(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068789
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】作業方法、作業システム、及び作業プログラム
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20240514BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A01M7/00 E
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179380
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石川 彬
【テーマコード(参考)】
2B043
2B121
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB08
2B043BB14
2B043DB08
2B043DC03
2B043EA03
2B043EA04
2B043EA06
2B043EB05
2B043EB15
2B043ED27
2B121AA19
2B121CB03
2B121CB24
2B121CB35
2B121CB47
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】作業機の作業幅を容易に設定するとともに作業効率を向上させることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供すること。
【解決手段】自動走行システム1は、圃場F内における作業車両10の走行位置に基づいて、作業機14における作業車両10の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定する制御情報生成処理部215を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を備える作業車両において実行される作業方法であって、
作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定すること、
を実行する作業方法。
【請求項2】
前記作業車両を前記作業領域に設定された目標経路に従って自動走行させ、
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のそれぞれに対して前記作業幅を設定する、
請求項1に記載の作業方法。
【請求項3】
前記作業領域は、前記作業車両が第1方向に走行しながら作業を行う第1作業領域と、前記第1作業領域よりも前記作業領域の端部側の第2作業領域とを含み、
前記第2作業領域における前記作業車両の走行方向に基づいて、前記第2作業領域における前記作業幅を設定する、
請求項1に記載の作業方法。
【請求項4】
前記第2作業領域において、前記作業車両の走行方向が前記第1方向の場合の前記作業幅を、前記第1作業領域における前記作業幅と同じ第1作業幅に設定し、前記作業車両の走行方向が前記第1方向とは異なる第2方向の場合の前記作業幅を、前記第1作業幅よりも小さい第2作業幅に設定する、
請求項3に記載の作業方法。
【請求項5】
前記第1作業幅は、前記作業機が作業可能な最大作業幅であり、
前記第2作業幅は、前記最大作業幅よりも小さい作業幅である、
請求項4に記載の作業方法。
【請求項6】
前記第2作業領域における前記作業幅について、前記第1作業領域における前記作業幅と同じ第1作業幅、及び、前記第1作業幅よりも小さい第2作業幅のいずれかを選択するユーザー操作に基づいて設定する、
請求項3に記載の作業方法。
【請求項7】
前記第1作業領域の作業範囲と前記第2作業領域の作業範囲とが重ならないように、前記第1作業領域の前記作業幅と前記第2作業領域の前記作業幅とを設定する、
請求項3に記載の作業方法。
【請求項8】
前記作業機は、前記作業車両の走行方向に対して左側の領域を作業する左側作業部と、前記作業車両の走行方向に対して右側の領域を作業する右側作業部とを含み、
前記作業車両の走行位置に基づいて、前記左側作業部及び前記右側作業部のそれぞれの姿勢を変化させることにより前記作業幅を設定する、
請求項1~7のいずれかに記載の作業方法。
【請求項9】
前記作業機は、前記作業車両の走行方向に対して左側の領域を作業する左側作業部と、前記作業車両の走行方向に対して右側の領域を作業する右側作業部とを含み、
前記作業車両の走行位置に基づいて、前記左側作業部及び前記右側作業部のそれぞれの駆動状態を変化させることにより前記作業幅を設定する、
請求項1~7のいずれかに記載の作業方法。
【請求項10】
作業機を備える作業車両において作業を実行させる作業システムであって、
作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定する設定処理部を備える作業システム。
【請求項11】
作業機を備える作業車両において実行される作業プログラムであって、
作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定すること、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための作業プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に所定の作業を実行させる作業方法、作業システム、及び作業プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、散布物を散布する作業機(スプレーヤ)が装着されたトラクタが知られている。前記トラクタでは、作業者が、スプレーヤの散布モードを切り替えることが可能となっている。例えば作業者は、右側散布モード、左側散布モード、両側散布モード、全体散布モード、散布停止モードを切り替えることが可能である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、作業者が作業対象物の位置、作業車両の位置などを確認しながら散布モードを切り替えなければならないため、作業者に負担が掛かったり作業効率が低下したりする問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、作業機の作業幅を容易に設定するとともに作業効率を向上させることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業方法は、作業機を備える作業車両において実行される作業方法であって、作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定すること、を実行する作業方法である。
【0007】
本発明に係る作業システムは、作業機を備える作業車両において作業を実行させる作業システムであって、作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定する設定処理部を備える。
【0008】
