IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大鉄工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-線路用バラスト整理装置 図1
  • 特開-線路用バラスト整理装置 図2
  • 特開-線路用バラスト整理装置 図3
  • 特開-線路用バラスト整理装置 図4
  • 特開-線路用バラスト整理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068835
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】線路用バラスト整理装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/04 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
E01B27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179439
(22)【出願日】2022-11-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日 令和3年11月12日 掲載アドレス https://www.youtube.com/watch?v=SR2IvU5Hxvw 展示会名 第7回鉄道技術展2021 開催場所 幕張メッセ 開催日 令和3年11月24日~令和3年11月26日
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057CB02
2D057CB07
(57)【要約】
【課題】鉄道線路用バラスト整理装置の簡略化、軽量化、操作性の向上を図る。
【解決手段】この発明の線路用バラスト整理装置は、内部に駆動軸を挿通した前後方向の操作ロッド7の先端に回転駆動して線路間のバラストを掻き寄せる左右方向のローター8を軸支したバラスト整理機4と、該バラスト整理機4を取付けレール1上を走行する走行部9を備えた台車6とからなる線路用バラスト整理装置であって、上記走行部19,19間に前記操作ロッド7を左右揺動可能に支持する支持フレーム21を設けている。
上記支持フレーム21を左右方向に横設し、バラスト整理機4を支持フレーム21に沿って左右スライド可能に支持している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に駆動軸を挿通した前後方向の操作ロッド(7)の先端に回転駆動して線路間のバラストを掻き寄せる左右方向のローター(8)を軸支したバラスト整理機(4)と、該バラスト整理機(4)を取付けレール(1)上を走行する走行部(9)を備えた台車(6)とからなる線路用バラスト整理装置であって、上記走行部(19),(19)間に前記操作ロッド(7)を左右揺動可能に支持する支持フレーム(21)を設けた線路用バラスト整理装置。
【請求項2】
支持フレーム(21)を左右の走行部(19),(19)間に左右方向に横設し、操作ロッド(7)と支持フレーム(21)との間にバラスト整理機(4)を支持フレーム(21)に沿って左右スライド可能に支持するスライダー(24)を設けた請求項1に記載の線路用バラスト整理装置。
【請求項3】
支持フレーム(21)の前方の左右の走行部(19),(19)間にバラスト整理機(4)の操作ロッド(7)のローター側を左右スライド可能に受け止めて支持するガイドフレーム(22)を横設した請求項1に記載の線路用バラスト整理装置。
【請求項4】
台車(6)に対して操作ロッド(7)を昇降揺動可能に支持した請求項1~3のいずれかに記載の線路用バラスト整理装置。
【請求項5】
バラスト整理機(4)の台車(6)への取付部(23)とガイドフレーム(22)のいずれか一方又は両方を高さ調節可能に構成した請求項1~3のいずれかに記載の線路用バラスト整理装置。
【請求項6】
台車(6)が作業者の人力によって手押し走行可能な台車である請求項1~3のいずれかに記載の線路用バラスト整理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉄道用線路床のバラストを整理する線路用バラスト整理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広く知られているように鉄道用の線路の路床には主に砕石からなるバラストが台形断面状に敷かれて形成され、その断面内に左右方向の木製又はプレキャストコンクリートからなる枕木が左右方向に埋設され、その上面に交差方向に線路(レール)が敷かれて、左右のレールは止め具によって枕木に固定されている。
【0003】
線路敷設時又は敷設後の保線工事の際は、線路と枕木間にバラストが投入又は補充投入され、その表面がバラスト整理機によって均平化される。特に枕木上に残るバラストは、線路止め具の取付けや交換、締め直し等のために全てを整理機によって掻き寄せて除去する必要がある。
【0004】
従来鉄道線路用のバラスト整理機として、線路上を動力によって走行する台車側に、路床のバラストを掻き寄せて整地し又は枕木上のバラストを掻き除けるブラシ(ローター)を回転駆動可能に軸支したものが、特許文献1,同2等によって公知である。
【0005】
また古くから知られている駆動軸内蔵型の操作ロッドの先端に、水平回転する刈刃や刈取ロープ又は刈取ワイヤーからなる刈取り部を備えた動力式のハンディタイプの草刈機を改造した携帯型のバラスト整理機も開発され、市販されている。
【0006】
上記草刈機改造型のバラスト整理機は、従来の回転刈刃の代わりに操作ロッドの先端に回転駆動するブラシやスィーブ(ローター)を左右方向に軸支したハンディタイプの動力式バラスト整理機である(図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭56-704号公報
