(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068858
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/00 20060101AFI20240514BHJP
A47K 11/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E03D11/00 A
A47K11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179477
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】亀田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】楠目 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【テーマコード(参考)】
2D036
2D039
【Fターム(参考)】
2D036BA03
2D036CA00
2D036CB03
2D036HA03
2D036HA47
2D039AA02
2D039AE00
2D039CB02
2D039DB04
(57)【要約】
【課題】設置面に接触する支持部への前方からの汚れの付着を抑制できる便器装置を提供する。
【解決手段】便器装置1は、便器部10及び台車部20を備える。台車部20は、便器部10を載せて設置面(床面F)上を移動する。台車部20は、配置部41、支持部52,53,54、及び前垂れ部42を有する。配置部41は、便器部10を上面に配置する。支持部52,53,54は、設置面に接触して配置部41を設置面から浮かせた状態で支持する。前垂れ部43は、支持部52,53,54の前方に垂れ下がる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器部と、
前記便器部を載せて設置面上を移動する台車部と、
を備え、
前記台車部は、
前記便器部を上面に配置する配置部と、
前記設置面に接触して前記配置部を前記設置面から浮かせた状態で支持する支持部と、
前記支持部の前方に垂れ下がる前垂れ部と、
を有する、便器装置。
【請求項2】
前記台車部は、前記配置部の側方に設けられ、下面に前記支持部を取り付けた設置部を有し、
前記設置部の下面は、前記配置部の上面よりも上方に位置する、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記台車部の前端部は、平面視において前記便器部の下端外周縁の前端よりも後方に位置する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項4】
前記台車部は、前記前端部に、前記便器部を固定する固定部を有する、請求項3に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器装置を開示している。この便器装置は、設置面としての床面上を移動する。この便器装置は、床面に接触する支持部としての脚部及び車輪を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、脚部及び車輪の前方側は開放されている。このため、脚部及び車輪には、尿等の汚れが前方から付着しやすい。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、設置面に接触する支持部への前方からの汚れの付着を抑制できる便器装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る便器装置は、便器部と、前記便器部を載せて設置面上を移動する台車部と、を備え、前記台車部は、前記便器部を上面に配置する配置部と、前記設置面に接触して前記配置部を前記設置面から浮かせた状態で支持する支持部と、前記支持部の前方に垂れ下がる前垂れ部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便器装置を示す平面図であり、使用位置にある状態を示す。
【
図2】実施形態1に係る便器装置を示す側面図であり、使用位置にある状態を示す。
【
図3】実施形態1に係る便器装置を示す平面図であり、収納位置にある状態を示す。
【
図4】実施形態1に係る便器装置を示す側面図であり、収納位置にある状態を示す。
【
図5】実施形態1に係る便器装置を示す拡大平面図である。
【
図6】実施形態1に係る便器装置を示す拡大側面図である。
【
図7】実施形態1に係る便器装置を示す拡大正面図である。
【
図8】実施形態1に係る便器装置の部分拡大側断面図である。
