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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068762
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20240514BHJP
   B60T 7/14 20060101ALI20240514BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240514BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240514BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240514BHJP
   B60W 50/02 20120101ALI20240514BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20240514BHJP
【FI】
B60W40/08
B60T7/14
B60T7/12 F
B60T8/17 D
B60T17/18
B60W50/02
B60W30/18
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179335
(22)【出願日】2022-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓真
(72)【発明者】
【氏名】杉村 優子
(72)【発明者】
【氏名】増掛 佑一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】古森 雄一
(72)【発明者】
【氏名】野相 祥平
【テーマコード(参考)】
3D049
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB01
3D049CC02
3D049CC07
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049KK05
3D049RR08
3D049RR12
3D049RR13
3D241BA64
3D241BA70
3D241BB01
3D241BB02
3D241BB77
3D241CC01
3D241CC08
3D241CD07
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC01Z
3D241DD04Z
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246DA02
3D246EA01
3D246EA18
3D246GA01
3D246GB30
3D246GB33
3D246GB36
3D246GB37
3D246GC16
3D246HA01A
3D246HA08A
3D246HA12A
3D246HA25A
3D246HA54A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA93A
3D246HB12A
3D246HB18A
3D246HB24A
3D246HB25A
3D246JA02
3D246KA15
3D246LA13Z
3D246LA15Z
3D246LA72Z
3D246MA06
3D246MA16
3D246MA23
3D246MA37
3D246MA38
(57)【要約】
【課題】運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が発生した場合にも、車両の安全性を確保すること。
【解決手段】制御装置100は、自車両の周辺状況を認識する認識部110と、認識部110の認識結果に基づいて、自車両の加減速及び操舵を制御する運転制御部120と、自車両の運転者の異常を検知する運転者異常検知部130と、電動パーキングブレーキ装置230の異常を検知する車両異常検知部140と、を備える。運転制御部120は、自車両の走行中に運転者の異常が検知されると、ブレーキ装置210による制動により自車両をゼロよりも大きい所定速度まで減速させ、自車両が所定速度まで減速される前に、又は自車両が所定速度まで減速された際に、電動パーキングブレーキ装置230の異常が検知されていると、自車両を所定速度まで減速させた後、自車両を走行中の走行路に沿って走行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置によって駆動される車輪を備える車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両は、
車輪を制動するブレーキ装置と、
電子制御により車輪を固定する電動パーキングブレーキ装置と、
をさらに備え、
前記車両制御装置は、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記車両の加減速及び操舵を制御する運転制御部と、
前記車両の運転者の異常を検知する運転者異常検知部と、
前記電動パーキングブレーキ装置の異常を検知する車両異常検知部と、
を備え、
前記運転制御部は、
前記車両の走行中に、前記運転者異常検知部によって前記運転者の異常が検知されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両をゼロよりも大きい所定速度まで減速させ、
前記車両が前記所定速度まで減速される前に、又は前記車両が前記所定速度まで減速された際に、前記車両異常検知部によって前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されていると、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記認識部によって先行車両が認識されるまで、前記車両を走行中の走行路に沿って走行させる、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記認識部によって前記先行車両が認識されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、
前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記認識部によって前記先行車両が認識されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させ、
前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させたときから所定期間が経過すると、前記ブレーキ装置による制動を停止させる、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記車両制御装置は、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させると、前記車両のドアロックを解除する、
車両制御装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記車両のドアが開放されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに、前記走行路に設けられた所定の停止位置に前記車両が到達すると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されなくなると、前記電動パーキングブレーキ装置により前記車輪を固定する、
車両制御装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記車両異常検知部は、さらに、前記ブレーキ装置の異常を検知し、
前記運転制御部は、
(i)前記車両の走行中に、前記運転者の異常が検知され、且つ前記車両異常検知部によって前記ブレーキ装置の異常が検知されていない場合には、
前記ブレーキ装置による制動により前記車両を前記所定速度まで減速させ、
前記車両が前記所定速度まで減速される前に、又は前記車両が前記所定速度まで減速された際に、前記車両異常検知部によって前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されていると、前記認識部によって前記先行車両が認識されるまで、前記車両を前記走行路に沿って走行させ、
(ii)前記車両の走行中に、前記運転者の異常が検知され、且つ前記車両異常検知部によって前記ブレーキ装置の異常が検知された場合には、
前記駆動装置を制御して、前記車両を前記走行路に沿って走行させ、
