(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068825
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240514BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L23/12 E
H01L23/12 N
H01L23/12 Q
H01L23/12 301Z
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179420
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 恵太
(72)【発明者】
【氏名】佃 龍明
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK07
5F044LL01
5F044QQ03
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体装置は、複数の配線層を有する配線基板SUB1と、第1アナログ回路を有する半導体チップと、を含んでいる。上記第1アナログ回路には、上記第1アナログ回路に第1電源電位を供給することが可能な電源電位パターンLVD4、および上記第1アナログ回路に第1基準電位を供給することが可能な基準電位パターンLVS4、のそれぞれが電気的に接続されている。電源電位パターンLVD4は、上記複数の配線層のうち、配線基板SUB1の下面に最も近い層である配線層WL8に設けられている。基準電位パターンLVS4は、配線層WL8の次に上記下面に近い層である配線層WL7に設けられている。透過平面視において、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4は、互いに重なった状態で、互いに同じ方向に延びている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、前記上面とは反対側の下面、および前記上面と前記下面との間に設けられた複数の配線層を有する配線基板と、
第1面、前記第1面上に形成された複数の突起電極、および前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記複数の突起電極を介して前記配線基板の前記上面上に搭載された半導体チップと、
を含み、
前記半導体チップは、第1アナログ回路を有し、
前記配線基板の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層のうち、前記下面に最も近い層であり、かつ、複数のランドパターンが設けられた第1配線層と、
前記第1配線層の次に前記下面に近い層である第2配線層と、
を含み、
前記第1アナログ回路には、前記第1アナログ回路に第1電源電位を供給することが可能な第1電源電位パターン、および前記第1アナログ回路に第1基準電位を供給することが可能な第1基準電位パターン、のそれぞれが電気的に接続されており、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうちの一方は、前記第1配線層に設けられ、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうちの他方は、前記第2配線層に設けられ、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンは、互いに重なった状態で、互いに同じ方向に延びている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第1配線層に形成された第1パターンは、
平面形状が、前記複数のランドパターンのうち、前記第1パターンの隣に配置されるランドパターンの外縁形状に沿った形状になっており、
前記第1パターンの延在方向に交差する第1方向において第1の幅を備えた複数の第1幅広部と、前記第1方向において前記第1の幅よりも狭い幅を持つ複数の第1幅狭部と、
を有し、
前記第1パターンの延在方向において第1幅広部と第1幅狭部とは交互に配列され、
前記第1の幅は、前記第1方向において前記第1パターンを介して隣り合うランドパターンの離間距離よりも大きく、
前記複数の第1幅狭部および前記複数の第1幅広部のそれぞれは、前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第2配線層に形成された第2パターンと重なっている、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第2配線層に形成された前記第2パターンは、
透過平面視において、前記第1配線層に形成された前記第1パターンの形状に倣って形成されており、
前記第2パターンの延在方向に交差する第2方向において前記第1の幅を備えた複数の第2幅広部と、前記第1の幅よりも狭い幅を持つ複数の第2幅狭部と、
を有し、
前記第2パターンの延在方向において第2幅広部と第2幅狭部とは交互に配列され、
前記複数の第1幅狭部と前記複数の第2幅狭部とは、それぞれ重なっており、かつ、前記複数の第1幅広部と前記複数の第2幅広部とは、それぞれ重なっている、半導体装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記複数のランドパターンのそれぞれは、等間隔で配列され、
前記第1の幅は、前記複数のランドパターンのうち、前記第1方向において前記第1パターンを介して隣り合うランドパターンの中心間距離よりも大きい、半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記複数のランドパターンの一部は、前記第1パターンに周囲を囲まれた位置に配置されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記複数のランドパターンのそれぞれは、等間隔で配列され、
前記第1の幅は、前記複数のランドパターンのうち、前記第1方向において前記第1パターンを介して隣り合うランドパターンの中心間距離よりも小さい、半導体装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記複数のランドパターンのうち、前記第1パターンを介して互いに隣り合うランドパターンの第1中心間距離は、前記第1パターンの延在方向に沿って隣り合うランドパターンの第2中心間距離よりも長く、
前記第1幅狭部の幅の最小値は、前記第2中心間距離よりも大きい、半導体装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記配線基板は、前記第1アナログ回路以外の第1回路に第2基準電位を供給することが可能な第2基準電位パターン、を有し、
前記配線基板の前記複数の配線層は、前記第2配線層の次に前記下面に近い層である第3配線層をさらに含み、
前記第2基準電位パターンは、前記第3配線層に設けられ、かつ、前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンと重なっている、半導体装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1電源電位パターン、前記第1基準電位パターン、および前記第2基準電位パターンのそれぞれは、互いに重なった状態で、互いに同じ方向に延びている、半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第1配線層に形成された第1パターンは、
平面形状が、前記複数のランドパターンのうち、前記第1パターンの隣に配置されるランドパターンの外縁形状に沿った形状になっており、
前記第1パターンの延在方向に交差する第1方向において第1の幅を備えた複数の第1幅広部と、前記第1方向において前記第1の幅よりも狭い幅を持つ複数の第1幅狭部と、
を有し、
前記第1パターンの延在方向において第1幅広部と第1幅狭部とは交互に配列され、
前記第1の幅は、前記第1方向において前記第1パターンを介して隣り合うランドパターンの離間距離よりも広く、
前記複数の第1幅狭部および前記複数の第1幅広部のそれぞれは、前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第2配線層に形成された第2パターンと重なっており、かつ、前記第3配線層に形成された前記第2基準電位パターンと重なっている、半導体装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1電源電位パターンおよび前記第1基準電位パターンのうち、前記第2配線層に形成された第2パターンは、
透過平面視において、前記第1配線層に形成された前記第1パターンの形状に倣って形成されており、
前記第2パターンの延在方向に交差する第2方向において前記第1の幅を備えた複数の第2幅広部と、前記第1の幅よりも狭い幅を持つ複数の第2幅狭部と、
を有し、
前記第2パターンの延在方向において第2幅広部と第2幅狭部とは交互に配列され、
透過平面視において、前記複数の第1幅狭部と前記複数の第2幅狭部とは、それぞれ重なっており、かつ、前記複数の第1幅広部と前記複数の第2幅広部とは、それぞれ重なっており、かつ、前記複数の第1幅狭部、前記複数の第2幅狭部、前記複数の第1幅広部、および前記複数の第2幅広部のそれぞれは、前記第3配線層に形成された前記第2基準電位パターンと重なっている、半導体装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記第1アナログ回路には、さらに、前記第1アナログ回路に前記第1電源電位を供給することが可能な第3電源電位パターン、および前記第1アナログ回路に前記第1基準電位を供給することが可能な第3基準電位パターン、のそれぞれが電気的に接続されており、
前記第3電源電位パターンおよび前記第3基準電位パターンのそれぞれは、前記複数の配線層のうち、互いに同じ配線層に形成され、
平面視において、前記第3電源電位パターンおよび前記第3基準電位パターンは、互いに隣り合った状態で、同じ方向に延びており、
前記第1電源電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第1電源電位供給経路の経路距離を第1経路距離とし、
前記第1基準電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第1基準電位供給経路の経路距離を第2経路距離とし、
前記第3電源電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第3電源電位供給経路の経路距離を第3経路距離とし、
前記第3基準電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第3基準電位供給経路の経路距離を第4経路距離とすると、
前記第1経路距離は、前記第3経路距離および前記第4経路距離のそれぞれよりも長く、かつ、前記第2経路距離は、前記第3経路距離および前記第4経路距離のそれぞれよりも長い、半導体装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記配線基板は、前記第1アナログ回路以外の第1回路に第2基準電位を供給することが可能な第2基準電位パターン、を有し、
前記第2基準電位パターンは、前記配線基板の前記複数の配線層のうち、前記第3電源電位パターンおよび前記第3基準電位パターンが形成された配線層の隣の配線層に形成され、かつ、前記第3電源電位パターンおよび前記第3基準電位パターンと重なっている、半導体装置。