【特許文献2】特許第3158082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記特許文献1,同2のバラスト整理機は、いずれも動力走行型の台車に線路床上のバラストを掻き寄せる回転ブラシを左右方向又は一部前後方向に軸支するもので、装置全体が大型化を免れない。
【0009】
また台車の定位置にブラシを取付けるため、固定的に取付けたものでは、レール近傍のコーナー部等にブラシが十分に届かない他、これを十分に届かせようとすると複数のブラシを複雑に配置する必要がある。
【0010】
他方、ブラシを移動調節可能にすると、そのための調整装置が必要となり、大型化・複雑化し、高コスト化を招く欠点がある。
【0011】
さらに図1に示す本発明でも使用されるハンディタイプの携帯型の動力式バラスト整理機は、作業者の労力負担が大きく均平化も作業者の技能により個人差が生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の装置は、第1に内部に駆動軸を挿通した前後方向の操作ロッド7の先端に回転駆動して線路間のバラストを掻き寄せる左右方向のローター8を軸支したバラスト整理機4と、該バラスト整理機4を取付けレール1上を走行する走行部9を備えた台車6とからなる線路用バラスト整理装置であって、上記走行部19,19間に前記操作ロッド7を左右揺動可能に支持する支持フレーム21を設けたことを特徴としている。
【0013】
第2に、支持フレーム21を左右の走行部19,19間に左右方向に横設し、操作ロッド7と支持フレーム21との間にバラスト整理機4を支持フレーム21に沿って左右スライド可能に支持するスライダー24を設けたことを特徴としている。
【0014】
第3に、支持フレーム21の前方の左右の走行部19,19間にバラスト整理機4の操作ロッド7のローター側を左右スライド可能に受け止めて支持するガイドフレーム22を横設したことを特徴としている。
【0015】
第4に、台車6に対して操作ロッド7を昇降揺動可能に支持したことを特徴としている。
【0016】
第5に、バラスト整理機4の台車6への取付部23とガイドフレーム22のいずれか一方又は両方を高さ調節可能に構成したことを特徴としている。
【0017】
第6に、台車6が作業者の人力によって手押し走行可能な台車であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成される本発明の装置によれば、以下のような効果を奏する。
(1)操作ロッドを支持フレームに対して左右揺動可能に支持することによって、先端側のローターにより路床のバラスト表面をレール中間から左右のレール内面側コーナーまで枕木方向に沿って満遍なく掻き均し又は掻き寄せることができ、バラスト面の整理むらが生じない。
【0019】
(2)操作ロッドの支持部をスライダーにより左右スライドさせることにより、左右に広範囲な掻き寄せができる他、操作ロッドのロッド長さを短くできるので、バラスト整理機の操作性が良くなるほか、バラスト面の均平化が容易になる。
【0020】
(3)ガイドフレームにより、ローターを備えて高重量となる操作ロッドの先端側を受け止めさせて左右スライドできるため、バラスト面の左右方向の均平性を確保することができる他、ローター側をロッドの基端部側を押し下げて支える必要がなく、掻き寄せ作業の労力負担が少なくてすむ利点がある。
【0021】
(4)台車を人力により手押し移動や走行が可能な機構にすることにより、台車走行のための動力が不要になる。その他整理作業全体も手動によって操作できる利点があるほか、全体の機構が簡単で小型化、軽量化、低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のバラスト整理装置の使用状態を示す全体斜視図である。
図2】本発明装置に用いるバラスト整理機のローター部分の機構を示す分解斜視図である。
図3】本発明装置の全体左側面図である。
図4】台車の支持フレームとスライダーの正面断面図である。
図5】台車のガイドビームの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面はこの発明の1実施形態を示し、図1は装置の使用状態を示す全体斜視図である。図示するように一対のレール1は線路床2のバラスト(図示せず)内に埋設された状態の枕木3の上面に交差方向に敷設され、図示しない止め具により枕木3上に固定されている。
【0024】
これに対し本発明のバラスト整理装置は、操作ロッドを水平揺動しながら先端でバラストを掻き寄せ作業を行うハンディタイプのバラスト整理機4を、線路(レール)上を人手によって手押し走行される(走行用動力を用いない)台車6上に取付けて構成されている。
【0025】
本例では、バラスト整理機4は、既述のように肩掛けで作業者が携帯できるハンディタイプの古くから周知の草刈機を改良したもので既に市販されているものを使用しており、内部に駆動軸(図示せず)を挿通したパイプからなる操作ロッド7の先端に、回転駆動されるブラシからなるローター8が左右方向(ロッドに対しT字型)に軸支して取付けられている。本例では図1においてローター8は時計方向回転し、バラストは前方に掻き寄せられる。図3に示すようにローター8の背面側には円筒片状のローターカバー10が取付けられている。
【0026】
ローター8は図2に示すようにローター軸9に左右一対の回転ブラシ8a,8bが軸装され、一方は固定的に他方は片側に突出したスプライン軸からなるローター軸9に着脱可能に挿入される。ローター軸9の中間位置には操作ロッド7及び駆動軸の先端と連結されるギヤケース11が設置され、駆動軸の回転がウォームギヤ等によりローター軸9に伝動される。
【0027】
