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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068855
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】苗箱並べ機
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20180101AFI20240514BHJP
【FI】
A01G9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179473
(22)【出願日】2022-11-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎吾
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA07
2B327ND03
2B327QA05
2B327QB10
2B327SA07
2B327SA15
2B327VA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】苗箱を並べる作業の作業負担を軽減する技術を提供する。
【解決手段】この苗箱並べ機1の苗箱並べ部30は、左右両端に配置される車輪21,22と、車輪21,22の上方に水平に配置される荷台部とを有する非自走式台車20に固定可能である。苗箱並べ部30は、フレーム31と、フレーム31に取り付けられ、前後方向に伸びる滑り板33と、フレーム31を荷台部23に固定する固定部32とを有する。固定部32は、フレーム31を後方に向かうにつれて下へ向かうように傾斜した状態で、フレーム31の前端が荷台部の前端よりも前方に配置され、フレーム31の一部が荷台部の下方に配置される位置に固定する。これにより、荷台部からフレーム31上への苗箱の供給作業において、作業者が苗箱を搬送する距離が短くなり、かつ、作業者が腰をかがめること無く行うことができる。したがって、作業者の作業負担を軽減できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端に配置される車輪と、前記車輪の上方に水平に配置される荷台部とを有する非自走式台車に固定可能な苗箱並べ機であって、
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、前後方向に伸びる滑り板と、
後方に向かうにつれて下へ向かうように傾斜した状態で前記フレームを前記荷台部に対して固定する固定部と、
を有し、
前記固定部は、前記フレームを、
前記フレームの前端が、前記荷台部の前端よりも前方に配置され、
前記フレームの一部が、前記荷台部の下方に配置される
位置に固定する、苗箱並べ機。
【請求項2】
請求項1に記載の苗箱並べ機であって、
前記滑り板を複数有し、
前記滑り板はそれぞれ、前記フレームに対して、左右方向の位置を変更可能に取り付けられる、苗箱並べ機。
【請求項3】
請求項1に記載の苗箱並べ機であって、
前記固定部は、
前記フレームを第1高さに固定する第1固定部と、
前記フレームを前記第1高さよりも下方の第2高さに固定する第2固定部と、
を有する、苗箱並べ機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の苗箱並べ機であって、
前記滑り板の後端部に対して、左右に伸びる回動軸周りに回動可能に取り付けられる板状のスライダ
をさらに有する、苗箱並べ機。
【請求項5】
圃場に複数の苗箱を並べる苗箱並べ機であって、
左右両端に配置される車輪と、
前記車輪の上方に水平に配置される荷台部と、
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、前後方向に伸びる滑り板と、
後方に向かうにつれて下へ向かうように傾斜した状態で前記フレームを前記荷台部に対して固定する固定部と、
を有し、
前記固定部は、前記フレームを、
前記フレームの前端が、前記荷台部の前端よりも前方に配置され、
前記フレームの一部が、前記荷台部の下方に配置される
位置に固定する、苗箱並べ機。
【請求項6】
請求項5に記載の苗箱並べ機であって、
前記滑り板を複数有し、
前記滑り板はそれぞれ、前記フレームに対して、左右方向の位置を変更可能に取り付けられる、苗箱並べ機。
【請求項7】
請求項5に記載の苗箱並べ機であって、
前記固定部は、
前記フレームを第1高さに固定する第1固定部と、
前記フレームを前記第1高さよりも下方の第2高さに固定する第2固定部と、
を有する、苗箱並べ機。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の苗箱並べ機であって、
前記滑り板の後端部に対して、左右に伸びる回動軸周りに回動可能に取り付けられる板状のスライダ