【請求項14】
請求項2において、
前記第1アナログ回路には、前記第1アナログ回路に前記第1電源電位を供給することが可能な第4電源電位パターン、および前記第1アナログ回路に前記第1基準電位を供給することが可能な第4基準電位パターン、のそれぞれが電気的に接続され、
前記第4電源電位パターンおよび前記第4基準電位パターンのうちの一方は、前記第1配線層に設けられ、
前記第4電源電位パターンおよび前記第4基準電位パターンのうちの他方は、前記第2配線層に設けられ、
透過平面視において、前記第4電源電位パターンおよび前記第4基準電位パターンは、互いに重なった状態で、同じ方向に延びており、
前記第4電源電位パターンおよび前記第4基準電位パターンのうち、前記第1配線層に形成された第3パターンは、第3の幅で延在するように形成され、
前記第3の幅は、前記第3パターンの延在方向に交差する第3方向において、前記第3パターンを介して隣り合うランドパターンの離間距離よりも狭く、
前記第1電源電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第1電源電位供給経路の経路距離を第1経路距離とし、
前記第1基準電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第1基準電位供給経路の経路距離を第2経路距離とし、
前記第4電源電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第4電源電位供給経路の経路距離を第5経路距離とし、
前記第4基準電位パターンを含み、前記半導体チップの前記突起電極から前記配線基板のランドパターンまでの第4基準電位供給経路の経路距離を第6経路距離とすると、
前記第1経路距離は、前記第5経路距離および前記第6経路距離のそれぞれよりも長く、かつ、前記第2経路距離は、前記第5経路距離および前記第6経路距離のそれぞれよりも長い、半導体装置。
【請求項15】
請求項2において、
前記第1パターンと、前記第1パターンの隣に配置されているランドパターンとの離間距離は、前記第1配線層と前記第2配線層との層間距離よりも大きい、半導体装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記第1アナログ回路には、さらに、前記第1アナログ回路に電気信号を伝送することが可能な第1信号パターンが電気的に接続されており、
前記第1電源電位パターンの幅、および前記第1基準電位パターンの幅のそれぞれは、前記第1信号パターンの幅よりも広い、半導体装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記第1電源電位パターンおよび第1基準電位パターンのそれぞれの幅は、前記第1電源電位パターンおよび第1基準電位パターンのそれぞれの厚さよりも大きい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の配線層を備えた配線基板上に、半導体チップがフリップチップ接続方式で搭載された半導体装置がある。例えば、特開2005-340247号公報(特許文献1)には、配線基板のデジタル信号のクロストークノイズ対策として、信号伝送用の端子が配置される配線層と信号伝送用の配線が配置される配線層との間に、シールドとして機能するグランドプレーンおよび電源プレーン(プレーンは、大面積の導体パターンの意味)が配置された構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の高機能化に伴って、半導体装置が備える回路の動作を安定化させるため、回路に電力を供給する経路において、ノイズの影響を低減させる技術が必要である。例えば、デジタル信号の伝送品質を安定化させる目的で、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路などのアナログ回路が半導体装置内の半導体チップに設けられている場合がある。アナログ回路は、デジタル回路と比較して、ノイズが回路動作に影響し易いので、アナログ回路に電力を供給する経路は、他の経路(例えば、デジタル回路に電力を供給する経路)と比較して、その経路距離を短くすることが好ましい。
【0005】
ところが、半導体装置の高機能化に伴って、半導体装置の外部端子の数は増加傾向にある。また、半導体装置の小型化を実現するため、複数の外部端子の配置密度は増加傾向にある。この結果、アナログ回路に電力を供給する経路のうちの一部は、半導体チップの電極から外部端子までの経路距離が長くなる場合がある。半導体チップの電極から外部端子までの経路距離が長い電力供給経路では、電力供給経路のインダクタンス成分が大きい。そのため、この経路を流れる電源電位や基準電位は、ノイズの影響により電位が変化し易い。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態による半導体装置は、複数の配線層を有する配線基板と、第1アナログ回路を有する半導体チップと、を含んでいる。上記第1アナログ回路には、上記第1アナログ回路に第1電源電位を供給することが可能な第1電源電位パターン、および上記第1アナログ回路に第1基準電位を供給することが可能な第1基準電位パターン、のそれぞれが電気的に接続されている。上記第1電源電位パターンおよび上記第1基準電位パターンのうちの一方は、上記複数の配線層のうち、上記配線基板の下面に最も近い層である第1配線層に設けられている。上記第1電源電位パターンおよび上記第1基準電位パターンのうちの他方は、上記第1配線層の次に上記下面に近い層である第2配線層に設けられている。上記第1電源電位パターンおよび上記第1基準電位パターンは、互いに重なった状態で、互いに同じ方向に延びている。
【発明の効果】
【0008】
上記一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図1に示すカバー部材を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。
【
図5】
図4に示す半導体装置が備えている回路の構成例を示す説明図である。
【
図6】
図5に示すアナログ回路に電力を供給する経路を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の一例を示す拡大平面図である。
【
図9】
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
【
図10】
図9のC-C線に沿った拡大断面図である。
【
図11】
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
【
図13】
図11に示す電源電位パターンおよび基準電位パターンのみを示す拡大平面図である。
【
図14】
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
【
図17】
図10に示す最下層から数えて第3層目の配線層に形成された導体パターンの形状の一例を示す拡大平面図である。
【
図18】
図12に示す最下層から数えて第3層目の配線層に形成された導体パターンの形状の一例を示す拡大平面図である。
【
図19】
図5に示すアナログ回路に電気信号を伝送するための信号配線と、
図9または
図11に示す基準電位パターンおよび電源電位パターンとの配線幅の違いを比較するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0011】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0012】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0013】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0014】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0015】
また、本明細書において、「半導体部品」とは、半導体内の電子を利用した部品である。この「半導体部品」の例としては、半導体チップや、半導体チップがパッケージングされた半導体パッケージを挙げることができる。また、半導体を含むか否かに関らず、電気回路に組み込まれ、電気的な機能を発揮する部品のことを「電子部品」という。電子部品には半導体部品の他、抵抗素子やコンデンサ素子、インダクタ素子などの部品を含む。
【0016】
<半導体装置>
図1は、本実施の形態の半導体装置の上面図である。
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1に示すカバー部材を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。また、
図4は、
図1のA-A線に沿った断面図である。
【0017】
本実施の形態の半導体装置PKG1は、配線基板SUB1と、配線基板SUB1に搭載された半導体チップCHP1(
図3参照)と、を有する。また、半導体装置PKG1は、半導体チップCHP1上に配置された接着層BND1と、半導体チップCHP1の全体、接着層BND1の全体、および配線基板SUB1の一部分を覆い、かつ、接着層BND1が固定されたカバー部材LIDと、を有する。
【0018】
図4に示すように、配線基板SUB1は、半導体チップCHP1が搭載された上面(面、主面、チップ搭載面、第1主面)2t、上面2tとは反対側の下面(面、主面、実装面、第2主面)2bを有する。また、配線基板SUB1は、平面視において、上面2tおよび下面2bの外縁を構成する複数の辺2s(
図1~
図3参照)を有する。本実施の形態の場合、配線基板SUB1の上面2t(
図1参照)および下面2b(
図2参照)はそれぞれ四角形であり、配線基板SUB1は、平面視において4つの辺2sを有している。
【0019】
また、配線基板SUB1は、上面2tと下面2bとの間に設けられた複数の配線層(
図4に示す例では8層)WL1、WL2、WL3、WL4、WL5、WL6、WL7、およびWL8を有する。複数の配線層は、この複数の配線層のうち、配線基板SUB1の上面2tに最も近い層であり、かつ、端子(端子2PD)が設けられた配線層WL1を有する。また、複数の配線層は、この複数の配線層のうち、配線基板SUB1の下面2bに最も近い層であり、かつ、端子(ランド2LD)が設けられた配線層WL8を有する。
【0020】
各配線層は、電気信号や電力を供給する経路である配線などの導体パターンを有する。また各配線層の間には、絶縁層2eが配置されている。各配線層は、絶縁層2eを貫通する層間導電路であるビア2v、あるいはスルーホール配線2THWを介して互いに電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、配線基板SUB1の一例として8層の配線層を備える配線基板を例示しているが、配線基板SUB1が備える配線層の数は8層には限定されない。例えば7層以下、あるいは9層以上の配線層を備える配線基板を変形例として用いることができる。
【0021】
