(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068777
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】スラット、ブラインド、及びプロジェクションシステム
(51)【国際特許分類】
E06B 9/386 20060101AFI20240514BHJP
G03B 21/58 20140101ALI20240514BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E06B9/386
G03B21/58
G03B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179355
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】市村 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】田井 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤間 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達弥
【テーマコード(参考)】
2H021
2K203
【Fターム(参考)】
2H021AA01
2H021BA02
2H021BA09
2K203FA80
2K203GC22
2K203GC24
2K203MA02
2K203MA04
(57)【要約】
【課題】明るく高コントラストの画像を表示可能なブラインド、このブラインドを構成可能なスラット、及び明るく高コントラスの画像を表示可能なプロジェクションシステムを提供する。
【解決手段】スラット12は、スラット本体12aと、スラット本体12aの少なくとも一面に固定されている底面とスラット本体12aの一面の法線方向に対して傾斜する一方の面とスラット本体12aの一面の法線方向に対して一方の面が傾斜する方向とは異なる方向に傾斜する他方の面とを備えスラット本体12aの延在方向に沿って設けられかつ延在方向と交差する方向に複数並んで配置されている三角柱状凸部126と、一方の面に形成され入射した光を反射する反射層128と、他方の面に形成され入射した光を吸収する吸収層127と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラット本体と、
前記スラット本体の少なくとも一面に固定されている底面と、前記スラット本体の一面の法線方向に対して傾斜する一方の面と、前記スラット本体の一面の法線方向に対して前記一方の面が傾斜する方向とは異なる方向に傾斜する他方の面と、を備え、前記スラット本体の延在方向に沿って設けられ、かつ、前記延在方向と交差する方向に複数並んで配置されている三角柱状凸部と、
前記一方の面に形成され、入射した光を反射する反射層と、
前記他方の面に形成され、入射した光を吸収する吸収層と、を備えるスラット。
【請求項2】
前記スラット本体は、前記スラット本体の延在方向に平行な基準線に沿って折り曲げられた形状を有し、前記スラット本体の一面は前記基準線を挟んで第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域に複数の前記三角柱状凸部が設けられている、請求項1に記載のスラット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスラットを備えるブラインド。
【請求項4】
画像光を出射するプロジェクターと、
前記プロジェクターから出射された前記画像光を画像として映し出す請求項3に記載のブラインドと、
を備えるプロジェクションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラット、ブラインド、及びプロジェクションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターから出射される画像光を映すためのスクリーンとして、窓用ブラインドから構成されるスクリーンが存在する。例えば、特許文献1には、スクリーンとして利用可能な窓用ブラインドが開示されている。この窓用ブラインドは、スラット本体の表面に偏光フィルムが積層された構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロジェクターから出射された画像光をこの窓用ブラインドに映したとき、画像は暗く、コントラストが低いという課題を有する。これは、偏光フィルムで画像光が減衰するためである。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものである。すなわち、本発明は、明るく高コントラストの画像を表示可能なブラインド、このブラインドを構成可能なスラット、及び明るく高コントラストの画像を表示可能なプロジェクションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