前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記車両の走行速度がゼロを基準とする所定範囲内となると、前記電動パーキングブレーキ装置により前記車輪を固定する、
車両制御装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記車両に対するアクセル操作又は前記走行路の道路勾配にかかわらず、前記車両を前記走行路に沿ってクリープ走行させる、
車両制御装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記車両は、車内外に対する報知を行うことが可能な報知装置をさらに備え、
前記車両制御装置は、前記報知装置を制御する報知制御部をさらに備え、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知されると、前記運転者の異常が検知された旨の報知を前記報知装置に行わせる、
車両制御装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記車両は、車内外に対する報知を行うことが可能な報知装置をさらに備え、
前記駆動装置は、変速機を介して前記車輪を駆動し、
前記車両制御装置は、前記報知装置を制御する報知制御部をさらに備え、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知されると、前記変速機のシフト位置をパーキングレンジにするように指示する旨の報知を前記報知装置に行わせる、
車両制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両制御装置であって、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知された後に前記変速機のシフト位置がパーキングレンジとされると、前記運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させる解除操作を案内する報知を前記報知装置に行わせ、
前記解除操作が行われたことに応じて、前記運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させる、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脆弱な立場にある交通参加者にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供するための取り組みが活発化している。この取り組みの1つとして、交通の安全性や利便性を改善すべく、自動車などの車両における運転支援技術や自動運転技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
運転支援技術の一例として、例えば、運転者が車両を運転する能力を失っている異常状態(例えば、居眠り運転状態や心身機能停止状態など)に陥っていることを検知すると、車両を自動的に停止(換言すると停車)させるようにした技術がある。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、車両走行中に、緊急事態検知部により緊急事態が検知又は推定され、且つ、アクセル操作検知部により所定時間以上のアクセル無操作状態が検知された場合に、ステアリング操作の有無にかかわらず車両を自動停車させるようにした技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、運転者が異常であると判定されている状況において制動装置の異常以外の理由により運転支援制御を正常に行うことができないときには、車両の減速度を所定値以上になるように制御して車両を減速させるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-019410号公報
【特許文献2】特開2018-062309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブレーキ装置を長時間作動させ続けると、ブレーキ装置が故障して、ブレーキ装置による制動が行えなくなるおそれがある。このようなことから、車両の停止状態を長時間維持する場合には、一般的にパーキングブレーキ装置が用いられる。しかしながら、パーキングブレーキ装置に異常が発生することも考えられる。従来技術では、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が発生した場合にも、車両の安全性を確保する観点から、改善の余地があった。
【0008】
より具体的には、例えば、変速機のシフト位置を電子的に制御可能ないわゆる「シフト・バイ・ワイヤ」の車両では、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が発生しても、ブレーキ装置にて車両を停止させてから、シフト位置を「P」レンジ(パーキングレンジ)へ電子的に変更することで、車両の停止状態を維持できる可能性がある。これに対し、変速機が機械式変速機のいわゆる「非シフト・バイ・ワイヤ」の車両の場合には、シフト位置を「P」レンジへ電子的に変更することはできないため、電動パーキングブレーキ装置の異常が発生すると車両の停止状態を維持することができなくなる。また、「シフト・バイ・ワイヤ」の車両であっても、変速機の異常等によりシフト位置を電子的に制御できなくなった場合にも、「非シフト・バイ・ワイヤ」の車両と同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が発生した場合にも、車両の安全性を確保可能な車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
駆動装置によって駆動される車輪を備える車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両は、
車輪を制動するブレーキ装置と、
電子制御により車輪を固定する電動パーキングブレーキ装置と、
をさらに備え、
前記車両制御装置は、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記車両の加減速及び操舵を制御する運転制御部と、
前記車両の運転者の異常を検知する運転者異常検知部と、
前記電動パーキングブレーキ装置の異常を検知する車両異常検知部と、
を備え、
前記運転制御部は、
前記車両の走行中に、前記運転者異常検知部によって前記運転者の異常が検知されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両をゼロよりも大きい所定速度まで減速させ、
前記車両が前記所定速度まで減速される前、又は前記車両が前記所定速度まで減速された際に、前記車両異常検知部によって前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されていると、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記認識部によって先行車両が認識されるまで、前記車両を走行中の走行路に沿って走行させる、
車両制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が発生した場合にも、車両の安全性を確保可能な車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の制御装置100を含む車両システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2】制御装置100による具体的な制御例を示す図である。
図3】制御装置100による具体的な制御例を示す図である。
図4】車内報知の一例を示す図である。
図5】制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車両制御装置の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。また、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0014】
<車両システム1の全体構成>
図1は、本発明の車両制御装置の一実施形態である制御装置100を含む車両システム1の全体構成を示すブロック図である。車両システム1が搭載される車両を、以下、「自車両M」と称する。自車両Mは、例えば、二輪、三輪、又は四輪などの自動車であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0015】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ドライバモニタカメラ50と、ナビゲーション装置60と、MPU(Map Positioning Unit)70と、運転操作子80と、ウインカー91(ハザードランプ93)と、ホーン装置92と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、電動パーキングブレーキ装置230と、を備える。これらの装置や機器は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信線などの多重通信線やシリアル通信線、又は無線通信網によって互いに接続されている。
