(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068837
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】農作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A01C11/02 313Z
A01C11/02 311W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179441
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA03
2B062AA14
2B062AA20
2B062AB01
2B062BA01
2B062BA12
(57)【要約】
【課題】作業機を駆動するための構成を簡素化することを目的とする。
【解決手段】農作業車両は、走行のための駆動力を発生する第1駆動源と、作業機を駆動する第2駆動源27と、第2駆動源27を冷却する冷却風を発生する冷却ファン40と、第2駆動源27と冷却ファン40とを包囲し、冷却風を所定方向に導くカバー41と、を備える。第2駆動源27は、作業機の前方に設けられ、第2駆動源27の出力軸27Bに連結され、作業機3に駆動力を伝達する駆動軸35を備え、カバー41の後端部の上部は、第2駆動源27の後端部よりも後方に位置し、カバー41の後端部の下部は、駆動軸35と干渉しない形状の切欠部41Nを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行のための駆動力を発生する第1駆動源と、
作業機を駆動する第2駆動源と、
前記第2駆動源を冷却する冷却風を発生する冷却ファンと、
前記第2駆動源と前記冷却ファンとを包囲し、前記冷却風を所定方向に導くカバーと、を備えることを特徴とする農作業車両。
【請求項2】
前記第2駆動源は、前記作業機の前方に設けられ、
前記第2駆動源の出力軸に連結され、前記作業機に駆動力を伝達する駆動軸を備え、
前記カバーの後端部の上部は、前記第2駆動源の後端部よりも後方に位置し、
前記カバーの後端部の下部は、前記駆動軸と干渉しない形状の切欠部を備えることを特徴とする請求項1に記載の農作業車両。
【請求項3】
前記作業機を昇降させる昇降装置を備え、
前記カバーの後端部は、前記作業機の昇降時における前記駆動軸の可動範囲の全域にわたって前記駆動軸と干渉しない形状であることを特徴とする請求項2に記載の農作業車両。
【請求項4】
前記冷却ファンは、前記第2駆動源の出力軸に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の農作業車両。
【請求項5】
前記第2駆動源は、後車軸よりも上方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の農作業車両。
【請求項6】
農業資材を圃場へ供給する資材供給装置と、
前記カバーから排出された空気を前記資材供給装置に導くダクトと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の農作業車両。
【請求項7】
前記ダクトの前記第2駆動源側の端部の上部は、前記カバーの後端部の上部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項6に記載の農作業車両。
【請求項8】
前記カバーは、前記ダクトの前記カバー側の端部を支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の農作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作業車両(例えば、特許文献1)は、エンジンが発生した駆動力をミッションケースにて前輪、後輪、作業機へ分配していた。また、作業機への駆動力は、ミッションケースと作業機との間に設けられた変速装置で変速していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の構成では、作業機を駆動するための構成が複雑化し、部品数が多くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、作業機を駆動するための構成を簡素化することのできる農作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る農作業車両は、走行のための駆動力を発生する第1駆動源と、作業機を駆動する第2駆動源と、前記第2駆動源を冷却する冷却風を発生する冷却ファンと、前記第2駆動源と前記冷却ファンとを包囲し、前記冷却風を所定方向に導くカバーと、を備える。