また、複数の配線層のうち、最も上面2tに近い層(最上層)である配線層WL1は、絶縁膜SR1で覆われている。絶縁膜SR1には、開口部が設けられ、配線層WL1に設けられた複数の複数の端子2PDは、開口部において、絶縁膜SR1から露出している。また、複数の配線層のうち、配線基板SUB1の下面2bに最も近い層(最下層)である配線層WL8には、複数のランドが設けられている。また、配線層WL8は、絶縁膜SR2で覆われている。絶縁膜SR1および絶縁膜SR2のそれぞれは、ソルダレジスト膜である。配線層WL1に設けられる複数の端子2PDは、配線層WL8に設けられる複数のランド(ランドパターン)2LDと、配線基板SUB1が備える各配線層に形成された導体パターン(配線2dや大面積の導体パターン)、ビア2v、およびスルーホール配線2THWを介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0022】
また、配線基板SUB1は、例えば、ガラス繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる絶縁層(コア材、コア絶縁層)2CRの上面2Ctおよび下面2Cbに、それぞれ複数の配線層を、ビルドアップ工法を用いて積層することにより形成されている。また、絶縁層2CRの上面2Ct側にある配線層WL4と下面2Cb側にある配線層WL5とは、上面2Ctと下面2Cbのうちの一方から他方までを貫通するように設けられた複数の貫通孔(スルーホール)に埋め込まれた、複数のスルーホール配線2THWを介して電気的に接続されている。
【0023】
図4に示す例では、配線基板SUB1はコア材である絶縁層2CRの上面2Ct側、および下面2Cb側にそれぞれ複数の配線層を積層した配線基板を示している。ただし、
図4に対する変形例として、プリプレグ材などの硬い材料からなる絶縁層2CRを有さず、絶縁層2eと配線2dなどの導体パターンを順に積層して形成する、所謂、コアレス基板を用いても良い。コアレス基板を用いた場合、スルーホール配線2THWは形成せず、各配線層は、ビア2vを介して電気的に接続されている。
【0024】
また、
図4に示す例では、複数のランド2LDのそれぞれには、半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)SBが接続されている。半田ボールSBは、半導体装置PKG1を図示しないマザーボードに実装する際に、マザーボード側の複数の端子(図示は省略)と複数のランド2LDを電気的に接続する、導電性部材である。半田ボールSBは、例えば、鉛(Pb)入りのSn-Pb半田材、あるいは、Pbを実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなる半田材である。鉛フリー半田の例としては、例えば錫(Sn)のみ、錫-ビスマス(Sn-Bi)、または錫-銅-銀(Sn-Cu-Ag)、錫-銅(Sn-Cu)などが挙げられる。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。
【0025】
また、
図2に示すように複数の半田ボールSBは、行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。また、
図2では図示を省略するが、複数の半田ボールSBが接合された複数のランド2LD(
図4参照)も行列状(マトリクス状)に配置されている。このように、配線基板SUB1の実装面側に、複数の外部端子(半田ボールSB、ランド2LD)を行列状に配置する半導体装置を、エリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板SUB1の実装面(下面2b)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。つまり、高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0026】
また、半導体装置PKG1は、配線基板SUB1上に搭載された半導体チップCHP1を備えている。
図4に示すように、半導体チップCHP1のそれぞれは、表面(主面、上面)3t、表面3tとは反対側の裏面(主面、下面)3bを備える。また半導体チップCHP1は、平面視において表面3tおよび裏面3bの外縁を構成する複数の辺3sを備える。半導体チップCHP1は、
図3に示すように平面視において配線基板SUB1よりも平面積が小さい四角形の外形形状を成す。したがって、半導体チップCHP1は、平面視において4つの辺3sを有している。
図3に示す例では、半導体チップCHP1が配線基板SUB1の上面2tの中央部に搭載され、かつ、半導体チップCHP1の4個の辺3sのそれぞれが、配線基板SUB1の4個の辺2sのそれぞれに沿って延びている。
【0027】
また、半導体チップCHP1の表面3t側には、複数の電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)3PDが形成されている。
図4に示す例では、半導体チップCHP1は、表面3tが配線基板SUB1の上面2tと対向した状態で、配線基板SUB1上に搭載されている。このような搭載方式は、フェイスダウン実装方式、あるいはフリップチップ接続方式と呼ばれる。
【0028】
図示は省略するが、半導体チップCHP1の主面(詳しくは、半導体チップCHP1の基材である半導体基板の素子形成面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。複数の電極3PDは、半導体チップCHP1の内部(詳しくは、表面3tと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置された配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この複数の半導体素子と、それぞれ電気的に接続されている。
【0029】
半導体チップCHP1が備える半導体基板は、例えばシリコン(Si)から成る。半導体チップCHP1の表面3tには、半導体基板および配線を覆う絶縁膜が形成されており、複数の電極3PD(
図4参照)のそれぞれの一部は、この絶縁膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。また、複数の電極3PDは、それぞれ金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0030】
また、
図4に示すように、複数の電極3PDにはそれぞれ突起電極3BPが接続され、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと、配線基板SUB1の複数の端子2PDとは、複数の突起電極3BPを介して、それぞれ電気的に接続されている。突起電極(バンプ電極)3BPは、半導体チップCHP1の表面3t上に突出するように形成された金属部材(導電性部材)である。突起電極3BPは、本実施の形態では、電極3PD上に、下地金属膜(アンダーバンプメタル)を介して半田材が積層された、所謂、半田バンプである。半田バンプを構成する半田材としては、上記した半田ボールSBと同様に、鉛入りの半田材や鉛フリー半田を用いることができる。半導体チップCHP1を配線基板SUB1に搭載する際には、複数の電極3PDおよび複数の端子2PDの双方に、予め半田バンプを形成しておき、半田バンプ同士を接触させた状態で加熱処理(リフロー処理)を施すことで、半田バンプ同士が一体化して、突起電極3BPが形成されている。また、本実施の形態に対する変形例としては、銅(Cu)やニッケル(Ni)からなる導体柱の先端面に半田膜を形成したピラーバンプ(柱状電極)を突起電極3BPとして用いてもよい。
【0031】
また、
図4に示すように半導体チップCHP1と配線基板SUB1の間には、アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)UFが配置されている。アンダフィル樹脂UFは、半導体チップCHP1の表面3tと配線基板SUB1の上面2tの間の空間を塞ぐように配置されている。複数の突起電極3BPのそれぞれはアンダフィル樹脂UFにより封止されている。また、アンダフィル樹脂UFは、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成り、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分(複数の突起電極3BPの接合部)を封止するように配置されている。このように、複数の突起電極3BPと複数の端子2PDとの接合部をアンダフィル樹脂UFで覆うことで、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分に生じる応力を緩和させることができる。また、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと複数の突起電極3BPとの接合部に生じる応力についても緩和させることができる。さらには、半導体チップCHP1の半導体素子(回路素子)が形成された主面を保護することもできる。
【0032】
また、半導体チップCHP1の裏面3bには、カバー部材(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)LIDが配置されている。カバー部材LIDは、例えば、配線基板SUB1よりも熱伝導率が高い金属板であって、半導体チップCHP1で発生した熱を外部に排出する機能を備えている。また、カバー部材LIDは、接着層BND1を介して半導体チップCHP1と熱的に接続されている。接着層BND1は、半導体チップCHP1およびカバー部材LIDのそれぞれと接触している。
【0033】
接着層BND1は、例えば、樹脂ペースト中にフィラを混合したペーストを硬化させることにより得られる接着剤から成る。フィラの例としては、金属粒子の他、アルミナなどの酸化金属粒子を例示することができる。接着層BND1は放熱特性を向上させる目的で混合されているフィラを含むので、フィラを含まない樹脂接着剤と比較して半導体チップCHP1とカバー部材LIDとの間の熱伝導率を向上させることができる。
【0034】
また、カバー部材LIDの周縁領域は、接着層BND2を介して配線基板SUB1の上面2tに接着固定されている。接着層BND2の場合、接着層BND1のように放熱特性は要求されないので、材料は特に限定されず、必要な接着強度が得られる範囲内で選択することが可能である。例えば、接着層BND1と同じ材料を用いた場合には、製造工程を簡略化することができる。また例えば、接着層BND1よりも接着強度が高い材料を用いる場合もある。
【0035】
なお、半導体装置PKG1のように、放熱部材としてのカバー部材LIDが取り付けられた半導体装置は、半導体チップCHP1の放熱効率が高いので、高機能化したとしても安定的に回路を動作させることができる。ただし、本実施の形態に対する変形例として、
図4に示すカバー部材LID、接着層BND1、および接着層BND2が設けられていない半導体装置に、後述する配線基板SUB1の構造を適用する場合もある。
【0036】
<回路構成例>
次に、
図4に示す半導体装置PKG1が備えている回路の構成例について説明する。
図5は、
図4に示す半導体装置が備えている回路の構成例を示す説明図である。なお、
図5では、半導体装置PKG1が備えている複数の回路、複数の信号伝送経路、および複数の電力供給経路のそれぞれ一部を例示的に図示している。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態の半導体装置PKG1が有する半導体チップCHP1は、アナログ回路AC1を有している。
図5に示す例では、半導体チップCHP1は、アナログ回路AC1と、アナログ回路AC1に電気的に接続されたコア回路CC1と、を有している。アナログ回路AC1は、例えば、入力信号の位相に同期した新たな信号を生成するPLL回路である。