[1]本発明に係るスラットは、
スラット本体と、
前記スラット本体の少なくとも一面に固定されている底面と、前記スラット本体の一面の法線方向に対して傾斜する一方の面と、前記スラット本体の一面の法線方向に対して前記一方の面が傾斜する方向とは異なる方向に傾斜する他方の面と、を備え、前記スラット本体の延在方向に沿って設けられ、かつ、前記延在方向と交差する方向に複数並んで配置されている三角柱状凸部と、
前記一方の面に形成され、入射した光を反射する反射層と、
前記他方の面に形成され、入射した光を吸収する吸収層と、を備える。
【0007】
[2]前記スラット本体は、前記スラット本体の延在方向に平行な基準線に沿って折り曲げられた形状を有し、前記スラット本体の一面は前記基準線を挟んで第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域に複数の前記三角柱状凸部が設けられていてもよい。
【0008】
[3]本発明に係るブラインドは、[1]又は[2]に記載のスラットを備える。
【0009】
[4]本発明に係るプロジェクションシステムは、
画像光を出射するプロジェクターと、
前記プロジェクターから出射された前記画像光を画像として映し出す[3]に記載のブラインドと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、明るく高コントラストの画像を表示可能なブラインド、このブラインドを構成可能なスラット、及び明るく高コントラストの画像を表示可能なプロジェクションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】閉じた状態における実施形態にかかるブラインドの正面図である。
【
図2】開いた状態における実施形態にかかるブラインドの側面図である。
【
図3】(a)は、実施形態にかかるスラットの平面図であり、(b)は、(a)のIa-Ia線矢視断面図である。
【
図4】実施形態にかかるブラインドの側面図である。
【
図5】(a)は、実施形態にかかるスラットの平面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib線矢視断面図である。
【
図6】実施形態にかかるスラットの変形例を示す断面図である。
【
図7】実施形態にかかるプロジェクションシステムの側面図である。
【
図8】実施形態にかかるプロジェクションシステム及びスラットの側面図である。
【
図9】実施形態にかかるスラットの変形例を示す断面図である。
【
図10】実施形態にかかるスラットの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という。)について詳細に説明する。実施形態は、本発明を説明するための例であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0013】
(ブラインド)
実施形態で使用するブラインドの一例として、スラットの昇降と角度調節を1本の操作コードで行うループコード式ブラインドを、図面を参照して説明する。閉じた状態におけるブラインドの正面図を
図1に示す。開いた状態におけるブラインドの側面図を
図2に示す。
【0014】
以下、図において、構成の理解を容易にするため、x軸はスラットが延在する方向、y軸はスラットが配列される方向、z軸はxy平面に対して直交する方向を示している。x軸方向正側を「右」側、x軸方向負側を「左」側、y軸方向正側を「上」側、y軸方向負側を「下」側、z軸方向正側を「内」側又は「前」側、z軸方向負側を「外」側又は「後」側、と呼ぶことがある。これらは各部の相対的な位置関係を表すためのものに過ぎず、各部の絶対的な位置関係を限定するものではない。また、同じ部材には同じ符号を付す。
【0015】
図1及び
図2に示すように、ブラインド10は、窓ガラス2を備える窓枠1に取り付けられるヘッドボックス11と、延在方向に細長く薄板状の形状を有する複数枚のスラット12と、スラット12をチルト調整可能に支持するラダーコード対13と、最下のスラット12の下側に位置するボトムレール14と、複数枚のスラット12を昇降する昇降コード19と、スラット12のチルト調整と昇降を操作する操作コード17と、を備える。ブラインド10は、天井、カーテンボックス、壁に取り付けられてもよい。
【0016】
複数枚のスラット12は、
図1及び
図2に示すように、y軸方向に並んで配列され、ヘッドボックス11から吊り下げられた2つのラダーコード対13によって、チルトが調整可能に支持されている。なお、ヘッドボックス11には、3つ以上のラダーコード対13が備えられていてもよい。
【0017】
ラダーコード対13は、