をさらに有する、苗箱並べ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に複数の苗箱を並べる苗箱並べ機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗箱においてポット苗やマット苗を育苗する場合、まず、苗箱に床土を入れて、播種、鎮圧する。その後、それらの苗箱を、ビニルハウス内や露地の圃場(苗床)に並べた状態で、育苗する。しかしながら、圃場に苗箱を1つ1つ腰をかがめて並べる作業は、極めて重労働である。そこで、この作業を補助するために、苗箱並べ機が使用される場合がある。
【0003】
従来の苗箱並べ機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-114964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の苗箱並べ機は一般的に、特許文献1に記載の苗箱並べ機のように、傾斜した苗箱載置面(特許文献1においてはコンベア20の上面)を有し、当該載置面の上端(前端)から苗箱を並べて苗箱並べ機を前方へ移動させることにより、載置面の上端(前端)から下端(後端)へ向かって載置面を滑り降りた苗箱が圃場に順に並ぶ。これにより、ユーザが苗箱を供給する苗箱載置面の前端部が、圃場に対して高い位置に配置されていることにより、ユーザが腰を屈めること無く、楽な作業姿勢で苗箱の供給を行うことができる。
【0006】
このような苗箱並べ機を用いて圃場に苗箱を並べる場合には、苗箱並べ機の近傍に、補給用の多数の苗箱を運ぶための台車を置いて作業を行う。このため、苗箱並べ機の移動に伴って、当該台車を移動させる工程も必要であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、苗箱を並べる作業の作業負担を軽減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、左右両端に配置される車輪と、前記車輪の上方に水平に配置される荷台部とを有する非自走式台車に固定可能な苗箱並べ機であって、フレームと、前記フレームに取り付けられ、前後方向に伸びる滑り板と、後方に向かうにつれて下へ向かうように傾斜した状態で前記フレームを前記荷台部に対して固定する固定部と、を有し、前記固定部は、前記フレームを、前記フレームの前端が、前記荷台部の前端よりも前方に配置され、前記フレームの一部が、前記荷台部の下方に配置される
位置に固定する。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の苗箱並べ機であって、前記滑り板を複数有し、前記滑り板はそれぞれ、前記フレームに対して、左右方向の位置を変更可能に取り付けられる。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の苗箱並べ機であって、前記固定部は、前記フレームを第1高さに固定する第1固定部と、前記フレームを前記第1高さよりも下方の第2高さに固定する第2固定部と、を有する。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの苗箱並べ機であって、前記滑り板の後端部に対して、左右に伸びる回動軸周りに回動可能に取り付けられる板状のスライダをさらに有する。
【0012】
本願の第5発明は、圃場に複数の苗箱を並べる苗箱並べ機であって、左右両端に配置される車輪と、前記車輪の上方に水平に配置される荷台部と、フレームと、前記フレームに取り付けられ、前後方向に伸びる滑り板と、後方に向かうにつれて下へ向かうように傾斜した状態で前記フレームを前記荷台部に対して固定する固定部と、を有し、前記固定部は、前記フレームを、前記フレームの前端が、前記荷台部の前端よりも前方に配置され、前記フレームの一部が、前記荷台部の下方に配置される位置に固定する。
【0013】
本願の第6発明は、第5発明の苗箱並べ機であって、前記滑り板を複数有し、前記滑り板はそれぞれ、前記フレームに対して、左右方向の位置を変更可能に取り付けられる。
【0014】
本願の第7発明は、第5発明または第6発明の苗箱並べ機であって、前記固定部は、前記フレームを第1高さに固定する第1固定部と、前記フレームを前記第1高さよりも下方の第2高さに固定する第2固定部と、を有する。
【0015】
本願の第8発明は、第5発明ないし第7発明のいずれかの苗箱並べ機であって、前記滑り板の後端部に対して、左右に伸びる回動軸周りに回動可能に取り付けられる板状のスライダをさらに有する。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明から第8発明によれば、斜めに傾斜するフレームの上方に台車部の荷台部が配置される。このため、荷台部と、苗箱を供給するフレームの前端部との距離が短く、作業者が苗箱を搬送する距離が短い。さらに、荷台部およびフレームの前端部がいずれも、地面から一定の高さに配置される。このため、苗箱の供給作業を、作業者が腰をかがめること無く行うことができる。したがって、作業者の作業負担を軽減できる。
