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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068859
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/12 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B60C19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179478
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】光延 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA39
3D131BA01
3D131BB01
3D131BB16
3D131BC05
3D131BC22
3D131BC23
3D131BC55
3D131CB13
3D131DA17
3D131DA34
3D131DA54
3D131DA66
3D131DA67
3D131GA17
3D131HA38
3D131HA45
3D131KA02
(57)【要約】
【課題】質量増加を抑えつつ、トレッドとともにサイドウォールのパンク防止機能を十分に確保できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア11およびビードフィラー12を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されるトレッド30と、一対のビード10の間に配置されるカーカスプライ50と、カーカスプライ50の子午線方向の法線方向外側に配置される不織布シート70と、を備え、不織布シート70は、少なくとも一対のビード10におけるビードフィラー12の間にわたって配置されるとともに、ビードフィラー12とタイヤ軸方向で重なっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアおよびビードフィラーを有する一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されるトレッドと、
前記一対のビードの間に配置されるカーカスプライと、
前記カーカスプライの子午線方向の法線方向外側に配置される不織布シートと、を備え、
前記不織布シートは、少なくとも前記一対のビードにおける前記ビードフィラーの間にわたって配置されるとともに、当該ビードフィラーとタイヤ軸方向で重なっている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記不織布シートは、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からビードフィラーのタイヤ径方向長さの70%以上の部分に重なっている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードはリムラインを有し、
前記不織布シートのタイヤ径方向内側端は、前記リムラインからタイヤ径方向内側に5mm以上の位置にある、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記不織布シートの厚みは3mm以上である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記不織布シートの目付量は700g/m以上である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記不織布シートの 繊維の配向はランダムである、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
パンクの対策が施された空気入りタイヤが種々提案されている。例えば、サイドウォールに配置した補強ゴム層により、内圧が低下してもタイヤの偏平化を抑えてある程度の距離を走行可能としたランフラットタイヤが知られている。また、トレッド内面に塗布したシーラント材によってタイヤに生じた孔が自動的に塞がれて内圧低下を防止するシーラント材付き空気入りタイヤも知られている。しかしながら、ランフラットタイヤは、パンクが生じた後の走行距離に限界がある点や、質量増加といったデメリットがある。また、シーラント材付き空気入りタイヤは、シーラント材が配置されていないサイドウォールに対する外傷には対応できない。一方、不織布を用いたパンク防止部材は、質量増加が抑えられる点でメリットがあり、例えば、不織布とシーラント材との複合材をパンク防止部材としてタイヤ内に設けた空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献2】特開2005-1547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される不織布を用いたパンク防止部材は、タイヤの骨格を構成するカーカスプライの内側に配置されてタイヤ内を覆うように設けられている。このため、特にベルトを備えないサイドウォールが外傷を受けると、その外傷がカーカスプライに影響しやすいという問題を有している。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、質量増加を抑えつつ、トレッドとともにサイドウォールのパンク防止機能を十分に確保できる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコアおよびビードフィラーを有する一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されるトレッドと、前記一対のビードの間に配置されるカーカスプライと、前記カーカスプライの子午線方向の法線方向外側に配置される不織布シートと、を備え、前記不織布シートは、少なくとも前記一対のビードにおける前記ビードフィラーの間にわたって配置されるとともに、当該ビードフィラーとタイヤ軸方向で重なっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、質量増加を抑えつつ、トレッドとともにサイドウォールのパンク防止機能を十分に確保できる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ軸方向の半断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る車両用の空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ軸方向の断面を示している。