図2に示すように2本のラダーコード13a、13bから構成される。2本のラダーコード13a、13bの間には、スラット12を支持する複数の図示しない支持糸がy軸方向に一定の間隔で備え付けられている。複数枚のスラット12は、x軸方向において互いに平行となるように、ラダーコード対13に備え付けられた支持糸によって支持される。最下段のスラット12の下側には、ボトムレール14が配設されている。
【0018】
ボトムレール14は、複数枚のスラット12を降下させるとき、あるいは、降下されたあと、複数枚のスラット12を安定させるため重量のある部材である。ボトムレール14のx軸方向における長さ及びz軸方向における幅は、スラット12の長さ及び幅と同じか大きい。ボトムレール14が引き上げられるときは、複数枚のスラット12がボトムレール14の上に積み上げられる。
【0019】
ラダーコード対13の下端部は、ボトムレール14に固定されている。さらに、ボトムレール14には、ヘッドボックス11から送り出された昇降コード19の下端が固定されている。
ヘッドボックス11内には、図示しない昇降コード19を巻き取る複数のドラムや複数のドラムを同期して回転させる軸体が配設されている。また、ヘッドボックス11内には、スラット12のチルト調整及び昇降操作をする操作装置が備え付けられている。この操作装置の一部を構成する操作コード17がヘッドボックス11の一端から出ている。
【0020】
操作コード17は、ボトムレール14が降下した状態で、一方向に引っ張られると、操作装置を構成するプーリが回転し、昇降コード19を巻き取るドラムが回転する。これにより、昇降コード19がドラムに巻き取られ、ボトムレール14が上昇する。降下した状態にある複数枚のスラット12は、ボトムレール14の上昇と共に互いに重ねられるようにして引き上げられる。また、ボトムレール14が引き上げられた状態で、操作コード17が他方向に引っ張られると、操作装置を構成するプーリが逆回転し、昇降コード19を巻き取るドラムが逆回転し、ボトムレール14は降下する。これにより、ラダーコード対13に支持された複数枚のスラット12は、ボトムレール14と共に降下する。
【0021】
また、操作コード17が一方向に引っ張られたとき、ラダーコード対13のラダーコード13aが下がり、ラダーコード13bが上がる。これにより、ラダーコード13aと13bとの間に備え付けられている支持糸が傾き、支持糸に支持されている全てのスラット12が追従して一方向に傾動する。逆に、操作コード17が他方向に引っ張られたとき、ラダーコード13aが上がり、ラダーコード13bが下がる。これにより、支持糸の傾きが逆になり、全てのスラット12が他方向に傾動する。
【0022】
以上のように操作コード17を一方向又は他方向に引っ張ることで、スラット12を傾動させることができる。また、
図1に示すように、スラット12をボトムレール14と共に降下させた後、スラット12を最大に傾動させることで、ブラインド10を全閉状態にすることができる。
【0023】
以上、実施形態で使用できるブラインドの一例として、ループコード式ブラインドを説明した。ただし、実施形態で使用できるブラインドは、ループコード式ブラインドに限定されない。実施形態で使用できるブラインドは、ブラインド10を全閉状態にすることができるブラインドであればよい。実施形態で使用できるブラインドとしては、例えば、スラットを昇降させることができ、スラットの角度を調節することができるポールを備えるワンポール式ブラインド、スラットを昇降するためのコードとスラットの角度を調節するための角度調節用棒とを備えるコード&ロッド式ブラインドなどが挙げられる。コード&ロッド式ブラインドは、ポール式ブラインドとも呼ばれる。ワンポール式ブラインドは、マルチポール式ブラインドとも呼ばれる。ループコード式ブラインドは、チェーン式ブラインドとも呼ばれる。
【0024】
(スラット)
実施形態にかかるスラット12は、全体として、長尺でおおよそ矩形の板状に形成されている。スラット12は、スラット本体12aを備える。スラット本体12aの少なくとも一面に複数の微細な形状が形成された構成を有する。スラット本体12aは、例えば、アルミ、ステンレスなどの金属、木、ガラス繊維強化プラスチック、合成樹脂などから構成される。
【0025】
図3、
図4及び
図5を参照してスラット12の一例について説明する。スラット本体12aは、全体として、長尺で、平面視でおおよそ矩形の板状に形成されている。スラット本体12aは、
図3(a)及び(b)に示すように延在方向に平行な基準線BLに沿って折り曲げられた形状を有する。ここで、平行とは、厳密な意味での平行ではなく、実施形態にかかるスラットの機能を発揮できる程度に平行であればよい。従って、スラット本体12aの延在方向に対する基準線BLの0°(平行)±10°程度のズレ、並びにスラット本体12aの歪みや波打ちで生じる基準線BLの誤差は、許容範囲である。
【0026】
スラット本体12aの一面は、基準線BLを挟んで第1領域121と第2領域122とを有する。第1領域121と第2領域122とが成す角度δは、スラット本体12aの撓みを抑制する観点から、例えば130°以上160°以下である。
【0027】