本発明に係る作業プログラムは、作業機を備える作業車両において実行される作業プログラムであって、作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定すること、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための作業プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機の作業幅を容易に設定するとともに作業効率を向上させることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る散布パターンの一例(左側散布パターン)を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る散布パターンの一例(右側散布パターン)を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施形態に係る散布パターンの一例(全体散布パターン)を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、本発明の実施形態に係る散布パターンの一例(散布停止パターン)を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る外側領域における作業車両の目標経路の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る内側領域における作業車両の目標経路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る制御情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る自動走行システムにおいて実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る自動走行システムにおいて実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る他の目標経路の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る他の目標経路の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る散布機の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。自動走行システム1は、圃場F内において作業車両10を自動走行させるシステムである。圃場Fは、本発明の作業領域の一例である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10がトラクタである場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、田植機、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、圃場F(
図5及び
図6参照)内を予め設定された目標経路Rに従って自動走行(自律走行)可能な構成を備えている。また、作業車両10は、圃場F内において自動走行しながら所定の作業を行うことが可能である。例えば、作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場F内において予め設定された目標経路Rに従って自動走行しながら所定の作業を行う。本実施形態では、作業車両10は、薬液、水などの散布物を散布する作業機14を備え、作業対象物(作物、土壌など)に対して散布物を散布する散布作業を行う。
【0014】
例えば、作業車両10は、
図5に示すように、圃場F内の外周部分の外側領域F2(F2a~F2d)において、予め設定された目標経路R(外側目標経路R2)に従って自動走行しながら散布作業を行う。外側目標経路R2には、内側領域F1を囲む直線状の作業経路R2a~R2dが含まれる。作業経路R2aは、作業開始位置Sに接続される。作業車両10は、外側目標経路R2に従って、外側領域F2において周回走行しながら散布作業を行う。外側領域F2は、本発明の第2作業領域の一例である。
【0015】
また、作業車両10は、
図6に示すように、圃場F内の中央部分の内側領域F1において、予め設定された目標経路R(内側目標経路R1)に従って自動走行しながら散布作業を行う。内側目標経路R1には、複数列に配列された直線状の作業経路R11~R14と、各作業経路を接続する移動経路R21~R25(非作業経路)とが含まれる。移動経路R25は、作業終了位置Gに接続される。作業車両10は、作業経路R11~R14に従って、内側領域F1において往復走行しながら散布作業を行う。内側領域F1は、本発明の第1作業領域の一例である。
【0016】
図5及び
図6に示す例では、例えば作業車両10は、作業開始位置Sから走行を開始し、外側領域F2において、作業経路R2a~R2dを順に散布作業を行う。作業車両10は、作業経路R2d(
図5参照)の散布作業を終えると、移動経路R21(
図6参照)を走行して内側領域F1に進入すると作業経路R11を散布作業し、移動経路R22を走行して次の作業経路R12に移動し、作業経路R12を散布作業すると移動経路R23を走行して次の作業経路R13に移動し、作業経路R13を散布作業すると移動経路R24を走行して次の作業経路R14に移動し、作業経路R14を散布作業すると移動経路R25を走行して作業終了位置Gに移動する。
【0017】
このように、作業車両10は、目標経路Rに従って自動走行しながら、外側領域F2及び内側領域F1を順に散布作業する。なお、作業車両10は、内側領域F1を先に散布作業し、その後に外側領域F2を散布作業してもよい。また、作業車両10は、直線状に並ぶ複数の作物を含む作物列の方向に従って散布作業を行う。例えば
図5に示す例では、作業車両10は、外側領域F2a、F2cをY方向に走行する際に、Y方向の作物列(縦畝)に対して散布作業を行い、外側領域F2b、F2dをX方向に走行する際に、X方向の作物列(横畝)に対して散布作業を行う。また
図6に示す例では、作業車両10は、内側領域F1をY方向に走行する際に、Y方向の作物列(縦畝)に対して散布作業を行う。
【0018】
ここで、従来の技術では、散布作業を行う作業車両において、オペレータが作業対象物の位置、作業車両の位置などを確認しながら散布モードを設定しなければならないため、オペレータに負担が掛かったり、作業効率が低下したりする問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る自動走行システム1では、以下に示すように、作業機14の作業幅を容易に設定するとともに作業効率を向上させることが可能である。
【0019】
[作業車両10]
図1及び
図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、作業機14、作業制御装置14A、通信部15、測位装置16などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、作業機14、作業制御装置14A、測位装置16などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0020】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0021】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図8及び
図9参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路R及び制御情報E1(
図7参照)を含む経路データが記憶されてもよい。
【0022】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。
図2に示すように、走行装置13は、エンジン131、前輪132、後輪133、トランスミッション134、フロントアクスル135、リアアクスル136、ハンドル137などを備える。なお、前輪132及び後輪133は、作業車両10の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置13は、前輪132及び後輪133を備えるホイールタイプに限らず、作業車両10の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0023】
エンジン131は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置13は、エンジン131とともに、又はエンジン131に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン131には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両10に設けられた車両制御装置11等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両10に設けられている車両制御装置11及び測位装置16等の電気部品は、エンジン131の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0024】