【0010】
図1の断面図は、タイヤ1を図示しない正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤ軸方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、およびETRTOであれば”Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、または、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0011】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ軸方向の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の半断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面であり、かつ、タイヤ軸方向中心に位置する面である。
【0012】
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ軸方向Xとして図示している。タイヤ軸方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ軸方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、サイドウォール20からトレッド30に移行する部分であるショルダー40と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ50と、カーカスプライ50のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー60と、カーカスプライ50のタイヤ外表面側に配置された不織布シート70と、を備えている。
【0015】
一対のビード10は、タイヤ軸方向両側、かつ、タイヤ径方向内側の端に配置されている。ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、を有している。
【0016】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側の面に接合されている。
【0017】
チェーハー13は、ビードコア11およびビードフィラー12を囲むカーカスプライ50の外側をさらに囲んでいる。チェーハー13は、タイヤ1が装着されるリムの内面に接触する。
【0018】
サイドウォール20は、カーカスプライ50のタイヤ軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含んでいる。サイドウォールゴム21は、タイヤ1のタイヤ周方向外側の側面を構成する。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側端21cは、タイヤ径方向内側に延びてビード10のチェーハー13のタイヤ軸方向外側の面を覆っている。サイドウォールゴム21のビード10を覆う部分におけるタイヤ軸方向外側の外表面には、タイヤ周方向に沿ったリムライン21aが形成されている。リムライン21aは、リムのエッジを合致させる際の目印である。リムのエッジが全周にわたりリムライン21aに合致した状態で、タイヤ1がリムに正しく装着されたと判断される。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0019】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ35と、トレッドゴム36と、を備えている。ベルト31は、カーカスプライ50のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ35は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。なお、キャッププライ35は2枚あってもよい。あるいは、キャッププライ35を有さない構成であってもよい。キャッププライ35を有さない場合、ベルト31のタイヤ軸方向の端をタイヤ外表面側から押さえるエッジプライを配置してよい。エッジプライは1枚であってもよいし、2枚であってもよい。
【0020】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト32と、内側ベルト32のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト33と、を備えた二層構造である。内側ベルト32および外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0021】
内側ベルト32は、外側ベルト33よりも幅広である。したがって、内側ベルト32のタイヤ軸方向外側端32aは、外側ベルト33のタイヤ軸方向外側端33aよりもタイヤ軸方向外側に位置している。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は二層構造に限らず、一層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0022】