第1領域121の幅W、即ちスラット本体12aの延在方向と直交する方向における第1領域121の長さは、ラダーコード13aと13bとの間に備え付けられている支持糸と支持糸との間隔と同じ長さか若干短いことが望ましい。これにより、
図4に示すように、第1領域121を前側(z軸方向正側)に向けたとき、即ち、ブラインド10を全閉したときに、y軸方向において第1領域121同士がほぼ隙間なく配列される。第1領域121が隙間なく配列されることにより、ブラインド10に平坦な面MSが形成される。
【0028】
図4に示すように、一のスラット本体12aの第1領域121と隣り合う他のスラット本体12aの第1領域121との間隙に重なるように、第2領域122は、ブラインド10の主面MSの後側に配される。これにより、この間隙に侵入する日射を減らすことができる。従って、ブラインド10に映し出された画像は日射の影響を小さくできるためコントラストに優れる。第2領域122は、上述の間隙に重なる程度の大きさを有していることが望ましい。
【0029】
なお、スラット本体12aが上記機能を有すれば、第1領域121は、第2領域122と同じ広さでもよいし、第2領域122よりも狭くてもよいし、第2領域122よりも広くてもよい。
図4に示すようにスラット本体12aは、第2領域122が第1領域121よりも上側に位置するように配置されている。上述したスラット本体12aの機能を損なわない範囲で、スラット本体12aは、第2領域122が第1領域121よりも下側に位置するように配置されていてもよい。
【0030】
図5に示すように第1領域121に複数の三角柱状凸部126が設けられている。三角柱状凸部126は、
図5(b)に示すように、第1領域121の表面に固定されている底面123と、第1領域121の法線方向に対して傾斜する一方の面124と、第1領域121の法線方向に対して一方の面124が傾斜する方向とは異なる方向に傾斜する他方の面125と、を備える。三角柱状凸部126は、
図5(a)及び(b)に示すようにスラット本体12aの延在方向に沿って設けられ、かつ、この延在方向と交差する方向に複数並んで配置されている。
【0031】
後述するプロジェクションシステムにおいて、プロジェクターから出射された画像光を一方の面124で反射するために底面123と一方の面124とが成す角度αは、45°以下である。より具体的に角度αは、35°以上45°以下が望ましく、38°以上42°以下であることがより望ましい。また、室内灯の光、迷光などの外光を他方の面125で吸収するために、底面123と他方の面125とが成す角度βは、75°以上である。より具体的に角度βは、75°以上85°以下が望ましく、加工性を向上させる観点から75°以上82°以下であることがより望ましい。
底面123の幅は、50μm以上400μm以下であり、加工性を向上させる観点から、150μm以上300μm以下であることが望ましい。
【0032】
三角柱状凸部126を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。加工性を向上させる観点から、三角柱状凸部126を構成する材料は、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂が望ましい。
【0033】
一方の面124に、入射した光を反射する反射層128が形成されている。反射層128は、一方の面124の全面にわたって形成されてもよいし、一方の面124の一部に形成されてもよい。また、輝線の発生を防止する観点から、一方の面124と他方の面125とで形成される頂点を跨いで、反射層128が他方の面125の一部に形成されてもよい。
【0034】
反射層128は、バインダー樹脂と光を反射する機能を有するフィラーとを含む樹脂組成物から構成される。バインダー樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。フィラーをバインダー樹脂中に分散させる観点、及び三角柱状凸部126と反射層128との密着性を強める観点から、バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂が望ましい。フィラーは、光を反射する機能を有するフィラーであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、中空シリカ、中空ウレタン、中空アクリル、中空スチレン、塩化バリウム、アルミニウムなどが挙げられる。プロジェクターから出射された画像光を効率よく反射させて画像のコントラストを向上させる観点から、フィラーは酸化チタンが望ましい。フィラーの形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、棒状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。フィラーの平均粒径は、特に限定されるものではないが、プロジェクターから出射された画像光を効率よく反射させる観点から、0.3μm以上0.8μm以下が望ましい。