【0038】
図5に示す例では、アナログ回路AC1には、半導体装置PKG1の外部機器から信号(交流信号、高周波信号)SG1が入力される。信号SG1は、配線基板SUB1の信号伝送経路PSG1を介して半導体チップCHP1のアナログ回路AC1に入力される。アナログ回路AC1は、図示しない位相比較回路、フィルタ回路、および発振回路を備え、信号SG1の位相と、図示しない比較対象用の入力信号との位相を同期させた新たな信号(交流信号、高周波信号)SG2を出力する。信号SG2は、コア回路CC1に入力される。コア回路CC1は、入力された信号SG2にデータ処理(例えば演算処理)を施し、信号(交流信号、高周波信号)SG3を出力する。信号SG3は、配線基板SUB1の信号伝送経路PSG3を介して半導体チップCHP1のコア回路CC1から図示しない外部機器に出力される。コア回路CC1に入力される信号SG2は、PLL回路であるアナログ回路AC1により同期処理が施されている。このため、コア回路CC1には、位相の揺らぎ(ジッタ)が少ない信号SG2が供給される。なお、コア回路CC1は、例えばデジタル回路であるが、コア回路CC1がアナログ回路である場合もある。
【0039】
また、半導体チップCHP1は、アナログ回路AC1に電力を供給するための(供給することが可能な)電源回路AC2と、コア回路CC1に電力を供給するための(供給することが可能な)電源回路CC2と、を備えている。アナログ回路AC1には、電源回路AC2を介して電源電位VD1および基準電位VS1が供給される。一方、コア回路CC1には、電源回路CC2を介して電源電位VD2および基準電位VS2が供給される。
【0040】
電源電位VD1は、配線基板SUB1の電源電位供給経路PVD1を介して半導体チップCHP1の電源回路AC2に供給される。基準電位VS1は、配線基板SUB1の基準電位供給経路PVS1を介して半導体チップCHP1の電源回路AC2に供給される。電源電位VD2は、配線基板SUB1の電源電位供給経路PVD2を介して半導体チップCHP1の電源回路CC2に供給される。基準電位VS2は、配線基板SUB1の基準電位供給経路PVS2を介して半導体チップCHP1の電源回路CC2に供給される。
【0041】
なお、基準電位VS1は、電源電位VD1と異なる電位であるが、接地電位以外の電位である場合もある。同様に、基準電位VS2は、電源電位VD2と異なる電位であるが、接地電位以外の電位である場合もある。また、基準電位VS1と基準電位VS2とは、同じ電位である場合の他、基準電位VS1と基準電位VS2とが異なっている場合がある。後述するように、本実施の形態の場合、仮に、基準電位VS1と基準電位VS2とが同じ電位であったとしても、基準電位供給経路PVS1と、基準電位供給経路PVS2とは互いに分離された配線パターンにより構成されている。
【0042】
図5に示すアナログ回路AC1を安定的に動作させるためには、電源回路AC2を介してアナログ回路AC1に供給される電源電位VD1と基準電位VS1との電位差の変化を小さくする必要がある。電源電位VD1と基準電位VS1との電位差が変化すると、アナログ回路AC1から出力される信号SG2の品質が低下するからである。電源電位VD1と基準電位VS1との電位差の変化に影響を及ぼすノイズ源として、以下のものが例示できる。例えば高周波信号である信号SG1や信号SG3により誘導されるノイズは、電源電位VD1と基準電位VS1との電位差に影響を及ぼす場合がある。また例えば、コア回路CC1の電力デマンドの影響により、電源電位VD2が瞬間的に変化する場合がある。この時、電源電位供給経路PVD2が、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1の近くに配置されている場合、電源電位VD2に生じたノイズが電源電位VD1と基準電位VS1との電位差に影響を及ぼす場合がある。
【0043】
電源電位VD1と基準電位VS1との電位差に対するノイズの影響を小さくするためには、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1の経路距離を短くすることが好ましい。経路距離を短くすることにより、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1のインダクタンスを低減させることができるので、ノイズ影響を低減させることができる。
【0044】
ところが、半導体装置の高機能化に伴って、半導体装置の外部端子の数は増加傾向にある。また、半導体装置の小型化を実現するため、複数の外部端子の配置密度は高密度化傾向にある。電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1の経路距離が長くならざるを得ない場合がある。言い換えれば、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1の経路距離が長い場合でもノイズの影響を低減させることができれば、設計の自由度を向上させることができる。次のセクションでは、配線基板SUB1における電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1のレイアウトを工夫することにより、ノイズの影響を低減させる技術について説明する。
【0045】
<電力供給経路のレイアウト>
図6は、
図5に示すアナログ回路に電力を供給する経路を模式的に示す説明図である。
図6では、半導体チップCHP1と重なる領域R1の輪郭を点線で示している。
【0046】
図6に示すように、半導体装置PKG1は、複数対の電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1を有している。電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1は対になるように配置されている。
【0047】
ここで、複数の突起電極3BPのそれぞれは、半導体チップCHP1と重なっている領域R1内に配置されている。一方、複数のランド2LDのうち、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1のいずれかに含まれるものは、平面視において領域R1の外に配置されている。領域R1(特に、
図5に示すコア回路CC1と重なっている領域)には、主に
図5に示すコア回路CC1に電力を供給するための電源電位供給経路PVD2および基準電位供給経路PVS2に含まれるランドが配置される。このため、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1のいずれかに含まれるランド2LDを領域R1に配置するスペースを確保することが難しい。なお、電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1のいずれかに含まれる複数のランド2LDの一部が、領域R1内に配置される場合はある。
【0048】
透過平面視において、互いに電気的に接続された突起電極3BPとランド2LDとは、近い位置に配置されていることが好ましい。ただし、設計条件によっては、突起電極3BPの近くにランド2LDを配置することが困難な場合がある。
図6に示す例では、突起電極3BPとランド2LDとを接続する経路距離が相対的に短い電源電位供給経路PVD1Sおよび基準電位供給経路PVS1Sと、突起電極3BPとランド2LDとを接続する経路距離が相対的に長い電源電位供給経路PVD1Lおよび基準電位供給経路PVS1Lと、を示している。また、
図6では、突起電極3BPとランド2LDとを接続する経路距離が相対的に中間的な長さである電源電位供給経路PVD1Mおよび基準電位供給経路PVS1Mを示している。
【0049】
電源電位供給経路PVD1Sおよび基準電位供給経路PVS1Sの経路距離(突起電極3BPからランド2LDまでの経路距離DVDSおよび経路距離DVSS)は、例えば5mm以下である。電源電位供給経路PVD1Mおよび基準電位供給経路PVS1Mの経路距離(突起電極3BPからランド2LDまでの経路距離DVDMおよび経路距離DVSM)は、例えば5mmより大きく、かつ、7mm以下である。電源電位供給経路PVD1Lおよび基準電位供給経路PVS1Lの経路距離(突起電極3BPからランド2LDまでの経路距離DVDLおよび経路距離DVSL)は、例えば7mmより大きい。電源電位供給経路PVD1Lおよび基準電位供給経路PVS1Lの経路距離は10mm以上になる場合もある。
【0050】
図6に示す各経路距離の関係は以下のように表現できる。電源電位パターンLVD1(後述する
図11参照)を含み、半導体チップCHP1(
図4参照)の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの電源電位供給経路PVD1Lの経路距離を経路距離DVDLとする。基準電位パターンLVS1(後述する
図11参照)を含み、半導体チップCHP1の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの基準電位供給経路PVS1Lの経路距離を経路距離DVSLとする。電源電位パターンLVD3(後述する
図7参照)を含み、半導体チップCHP1の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの電源電位供給経路PVD1Sの経路距離を経路距離DVDSとする。基準電位パターンLVS3(後述する
図7参照)を含み、半導体チップCHP1の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの基準電位供給経路PVS1Sの経路距離を経路距離DVSSとする。電源電位パターンLVD4(後述する
図9参照)を含み、半導体チップCHP1(
図4参照)の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの電源電位供給経路PVD1Mの経路距離を経路距離DVDMとする。基準電位パターンLVS4(後述する
図9参照)を含み、半導体チップCHP1の突起電極3BPから配線基板SUB1のランド2LDまでの基準電位供給経路PVS1Mの経路距離を経路距離DVSMとする。この場合、経路距離DVDLは、経路距離DVDM、経路距離DVDS、経路距離DVSM、および経路距離DVSSのそれぞれよりも長い。経路距離DVSLは、経路距離DVDM、経路距離DVDS、経路距離DVSM、および経路距離DVSSのそれぞれよりも長い。経路距離DVDMは、経路距離DVDSおよび経路距離DVSSのそれぞれよりも長い。経路距離DVSMは、経路距離DVDSおよび経路距離DVSSのそれぞれよりも長い。
【0051】
図6に示す例の場合、電源電位供給経路PVD1Lおよび基準電位供給経路PVS1Lに対しては、特にノイズ対策を優先的に適用する必要がある。また、電源電位供給経路PVD1Mおよび基準電位供給経路PVS1Mに対しては、電源電位供給経路PVD1Sおよび基準電位供給経路PVS1Sよりも優先的にノイズ対策を施す必要がある。以下、ノイズ対策について、詳しく説明する。
【0052】
<第1のノイズ対策方法>
まず、第1のノイズ対策方法として、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Sおよび基準電位供給経路PVS1Sに適用して有効なノイズ対策技術について説明する。
図7は、
図6に示す電源電位供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の一例を示す拡大平面図である。
