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特開2024-68864ホームドア装置、ホームドア装置の診断方法、ホームドア装置の診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068864
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ホームドア装置、ホームドア装置の診断方法、ホームドア装置の診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240514BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B61B1/02
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179486
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 昌兵
【テーマコード(参考)】
2G036
3D101
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA46
2G036BB02
3D101AA05
3D101AA12
3D101AA24
3D101AB08
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来のホームドア装置の問題点に鑑みなされたもので、簡易な構成により平滑コンデンサの劣化状態を判断可能なホームドア装置の技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ホームドア装置100は、プラットホーム上に設置された扉12を開閉駆動する駆動部4と、駆動部4に電力供給する平滑コンデンサ24と、平滑コンデンサ24の電圧値を経時的に記憶する記憶部32と、記憶部32の情報に基づいて平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断する判断部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム上に設置された扉を開閉駆動する駆動部と、
前記駆動部に電力供給する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの電圧値を経時的に記憶する記憶部と、
前記記憶部の記憶情報を用いて前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断する判断部と、
を備えるホームドア装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記駆動部が駆動していないときの前記平滑コンデンサの電圧値の変化の具合が所定の条件を満たす場合に前記平滑コンデンサが劣化していると判断する、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記平滑コンデンサの電圧値の変化の割合が閾値以上であることである、請求項2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記平滑コンデンサへの給電が停止されたときに劣化しているか否かを判断する、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記平滑コンデンサの周辺温度に関する温度情報を取得する温度情報取得部をさらに備え、
前記判断部は、前記温度情報取得部で取得された前記温度情報を加味して前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断する、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記判断部で前記平滑コンデンサが劣化していると判断されたときに外部に報知する報知部をさらに備える、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記平滑コンデンサから給電される電力を用いて当該平滑コンデンサから供給される電圧値を経時的に記憶する、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項8】
プラットホーム上に設置された扉を開閉駆動する駆動部に電力供給する平滑コンデンサの電圧値を経時的に記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された記憶情報を用いて前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断するステップと、
を含む、ホームドア装置の診断方法。
【請求項9】
プラットホーム上に設置された扉を開閉駆動する駆動部に電力供給する平滑コンデンサの電圧値を経時的に記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された記憶情報を用いて前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断するステップと、
をコンピュータに実行させる、ホームドア装置の診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドア装置、ホームドア装置の診断方法およびホームドア装置の診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
平滑コンデンサの劣化状態を検知する装置が知られている。例えば、特許文献1には、平滑コンデンサの劣化状態を検知する機能を有する電力変換装置が記載されている。この装置は、共通の直流電圧部に接続された複数の電力変換器を有し、各電力変換器は平滑コンデンサを有している。この装置では、複数の電力変換器のいずれかの平滑コンデンサから他の電力変換器の平滑コンデンサに流れる電流を解析することで平滑コンデンサの劣化状態を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-191446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホームドア装置は重要なインフラストラクチャであり、稼働中の故障等は極力避けることが望ましい。このため、装置の構成部品の劣化状態を定期的に監視し、故障前に劣化した部品を交換することが考えられる。
【0005】