【
図9】実施形態1に係る台車部を示す平面図である。
【
図10】実施形態1に係る台車部を示す斜視図である。
【
図11】実施形態1に係る台車部を示す正面図である。
【
図12】実施形態1に係る台車部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示に係る便器装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。実施形態1に係る便器装置1は、
図1から
図4に示すように、キャビネット100から出し入れして使用される。便器装置1は、
図1及び
図2に示すキャビネット100から出した使用位置と、
図3及び
図4に示すキャビネット100内に収納した収納位置と、の間で移動自在に設けられている。便器装置1は、便器部10と、台車部20と、排水装置30とを備えている。便器部10は台車部20上に載せられている。台車部20は、便器部10を載せて設置面である床面F上を移動する。排水装置30は、台車部20における便器部10の後方に載せられている。排水装置30は、便器装置1から排出される排水を下水等に送る機能、排水中に含まれる汚物等を破砕する機能等を有する。
【0009】
以下の説明において、使用者とは、排泄目的で便器装置1を使用する者である。操作者とは、便器装置1の使用者のみならず、単に便器装置1の移動操作等の各種操作を行う者も含む。
【0010】
キャビネット100は、例えば、医療施設の病室、介護施設や一般住宅の居室等に設置されるものである。キャビネット100は、室内の壁面に沿うように配置されている。
図1に示すように、キャビネット100の正面に向かって左側の端部には、洗面ボウル101と水栓金具102が設けられている。キャビネット100内には収納スペース103が設けられている。収納スペース103は、便器装置1を使用しないときに便器装置1の全体を収納するためのスペースである。
【0011】
以下の説明において、便器装置1における前後、左右、上下の各方向は、便器部10における後述する便座装置12に通常通りに着座した使用者から見た方向をそれぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向と定義する。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。X軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向をそれぞれ前方、左方、及び上方とする。キャビネット100の方向については、
図1及び
図2に示す使用位置にある状態の便器装置1の方向を基準とする。
【0012】
図1から
図4に示すように、キャビネット100は正面板104を有している。正面板104は、キャビネット100の前面を構成する。正面板104には、キャビネット100の外部と内部の収納スペース103とを連通させる連通口105が形成されている。連通口105は、前方から見た正面視において、左右方向を長手方向とする長方形状である。連通口105の開口領域における下端部は、便器装置1の設置面である床面Fに臨むように開放されている。
図4に示すように、連通口105は、便器装置1をキャビネット100内の収納スペース103に出し入れし得る大きさで開口している。本実施形態の場合、連通口105は、開閉部材106によって開閉自在とされている。連通口105は、例えば、常時開放状態とされてもよい。開閉部材106には、開閉操作時に操作者が把持する取っ手107が取り付けられている。
【0013】
図1から
図4に示すように、正面板104には、手摺り108と、便器装置1用のリモコンRと、ペーパーホルダHと、が取り付けられている。手摺り108は、正面板104のうち連通口105よりも上方の位置に取り付けられている。手摺り108は左右一対設けられている。一対の手摺り108は、使用時に下方に引き下ろし、不使用時に上方へ跳ね上げることが可能である。リモコンRは、正面板104のうちの上部左側端部に取り付けられている。ペーパーホルダHは、正面板104のうち連通口105の左方上部に取り付けられている。
【0014】
図1から
図4に示すように、収納スペース103の内部には回転軸110が設置されている。便器装置1の移動は、この回転軸110周りの回転移動である。回転軸110は、軸線を上下方向に向けて配置されている。収納スペース103の奥行き方向における回転軸110の設置位置は、連通口105に近い位置である。収納スペース103の幅方向における回転軸110の設置位置は、連通口105の開口領域のうちキャビネット100に向かって左側の端部に近い位置である。この位置において、回転軸110は、上端部が正面板104の背面に固定され、下端部が床面Fに固定されている。回転軸110には、便器装置1の後述する軸受部22が相対回転可能に嵌合される。