図8は、
図7のB-B線に沿った拡大断面図である。
図7および
図8では、電源電位供給経路PVD1を構成する電源電位パターンLVD3と、基準電位供給経路PVS1を構成する基準電位パターンLVS3とが誘導結合した状態を模式的に示す記号を付している。
図4に示す複数の配線層のうち、
図7に示す配線層は、例えば配線層WL7である。配線層WL7は、
図4および
図8に示すように、複数の配線層のうち、配線層WL8の次に配線基板SUB1の下面2bに近い層である。図示は省略するが、変形例として配線層WL7以外の配線層に
図7と同様の電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3が配置されている場合がある。
【0053】
図6に示す電源電位供給経路PVD1および基準電位供給経路PVS1に対するノイズ影響を低減させる方法として、電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3とを誘導結合させる方法が有効である。誘導結合とは、電源電位供給経路と基準電位供給経路との間の相互誘導の作用が支配的になる状態のことをいう。電源電位供給経路と基準電位供給経路とが誘導結合している場合、相互誘導により各経路間のループインダクタンスを低減させることができる。この結果、高周波の電流成分に対する電圧変動を抑制する(言い換えれば、自己ノイズを低減させる)ことができる。例えば、固定電位が供給されている電源電位パターンLVD3に対して高周波ノイズやパルスノイズが乗った場合、電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3とが誘導結合していれば、これらのループ経路内を流れる高周波の電流成分に対する電位変動を抑えることができる。
【0054】
図7に示すように、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3は、同じ配線層WL7に形成されている。また、平面視において、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3は、互いに隣り合った状態で、同じ方向に延びている。
図7および
図8にコンデンサの回路記号を用いて模式的に示すように、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3は、誘導結合している。
【0055】
電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3とを誘導結合させることによるノイズ対策効果は、電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3との相互インダクタンスの大きさに比例する。このため、絶縁層2eを介して対向する電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の対向する経路幅が広い程、また、対向するパターンの離間距離が小さい程、ノイズ対策効果が向上する。なお、対向する経路幅とは、電源電位供給経路と基準電位供給経路とが対向している部分の幅である。
図8に示す例の場合、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の厚さ(
図8のZ方向の長さ)が対向する経路幅に相当する。したがって、
図8に示す例では、互いに並走する電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の厚さは厚い方が好ましく、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の離間距離は小さい方が好ましい。
【0056】
なお、
図7示す平面視において、電源電位パターンLVD3の隣、および基準電位パターンLVS3の隣には、それぞれ導体パターン2CPが配置されている。この導体パターン2CPは、任意の電位が供給される経路である。例えば、
図5を用いて説明した電源電位供給経路PVD2および基準電位供給経路PVS2のいずれかを構成する導体パターン2CPである。あるいは、
図7に示す導体パターン2CPは、図示しない他の電位の供給経路を構成する場合もある。
【0057】
また、配線基板SUB1は、
図5に示すアナログ回路AC1以外の回路(例えば
図5に示すコア回路CC1)に基準電位VS2を供給することが可能な基準電位パターンLVS2(
図8参照)、を有している。基準電位パターンLVS2は、
図5に示す基準電位供給経路PVS2の一部を構成する導体パターンである。
図8に示すように、基準電位パターンLVS2は、配線基板SUB1の複数の配線層のうち、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3が形成された配線層WL7の隣の配線層WL6および配線層WL8に形成され、かつ、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3と重なっている。好ましくは、配線層WL6の基準電位パターンLVS2および配線層WL8の基準電位パターンLVS2のそれぞれは、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3と重なった状態で、同じ方向に延びている。
【0058】
基準電位パターンLVS2は、周囲で発生したノイズが電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3に到達することを抑制する電磁シールドとして機能する。
図8に示すように電磁シールドとして機能する基準電位パターンLVS2を設けることにより、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3に印加されるノイズを低減させることができる。
【0059】
なお、
図7および
図8に示す例では、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3が配線層WL7に形成された実施態様を例示しているので、配線層WL6および配線層WL8のそれぞれに電磁シールドとして機能する基準電位パターンLVS2を配置している。ただし、変形例として、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3が配線層WL8に形成される場合がある。この場合、配線層WL7に基準電位パターンLVS2が配置されていれば、配線層WL6の構造は特に限定されない。
【0060】
ところで、
図7および
図8に示す方法の場合、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の厚さを極端に厚くすることが困難である。例えば、
図8に示す電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の厚さは10~20μm程度である。このため、電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3との相互誘導の上限値が低い。したがって、例えば、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Mや電源電位供給経路PVD1Lのように、経路長さが長く、経路インダクタンスが大きい経路に対するノイズ対策としては、
図7および
図8に示す方法の有効性には限界がある。
【0061】
上記したように、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Sおよび基準電位供給経路PVS1Sは、経路距離DVDSおよび経路距離DVSSのそれぞれが5mm以下と短く、経路インダクタンスが小さい(例えば、電源電位供給経路PVD1Mや電源電位供給経路PVD1Lなどと比較して経路インダクタンスが小さい)。このため、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3の場合、
図7に示すように、電源電位パターンLVD3および基準電位パターンLVS3が同じ配線層WL7に形成された構造であっても、ノイズを低減させることができる。
【0062】
<第2のノイズ対策方法>
次に、第2のノイズ対策方法として、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Mや電源電位供給経路PVD1Lに対するノイズ対策として有効なノイズ対策技術について説明する。以下で説明する第2のノイズ対策方法、および後述する第3のノイズ対策方法のそれぞれでは、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうち、少なくとも一方のパターンを最下層である配線層WL8に配置することを前提として説明する。
図4に示す配線層WL1~配線層WL8に加えて、ノイズ対策用に新たな配線層を追加する方法も考えられる。しかし、配線層数が増加すると、半導体装置の厚さが増大する、配線基板の製造工程が増加する、あるいは、配線基板の構成材料が増加することにより製造コストが増大する、などのデメリットが生じる。そこで、本願発明者は、ノイズ対策用の配線層を追加することなく、最下層の配線層WL8を活用してノイズを低減させる技術について検討した。
【0063】
図9は、
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
図10は、
図9のC-C線に沿った拡大断面図である。なお、
図9および
図10に示すノイズ対策の例では、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1が隣り合う別の配線層に配置されている。
図9に示す配線層WL7と配線層WL8とを重ね合わせて図示すると、電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4との識別が困難である。そこで、
図9は、透過平面図とすべき所ではあるが、配線層WL7における一部分と、配線層WL8における上記一部分と重なっている部分と、が上下に並べて示された図となっている。
図9により、配線基板SUB1を下面2b(
図10参照)から視た透過平面視における電源電位パターンLVD4、基準電位パターンLVS4、および複数のランド2LDの位置関係は明確に示されているので、
図9を透過平面図と見なすことができる。後述する、
図11、
図14、
図15、
図16のそれぞれも、
図9と同様に、配線層WL7における一部分と、配線層WL8における上記一部分と重なっている部分と、が上下に並べて示された図となっており、透過平面図と見なすことができる。また、後述する
図17および
図18では、
図9と同様に、配線層WL6における一部分と、配線層WL7における上記一部分と重なっている部分と、配線層WL8における上記一部分と重なっている部分と、が上下方向に並べて示された図となっており、透過平面図と見なすことができる。
【0064】
また、
図9および
図10では、電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4とが誘導結合した状態を模式的に示す記号を付している。
【0065】
図5に示すアナログ回路AC1には、アナログ回路AC1に電源電位VD1を供給することが可能な電源電位パターンLVD4(
図9参照)、およびアナログ回路AC1に基準電位VS1を供給することが可能な基準電位パターンLVS4(
図9参照)、のそれぞれが電気的に接続されている。
図9および
