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特開2024-68842推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068842
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240514BHJP
   G06V 10/74 20220101ALI20240514BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 300E
G06V10/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179452
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智規
(72)【発明者】
【氏名】永田 暁洋
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA02
5L096FA46
5L096HA07
5L096HA13
5L096JA03
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】シート状物の複製、偽造や改竄を検出可能な推定装置等を提供する。
【解決手段】推定装置は、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての学習用画像と、前記認証用シートが複製されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、前記認証用シートについての推定用画像とを取得する取得部と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを、前記推定用画像及び前記学習済モデルに基づいて推定することにより、推定結果を示す推定情報を生成する処理部と、前記推定情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての学習用画像と、前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、前記認証用シートについての推定用画像とを取得する取得部と、
前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを、前記推定用画像及び前記学習済モデルに基づいて推定することにより、推定結果を示す推定情報を生成する処理部と、
前記推定情報を出力する出力部と、を備える
推定装置。
【請求項2】
前記識別可能な繊維は前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンは前記認証用シート表面から認識可能であり、
前記認証用シートは、前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、
前記特定の識別情報は前記認証用シート表面から認識可能である
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記識別可能な繊維の分散のパターンは、前記認証用シート表面を光学的に読み取ることによって認識可能である
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記基材層が紙からなる
請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記識別可能な繊維は、紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有する
請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記認証用シート表面上の限定された領域における前記識別可能な繊維の分散のパターンが認証に使用される
請求項1に記載の推定装置。
【請求項7】
前記認証用シートはパッケージング用材料である
請求項1に記載の推定装置。
【請求項8】
基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得部と、
基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶部と、
前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かのいずれを前記第1推定情報が示すかを判定する判定処理と、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合処理と
を実行し、
前記判定処理の結果及び前記照合処理の結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する生成処理を実行する処理部と、
前記第2推定情報を出力する出力部と、を備える
個別認証装置。
【請求項9】
前記認証用シートについての学習用画像と、前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、前記推定用画像とに基づく推定処理により、前記第1推定情報が生成される
請求項8に記載の個別認証装置。
【請求項10】
前記平面繊維分散基準パターン及び前記基準識別情報を読み取る読取デバイスを更に備える
請求項8に記載の個別認証装置。
【請求項11】
請求項8-10のいずれか一項に記載の個別認証装置と、
個別認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を前記個別認証装置に提供する携帯端末と、を備える
個別認証システム。
【請求項12】
前記携帯端末が前記平面繊維分散パターン及び前記特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備える
請求項11に記載の個別認証システム。
【請求項13】
前記携帯端末が前記第2推定情報を受信する
請求項11に記載の個別認証システム。
【請求項14】
請求項1から7のいずれか一項に記載の推定装置と、
認証用シートについての推定用画像を前記推定装置に提供する携帯端末と
を備える推定システム。
【請求項15】
個別認証装置によって実行される認証方法であって、
基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得ステップと、
基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶ステップと、
前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを前記第1推定情報が示すことを判定する判定ステップと、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合ステップと、
前記判定ステップの処理結果及び前記照合ステップの処理結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する生成ステップと、
前記第2推定情報を出力する出力ステップと、を備える
認証方法。
【請求項16】
コンピュータに、
基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得ステップと、
基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶ステップと、
前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを前記第1推定情報が示すことを判定する判定ステップと、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合ステップと、
前記判定ステップの処理結果及び前記照合ステップの処理結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する生成ステップと、
前記第2推定情報を出力する出力ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品券等の印刷物の偽造防止技術として、透かしが知られている。透かしは、それが施されている紙を透かして見たときに現れる模様であり、模様部分が透けて見える「白透かし」と、模様部分が周辺部に比して黒ずんで見える「黒透かし」とが知られている。また、透かし模様の一種として、疑似透かし(ケミカル透かし)などと呼ばれるものが知られている。
【0003】
疑似透かしは、紙等のシートに浸透して光透過率を高める物質、例えば、透明合成樹脂を溶剤に溶解したインキを用いてシートに印刷を施すことによって形成されるものであり、そのインキが付与されてなる印刷部が透かし模様となり、白透かしと同様の視覚効果を有する。しかし、透かしでは、個々の紙シートに同一の透かしが形成されるので、個々の紙シートについて個別の認証を行うことはできない。
【0004】
個々の紙シートについて個別の認証を行うために、紙シートにシリアル番号、バーコード等の識別情報を印刷することが行われている。しかし、印刷された番号、バーコード等はコピーによって容易に複製可能であるので、偽造防止効果の点で不都合が存在する。
【0005】
特許文献1において、感磁性素子をランダムに混入したシート状基材が記載されており、基材を一方向に沿って磁気的に走査することで生じる誘導電圧強度のパターンに基づいて同一性を判定することが記載されている。
【0006】
特許文献2において、紫外線照射により蛍光を発するパルプが支持体上にランダムに存在するシートが記載されており、シートの一方向に沿った蛍光強度のランダムパターンに基づいて同一性を判定することが記載されている。
【0007】
特許文献3において、1μm程度のサイズの微小粒子を対象物の表面にランダムに分布させて、当該表面上の各微小粒子の形状、位置、色、回転角度等の情報を用いて個体識別を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2843743号公報
【特許文献2】特許第3138064号公報
【特許文献3】特許第5747753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の認証方法では、基材乃至シートを一方向に走査して得られた誘導電圧又は蛍光強度のパターンを真贋判定に使用するために、走査位置がずれると、真の基材又はシートであっても、得られる誘導電圧又は蛍光強度のパターンが変動し、偽物と判定されるおそれがある。なお、走査数を増加することにより、偽判定のおそれを低減することは一応可能であるが、走査数を増加させると、真贋判定に時間を要することになる。また、一次元の走査スキャナとして比較的大型の特別な装置を用いることになり、使用性に劣る。特許文献3に記載の認証方法では、1μm程度のサイズの微小粒子を使用して個別識別を行うので、外部からの微小粒子の認識が困難であり、拡大レンズ等の補助装置の使用が必要となってしまい、個体識別を簡便に行うことが困難である。