【0017】
特に、本願の第1発明から第4発明によれば、市販の非自走式台車を利用して、苗箱並べ機を製造することができる。
【0018】
特に、本願の第2発明および第6発明によれば、苗箱の底面と、苗箱の載置面である滑り板との接触面積を低減し、摩擦力を低減することができる。これにより、苗箱がスムーズに滑り降りる。
【0019】
特に、本願の第3発明および第7発明によれば、車輪と、苗箱を載置する圃場との高さに応じて、車輪とフレームとの上下方向の位置を変更できる。
【0020】
特に、本願の第4発明および第8発明によれば、スライダが回動可能であることにより、圃場に接触するスライダ後端部の上下方向の位置を、圃場の高さに追従して変動可能である。これにより、フレームと圃場との間において、苗箱をスムーズに滑り降りさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】苗箱並べ機の斜視図である。
図2】苗箱並べ機の使用時の様子を示した斜視図である。
図3】苗箱並べ機の側面図である。
図4】苗箱並べ機の側面図である。
図5】苗箱並べ機のフレーム、滑り板およびスライドの平面図である。
図6】滑り板の斜視図である。
図7】苗箱並べ機の滑り板の配置例を示した図である。
図8】苗箱並べ機の滑り板の配置例を示した図である。
図9】苗箱並べ機の滑り板の配置例を示した図である。
図10】苗箱並べ機の滑り板の配置例を示した図である。
図11】変形例に係る苗箱並べ機の側面図である。
図12】変形例に係る苗箱並べ機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、以下の説明においては、牽引台車により苗箱並べ機1が移動する方向を「前後方向」とし、前後方向に対して垂直かつ水平な方向を「左右方向」として、各部の位置関係を説明する。
【0024】
<1.苗箱並べ機の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る苗箱並べ機1を斜め上側から見た斜視図である。図2は、苗箱並べ機1の使用時の様子を示した斜視図である。図3および図4は、苗箱並べ機1の側面図である。この苗箱並べ機1は、ポット苗やマット苗の苗箱9(図2参照)を、圃場に並べるための装置である。ポット苗は、例えば、タマネギ等の野菜を栽培する場合に使用される。マット苗は、例えば、水稲を栽培する場合に使用される。苗箱9は、上面視において長方形状の扁平な容器である(図2参照)。ポット苗の苗箱9は、ポット苗を保持するための多数の円形の凹部を有する。マット苗の苗箱9は、マット苗を保持するための矩形の凹部を有する。
【0025】
ポット苗およびマット苗の栽培を行う作業者は、まず、苗箱9の凹部に床土を入れて、播種、鎮圧された多数の苗箱9を用意する。そして、それらの苗箱9を、苗箱並べ機1を使用して、ビニルハウス内や露地の圃場に並べる。その後、圃場に苗箱9を配置した状態で、苗箱9内の種子を発芽させ、ポット苗またはマット苗を育苗する。
【0026】
図1に示すように、苗箱並べ機1は、台車部20と、苗箱並べ部30とを有する。図2に示すように、この苗箱並べ機1の使用時には、台車部20の後述する荷台部23上に苗箱9を積載し、前方から苗箱並べ部30のフレーム31上に苗箱9を補給しながら、苗箱並べ機1を前方へと移動する。これにより、苗箱並べ機1通過後の圃場に苗箱9が順に並べられる。
【0027】
台車部20には、例えば、一般的に農業用収穫台車と呼ばれる車輪付きの台車を用いることができる。苗箱並べ部30が後述するフレーム固定部32の構成を有することにより、台車部20に市販の非自走式台車を利用して、苗箱並べ機1を製造することが可能である。これにより、苗箱並べ機1の製造コストを低減することができる。
【0028】
台車部20は、左右一対の前側車輪21と、左右一対の後側車輪22と、車輪21,22よりも上方に配置される荷台部23と、車輪21,22の上方に荷台部23を支持する一対の荷台支持部24と、左右一対の把持部25とを有する。荷台部23および荷台支持部24は、例えば、アルミニウム等の金属で形成されている。
【0029】
車輪21,22はそれぞれ、左右方向に伸びる回転軸を中心として回転する。右側の前側車輪21と右側の後側車輪22とは、右側の荷台支持部24によって前後に間隔を空けて連結されている。また、左側の前側車輪21と左側の後側車輪22とは、左側の荷台支持部24によって前後に間隔を空けて、回転可能に連結されている。
【0030】