一方、ホームドア装置は、既設のプラットホームに設置される場合が多く、この場合、ホームドア装置によりプラットホームが狭くなるため、ホームドア装置の薄型化は重要である。したがって、構成部品の劣化状態を監視するための装置も極力小さいことが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載の装置は、複数の電力変換器について、いずれかの電力変換器の平滑コンデンサから他の電力変換器の平滑コンデンサに流れる電流を解析するものであり、平滑コンデンサの劣化検知のための追加部品が多くなる。追加部品が増えると回路基板が大型化し、薄型化が求められるホームドア装置の制御盤への収容が難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により平滑コンデンサの劣化状態を判断可能なホームドア装置の技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホームドア装置は、プラットホーム上に設置された扉を開閉駆動する駆動部と、駆動部に電力供給する平滑コンデンサと、平滑コンデンサの電圧値を経時的に記憶する記憶部と、記憶部の記憶情報を用いて平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断する判断部と、を備える。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成により平滑コンデンサの劣化状態を判断可能なホームドア装置の技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のホームドア装置を概略的に示す斜視図である。
図2図1のホームドア装置の構成を示すブロック図である。
図3図1のホームドア装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】平滑コンデンサの電圧値の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0012】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0013】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
本発明のある態様のホームドア装置は、プラットホーム上に設置された扉を開閉駆動する駆動部と、前記駆動部に電力供給する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの電圧値を経時的に記憶する記憶部と、前記記憶部の記憶情報を用いて前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断する判断部と、を備える。
【0015】
この構成によれば、平滑コンデンサの劣化状態を単独のホームドア装置の中で判断できるようになり、装置の小型化に有利である。発明者は、ホームドア装置の電子部品のうち平滑コンデンサが早期に劣化しやすいという知見を得ており、平滑コンデンサの劣化状態を把握することにより、ホームドア装置の電子部品の寿命(メンテナンスすべき時期)を推定できる。
【0016】
一例として、前記判断部は、前記駆動部が駆動していないときの前記平滑コンデンサの電圧値の変化の具合が所定の条件を満たす場合に前記平滑コンデンサが劣化していると判断する。この場合、駆動部が非駆動時で大きな消費電流がない状態で判断するため、駆動部の消費電流の影響を殆ど受けずに劣化判断できる。
【0017】
一例として、前記所定の条件は、前記平滑コンデンサの電圧値の変化の割合が閾値以上であることである。この場合、劣化判断のプロセスを簡易な構成で実現できる。このため、記憶部や判断部を小規模なCPUやメモリで実現できる。
【0018】
一例として、前記判断部は、前記平滑コンデンサへの給電が停止されたときに劣化しているか否かを判断する。この場合、給電がない状態で平滑コンデンサの劣化判断ができるため、平滑コンデンサの電圧値の変化を簡易な構成で容易に取得できる。
【0019】
一例として、ホームドア装置は、前記平滑コンデンサの周辺温度に関する温度情報を取得する温度情報取得部をさらに備える。前記判断部は、前記温度情報取得部で取得された前記温度情報を加味して前記平滑コンデンサが劣化しているか否かを判断する。平滑コンデンサは高温で劣化が早く、短期間で故障に至る場合があるところ、温度情報を加味して劣化判断することで、例えば、周囲温度が高いときに判断条件を厳しくすることが可能になる。
【0020】
一例として、ホームドア装置は、前記判断部で前記平滑コンデンサが劣化していると判断されたときに外部に報知する報知部をさらに備える。この場合、平滑コンデンサが劣化していることを外部に認識させることができる。
【0021】
一例として、前記記憶部は、前記平滑コンデンサから給電される電力を用いて当該平滑コンデンサから供給される電圧値を経時的に記憶する。この場合、別の電源や別のマイクロプロセッサ等の検出装置を用いることなく、平滑コンデンサの劣化判定をすることができる。
【0022】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0023】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るホームドア装置100を説明する。図1は、ホームドア装置100を概略的に示す斜視図である。この図は、装置の一部を破断して内部を示している。図2は、ホームドア装置100の構成を示すブロック図である。
【0024】
ホームドア装置100は、鉄道の駅のプラットホーム60において、乗降口62を開閉するための自動ドア装置として複数設けられる。ホームドア装置100は、戸袋部10と、戸袋部10から左右方向に進退する扉12とを有する。ホームドア装置100は、プラットホーム60上に設置された扉12が戸袋部10から進出すると乗降口62を閉じ、扉12が戸袋部10に引き込まれると乗降口62を開く。
【0025】
実施形態のホームドア装置100は、電力供給部2と、情報処理部3と、駆動部4と、を備える。電力供給部2は、駆動部4および情報処理部3に電力を供給する。駆動部4は、扉12を開閉駆動するために、モータ(不図示)により扉12を進退駆動するドアエンジンであり、例えば、戸袋部10に設けられる。情報処理部3は、総合制御盤50からの開閉指令信号に基づいて、扉12を開閉するための制御信号CTLを駆動部4に出力する。電力供給部2および情報処理部3は、戸袋部10に設けられた個別制御盤52に収容される。
【0026】
電力供給部2は、変圧器22と、整流器23と、平滑コンデンサ24と、定電圧供給部25とを有する。変圧器22は、1次巻線と2次巻線を有するトランスである。変圧器22は、1次巻線に電力源21からAC200Vの入力電圧V0が入力され、2次巻線からAC100Vの交流電圧V1を出力する。整流器23は、4つのダイオードがブリッジ接続されたダイオードブリッジにより構成できる。整流器23は、変圧器22から入力されたAC100Vの交流電圧V1を全波整流し、DC141Vの整流電圧を出力する。
【0027】