【0015】
図1から
図4に示すように、収納スペース103内にはロック装置111が設置されている。ロック装置111は、使用位置にある便器装置1を固定状態で保持する。ロック装置111は、操作者がレバー112を操作することによって、レバー112と連動するロックピン113を便器装置1側の後述するロック孔42Aに出し入れする。
【0016】
ロック装置111は、収納スペース103内の床面Fに固定されている。
図1から
図3に示すように、ロック装置111は、収納スペース103の前後方向において、回転軸110と連通口105との間に配置されている。
図1、
図3、及び
図4に示すように、ロック装置111は、収納スペース103の左右方向において、回転軸110と同様に、連通口105の左端部に近い位置に配置されている。
【0017】
図5から
図8に示すように、便器部10は、便器11と、便座装置12と、を有している。便器11は、陶器製の洋風便器である。便器11を上から見たときの平面視形状は砲弾状である。便器11の前端部は略半円弧形をなしている。便器11の前後方向中央部と後端部は、略長方形をなしている。便座装置12は、便器11の上面に載せられている。
【0018】
図6から
図8に示すように、便器11は、周壁部14及び便鉢部15を有している。周壁部14は、便器11の外周面を構成する。周壁部14は、前面から左右の側面に渡って連続する曲面で形成されている。周壁部14は、便器11の上面周縁から下方に向かって連続的に窄んでいる。
図8に示すように、便器11の内部には収容室16が形成される。便鉢部15は、周壁部14の内部に配置されている。収容室16は、便鉢部15よりも下方において、周壁部14によって包囲された空間である。収容室16は、便器11の下面に開放されている。
【0019】
図8に示すように、便器部10は前側固定部18を有している。前側固定部18は、収容室16の内壁に取り付けられている。前側固定部18は、例えば金属板金加工、樹脂成形等によって形成されるブラケットとして構成され得る。前側固定部18は、収容室16前端の内壁から後方に延びる。前側固定部18は、ブチルゴム等の粘着材Pを介して、台車部20の後述する固定部21に粘着固定される。便器部10は、前側固定部18の他、便器11の後端部の左右の側部に設けられた図示しない固定部において、ねじ部材によって台車部20にねじ止めされる。
【0020】
図7に示すように、便器11を前方から見たときの正面視形状は、左右方向の幅が上方に向かって次第に大きくなるような形状である。便器11の左右方向の寸法は、便器11の上端において最大であり、便器11の下端において最小である。
図6に示すように、便器11を右方から見たときの側面視形状は、前後方向の長さが上方に向かって次第に大きくなるような形状である。便器11の前後方向の寸法は、便器11の上端において最大であり、便器11の下端において最小である。側面視において、便器11の上下方向の前端縁は、前方に向かって傾くようにオーバーハングしている。便器11の前端縁の上端は、便器11の前端縁の下端よりも前方に位置している。
図9に示すように、便器11の下端は便器部10の下端に相当する。便器11の下端の外周縁11Aの形状は、便器11の平面視形状と同様、略砲弾形をなしている。
【0021】
台車部20は便器部10を載せる。台車部20は設置面である床面F上を移動する。
図9から
図12に示すように、台車部20は、ベースプレート40と、固定部21と、支持部51,52,53,54と、を有する。ベースプレート40は、配置部41と、設置部42と、前垂れ部43と、排水装置配置部44と、を有する。
【0022】
ベースプレート40は、金属製の板材にプレス、溶接等の加工を施して形成されている。
図9から
図12に示すように、ベースプレート40は、配置部41と、設置部42と、前垂れ部43と、排水装置配置部44と、を有している。
【0023】
配置部41は、便器部10を上面に配置する。
図9及び
図10に示すように、配置部41は、前後方向を長手方向とする長方形状の平面形状をなしている。配置部41の前端部は、ベースプレート40における他の部分よりも前方に突出している。配置部41の前端部の左右の端縁は、便器11の下端の外周縁11Aの形状に沿った平面視曲線状に形成されている。配置部41の前端部の左右の端縁は、便器11の下端の外周縁11Aよりも大きい。配置部41は、前側の左右の端縁を便器11の下端の外周縁11Aの形状に沿わせた形状とし、且つ便器11の下端の外周縁11Aよりも一回り大きくすることによって、意匠性を損なうことなく、陶器製で寸法公差の大きい便器11を確実に受けられるようにしている。