【0010】
本発明は、シート状物の偽造や改竄を検出可能な推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体は、上記の目的を達成するためのものであり、以下の構成を備える。
【0012】
(1)本発明の一態様に係る推定装置は、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての学習用画像と、前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、前記認証用シートについての推定用画像とを取得する取得部と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを、前記推定用画像及び前記学習済モデルに基づいて推定することにより、推定結果を示す推定情報を生成する処理部と、前記推定情報を出力する出力部と、を備える。
【0013】
(2)上記(1)の態様において、前記識別可能な繊維は前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンは前記認証用シート表面から認識可能であり、前記認証用シートは、前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、前記特定の識別情報は前記認証用シート表面から認識可能であることが好ましい。
【0014】
(3)上記(1)の態様において、前記識別可能な繊維の分散のパターンは、前記認証用シート表面を光学的に読み取ることによって認識可能であることが好ましい。
【0015】
(4)上記(1)の態様において、前記基材層が紙からなることが好ましい。
【0016】
(5)上記(4)の態様において、前記識別可能な繊維は、紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有することが好ましい。
【0017】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの態様において、前記認証用シート表面上の限定された領域における前記識別可能な繊維の分散のパターンが認証に使用されることが好ましい。
【0018】
(7)上記(1)の態様において、前記認証用シートはパッケージング用材料であることが好ましい。
【0019】
(8)本発明の一態様に係る個別認証装置は、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得部と、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶部と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かのいずれを前記第1推定情報が示すかを判定し、前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、前記判定の結果及び前記照合の結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する処理部と、前記第2推定情報を出力する出力部と、を備える。
【0020】
(9)上記(8)の態様において、前記認証用シートについての学習用画像と、前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、前記推定用画像とに基づく推定処理により、前記第1推定情報が生成されることが好ましい。
【0021】
(10)上記(8)の態様において、個別認証装置は、前記平面繊維分散基準パターン及び前記基準識別情報を読み取る読取デバイスを更に備えることが好ましい。
【0022】
(11)本発明の一態様に係る個別認証システムは、上記(8)から(10)のいずれか一に記載の個別認証装置と、個別認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を前記個別認証装置に提供する携帯端末と、を備えることが好ましい。
【0023】
(12)上記(11)の態様において、前記携帯端末が前記平面繊維分散パターン及び前記特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備えることが好ましい。
【0024】
(13)上記(11)の態様において、前記携帯端末が前記第2推定情報を受信することが好ましい。
【0025】
(14)本発明の一態様に係る推定システムは、上記(1)から(7)のいずれか一に記載の推定装置と、認証用シートについての推定用画像を前記推定装置に提供する携帯端末とを備える。
【0026】
(15)本発明の一態様に係る認証方法は、個別認証装置によって実行される認証方法であって、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得ステップと、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶ステップと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを前記第1推定情報が示すことを判定する判定ステップと、前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合ステップと、前記判定ステップの処理結果及び前記照合ステップの処理結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する生成ステップと、前記第2推定情報を出力する出力ステップと、を備える。
【0027】
(16)本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得ステップと、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶ステップと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを前記第1推定情報が示すことを判定する判定ステップと、前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、前記対応する平面繊維分散基準パターンと、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合ステップと、前記判定ステップの処理結果及び前記照合ステップの処理結果に基づいて、前記推定用画像に含まれる前記認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する生成ステップと、前記第2推定情報を出力する出力ステップとを実行させるためのプログラムである。
【0028】
(17)本発明の一態様に係る記録媒体は、上記(16)に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0029】
(1)から(17)によれば、シート状物の複製、偽造や改竄を検出可能な推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体を提供することができる。そして、本発明により、複製、偽造や改竄されるリスクの低い認証用シートに基づく、高精度且つ簡便な真贋判定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明で使用される認証用シートの一例を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態における認証システムS1の構成例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態における認証用シートに係る教師データの一例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態における学習装置10の機能構成例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態における推定装置30の機能構成例を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態における学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第1実施形態における推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1実施形態における推定結果の一例を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態における個別認証システムS2の構成例を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態における個別認証装置50の機能構成例を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態における基準シートの一例を示す図である。
図12図11に示す基準シートの平面繊維分散基準パターンの登録例を示す図である。
図13】基準シートの平面繊維分散基準パターンの登録の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】本発明の第2実施形態における照合処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態に係る各装置のハードウェア構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0032】
まず、本発明で使用される認証用シートについて説明する。
【0033】
[認証用シート]
本発明で使用される認証用シート(以下、「認証用シート」又は「個別認証用シート」と称する場合がある)は、少なくとも基材層及び識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、特定の識別情報が表面から認識可能であるシートである。
【0034】
表面から認識可能な「パターン」とはシートの平面方向のパターンであり、シートの断面におけるパターンではない。したがって、シートの表面から認識可能なパターンはシートの厚み方向のパターンではない。
【0035】
上記「識別可能な繊維」として、各種の材質のものを使用することができる。
【0036】
例えば、上記「識別可能な繊維」は、無機繊維、有機繊維、或いは、これらの複合物であることができる。
【0037】
無機繊維としては、例えば、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭素繊維、ガラス繊維等の非金属繊維が好ましい。
【0038】