エンジン131の駆動力は、トランスミッション134及びフロントアクスル135を介して前輪132に伝達され、トランスミッション134及びリアアクスル136を介して後輪133に伝達される。また、エンジン131の駆動力は、PTO軸(不図示)を介して作業機14にも伝達される。作業車両10が自動走行を行う場合、走行装置13は、車両制御装置11の命令に従って走行動作を行う。
【0025】
作業機14は、例えば散布機、播種機、施肥機などであって、作業車両10に着脱可能であってもよい。これにより、作業車両10は、作業機14各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。本実施形態では、作業機14が散布機(スプレーヤ)である場合を例に挙げて説明する。以下では適宜、作業機14を「散布機14」と称す。
【0026】
ハンドル137は、オペレータ又は車両制御装置11によって操作される操作部である。例えば走行装置13では、車両制御装置11によるハンドル137の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪132の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。
【0027】
また、走行装置13は、ハンドル137の他に、車両制御装置11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置13では、車両制御装置11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション134のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置11は、前記アクセルを操作してエンジン131の回転数を制御する。また、車両制御装置11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動する。
【0028】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える通信機器である。例えば、測位装置16は、
図2に示すように、オペレータが搭乗するキャビン138の上部に設けられている。また、測位装置16の設置場所はキャビン138に限らない。さらに、測位装置16の測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置16には前記バッテリーが接続されており、測位装置16は、エンジン131の停止中も稼働可能である。また、測位装置16として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0029】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるためのプログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0030】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局(不図示)などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0031】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0032】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の現在位置を算出する。例えば、作業車両10が圃場Fを自動走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GNSS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両10は、RTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。なお、作業車両10の現在位置は、測位位置(例えば測位用アンテナ164の位置)と同一位置であってもよいし、測位位置からずれた位置であってもよい。
【0033】
車両制御装置11及び作業制御装置14Aのそれぞれは、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。作業制御装置14Aは、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業機14を制御する。
【0034】
車両制御装置11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて当該作業車両10の動作を制御する。また、車両制御装置11は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定される目標経路とに基づいて、作業車両10の自動走行処理を実行する。
【0035】
車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0036】
具体的には、車両制御装置11は、操作端末20から走行開始指示を取得すると作業車両10の自動走行を開始させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は走行開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から走行開始指示を取得すると、目標経路Rに応じた作業車両10の自動走行を開始させる。これにより、例えば、作業車両10は、圃場F内において目標経路Rに従って自動走行を開始する。
【0037】
作業制御装置14Aは、操作端末20において生成される制御情報E1(
図7参照)に対応する散布パターンに基づいて、散布機14の動作を制御する。また、作業制御装置14Aは、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と制御情報E1とに基づいて、散布機14に散布処理を実行させる。これにより、作業車両10は、圃場Fにおいて、目標経路Rに従って自動走行しながら、制御情報E1に基づいて所定の散布パターンによる散布作業を行う。
【0038】
また、車両制御装置11及び作業制御装置14Aは、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行及び散布作業を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータがストップボタンを押下すると、操作端末20は走行停止指示を作業車両10に出力する。
【0039】
次に、散布機14の具体的構成について、
図2及び
図3を用いて説明する。散布機14は、作業車両10の車体の後部に装着されている。車体の後部には、エンジン131の駆動力を散布機14に出力するためのPTO軸(不図示)が配置されている。PTO軸には、トランスミッション134を介して、エンジン131の駆動力が伝達される。
【0040】
散布機14は、散布物(薬液など)を貯留する貯留タンク30と、貯留タンク30内の散布物を散布するブームユニット41と、PTO軸から伝達される駆動力によって駆動され、貯留タンク30内の散布物をブームユニット41に圧送するポンプ42とを含む。
【0041】
ブームユニット41は、車体の後方に散布物を散布する後方ブーム43と、車体の両側方にそれぞれ散布物を散布する一対の側方ブーム44(左側ブーム44L、右側ブーム44R)とを含む。すなわち、散布機14は、3個のブーム(ユニット)で構成されている。後方ブーム43は、作業車両10の進行方向に対して直交する車幅方向(左右方向)に延びている。後方ブーム43には、後方ブーム43が延びる方向に等間隔で、複数の後方ノズル45が設けられている。複数の後方ノズル45は、下方に向けて散布物を吐出する。
【0042】