【0024】
図5及び
図6に示すように、配置部41の前端縁41Aの形状は、便器11の下端の外周縁11Aの形状とは異なり、左右方向に延びる平面視直線状をなしている。配置部41の前端縁41Aは、配置部41において最も前方に位置する部分である。配置部41の前端縁41Aは、便器11の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置する。
図7に示すように、配置部41の左右の端縁は、前方から見た正面視における便器部10の左右の端縁よりも内側に位置している。換言すると、便器部10の左右の側部は、上部において配置部41の左右の端縁から側方に張り出している。
【0025】
図9及び
図10に示すように、配置部41の前端縁41Aの後方には切欠部41Bが形成されている。切欠部41Bには、後述する第1支持部51が上下に貫通して配置される。切欠部41Bに対応する配置部41の上面にはブラケット41Cが取り付けられている。ブラケット41Cは、断面ハット形状をなし、配置部41の上面から上方に突出している。ブラケット41Cは、切欠部41Bを上方から覆うように配置部41に取り付けられる。配置部41上に便器11が配置された状態において、ブラケット41Cは、便器11の収容室16内に収まる。ブラケット41Cは、配置部41の前端部を補強する補強部材としても機能する。
【0026】
設置部42は、本開示に係る支持部としての後述する第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54を下面に取り付ける。
図9及び
図10に示すように、設置部42は、配置部41の側方に設けられている。設置部42は、平面視において前後方向を長手方向とする長方形状をなしている。設置部42は左右一対設けられている。左右一対の設置部42は、配置部41の前端部から、配置部41の後端まで、前後方向に延びている。
図5に示すように、設置部42の前端は、便器部10における便座装置12内側の開口縁12Aの後端12Bよりも後方に位置している。したがって、設置部42は、全体として、開口縁12Aよりも後方に位置している。
【0027】
図10から
図12に示すように、設置部42の下面は、配置部41の上面よりも上方に位置する。本実施形態の場合、設置部42は、立壁部45を介して配置部41に連結されている。立壁部45は、配置部41の左右の端部から上方に立ち上がっている。立壁部45は、下端に配置部41を連結し、上端に設置部42を連結している。これによって、設置部42は、配置部41よりも上方に位置する。
図11に示すように、左右の設置部42と、中央の配置部41と、これらを連結する立壁部45と、を合わせたベースプレート40の正面視の形状は、断面逆ハット形状である。
【0028】
前垂れ部43は支持部の前方に垂れ下がる。上述のように、設置部42の下面には、本開示に係る支持部としての第2支持部52、第3支持部53、第4支持部54が取り付けられる。前垂れ部43は、設置部42から垂れ下がることによって、これら第2支持部52、第3支持部53、第4支持部54を前方から覆う。各支持部52,53,54の下端部は、前垂れ部43の下端よりも下方に位置し、床面Fに接触する。
【0029】
本実施形態の場合、前垂れ部43は、設置部42の前端において下方に垂れ下がっている。
図5に示すように、前垂れ部43は、設置部42の前端に設けられたことによって、便器部10における便座装置12内側の開口縁12Aの後端12Bよりも後方に位置する。前垂れ部43は、左右一対の設置部42に対応して左右一対設けられている。各前垂れ部43の左右方向の内縁は、立壁部45に連結されている。前垂れ部43の上下方向の長さは立壁部45の上下方向の長さと同等である。前垂れ部43は、左右方向の内縁が立壁部45に連結されていることによって、設置部42の補強材としても機能する。
【0030】
排水装置配置部44は排水装置30を上面に配置する。
図9、
図10、及び
図12に示すように、排水装置配置部44は、平板状をなし、配置部41及び左右の設置部42の後端から後方に延びている。排水装置配置部44は、配置部41よりも僅かに低い位置に配置されている。
【0031】
図8に示すように、固定部21は、ベースプレート40における配置部41の前端部の上面に取り付けられている。固定部21は、配置部41の前端縁41Aの後方であって、切欠部41Bの前方に取り付けられている。固定部21は、便器部10の前側固定部18と粘着材Pを介して接続される。固定部21は、配置部41の前端縁41Aよりも前方にオーバーハングしている。前側固定部18を固定した状態の固定部21は、便器11の収容室16内に収容された状態となる。固定部21は、本開示に係る台車部の前端部に相当する。