有機繊維としては、例えば、合成繊維が挙げられる。合成繊維の材質としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の各種の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
上記合成繊維は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0040】
有機繊維は天然繊維でもよく、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維に限定はなく公知のものを使用可能であるが、例えば、セルロース繊維として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材漂白化学パルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の木材未漂白パルプを用いることが可能であり、必要に応じて、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;古紙パルプ等を用いることができる。セルロース繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記「識別可能な繊維」の形状は特には限定されるものではないが、分散パターンの解析の容易性の点で、繊維長は短繊維が好ましいが、逆に複製での再現を困難にするためには長いほうが好ましい。繊維長は、例えば、0.4mm以上とすることができる。また、繊維長は、例えば、6.0mm以下とすることができる。したがって、繊維長は、例えば、0.4mm~6.0mmとすることができる。そして、繊維幅は、識別の容易さの点で太いほうが好ましいが、逆に複製での再現を困難にするためには細いほうが好ましい。繊維幅は、例えば、4μm以上とすることができる。また、繊維幅は、例えば、60μm以下とすることができる。したがって、繊維幅は、例えば、4μm~60μmとすることができる。
【0042】
繊維長は、平均繊維長であり、数平均繊維長を意味する。
【0043】
数平均繊維長は、例えば、シート表面の画像を拡大観察し、光学顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の長さを測定し平均することにより得ることができる。選別される繊維の数は10以上であり、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0044】
繊維幅は、平均繊維幅であり、数平均繊維幅を意味する。
【0045】
数平均繊維幅は、例えば、シート表面の画像を拡大観察し、光学顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の幅を測定し平均することにより得ることができる。選別される繊維の数は10以上であり、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0046】
繊維断面が円形の場合は、繊維幅は繊維径を意味する。一方、繊維断面が非円形の場合は、繊維幅は投影径を意味する。
【0047】
繊維のアスペクト比は特に限定されるものではないが、6以上が好ましい。また、アスペクト比の上限は1000以下が好ましい。
【0048】
認証用シートは少なくとも基材層を備える。認証用シートの基材層の形態及び材質は特に限定されるものではない。
【0049】
例えば、基材層は多孔性又は非多孔性のいずれでもよく、また、フィルム、不織布、織布又は紙のいずれの形態でもよい。
【0050】
特に、基材層がフィルムの形態である場合、基材層の材質としては合成高分子が挙げられる。合成高分子としては各種の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができ、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;アクリル樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
基材層は紙からなることが好ましい。
【0052】
基材層が紙の形態である場合、上記「識別可能な繊維」以外の、紙を構成する繊維としては、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維に限定はなく公知のものを使用可能であるが、例えば、セルロース繊維として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材漂白化学パルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の木材未漂白パルプを用いることが可能であり、必要に応じて、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;古紙パルプ等を用いることができる。セルロース繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記の合成繊維を含んでもよい。
【0053】
認証用シートは基材層のみから構成されていてもよく、基材層以外の他の層を備える積層体であってもよい。例えば、認証用シートが塗工紙である場合は、紙である基材層と塗工層とから認証用シートが構成されてもよい。積層体の場合、基材層以外の他の層の数は特には限定されないが、1又は2が好ましい。基材層以外の他の層は基材層の一方の面上に存在してもよく、基材層の両面に存在してもよい。
【0054】
上記「識別可能な繊維」が『識別可能』とは、認証用シートを構成する「識別可能な繊維」以外の材質から「識別可能な繊維」を何らかの手段によって識別可能であればよく、例えば、基材層の地の色とは異なる色を有する繊維を使用することで基材層の表面又は基材層の中に存在する繊維を可視光下で目視により識別可能としたり、基材層を非蛍光性とする一方で繊維として紫外線照射により蛍光を発する蛍光繊維を使用することにより、ブラックライト等を用いた紫外線照射下で目視により蛍光発色繊維を識別可能としたり、基材層を非磁性とする一方で繊維として磁性繊維を使用することで、磁気検出により識別可能としたりすることができる。更に、「識別可能な繊維」は赤外線を吸収又は反射してもよい。
【0055】
認証用シートでは、上記「識別可能な繊維」の分散のパターンが表面から認識可能である。そして、当該シートの表面における上記「識別可能な繊維」の分散パターンにより、シートの真贋判定用の画像を形成することができる。
【0056】
「識別可能な繊維」は目視で識別可能であることが好ましい。また、「識別可能な繊維」はシート表面に光を照射した際の反射光により識別可能であることが好ましい。シート表面に照射される光は可視光であることが好ましい。そして、識別可能な繊維の分散のパターンが表面の光学読み取りにより認識可能であることがより好ましい。
【0057】
上記「識別可能な繊維」はセキュリティデバイスとしての機能を有するので、着色物質及び/又は蛍光物質及び/又は赤外線吸収性物質及び/又は赤外前反射性物質により着色処理及び/又は発色処理及び/又は赤外線吸収処理及び/又は赤外線反射処理をされていることが好ましい。「セキュリティデバイス」とは、偽造防止用途で使用される真偽判定用の物体を意味する。着色物質としては、任意の染料、顔料等を使用することができる。蛍光物質としては、例えば、紫外線照射により蛍光を発する物質を使用することができる。赤外線吸収性物質としては、例えば、グラファイトが挙げられ、また、赤外線反射性物質としては、例えば、各種の金属が挙げられる。
【0058】
上記「識別可能な繊維」は、認証用シートを構成する「識別可能な繊維」以外の材質とは異なる色を有する有色繊維であることが好ましい。有色繊維の色は特には限定されるものではないが、赤色等の、可視光下で目視により認識可能な色が好ましい。そのような有色繊維を使用することにより、例えば、紫外線又は赤外線を発する光源のような特殊な光源が不要となり、認証を簡易に行うことができる。
【0059】
基材層が紙の場合、識別を容易とするために、上記「識別可能な繊維」は紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有することが好ましい。
【0060】
上記「識別可能な繊維」は基材層上及び/又は基材層中に存在してもよい。
【0061】
例えば、「識別可能な繊維」の一部が基材層の表面に存在する一方で、残部が基材層中に存在してもよい。一方、「識別可能な繊維」が基材層上にのみ存在し、基材層中には存在しなくてもよい。或いは、「識別可能な繊維」が基材層中にのみ存在し、基材層上には存在しなくてもよい。なお、「識別可能な繊維」が基材層中及び基材層上の両方に存在してもよい。認証用シートが基材層以外の他の層を備える場合は、「識別可能な繊維」が他の層中に存在し、基材層中には存在しなくてもよく、また、「識別可能な繊維」が基材層中に存在し、他の層中には存在しなくてもよい。なお、「識別可能な繊維」が基材層中及び他の層中の両方に存在してもよい。
【0062】
認証用シートの製造方法は特には制限されるものではなく、例えば、シートの原料となる合成樹脂に繊維を混合してTダイ付押出機等でシート化する、シート状の基材層の表面に接着剤を塗布後、上記「識別可能な繊維」を散布して固定する等して製造することができる。前者の場合、押出機等中での混合・混練により、上記「識別可能な繊維」がシート中にランダムに分散して存在することができる。また、後者の場合、散布により、上記「識別可能な繊維」がシートの表面にランダムに分散して存在することができる。
【0063】
認証用シートが非塗工紙の形態の場合、例えば、上記「識別可能な繊維」を、紙を構成する識別不能な繊維と共に混抄して基材層とすることにより、認証用シートを製造することができる。混抄には公知の抄紙法を使用することができ、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機又はこれらの組み合わせ等の抄紙機を用いることができる。混抄により、上記「識別可能な繊維」が紙中に分散して表面から認識可能なパターンを形成することができる。
【0064】
一方、認証用シートが塗工紙の場合、例えば、識別不能な繊維の抄紙により製造した紙の基材層の表面に上記「識別可能な繊維」を含む塗料を塗工し、乾燥して塗工層を形成することにより、認証用シートを製造することができる。塗料には公知のバインダー等を含むことができる。塗工により、上記「識別可能な繊維」が塗工層中に分散して表面から認識可能なパターンを形成することができる。
【0065】
認証用シートにおける、上記「識別可能な繊維」の含有量は特には限定されるものではないが、例えば、基材層の総質量の5質量%以下、3質量%以下、若しくは、1質量%以下とすることができる。なお、上記「識別可能な繊維」の含有量の下限は、例えば、基材層の総質量の0.001質量%以上とすることができ、0.01質量%以上が好ましい。
【0066】