左側ブーム44Lは、後方ブーム43の左端部に連結されており、右側ブーム44Rは、後方ブーム43の右端部に連結されている。各側方ブーム44には、側方ブーム44が延びる方向に等間隔で複数の側方ノズル46が設けられている。複数の側方ノズル46は、下方に向けて散布物を吐出する。左側ブーム44Lは車体の左側に散布物を散布し、右側ブーム44Rは車体の右側に散布物を散布する。
【0043】
左側ブーム44Lは、左側ブーム44Lと後方ブーム43との連結部付近の所定の鉛直軸線まわりに回動可能である。左側ブーム44Lは、回動によって、左側ブーム44Lが延びる方向が略進行方向となるように左側ブーム44Lの先端が車体に近接する待機位置(
図3の実線で示す位置)と、左側ブーム44Lが延びる方向が略車幅方向となるように左側ブーム44Lの先端が車体から離間する作業位置(
図3の二点鎖線で示す位置)との間で移動する。すなわち、左側ブーム44Lは、前記待機位置の姿勢と前記作業位置の姿勢との間で姿勢変化する。
【0044】
同様に、右側ブーム44Rは、右側ブーム44Rと後方ブーム43との連結部付近の所定の鉛直軸線まわりに回動可能である。右側ブーム44Rは、回動によって、右側ブーム44Rが延びる方向が略進行方向となるように右側ブーム44Rの先端が車体に近接する待機位置(
図3の実線で示す位置)と、右側ブーム44Rが延びる方向が略車幅方向となるように右側ブーム44Rの先端が車体から離間する作業位置(
図3の二点鎖線で示す位置)との間で移動する。すなわち、右側ブーム44Rは、前記待機位置の姿勢と前記作業位置の姿勢との間で姿勢変化する。左側ブーム44Lは本発明の左側作業部の一例であり、右側ブーム44Rは本発明の右側作業部の一例である。
【0045】
散布機14は、一対の側方ブーム44のそれぞれを回動させる一対のブーム回動シリンダ47(
図3参照)と、後方ブーム43及び一対の側方ブーム44を昇降させるブーム昇降シリンダ40(
図2参照)とをさらに含む。ブーム回動シリンダ47は、シリンダロッドを伸縮動作させることによって、対応する側方ブーム44を所定の回動中心まわりに回動させる。
【0046】
ブーム昇降シリンダ40は、シリンダロッドを伸縮動作させることによって、後方ブーム43及び一対の側方ブーム44を同時に昇降させる。一対の側方ブーム44は、水平に延びる下位置と、水平方向に傾斜する上位置との間で昇降する。
【0047】
散布機14は、後方ブーム43の複数の後方ノズル45からの散布物の吐出を制御する後方バルブ(不図示)と、左側ブーム44Lの複数の側方ノズル46からの散布物の吐出を制御する左側バルブ(不図示)と、右側ブーム44Rの複数の側方ノズル46からの散布物の吐出を制御する右側バルブ(不図示)と、を含む。
【0048】
ポンプ42が駆動された状態で後方バルブが開かれると、後方ブーム43の複数の後方ノズル45から散布物が吐出される。ポンプ42が駆動された状態で左側バルブが開かれると、左側ブーム44Lの複数の側方ノズル46から散布物が吐出される。ポンプ42が駆動された状態で右側バルブが開かれると、右側ブーム44Rの複数の側方ノズル46から散布物が吐出される。
【0049】
作業制御装置14Aは、目標経路Rに設定された制御情報E1に基づいて、散布パターンを切り替える。散布パターンとしては、例えば、左側ブーム44L及び後方ブーム43から散布が行われる左側散布パターン(
図4A参照)、右側ブーム44R及び後方ブーム43から散布が行われる右側散布パターン(
図4B参照)、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44Rから散布が行われる全体散布パターン(
図4C参照)、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44Rからの散布が停止される散布停止パターン(
図4D参照)などが挙げられる。散布パターンはこれらに限定されず、例えば左側ブーム44L及び右側ブーム44Rのみから散布が行われる散布パターン、左側ブーム44Lのみから散布が行われる散布パターン、右側ブーム44Rのみから散布が行われる散布パターン、後方ブーム43のみから散布が行われる散布パターンなどが含まれてもよい。
【0050】
なお、作業車両10の走行方向に対する左右方向の作業幅は、散布パターンに対応して設定される。例えば、全体散布パターン(
図4C参照)における作業幅は、車体の後方において左右方向に延伸する第1作業幅(最大作業幅)に設定され、左側散布パターン(
図4A参照)における作業幅は、車体の後方及び左側方において左右方向に延伸する第2作業幅に設定され、右側散布パターン(
図4B参照)における作業幅は、車体の後方及び右側方において左右方向に延伸する第3作業幅に設定される。また、第2作業幅及び第3作業幅は同じ幅であって、かつ第1作業幅よりも小さい幅に設定される。
【0051】
例えば、作業制御装置14Aは、散布パターンを左側散布パターンに設定すると、一対の側方ブーム44を下位置に移動させ、左側ブーム44Lを作動位置に移動させ、左側バルブを開く(
図4A参照)。また、左側散布パターンでは、作業制御装置14Aは、右側ブーム44Rを待機位置に維持する。
【0052】
また例えば、作業制御装置14Aは、散布パターンを右側散布パターンに設定すると、一対の側方ブーム44を下位置に移動させ、右側ブーム44Rを作動位置に移動させ、右側バルブを開く(
図4B参照)。また、右側散布パターンでは、作業制御装置14Aは、左側ブーム44Lを待機位置に維持する。
【0053】
また例えば、作業制御装置14Aは、散布パターンを全体散布パターンに設定すると、一対の側方ブーム44を下位置に移動させ、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rをそれぞれ作動位置に移動させ、後方バルブ、左側バルブ及び右側バルブを開く(
図4C参照)。
【0054】
また例えば、作業制御装置14Aは、散布パターンを散布停止パターンに設定すると、一対の側方ブーム44を上位置に移動させ、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rをそれぞれ待機位置に移動させ、後方バルブ、左側バルブ、及び右側バルブを閉じる(
図4D参照)。
【0055】
以上のように、作業車両10では、車両制御装置11が目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させるとともに、作業制御装置14Aが目標経路R及び制御情報E1に従って散布パターンを切り替えて散布作業を実行させる。また、作業車両10では、トラクタと作業機14とが連携して各作業経路の開始点で一時停止し、作業機14が設定された散布パターンの姿勢に変化した後に作業経路の作業を開始する。具体的には、作業車両10が作業経路の開始点に到達すると、車両制御装置11は作業車両10を一時停止させ、作業制御装置14Aは作業機14を当該作業経路に対応する散布パターンの姿勢に変化させる。作業機14の姿勢変化が完了すると、車両制御装置11は作業車両10の走行を再開させ、作業制御装置14Aは作業機14に散布処理を開始させる。
【0056】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0057】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0058】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する自動走行指示を行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場F内を目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0059】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に後述の自動走行処理(
図8及び
図9参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、操作端末20が備える所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。また、記憶部22は、作業車両10から送信される作業情報を記憶してもよい。
【0060】