【0007】
前記第2駆動源は、前記作業機の前方に設けられ、前記第2駆動源の出力軸に連結され、前記作業機に駆動力を伝達する駆動軸を備え、前記カバーの後端部の上部は、前記第2駆動源の後端部よりも後方に位置し、前記カバーの後端部の下部は、前記駆動軸と干渉しない形状の切欠部を備えていてもよい。
【0008】
前記農作業車両は、前記作業機を昇降させる昇降装置を備え、前記カバーの後端部は、前記作業機の昇降時における前記駆動軸の可動範囲の全域にわたって前記駆動軸と干渉しない形状であってもよい。
【0009】
前記冷却ファンは、前記第2駆動源の出力軸に設けられていてもよい。
【0010】
前記第2駆動源は、後車軸よりも上方に設けられていてもよい。
【0011】
前記農作業車両は、農業資材を圃場へ供給する資材供給装置と、前記カバーから排出された空気を前記資材供給装置に導くダクトと、を備えていてもよい。
【0012】
前記ダクトの前記第2駆動源側の端部の上部は、前記カバーの後端部の上部を覆うように設けられていてもよい。
【0013】
前記カバーは、前記ダクトの前記カバー側の端部を支持する支持部材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業機を駆動するための構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る農作業車両を示す左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る農作業車両を示す左側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る農作業車両を示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る農作業車両の動力伝達機構を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第2駆動源とその周辺部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る第2駆動源とその周辺部を示す拡大図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る第2駆動源とその周辺部を示す分解図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るカバーを示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るカバーを示す左側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るカバーを示す底面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例に係る上流側ダクトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る農作業車両1について説明する。
【0017】
最初に、農作業車両1の全体の構成について説明する。
図1、2は、農作業車両1を示す左側面図である。
図3は、農作業車両1を示す平面図である。
図4は、農作業車両1の動力伝達機構20を示す平面図である。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0018】
農作業車両1(
図1、3参照)は、走行体2と、走行体2の後方に設けられた作業機3とを備える。例えば、作業機3は、水稲の苗の植付作業を行う植付装置であり、農作業車両1は、走行体2によって走行しながら作業機3によって苗の植付作業を行う田植機である。なお、作業機3は、野菜や穀物の移植、播種、耕うん等を行う装置であってもよい。
【0019】
走行体2は、車体フレーム10と、車体フレーム10の前部の左右方向中央に設けられた第1駆動源11及びトランスミッション12と、車体フレーム10の前部に設けられた左右一対の前輪13と、車体フレーム10の後部に設けられた左右一対の後輪14と、を備える。
【0020】
第1駆動源11は、前輪13と後輪14を駆動する駆動力を発生させる。第1駆動源11は、例えば、軽油を燃料とする内燃機関である。第1駆動源11は、ボンネット21で覆われている。トランスミッション12(