【0035】
他方の面125に、室内灯の光、迷光などの外光を吸収する吸収層127が形成されている。吸収層127が外光を吸収することで画像のコントラストが向上する。吸収層127は、他方の面125の全面にわたって形成されてもよいし、他方の面125の一部に形成されてもよい。吸収層127の厚みは、吸収層127の機能を損なわない範囲で、他方の面125の端部において、薄くてもよい。
【0036】
吸収層127は、バインダー樹脂と光を吸収する機能を有するフィラーとを含む樹脂組成物から構成される。バインダー樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。フィラーをバインダー樹脂中に分散させる観点、及び三角柱状凸部126と吸収層127との密着性を強める観点から、バインダー樹脂はポリウレタン樹脂が望ましい。フィラーは、光を吸収する機能を有するフィラーであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ペリレンブラック、黒色無機顔料などが挙げられる。外光を吸収する観点から、フィラーはカーボンブラックが望ましい。フィラーの形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、棒状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。フィラーの平均粒径は特に限定されるものではないが、外光を吸収する観点、及びフィラーをバインダー樹脂中に分散させる観点から、0.5μm以上3μm以下が望ましい。
【0037】
なお、スラット本体12aと三角柱状凸部126とは一体に形成されていてもよい。
また、
図6に示すように、スラット12は、三角柱状凸部126の底面123とスラット本体12aの第1領域121の面との間にベース部120を有してもよい。ベース部120を構成する樹脂は、ベース部120と三角柱状凸部126との密着性、及び、ベース部120とスラット本体12aとの密着性を向上させるために、三角柱状凸部126を構成する樹脂と同じ樹脂であることが望ましい。また、三角柱状凸部126とベース部120とを一体で成形したとき、底面123と第1領域121の面との密着性は、三角柱状凸部126を構成する底面123がそれぞれ第1領域121の面に設けられた場合に比べて向上する。これは、ベース部120と第1領域121の面とが密着するためである。
【0038】
ベース部120を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。
【0039】
さらに、ベース部120とスラット本体12aの第1領域121との間に、図示しない粘着層を更に備えてもよい。粘着層を構成する材料としては、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0040】
なお、一方の面に反射層が形成され他方の面に吸収層が形成された三角柱状凸部をスラット本体の表面に形成することができれば、上述したスラット本体の形状に限定されない。他のスラット本体として、例えば、延在方向に細長く、かつ平坦な板状の形状を有するスラット本体、延在方向と交差する方向における断面が湾曲している板状の形状を有するスラット本体なども使用することができる。
【0041】
(複数の三角柱状凸部126を備えるスラット12の製造方法)
複数の三角柱状凸部126を備えるスラット12の製造方法の一例を説明する。まず、配列された複数の三角柱状凸部126の反転形状を有する金型を準備する。金型の反転形状が形成された面に三角柱状凸部126を構成する樹脂を塗布し樹脂層を形成する。その樹脂層に第1領域121の面が接するようにスラット本体12aを積層する。その後、金型、樹脂層、スラット本体12aの順で積層された積層体をプレス機を用いて押圧する。その積層体を押圧した状態で室温まで冷却する。冷却後、積層体から金型を剥がし、複数の三角柱状凸部126がスラット本体12aの第1領域121の面に形成されたスラット12を得る。ここで、押圧する条件は、例えば、加熱温度150℃以上220℃以下、圧力5MPa以上10MPa以下、加熱時間0.1時間以上0.5時間以下である。
【0042】
次に、三角柱状凸部126の一方の面124に反射層128を形成する。具体的にはグラビアコータを用いて、反射層128を構成するバインダー樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を一方の面124に塗布した後、乾燥させる。その後に、三角柱状凸部126の他方の面125に吸収層127を形成する。具体的にはグラビアコータを用いて、吸収層127を構成するバインダー樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を他方の面125に塗布した後、乾燥させる。