また、記憶部22には、作業車両10を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両10に関する各種情報の設定処理、作業車両10の目標経路Rの生成処理、作業機14の散布パターン及び作業幅を設定する処理(制御情報E1の生成処理)、作業車両10に対する走行開始指示及び走行停止指示などを行う。
【0061】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0062】
図1に示すように、操作制御部21は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212、作業設定処理部213、経路生成処理部214、制御情報生成処理部215、及び出力処理部216などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0063】
車両設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)を設定する。車両設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類(ここでは散布機)、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0064】
圃場設定処理部212は、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)を設定する。圃場設定処理部212は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G、作業方向等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。なお、作業方向とは、圃場F内の作業領域において、散布機14で散布作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0065】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外側に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0066】
作業設定処理部213は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。作業設定処理部213は、作業情報として、作業車両10(無人トラクタ)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地領域において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地領域の幅、及び非作業領域の幅等を設定可能に構成されている。
【0067】
経路生成処理部214は、前記設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である目標経路Rを生成する。本実施形態の目標経路Rは、外側領域F2を自動走行させる外側目標経路R2(作業経路R2a~R2d)(
図5参照)と、内側領域F1を自動走行させる内側目標経路R1(作業経路R11~R14、移動経路R21~R25)(
図6参照)とを含む。経路生成処理部214は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212、及び作業設定処理部213で設定された前記各設定情報に基づいて、作業車両10の目標経路R(外側目標経路R2、内側目標経路R1)を生成する。また、例えば、経路生成処理部214は、作業経路R2a~R2dと移動経路R21~R25とを互いに重なる位置に生成してもよい。
【0068】
制御情報生成処理部215は、作業車両10に設けられる散布機14の作業対象物に対する散布物の散布方法(散布パターン)を制御する制御情報E1を生成する。具体的には、制御情報生成処理部215は、各作物列の端点の位置に基づいて散布パターンを切り替える制御情報E1を生成する。例えば、前記散布パターンは、上述の左側散布パターン(
図4A参照)、右側散布パターン(
図4B参照)、全体散布パターン(
図4C参照)、散布停止パターン(
図4D参照)を含む。すなわち、制御情報生成処理部215は、散布機14における作業車両10の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定する。制御情報生成処理部215は、本発明の設定処理部の一例である。
【0069】
図7は、
図5及び
図6に示す圃場Fの目標経路R(内側目標経路R1、外側目標経路R2)に対して設定される制御情報E1を示している。ここでは、作業車両10が外側領域F2を外側目標経路R2に従って走行した後に内側領域F1を内側目標経路R1に従って走行する場合の制御情報E1を示している。
【0070】
具体的には、
図7に示す制御情報E1には、作業車両10が作業経路R2a(
図5参照)の開始点(作業開始位置S)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(
図4Cの全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R2bの開始点(作業経路R2aの終了点)に到達したときに左側ブーム44L及び後方ブーム43をON状態かつ右側ブーム44RをOFF状態(
図4Aの左側散布パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R2cの開始点(作業経路R2bの終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R2dの開始点(作業経路R2cの終了点)に到達したときに左側ブーム44L及び後方ブーム43をON状態かつ右側ブーム44RをOFF状態(左側散布パターンに対応)にする制御情報が含まれる。
【0071】
また、制御情報E1には、作業車両10が移動経路R21(
図6参照)の開始点に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態(
図4Dの散布停止パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R11の開始点(移動経路R21の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が移動経路R22の開始点(作業経路R11の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態(散布停止パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R12の開始点(移動経路R22の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が移動経路R23の開始点(作業経路R12の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態(散布停止パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R13の開始点(移動経路R23の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が移動経路R24の開始点(作業経路R13の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態(散布停止パターンに対応)にし、作業車両10が作業経路R14の開始点(移動経路R24の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態(全体散布パターンに対応)にし、作業車両10が移動経路R25の開始点(作業経路R14の終了点)に到達したときに左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態(散布停止パターンに対応)にする制御情報が含まれる。
【0072】
また、制御情報E1の各ブーム44L、43、44RのON/OFFの制御タイミングは、作業車両10の位置に応じて設定される。