【0016】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0017】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射するとともに、物体で反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離及び方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0018】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0019】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14の検出結果をそのまま制御装置100に出力してもよい。
【0020】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi(登録商標)網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0021】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、MID(Multi Information Display)31を含む各種表示装置、SOSボタン32を含む各種操作子、スピーカ、ブザーなどを含む。
【0022】
車両センサ40は、自車両Mの走行速度(以下、「車速」とも称する)を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサなどを含む。
【0023】
ドライバモニタカメラ50は、例えば、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ50は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、「運転者」とも称する)の頭部を正面から(すなわち顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置及び向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。
【0024】
ナビゲーション装置60は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61と、ナビHMI62と、経路決定部63とを備える。ナビゲーション装置60は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報64を保持している。
【0025】
GNSS受信機61は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定又は補完されてもよい。
【0026】
ナビHMI62は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI62は、前述したHMI30と一部又は全部が共通化されてもよい。
【0027】
経路決定部63は、例えば、GNSS受信機61により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI62を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、「地図上経路」とも称する)を、第1地図情報64を参照して決定する。第1地図情報64は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報64は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU70に出力される。
【0028】
ナビゲーション装置60は、地図上経路に基づいて、ナビHMI62を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置60は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0029】
MPU70は、例えば、推奨車線決定部71を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報72を保持している。推奨車線決定部71は、ナビゲーション装置60から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報72を参照してブロック毎に推奨車線を決定する。推奨車線決定部71は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部71は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0030】
第2地図情報72は、第1地図情報64よりも高精度な地図情報である。第2地図情報72は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報などを含んでいる。また、第2地図情報72には、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報72は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0031】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、ウインカーレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、制御装置100、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部又は全部に出力される。
【0032】
ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持しているか否かを検知可能な信号を制御装置100に出力する。
【0033】
ウインカー91は、自車両Mの左側(例えば左前と左後)及び右側(例えば右前と右後)のそれぞれに、自車両Mの外部から視認可能に設けられたランプ(灯体)などにより構成される方向指示器である。ウインカー91は、運転者が操作可能に設けられたウインカーレバーの操作に応じて点灯又は消灯する。
【0034】
また、ウインカー91は、自車両Mの左側及び右側のそれぞれに設けられた各ランプが一斉に点滅(以下、「ハザード点滅」とも称する)することにより、自車両Mの存在や異常の発生を車外に対して報知するハザードランプ93としても機能し得る。ハザードランプ93は、報知装置の一例である。なお、本実施形態では、ハザードランプ93をウインカー91により実現したが、ハザードランプ93はウインカー91とは異なるランプによって実現されてもよい。
【0035】
ホーン装置92は、ホーンを吹き鳴らすこと(以下、「ホーン吹鳴」とも称する)により、自車両Mの存在や異常の発生を車外に対して報知する。ホーン装置92は、報知装置の他の一例である。
【0036】
走行駆動力出力装置200は、自車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を車輪(具体的には駆動輪。例えば前輪)に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。例えば、ここで、変速機は、機械式変速機(すなわち非シフト・バイ・ワイヤ)であり、運転操作子80に含まれるシフトレバーは、この変速機と機械的に接続されている。走行駆動力出力装置200のECUは、制御装置100から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0037】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、制御装置100から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従ってブレーキ装置210の電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0038】