認証用シートの基材層が紙からなる場合、基材層中の上記「識別可能な繊維」以外の、紙を構成する繊維、好ましくはセルロース繊維、の含有量は特には限定されるものではないが、例えば、基材層の総質量の50質量%以上、60質量%以上、若しくは、70質量%以上とすることができ、また、基材層の総質量の99.99質量%以下、99.9質量%以下、若しくは、99質量%以下とすることができる。したがって、前記セルロース繊維の含有量は基材層の総質量の50質量%~99.99質量%、60質量%~99.9質量%、若しくは、70質量%~99質量%とすることができる。
【0067】
認証用シートは、更に、繊維以外の、細片又は粒子の形態のセキュリティデバイスを備えていてもよい。
【0068】
細片の形態のセキュリティデバイスは認証用シートに比較して小さいサイズを有する平面状の部材であり、その厚さは特に限定されるものではないが、例えば、0.03~1mmが好ましく、0.05~0.1mmがより好ましい。細片の平面形状は、任意であり、例えば、長方形、菱形、正方形、円形、楕円形、星形等の様々な形状とすることができる。細片の大きさは、通常、短辺、長辺、直径等が1~10mm程度である。例えば、平面形状が長方形の細片の場合、短辺は、1~10mm、長辺は10~100mmとすることができる。
【0069】
細片の材質は特には限定されるものではなく、例えば、樹脂フィルム、金属箔又は紙とすることができる。細片は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0070】
細片の製造方法としては、任意の公知の方法を使用することができ、例えば、シュレッダーを使用して長方形や正方形の細片を製造する方法、マイクロスリッターによりスリットしてから切断して細片を製造する方法、長方形、菱形、正方形、円形、楕円形、星形等の細片に打ち抜く方法等を採用できる。
【0071】
細片には印刷、ホログラム等の視覚的加工が施されていてもよい。細片として、所謂スレッドを使用してもよい。スレッドは幅1~10mm程度の紐状又は帯状のフィルム又はシートであり、例えば、ホログラムパターンを有するもの、磁気的情報を記録したもの、特定の波長の光によって発色するもの、微小な文字を記載したもの、等の様々なスレッドが用途に応じて使用されている。スレッドとしては汎用のものを使用可能である。
【0072】
細片の色は、例えば、細片に含まれる蛍光物質及び/又は着色物質の種類・量等によって適宜調整することができる。
【0073】
粒子の形態のセキュリティデバイスの粒径は特には限定されるものではなく、例えば、1μm~1cm、10μm~5mm、又は、100μm~1mmの範囲とすることができるが、視認可能なサイズであることが好ましい。なお、粒子自体が視認不能であっても当該粒子の集合体が視認可能であればよい。粒子が非球形の場合は球体積相当径を粒径とすることができ、例えば、レーザー回折・散乱法によって測定することができる。
【0074】
粒子のアスペクト比は5未満であり、3未満が好ましく、2未満がより好ましく、1.5未満が更により好ましく、1.2未満が更により好ましい。
【0075】
粒子を構成する物質には限定はなく、各種の有機物質又は無機物質を使用することができる。これらの有機物質又は無機物質は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0076】
有機物質としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の各種合成高分子が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
有機物質として、非合成高分子又はその誘導体を使用してもよい。非合成高分子又はその誘導体としては、例えば、澱粉が挙げられる。具体的には馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、アマランサス澱粉、サトイモ澱粉、道鑑草澱粉等の天然澱粉、それらの化工澱粉(デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉、アルファー化澱粉、エーテル化、エステル化、架橋等の澱粉誘導体、グラフト化澱粉、湿熱処理澱粉等)が挙げられる。また、小麦粉、米粉、コーンフラワー等の穀粉;粉末セルロース、バクテリアセルロース、微小繊維状セルロース、結晶セルロース、等の水不溶性の粉状セルロース;木粉;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、4級カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸、寒天、ふのり、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キチン、キトサン、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、タラガム、コンニャク、トロロアオイ、プルラン、デキストラン等の多糖類及びこれらの誘導体;ブドウ糖、ショ糖、乳糖等の粉末糖類;高重合度かつ高鹸化度のポリビニルアルコール等の粉状有機物質も使用できる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
無機物質としては、例えば、二酸化チタン、珪酸塩(カオリン、クレイ、ベントナイト、タルク、合成珪酸アルミ、合成珪酸カルシウム等)、珪酸(珪藻土、珪石粉、含水微粉珪酸、無水微粉珪酸)、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、酸化鉄等の各種の塩、水酸化物、酸化物等、並びに、各種の金属が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
粒子の色は、例えば、粒子に含まれる蛍光物質及び/又は着色物質の種類・量等によって適宜調整することができる。
【0080】
認証用シートは、上記「識別可能な繊維」とは異なる特定の識別情報を備える。
【0081】
上記「特定の識別情報」の形態は特には制限されるものではないが、例えば、シリアル番号、1次元バーコード、2次元バーコード等とすることができる。
【0082】
上記「特定の識別情報」は認証用シートの表面から認識可能であればよく、表面に付与されることが好ましく、例えば、表面に印刷されることができる。なお、上記「特定の識別情報」が認証用シートの表面から認識可能である限り、当該「特定の識別情報」は認証用シート中に存在してもよく、例えば、基材層中に存在してもよい。
【0083】
本発明では、表面の限定された領域における上記「識別可能な繊維」の分散のパターンが認証に使用されることが好ましい。
【0084】
前記限定された領域は認証用シートの表面の任意の一部とすることができる。前記限定された領域は任意の手法により特定することができ、例えば、当該領域の境界線に沿って不連続に配置されたドット等のマークのパターンにより特定することができる(より具体的には、限定された領域が矩形の場合は、矩形の各頂点にドットを存在させてもよい)。前記限定された領域の形状は特には限定されず、任意の形状の閉領域とすることができる。
【0085】
ある態様では、前記限定された領域を特定するために、認証用シートの表面に枠を形成することができる。前記枠はシートの表面に存在することが好ましく、例えば、表面に印刷されることができる。前記枠の形態は特には限定されるものではなく、正方形、矩形、円形等の任意の形状とすることができるが、矩形が好ましい。
【0086】
図1は認証用シートの一例を示す正面図である。
【0087】
図1に示す認証用のシート1は、赤色に着色したセルロース繊維からなる着色繊維2と無地面3を構成する赤色以外のセルロース繊維とを混抄して得られた紙からなり、着色繊維2が可視光下で目視により識別可能である。
【0088】
着色繊維2はシート1の少なくとも表面においてランダムに分散しており、シート1の表面における二次元の着色繊維2の分散のパターン(平面繊維分散パターン)が真贋判定用の画像を形成する。
【0089】
そして、図1に示す例では、矩形の枠4がシート1の表面に印刷されており、枠4内の着色繊維2の平面繊維分散パターンが認証に使用される。
【0090】
また、図1に示す例では、着色繊維2とは異なる特定の識別情報として、シリアル番号5(123456)がシート1の表面に印刷されている。
【0091】
上記認証用シートは認証に好適に使用することができる。具体的な認証の態様については後述する。
【0092】
上記認証用シートは任意の物品に使用することができる。物品の種類乃至形態に特に限定はなく、例えば、ラベル、包装用シート、包装紙、封筒、株券、債券、商品券等の有価証券、各種証明書等の各種の平面状物、或いは、箱等の容器、被包装物を包装した包装体等の各種の立体状物であり得る。前記物品は、ラベル、包装用シート、段ボールを含む包装紙、箱等の容器等のパッケージング用材料(パッケージングに使用する物体)であることが好ましい。
【0093】
次に、本発明の推定装置、個別認証装置、個別認証システム、推定システム、認証方法、プログラム及び記録媒体の実施形態の一例について説明する。
【0094】
図2は、本発明の第1実施形態における認証システムS1の構成例を示す図である。認証システムS1は、学習装置10及び推定装置30を備える。学習装置10及び推定装置30は、通信ネットワークNWを介して接続される。なお、本実施形態において、認証システムS1を推定システムS1と称してもよい。
【0095】
ユーザUは認証用シート(図2中の「1」。以下、「認証用シート1」と称する)の画像をスマートフォン等の端末装置Tのカメラ機能を用いて撮影する。そして、ユーザUは撮影した画像を推定装置30に対して通信ネットワークNWを介して送信する。また、ユーザUは通信ネットワークNWを介して推定装置30の推定情報を受信することができる。
【0096】
学習装置10は、認証用シート1の学習用画像に基づき、学習用画像と、認証用シート1が真正か複製又は偽造されているかを示す真贋情報との対応関係を学習し、学習済モデルを生成する。学習装置10は生成した学習済モデルを送信又は出力する。
【0097】
推定装置30は、学習済モデルを取得し、推定用画像を取得する。推定用画像には認証用シート1の画像が含まれている。推定用画像は認証用シート1の撮影画像でもよい。推定装置30は、推定用画像及び学習済モデルに基づいて、推定用画像に含まれている認証用シート1が真正であるか、複製又は偽造等不正利用されているかを推定し、推定情報を生成する。学習用画像及び推定用画像は、何らかの手段によって取得した画像であれば足り、カメラによる撮影画像でもよいし、スキャナによって取り込んだ画像でもよい。推定情報は、推定用画像に含まれている認証用シート1が真正であるか複製又は偽造されているかのいずれかを示す。
【0098】
通信ネットワークNWは、光ファイバ網によって構成されていてもよいし、ツイストペアケーブルによって構成されていてもよいし、ケーブルテレビネットワーク網によって構成されていてもよいし、無線LANによって構成されていてもよいし、LTEや5Gといった移動通信網によって構成されていてもよい。