【0073】
具体的には、制御情報生成処理部215は、測位される作業車両10の中心位置と作業開始位置との間の距離を算出し、設定された走行速度から各ブーム44L、43、44Rの制御タイミングを算出する。また、各ブーム44L、43、44Rは、モーターのON及びOFF、各ノズルの開閉などが必要になるため、制御情報生成処理部215は、これらの動作時間も考慮して、前記制御タイミングを算出する。これにより、制御情報E1において、例えば、各ブーム44L、43、44Rが作業開始位置に到達したタイミングで散布物が作業対象物に散布されるように又は散布物の散布が停止されるように、制御タイミングが設定される。
【0074】
出力処理部216は、経路生成処理部214が生成した目標経路Rの情報と、制御情報生成処理部215が生成した制御情報E1(
図7参照)とを含む経路データを作業車両10に出力する。
【0075】
その他、操作制御部21は、オペレータから、作業開始の指示操作(作業開始指示操作)、自動走行している作業車両10の作業を停止させる指示操作(作業停止指示操作)などを受け付ける。操作制御部21は、前記作業開始指示操作を受け付けると、前記作業開始指示を作業車両10に出力する。
【0076】
作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の自動走行を開始させ、目標経路Rに従って自動走行させる。また、作業制御装置14Aは、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の散布作業を開始させ、制御情報E1に基づいて、作業車両10の現在位置に応じて各ブーム44L、43、44RのON/OFFを制御することにより、散布パターンを切り替えて散布処理を実行する。また、車両制御装置11及び作業制御装置14Aは、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び散布作業を停止させる。
【0077】
なお、操作端末20は、サーバーが提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、サーバーの操作用端末として機能することが可能である。
【0078】
[自動走行処理]
以下、
図8及び
図9を参照しつつ、作業車両10の車両制御装置11及び作業制御装置14Aと、操作端末20の操作制御部21とによって実行される前記自動走行処理の一例について説明する。
【0079】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11、作業制御装置14A、及び操作制御部21が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。また、前記自動走行方法は、本発明の作業方法を含む。
【0080】
ステップS1において、操作端末20の操作制御部21は、各種設定情報を登録する。具体的には、操作制御部21は、オペレータの設定操作に基づいて、作業車両10に関する情報(作業車両情報)と、圃場Fに関する情報(圃場情報)と、作業に関する情報(作業情報)とを設定して登録する。
【0081】
次にステップS2において、操作制御部21は、前記各設定情報に基づいて、目標経路Rを生成する。例えば、操作制御部21は、圃場Fにおいて作物などの作業対象物が配置される位置に基づいて目標経路Rを生成する。具体的には、
図5に示す外側領域F2に配置される作物の位置に基づいて外側目標経路R2を生成し、
図6に示す内側領域F1に配置される作物の位置に基づいて内側目標経路R1を生成する。外側目標経路R2には、Y方向の作物列(縦畝)に対する作業経路R2a、R2cと、X方向の作物列(横畝)に対する作業経路R2b、R2dとが含まれる。また、内側目標経路R1には、Y方向の作物列(縦畝)に対する作業経路R11~R14と、非作業経路の移動経路R21~R25とが含まれる。
【0082】
また、操作制御部21は、前記各設定情報及び目標経路Rに基づいて、散布パターンを切り替える制御情報E1(
図7参照)を生成する。すなわち、操作制御部21は、散布機14における作業車両10の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定する。
【0083】
次にステップS3において、操作制御部21は、オペレータから作業開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、オペレータが操作端末20においてスタートボタンを押下すると、操作制御部21は作業開始指示を取得する。操作制御部21は、作業開始指示を取得すると(S3:Yes)、処理はステップS4に移行する。操作制御部21は、作業開始指示を取得するまで待機する(S3:No)。
【0084】
次にステップS4において、操作制御部21は、生成した目標経路R及び制御情報E1を含む経路データを作業車両10に出力する。
【0085】
次にステップS5において、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示及び経路データを取得すると、当該経路データに応じた目標経路Rに沿って自動走行を開始する。
【0086】
次にステップS6において、作業制御装置14Aは、散布機14に散布制御処理を実行させる。
図9には、散布制御処理の一例を示している。なお、
図9に示す散布制御処理は、
図7に示す制御情報E1に対応する散布処理を示しており、
図5及び
図6に示す圃場F及び目標経路Rに対する散布処理の一例を示している。
【0087】
具体的には、作業車両10が作業経路R2a(
図5参照)の開始点に到達すると(
図9のステップS21:Yes)、ステップS22において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L(側方ノズル46)、後方ブーム43(後方ノズル45)、及び右側ブーム44R(側方ノズル46)をON状態にして作業幅を最大作業幅に設定し、全体散布パターンの散布を行う(
図4C参照)。作業車両10は、作業経路R2aを自動走行しながら全体散布パターンにより散布作業を行う。
【0088】
次に作業車両10が作業経路R2bの開始点(作業経路R2aの終了点)に到達すると(S23:Yes)、ステップS24において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L及び後方ブーム43をON状態かつ右側ブーム44RをOFF状態にして作業幅を最大作業幅の略半分の幅に設定し、左側散布パターンの散布を行う(
図4A参照)。作業車両10は、作業経路R2bを自動走行しながら左側散布パターンにより散布作業を行う。
【0089】
次に作業車両10が作業経路R2cの開始点(作業経路R2bの終了点)に到達すると(S25:Yes)、ステップS26において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態にして作業幅を最大作業幅に設定し、全体散布パターンの散布を行う(
図4C参照)。作業車両10は、作業経路R2cを自動走行しながら全体散布パターンにより散布作業を行う。
【0090】
次に作業車両10が作業経路R2dの開始点(作業経路R2cの終了点)に到達すると(S27:Yes)、ステップS28において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L及び後方ブーム43をON状態かつ右側ブーム44RをOFF状態にして作業幅を最大作業幅の略半分の幅に設定し、左側散布パターンの散布を行う(
図4A参照)。作業車両10は、作業経路R2dを自動走行しながら左側散布パターンにより散布作業を行う。これにより、作業車両10は外側領域F2の散布作業を終了する。
【0091】
次に作業車両10が移動経路R21(
図6参照)の開始点(作業経路R2dの終了点)に到達すると(S29:Yes)、ステップS30において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態にして、散布を停止する(