キャッププライ35は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ35は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ35のタイヤ軸方向外側端35aは、内側ベルト32のタイヤ軸方向外側端32aよりもタイヤ軸方向外側に位置している。キャッププライ35は、ベルト31全体をタイヤ外表面側から覆っている。実施形態のキャッププライ35は一層であるが、二層以上の構造であってもよい。キャッププライ35を設けることにより、耐久性の向上や、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0023】
ベルト31およびキャッププライ35のタイヤ軸方向の端に対応する部分のタイヤ内腔側には、パッド材39が配置されている。パッド材39は、トレッド30のタイヤ軸方向の端からショルダー40にわたる比較的小さい領域に配置されている。パッド材39は、内側ベルト32の一部、キャッププライ35の一部およびトレッドゴム36の一部と、サイドウォールゴム21の一部および後述する不織布シート70の一部と、の間に挟まれている。
【0024】
トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、トレッド30の外表面であるトレッド面37を構成する部材である。トレッドゴム36のタイヤ軸方向外側端36bは、キャッププライ35のタイヤ軸方向外側端35aを越えてタイヤ径方向内側に湾曲し、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端21bを覆っている。トレッドゴム36のタイヤ軸方向外側端36bがサイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端21bを覆う部分は、ショルダー40を構成している。
【0025】
トレッド面37には、周方向に延びる主溝38が形成されている。図1では1つの主溝38を示しているが、主溝38はタイヤ軸方向に間隔をおいて複数が形成されている。
【0026】
カーカスプライ50は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ50は、後述するインナーライナー60と不織布シート70との間に挟まれた状態でタイヤ1の内部に埋設されている。
【0027】
カーカスプライ50は、プライ本体部50Aと、左右一対のプライ折り返し部50Bと、左右一対のプライ屈曲部50Cと、を有する。プライ本体部50Aは、一方のビード10のビードコア11のタイヤ軸方向内側から、一方のサイドウォール20、一方のショルダー40、トレッド30、他方のショルダー40および他方のサイドウォール20を経て、他方のビード10のビードコア11のタイヤ軸方向内側まで延在する部分である。
【0028】
プライ折り返し部50Bは、プライ本体部50Aのタイヤ径方向内側端からビードコア11周りに折り返されることにより、ビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ軸方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている。タイヤ径方向において、プライ折り返し部50Bの折り返し端51bは、タイヤ1の最大幅付近に位置している。プライ折り返し部50Bの、ビードフィラー12のタイヤ径方向外側端12aよりもタイヤ径方向外側の部分は、プライ本体部50Aのタイヤ軸方向外側に重なっている。
【0029】
プライ屈曲部50Cは、プライ本体部50Aからビードコア11周りにU字状に屈曲し、プライ折り返し部50Bにつながる部分である。プライ屈曲部50Cは、ビードコア11のタイヤ軸方向内側に接触している。プライ本体部50Aとプライ折り返し部50Bとは、プライ屈曲部50Cを介して連続している。
【0030】
カーカスプライ50は、並列された複数のプライコードをゴムで被覆した構成を有する。プライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成され、タイヤ1の骨格として機能する。
【0031】
なお、実施形態のカーカスプライ50は一層構造であるが、カーカスプライ50は、二層あるいはそれ以上の複数層の構造を有するものであってもよい。しかしながら一層構造であると、軽量化が図れるため好ましい。
【0032】
上述したビード10のチェーハー13は、プライ屈曲部50Cを含むカーカスプライ50のタイヤ径方向内側端を取り囲んでいる。
【0033】
インナーライナー60は、タイヤ1の子午線方向においてカーカスプライ50の法線方向内側に配置され、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー60は、トレッド30、ショルダー40およびサイドウォール20にわたる領域では、カーカスプライ50の内面を覆っている。また、インナーライナー60は、サイドウォール20からビード10にわたる領域では、カーカスプライ50およびチェーハー13の内面を覆っている。したがってインナーライナー60は、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー60は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0034】
ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー60よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253-1-2012 3.2 デュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータを用いて、23℃の雰囲気下で測定される。