【0099】
図2に示す例では、図1に示す認証用シート1を認証用シート1として使用することが好ましい。
【0100】
図3は、本発明の第1実施形態における認証用シートに係る教師データの一例を示す図である。「サンプル番号」の列の数字は、学習用画像を特定する番号を意味してもよいし、学習用画像が第何番目のサンプルであるかを意味してもよい。「学習用画像」の列は、機械学習に用いる画像の例を示している。これら学習用画像は認証用シート1の一部を撮影又は取り込んだものである。これら学習用画像は、例えば、図1の認証用シート1のうち、枠4内の着色繊維2の平面繊維分散パターンの画像でもよい。「真贋情報」の列は、各行の学習用画像が真正のものか、複製又は偽造されているかを示す。着色した繊維が紙に分散されたものを有色繊維混抄と称してもよい。有色繊維混抄は、長さ60μm以下の微細な線表現である。有色繊維混抄は、認証用シート1の紙層内の深さ方向での分布位置によって、濃く見えたりする繊維と、淡く見える繊維とを含む。
【0101】
例えば、サンプル番号1の学習用画像は真正の認証用シートに由来しており、枠や繊維の線が明瞭であることがわかる。一方、サンプル番号2-6の学習用画像は、サンプル番号1の学習用画像に対応する認証用シートの複製物ないし偽造物に由来しており、これらの画像は真正品と同一ではない。
【0102】
サンプル番号2の学習用画像においては、複写できなかった繊維が含まれている。サンプル番号3の学習用画像においては、全ての繊維が複写されたものの、繊維が真正品よりも太く再現されている。サンプル番号4の学習用画像においては、寸断された繊維が含まれることにより、結果として繊維の長さが変化している。サンプル番号5の学習用画像においては、繊維の色が変化している。ここで、繊維を示す線の濃淡は色の変化を表すものとする。サンプル番号6の学習用画像においては、繊維の背景画像に変化が生じている。
【0103】
サンプル番号2の学習用画像については、このような変化が生じた原因は、繊維自体は微細な線であるため、複写により再現しようとした場合、繊維が消えてしまいやすいという有色繊維混抄特有の特徴に由来する。したがって、複製品又は偽造品では繊維本数が少なくなることがある。
【0104】
サンプル番号3の学習用画像について、このような変化が生じた原因は、60μm以下の微細な線を印刷機や複写機などで正確に描写することが元々難しいことに由来する。したがって、全ての繊維を視認できるように印刷すると、複製品又は偽造品の線幅が太くなることがある。さらに、サンプル番号2のような繊維の消失を防ぐために画像補正でよりはっきりした線に補正しようとすると、さらに線幅が太くなりやすい。
【0105】
サンプル番号4の学習用画像について、このような変化が生じた原因は、有色繊維混抄に含まれる繊維は元々線幅が細いので、複写すると、線が寸断されているように表現されやすいという有色繊維混抄特有の特徴に由来する。さらに有色繊維の被覆され方によって、色の濃淡が発生することがある。繊維が淡色の場合、網点率を下げて表現することがあり、線描写中の空白箇所が増えることにより、線が、より寸断されているように表現される場合がある。なお、網点とは、写真、イラスト等の濃淡を印刷物等の上に再現するために用いる小さな点であり、網点率は、網点階調において,単位面積あたりに占める網点面積の割合を示すものである。
【0106】
サンプル番号5の学習用画像は、繊維の色が変化したことを示す。線の濃淡は色の変化に対応する。このような変化が生じた原因は、繊維自体は微細な線であるため、複製又は偽造の際に繊維のカラーバランスの崩れが生じやすいという有色繊維混抄特有の特徴に由来する。1本の繊維全体の色が変わる場合もあるし、1本の繊維中で一部の色が変化する場合もある。
【0107】
サンプル番号6の学習用画像について、このような変化が生じた原因は、複製用画像の撮影・撮像条件や基材シートの影響によって、繊維以外の背景にも変化が生じることがあるという事由に由来する。例えば、影が発生した撮影画像を複製又は偽造に用いた場合、複製又は偽造時に、より強調され、グラデーション状に再現される場合がある。基材が紙である場合、基材表面には基材繊維の分布に伴う凹凸が存在する。この凹凸が複製又は偽造時により強調され、ノイズ状に再現される場合がある。
【0108】
図3のサンプル番号2-6等の学習用画像は、予め複製物ないし偽造物と分かっている認証用シートから生成可能であるが、例えば、真正な認証用シートから、複写機やスキャナ等の解像度を意図的に低くした上で画像を取込むことによって事前に生成されていてもよい。
【0109】
図3の教師データでは枠や繊維の線の太さ又は不明瞭さによって真正か否かを学習するが、複製物ないし偽造物では、例えば、複写機等による画像の取り込み、印刷機による印刷の際に、枠や繊維の線が一部切れることがあるので、枠や繊維の線の連続性又は不連続性によって真正か否かを学習してもよい。また、複製物ないし偽造物では、例えば、複写機等による画像の取り込み、印刷機による印刷の際に、枠、繊維以外の背景に、本物には存在しない画像(ノイズ)が現れることがあるので、背景におけるノイズの存在又は不存在によって真正か否かを学習してもよい。
【0110】
そして、図3に示す学習用画像とその真正性との対応関係を学習装置10は機械学習により学習し、学習済モデルを生成する。
【0111】
図4は、本発明の第1実施形態における学習装置10の機能構成例を示す図である。学習装置10は、取得部110、処理部120、通信部130、学習データ記憶部140及び出力部150を備える。学習データ記憶部140は、画像記憶部141、真贋情報記憶部142及び学習結果記憶部143を備える。
【0112】
取得部110は、各種情報及びデータを取得する。処理部120は、プロセッサであり、取得部110、通信部130、学習データ記憶部140及び出力部150の処理を制御する。通信部130は通信インターフェイスであり、有線媒体又は無線を介して情報及びデータの送受信を実行する。学習データ記憶部140は情報及び命令を記憶する記憶素子である。出力部150は、情報を外部に出力する。学習装置10のハードウェア構成については後述する。
【0113】
取得部110は、学習用画像のデータと、取得した学習用画像が真正であるか、複製ないし偽造されたものであるかを示す情報である真贋情報とを取得する。処理部120は、取得された学習用画像のデータを画像記憶部141に記憶させ、取得された学習用画像の真贋情報を真贋情報記憶部142に記憶させる。処理部120は機械学習によって学習処理を実行し、学習済モデルを生成する。機械学習の手法の一例として、ニューラルネットワークやディープラーニング等の他の学習技術が用いられてもよいし、ディープラーニングとして、畳み込みニューラルネットワークが用いられてもよい。
【0114】
処理部120は、機械学習によって生成した学習済モデルを学習結果記憶部143に記憶させる。通信部130及び出力部150の少なくともいずれかは生成された学習済モデルを外部に出力する。
【0115】
図5は、本発明の第1実施形態における推定装置30の機能構成例を示す図である。推定装置30は、取得部310、処理部320、通信部330、実行データ記憶部340及び出力部350を備える。実行データ記憶部340は、画像記憶部341、実行結果記憶部342及び学習済モデル記憶部343を備える。
【0116】
取得部310は、各種情報及びデータを取得する。処理部320は、プロセッサであり、取得部310、通信部330、実行データ記憶部340及び出力部350の処理を制御する。通信部330は通信インターフェイスであり、有線媒体又は無線を介して情報及びデータの送受信を実行する。実行データ記憶部340は情報及び命令を記憶する記憶素子である。出力部350は、情報を外部に出力する。推定装置30のハードウェア構成については後述する。
【0117】
取得部310は、推定用画像のデータと、学習済モデルとを取得する。処理部320は、推定用画像のデータを画像記憶部341に記憶させ、学習済モデルを学習済モデル記憶部343に記憶させる。学習済モデルは学習装置10が生成及び出力したものでもよいし、学習装置10以外の装置によって生成されたものでもよい。
【0118】
実行データ記憶部340は取得した推定用画像のデータを画像記憶部341から読み出し、学習済モデルに基づく推定処理を実行し、推定用画像中の認証用シート1が真正なものか、複製ないし偽造されたものかを示す推定情報を生成し、実行結果記憶部342に記憶させる。通信部330及び出力部350の少なくともいずれかは、推定情報を外部に出力する。推定装置30が生成及び出力する推定情報を第1推定情報と称してもよい。
【0119】
図6は、本発明の第1実施形態における学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
ステップS100において、取得部110は、機械学習の教師データとして学習データを取得し、処理部120は取得した学習データを学習データ記憶部140に記憶させる。画像記憶部141は学習用画像を記憶し、真贋情報記憶部142は真贋情報を記憶する。学習データは、例えば、図3に示すような複数サンプルのデータセットである。各データセットは、サンプル番号と、認証用シート1の学習用画像と、真贋情報との対応関係を含む。図3においてサンプル数は300であるが、これに限られず、1000でも10000でもよい。
【0121】
ステップS101において、処理部120は機械学習による学習処理を実行し、学習済モデルを生成する。なお、ステップS100において、処理部120は、取得した学習データを学習データ記憶部140に記憶させることなくステップS101に進んでもよい。
【0122】
ステップS102において、生成した学習済モデルを処理部120は学習結果記憶部143に記憶させる。
【0123】
ステップS103において、通信部130及び出力部150の少なくともいずれかは、学習済モデルを外部に出力する。その後処理は終了する。
【0124】
図7は、本発明の第1実施形態における推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0125】
ステップS300において、取得部310は、推定用画像を取得する。推定用画像には、認証用シート1の推定用の画像が含まれている。推定用画像は、ユーザUが端末装置Tのカメラ機能を用いて撮影した撮影画像でもよい。取得した推定用画像を処理部320は画像記憶部341に記憶させる。
【0126】
ステップS301において、取得部310は学習済モデルを取得し、処理部320によって学習済モデル記憶部343に記憶させる。
【0127】
ステップS302において、処理部320は、画像記憶部341に記憶された推定用画像を読み出し、学習済モデル記憶部343から学習済モデルを読み出し、演算処理を行う。なお、ステップS300において、処理部320は、取得した推定用画像を撮影画像記憶部341に記憶させることなくステップS302に進んでもよい。