なお、ブレーキ装置210を長時間作動させ続けると、ブレーキ装置210の電動モータなどが故障するおそれがあり、仮にそのような事態が発生すると、ブレーキ装置210による自車両Mの制動ができなくなってしまう。このため、ブレーキ装置210を長時間作動させ続けることは、できるだけ避けるのが望ましい。
【0039】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。ステアリング装置220の電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、制御装置100から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、ステアリング装置220の電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0040】
電動パーキングブレーキ装置230は、例えば、自車両Mの車輪(例えば後輪。すなわち非駆動輪)のブレーキキャリパーを把持するようにブレーキパッドを駆動させることによってブレーキキャリパーに作用する把持力(制動力)を発生させる電動モータと、電動パーキングブレーキECU(以下、「EPB-ECU」とも称する)とを備える。EPB-ECUは、制御装置100から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動パーキングブレーキ装置230の電動モータを制御し、自車両Mの車輪を固定させる。すなわち、電動パーキングブレーキ装置230は、電子制御により車輪を固定可能に構成される。
【0041】
制御装置100は、自車両Mの全体を統括制御するコンピュータであり、例えば、認識部110と、運転制御部120と、運転者異常検知部130と、車両異常検知部140と、報知制御部150とを備える。認識部110、運転制御部120、運転者異常検知部130、車両異常検知部140及び報知制御部150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置にあらかじめ格納されていてもよい。
【0042】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両Mの周辺状況を認識する。具体的には、認識部110は、自車両Mの周辺にある物体の位置、及び物体の速度、加速度などの走行状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナーなどの代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、又はしようとしているか否か)を含んでもよい。認識部110が認識する物体には、例えば、自車両Mの前方を走行する他車両(以下、「先行車両」とも称する)M1が含まれる。ここで、先行車両は、自車両Mと同じ車線(例えば後述の自車線L1)において、自車両Mの前方を走行する車両とすることができる。
【0043】
また、認識部110は、例えば、自車両Mが走行している走行環境を認識する。一例として、認識部110は、第2地図情報72から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、自車両Mの走行車線(以下、「自車線L1」とも称する)を認識する。なお、認識部110は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置60から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部110は、例えば、停止線(一時停止線を含む)、料金所、道路上の障害物など、自車両Mが停止すべき所定の停止位置をさらに認識してもよい。
【0044】
また、認識部110は、例えば、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。一例として、認識部110は、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、及び自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置及び姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部110は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線又は道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0045】
運転者異常検知部130は、自車両Mの運転者の異常を検知する。ここで、運転者の異常とは、例えば、急病・失神などにより運転者が意識を喪失している状態や、居眠り・脇見などにより運転者が運転に集中できない状態といった、運転者が安全な運転操作を行うことができない蓋然性の高い状態をいう。
【0046】
運転者異常検知部130は、例えば、ドライバモニタカメラ50により撮像された運転車の画像を解析することにより、運転者の異常を検知する。また、運転者異常検知部130は、例えば、SOSボタン32が押下されたことに基づいて、運転車の異常を検知してもよい。さらに、運転者異常検知部130は、例えば、舵角センサにより検出したステアリング舵角が所定期間変化しない場合に、運転者の異常を検知してもよい。また、運転者異常検知部130は、例えば、運転者の脈拍や体温といった生体情報に基づいて運転者の異常を検出してもよいし、運転者が発生する音声などの自車両Mの車内における音声情報に基づいて運転者の異常を検出してもよい。
【0047】
車両異常検知部140は、電動パーキングブレーキ装置230の異常を検知する。一例として、車両異常検知部140は、EPB-ECUに対して、異常検知用の信号を定期的に送信する。そして、車両異常検知部140は、異常検知用の信号を送信してから所定期間内にEPB-ECUからの応答がなかった場合に、電動パーキングブレーキ装置230の異常を検知する。
【0048】
また、本実施形態では、車両異常検知部140は、ブレーキ装置210の異常も検知する。一例として、車両異常検知部140は、ブレーキECUに対して、異常検知用の信号を定期的に送信する。そして、車両異常検知部140は、異常検知用の信号を送信してから所定期間内にブレーキECUからの応答がなかった場合に、ブレーキ装置210の異常を検知する。
【0049】
運転制御部120は、認識部110による自車両Mの周辺状況の認識結果に基づいて、自車両Mの運転を支援する運転支援制御を実行可能に構成される。運転制御部120が実行可能な運転支援制御には、衝突軽減制御が含まれる。
【0050】
衝突軽減制御は、自車両Mと他の物体との衝突を抑制するものであり、例えば、自車両Mと衝突する可能性のある物体が検出された場合に自車両Mを減速させる制動制御を含む。制動制御において、例えば、運転制御部120は、ブレーキ装置210のブレーキECUに対して所定のブレーキトルクを発生させるように指示することで、自車両Mを減速させる。このような衝突軽減制御を実現するブレーキシステムは、CMBS(Collision Mitigation Brake System)とも称される。
【0051】
さらに、運転制御部120が実行可能な運転支援制御には、路外逸脱抑制制御も含まれる。路外逸脱抑制制御は、自車両Mの自車線L1からの逸脱を抑制するものであり、例えば、自車両Mが自車線L1から逸脱する場合に自車両Mを自車線L1内に復帰させる操舵制御を含む。操舵制御において、例えば、運転制御部120は、ステアリング装置220のステアリングECUに対して転舵輪の向きを変更させるように指示することで、自車両Mを自車線L1内に復帰させる。或いは、操舵制御において、運転制御部120は、ブレーキ装置210を介して各車輪へのブレーキトルクを制御することにより、自車両Mを自車線L1内に復帰させるように操舵してもよい。
【0052】
また、運転制御部120は、走行駆動力出力装置200のECUを介して、走行駆動力出力装置200が出力する走行駆動力(トルク)を制御することで、自車両Mを適宜減速又は加速させてもよい。
【0053】
このように自車両Mの加減速及び操舵を制御可能に構成された運転制御部120は、自車両Mの走行中に、運転者異常検知部130によって運転者の異常が検知されると、ブレーキ装置210による制動により、自車両Mを速度VP1まで減速させる。ここで、速度VP1は、ゼロよりも大きい所定速度であり、例えば10[km/h]程度の極低速とすることができる。また、ここで、「自車両Mの走行」は、運転者の手動運転による走行であってもよいし、自車両Mが自律移動するような自動運転による走行であってもよい。
【0054】