荷台部23は、上面視で略長方形である。荷台部23は、車輪21,22の上方において、水平に配置される。なお、「水平」とは、略水平を含む。荷台部23は、前枠231、後枠232、右枠233、左枠234、および複数の荷受棒235を有する。
【0031】
前枠231および後枠232はそれぞれ、左右方向に伸びる柱状である。前枠231および後枠232は前後方向に間隔を空けて配置される。右枠233および左枠234はそれぞれ、前後方向に伸びる柱状である。右枠233および左枠234は、左右方向に間隔を空けて配置される。右枠233は、前枠231の右端部と後枠232の右端部とを連結する。左枠234は、前枠231の左端部と後枠232の左端部とを連結する。複数の荷受け棒235は、右枠233と左枠234との間において、前後方向に伸びる。荷受け棒235はそれぞれ、前端が前枠231に固定されるとともに、後端が後枠232に固定される。
【0032】
一対の荷台支持部24はそれぞれ、車輪21,22の内側において、上下に伸びる荷台支持柱241を2つ有する。各荷台支持柱241は、荷台部23の4つの角を支持する。これにより、荷台部23および荷台部23に載置された苗箱の荷重を4つの車輪21,22が荷台支持部24を介して支持する。
【0033】
一対の把持部25は、前枠231から左右に突出する。すなわち、右側の把持部25は、前枠231の右端部付近から右側に突出する。また、左側の把持部25は、前枠231の左端部付近から左側に突出する。
【0034】
苗箱並べ機1の使用時には、2人のユーザが苗箱並べ機1の左右に1人ずつ立ち、それぞれが左右の把持部25を把持して前方へと動かすことにより、苗箱並べ機1を前方へと走行させる。その際、4つの車輪21,22は、圃場に接地しながら回転する。なお、苗箱並べ機1は、把持部25を有していなくてもよい。その場合、ユーザは、荷台部23や荷台支持部24の一部を把持して苗箱並べ機1を前方へと動かしてもよい。
【0035】
苗箱並べ部30は、フレーム31と、フレーム固定部32と、複数の滑り板33と、複数のスライド34とを有する。なお、本実施形態において、滑り板33およびスライド34の数は、それぞれ6個である。
【0036】
図5は、フレーム31、滑り板33およびスライド34の平面図である。図5に示すように、フレーム31は、平面視で略長方形である。フレーム31は、前フレーム311、後フレーム312、右フレーム313、左フレーム314、第1中間フレーム315および第2中間フレーム316を有する。
【0037】
前フレーム311および後フレーム312はそれぞれ、左右方向に伸びる柱状である。また、前フレーム311および後フレーム312は、前後方向に間隔を空けて配置される。
【0038】
右フレーム313および左フレーム314はそれぞれ、前後方向に伸びる。右フレーム313および左フレーム314は、それぞれ、断面形状がL字状の板である。なお、右フレーム313および左フレーム314は柱状の部材であってもよい。右フレーム313および左フレーム314は、左右方向に間隔を空けて配置される。右フレーム313は、前フレーム311の右端部と後フレーム312の右端部とを連結する。左フレーム314は、前フレーム311の左端部と後フレーム312の左端部とを連結する。
【0039】
2つの中間フレーム315,316は、前フレーム311および後フレーム312の間において、左右方向に伸びる。中間フレーム315,316はそれぞれ、右端部が右フレーム313に固定されるとともに、左端部が左フレーム314に固定される。前フレーム311、第1中間フレーム315、第2中間フレーム316および後フレーム312は、前方から後方へ向かって順に、互いに前後方向に間隔を空けて配置される。
【0040】
右フレーム313および左フレーム314にはそれぞれ、前後方向に間隔を空けて、フレーム側固定部310が2つずつ備えられている。本実施形態では、フレーム用固定部310は、外側へ向かって突出するピンである。具体的には、右フレーム313に備えられる2つの固定用ピン310は、右フレーム313の右側の側面からから右側へ突出する。また、左フレーム313に備えられる2つの固定用ピン310は、左フレーム314の左側の側面から左側へ突出する。
【0041】
フレーム固定部32は、フレーム31を台車部20に固定するための固定部材である。フレーム固定部32は、左右一対の第1固定部材321と、左右一対の第2固定部材322とを有する。フレーム固定部32の有する4つの固定部材321,322はそれぞれ、上下に伸びる柱状である。
【0042】
右側の第1固定部材321の上端部と、右側の第2固定部材322の上端部とは、荷台部23の右枠233に固定される。左側の第1固定部材321の上端部と、左側の第2固定部材322の上端部とは、荷台部23の左枠234に固定される。一対の第1固定部材321は、一対の第2固定部材322よりも前方に配置される。
【0043】