【0128】
ステップS303において、処理部320は、推定用画像中の認証用シートが複製又は偽造されたか否かを推定し、推定情報を生成する。推定情報は、推定用画像中の認証用シートが複製又は偽造されたか否かを示す。
【0129】
ステップS304において、通信部330及び出力部350の少なくともいずれかは、推定情報を外部に送信又は出力する。
【0130】
以上、学習用画像と、学習用画像中の認証用シート1の真贋情報との対応関係に基づいて生成された学習済モデルを用いて、推定用画像中の認証用シート1が真正なものか、複製又は偽造されたものであるかを推定することが可能となる。例えば、市販又は特注の複写機によって認証用シート1が複製又は偽造された場合は、認証用シート1内の繊維が太く、粗くなることもある。
【0131】
また、スキャナを用いて認証用シート1を読み込むことによって、認証用シート1を電子的に複製又は偽造する場合、読み取り条件にも依存するものの、認証用シート1を複写機によって読み取る場合と比べて、認証用シート1内の繊維をより精密に読み取ることができる場合もある。このような場合、認証用シート1内の繊維は前述のように細く、小さいので、認証用シート1の複製又は偽造された電子ファイルにおいては、真正な認証用シート1に含まれていた繊維が必ずしも全て含まれなくなる蓋然性が高い。
【0132】
本実施形態において、機械学習に用いた認証用シート1の画像数は、真正品及び複製品について、それぞれ508及び4064である。推定処理の検証に用いた認証用シート1の画像数は、真正品及び複製品について、それぞれ294及び1470である。推定処理の結果、推定処理の精度は、真正品及び複製品についてそれぞれ100%及び99.57%であった。このように、有色繊維混抄を含む認証用シート1の画像を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づく推定処理によって、真正品と偽造品(複製品)とを高精度に識別可能であることが示された。
【0133】
なお、本実施形態において、教師データとして使用した画像と、推定処理の検証対象として用いた画像は異なる。また、本実施形態の認証用シート1に含まれる有色繊維混抄は、幅20μm以下、長さ3.0mm以下の繊維を含んでもよく、繊維の分布密度は100平方センチメートルあたり1000~3000本でもよい。偽造防止用途で一般的に利用される有色繊維は幅20~50μm、長さ3.0~6.0mm程度であることに鑑みると、本実施形態に係る繊維は、有色繊維の中では比較的細くて短いものである。
【0134】
以上より、本実施形態の認証用シート1の学習用画像を用いた機械学習に基づいて学習済モデルを作成し、作成した学習済モデルと、推定用画像とを用いた推定処理によって、高精度な真贋判定が可能となる。この場合、「推定用画像」は、真正な認証用シート1の画像を含み、また、真正でない認証用シート1、つまり、複製又は偽造された認証用シート1の画像を含む。
【0135】
図8は、本発明の第1実施形態における推定結果の一例を示す図である。
【0136】
「サンプル番号」の列には、各推定用画像を識別する番号が割り振られている。「推定用画像」の列は、各推定用画像中の認証用シート1の真贋を推定するために推定装置30が取得する画像の例を示す。「推定情報」の列は、推定装置30が推定処理の結果として生成及び出力した推定情報が示す結果を示す。「真」(true) は、推定用画像中の認証用シート1が真正で複製、偽造や改竄されていないことを示し、「贋」(偽 / false) は、推定用画像中の認証用シート1が複製や偽造されていることを示す。
【0137】
図8の例では、サンプル番号1及び300に対応する推定用画像は枠及び繊維が明瞭であり、結果として、推定情報はそれらが真正であること、言い換えると複製又は偽造されていないことを示している。サンプル番号2-6に対応する推定用画像は、複製、偽造又は改竄されていることを推定情報は示している。
【0138】
以上説明したように、本実施形態に係る推定装置30は、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての学習用画像と、認証用シートが複製又は偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、認証用シートについての推定用画像とを取得する取得部310と、推定用画像に含まれる認証用シートが複製又は偽造されたものであるか否かを、推定用画像及び学習済モデルに基づいて推定することにより、推定結果を示す推定情報を生成する処理部320と、推定情報を出力する出力部350と、を備える。
【0139】
これにより、複製、偽造や改竄されるリスクの低い認証用シートに基づく、高精度且つ簡便な真贋判定を実施することができる。
【0140】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、本発明の第1実施形態において、更に、識別可能な繊維の分散パターンに基づく個別認証を行う。
【0141】
認証には、1対1認証と1対N認証の2種類が存在する。1対1認証では、登録された多数のデータから特定の単一のデータを選択して、選択された当該特定の単一のデータとの照合を行うことで認証を実施する。一方、1対N認証では、登録された多数のデータから特定の単一のデータを選択せず、当該多数のデータとの照合を行うことで認証を実施する。
【0142】
識別可能な繊維の分散パターンはランダムであり、同一のパターンは存在しない。したがって、シートの表面から認識される、識別可能な繊維の分散パターンによって当該シートを正確に特定することができる。そこで、第2実施形態では、識別可能な繊維の分散パターンを用いてシートを特定することにより、当該シートが真正のものであるか否かを判定し、認証を実施することができる。
【0143】
例えば、予め、真正品である多数のシートについて、各シートの表面における識別可能な繊維の分散パターンのデータベースを作成しておき、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンと一致する分散パターンが当該データベースに登録されていれば、当該シートは真正であると判定することができる。
【0144】
但し、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンをデータベースに登録されている多数の分散パターンと逐一照合することは時間を要し、その結果、認証に時間がかかることになるので、第2実施形態では、データベース中の多数の分散パターンのそれぞれに繊維とは異なる識別情報を紐付けて登録しておき、認証対象となるシートに付与された特定の識別情報と一致する識別情報に対応する単一の分散パターンを選択し、当該選択された単一の分散パターンと、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンが一致するか否かを照合する1対1認証を行うことが好ましい。これにより、認証時間を短縮することができる。
【0145】
本実施形態で使用される繊維は、アスペクト比の高い細長い形状であるため、高い認識性を有する一方で、コピー等の複製又は偽造での分散パターンの再現が困難である。したがって、本発明で使用される個別認証用シートは、耐複製性能が高く、偽造防止効果に優れている。
【0146】
第2実施形態では識別可能な繊維の二次元の分散パターンを認証に使用するので、一次元の走査により得られるパターンを認証に使用する場合に比べて正確に個体識別を行うことができ、また、微小粒子を使用する場合に比べて、外部からの認識が容易であり、拡大レンズ等の補助装置の使用が不要である。したがって、本発明により、個別認証を簡便に行うことができる。
【0147】
図9は、本発明の第2実施形態における個別認証システムS2の構成例を示す図である。個別認証システムS2は、第1実施形態におけるものに加えて個別認証装置50をさらに備える。個別認証装置50はネットワークNWを介して学習装置10及び推定装置30と接続されてもよい。個別認証装置50はネットワークNWを介して端末装置Tと接続されてもよい。
【0148】
図10は、本発明の第2実施形態における個別認証装置50の機能構成例を示す図である。
【0149】
個別認証装置50は、取得部510、処理部520、通信部530、記憶部540及び出力部550を備える。
【0150】
取得部510は、各種情報及びデータを取得する。処理部520は、プロセッサであり、取得部510、通信部530、記憶部540及び出力部550の処理を制御する。通信部530は通信インターフェイスであり、有線媒体又は無線を介して情報及びデータの送受信を実行する。記憶部540は情報及び命令を記憶する記憶素子である。出力部550は、情報を外部に出力する。個別認証装置50のハードウェア構成については後述する。
【0151】
記憶部540には、少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンが記憶されている。
【0152】
図10に示す例では、各平面繊維分散基準パターンには、各基準シートに付与された、繊維とは異なる基準識別情報が紐付けされて記憶部540に記憶されている。そして、各基準シートについて、1組の平面繊維分散基準パターン及び基準識別情報のデータが登録されており、これらのデータが多数集合することによってデータベースを構成している。
【0153】
パターン情報は、記憶部540にプリセットされていてもよいし、取得部510が取得して記憶部540に記憶させてもよい。
【0154】
図11は、基準シートの一例を示す図である。図11に示す例では、識別可能な繊維の分散パターンを有するものを基準シートとして使用し、枠4内の繊維の分散パターンを平面繊維分散基準パターンとして使用している。
【0155】
基準シートの下に付された「123456」は、基準シートを特定する固有のシリアル番号である。基準シート及びシリアル番号は1対1に対応している。したがって、各シリアル番号は各基準シートに固有の識別可能な繊維の平面繊維分散基準パターンに対応する。そして、識別可能な繊維の平面繊維分散基準パターンとシリアル番号の組が多数集合することによってデータベースが構成されている。
【0156】
図11に示す例では、枠4は7つの繊維を含んでおり、それぞれp1からp7までの識別子が割り振られている。
【0157】
基準シートとして図1に示す形態のシートを使用する場合は、矩形の枠4内の二次元画像を取得して、着色繊維2の分散パターンを認識することが好ましい。これにより、基準シートがたわみ等の理由により変形していても、矩形の枠4の変形の程度に基づき、分散パターンに対して台形補正等の補正を行い、基準シートの表面における着色繊維の平面繊維分散基準パターンを正確に認識することができる。
【0158】
図12は、図11に示す基準シートの平面繊維分散基準パターンの登録例を示す図である。