図4参照)は、第1駆動源11の後方に設けられ、第1駆動源11が発生した駆動力を変速する。トランスミッション12の左右には、フロントアクスル19が設けられている。前輪13は、フロントアクスル19に設けられた前車軸19Sに取り付けられ、トランスミッション12から伝達される駆動力によって駆動される。
【0021】
リアアクスル24は、トランスミッション12の後方に設けられ、前後方向を長手方向とするジョイント材23でトランスミッション12と結合されている。後輪駆動軸25は、ジョイント材23に沿って設けられ、トランスミッション12からリアアクスル24へ駆動力を伝達する。後輪14は、リアアクスル24に設けられた後車軸24Sに取り付けられ、後輪駆動軸25を介して伝達される駆動力によって駆動される。なお、後輪14に代えてクローラ(図示省略)が設けられていてもよい。
【0022】
運転席15は、ジョイント材23の上方に設けられている。運転席15の周囲には、操向ハンドル16、変速レバー、変速ペダル、ブレーキペダル(図示省略)等を備えている。前輪13は、操向ハンドル16の操作に連動して走行体2の操向を行う。ステップ17(
図3参照)は、作業者の足場となる平面状の部材であり、運転席15の周囲とボンネット21の左右に設けられている。予備苗台18は、ボンネット21の左右に設けられ、作業機3に補充される苗マットが載置される。
【0023】
第2駆動源27(
図4参照)は、リアアクスル24の上方の左右方向中央よりも右寄りの位置に設けられている。換言すれば、第2駆動源27は、後車軸24Sよりも上方に設けられている。第2駆動源27は、作業機3を駆動するための駆動力を発生する。第2駆動源27は、例えば、蓄電池(図示省略)から供給される電力を回転駆動力に変換する電気モーターである。第2駆動源27は、前後方向を軸方向として配置されている。出力軸27Bは、後方に突出している。出力軸27Bには、自在継手36を介して駆動軸35が連結されている。なお、第2駆動源27は、油圧モーター等でもよい。
【0024】
作業機3は、苗マットが載置される苗載台30と、メインフレーム31と、を備える。メインフレーム31は、左右方向を長手方向とする棒状の部材であり、左右方向の中央にセンターケース33を備える。メインフレーム31の後方の左右方向の複数箇所(この例では、4箇所)には、植付伝動ケース34が概ね等間隔に設けられている。植付伝動ケース34には、左右一対の移植機構32が設けられている。
【0025】
センターケース33の入力軸33Aには、自在継手36を介して駆動軸35が連結されている。センターケース33は、ベベルギアを含むギア列(図示省略)を備えている。センターケース33の出力軸33Bは、メインフレーム31に沿って設けられ、各植付伝動ケース34に接続されている。第2駆動源27が発生した駆動力は、駆動軸35、センターケース33、植付伝動ケース34を介して移植機構32に伝達される。作業機3は、苗載台30を左右方向に移動させるように横送り駆動する横送り駆動部(図示省略)を備えている。苗載台30が左右に往復するのと並行して移植機構32が苗載台30から苗を取り出して圃場に植え付ける。
【0026】
作業機3には、昇降装置22が設けられている。昇降装置22は、柱状フレーム10Pと、平行な上下一対のリンク部材22Lと、油圧シリンダ22Cと、を備える。車体フレーム10は、リアアクスル24から上方に設けられた柱状フレーム10Pによって支持されている。柱状フレーム10Pと苗載台30とは、一対のリンク部材22Lで連結されている。柱状フレーム10Pと苗載台30と一対のリンク部材22Lとの節点は、平行四辺形の4つの頂点を形成する。油圧シリンダ22Cは、ジョイント材23と下側のリンク部材22Lとに連結されている。油圧シリンダ22Cの伸縮により、柱状フレーム10P側の節点を支点として一対のリンク部材22Lが揺動することで、苗載台30が昇降する(
図1、2参照)。
【0027】
次に、第2駆動源27を冷却する構成について説明する。
図5は、第2駆動源27とその周辺部を示す斜視図である。
図6は、第2駆動源27とその周辺部を示す拡大図である。
図7は、第2駆動源27とその周辺部を示す分解図である。
図8は、カバー41を示す平面図である。
図9は、カバー41を示す左側面図である。
図10は、カバー41を示す底面図である。
【0028】
本実施形態に係る農作業車両1は、走行のための駆動力を発生する第1駆動源11と、作業機3を駆動する第2駆動源27と、第2駆動源27を冷却する冷却風を発生する冷却ファン40と、第2駆動源27と冷却ファン40とを包囲し、冷却風を所定方向に導くカバー41と、を備える。具体的には、以下のとおりである。なお、第1駆動源11、第2駆動源27については前述のとおりであるから、以下では、主に、冷却ファン40、カバー41、及びこれらに付随する構成について説明する。