第1固定部材321はそれぞれ、荷台部23よりも下方において固定用ピン310を固定可能な固定孔320を3つ有する。第2固定部材322はそれぞれ、荷台部23よりも下方においてフレーム用固定部310を固定可能な固定孔320を3つ有する。各固定部321,322の3つの固定孔320のうちの1つに、フレーム31のフレーム用固定部310がそれぞれ固定される。
【0044】
本実施形態では、ピン状のフレーム固定部310が固定孔320に挿入されることでフレーム31とフレーム固定部32とが固定されたが、本発明はこれに限られない。例えば、フレーム固定部310が貫通孔であり、フレーム31のフレーム固定部310と、フレーム固定部32の固定孔320とをボルト締めで固定することによってフレーム31とフレーム固定部32とを固定してもよい。
【0045】
第1固定部材321の固定孔320は、第2固定部材322の固定孔320よりも上方に配置される。これにより、各固定部321,322の固定孔320に、フレーム31の固定ピン310がそれぞれ固定されると、図1図4に示すように、フレーム31が、前方から後方へ向かうにつれて上から下へと傾斜するように固定される。これにより、フレーム31の前端は、荷台部23の前端よりも前方に配置され、フレーム31の後端は、荷台部23の後端よりも後方に配置されるとともに、フレーム31の中央付近を含む一部が、荷台部23の下方に配置される。
【0046】
なお、上述の通り、本実施形態において、各固定部材321,322の有する固定孔320はそれぞれ3つである。このため、どの固定孔320を選択するかによって、台車部20に対するフレーム31の高さを3段階に調節可能である。すなわち、地面に接する車輪21,22に対するフレーム31の上下方向の位置を3段階に変更可能である。
【0047】
一対の第1固定部材321および一対の第2固定部材322の最も上側の固定孔320は、フレーム31を第1高さに固定する第1固定部を構成する。一対の第1固定部材321および一対の第2固定部材322の中央の固定孔320は、フレーム31を第1高さよりも下方の第2高さに固定する第2固定部を構成する。一対の第1固定部材321および一対の第2固定部材322の最も下側の固定孔320は、フレーム31を第2高さよりも下方の第3高さに固定する第3固定部を構成する。
【0048】
図3に示すように、例えば、苗箱を平地の圃場90に並べる場合、第3固定部を構成する4つの固定孔320にフレーム31の4つの固定ピン310を固定し、フレーム31の高さを最も低い第3高さに固定する。また、図4に示すように、例えば、苗箱を畝91の上に並べる場合、第1固定部を構成する4つの固定孔320にフレーム31の4つの固定ピン310を固定し、フレーム31の高さを最も高い第1高さに固定する。
【0049】
図6は、滑り板33の斜視図である。図6に示すように、滑り板33は、左右方向の中央が上方へV字状に突出するリブ330を有している。このため、フレーム31上に苗箱9が載置された際に、苗箱9の底面は、リブ330のみに接触する。このため、苗箱9と滑り板33との接触面積が小さくなり、苗箱9と滑り板33との間の摩擦を低減できる。その結果、フレーム31の前方から滑り板33上に載置された苗箱9が、後方へとスムーズに滑り降りる。
【0050】
図6に示すように、滑り板33には、フレーム31に固定するための固定孔が複数対設けられている。具体的には、滑り板33は、前フレーム311に固定するための一対の第1固定孔331、第1中間フレーム315に固定するための一対の第2固定孔332、第2中間フレーム316に固定するための一対の第3固定孔333、および、後フレーム312に固定するための一対の第4固定孔334を有する。
【0051】
前フレーム311、第1中間フレーム315および第2中間フレーム316には、左右方向の10箇所に設けられた固定位置P1~P10のそれぞれに、滑り板33を固定するための固定孔319が設けられている。なお、図5中、前フレーム311の固定孔319は図示されていない。滑り板33の固定孔331~333と、フレーム31の固定孔319とは、例えば、ビスとナットによって固定される。後ろフレーム312と、滑り板33の固定孔334とは、固定具318を介して固定される。なお、滑り板33とフレーム31との固定方法は、上記の方法に限られない。したがって、滑り板33は、必ずしもフレーム31に固定するための固定孔を有していなくてもよい。
【0052】
6つの滑り板33は、使用する苗箱9の大きさや、苗箱9を並べる幅等に応じて、左右方向の10箇所の固定位置(右から順に、第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、第4位置P4、第5位置P5、第6位置P6、第7位置P7、第8位置P8、第9位置P9および第10位置P10)のうちの6箇所に固定される。図5の例では、6つの滑り板33は、第1位置P1、第3位置P3、第5位置P5、第6位置P6、第8位置P8および第10位置P10に配置されている。