【0035】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。
【0036】
不織布シート70は、不織布を所定厚さのシート状に成形したものである。不織布シート70は、タイヤ1の子午線方向においてカーカスプライ50の法線方向外側に配置されている。実施形態の不織布シート70は、一対のビード10におけるビードフィラー12の間にわたって配置されている。すなわち不織布シート70は、一方のビード10のビードフィラー12のタイヤ軸方向外側から、一方のサイドウォール20、一方のショルダー40、トレッド30、他方のショルダー40および他方のサイドウォール20を経て、他方のビードフィラー12のタイヤ軸方向外側まで延在する態様で、タイヤ1内に埋設されている。不織布シート70は、タイヤ1の対外傷性を向上させてパンクの発生を抑制する機能を果たす。例えば、トレッド30やサイドウォール20に釘が刺さった場合、釘の侵入が不織布シート70でとどまり、タイヤ内腔までの釘の貫通が防がれてパンクが防止される。
【0037】
不織布シート70の、ビードフィラー12に対応する部分は、カーカスプライ50のプライ折り返し部50Bの一部およびチェーハー13のタイヤ軸方向外側の部分の一部と、サイドウォールゴム21と、の間に挟まれている。すなわち、不織布シート70の、ビードフィラー12に対応する部分は、ビードフィラー12のタイヤ軸方向外側の面12cに、カーカスプライ50のプライ折り返し部50Bの一部およびチェーハー13のタイヤ軸方向外側の部分の一部を挟んで、タイヤ軸方向で重なっている。
【0038】
不織布シート70の、サイドウォール20に対応する部分は、カーカスプライ50のプライ折り返し部50Bの一部およびプライ本体部50Aの一部と、サイドウォールゴム21と、の間に挟まれている。不織布シート70の、ショルダー40に対応する部分は、カーカスプライ50のプライ本体部50Aの一部と、サイドウォールゴム21およびパッド材39の一部と、の間に挟まれている。不織布シート70の、トレッド30に対応する部分は、カーカスプライ50のプライ本体部50Aの一部と、パッド材39の一部および内側ベルト32と、の間に挟まれている。
【0039】
さらに、不織布シート70の、ビードフィラー12に対応する部分は、ビードフィラー12のタイヤ径方向外側端12aからビードフィラー12のタイヤ径方向長さの70%以上の部分にタイヤ軸方向で重なっていることが好ましい。すなわち、図1に示すように、ビードフィラー12の、タイヤ径方向内側端12bからタイヤ径方向外側端12aまでのタイヤ径方向長さL1に対して、不織布シート70がビードフィラー12にタイヤ軸方向で重なるタイヤ径方向の長さ部分L2は、70%以上であることが好ましい。
【0040】
実施形態の不織布シート70のタイヤ径方向内側端70aは、リムライン21aからタイヤ径方向内側に5mm以上の位置にあることが好ましい。すなわち、図1に示すように、タイヤ径方向における不織布シート70のタイヤ径方向内側端70aとリムライン21aとの間の距離L3は、5mm以上であることが好ましい。
【0041】
実施形態の不織布シート70の厚みは、3mm以上であることが好ましい。なお、不織布シート70の厚みは、3mm以上9mm以下であれば、より好ましい。これは、厚みが3mmを下回ると、外傷を防御する耐外傷性が不十分になる可能性があり、9mmを上回ると過度な質量増加を招くからである。不織布シート70の厚みが3mm以上9mm以下の場合に、耐外傷性向上と質量増加抑制との両立が図られる。なお、不織布シート70の厚みは、全領域において3mm以上であってよいが、リムライン21aよりもタイヤ径方向外側の部分の厚みが3mm以上であればよく、リムライン21aよりもタイヤ径方向内側の端の厚みは3mmを下回っていてもよい。これは、リム装着時においてはリムライン21aよりもタイヤ径方向内側の部分はリムで保護されタイヤ1は外傷を受けないためであり、換言すれば、リム装着時に外部に露出する部分に厚みが3mm以上の不織布シート70が配置されることが好ましい。
【0042】
実施形態の不織布シート70は、トレッド30、ショルダー40およびサイドウォール20に対応する部分の厚みはほぼ一定であり、ビードフィラー12に対応する部分が、タイヤ径方向内側に向かって薄くなる先細り形状となっている。ここで、不織布シート70のビードフィラー12に対応する部分において、ビードフィラー12のタイヤ径方向外側端12aからリムライン21aにわたる部分の厚みは3mm以上あればよく、ビードフィラー12のリムライン21aからタイヤ径方向内側の部分は3mmを下回っていてよい。
【0043】
実施形態の不織布シート70は、その目付量(単位面積当たりの質量)が700g/m以上であることが好ましい。
【0044】
不織布シート70は、タイヤ1に埋設された状態、すなわち、当該不織布シート70を含む上述したタイヤ1の構成部材であるビード10、サイドウォール20、トレッド30、ショルダー40、カーカスプライ50およびインナーライナー60を成型した生タイヤを加硫してタイヤ1に製造した状態で、上述した厚みおよび目付量を備える。加硫前の不織布シート70の厚みは、例えば7mm前後の厚みを有するが、加硫時の加圧により圧縮されて3mm以上の厚みとされる。これにより厚み方向に繊維が高密度化して強度が増し、高い耐外傷性を有するものとなる。なお、目付量は、加硫前後で変化はないか、あっても微小な変化量であり、加硫後のタイヤ1の状態で700g/m以上あればよい。
【0045】
実施形態の不織布シート70はフェルト状のシートであって、不織布を構成する繊維は配向性を有さず、繊維の配向がランダムである。不織布シート70の繊維の配向がランダムであると、配向性を有するものに比べて繊維間の隙間が詰まった強度の高いシートになるので好ましい。
【0046】