そして、運転制御部120は、自車両Mが速度VP1まで減速される前に、又は自車両Mが速度VP1まで減速された際に、車両異常検知部140によって電動パーキングブレーキ装置230の異常が検知されていると、自車両Mを速度VP1まで減速させた後、認識部110によって先行車両が認識されるまで、自車両Mを現在走行中の走行路である自車線L1に沿って走行させる。すなわち、運転制御部120は、自車両Mを速度VP1まで減速させた時点でブレーキ装置210による制動を一旦停止させて、そのまま自車両Mを自車線L1に沿って走行させる。また、このとき、運転制御部120は、例えば、走行駆動力出力装置200から出力される走行駆動力を、運転者のアクセル操作によらず、できるだけ小さくする。このような制御を、以下、「クリープ相当の制御」とも称する。自車線L1が平坦路であれば、運転制御部120がクリープ相当の制御を行うことにより、自車両Mをクリープ走行させることができる。
【0055】
ここで、クリープ走行とは、変速機のシフト位置が「P」レンジ(パーキングレンジ)や「N」レンジ(ニュートラルレンジ)以外にある状態において、アクセルペダルが踏み込まれていない場合(すなわちアクセル開度がゼロに近い場合)でも、自車両Mが微速走行する(すなわちクリープする)ようなクリープトルクが駆動力源から車輪(具体的には駆動輪)に伝達されることにより行われる走行である。
【0056】
自車線L1が平坦路であるとき、自車両Mは、クリープ走行により、0[km/h]よりも大きい一定の速度VP2以下(例えば10[km/h]以下)の極低速で走行する。このような極低速での走行であれば、比較的に弱い制動力で自車両Mを直ちに停止させることができる。なお、速度VP1と速度VP2とは、同じ速度(例えば10[km/h])であってもよいし、互いに異なる速度であってもよい。例えば、速度VP1は、速度VP2よりも低い速度であってもよい。
【0057】
また、自車線L1が下り坂になっている場合には、クリープ相当の制御が行われたとしても自車両Mの車速は上がり得る。しかし、クリープ相当の制御が行われていれば、自車両Mの車速が一時的に上がったとしても、その後に自車線L1が平坦路になった際に、自車両Mをクリープ走行させることができる。
【0058】
このように、制御装置100(例えば運転制御部120)は、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置230の異常が検知された場合には、自車両Mを速度VP1まで減速させ、その後、先行車両が認識されるまで、ブレーキ装置210による制動を停止させた状態で自車両Mを自車線L1に沿って走行(例えばクリープ走行)させる。これにより、ブレーキ装置210を長時間作動させることによる故障を抑制して、先行車両が認識されたことに伴ってブレーキ装置210による制動を行うことが可能となる。よって、非シフト・バイ・ワイヤの自車両Mで、運転者に異常が発生し、且つ、電動パーキングブレーキ装置230によって車輪を固定できない場合であっても、自車両Mの安全性を確保できる。
【0059】
また、運転制御部120は、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているとき(具体的には、運転者及び電動パーキングブレーキ装置230の異常を検知したことに応じて、自車両Mを速度VP1まで減速させた後に、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているとき。以下においても同様)に認識部110によって先行車両が認識されると、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させてもよい。これにより、自車両Mが先行車両と衝突するのを抑制して、自車両Mの安全性の向上を図ることができる。
【0060】
また、運転制御部120は、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているときに認識部110によって先行車両が認識されると、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させ、自車両Mを停止させたときから所定期間(例えば15分間)が経過すると、ブレーキ装置210による制動を停止させてもよい。ここで、所定期間は、ブレーキ装置210の性能(具体的にはブレーキ装置210を連続して作動させ続けることが可能な時間)などを勘案して定められる。これにより、後述するように、自車両Mが先行車両と衝突した際の損害を抑制しつつ、ブレーキ装置210を長時間作動させることによる故障を抑制できる。
【0061】
なお、制御装置100は、先行車両が認識されたことに応じてブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させると、自車両Mのドアロックを解除してもよい。このように、自車両Mが停止されたことに応じて自車両Mのドアロックを解除することにより、救助者が容易に自車両Mの運転者を救助することが可能になる。
【0062】
また、運転制御部120は、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているときに自車両Mのドアが開放されると、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させてもよい。このように、自車両Mのドアが開放されたことに応じて自車両Mを停止させることにより、救助者が安全且つ容易に自車両Mの運転者を救助することが可能になる。
【0063】
また、運転制御部120は、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているときに、自車線L1に設けられた所定の停止位置に自車両Mが到達すると、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させてもよい。前述したように、所定の停止位置としては、停止線(一時停止線を含む)、料金所、道路上の障害物などを挙げることができる。このように、自車両Mを所定の停止位置で停止させることで、自車両Mが停止位置で停止しないことによる事故を抑制し、自車両Mの安全性を向上させることができる。
【0064】
また、運転制御部120は、自車両Mを自車線L1に沿って走行させているときに電動パーキングブレーキ装置230の異常が検知されなくなると、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定してもよい。これにより、何らかの要因によって電動パーキングブレーキ装置230の異常を誤検知した場合にも、その後、適切なタイミングで、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定して、自車両Mを停止させることが可能となる。
【0065】
また、運転制御部120は、自車両Mの走行中に、運転者の異常が検知され、且つ車両異常検知部140によってブレーキ装置210の異常が検知されていない場合には、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを速度VP1まで減速させ、自車両Mが速度VP1まで減速される前に、又は自車両Mが速度VP1まで減速された際に、車両異常検知部140によって電動パーキングブレーキ装置230の異常が検知されていると、自車両Mを速度VP1まで減速させた後、認識部110によって先行車両が認識されるまで、ブレーキ装置210による制動を停止させて自車両Mを自車線L1に沿って走行させるといった、(i)の制御を行うようにしてもよい。
【0066】
さらに、運転制御部120は、自車両Mの走行中に、運転者の異常が検知され、且つブレーキ装置210の異常が検知された場合には、走行駆動力出力装置200(すなわち駆動装置)を制御して、自車両Mを自車線L1に沿って走行させ、自車両Mが自車線L1に沿って走行させているときに自車両Mの走行速度がゼロを基準とする所定範囲内となると、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定するといった、(ii)の制御を行うようにしてもよい。ここで、所定範囲は、例えば、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定したとしても、自車両Mや電動パーキングブレーキ装置230に対して過大な衝撃が発生しないような範囲とすることができる。
【0067】
上記(i)及び(ii)の制御を運転制御部120が実行することにより、運転者の異常が発生し、且つ電動パーキングブレーキ装置230の異常が発生した場合のみならず、運転者の異常が発生し、且つブレーキ装置210の異常が発生した場合にも、自車両Mを適切に停止させることを可能にし、自車両Mの安全性の向上を図れる。
【0068】