【0053】
このように、滑り板33を複数の固定位置P1~P10の一部のみに配置することにより、苗箱9と滑り板33との接触面積を必要最小限にすることができる。したがって、苗箱9と滑り板33との間の摩擦を低減できる。
【0054】
また、滑り板33の固定位置を変更できることにより、苗箱9の種類、大きさまたは向きを変更した場合であっても、適切な位置に滑り板33を配置することができる。大規模農家では、ポット苗の育苗と、マット苗の育苗との両方を行っている農家もある。しかしながら、一般的に、ポット苗の苗箱とマット苗の苗箱9は、サイズが異なる。このため、ポット苗の苗箱9を並べる作業と、マット苗の苗箱9を並べる作業とを、同一の苗箱並べ機を用いて行うことはできなかった。この苗箱並べ機1では、滑り板33の固定位置を変更することで、複数種類の苗箱9を並べることができる。
【0055】
図7は、ポット苗の苗箱9を横向きで2列に並べる場合の滑り板33の配置例を示した図である。図8は、ポット苗の苗箱9を縦向きで3列に並べる場合の滑り板33の配置例を示した図である。図9は、ポット苗の苗箱9を縦向きで2列に並べる場合の滑り板33の配置例を示した図である。図10は、ポット苗の苗箱9を横向きで1列、縦向きで1列に並べる場合の滑り板33の配置例を示した図である。
【0056】
図7図10に示すように、各配置における苗箱9の左右方向の幅に応じて、苗箱9を十分支持でき、かつ、接触する滑り板33をできるだけ削減するように、滑り板33の固定位置を変更できる。
【0057】
スライダ34はそれぞれ、滑り板33の後端部および後フレーム312に対して、固定具318を介して左右に延びる回動軸周りに回動可能に取り付けられる。スライダ34は、平板状の部材である。なお、スライダ34は、滑り板33の後端部のみに対して固定されてもよいし、後フレーム312のみに対して固定されてもよい。図3および図4に示すように、苗箱並べ機1の使用時には、圃場90に接触するスライダ34の後端部の上下方向の位置を、圃場90の高さに追従して変動可能である。これにより、スライダ34がフレーム31と圃場90との間を適切に接続し、スライダ34から圃場90へと苗箱9をスムーズに滑り降りさせることができる。
【0058】
スライダ34は、例えば、ステンレス製バネ材等の弾性を有する材料で形成されている。これにより、苗箱並べ機1の使用時に、圃場90に接触するスライダ34の後端部の上下方向の位置を、圃場90の高さにより追従しやすい。したがって、スライダ34がフレーム31と圃場90との間をより適切に接続し、スライダ34から圃場90へと苗箱9をよりスムーズに滑り降りさせることができる。
【0059】
苗箱並べ機1の使用時には、まず、フレーム31の滑り板33上に、前方から苗箱9が載置される。すると、苗箱9が滑り板33およびスライダ34上を前方から後方へと滑り降り、圃場90へと到達する。圃場90に後側の端部が接した苗箱9は、それ以上移動せずにスライダ34上に留まる。
【0060】
その後、作業者が苗箱9の投入を続け、フレーム31の前端部まで苗箱9が載置されると、作業者が把持部25を把持して台車部20を前方へと牽引する。これにより、車輪21,22が回転して苗箱並べ機1が前進する。それに伴い、滑り板33およびスライダ34上に載置された苗箱9がスライダ34の後端部から圃場90上へと滑り降り、圃場90に苗箱9が順次送り出され、圃場90に苗箱9が並べられる。
【0061】
滑り板33およびスライダ34上の苗箱9が減ると、作業者は、台車部20の荷台部23上に積載された苗箱9をフレーム31の前方から滑り板33上に載置する。この苗箱並べ機1では、フレーム31の上方に荷台部23が配置されている。このため、荷台部23とフレーム31の前端部との距離が短く、作業者が苗箱9を搬送する距離が短い。さらに、この苗箱並べ機1では、荷台部23とフレーム31の前端部とが、地面から一定高さに配置される。このため、苗箱9の供給作業を、作業者が腰を屈めること無く行うことができる。したがって、作業者の作業負担が軽減できる。
【0062】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0063】
図11および図12は、一変形例に係る苗箱並べ機1Aの側面図である。この苗箱並べ機1Aでは、上記の実施形態の苗箱並べ機1と、フレーム固定部32Aの形状が異なる。具体的には、フレーム固定部32Aの有する左右一対の第1固定部材321Aと、左右一対の第2固定部材322Aとが、同じ構造を有する。以下では、フレーム固定部32Aの、上記の実施形態と異なる点について説明する。
【0064】