【0159】
図12に示す表は、基準シートID、繊維ID、始点の座標及び終点の二次元座標を少なくとも含む。基準シートIDは、基準シートを識別するための固有の識別子であり、上記基準識別情報に対応している。基準シートIDは、図12に示すように数字のみで表されてもよいし、数字、文字及び記号の少なくともいずれか1つ以上の組み合わせでもよいし、例えば2次元バーコードで表されてもよい。
【0160】
繊維IDは、基準シートIDに含まれる各繊維を識別するための識別子であり、少なくとも基準シート内において固有の識別子である。図12では、p1からp7までの繊維IDが割り振られており、それぞれ、図11におけるp1からp7に対応する。
【0161】
始点の座標は、各繊維の一端について基準シート内の座標を示す。始点は、基準シート内における各繊維の左側に位置する一端であってもよいし、基準シート内における各繊維の上側に位置する一端であってもよい。例えば、図11において、各繊維の始点は左側の一端でよい。
【0162】
終点の座標は、各繊維のうち始点ではない方の、片端の基準シート内における座標を示す。例えば、図11において、各繊維の終点は右側の一端でもよい。なお、座標を示す際の原点は、各基準シートの左上の角とする等、任意に定めてよい。
【0163】
記憶部540は推定対象(照合対象)の全ての基準シートについて、図12に示す対応関係を平面繊維分散基準パターンとして記憶する。図12に示す対応関係はプリセットされていてもよいし、全ての基準シートについてそれらの画像を取得部510が取得し、処理部520が基準シート内の各繊維の座標を識別して、各繊維の座標を示す情報を生成して、処理部520が記憶部540に記憶させてもよい。
【0164】
なお、平面繊維分散基準パターンのデータの具体的な作製形態は特に限定されるものではない。
【0165】
例えば、公知の画像処理により、基準シート表面の二次元画像中の各繊維の輪郭線を検出し、繊維を構成する特徴的な要素として、繊維の端点(始点、終点)等を特定し、それらのXY平面座標を求めて、平面繊維分散基準パターンのデータとしてもよい。
【0166】
処理部520は、多数の基準シートの表面の繊維について、画像処理を行い、繊維の始点、終点等の、繊維を構成する特徴的な要素の情報を抽出して、それらのXY平面座標を決定し、当該XY平面座標の組をシリアル番号と共にデータベースとして記憶部540に記憶させてもよい。
【0167】
ある繊維の特徴的な要素を他の繊維の特徴的な要素と混同することを避けるために、同一繊維に属する特徴量はグループ化されていることが好ましい。グループ化の方法は特には限定されるものではないが、例えば、XY平面座標のデータセットに、同一の繊維であることを示す情報を追加することができる。
【0168】
図13は、基準シートの平面繊維分散基準パターンの登録の流れの一例を示すフローチャートである。
【0169】
ステップS500において、取得部510は基準シートの画像を取得する。取得部510は、ハードウェアとしてカメラによって構成されてもよいし、スキャナによって構成されてもよい。取得部510は取得した画像を記憶部540に記憶してもよい。なお、基準シートの画像には、必要に応じて、予備的な画像処理を行われていてもよい。例えば、基準シート表面の二次元画像について二値化の画像処理を行うと繊維と背景の区別がより容易となり識別可能な繊維の分散パターンの認識をより正確に行うことができるので好ましい。また、基準シート表面の二次元画像についてコントラスト調整などの画像処理を行うとコントラストの高い画像となるので好ましい。更に、背景のノイズ除去が行われていてもよい。
【0170】
なお、ステップS500において、取得部510は、外部機器や記憶媒体からデータベースを取得することにより、記憶部540に、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターン又は基準シート内に含まれる各繊維の座標を記憶させてもよい。この場合、外部機器は例えば端末装置Tといった携帯端末装置でもよく、携帯端末装置は、備え付けのカメラによって、基準シートのシリアル番号と基準シートの平面繊維分散基準パターンとを撮影し、通信部530が端末装置Tから当該シリアル番号と平面繊維分散基準パターンとを受信してもよい。
【0171】
ステップS501において、処理部520は、基準シートに含まれるシリアル番号(基準シートID)を識別する。シリアル番号は、当該番号を識別後、当該番号を表すバイナリデータとして記憶部540に記憶させてもよい。
【0172】
ステップS502において、処理部520は、基準シートに含まれる繊維を全て特定し、全ての繊維について繊維IDを取得する。繊維IDは、当該識別子を識別後、当該識別子を表すバイナリデータとして記憶部540に記憶させてもよい。
【0173】
ステップS503において、処理部520は、各繊維の始点と終点の座標を識別及び取得する。
【0174】
ステップS504において、処理部520は、基準シートIDと各繊維の識別子と始点及び終点の座標とを対応付けて記憶部540に記憶させる。
【0175】
図14は、本発明の第2実施形態における照合処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0176】
ステップS1500において、取得部510は推定用画像を取得する。推定用画像は、例えば、図1に示す個別認証用シート1の画像であり、枠の画像を少なくとも含む。なお、図14に示す例では、取得部510は、シリアル番号を更に取得する。取得したシリアル番号を認証対象シリアル番号と称してもよい。
【0177】
ステップS1501において、取得部510は第1推定情報を取得する。第1推定情報は、推定装置30が生成し、出力又は送信したものであって、推定用画像に含まれる個別認証用シート1が真正なものであるか、複製又は偽造されたものでないかを示す。
【0178】
ステップS1502において、処理部520は、認証用シートが複製又は偽造されたものでないことを第1推定情報が示すか否かを判定する。判定結果がYes(真)の場合、つまり、認証用シート1が真正であって、複製又は偽造されたものでないことを第1推定情報が示す場合、処理はステップS1503に進む。判定結果がNo(偽)の場合、つまり、認証用シート1が複製又は偽造されたものであることを第1推定情報が示す場合、処理はステップS1506に進む。
【0179】
ステップS1503において、処理部520は照合処理を実行する。処理部520は、個別認証用シート1に含まれる各繊維の座標を識別し、各々の座標を示す情報を生成する。この処理は図13のフローチャートに示した処理と同様である。処理部520は、認証対象シリアル番号と同じシリアル番号の基準シートに関する保存済みの情報を記憶部540のデータベースから読み出す。このデータベースは、図13のフローチャートに記載された一連の処理によって生成及び記憶されたものである。
【0180】
処理部520は、推定用画像内の個別認証用シート1に含まれる各繊維の座標を、各々の座標を示す情報に基づいて特定する。処理部520は、推定用画像内の個別認証用シート1に含まれる各繊維について特定された座標と、認証対象シリアル番号と同じシリアル番号の基準シートに関する保存済みの情報が示す各繊維の座標とを照合する。
【0181】
図14に示す例では、認証の対象であるシリアル番号(例えば123456)の個別認証用シート1について得られた、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標群と、データベースから選択された同一のシリアル番号に対応する基準シートの繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標群とを照合する。照合の態様は特には限定されるものではないが、例えば、認証対象であるシリアル番号123456の個別認証用シート1の平面繊維分散パターンに対応する、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標と、データベースから選択された同一のシリアル番号の基準シートの平面繊維分散基準パターンに対応する、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標とが所定の閾値内に存在すれば一致と処理部520は判定し、当該閾値内に存在しなければ不一致と処理部520は判定することができる。
【0182】
ステップS1504において、処理部520は、シリアル番号123456のシート(推定用画像に含まれる個別認証用シート1)の真贋判定を行う。例えば、上記一致と判定されたXY座標数が所定値以上であれば、処理部520は、真と判定する。つまり、推定用画像に含まれる個別認証用シート1、例えば、枠4が含まれる個別認証用シート1が真正であって、複製又は偽造されたものではないと判定する。一方、上記一致と判定されたXY座標数が所定値未満の場合、処理部520は偽と判定する。つまり、推定用画像に含まれる個別認証用シート1、例えば、枠4が含まれる個別認証用シート1が複製又は偽造されたものであると判定する。
【0183】
ステップS1505において、処理部520は、個別認証用シート1が真正であることを示す第2推定情報を生成する。
【0184】
ステップS1506において、処理部520は、個別認証用シート1が複製又は偽造されたものであることを示す第2推定情報を生成する。ステップS1505及びステップS1506において、生成した第2推定情報を処理部520は記憶部540に記憶させてもよい。
【0185】
ステップS1507において、通信部530は第2推定情報を送信し、及び/又は、出力部550は第2推定情報を出力する。端末装置TはネットワークNWを介して第2推定情報を受信することにより取得してもよい。
【0186】
なお、個別認証装置50は、推定装置30の機能を包含してもよい。個別認証装置50は、学習装置10及び推定装置30の機能を包含してもよい。
【0187】
また、ステップS1502の処理と、ステップS1503及びステップS1504の処理とを逆転させてもよい。すなわち、照合処理の結果、認証用シートが複製又は偽造されたものでないと判定した場合、ステップS1502の処理を処理部520は実行してもよい。そして、認証用シートが複製又は偽造されたものでないことを第1推定情報が示す場合、処理部520はステップS1505の処理を実行し、認証用シートが複製又は偽造されたものであることを第1推定情報が示す場合、処理部520はステップS1506の処理を実行してもよい。
【0188】
これにより、複製、偽造や改竄されるリスクの低い認証用シートに基づく、更に高精度且つ簡便な真贋判定を実施することができる。
【0189】