また、運転制御部120は、例えば、自車両Mを速度VP1まで減速させた後、自車両Mに対するアクセル操作(例えばアクセルペダルを踏み込む操作)又は自車線L1の道路勾配にかかわらず、自車両Mが自車線L1に沿ってクリープ走行するように制御してもよい。これにより、運転者の異常が発生した場合にも、自車両Mに対するアクセル操作又は自車線L1の道路勾配にかかわらず、自車両Mを適切に走行させることが可能になる。一例として、運転者がアクセルペダルを踏み込んだまま失神したとしても、自車両Mをクリープ走行させることが可能となる。他の一例として、自車線L1が上り坂になっており、運転者がアクセルペダルから足を離した状態で失神したとしても、自車両Mのずり下がりを抑制して、自車両Mをクリープ走行にて前進させることが可能となる。
【0069】
報知制御部150は、例えば、運転者の異常が検知されると、運転者の異常が検知された旨の報知を自車両Mが備える所定の報知装置に行わせる。本実施形態では、報知制御部150は、運転者の異常が検知されると、運転者の異常が検知された旨を、ホーン装置92及びハザードランプ93によって自車両Mの車外に対して報知する。以下、この報知を「車外報知」とも称する。このような車外報知により、運転者に異常が発生したことを自車両Mの周辺の交通参加者に知らしめて、運転者の救助や事故の回避を促すことができる。
【0070】
また、報知制御部150は、運転者の異常が検知されると、自車両Mの変速機のシフト位置を「P」レンジ(パーキングレンジ)にするように指示する旨の報知(以下、「パーキングレンジ指示報知」とも称する)を、自車両Mが備える所定の報知装置に行わせてもよい。本実施形態では、報知制御部150は、運転者の異常が検知されると、パーキングレンジ指示報知を、自車両Mの車内に対する報知(以下、「車内報知」とも称する)として、HMI30に行わせる。
【0071】
この車内報知(すなわちパーキングレンジ指示報知)は、例えば、図2に示すように、『車両の停止状態を維持するためにシフト位置を「P」にしてください』というメッセージを、HMI30に含まれるMID31に表示させることにより実現される。このような車内報知により、救助者に対して自車両Mにおけるシフト位置を「P」レンジにするように促すことができ、救助者が自車両Mを停止させて安全且つ容易に運転者を救助することを可能にする。なお、前述した車外報知と車内報知とを合わせて、以下、「車内外報知」とも称する。
【0072】
また、報知制御部150は、運転者の異常が検知された後に自車両Mの変速機のシフト位置が「P」レンジとされると、運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させる解除操作を案内する報知(以下、「解除操作報知」とも称する)を、自車両Mが備える所定の報知装置に行わせてもよい。そして、報知制御部150は、解除操作が行われたことに応じて、運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させるようにしてもよい。
【0073】
ここで、運転者の異常が検知されたことによる報知としては、例えば、前述の車外報知やパーキングレンジ指示報知などを挙げることができる。また、解除操作は、例えば、自車両Mの車内に設けられた所定のスイッチボタン(不図示)の押下とすることができる。この場合、報知制御部150は、例えば、『ドライバ異常時対応システム作動中。終了させるにはボタンを押下してください』といったメッセージをMID31に表示させることにより、解除操作報知を行わせる。これにより、救助者は、自車両Mの変速機のシフト位置を「P」レンジとした後に解除操作を行うことにより、運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させることができる。
【0074】
<制御装置による具体的な制御例>
次に、制御装置100による具体的な制御例について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3及び図4には、道路300を走行中の所定時期(後述の時期t1、t2、t3、t4又はt5)における自車両Mと、自車両Mの車速の推移(符号Cを付した曲線を参照)とが示されている。
【0075】
図3及び図4に示す道路300は、図3及び図4における左側から右側へ向かう方向が進行方向とされた左車線310及び右車線320を有する。左車線310と右車線320との境界には、道路区画線としての区画線Lが設けられている。図3及び図4において、自車両Mは、左車線310を走行中である。すなわち、図3及び図4において、左車線310は自車線L1である。
【0076】
図3及び図4に示す例では、時期t1において運転者に異常が発生し、時期t1後の時期t2において制御装置100が運転者の異常を検知している。また、図3及び図4に示す例では、時期t2(又は後述の時期t3)よりも前に、制御装置100が電動パーキングブレーキ装置230の異常を検知しているものとする。
【0077】
図3に示す例では、制御装置100は、運転者の異常を検知した時期t2からブレーキ装置210による制動を開始させ、自車両Mを速度VP1(図3及び図4に示す例では、速度VP1=速度VP2とする)まで減速させる。また、制御装置100は、時期t2からホーン吹鳴及びハザード点滅による車外報知も開始し、運転者に異常が発生したことを自車両Mの周辺の交通参加者に報知する。さらに、制御装置100は、時期t2から、図2に示した車内報知(パーキングレンジ指示報知)をMID31に行わせることにより、救助者に対してシフト位置を「P」レンジにするように促す。
【0078】
そして、自車両Mが速度VP1まで減速した時期t3となると、制御装置100は、ブレーキ装置210による制動を停止させ、自車両Mを自車線L1に沿って走行させる。また、このとき、制御装置100はクリープ相当の制御を行う。これにより、図3に示す例では、自車両Mが自車線L1に沿ってクリープ走行している。そして、その後、制御装置100は、先行車両M1を認識した時期t4で、CBMSを作動させて自車両Mを停止させる。
【0079】
このように、本実施形態によれば、運転者に異常が発生し、且つ、電動パーキングブレーキ装置230によって車輪を固定できない場合であっても、ブレーキ装置210を長時間作動させることによる故障を抑制しつつ、先行車両M1が認識されたことを契機に既存のCBMSを利用して自車両Mを安全に停止させることができる。
【0080】
なお、図3に示す例において、CBMSの作動により自車両Mが停止したときから所定期間が経過した場合に、自車両Mは走行を再開し得る。自車両Mが走行を再開することで先行車両M1に追突する可能性があるが、このときの車速は、クリープ相当の制御により極低速となる。このため、自車両Mが先行車両M1に追突したとしても、当該追突による損害は最小限に抑えられる。そして、走行を再開した自車両Mは、先行車両M1への追突により停止するため、救助者が安全且つ容易に運転者を救助することが可能となる。
【0081】
一方、図4に示す例は、自車両Mが自車線L1に沿って走行しているときに、自車両Mのドアが開放されたり、自車線L1に設けられた所定の停止位置に自車両Mが到達したりした場合の例である。
【0082】
図4に示す例では、制御装置100は、自車両Mが自車線L1に沿って走行しているときに、自車両Mのドアが開放された又は自車両Mが所定の停止位置に到達した時期t5で、ブレーキ装置210を作動させて自車両Mを停止させる。
【0083】
このように、本実施形態によれば、自車両Mが自車線L1に沿って走行しているときに、自車両Mのドアが開放されたことに応じて自車両Mを停止させることで、救助者が安全且つ容易に運転者を救助することを可能にする。また、車内報知(パーキングレンジ指示報知)を行うことにより、救助者に対してシフト位置を「P」レンジにするように促し、救助者が安全且つ容易に自車両Mの運転者を救助することを可能にする。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、自車両Mが自車線L1に沿って走行しているときに、自車両Mが所定の停止位置に到達したことに応じて自車両Mを停止させることで、当該停止位置で自車両Mが停止しないことによる事故を抑制でき、自車両Mの安全性の向上を図れる。
【0085】
<制御装置100による処理>
次に、制御装置100が実行する処理の一例について、図5図7を参照しながら説明する。例えば、制御装置100は、自車両Mのイグニッション電源がオンであるときに、図5図7に示す処理を実行する。
【0086】
図5に示すように、制御装置100は、まず、運転者の異常を検知したか否かを判定する(ステップS1)。運転者の異常を検知していないと判定したならば(ステップS1:No)、制御装置100は、ステップS1の処理を繰り返す。
【0087】