【0032】
支持部51,52,53,54は、台車部20において床面Fに接触する部分である。支持部51,52,53,54は、配置部41を床面Fから浮かせた状態で支持する。本実施形態の場合、支持部51,52,53,54は4つ設けられている。4つの支持部51,52,53,54は、いずれも固定キャスターである。各支持部51,52,53,54は、各々の車輪の軸線を回転軸110の方向に向けて配置されている。
【0033】
図9から
図12に示すように、4つの支持部51,52,53,54は、第1支持部51、第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54である。第1支持部51は、配置部41の前端部であって左右方向の中央位置に配置されている。第1支持部51はブラケット41Cの下面に取り付けられて切欠部41Bを貫通する。第1支持部51の下端部は、配置部41の下面から僅かに下方に突出する。
【0034】
図9に示すように、第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54は、それぞれ第1支持部51よりも後方に配置される。第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54のうち、第2支持部52は、配置部41左側の設置部42の下面に取り付けられている。第2支持部52は、設置部42の後端寄りの位置に配置されている。第3支持部53及び第4支持部54は、配置部41右側の設置部42の下面に取り付けられている。第3支持部53は、設置部42の前端寄りの位置に配置されている。第4支持部54は、設置部42の後端寄りの位置に配置されている。
【0035】
図9から
図12に示すように、本実施形態に係る台車部20は、軸受部22と、グリップ23と、ストッパ24と、を有する。軸受部22、グリップ23、及びストッパ24は、いずれもベースプレート40における設置部42に設けられている。具体的には、軸受部22、グリップ23、及びストッパ24は、いずれも、左右一対の設置部42のうちの一方に纏めて配置されている。
【0036】
本実施形態の場合、一方の設置部42とは右側の設置部42である。便器装置1は、収納スペース103内に収納された場合に、右側面をキャビネット100の手前側に向けて配置される。このため、便器装置1は、グリップ23、及びストッパ24を左右一対の設置部42のうちの右側の設置部42に配置することで、収納状態においても各部の操作性を損なわないようにしている。
【0037】
軸受部22は、回転軸110に対して相対回転可能に嵌合されている。軸受部22は、軸線を上下方向に向けた筒状をなしている。
図12に示すように、軸受部22は、設置部42の後端側に配置されている。前後方向において、軸受部22は、第4支持部54よりも後方の位置に配置されている。
図12に示すように、設置部42における軸受部22の前方にはロック孔42Aが形成されている。ロック孔42Aは、軸受部22の前方であって、第4支持部54よりも後方の位置に形成されている。ロック孔42Aには、便器装置1を使用位置に固定する際、ロック装置111のロックピン113が挿入される。
【0038】
グリップ23は、便器装置1を収納位置と使用位置との間で移動させる際、操作者が移動させるための力を付与する部分である。便器装置1の使用者は、グリップ23に対して力を付与することによって、便器装置1を回転軸110周りに回転移動させることができる。グリップ23は、設置部42の上面から上方に延びている。本実施形態の場合、
図12に示すように、グリップ23は、設置部42の前端部に配置されている。詳細には、グリップ23は、設置部42前端部において、前端の前垂れ部43よりも後方に配置されている。上述のように、前垂れ部43は、便器部10における便座装置12の開口縁12Aの後端12Bよりも後方に位置している。したがって、グリップ23の前後方向の位置も同様に、便座装置12の開口縁12Aの後端12Bよりも後方の位置である。
【0039】
図6に示すように、グリップ23の上端は、便器部10の上端縁よりも低い位置に設定されている。この位置において、グリップ23全体の外形形状は、側面視における便器部10の外形形状からはみ出さないように設定されている。換言すると、グリップ23は、便器部10の側面投影領域内に納まるようにその形状及び位置が設定されている。グリップ23は、丸パイプを逆U字状に湾曲させた形状をなしている。これらグリップ23の配置、形状、構成等は、使用者等の衣服等が引っ掛かるのを回避、抑制すること等を意図したものである。