図10に示す電源電位パターンLVD4は、
図5に示す電源電位供給経路PVD1Mの一部を構成する。また、基準電位パターンLVS4は、
図5に示す基準電位供給経路PVS1Mの一部を構成する。
【0066】
図9および
図10に示すように、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4のうちの一方は、配線層WL8に設けられ、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4のうちの他方は、配線層WL7に設けられている。なお、
図9および
図10に示す例では、配線層WL8に電源電位パターンLVD4が設けられ、配線層WL7に基準電位パターンLVS4が設けられている例を示しているが、変形例としては、配線層WL8に基準電位パターンLVS4が設けられ、配線層WL7に電源電位パターンLVD4が設けられている場合もある。
【0067】
また、透過平面視において、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4は、互いに重なった状態で、同じ方向に延びている。電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4のうち、配線層WL8に形成されたパターン(
図10の場合、電源電位パターンLVD4)は、幅WV4で延在するように形成されている。配線層WL7に配置されているパターン(
図10の場合基準電位パターンLVS4)も同様に幅WV4で延在するように形成されている。
【0068】
図10に示すノイズ対策の場合、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4が配線基板SUB1の厚さ方向(
図10のZ方向)において、誘電体として機能する絶縁層2eを介して互いに対向している。このため、電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4とが対向する部分の面積を、
図7および
図8に示す例と比較して大きくすることができる。
図9に示す例の場合、幅WV4は、例えば50~200μm程度であり、
図10に示す電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4の厚さTV4(例えば10~20μm程度)よりも大きい。このため、電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4との相互誘導は、
図7に示す電源電位パターンLVD3と基準電位パターンLVS3との相互誘導よりも大きい。なお、後述する
図11~
図16、
図18、および
図19に示す電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1の厚さも、
図10に示す電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4の厚さTV4と同様に、例えば10~20μm程度である。
【0069】
したがって、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Mや電源電位供給経路PVD1Lのように、経路距離が長い電位供給経路に
図9および
図10の構造を適用して特に有効である。なお、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Lに関しては、後述する
図12および
図13に示す構造の方がさらに有効である。
【0070】
図9に示す例の場合、配線層WL8において、複数のランド2LDのうち、電源電位パターンLVD4の延在方向(
図9ではX方向)に交差(
図9では直交)するY方向において互いに隣り合う2つのランド2LDの間に、電源電位パターンLVD4が配置されている。幅WV4は、Y方向において隣り合うランド2LDの中心間距離PLDよりも小さく、かつ、離間距離GLDよりも小さい。
【0071】
<第3のノイズ対策方法>
次に、第3のノイズ対策方法として、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Lに対するノイズ対策として特に有効なノイズ対策技術について説明する。
図11は、
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
図12は、
図11のD-D線に沿った拡大断面図である。
図13は、
図11に示す電源電位パターンおよび基準電位パターンのみを示す拡大平面図である。なお、
図11~
図13に示すノイズ対策の例では、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1が隣り合う別の配線層に配置されている。このため、
図11は、
図9と同様に、配線層WL7における一部分と、配線層WL8における上記一部分と重なっている部分と、が上下に並べて示された図となっている。また、
図11および
図12では、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1とが誘導結合した状態を模式的に示す記号を付している。
【0072】
図5に示すアナログ回路AC1には、アナログ回路AC1に電源電位VD1を供給することが可能な電源電位パターンLVD1(
図11参照)、およびアナログ回路AC1に基準電位VS1を供給することが可能な基準電位パターンLVS1(
図11参照)、のそれぞれが電気的に接続されている。
図11および
図12に示す電源電位パターンLVD1は、
図5に示す電源電位供給経路PVD1Lの一部を構成する。また、基準電位パターンLVS1は、
図5に示す基準電位供給経路PVS1Lの一部を構成する。
【0073】
図11および
図12に示すように、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうちの一方は、配線層WL8に設けられ、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうちの他方は、配線層WL7に設けられている。なお、
図11および
図12に示す例では、配線層WL8に電源電位パターンLVD1が設けられ、配線層WL7に基準電位パターンLVS1が設けられている例を示しているが、変形例としては、配線層WL8に基準電位パターンLVS1が設けられ、配線層WL7に電源電位パターンLVD1が設けられている場合もある。
【0074】
図11に示すように、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうち、配線層WL8に形成されたパターン(
図11に示す例では、電源電位パターンLVD1)は、平面形状が、複数のランド2LDのうち、電源電位パターンLVD1の隣に配置されるランド2LDの外縁形状に沿った形状になっている。電源電位パターンLVD1は、電源電位パターンLVD1の延在方向(
図11ではX方向)に交差(
図11では直交)するY方向において幅WV1Wを備えた複数の幅広部LWD1(
図13参照)と、Y方向において幅WV1Wよりも狭い幅WV1Nを持つ複数の幅狭部LND1(
図13参照)と、を有している。
【0075】
図13に示すように、電源電位パターンLVD1の延在方向(X方向)において幅広部LWD1と幅狭部LND1とは交互に配列されている。
図11に示すように、幅WV1Wは、Y方向において電源電位パターンLVD1を介して隣り合うランド2LDの離間距離GLDよりも大きい。
【0076】
複数の幅狭部LND1(
図13参照)および複数の幅広部LWD1(
図13参照)のそれぞれは、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうち、配線層WL7に形成されたパターン(
図11の例では、基準電位パターンLVS1)と重なっている。
【0077】
図12に示すように、第3のノイズ対策方法の場合、幅広部LWD1が存在することにより、
図10に示す第2のノイズ対策方法と比較して、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1との対向面積をさらに大きくさせることができる。
図11に示す例の場合、幅WV1Wは、例えば200~800μm程度であり、
図9に示す電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4の幅WV4よりも大きい。このため、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1との相互誘導は、
図9および
図10に示す電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4との相互誘導よりもさらに大きい。したがって、
図11~
図13に示す第3のノイズ対策を例えば、
図6に示す電源電位供給経路PVD1Lや、基準電位供給経路PVS1Lなど、経路距離DVDL(または経路距離DVSL)が、7mmを超えるような経路に適用した場合でも、電源電位供給経路PVD1Lにおけるノイズの影響を低減させることができる。
【0078】
図13に幅広部LWD1および幅狭部LND1の範囲を示すように、幅広部LWD1は、電源電位パターンLVD1のうち、実質的に一定と見なすことができる幅WV1Wで延びている部分として定義される。幅WV1Wは、隣り合うランド2LDの離間距離GLDよりも広い(大きい)。このように、離間距離GLDよりよりも広い幅WV1Wを持つ幅広部LWD1が設けられていることにより、
図11および
図12に示す第3のノイズ対策は、
図9および
図10に示す第2のノイズ対策よりもさらに高いノイズ低減効果が得られる。
【0079】
なお、
図11に示す例では、幅WV1Wは、Y方向において隣り合うランド2LDの中心間距離PLDよりも狭い(小さい)。ただし、変形例として後述するように、幅WV1Wが、Y方向において隣り合うランド2LDの中心間距離PLDよりも広い(大きい)場合もある。
【0080】
幅狭部LND1は、幅WV1Wよりも狭い幅を持つ部分として定義される。したがって、幅狭部LND1の幅は、
図13に示すように一定とは限らない。幅狭部LND1の幅のうち、最も狭い幅WV1Nは、
図11に示す隣り合うランドの離間距離2LDよりも狭い。また、
図11に示すように、幅狭部LND1(
図13参照)は、隣り合うランド2LDの離間距離GLDよりも幅が広い部分も含んでいる。幅狭部LND1の形状は、ランド2LDなど、電源電位パターンLVD1の隣に配置されている導体パターンの形状に応じて決まる。したがって、
図13に示す幅狭部LND1の形状は一例であり、種々の変形例がある。ただし、Y方向において隣り合うランド2LDの間を通るように電源電位パターンLVD1が配置されているので、複数の幅狭部LND1のそれぞれは、少なくとも隣り合うランド2LDの離間距離GLDよりも狭い(小さい)幅WV1Nを備えた部分を含んでいる。
【0081】
次に、配線層WL8に配置されている電源電位パターンLVD1と対向するように配線層WL7に配置されている基準電位パターンLVS1の形状について説明する。
図13に示すように、本実施の形態の場合、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1は、同様な平面形状になっている。
【0082】
詳しくは、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1のうち、配線層WL7に形成されたパターン(