上記操作ロッド7の後端(基端)部には、バッテリー12とともにメインハンドル13と一体の駆動用モーター14が駆動軸と連結されて取付けられている。16はメインハンドル13に取付けられたモーター起動停止用のスイッチである。
【0028】
操作ロッド7は内部の駆動軸とともに基端部側の第1ロッド7aと先端側の第2ロッド7bとに前後2分割形成され、ジョイント部17で着脱可能に接続されている。ローター8のブラシ片は図2に示すように一定の剛性と弾力性を備えた金属製又はプラスチック製で線状又は短冊状の部材がローター軸9回りに放射状・らせん状に配置される。
【0029】
また第1ロッド7aの先端側にはループ状のサブハンドル18が上向きに突設され、バラスト整理機4は、作業者が一方の手でメインハンドル13を持ち、他方の手でサブハンドル18を持って、先端のローター8を左右方向及び上下方向に揺動させながらバラストの掻き寄せ作業を行う。
【0030】
台車6は左右のレール1上に、前後に軸支された車輪20(図3参照)を介して前後走行可能に載置される前後方向の走行部19と、左右の走行部19,19間の前後に横設される支持フレーム21とガイドフレーム22とで平面視長方形の枠型に形成され、各走行部19は、内部に車輪20を軸支する下向きのチャンネル状断面の部材で構成されている。
【0031】
バラスト整理機4の取付部23を構成する後側の支持フレーム21は、この例では角パイプからなり、左右の走行部19,19間に着脱可能に架設されている。そして上記支持フレーム21には正面視で凸状の中空材からなる取付台が支持フレーム21に沿って左右方向にスライド可能なスライダー24として取付けられている。取付台(スライダー)24の下端側のスライドケース26の中空部には、支持フレーム21が左右方向に挿通された状態で、換言すれば取付台24のスライドケース26が支持フレーム21の少なくとも上部及び前後両側を覆うように被せられた状態で取付けられている。
【0032】
さらに支持フレーム21の底面側には、左右方向のスライドレール27が平行に取付け支持されるとともに、上記スライドケース26内にはこのスライドレール27の底辺上面に転接して取付台24を左右スライド可能に支持するローラー28が複数個軸支されている(図4参照)。
【0033】
上記スライドケース26の左右方向中心部には、上下方向の各パイプからなるマストケース29が上向きに開口して立設形成され、このマストケース29には前記バラスト整理機4を取付け支持する取付けマスト31が、スライドして昇降調節可能に挿入されている。マストケース29の背面側には、マストケース29に対して取付けマスト31の高さを所定位置でボルト(30)操作で締付セットするセットレバー32がスリット35(図4参照)より挿入されて取付けられている。
【0034】
上記取付けマスト31の上端と第1ロッド7aの先端位置(サブハンドル18とジョイント部17の中間位置)との間は、一対の連結部材33を介して操作ロッド7が上下揺動可能に操作できるように軸支して連結支持されている。このバラスト整理機4の支持姿勢は、操作ロッド7が前傾し、その先端のローター8が左右のレール1,1間のバラスト面に十分に接地できる傾きが確保される姿勢である。
【0035】
また台車6の前方側に横設されたガイドフレーム22上には、棒状で所定の弾力性を備えたプラスチック材等からなるガイド部材34がガイドフレーム22に沿って取付けられており、このガイド部材34を介して、前傾姿勢のバラスト整理機4を左右円滑スライド自在に受け止め且つローター8の下限位置を決める。
【0036】
ガイドフレーム22はその両端に取付けた昇降ブラケット36と、左右の走行部19の前端上に取付け固定される固定ブラケット37を介して台車6上に取付けられている。そして昇降ブラケット36は、平面視でアングル状に形成された固定ブラケット37の内面コーナー部に沿って上下スライド可能に取付けられ、固定ブラケット37の前壁に形成された上下方向のスリット38を介して外側(前側)から挿入されるセットレバー39により、所定高さのスライド位置でボルト(41)締着することにより任意な位置に高さ調節される。
【0037】
上記のように構成される本発明の装置によって線路床2のバラスト整理を行う際は、図1図3に示すように作業者の人力による手押し作業でレール1上の台車6を主として前進走行させ、又は必要に応じて後進を交えながらローター8をバラスト面に必要に応じ上下揺動させ、若しくは左右揺動させながら押接し、バラスト面の均平化又は枕木3上のバラストを掻き取り除去させることによって行う。
【0038】
この時バラスト整理機4は、支持フレーム21上で自由に左右スライドするので、ローター8の平面視における枕木3等に対する傾きや左右位置を自由に変更操作することができる他、バラスト面の高さや凹凸に応じてローター8の上下高さを変更操作しながらバラスト面を広範囲で整理調整することができる。
【0039】
また支持部23の高さ調節やガイドフレーム22の高さ調節を行うことにより、現場や作業者の条件に応じたローター高さやバラスト整理機の最適姿勢を選択できる。
【0040】
尚、台車6は軽量化や操作性向上のために、手押し走行タイプとしたが、必要に応じ小型エンジンやモーターによる動力走行とすることも可能であり、ローター8も回転ブラシの他、多数の帯状プレートを外周に横設した公知のスィーブドラムタイプにすることも可能である。その他取付部23やガイドフレーム22の高さ調節は上下方向のスクリュー等を用いたジャッキタイプのものを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 線路(レール)
2 線路床
4 バラスト整理機
6 台車
7 操作ロッド
8(8a,8b) ローター
19 走行部
21 支持フレーム
22 ガイドフレーム
23 取付部
24 スライダー(取付台)
27 スライドレール
図1
図2
図3
図4
図5