図4D参照)。作業車両10は、散布作業を停止したまま移動経路R21を自動走行する。作業車両10が移動経路R21の開始点に到達しない場合(S29:No)、処理はステップS33に移行する。
【0092】
次に作業車両10が作業経路R11の開始点(移動経路R21の終了点)に到達すると(S31:Yes)、ステップS32において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態にして作業幅を最大作業幅に設定し、全体散布パターンの散布を行う(
図4C参照)。作業車両10は、作業経路R11を自動走行しながら全体散布パターンにより散布作業を行う。
【0093】
作業車両10が作業経路の終了点(
図6では作業経路R14の終了点)に到達していない場合(S33:No)、処理はステップS29に戻る。例えば、作業車両10が移動経路R22の開始点(作業経路R11の終了点)に到達すると(S29:Yes)、ステップS30において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態にして、散布を停止する(
図4D参照)。作業車両10は、散布作業を停止したまま移動経路R22を自動走行する。
【0094】
次に作業車両10が作業経路R12の開始点(移動経路R22の終了点)に到達すると(S31:Yes)、ステップS32において、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをON状態にして、全体散布パターンの散布を行う(
図4C参照)。作業車両10は、作業経路R12を自動走行しながら全体散布パターンにより散布作業を行う。このようにして、作業車両10は作業経路の終了点(作業経路R14の終了点)に到達するまで、ステップS29~S32の処理を繰り返す。
【0095】
作業車両10が作業経路の終了点(作業経路R14の終了点)に到達すると(S33:Yes)、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L、後方ブーム43、及び右側ブーム44RをOFF状態にして、散布を停止する(
図4D参照)。作業車両10は、散布作業を停止したまま移動経路R25を自動走行する。なお、移動経路R21~R25は作業経路R2a~R2dに重なる位置に設定されてもよい。これにより、作業車両10は、内側領域F1の作業において、外側領域F2の作業時に走行した場所と同じ場所を走行することができる。
【0096】
以上のように、作業制御装置14Aは、作業車両10の位置情報及び制御情報E1に基づいて、散布制御処理(S21~S34)を実行する。
【0097】
図8に戻り、ステップS7において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10の位置が作業終了位置Gに一致する場合に作業を終了したと判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S7:Yes)、前記自動走行処理は終了する。車両制御装置11及び作業制御装置14Aは、作業車両10が作業を終了するまでステップS6の散布制御処理を繰り返して自動走行を継続する。
【0098】
なお、ステップS1及びS2の処理と、ステップS3~S7の処理とは、独立して実行されてもよい。例えば、自動走行システム1は、作業車両10を導入した初期設定の段階でステップS1及びS2の処理を実行する。また、自動走行システム1は、オペレータが作業車両10により作業を行うときにステップS3~S7の処理を実行する。
【0099】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、圃場F内における作業車両10の走行位置に基づいて、作業機14(散布機14)における、作業車両10の走行方向(進行方向)に対する左右方向の作業幅を設定する。
【0100】
具体的には、自動走行システム1は、作業車両10を圃場Fに設定された目標経路Rに従って自動走行させ、目標経路Rに含まれる複数の作業経路のそれぞれに対して作業幅を設定する。また、圃場Fは、作業車両10が第1方向(Y方向)に走行しながら作業を行う内側領域F1と、内側領域F1を囲む外側領域F2とを含み、自動走行システム1は、外側領域F2における作業車両10の走行方向に基づいて、外側領域F2における作業幅を設定する。
【0101】
例えば、自動走行システム1は、外側領域F2において、作業車両10の走行方向が第1方向(Y方向)の場合の作業幅を、内側領域F1における作業幅と同じ第1作業幅(最大作業幅)に設定し(
図4C参照)、作業車両10の走行方向が第2方向(X方向)の場合の作業幅を、第1作業幅よりも小さい第2作業幅(例えば最大作業幅の略半分の幅)に設定する(
図4A、
図4B参照)。
【0102】
上記構成によれば、作業車両10が自動走行中に作業車両10の位置に応じて散布パターンが切り替えられるため、作業機14による作業幅が作業経路に応じて変更される。このため、オペレータによる散布パターン(散布モード)の切り替え作業を省くことができ、また作業機14の作業幅を容易に設定することができる。また、作業経路に応じて最適な散布パターン(作業幅)を設定することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0103】
[他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について以下に説明する。
【0104】
上述の実施形態では、外側領域F2a、F2c(縦畝)における作業幅を第1作業幅(最大作業幅)に設定し、外側領域F2b、F2d(横畝)における作業幅を第1作業幅よりも小さい第2作業幅に設定している(
図5参照)。他の実施形態として、自動走行システム1は、外側領域F2a~F2dのそれぞれの作業幅を、第1作業幅(最大作業幅)に設定してもよいし、第2作業幅に設定してもよい。
【0105】
また、自動走行システム1は、外側領域F2a~F2dのそれぞれの作業幅を、第1作業幅及び第2作業幅のいずれかを選択するユーザー操作に基づいて設定してもよい。例えば、操作制御部21は、設定画面(不図示)において、オペレータから作業経路ごとに散布パターンを選択する操作を受け付け、当該操作に応じて散布パターン(作業幅)を設定してもよい。
図10には、作業経路R2a~R2dのそれぞれに対して全体散布パターン(最大作業幅)が設定された状態を示している。この場合、
図5に示す例と比較して、内側領域F1のY方向の幅は小さくなる。
【0106】
また、上述の実施形態では、自動走行システム1は、内側領域F1の作業範囲と外側領域F2の作業範囲とが重ならないように、内側領域F1の作業幅と外側領域F2の作業幅とを設定している。例えば
図5及び
図6に示すように、内側領域F1の作業経路は、圃場Fの外周端部(端辺)から外側領域F2の作業幅を除いた領域に設定される。
【0107】
また、上述の実施形態では、内側領域F1の各作業経路の開始点及び終了点は、外側領域F2の作業幅の端部に設定される。これにより、作業車両10は、例えば、作業経路R11の開始点で散布作業を開始し、外側領域F2bの作業幅の端部(外側領域F2bの作業範囲の端部)で散布作業を停止する。また、作業車両10は、外側領域F2bの作業幅の端部(外側領域F2bの作業範囲の端部)で作業経路R12の散布作業を開始する。
【0108】
本発明の他の実施形態として、自動走行システム1は、内側領域F1の作業範囲の一部と外側領域F2の作業範囲の一部とが重なるように、内側領域F1の作業幅と外側領域F2の作業幅とを設定してもよい。例えば、内側領域F1の各作業経路の開始点及び終了点は、外側領域F2の作業幅の内側に設定されてもよい。これにより、作業車両10は、例えば、作業経路R11の開始点で散布作業を開始し、外側領域F2bの作業幅の内側(外側領域F2bの作業範囲の内側)で散布作業を停止する。また、作業車両10は、外側領域F2bの作業幅の内側(外側領域F2bの作業範囲の内側)で作業経路R12の散布作業を開始する。なお、内側領域F1の作業範囲の一部と外側領域F2の作業範囲の一部とが重なる幅(オーバーラップ量)をオペレータが設定可能であってもよい。
【0109】
本発明の他の実施形態として、作業範囲が圃場F内の内側領域F1のみに設定されてもよい。例えば
