たに設けることなく、蓄電装置Bの温度が適度な温度に上昇するまでにかかる時間の短縮を図ることができるため、製造コストの増加を抑制することができる。
【0086】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0087】
<変形例1>
図5(a)は、昇温時使用範囲の他の設定例を示す図である。
【0088】
なお、図5(a)に示す二次元座標の横軸は蓄電装置Bの充電率[%]を示し、縦軸は蓄電装置Bの内部抵抗[mΩ]を示している。また、図5(a)に示す実線は充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示し、図5(a)に示す破線は放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示している。
【0089】
上記実施形態では、図2に示すように、50[%]よりも100[%]に近い充電率を含んで昇温時使用範囲(第1昇温時使用範囲)が設定される構成であるが、図5(a)に示すように、50[%]よりも0[%]に近い充電率を含んで昇温時使用範囲(第2昇温時使用範囲)が設定されてもよい。なお、図5(a)では、昇温時使用範囲の下限値を20[%]とし上限値を40[%]としている。
【0090】
<変形例2>
図5(b)は、昇温時使用範囲のさらに他の設定例を示す図である。
【0091】
なお、図5(b)に示す二次元座標の横軸は蓄電装置Bの充電率[%]を示し、縦軸は蓄電装置Bの内部抵抗[mΩ]を示している。また、図5(b)に示す実線は充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示し、図5(b)に示す破線は放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を示し、図5(b)に示す一点鎖線は充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係と、放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係との平均値を示している。
【0092】
図2または図5(a)の例では、充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を用いて、昇温時使用範囲を設定する構成であるが、図5(b)に示すように、充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係と、放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係との平均値を用いて、昇温時使用範囲を設定するように構成してもよい。図5(b)の例では、昇温時使用範囲の下限値を20[%]とし上限値を40[%]としている。なお、通常時使用範囲は、図2に示す例と同様に、50[%]を中心とする前後20[%]の範囲とする。
【0093】
このように、各対応関係の平均値を用いて昇温時使用範囲を設定する場合は、蓄電装置Bの充電量と放電量が釣り合うように、燃料電池FCの発電制御が行われる燃料電池システムFCSに有効である。
【0094】
<変形例3>
また、昇温時使用範囲は、充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係または放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係において、内部抵抗の最小値に対応する充電率より大きい充電率を含む第1昇温時使用範囲、及び、内部抵抗の最小値に対応する充電率より小さい充電率を含む第2昇温時使用範囲のうち、単位充電率あたりの内部抵抗の変化量が大きい方としてもよい。
【0095】
<変形例4>
上記実施形態では、充電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係、または、放電時の蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係、または、各対応関係の平均値において、通常時使用範囲に含まれる内部抵抗の最大値より大きい内部抵抗が昇温時使用範囲に含まれるように昇温時使用範囲が設定される構成であるが、内部抵抗の最小値を含まないように昇温時使用範囲として設定してもよい。
【0096】
<変形例5>
また、昇温時使用範囲における単位充電率あたりの内部抵抗の変化量が、通常時使用範囲における単位充電率あたりの内部抵抗の変化量より大きくなるように昇温時使用範囲が設定されてもよい。
【0097】
<変形例6>
また、蓄電装置Bの充電率と、(充電時の蓄電装置Bの内部抵抗×α)+(放電時の蓄電装置Bの内部抵抗×(1-α))の計算結果とにより求められる、蓄電装置Bの充電率と内部抵抗との対応関係を用いて昇温時使用範囲を設定するように構成してもよい。なお、αは、1より小さい値であり、蓄電装置Bの種類に応じて変化させてもよい。
【0098】
<変形例7>
また、制御部Cntは、昇温時使用範囲を100[%]側に設定する場合で、かつ、温度検出部Stにより検出される温度が温度閾値より小さい場合、車両側制御部に送られる、燃料電池システムFCSの最大出力値を所定値下げるように構成してもよい。これにより、制御部Cntから車両側制御部に送られる、燃料電池システムFCSの最大出力値と、燃料電池システムFCSの実際の最大出力値との差を小さくすることができるため、昇温時使用範囲を100[%]側に設定することで燃料電池システムFCSの最大出力値が低下してしまうことにより車両の駆動に生じる違和感を緩和することができる。
【符号の説明】
【0099】
FCS 燃料電池システム
Lo 負荷
FC 燃料電池
HT 水素タンク
HTV 水素タンク弁
INJ インジェクタ
GLS 気液分離機
HP 水素循環ポンプ
EDV 排気排水弁
DIL 希釈器
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
ASV エアシャット弁
R ラジエタ
F ファン
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
St 温度検出部
Sif 電流センサ
Svf 電圧センサ
Sib 電流センサ
Svb 電圧センサ
Stg 記憶部
Cnt 制御部
図1
図2
図3
図4
図5