図11に示す例では、基準電位パターンLVS1)は、透過平面視において、配線層WL8に形成されたパターン(
図11に示す例では電源電位パターンLVD1)の形状に倣って形成されている。
【0083】
基準電位パターンLVS1の延在方向(X方向)に交差(
図11では直交)するY方向において幅WV1Wを備えた複数の幅広部LWS1(
図13参照)と、幅WV1Wよりも狭い幅(例えば幅WV1N)を持つ複数の幅狭部LNS1(
図13参照)と、を有している。基準電位パターンLVS1の延在方向(X方向)において幅広部LWS1と幅狭部LNS1とは交互に配列されている。透過平面視において、複数の幅狭部LND1と複数の幅狭部LNS1とは、それぞれ重なっており、かつ、複数の幅広部LWD1と複数の幅広部LWS1とは、それぞれ重なっている。
【0084】
なお、幅広部LWS1の定義は、上記した幅広部LWD1の定義において、電源電位パターンLVD1を基準電位パターンLVS1と読み替えて適用することができる。同様に幅狭部LNS1の定義は、上記した幅狭部LND1の定義において、電源電位パターンLVD1を基準電位パターンLVS1と読み替えて適用することができる。
【0085】
このように、基準電位パターンLVS1の平面形状と電源電位パターンLVD1の平面形状とを同じ形状とし、複数の幅狭部LND1と複数の幅狭部LNS1とは、それぞれ重なっており、かつ、複数の幅広部LWD1と複数の幅広部LWS1とは、それぞれ重畳するように配置することで、基準電位パターンLVS1および電源電位パターンLVD1の大部分が、互いに対向していることになる。この場合、他の電力供給経路や信号伝送経路からのノイズの侵入経路を小さくすることができるので、特に好ましい。
【0086】
「倣って形成されている」とは、
図11に示す例の場合、基準電位パターンLVS1と、電源電位パターンLVD1とが同じ形状で形成されていることを意味する。ただし、加工精度の関係でわずかに形状の違いがあるものを除外する意味ではない。また、例えば配線層WL7または配線層WL8のレイアウト上の制約によっては、基準電位パターンLVS1の形状と電源電位パターンLVD1の形状とが一致しない部分を含んでいる場合がある。言い換えれば、「倣って形成される」の意味としては、基準電位パターンLVS1の形状と電源電位パターンLVD1の形状とが全経路において完全に一致しているもののみに限定されるものではない。この場合でも、基準電位パターンLVS1の形状と電源電位パターンLVD1の形状とが一致する部分を含んでいれば、当該部分では、本セクションで説明したノイズ対策の効果を得ることができる。
【0087】
ただし、基準電位パターンLVS1の全経路の80%以上と、電源電位パターンLVD1の全経路の80%以上とが互いに同じ形状で形成され、かつ、重畳するように配置されていることが好ましい。ここで、基準電位パターンLVS1の全経路とは、基準電位パターンLVS1の一方の端部(図示しないビア配線に接続されるビアランド)から他方の端部(基準電位パターンLVS1に接続されるビア2LD)までの経路として定義される。また、電源電位パターンLVD1の全経路とは、電源電位パターンLVD1の一方の端部(図示しないビア配線に接続されるビアランド)から他方の端部(電源電位パターンLVD1に接続されるビア2LD)までの経路として定義される。
【0088】
以下の説明において、「AがBに倣って形成されている」という表現を用いた場合、特に異なる意味の解釈について説明した場合を除き、同様の意味で用いている。
【0089】
なお、図示は省略するが、
図11および
図13に対する変形例として、配線層WL7に形成されている基準電位パターンLVS1の平面形状が、幅WV1WでY方向に延びる帯状のパターンになっている場合もある。この場合でも、
図11および
図13に示す電源電位パターンLVD1の大部分が、基準電位パターンLVS1と対向しているので、電源電位パターンLVD1に侵入したノイズ成分を低減させる対策としては有効である。ただし、この場合、基準電位パターンLVS1の一部分が、電源電位パターンLVD1以外の導体パターン(例えばランド2LD)と重なることになる。ランド2LDから配線層WL7に形成された基準電位パターンLVS1へのノイズ成分の侵入を抑制する観点からは、
図11および
図13に示すように、基準電位パターンLVS1が電源電位パターンLVD1の形状に倣って形成されていることが特に好ましい。
【0090】
<第3のノイズ対策方法の変形例>
次に、
図11~
図13を用いて説明した第3のノイズ対策方法の変形例について、説明する。
図14は、
図6に示す電源供給経路および基準電位供給経路に対するノイズ対策の他の例を示す拡大平面図である。
図14では、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1とが誘導結合した状態を模式的に示す記号を付している。なお、以下の変形例では、
図11に対応する拡大平面のみを示し、
図12に対応する拡大断面図および
図13に対応する拡大平面図は図示を省略し、必要に応じて
図12および
図13を参照して説明する。
【0091】
図14に示す変形例の場合、電源電位パターンLVD1の幅広部LWD1(
図13参照)の幅WV1Wおよび基準電位パターンLVS1の幅広部LWS1(
図13参照)の幅WV1Wのそれぞれが、
図11に示す例と比較して、さらに広くなっている点で相違する。
図9に示す例、および
図14に示す例のそれぞれにおいて同様であるが、複数のランド2LDのそれぞれは、等間隔で配列されている。
図14に示す例の場合、幅WV1Wは、複数のランド2LDのうち、Y方向において電源電位パターンLVD1を介して隣り合うランド2LDの中心間距離PLDよりも大きい。
【0092】
図14に示す変形例の場合、
図11に示す例と比較して、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1との対向する経路幅をさらに大きくすることができる。したがって、電源電位パターンLVD1または基準電位パターンLVS1に侵入したノイズ成分を低減させる効果としては、
図11に示す例よりもさらに大きい。
【0093】
一方、
図14に示す例の場合、複数のランド2LDの間に配置されている電源電位パターンLVD1の面積が大きいので、ランド2LDに接続される引出配線の設計の自由度、言い換えれば配線層WL8の設計の自由度を大きくするという観点からは、
図11に示す例の方が好ましい。すなわち、
図11に示す例では、幅WV1Wは、複数のランド2LDのうち、Y方向において電源電位パターンLVD1を介して隣り合うランド2LDの中心間距離PLDよりも小さい。この場合、
図14に示す変形例と比較して配線層WL8の設計の自由度を大きくすることができる。
【0094】
図15は、
図11に対する他の変形例を示す拡大平面図である。
図15および後述する
図16では、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1とが誘導結合した状態を模式的に示す記号の図示を省略している。
図15に示す変形例の場合、複数のランド2LDの一部が、電源電位パターンLVD1に周囲を囲まれた位置に配置されている点で、
図11に示す例と相違する。
図15に示す変形例の場合、
図14に示す変形例と比較して、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1との対向面積をさらに大きくすることができる。したがって、電源電位パターンLVD1または基準電位パターンLVS1に侵入したノイズ成分を低減させる効果としては、
図14に示す例よりもさらに大きい。
【0095】
図15に示す変形例の場合、Y方向においてランド2LDを介して隣り合う複数(
図15では2個)の幅狭部LND1を有している。図示は省略するが、電源電位パターンLVD1の幅広部LWD1の幅WV1Wをさらに大きくすることもできる。
【0096】
一方、上記したように、配線層WL8の設計の自由度を大きくするという観点からは、
図11に示す例の方が好ましい。例えば、
図15に示す例において、電源電位パターンLVD1に周囲を囲まれたランド2LDを他の配線層と電気的に接続させるためには、ランド2LDと重なる位置にビア配線を接続する必要がある。
【0097】
図16は、
図11に対する他の変形例を示す拡大平面図である。
図16に示す変形例の場合、複数のランド2LDの配列パターンが
図9、
図11、
図14、および
図15と相違する。
図16に示す例の場合、複数のランド2LDのうち、電源電位パターンLVD1を介して互いに隣り合うランド2LDの中心間距離PLD1は、電源電位パターンLVD1の延在方向(
図16ではX方向)に沿って隣り合うランド2LDの中心間距離PLD2よりも長い。幅狭部LWD1の幅の最小値(すなわち幅WV1N)は、中心間距離PLD2よりも大きい。
【0098】
図16に示す変形例は、
図15に示す変形例の構造において、電源電位パターンLVD1に周囲を囲まれたランド2LDが配置されていない構造である。この構造の場合、
図15に示す変形例と比較して、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1との対向する経路幅をさらに大きくすることができる。したがって、電源電位パターンLVD1または基準電位パターンLVS1に侵入したノイズ成分を低減させる効果としては、
図15に示す例よりもさらに大きい。
【0099】
図16に示す変形例において、電源電位パターンLVD1の一部をランド2LDとして利用した場合(すなわち、電源電位パターンLVD1を覆う絶縁膜SR2(
図4参照)に開口部を設け、開口部において露出する電源電位パターンLVD1に半田ボールSB(
図4参照)を接続した場合)、
図16に示す変形例を適用することによる端子数の減少を抑制できる。
【0100】
なお、
図14、
図15および
図16に示す変形例において、配線層WL7に配置された基準電位パターンLVS1の平面形状は、それぞれ配線層WL8に配置された電源電位パターンLVD1と同じ形状になっている例を示している。ただし、上記したように、変形例として、配線層WL7に形成されている基準電位パターンLVS1の平面形状が、幅WV1WでY方向に延びる帯状のパターンになっている場合もある。また、
図14、
図15および
図16に対する更なる変形例として、配線層WL8に基準電位パターンLVS1が配置され、配線層WL7に電源電位パターンLVD1が配置されている場合がある。
【0101】
<電磁シールドによるノイズ対策>
次に、
図7~
図16を用いて説明した各ノイズ対策のさらに好ましい態様として、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1と重畳する位置に電磁シールドとして機能する導体パターンを配置する変形例について説明する。
図17は、
図10に示す最下層から数えて第3層目の配線層に形成された導体パターンの形状の一例を示す拡大平面図である。配線層WL6は、配線層WL7の次に下面2b(
図4参照)に近い層である。
図17に示すC-C線に沿った拡大断面図は、
図10と同様なので重複する図示は省略する。
図17では、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1とが誘導結合した状態を模式的に示す記号を付している。
【0102】
図5を用いて説明した配線基板SUB1は、アナログ回路AC1以外の回路(例えばコア回路CC1)に基準電位VS2を供給することが可能な基準電位パターンLVS2(
図17参照)、を有している。また、