以上の工程を経て、一方の面124に反射層128が形成され、他方の面125に吸収層127が形成された三角柱状凸部126を複数備えるスラット12を得る。
【0043】
なお、上述した製造方法において、樹脂層に第1領域121の面が接するようにスラット本体12aを積層する工程に代えて、スラット本体12aの第1領域121と第2領域122の両方に三角柱状凸部126を同時に形成する工程であってもよい。この工程を含む場合は、スラット本体12aの第1領域121と第2領域122の両方に三角柱状凸部126が配置されたスラット12が製造される。
【0044】
上述したスラット12を備えるブラインド10は、プロジェクターから出射された画像光を、偏光板等で減衰することなく、反射層128で反射するので、相対的に明るい画像を表示できる。また、画像光を、ほとんど減衰なく反射層128で反射し、日射をスラット本体12aの第2領域122で遮蔽すると共に外光を吸収層127で吸収するので、相対的にコントラストの高い画像として映し出すことができる。
【0045】
以下、ブラインド10とプロジェクターとを備えるプロジェクションシステム、及びプロジェクションシステムの光学的な配置について説明する。
【0046】
(プロジェクションシステム40)
図7及び
図8に示すように、実施形態にかかるプロジェクションシステム40は、画像を内包する画像光を出射するプロジェクター30と、プロジェクター30から出射された画像光を画像として映し出すブラインド10と、を備える。距離ODは、ブラインド10の主面MSから観察者50までの距離である。
【0047】
プロジェクター30としては、公知の各種プロジェクターが利用可能である。公知の各種プロジェクターの中でも、ブラインド10の機能を発揮させる観点から、プロジェクター30は、短焦点型プロジェクターであることが望ましい。短焦点型プロジェクターとは、
図8に示すように、プロジェクター30から出射された画像光の中心光の入射角度φが大きく、ブラインド10からプロジェクター30までの距離Lが短いプロジェクターをいう。中心光の入射角度φは、ブラインド10の主面MSの法線とブラインド10の主面MSの中心に入射した画像光とが成す角度をいう。
【0048】
プロジェクターの種類により、プロジェクター30の入射角度φ及び距離Lは、異なる。また、ブラインド10と観察者50との距離ODも、使用の態様により異なる。よって、プロジェクションシステム40で使用するプロジェクター30、及び距離ODに合わせて、ブラインド10に映し出された画像を観察者が視認できるように、スラット12の三角柱状凸部126を構成する角度α及び角度βを変えることができる。
【0049】
次に、上述したプロジェクションシステム40の光学的配置の一例を説明する。
(プロジェクションシステム40の光学的配置)
一例として、ブラインド10から観察者50までの距離ODを2000mmとし、ブラインド10からプロジェクター30までの距離Lが470mm、入射角度φが53°の短焦点型プロジェクターを備えるプロジェクションシステム40について説明する。このプロジェクションシステム40で使用するブラインド10において、
図5に示すスラット12に配置された三角柱状凸部126の角度αは40°であり、角度βは82°であり、底面123の幅は300μmである。また、この三角柱状凸部126は、他方の面125に吸収層127が形成され、一方の面124に反射層128が形成されている。
【0050】
上述のブラインド10を備えるプロジェクションシステム40において、
図8に示すように、プロジェクター30は、ブラインド10に向けて画像光PLを出射する。画像光PLは、反射層128により、観察者がいる前側へ反射する。観察者はその画像光PLを視認する。また、室内灯の光、迷光などの外光OLは、吸収層127により、吸収される。これにより、ブラインド10に映し出された画像はコントラストに優れる。
また、ブラインド10に画像光を投影しないとき、ブラインド10を引き上げて窓から入り込む日差しを取り込むことができる。さらに、ブラインド10のスラット12を傾動させることでも、窓から入り込む日差しを取り込むことができる。
以上がプロジェクションシステム40の説明である。
【0051】
なお、画像光PLのブラインド10の主面MSへの入射角は、ブラインド10の上側、中央、下側で異なる。この入射角の違いを利用して、このブラインド10の上側、中央、下側に備えられているスラット12の三角柱状凸部126の角度α及び角度βを変えてもよい。この場合、例えば、プロジェクター30から出射され、複数の三角柱状凸部126の反射層128で反射した光が互いにほぼ平行となるように、各三角柱状凸部126の角度αを調整してもよい。
【0052】
例えば、
図8に示すように、プロジェクター30がボトムレール14より下に配置される場合、ブラインド10の主面MSへの画像光PLの入射角度は、上側になるに従って大きくなる。このため、上側の三角柱状凸部126の一方の面124の角度αが小さくなるように設定してもよい。