【0029】
[冷却ファン]
冷却ファン40(
図7参照)は、第2駆動源27の出力軸27Bに設けられている。出力軸27Bとともに冷却ファン40が回転することで、前方から後方へと向かう気流が発生する。
【0030】
[カバー]
カバー41は、第2駆動源27と冷却ファン40とを包囲する、前後方向に貫通した円筒形の部材である。冷却ファン40は、第2駆動源27の前部とカバー41の前部との間隙から空気を吸い込んで後方へ送り出す。カバー41は、冷却ファン40が発生した冷却風を整流し、後方へと導く。
【0031】
後方からの雨滴の浸入防止のために、カバー41の後端部の上部は、第2駆動源27の後端部よりも後方に位置している(
図6、8、9、10参照)。一方、駆動軸35は、後側が前側よりも下方に位置するように傾斜している(
図1参照)ため、カバー41と駆動軸35との干渉を回避する必要がある。そのため、カバー41の後端部の下部は、駆動軸35と干渉しない形状の切欠部41Nを備える。この例では、カバー41の後端部の上下方向の中央から下方の部分が軸方向に対して斜めに切り欠かれている。また、前方からの雨滴の浸入防止のために、カバー41の前端部の上部は、第2駆動源27の前端部よりも前方に位置している(
図6、8、9、10参照)。カバー41の前端部の下部の形状は、周辺の部材の配置等を考慮して適宜定められる。なお、カバー41の下部には、浸入した雨滴を排水するための孔が設けられていてもよい(図示省略)。
【0032】
また、前述のとおり、作業機3は昇降可能であるため、作業機3とともに駆動軸35も、出力軸27Bと連結する自在継手36を支点に揺動する。そのため、切欠部41Nは、作業機3の昇降時における駆動軸35の可動範囲の全域にわたって駆動軸35と干渉しない形状に形成されている。具体的には、苗載台30の高さが最低のとき(
図1参照)に駆動軸35と干渉しないように切欠部41Nの形状が決められている。また、苗載台30の高さが最高のとき(
図2参照)に駆動軸35と干渉しないようにカバー41の後端部の上部の位置が決められている。
【0033】
[資材供給装置]
資材供給装置50は、運転席15と作業機3との間に設けられている。資材供給装置50は、農業資材を圃場へ供給する。例えば、農業資材は、肥料であり、資材供給装置50は、圃場に肥料を散布する施肥装置である。資材供給装置50は、左右方向に細長い直方体状のホッパー51を備える。ホッパー51には、肥料が貯留されている。ホッパー51の下方には、左右方向の8箇所に繰出装置52が設けられている。繰出装置52の下方の若干前方には、左右方向を長手方向とする下流側ダクト53が設けられている。下流側ダクト53の一端部(この例では、左端部)には、下流側ダクト53に送風するブロワ54が設けられている。なお、農業資材は、種子、農薬等でもよい。
【0034】
排出管55は、下流側ダクト53の各繰出装置52に対応する箇所から後方に突出している。繰出装置52は、下部がロート状に形成された筒状の筐体を備える。筐体の下端部は、排出管55に交差するように接続されている。ホッパー51の底部には、各繰出装置52に対応する箇所に孔(図示省略)が設けられている。筐体の内部には、ホッパー51の孔から落下した資材を所定の速度で下方に繰り出す繰出ロール(図示省略)が設けられている。排出管55の先端部から移植機構32の近傍に至る管状の資材供給路(図示省略)が設けられている。
【0035】
[上流側ダクト]
上流側ダクト60は、カバー41の後方に排出された空気をブロワ54に導く。上流側ダクト60の一端部は、ブロワ54の空気取入口に接続されている。上流側ダクト60の他端部(第2駆動源27側の端部)から所定長さの区間(以下、端部区間61という)は、前後方向を長手方向として設けられている。
【0036】
カバー41から後方に排出される空気は、第2駆動源27から発生した熱によって高温になっているため、上方へ向かって流れる性質がある。そのため、端部区間61の上部は、カバー41の後端部の上部を覆うように設けられている。上流側ダクト60は、カバー41とは径が異なっている。例えば、
図6,7に示されるとおり、上流側ダクト60は、カバー41よりも径が細い。そのため、端部区間61の下部には、カバー41と干渉しない形状の切欠部61Nが設けられている。
【0037】