運転者の異常を検知したと判定したならば(ステップS1:Yes)、制御装置100は、ブレーキ装置210が正常であるか否かを判定する(ステップS2)。ブレーキ装置210が正常でない(すなわち異常)と判定したならば(ステップS2:No)、制御装置100は、図7のステップS16の処理(後述)に進む。
【0088】
一方、ブレーキ装置210が正常であると判定したならば(ステップS2:Yes)、制御装置100は、ブレーキ装置210による減速及び車内外報知を開始する(ステップS3)。
【0089】
そして、制御装置100は、車速が速度VP1になったか否かを判定する(ステップS4)。車速が速度VP1になっていないと判定したならば(ステップS4:No)、制御装置100は、ステップS4の処理を繰り返す。
【0090】
車速が速度VP1になったと判定したならば(ステップS4:Yes)、制御装置100は、電動パーキングブレーキ装置230が正常であるか否か判定する(ステップS5)。電動パーキングブレーキ装置230が正常であると判定したならば(ステップS5:Yes)、制御装置100は、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定して(ステップS6)、自車両Mを停止させ、一連の処理を終了する。また、制御装置100は、ステップS6の処理により自車両Mを停止させると、自車両Mのドアロックを解除するようにしてもよい。
【0091】
一方、電動パーキングブレーキ装置230が正常でない(すなわち異常)と判定したならば(ステップS5:No)、制御装置100は、ブレーキ装置210による制動を停止して、自車両Mのクリープ走行を開始する(ステップS7)。
【0092】
そして、制御装置100は、再び、電動パーキングブレーキ装置230が正常であるか否か判定する(ステップS8)。電動パーキングブレーキ装置230が正常であると判定したならば(ステップS8:Yes)、制御装置100は、ステップS6の処理へ進んで、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定して自車両Mを停止させ、一連の処理を終了する。
【0093】
一方、電動パーキングブレーキ装置230が正常でない(すなわち異常)と判定したならば(ステップS8:No)、制御装置100は、自車両Mから所定距離内に先行車両が存在するか否かを判定する(ステップS9)。
【0094】
所定距離内に先行車両が存在しないと判定したならば(ステップS9:No)、制御装置100は、自車両Mが所定の停止位置に到達したか否かを判定する(ステップS10)。自車両Mが所定の停止位置に到達していないと判定したならば(ステップS10:No)、制御装置100は、自車両Mのドアが開放されたか否かを判定する(ステップS11)。自車両Mのドアが開放されていないと判定したならば(ステップS11:No)、制御装置100は、ステップS8の処理に復帰する。
【0095】
一方、自車両Mのドアが開放されたと判定したならば(ステップS11:Yes)、制御装置100は、図6のステップS13の処理に進む。また、所定距離内に先行車両が存在すると判定した場合(ステップS9:Yes)、及び自車両Mが所定の停止位置に到達したと判定した場合も(ステップS10:Yes)、制御装置100は、図6のステップS13の処理に進む。
【0096】
ステップS13の処理では、制御装置100は、ブレーキ装置210による制動(例えばCBMSによる制動)により自車両Mを停止させる(ステップS13)。また、制御装置100は、ステップS13の処理により自車両Mを停止させると、自車両Mのドアロックを解除するようにしてもよい。そして、制御装置100は、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させてから所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS14)。
【0097】
自車両Mを停止させてから所定期間が経過していないと判定したならば(ステップS14:No)、制御装置100は、ステップS14の処理を繰り返す。そして、所定期間が経過したと判定したならば(ステップS14:Yes)、制御装置100は、ブレーキ装置210による制動を停止して(ステップS15)、一連の処理を終了する。
【0098】
このように、本実施形態によれば、運転者に異常が発生したときに(ステップS1:Yes)、電動パーキングブレーキ装置230が正常でない場合でも(ステップS5:No)、ブレーキ装置210が正常である限り(ステップS2:Yes)、ブレーキ装置210による制動により自車両Mを停止させることができる(ステップS13)。その際、ブレーキ装置210による制動を適宜停止して(ステップS7、ステップS15)、自車両Mを走行(例えばクリープ走行)させることにより、ブレーキ装置210の故障を抑制しつつ、先行車両への追突などによる損害を最小限に抑えることが可能となる。
【0099】
一方、ブレーキ装置210が正常ではない場合(ステップS2:No)、制御装置100は、図7に示すように、クリープ相当の制御により自車両Mを減速させるとともに、車内外報知を開始する(ステップS16)。例えば、このとき、制御装置100は、走行駆動力出力装置200から出力される走行駆動力(トルク)がアクセル操作によらずクリープトルクとなるように走行駆動力出力装置200を制御することで、自車両Mをクリープ走行となるまで減速させる。
【0100】
そして、制御装置100は、自車両Mの車速がゼロを基準とする所定範囲内となったか否かを判定し(ステップS17)、自車両Mの車速が所定範囲内となったら(ステップS17:Yes)、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定して(ステップS18)、一連の処理を終了する。
【0101】
このように、本実施形態によれば、運転者に異常が発生したときに(ステップS1:Yes)、ブレーキ装置210が正常でない場合でも(ステップS2:No)、電動パーキングブレーキ装置230により車輪を固定して(ステップS18)、自車両Mを停止させることができる。
【0102】
以上に説明したように、本実施形態によれば、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置230の異常が発生した場合にも、自車両Mの安全性を確保可能とする。
【0103】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0104】
例えば、前述した実施形態では、自車両Mの変速機が機械式変速機(非シフト・バイ・ワイヤ)である場合について説明したが、自車両Mは、制御装置100が変速機のシフト位置を制御可能な「シフト・バイ・ワイヤ」の車両であってもよい。この場合、運転者異常、電動パーキングブレーキ異常、及び電子制御シフト異常が発生した場合に、制御装置100が、上記ステップS9~S15の処理を行うようにしてもよい。
【0105】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0106】
(1) 駆動装置によって駆動される車輪を備える車両(自車両M)を制御する車両制御装置(制御装置100)であって、
前記車両は、
車輪を制動するブレーキ装置(ブレーキ装置210)と、
電子制御により車輪を固定する電動パーキングブレーキ装置(電動パーキングブレーキ装置230)と、
をさらに備え、
前記車両制御装置は、
前記車両の周辺状況を認識する認識部(認識部110)と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記車両の加減速及び操舵を制御する運転制御部(運転制御部120)と、
前記車両の運転者の異常を検知する運転者異常検知部(運転者異常検知部130)と、
前記電動パーキングブレーキ装置の異常を検知する車両異常検知部(車両異常検知部140)と、
を備え、
前記運転制御部は、
前記車両の走行中に、前記運転者異常検知部によって前記運転者の異常が検知されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両をゼロよりも大きい所定速度まで減速させ、
前記車両が前記所定速度まで減速される前に、又は前記車両が前記所定速度まで減速された際に、前記車両異常検知部によって前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されていると、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記認識部によって先行車両が認識されるまで、前記車両を走行中の走行路に沿って走行させる、
車両制御装置。
【0107】