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る個別認証装置50は、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得する取得部と、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶する記憶部と、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かのいずれを第1推定情報が示すかを判定し、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものでないことを第1推定情報が示すと判定することに応答して、複数の平面繊維分散基準パターンから、推定用画像に含まれる認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、対応する平面繊維分散基準パターンと、推定用画像に含まれる認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、照合の結果に基づいて、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成する処理部と、第2推定情報を出力する出力部と、を備える。
【0190】
これにより、機械学習による学習済モデルに基づいて生成された第1推定情報による真贋推定処理(第1推定処理)と、個別認証用シート1内の枠4に含まれる1又は複数の繊維の分散パターン(例えば各繊維の両端の座標)に基づく照合による真贋推定処理(第2推定処理)とを組み合わせることにより、個別認証用シート1の真贋判定精度を更に高めることができる。また、第2推定処理のみによる真贋判定と同等の真贋判定精度を確保するために第2推定処理に求められる負荷を低減できる。ここで、負荷とは、基準シートに含まれる各繊維の座標特定精度を下げられることでもよい。
【0191】
また、認証用シートについての学習用画像と、認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す真贋情報とを含む教師データを用いて予め学習処理を行うことによって得られた学習済モデルと、推定用画像とに基づく推定処理により、第1推定情報が生成されてもよい。
【0192】
また、個別認証装置は、平面繊維分散基準パターン及び基準識別情報を読み取る読取デバイスを更に備えてもよい。
【0193】
また、発明の一態様に係る個別認証システムは、上記いずれか一に記載の個別認証装置50と、個別認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を個別認証装置に提供する携帯端末と、を備えてもよい。
【0194】
また、携帯端末が平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備えてもよい。ここで、読み取りデバイスはカメラつき携帯端末でもよいし、識別情報がバーコード又は2次元バーコードであれば、読み取りデバイスバーコードリーダーでもよい。
【0195】
また、携帯端末は第2推定情報を受信してもよい。
【0196】
また、本発明の一態様に係る推定システムは、上記に記載の推定装置30と、認証用シートについての推定用画像を推定装置に提供する携帯端末とを備えてもよい。
【0197】
また、本発明の一態様に係る認証方法は、個別認証装置50によって実行される認証方法であって、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得するステップと、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶するステップと、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを第1推定情報が示すことを判定する判定ステップと、複数の平面繊維分散基準パターンから、推定用画像に含まれる認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、対応する平面繊維分散基準パターンと、推定用画像に含まれる認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する照合ステップと、前記判定ステップの結果及び前記照合ステップの結果に基づいて、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成するステップと、第2推定情報を出力するステップと、を備える。
【0198】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、基材層及び識別可能な繊維を備える認証用シートについての推定用画像と、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを示す第1推定情報とを取得するステップと、基材層及び識別可能な繊維を備える基準シートであって、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶するステップと、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを第1推定情報が示すことを判定するステップと、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものでないことを第1推定情報が示すと判定することに応答して、複数の平面繊維分散基準パターンから、推定用画像に含まれる認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択するステップと、対応する平面繊維分散基準パターンと、推定用画像に含まれる認証用シートを識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合するステップと、照合の結果に基づいて、推定用画像に含まれる認証用シートが偽造されたものであるか否かを推定することにより、推定結果を示す第2推定情報を生成するステップと、第2推定情報を出力するステップとを実行させるためのプログラムである。
【0199】
また、本発明の一態様に係る記録媒体は、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0200】
<ハードウェア構成>
図15は、本実施形態に係る各装置のハードウェア構成を説明する説明図である。各装置とは、学習装置10、推定装置30及び個別認証装置50である。各装置は、入出力モジュールI、記憶モジュールM、及び制御モジュールPを含んで構成される。入出力モジュールIは、通信モジュールH11、接続モジュールH12、ポインティングデバイスH21、キーボードH22、ディスプレイH23、ボタンH3、マイクH41、スピーカH42、カメラH51、又はセンサH52の一部或いは全部を含んで実現される。
【0201】
記憶モジュールMは、ドライブH7を含んで実現される。記憶モジュールMは、さらに、メモリH8の一部或いは全部を含んで構成されてもよい。制御モジュールPは、メモリH8及びプロセッサH9を含んで実現される。これらのハードウェア構成要素は、バス(Bus)を介して、相互に通信可能に接続されるとともに、電源H6から電力を供給されている。
【0202】
接続モジュールH12は、USB(Universal Seriul Bus)等のデジタル入出力ポートである。携帯機器の場合、ポインティングデバイスH21、キーボードH22、及びディスプレイH23は、タッチパネルである。センサH52は、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS受信モジュール、近接センサ等である。電源H6は、各装置を動かすために必要な電気を供給する電源ユニットである。携帯機器の場合、電源H6は、バッテリーである。
【0203】
ドライブH7は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の補助記憶媒体である。ドライブH7は、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、又は、光磁気ディスクドライブやフレキシブルディスクドライブであってもよい。また、ドライブH7は、例えば、各装置に内蔵されるものに限らず、IFモジュールH12のコネクタに接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0204】
メモリH8は、ランダムアクセスメモリ等の主記憶媒体である。なお、メモリH8は、キャッシュメモリであってもよい。メモリH8は、一又は複数のプロセッサH9によって命令が実行されるときに、これらの命令を格納する。プロセッサH9は、CPU(中央演算装置)である。プロセッサH9は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)又はGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)であってもよい。プロセッサH9は、メモリH8を介してドライブH7から、プログラム及び各種データを読み出して演算を行うことで、一又は複数のメモリH8に格納した命令を実行する。
【0205】
入出力モジュールIは、取得部110、通信部130、出力部150、取得部310、通信部330、出力部350、取得部510、通信部530及び出力部550を実現する。記憶モジュールMは、学習データ記憶部140、実行データ記憶部340及び記憶部540を実現する。
【0206】
制御モジュールPは、処理部120、処理部320及び処理部520を実現する。なお、本明細書等において、学習装置10、推定装置30及び個別認証装置50との記載は、それぞれ、制御部P10、P30又はP50との記載に置き換えられてもよいし、これらの各装置との記載は、制御モジュールPとの記載に置き換えられてもよい。
【0207】
以上、本発明の一態様として各実施形態や変形例に関して図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は各実施形態や変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、本発明の一態様は、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態や変形例に記載された要素であり、同様の効果を奏する要素同士を置換した構成も含まれる。
【0208】
例えば、上記各実施形態の一部又は全部を組み合わせることで本発明の一態様を実現してもよい。
【符号の説明】
【0209】
S1…認証システム、S2…個別認証システム、10…学習装置、30…推定装置、50…個別認証装置、110…取得部、120…処理部、130…通信部、140…学習データ記憶部、150…出力部、310…取得部、320…処理部、330…通信部、340…実行データ記憶部、350…出力部、510…取得部、520…処理部、530…通信部、540…記憶部、550…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15