上流側ダクト60の支持が不十分であると、振動によって上流側ダクト60とカバー41とが接触を繰り返して破損するおそれがある。そのため、カバー41は、上流側ダクト60のカバー41側の端部を支持する支持部材62を備える。支持部材62は、例えば、板金部材であり、カバー41及び上流側ダクト60にねじ(図示省略)等で締結される。
【0038】
上記構成の動作について説明する。第2駆動源27の出力軸27Bとともに冷却ファン40が回転し、第2駆動源27の前部とカバー41の前部との間隙から吸い込まれた空気が後方へ送り出される。カバー41は、冷却ファン40が発生した冷却風を整流し、後方へと導く。カバー41から排出された空気は、上流側ダクト60に流れ込む。一方、ブロワ54は、上流側ダクト60から吸い込んだ空気を下流側ダクト53を介して排出管55に送り込む。繰出装置52によってホッパー51から排出管55に繰り出された肥料は、下流側ダクト53から送り込まれた高温の空気によって乾燥され、肥料供給路を通じて圃場に散布される。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る農作業車両1によれば、走行のための駆動力を発生する第1駆動源11と、作業機3を駆動する第2駆動源27と、第2駆動源27を冷却する冷却風を発生する冷却ファン40と、第2駆動源27と冷却ファン40とを包囲し、冷却風を所定方向に導くカバー41と、を備える。
【0040】
従来の農作業車両は、単一の駆動源(第1駆動源11)が発生した駆動力をトランスミッション12にて前輪13、後輪14、作業機3へ分配していた。また、作業機3への駆動力は、トランスミッション12と作業機3との間に設けられた変速装置で変速していた。そのため、作業機3を駆動するための構成が複雑化し、部品数が多くなるという問題があった。本実施形態に係る農作業車両1は、走行のための駆動力を発生する第1駆動源11に加えて、作業機3を駆動する第2駆動源27を備えている。この構成によれば、第1駆動源11からの駆動力を作業機3に分配する必要がないから、作業機3を駆動するための構成が簡素化され、部品数が抑制される。しかし、第2駆動源27も熱を発生するため、第2駆動源27を冷却する必要がある。本実施形態では、冷却ファン40とカバー41を備えるから、簡素な構成で第2駆動源27を冷却することができる。以上のことから、本実施形態によれば、作業機3を駆動するための構成を簡素化することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、第2駆動源27は、作業機3の前方に設けられ、第2駆動源27の出力軸27Bに自在継手36を介して連結され、作業機3に駆動力を伝達する駆動軸35を備え、カバー41の後端部の上部は、第2駆動源27の後端部よりも後方に位置し、カバー41の後端部の下部は、駆動軸35と干渉しない形状の切欠部41Nを備える。この構成によれば、第2駆動源27への雨滴の浸入を防ぐことができ、且つ、駆動軸35とカバー41との干渉を防ぐことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、作業機3を昇降させる昇降装置22を備え、カバー41の後端部は、作業機3の昇降時における駆動軸35の可動範囲の全域にわたって駆動軸35と干渉しない形状である。この構成によれば、作業機3が昇降しても、駆動軸35とカバー41との干渉を防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、冷却ファン40は、第2駆動源27の出力軸27Bに設けられている。この構成によれば、第2駆動源27の前方から吸い込んだ空気を効率的に第2駆動源27に接触させることができる。また、冷却ファン40専用の駆動手段が不要なため、部品数を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、第2駆動源27は、後車軸24Sよりも上方に設けられている。従来は、第1駆動源11からの駆動力を変速装置で変速してから作業機3に伝達していた。変速装置は、浸水を防ぐために、後車軸24Sよりも上方に設けられていた。本実施形態によれば、変速装置が設けられていた空間に第2駆動源27を設けるから、第2駆動源27を設ける空間を新たに確保する必要がなく、設計変更の手間を省くことができる。