なお、実施形態の不織布シート70を構成する不織布の材質としては、例えば、ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリビニルアルコール系繊維、炭素繊維等の有機繊維、あるいは金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維が挙げられるが、これらに限定されない。なお、軽量化の観点からは有機繊維製の不織布が好ましく、低コスト化および強度の観点からは有機繊維の中でもポリエステル繊維が好ましい。
【0047】
不織布シート70は、従来公知の製造方法により製造される。例えば、繊維をシート状に成形する方法としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法等が挙げられ、繊維の結合方法としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
上述した実施形態の構成を備えるタイヤ1の車種別の用途は限定されないが、例えば、ロードインデックスに対する負荷率が60%以下の使用条件下で使用されるタイヤとして好適とされる。そのような車両としては、例えば、タイヤサイズが小さい(例えば、タイヤ外径:550mm以下、リム径:14インチ以下等)ゴルフカート等の、軽量、かつ低速走行する小型モビリティ用タイヤが挙げられる。
【0049】
以上説明した実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0050】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11およびビードフィラー12を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されるトレッド30と、一対のビード10の間に配置されるカーカスプライ50と、カーカスプライ50の子午線方向の法線方向外側に配置される不織布シート70と、を備え、不織布シート70は、少なくとも一対のビード10におけるビードフィラー12の間にわたって配置されるとともに、ビードフィラー12とタイヤ軸方向で重なっている。
【0051】
実施形態に係るタイヤ1によれば、トレッド30やサイドウォール20に例えば釘が刺さった場合、その釘の侵入を不織布シート70でとどまらせ、タイヤ内腔までの釘の貫通を防止することが可能である。すなわち実施形態のタイヤ1は、不織布シート70によって耐外傷性が強化され、パンク防止機能を有する。不織布シート70がカーカスプライ50の子午線方向の法線方向外側に配置されていることにより、カーカスプライ50は不織布シート70に防御されて外傷を受けにくくなる。このため、外傷を受けてもカーカスプライ50の機能は維持され、タイヤ1による正常な走行を続行することが可能となる。このようなパンク防止機能は、トレッド30およびショルダー40の部分では勿論のこと、サイドウォール20の部分でも同様に果たされる。
【0052】
すなわちサイドウォール20にもカーカスプライ50の子午線方向の法線方向外側に不織布シート70が配置されており、さらに不織布シート70は、サイドウォール20からビードフィラー12まで到達してビードフィラー12のタイヤ軸方向外側の面12cにタイヤ軸方向で重なっている。これにより、サイドウォール20においては、不織布シート70とビードフィラー12との間が空く部分は存在せず、サイドウォール20のどこの部分でも不織布シート70によって耐外傷性が強化されている。これにより、例えば走行中にタイヤ1が縁石にこすったり乗り上げたりしてサイドウォール20が外傷を受けても、サイドウォール20に配置された不織布シート70によってパンクを抑えることができる。また、不織布シート70は、例えばランフラットタイヤが備える補強ゴム層よりも軽量であり、質量増加が抑えられる。したがって実施形態に係るタイヤ1によれば、トレッド30とともにサイドウォール20のパンク防止機能を十分に確保できる。
【0053】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、不織布シート70は、ビードフィラー12のタイヤ径方向外側端12aからビードフィラー12のタイヤ径方向長さの70%以上の部分に重なっていることが好ましい。
【0054】
これにより、不織布シート70の、ビードフィラー12に対してタイヤ軸方向で重なるタイヤ径方向長さの部分が十分に確保され、サイドウォール20の耐外傷性が向上する。
【0055】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、ビード10はリムライン21aを有し、不織布シート70のタイヤ径方向内側端70aは、リムライン21aからタイヤ径方向内側に5mm以上の位置にあることが好ましい。
【0056】
これにより、不織布シート70は、タイヤ1のリム装着時において、タイヤ1の外部に露出する部分の全領域を覆う状態に配置され、車両装着時において、露出する外表面全面が十分な耐外傷性を有し、パンク防止機能が向上する。
【0057】
(4)実施形態に係るタイヤ1においては、不織布シート70の厚みは3mm以上であることが好ましい。これにより、不織布シート70による耐外傷性が十分に確保され、パンク防止機能が向上する。
【0058】
(5)実施形態に係るタイヤ1においては、不織布シート70の目付量は700g/m以上であることが好ましい。これにより、不織布シート70による耐外傷性が十分に確保され、パンク防止機能が向上する。
【0059】
(6)実施形態に係るタイヤ1においては、不織布シート70の 繊維の配向はランダムであることが好ましい。これにより、不織布シート70による耐外傷性が十分に確保され、パンク防止機能が向上する。
【0060】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
11 ビードコア
12 ビードフィラー
12a ビードフィラーのタイヤ径方向外側端
12c ビードフィラーのタイヤ軸方向外側の面
20 サイドウォール
21a リムライン
30 トレッド
50 カーカスプライ
70 不織布シート
70a 不織布シートのタイヤ径方向内側端
図1