【0040】
ストッパ24は、回転移動する便器装置1を止め置く機能を有する。
図10及び
図12に示すように、ストッパ24は、設置部42の下面において、第3支持部53と第4支持部54との間に取り付けられている。ストッパ24は足踏み式のストッパである。ストッパ24は、足踏み操作によって、回転軸110周りに回転移動する便器装置1を所望の位置で止め置くことができる。特に、ストッパ24は、収納位置にある状態の便器装置1を止め置くのに有用である。
【0041】
上記構成の便器装置1の作用及び効果について、便器装置1の使用方法と併せて説明する。便器装置1は、回転軸110を中心として水平に回転することによって、
図3及び
図4に示す収納位置と、
図1及び
図2に示す使用位置との間で移動する。便器装置1が収納位置にある状態において、便器装置1の全体は、キャビネット100の収納スペース103内に収容される。この状態において、便器装置1の前後の向きは、キャビネット100の正面板104と平行な向きである。回転軸110とロック装置111は、キャビネット100の内部に配置されている。便器装置1が収納位置にある場合、開閉部材106によって連通口105を閉じると、便器装置1のみならず、回転軸110及びロック装置111も開閉部材106によって覆い隠される。このため、便器装置1を使用しないときには、キャビネット100の美観が良好に保たれる。
【0042】
便器装置1を収納位置から使用位置に移動させる際、操作者は、収納位置にある状態の便器装置1のストッパ24を解除する。ストッパ24は、便器装置1における右側の設置部42に取り付けられている。このため、操作者は、便器装置1が収納スペース103内の収納位置にある状態であっても、キャビネット100の外側から連通口105を通じてストッパ24を良好に操作できる。ストッパ24を解除したら、操作者は、グリップ23を掴んでキャビネット100の外方に向けて引っ張る。これによって、便器装置1は、収納位置から使用位置の方向へ移動する。このとき、固定キャスターである各支持部51,52,53,54が床面F上を転がり、便器装置1の全体が回転軸110を中心として時計回り方向へ水平に回転移動する。
【0043】
便器装置1を収納位置と使用位置との間で移動させる過程では、便器部10が連通口105を通過する。便器装置1が使用位置へ移動すると、便器部10の全体がキャビネット100の外部に配置される。台車部20の後端部と排水装置30は、使用位置と収納位置のいずれにおいても、収納スペース103内に収納された状態で保たれる。使用位置にある状態の便器装置1は、便器部10の前後の向きがキャビネット100の正面板104に対して略直交する方向を向く。この状態において、便器部10は、キャビネット100の正面板104からキャビネット100の正面方向に突出した状態となる。これによって、便器部10の左右両側には、便器装置1を使用する使用者の介助者が立ったり動いたりするためのスペースが確保される。
【0044】
便器装置1を使用位置へ移動させた後、操作者は、ロック装置111のレバー112を操作してロックピン113を台車部20のロック孔42Aに嵌合させる。ロックピン113とロック孔42Aとの嵌合によって、便器装置1は、使用位置に固定される。ロック装置111の操作の前にストッパ24を操作して便器装置1を止め置くことによって、ロック装置111の操作を安定した状態で行うことができる。使用位置に固定された便器装置1は、4つの支持部51,52,53,54において安定的に支持される。以上より、便器装置1を排泄目的で良好に使用可能な状態になる。
【0045】
便器装置1において、使用者が便座装置12に着座して排尿を行い、尿が便器11における便鉢部15外に飛び出す等して尿垂れが発生した場合を想定する。この場合、周壁部14の前端側に付着した尿は、周壁部14を伝って流れ落ちる。便器11は、台車部20の配置部41に載せられている。配置部41の前端縁41Aは、便器11の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置している。このため、便器装置1は、垂れた尿が台車部20における配置部41に付着することがなく、台車部20を清潔に保つことができる。
【0046】
便器部10は、台車部20の前端部側では固定部21に固定されている。この固定部21によって、便器部10は、便器11の下端の外周縁11Aの前端11Bが配置部41の前端縁41Aよりも前方に張り出した構成でありながら、前端部の浮き上がりが好適に防止される。固定部21は、配置部41の前端縁41Aよりも前方に張り出した構成である。しかし、固定部21は、配置部41の前端縁41Aと同様に、便器11の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置している。更に、固定部21は、便器11における収容室16内に収容されている。これらの構成によって、固定部21は、配置部41と同様に尿垂れによる汚れの付着を回避しつつ、台車部20の前端部への付着を回避し得る構成を採用しながら、便器部10の前端部の確実な固定も実現している。