また、第2駆動源27が後車軸24Sよりも上方に設けられることにより、冷却ファン40も後車軸24Sよりも上方に設けられるから、圃場から巻き上げられた異物による冷却ファン40の破損を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、農業資材を圃場へ供給する資材供給装置50と、カバー41から排出された空気を資材供給装置50に導く上流側ダクト60(ダクトの一例)と、を備える。この構成によれば、第2駆動源27の冷却によって昇温した雰囲気を肥料の乾燥のために供給することができる。また、従来、エンジンの排気ガスを肥料の乾燥に利用する技術が知られているが、エンジンは農作業車両の前部に設けられているため、資材供給装置50までの経路が長くなり、空気の温度が低下して、肥料を乾燥させる効果が低かった。また、排気ガスは通常の空気よりも水分を多く含むため、乾燥には不向きである。これに対して、本実施形態では、第1駆動源11よりも資材供給装置50に近い第2駆動源27から空気を送るから、空気の温度が低下しにくく、また、排気ガスのように水分が付加されないため、肥料を乾燥させる効果が高まる。
【0046】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、上流側ダクト60の第2駆動源27側の端部の上部は、カバー41の後端部の上部を覆うように設けられている。この構成によれば、カバー41の後端部から効率よく空気を吸い込むことができる。
【0047】
また、本実施形態に係る農作業車両1によれば、カバー41は、上流側ダクト60のカバー41側の端部を支持する支持部材62を備える。この構成によれば、上流側ダクト60の揺れを抑制し、カバー41との接触による破損を防ぐことができる。
【0048】
上記実施形態は以下のように変形されてもよい。
【0049】
図11は、変形例に係る上流側ダクト60を示す平面図である。
図4に示されるように、第2駆動源27は、農作業車両1の左右方向中央よりも右にオフセットされており、センターケース33は、左右方向中央に位置するため、駆動軸35は、前側が右にオフセットされた形で斜めに配置されている。そこで、上流側ダクト60の左側面を削るように切欠部61Nの範囲を上方に広げてもよい。この構成によれば、上流側ダクト60の径が大きい場合でも、駆動軸35との干渉を防ぐことができる。
【0050】
<付記>
本発明は、以下のように特定することができる。
【0051】
<付記1>
走行のための駆動力を発生する第1駆動源と、
作業機を駆動する第2駆動源と、
前記第2駆動源を冷却する冷却風を発生する冷却ファンと、
前記第2駆動源と前記冷却ファンとを包囲し、前記冷却風を所定方向に導くカバーと、を備えることを特徴とする農作業車両。
【0052】
<付記2>
前記第2駆動源は、前記作業機の前方に設けられ、
前記第2駆動源の出力軸に連結され、前記作業機に駆動力を伝達する駆動軸を備え、
前記カバーの後端部の上部は、前記第2駆動源の後端部よりも後方に位置し、
前記カバーの後端部の下部は、前記駆動軸と干渉しない形状の切欠部を備えることを特徴とする付記1に記載の農作業車両。
【0053】
<付記3>
前記作業機を昇降させる昇降装置を備え、
前記カバーの後端部は、前記作業機の昇降時における前記駆動軸の可動範囲の全域にわたって前記駆動軸と干渉しない形状であることを特徴とする付記2に記載の農作業車両。
【0054】
<付記4>
前記冷却ファンは、前記第2駆動源の出力軸に設けられていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の農作業車両。
【0055】
<付記5>
前記第2駆動源は、後車軸よりも上方に設けられていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の農作業車両。
【0056】
<付記6>
農業資材を圃場へ供給する資材供給装置と、
前記カバーから排出された空気を前記資材供給装置に導くダクトと、を備えることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の農作業車両。
【0057】
<付記7>
前記ダクトの前記第2駆動源側の端部の上部は、前記カバーの後端部の上部を覆うように設けられていることを特徴とする付記6に記載の農作業車両。
【0058】
<付記8>
前記カバーは、前記ダクトの前記カバー側の端部を支持する支持部材を備えることを特徴とする付記6又は7に記載の農作業車両。
【符号の説明】
【0059】
1 農作業車両
3 作業機
11 第1駆動源
22 昇降装置
27 第2駆動源
27B 出力軸
35 駆動軸
40 冷却ファン
41 カバー
41N 切欠部
50 資材供給装置
60 上流側ダクト
62 支持部材