ブレーキ装置を長時間作動させ続けると、ブレーキ装置が故障するおそれがある。(1)によれば、運転者の異常及び電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されると、車両を所定速度まで減速させて、その後、先行車両が認識されるまで車両を走行路に沿って走行させる。これにより、ブレーキ装置を長時間作動させることによる故障を抑制して、先行車両が認識されたことに伴ってブレーキ装置による制動を行うことが可能となる。よって、運転者に異常が発生し、且つ、電動パーキングブレーキ装置によって車輪を固定できない場合であっても、車両の安全性を確保できる。
【0108】
(2) (1)に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記認識部によって前記先行車両が認識されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【0109】
(2)によれば、車両が先行車両と衝突するのを抑制して、車両の安全性の向上を図れる。
【0110】
(3) (1)又は(2)に記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、
前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記認識部によって前記先行車両が認識されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させ、
前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させたときから所定期間が経過すると、前記ブレーキ装置による制動を停止させる、
車両制御装置。
【0111】
(3)によれば、車両が先行車両と衝突した際の損害を抑制しつつ、ブレーキ装置を長時間作動させることによる故障を抑制できる。
【0112】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記車両制御装置は、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させると、前記車両のドアロックを解除する、
車両制御装置。
【0113】
(4)によれば、車両が停止されたことに応じて車両のドアロックを解除することができるため、救助者が容易に車両の運転者を救助することが可能になる。
【0114】
(5) (1)から(3)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記車両のドアが開放されると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【0115】
(5)によれば、車両のドアが開放されたことに応じて車両を停止させることができるため、救助者が安全且つ容易に運転者を救助することを可能にする。
【0116】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに、前記走行路に設けられた所定の停止位置に前記車両が到達すると、前記ブレーキ装置による制動により前記車両を停止させる、
車両制御装置。
【0117】
(6)によれば、車両を所定の停止位置で停止させることができるため、停止位置で停止しないことによる事故を抑制でき、車両の安全性の向上を図れる。
【0118】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されなくなると、前記電動パーキングブレーキ装置により前記車輪を固定する、
車両制御装置。
【0119】
(7)によれば、何らかの要因によって電動パーキングブレーキ装置の異常を誤検知した場合にも、その後、適切なタイミングで、電動パーキングブレーキ装置により車輪を固定して、車両を停止させることを可能にする。
【0120】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記車両異常検知部は、さらに、前記ブレーキ装置の異常を検知し、
前記運転制御部は、
(i)前記車両の走行中に、前記運転者の異常が検知され、且つ前記車両異常検知部によって前記ブレーキ装置の異常が検知されていない場合には、
前記ブレーキ装置による制動により前記車両を前記所定速度まで減速させ、
前記車両が前記所定速度まで減速される前に、又は前記車両が前記所定速度まで減速された際に、前記車両異常検知部によって前記電動パーキングブレーキ装置の異常が検知されていると、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記認識部によって前記先行車両が認識されるまで、前記車両を前記走行路に沿って走行させ、
(ii)前記車両の走行中に、前記運転者の異常が検知され、且つ前記車両異常検知部によって前記ブレーキ装置の異常が検知された場合には、
前記駆動装置を制御して、前記車両を前記走行路に沿って走行させ、
前記車両を前記走行路に沿って走行させているときに前記車両の走行速度がゼロを基準とする所定範囲内となると、前記電動パーキングブレーキ装置により前記車輪を固定する、
車両制御装置。
【0121】
(8)によれば、運転者の異常が発生し、且つブレーキ装置の異常が発生した場合にも、車両を適切に停止させることを可能にし、車両の安全性の向上を図れる。
【0122】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記運転制御部は、前記車両を前記所定速度まで減速させた後、前記車両に対するアクセル操作又は前記走行路の道路勾配にかかわらず、前記車両を前記走行路に沿ってクリープ走行させる、
車両制御装置。
【0123】
(9)によれば、運転者の異常が発生した場合にも、車両に対するアクセル操作又は走行路の道路勾配にかかわらず、車両を適切に走行させることを可能にする。
【0124】
(10) (1)から(9)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記車両は、車内外に対する報知を行うことが可能な報知装置(HMI30、ホーン装置92、ハザードランプ93)をさらに備え、
前記車両制御装置は、前記報知装置を制御する報知制御部をさらに備え、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知されると、前記運転者の異常が検知された旨の報知を前記報知装置に行わせる、
車両制御装置。
【0125】
(10)によれば、運転者に異常が発生したことを車両の周辺の交通参加者に知らしめて、運転者の救助や事故の回避を促せる。
【0126】
(11) (1)から(10)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記車両は、車内外に対する報知を行うことが可能な報知装置(HMI30、ホーン装置92、ハザードランプ93)をさらに備え、
前記駆動装置は、変速機を介して前記車輪を駆動し、
前記車両制御装置は、前記報知装置を制御する報知制御部(報知制御部150)をさらに備え、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知されると、前記変速機のシフト位置をパーキングレンジにするように指示する旨の報知を前記報知装置に行わせる、
車両制御装置。
【0127】
(11)によれば、救助者に対してシフト位置をパーキングレンジにするように促すことができ、救助者が車両を停止させて安全且つ容易に運転者を救助することを可能にする。
【0128】
(12) (11)に記載の車両制御装置であって、
前記報知制御部は、前記運転者の異常が検知された後に前記変速機のシフト位置がパーキングレンジとされると、前記運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させる解除操作を案内する報知を前記報知装置に行わせ、
前記解除操作が行われたことに応じて、前記運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させる、
車両制御装置。
【0129】
(12)によれば、救助者は、自車両の変速機のシフト位置をパーキングレンジとした後に解除操作を行うことにより、運転者の異常が検知されたことによる報知を終了させることができる。
【符号の説明】
【0130】
1 車両システム
30 HMI(報知装置)
100 制御装置(車両制御装置)
110 認識部
120 運転制御部
130 運転者異常検知部
140 車両異常検知部
150 報知制御部
210 ブレーキ装置
230 電動パーキングブレーキ装置
M 自車両(車両)
M1 先行車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7