【0047】
便器装置1において、使用者が便器装置1の前方からの立位で排尿を行い、尿が便器11における便鉢部15外に飛び出した場合を想定する。この場合、便鉢部15前方の周壁部14の前端側において発生する尿垂れについては、台車部の前端部である配置部41の前端縁41Aが便器11の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置していることから、配置部41への付着を回避できる。便鉢部15の左右側方に飛び出した尿については、台車部20における設置部42や前垂れ部43側まで到達するおそれがある。しかし、便器装置1は、例え前垂れ部43に尿が付着したとしても、前垂れ部43の後方の支持部である第2支持部52,第3支持部53、及び第4支持部54に尿が付着するのを回避できる。
【0048】
例えば、便器装置において設置面に接触する支持部に尿が付着した場合、便器装置の移動に伴って付着した尿が移動し、設置面が広範に亘って汚れてしまう。便器装置1は、前垂れ部43を有したことによって支持部への尿の付着を回避、抑制できるため、設置面である床面Fの広範に亘って尿が引き延ばされるのを回避、抑制できる。
【0049】
便器装置1において、支持部51,52,53,54のうち、第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54は、それぞれ設置部42に取り付けられている。設置部42は、便器部10が配置される配置部41の左右側方に設けられる。したがって、第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54は、配置部41上の便器部10に対して左右の側方に設けられる。このように、支持部が便器部の側方に配置される構成の場合、便器部の側方に飛散した尿が支持部に付着しやすい。しかし、便器装置1では、前垂れ部43を設けたことによって、少なくとも前方側からの各支持部52,53,54への尿の付着は回避できる。
【0050】
設置部42は、下面に支持部52,53,54を取り付けている。この設置部42の下面は、便器部10が載せられる配置部41の上面よりも上方に位置している。このような構成によれば、便器装置は、配置部の下面に支持部を取り付ける場合よりも容易に、便器装置の設置面からの高さを抑えた構成を実現できる。その一方で、支持部が便器部の側方に位置する構成は、前方から便器部側方に尿が飛散した場合に尿が支持部側に直接的に向かってくるため、支持部に尿が付着し易い。しかし、便器装置1の場合、設置部42の前端において支持部52,53,54の前方に垂れ下がる前垂れ部43を設けたことによって、支持部52,53,54に向けて飛散してくる尿の支持部52,53,54への尿の付着を回避、抑制することができる。このように、前垂れ部43は、便器部10の側方に配置される支持部52,53,54に対する尿の付着を回避するのに特に有効な構成であるといえる。
【0051】
便器装置1をキャビネット100の収納スペース103に収納する際は、便器装置1を使用位置から収納位置へ移動させる。このとき、操作者は、使用位置にある状態の便器装置1において、ストッパ24を解除するとともに、ロック装置111のレバー112を操作してロックピン113のロック孔42Aとの嵌合を解除する。操作者は、グリップ23に対し、便器装置1を収納位置まで移動させる力を付与する。便器装置1を収納位置まで移動させたら、操作者は、ストッパ24を再度操作し、便器装置1を収納位置において止め置く。この状態において、操作者は、開閉部材106を閉じる。以上のように、便器装置1の収納が完了する。キャビネット100内の収納スペース103には、収納位置にある便器装置1のみならず、回転軸110及びロック装置111も配置されている。開閉部材106を閉じることによって、便器装置1、回転軸110、及びロック装置111は、キャビネット100の外部から視認不能となる。このため、便器装置1は、キャビネット100に収納した状態での意匠性に優れる。
【0052】