図11に示すように、圃場Fの内側領域F1に、直線状の作業経路R11~R16が生成される。内側領域F1の外側には、作業車両10が作業を行わずに移動のみする移動経路(直進経路、旋回経路)が生成される枕地領域F3が設定される。作業車両10は、例えば作業開始位置Sから自動走行を開始すると、作業経路R11を散布作業した後、移動経路R31を走行して作業経路R12に移動して作業経路R12を散布作業する。その後、作業車両10は、移動経路R32、作業経路R13、移動経路R33、作業経路R14、移動経路R34、作業経路R15、移動経路R35、作業経路R16、移動経路R36を順に走行して作業終了位置Gに到達する。
【0110】
図11に示す圃場Fの場合、操作制御部21は、圃場Fの全領域のうち作業車両10が旋回及び移動するために必要な領域を枕地領域F3に設定し、枕地領域F3を除いた領域を作業領域(内側領域F1)に設定する。また、操作制御部21は、内側領域F1を全体散布パターン(
図4C参照)により散布作業を実行させ、枕地領域F3を散布停止パターン(
図4D参照)で走行させる制御情報E1を生成する。
【0111】
本発明の他の実施形態として、散布機14は、左右のそれぞれのブームが複数のユニットで構成されてもよい。例えば
図12に示すように、散布機14は、2つの左側ブーム(左側ブーム44La、44Lb)と、2つの右側ブーム(右側ブーム44Ra、44Rb)とを含んでもよい。この場合、散布機14は、5個のブーム(ユニット)で構成される。作業制御装置14Aは、目標経路R及び制御情報E1に基づいて、各ブーム(ユニット)のON/OFFを制御して、複数の散布パターンを切り替えて散布機14に散布処理を実行させる。本発明において、散布機14のブーム(ユニット)の数は限定されない。
【0112】
また、散布機14の右側ブーム及び左側ブームは、作業車両10の前後方向に回動可能な折り畳み式(
図3参照)であってもよいし、作業車両10の左右方向に延伸可能な伸縮式であってもよい。
【0113】
上述の実施形態では、作業車両10が散布作業を行わない場合、すなわち散布パターンが散布停止パターン(
図4D参照)に設定されている場合に、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rは、待機位置(
図3の実線で示す位置)に維持されている。本発明の他の実施形態として、散布パターンが散布停止パターンに設定されている場合に、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rが、作業位置(
図3の二点鎖線で示す位置)に維持されてもよい。この場合、作業制御装置14Aは、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rの位置を作業位置に維持したままノズルを閉じて散布を停止する。この構成によれば、作業車両10が作業経路の散布作業を終えて次の作業経路に移動する場合に、ブームの回動を省略することができるため、散布作業を停止してから再開するまでの時間を短縮することができる。
【0114】
このように、自動走行システム1は、作業車両10の走行位置に基づいて、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rのそれぞれの姿勢(
図3参照)を変化させることによって作業幅を設定してもよいし、作業車両10の走行位置に基づいて、左側ブーム44L及び右側ブーム44Rのそれぞれの駆動状態を変化(ノズルのON/OFF)させることによって作業幅を設定してもよい。
【0115】
なお、作業車両10が非作業領域を移動する際にブームの位置を待機位置に戻すか又は作業位置に維持させるかを、オペレータが設定可能であってもよい。
【0116】
本発明は、圃場Fの上空を飛行する飛行体(ヘリコプター、ドローンなど)に適用することが可能である。例えば、圃場Fの上空から散布物を散布する散布用ドローンに適用することが可能である。
【0117】
本発明の設定システムは、操作端末20単体で構成されてもよいし、作業車両10及び操作端末20で構成されてもよいし、作業車両10単体で構成されてもよい。また自動走行システムは、操作端末20に含まれる各処理部を備えたサーバーで構成されてもよい。
【0118】
[発明の付記]
以下、実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0119】
<付記1>
作業機を備える作業車両において実行される作業方法であって、
作業領域内における前記作業車両の走行位置に基づいて、前記作業機における、前記作業車両の走行方向に対する左右方向の作業幅を設定すること、
を実行する作業方法。
【0120】
<付記2>
前記作業車両を前記作業領域に設定された目標経路に従って自動走行させ、
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のそれぞれに対して前記作業幅を設定する、
付記1に記載の作業方法。
【0121】
<付記3>
前記作業領域は、前記作業車両が第1方向に走行しながら作業を行う第1作業領域と、前記第1作業領域よりも前記作業領域の端部側の第2作業領域とを含み、
前記第2作業領域における前記作業車両の走行方向に基づいて、前記第2作業領域における前記作業幅を設定する、
付記1に記載の作業方法。
【0122】
<付記4>
前記第2作業領域において、前記作業車両の走行方向が前記第1方向の場合の前記作業幅を、前記第1作業領域における前記作業幅と同じ第1作業幅に設定し、前記作業車両の走行方向が前記第1方向とは異なる第2方向の場合の前記作業幅を、前記第1作業幅よりも小さい第2作業幅に設定する、
付記3に記載の作業方法。
【0123】
<付記5>
前記第1作業幅は、前記作業機が作業可能な最大作業幅であり、
前記第2作業幅は、前記最大作業幅よりも小さい作業幅である、
付記4に記載の作業方法。
【0124】
<付記6>
前記第2作業領域における前記作業幅について、前記第1作業領域における前記作業幅と同じ第1作業幅、及び、前記第1作業幅よりも小さい第2作業幅のいずれかを選択するユーザー操作に基づいて設定する、
付記3~6のいずれかに記載の作業方法。
【0125】
<付記7>
前記第1作業領域の作業範囲と前記第2作業領域の作業範囲とが重ならないように、前記第1作業領域の前記作業幅と前記第2作業領域の前記作業幅とを設定する、
付記3~6のいずれかに記載の作業方法。
【0126】
<付記8>
前記作業機は、前記作業車両の走行方向に対して左側の領域を作業する左側作業部と、前記作業車両の走行方向に対して右側の領域を作業する右側作業部とを含み、
前記作業車両の走行位置に基づいて、前記左側作業部及び前記右側作業部のそれぞれの姿勢を変化させることにより前記作業幅を設定する、
付記1~7のいずれかに記載の作業方法。
【0127】
<付記9>
前記作業機は、前記作業車両の走行方向に対して左側の領域を作業する左側作業部と、前記作業車両の走行方向に対して右側の領域を作業する右側作業部とを含み、
前記作業車両の走行位置に基づいて、前記左側作業部及び前記右側作業部のそれぞれの駆動状態を変化させることにより前記作業幅を設定する、
付記1~7のいずれかに記載の作業方法。
【符号の説明】
【0128】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :走行装置
14 :作業機(散布機)
14A :作業制御装置
20 :操作端末
21 :操作制御部
22 :記憶部
41 :ブームユニット
42 :ポンプ
43 :後方ブーム
44L :左側ブーム(左側作業部)
44R :右側ブーム(右側作業部)
45 :後方ノズル
46 :側方ノズル
211 :車両設定処理部
212 :圃場設定処理部
213 :作業設定処理部
214 :経路生成処理部
215 :制御情報生成処理部(設定処理部)
216 :出力処理部
E1 :制御情報
F :圃場(作業領域)
F1 :内側領域(第1作業領域)
F2 :外側領域(第2作業領域)
R :目標経路
R1 :内側目標経路
R2 :外側目標経路
R11~R16:作業経路
R21~R25:移動経路
R2a~R2d:作業経路