これにより、ブラインド10に映し出された画像のコントラストは、中心光の入射角度φのみに基づいて角度αが設定された三角柱状凸部126を有するブラインド10よりも向上する。
【0053】
以上の実施形態において、一方の面124に反射層128が形成され、他方の面125に吸収層127が形成された三角柱状凸部126を複数備えるスラット12の一例を示したが、これに限られない。以下、変形例について説明する。
【0054】
(一方の面124自体が光を反射する機能を有する三角柱状凸部126Aを備えるスラット12の変形例)
三角柱状凸部126Aは、バインダー樹脂と光を反射する機能を有するフィラーとを含む樹脂組成物から構成される。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。フィラーは、光を反射する機能を有するフィラーであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、中空シリカ、中空ウレタン、中空アクリル、中空スチレン、塩化バリウム、アルミニウムなどが挙げられる。フィラーの形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、棒状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。フィラーの平均粒径は特に限定されるものではない。プロジェクターから出射された画像光を効率よく反射させる観点から、フィラーの平均粒径は0.3μm以上0.8μm以下が望ましい。
他方の面125に吸収層127が形成されている。
【0055】
以上の構成によれば、
図9に示すように、一方の面124に反射層128を備える必要がない。この三角柱状凸部126Aは、一方の面124そのものが反射層であり、一方の面124に形成された反射層を有する三角柱状凸部に含まれる。
【0056】
(他方の面125自体が光を吸収する機能を有する三角柱状凸部126Bを備えるスラット12の変形例)
三角柱状凸部126Bは、バインダー樹脂と光を吸収する機能を有するフィラーとを含む樹脂組成物から構成される。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。フィラーは、光を吸収する機能を有するフィラーであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ペリレンブラック、黒色無機顔料などが挙げられる。フィラーの形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、棒状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。フィラーの平均粒径は特に限定されるものではないが、外光を吸収する観点、及びフィラーをバインダー樹脂中に分散させる観点から、0.5μm以上3μm以下が望ましい。
一方の面124に反射層128が形成されている。
【0057】
以上の構成によれば、
図10に示すように、他方の面125に吸収層127を備える必要がない。この三角柱状凸部126Bは、他方の面125そのものが吸収層であり、他方の面125に形成された吸収層を有する三角柱状凸部に含まれる。
【0058】
なお、三角柱状凸部126の成分を調整することにより、一方の面124の少なくとも表面領域を光反射性とし、他方の面125の少なくとも表面領域を光吸収性とすることにより、吸収層127と反射層128のいずれも備えない構成としてもよい。
また、他方の面125の少なくとも表面領域を光吸収性とすることにより、吸収層127を配置せず、反射層128のみを備える構成としてもよい。
【0059】
以上の説明では、断面が明確な三角形状を有する三角柱状凸部126を例示したが、プロジェクター30からの画像光PLを観察者50の方向に反射し、外光OLを吸収できるならば、凸部の断面形状は任意である。例えば、角部が面取りされて角の無い三角形状であったり、断面の物理的な形状が台形状などでもよい。これらも機能的には、本願発明の三角形状に含まれるものである。
また、スラット12の外形形状も長尺矩形板状に限定されず、上述の機能を達成できる範囲で任意である。例えば、矩形の角部が取れた長円形状であってもよい。また、スラット12は、板状でなくてもよい。
【0060】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0061】
1 窓枠、2 窓ガラス、10 ブラインド、11 ヘッドボックス、12 スラット、12a スラット本体、13 ラダーコード対、13a ラダーコード、13b ラダーコード、14 ボトムレール、17 操作コード、19 昇降コード、30 プロジェクター、40 プロジェクションシステム、50 観察者、120 ベース部、121 第1領域、122 第2領域、123 底面、124 一方の面、125 他方の面、126 三角柱状凸部、126A 三角柱状凸部、126B 三角柱状凸部、127 吸収層、128 反射層。