以上のように、実施形態1に係る便器装置1は、便器部10及び台車部20を備えている。台車部20は、便器部10を載せて設置面である床面F上を移動する。台車部20は、配置部41と、本開示に係る支持部としての第2支持部52、第3支持部53、及び第4支持部54と、前垂れ部43と、を有する。配置部41は、便器部10を上面に配置する。支持部52,53,54は、設置面である床面Fに接触して配置部41を床面Fから浮かせた状態で支持する。前垂れ部43は、支持部52,53,54の前方に垂れ下がる。
【0053】
このような構成によって、便器装置1は、支持部52,53,54への前方からの汚れの付着を抑制できる。
【0054】
便器装置1において、台車部20は設置部42を有する。設置部42は、配置部41の側方に設けられ、下面に支持部52,53,54を取り付けている。設置部42の下面は、配置部41の上面よりも上方に位置する。このため、便器装置1は、便器部10の高さを抑えた構成を実現することが容易である。便器装置1は、便器部10側方に配置される支持部52,53,54であっても、前垂れ部43によって尿等の汚れの付着を有効に回避できる。
【0055】
便器装置1において、台車部20の前端部は、平面視において、便器部10の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置する。このため、便器装置1は、便器部10の前部において尿垂れが生じた場合でも、尿の台車部20への付着を回避、抑制することができる。
【0056】
便器装置1において、台車部20は、前端部に、便器部10を固定する固定部21を有する。このため、便器装置1は、台車部20への汚れの付着を抑制できる構成としての台車部20の前端部は、平面視において、便器部10の下端の外周縁11Aの前端11Bよりも後方に位置させる構成であっても、便器部10の台車部20への確実な固定を実現できる。
【0057】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0058】
本開示に係る便器装置の移動形態は、上記実施形態において例示した回転軸周りに回転移動する形態に限らず、例えば、前後方向、左右方向等に直線移動する形態であってもよい。便器装置の移動形態は、例えば自在キャスター等を用いて、設置面上の任意の位置に任意の経路で移動する形態であってもよい。
【0059】
本開示に係る便器部の構成等は上記実施形態に限定されない。
【0060】
本開示に係る台車部の構成等は、本開示に係る配置部、支持部、及び前垂れ部を有する限り特に限定されない。
【0061】
支持部の個数、配置等は上記実施形態に限定されない。支持部は、上記実施形態において例示したキャスターに限定されず、例えば、設置面に接触するパッド等を有する固定脚であってもよい。台車部が支持部を複数有する場合、複数の支持部のうちの少なくとも1つを固定脚とし、他の支持部をキャスターとしてもよい。複数の支持部は、固定脚のみで構成されてもよい。
【0062】
前垂れ部は、例えば、上記実施形態に係る第1支持部51のような支持部、すなわち、本開示に係る設置部の下面以外の部分に取り付けられる支持部の前方に垂れ下がっていてもよい。
【0063】
台車部が設置部を有することは必須ではない。台車部が設置部を有する場合、設置部の構成は上記実施形態に限定されない。設置部の下面は、例えば、配置部の上面と同等以下の高さ位置にあってもよい。
【0064】
台車部の前端部が便器部の下端外周縁の前端よりも後方にあることは必須ではない。台車部の前端部が便器部の下端外周縁の前端よりも後方にある場合、その形状等は上記実施形態に限定されない。台車部の前端部は、例えば、上記実施形態において例示した平面視直線状に形成される形態の他、便器部の下端外周縁の形状に沿って便器部の下端外周縁の内側で曲線状をなす形態等であることができる。
【0065】
台車部が前端部に固定部を有することは必須ではない。台車部は、例えば、前端部よりも後方においてのみ便器部を固定していてもよい。台車部は、例えば、便器部を固定することなく単に載せているのみであってもよい。台車部の前端部において便器部を固定する形態としては、上記実施形態のようなブチルゴム等の粘着材による固定に限定されず、例えば、ビス、ボルト等の締結手段による固定、面ファスナーによる固定、ピン等の突起状部を有する部材と、孔部や凹部等を有する部材との嵌合による固定等であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…便器装置、10…便器部、11A…便器の下端の外周縁(便器部の下端の外周縁)、11B…便器の下端の外周縁の前端(便器部の下端の外周縁の前端)、20…台車部、21…固定部、41…配置部、41A…配置部の前端縁(台車部の前端部)、42…設置部、43…前垂れ部、51,52,53,54…支持部(51…第1支持部、52…第2支持部、53…第3支持部、54…第4支持部)、F…床面(設置面)