第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aはそれぞれ、上下に伸びる上側部材41Aと、上下に伸びる下側部材42Aとを有する。上側部材41Aは、複数(11個)の第1固定孔420Aを有する。複数の第1固定孔410Aは、上下方向に間隔を空けて配置される。上側部材41Aの上端部は、荷台部23の右枠233または左枠234に固定される。また、下側部材42Aは、2つの第2固定孔421Aと、1つの第3固定孔422Aとを有する。2つの第2固定孔421Aは、下側部材42Aの上部において、上下方向に間隔を空けて配置される。
【0065】
第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aはそれぞれ、上側部材41Aに下側42Aを取り付けて使用でき、また、上側部材41Aのみで使用することもできる。図11に示すように、フレーム31を比較的低い位置に固定する場合には、第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aの双方について、上側部材41に下側部材42を取り付けて使用する。一方、図12に示すように、フレーム31を比較的高い位置に固定する場合には、第1固定部材321Aは上側部材41Aのみで使用し、第2固定部材322Aは上側部材41に下側部材42を取り付けて使用する。また第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aの双方について上側部材41Aのみで使用することで、図12に示すよりも高い位置にフレーム31を固定することもできる。
【0066】
第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aの双方を用いる場合、上側部材41Aと下側部材42Aとは、上側部材41Aの第1固定孔410Aのうちの2つと、下側部材42Aの2つの第2固定孔421Aとをボルト締め等により固定される。そして、下側部材42Aの下部に設けられた第3固定孔422Aと、フレーム31の有するフレーム側固定部310とが固定される。これにより、上側部材41よりも下方において、フレーム31とフレーム固定部32Aとが固定される。
【0067】
第1固定部材321Aのみを用いる場合、上側部材41Aの第1固定孔410Aと、フレーム31の有するフレーム側固定部とが固定される。これにより、下側部材42Aを用いる場合よりも上方において、フレーム31とフレーム固定部32Aとが固定される。
【0068】
図11および図12の例のように、第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aは、複数の部材により構成されていてもよい。このようにすれば、第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aの長さを変更することができる。したがって、第1固定部材321Aおよび第2固定部材322Aの下端部の位置を変更することができる。
【0069】
図11の例では、第2固定部材322Aの下端部を、車輪21,22が接地している圃場90の近くまで下げている。第2固定部材322Aの長さを変更できない場合、第2固定部材322Aを図11と同じ長さにすると、図12の例のように畝91のある圃場90において、畝91に第2固定部材322Aの下端部が接触する虞がある。第2固定部材211Aの長さを変更可能であることにより、第2固定部材322Aが畝91に接触することを防ぐことができる。
【0070】
また、上記実施形態の荷台部23は、枠231,232,233,234と荷受棒235とによって構成される格子状の荷台であったが、本発明はこれに限られない。荷台部は、板状の荷台であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態のフレーム31は、2つの中間フレーム315,316を有したが、本発明はこれに限られない。フレーム31の有する中間フレームは、1つまたは3つ以上であってもよいし、なくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態の滑り板33およびスライダ34は、フレーム31の左右方向の範囲に断続的に配置されたが、本発明はこれに限られない。滑り板33およびスライダ34は、フレーム31の左右方向の全ての範囲に連続して配置されてもよい。また、滑り板33およびスライダ34の一方が、フレーム31の左右方向の範囲に断続的に配置され、滑り板33およびスライダ34の他方が、フレーム31の左右方向の全ての範囲に連続して配置されてもよい。
【0073】
また、苗箱並べ機1の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 苗箱並べ機
9 苗箱
20 台車部
21 前側車輪
22 後側車輪
23 荷台部
30 苗箱並べ部
31 フレーム
32 フレーム固定部
33 滑り板
34 スライダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12