図10に示すように、配線基板SUB1の複数の配線層は、配線層WL7の次に下面に近い位置に設けられた配線層WL6を含んでいる。
図17に示すように、基準電位パターンLVS2は、配線層WL6に設けられ、かつ、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4と重なっている。電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4と重畳するように配置された基準電位パターンLVS2は、電磁シールドとして機能し、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4に他の導体パターンからのノイズ成分が侵入することを抑制することができる。
【0103】
ところで、
図17に示す基準電位パターンLVS2の代わりに、アナログ回路AC1以外の回路(例えばコア回路CC1)に電源電位VD2を供給することが可能な電源電位パターン(図示は省略)を用いることもできる。ただし、基準電位パターンLVS2は、アナログ回路AC1以外の多くの回路に基準電位を供給するための基準電位供給経路PVS2の一部を構成する導体パターンであり、配線基板SUB1が備えている複数の導体パターンのうち、自己ノイズが最も小さい導体パターンである。したがって、電磁シールドとして用いる導体パターンとしては、基準電位パターンLVS2を用いることが特に好ましい。
【0104】
また、
図17に示す例では、透過平面視において、電源電位パターンLVD4、基準電位パターンLVS4、および基準電位パターンLVS2のそれぞれは、互いに重なった状態で、同じ方向に延びている。基準電位パターンLVS2の幅WV2は、電源電位パターンLVD4の幅WV4、および基準電位パターンLVS4の幅WV4と同一である。言い換えれば、基準電位パターンLVS2は、電源電位パターンLVD4および基準電位パターンLVS4と同じ平面形状を有している。
図17に対する変形例として、
図17の配線層WL7に配置されている基準電位パターンLVS4の他、基準電位パターンLVS4の両隣に配置されている導体パターン2CPとも重なっている大面積の基準電位パターンLVS2を設ける場合がある。
【0105】
図17に示す配線層WL6において、基準電位パターンLVS2の両隣に配置されている導体パターン2CPに供給される電位が、
図5に示す基準電位VS2以外の電位(または信号)である場合には、基準電位パターンLVS2の形状を電磁シールドとして機能する範囲内で最小化することにより、配線層WL6のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0106】
図18は、
図12に示す最下層から数えて第3層目の配線層に形成された導体パターンの形状の一例を示す拡大平面図である。配線層WL6は、配線層WL7の次に下面2b(
図4参照)に近い層である。
図18に示すD-D線に沿った拡大断面図は、
図12と同様なので重複する図示は省略する。
【0107】
図17を用いて説明した電磁シールドは、
図11~
図13を用いて説明した構造と組み合わせて適用することもできる。
図18に示すように、基準電位パターンLVS2は、配線層WL6に設けられ、かつ、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1と重なっている。電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1と重畳するように配置された基準電位パターンLVS2は、電磁シールドとして機能し、電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1に他の導体パターンからのノイズ成分が侵入することを抑制することができる。
【0108】
図18に示す例では、電源電位パターンLVD1の複数の幅広部LWD1(
図13参照)、複数の幅狭部LND1(
図13参照)、基準電位パターンLVS1の複数の幅広部LWS1(
図13参照)、および複数の幅狭部LNS1(
図13参照)のそれぞれは、配線層WL6に形成された基準電位パターンLVS2と重なっている。
【0109】
図18に対する変形例として、
図18の配線層WL7に配置されている基準電位パターンLVS1の他、基準電位パターンLVS1の両隣に配置されている導体パターン2CPとも重なっている大面積の基準電位パターンLVS2を設ける場合がある。
図18に示す例では、配線層WL6に配置されている基準電位パターンLVS2の平面形状は、配線層WL7に配置されている基準電位パターンLVS1の平面形状、および配線層WL8に配置されている電源電位パターンLVD1の平面形状と同じになっている。透過平面視において、基準電位パターンLVS2、基準電位パターンLVS1、および電源電位パターンLVD1のそれぞれは、互いに重なった状態で同じ方向に延びている。
【0110】
詳しくは、配線層WL6に形成された基準電位パターンLVS2は、透過平面視において、配線層WL8に形成された電源電位パターンLVD1の形状に倣って形成されている。基準電位パターンLVS2の延在方向(X方向)に交差(
図18では直交)するY方向において幅WV1Wを備えた複数の幅広部LWS2と、幅WV1Wよりも狭い幅を持つ複数の幅狭部LNS2と、を有している。基準電位パターンLVS2の延在方向(X方向)において幅広部LWS2と幅狭部LNS2とは交互に配列されている。透過平面視において、複数の幅狭部LND1と複数の幅狭部LNS2とは、それぞれ重なっており、かつ、複数の幅広部LWD1と複数の幅広部LWS2とは、それぞれ重なっている。
【0111】
図18に示すように、基準電位パターンLVS2の形状を電磁シールドとして機能する範囲内で最小化することにより、配線層WL6のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0112】
図17および
図18を代表例として取り上げて基準電位パターンLVS2を電磁シールドとして用いる実施態様について説明したが、
図14、
図15、および
図16を用いて説明した各構造において、配線層WL6(
図4参照)に、
図17または
図18を用いて説明した基準電位パターンLVS2を配置する場合がある。この場合、
図14、
図15、および
図16に示す電源電位パターンLVD1および基準電位パターンLVS1に他の導体パターンからのノイズ成分が侵入することを抑制することができる。
【0113】
<パターンの幅について>
次に、
図9~
図18を用いて説明した基準電位パターンLVS1、基準電位パターンLVS4、電源電位パターンLVD1、および電源電位パターンLVD4のそれぞれの幅について説明する。
図19は、
図5に示すアナログ回路に電気信号を伝送するための信号配線と、
図9または
図11に示す基準電位パターンおよび電源電位パターンとの配線幅の違いを比較するための平面図である。
【0114】
図5示す配線基板SUB1は、アナログ回路AC1に信号(電気信号)SG1を伝送する信号伝送経路PSG1の一部を構成する配線(信号配線、信号配線パターン)LSG(
図19参照)を有している。言い換えれば、アナログ回路AC1には、アナログ回路AC1に電気信号を伝送することが可能な配線(信号配線、信号配線パターン)LSGが電気的に接続されている。
図19に示すように、
図9を用いて説明した電源電位パターンLVD4の幅WV4、および基準電位パターンLVS4の幅WV4のそれぞれは、配線LSGの配線幅WSGよりも広い。同様に、
図11を用いて説明した電源電位パターンLVD1の幅の最小値である幅WV1Nおよび基準電位パターンLVS1の幅の最小値である幅WV1Nのそれぞれは、配線LSGの配線幅WSGよりも広い。このように、アナログ回路AC1に電力を供給するための導体パターンは、延在するように形成されている場合であっても、その幅は、配線LSGの配線幅WSGよりも広い。このため、上記したように、電源電位パターンLVD1と基準電位パターンLVS1とを厚さ方向において重畳させる、あるいは、電源電位パターンLVD4と基準電位パターンLVS4とを厚さ方向において重畳させる事により、相互誘導を大きくすることができるので、侵入したノイズを低減させる効果を大きくすることができる。
【0115】
<パターン間の離間距離について>
次に、
図10および
図20に示すパターンの離間距離について説明する。
図20は、
図10または
図12に対する変形例を示す拡大断面図である。
図7~
図16のそれぞれを用いて説明したノイズ対策およびその変形例は、アナログ回路に接続されている電源電位の供給経路と基準電位の供給経路とを誘導結合することにより、経路中に侵入したノイズ成分を低減させる技術である。しかし、アナログ回路への電力供給を安定化させる観点からは、電力供給経路へのノイズの侵入を抑制することが好ましい。
【0116】
図20に示す例の場合、配線層WL8に配置されている電源電位パターンLVD1(または電源電位パターンLVD4)と、ランド2LDとの離間距離GWL8は、配線層WL7と配線層WL8との層間距離G78よりも大きい。層間距離G78は、配線層WL8に配置されている導体パターンと配線層WL7に配置されている導体パターンの厚さ方向における離間距離と言い換えることができる。離間距離GWL8を層間距離G78よりも大きくすることで、ノイズ成分の侵入を抑制し、かつ、相互誘導を大きくすることができる。
【0117】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0118】
2b 下面(面、主面、実装面、第2主面)
2Cb 下面
2CP 導体パターン
2CR 絶縁層(コア材、コア絶縁層)
2Ct 上面
2d 配線
2e 絶縁層
2LD ランド(ランドパターン)
2PD 端子
2s,3s 辺
2t 上面(面、主面、チップ搭載面、第1主面)
2THW スルーホール配線
2v ビア
3b 裏面(面、主面、下面)
3BP 突起電極(バンプ電極)
3PD 電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)
3t 表面(主面、上面)
AC1 アナログ回路
AC2,CC2 電源回路
BND1,BND2 接着層
CC1 コア回路
CHP1 半導体チップ(半導体部品、電子部品)
DVDL,DVDM,DVDS,DVSL,DVSM,DVSS 経路距離
G78 層間距離
GLD,GWL8 離間距離
LID カバー部材(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)
LND1,LNS1,LNS2 幅狭部
LSG 配線(信号配線)
LVD1,LVD3,LVD4 電源電位パターン
LVS1,LVS2,LVS3,LVS4 基準電位パターン
LWD1,LWS1,LWS2 幅広部
PKG1 半導体装置
PLD,PLD1,PLD2 中心間距離
PSG1,PSG3 信号伝送経路
PVD1,PVD1L,PVD1M,PVD1S,PVD2 電源電位供給経路
PVS1,PVS1L,PVS1M,PVS1S,PVS2 基準電位供給経路
SB 半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)
SG1,SG2,SG3 信号
SR1,SR2 絶縁膜
SUB1 配線基板
UF アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)
VD1,VD2 電源電位
VS1,VS2 基準電位
WL1-WL8 配線層
WSG 配線幅
WV1N,WV1W,WV2,WV4 幅