平滑コンデンサ24は、整流器23の出力側に並列に接続され、整流電圧を平滑する。平滑コンデンサ24により平滑された電圧値V2は、駆動部4および定電圧供給部25に供給される。定電圧供給部25は、スイッチングレギュレータ、シリーズレギュレータ等で構成可能な安定化電源である。定電圧供給部25は、供給された電圧値V2を2次電圧V3(例えば、DC24V、DC5V等)に変換して情報処理部3に供給する。
【0028】
図2を参照して情報処理部3を説明する。図2に示す情報処理部3の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0029】
情報処理部3は、開閉制御部31と、記憶部32と、報知部33と、劣化判断部34と、通信部35と、電圧取得部36と、駆動判断部37と、給電判断部38と、温度情報取得部39とを含む。通信部35は、有線または無線により総合制御盤50と通信し、総合制御盤50から扉12の開閉指令信号を受信し、総合制御盤50に所定の情報を送信する。開閉制御部31は、通信部35で受信された開閉指令信号に基づいて扉12を開閉するための制御信号CTLを駆動部4に出力する。
【0030】
電圧取得部36は、平滑コンデンサ24の電圧値V2を取得する。記憶部32は、電圧取得部36で取得された平滑コンデンサ24の電圧値V2を経時的に記憶する。また、記憶部32は、情報処理部3の入力情報と、この入力情報の中間処理情報と、情報処理部3の出力情報とを経時的に記憶できる。また、記憶部32は、ホームドア装置100の診断プログラムP100を格納できる。記憶部32は、不揮発性のメモリである。後述するように、平滑コンデンサ24に蓄えられた電力を用いて当該コンデンサから供給される電圧値V2を不揮発性メモリである記憶部32に記録することによって、別の電源や別のマイクロプロセッサ等の検出装置を用いることなく、平滑コンデンサ24の劣化判定をすることができる。
【0031】
劣化判断部34は、記憶部32の記憶情報を用いて平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断する。報知部33は、劣化判断部34で平滑コンデンサ24が劣化していると判断されたときに外部に報知する。
【0032】
駆動判断部37は、駆動部4の駆動状態を判断する。この例では、駆動判断部37は、扉12が閉状態で停止しているとき、または扉12が開状態で停止しているときに、駆動部4は駆動していないと判断する。駆動判断部37は、開閉制御部31の制御信号CTLを用いて駆動部4は駆動していないと判断できる。
【0033】
給電判断部38は、平滑コンデンサ24への給電状態を判断する。例えば、給電判断部38は、入力電圧V0または交流電圧V1を検知し、これらの交流電圧が基準値以下である場合に、平滑コンデンサ24への給電が停止されたと判断できる。この例では、給電判断部38は、電圧値V2を検知し、電圧値V2が基準値以下である場合に、平滑コンデンサ24への給電が停止されたと判断する。
【0034】
温度情報取得部39は、平滑コンデンサ24の周辺に配置された温度センサ16から、平滑コンデンサ24の周辺温度に関する温度Tcを取得する。
【0035】
以上のように構成されたホームドア装置100の動作の一例を説明する。図3は、ホームドア装置100の動作の一例のプロセスS110を示すフローチャートである。この動作は、平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断するための動作である。平滑コンデンサ24が劣化すると、その静電容量が小さくなり、平滑コンデンサ24に充電できる電荷量が減るため、平滑コンデンサ24の電圧値V2の低下速度が速くなり、閾値への到達時間が短くなる。したがって、平滑コンデンサ24の電圧値V2がピーク値(例えば141V)から閾値まで下がるまでの期間を計測することにより、平滑コンデンサ24の劣化状態を判断できる。
【0036】
ホームドア装置100では、様々な事情により、入力電圧V0が短時間断たれる短時間停電がある。以下の動作は、短時間停電を利用し、短時間停電等により平滑コンデンサ24への給電が停止された場合であって駆動部4が駆動していないときに、平滑コンデンサ24の劣化判断が実行される。この場合、駆動部4のモータの消費電流がないので、平滑コンデンサ24の放電条件を略一定にできる。
【0037】
なお、定電圧供給部25は、平滑コンデンサ24への給電が停止されても、平滑コンデンサ24の電圧値V2が大幅に低下するまで2次電圧V3を供給するように構成される。2次電圧V3の供給可能時間を延長する場合は、例えば、定電圧供給部25に平滑コンデンサ24とは別に電荷を蓄積可能なコンデンサを内蔵してもよい。定電圧供給部25は、このコンデンサの蓄積電荷を用いて2次電圧V3を供給するように構成されてもよい。
【0038】
プロセスの説明に戻る。このプロセスが開始されると、情報処理部3の駆動判断部37は、駆動部4が扉12を駆動しているか否かを判断する(ステップS111)。このステップで、駆動判断部37は、開閉制御部31の制御信号CTLを用いて駆動部4の駆動状態を判断できる。
【0039】
駆動部4が駆動している場合(ステップS111のY)、情報処理部3は処理をステップS111の先頭に戻し、ステップS111を繰り返す。
【0040】
駆動部4が駆動していない場合(ステップS111のN)、情報処理部3の給電判断部38は、平滑コンデンサ24への給電が停止されたか否かを判断する(ステップS112)。このステップで、給電判断部38は、交流電圧V1を検知し、交流電圧V1が基準値以下である場合に、平滑コンデンサ24への給電が停止されたと判断し、交流電圧V1が基準値を超える場合に給電されていると判断できる。
【0041】
平滑コンデンサ24への給電が停止されていない場合(ステップS112のN)、情報処理部3は処理をステップS112の先頭に戻し、ステップS112を繰り返す。
【0042】
ここで、平滑コンデンサ24の周囲温度と劣化速度の関係を説明する。平滑コンデンサ24の周囲温度が高いときには、平滑コンデンサ24の劣化速度は速くなり、周囲温度が低い場合よりも短期間で故障に至る場合が多い。そこで、実施形態では、劣化判断部34は、温度情報取得部39で取得された温度情報を加味して平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断する。具体的には、周囲温度が高いときには、劣化判断に用いる閾値Qを厳しくして(この例では閾値Qを小さくして)早めに劣化と判断する。以下の例では、第1閾値Q1は、第2閾値Q2よりも厳しく、第2閾値Q2よりも小さい。
【0043】
プロセスの説明に戻る。平滑コンデンサ24への給電が停止されている場合(ステップS112のY)、情報処理部3の温度情報取得部39は、温度センサ16から、平滑コンデンサ24の温度Tcを取得し、平滑コンデンサ24の温度Tcが基準温度Tsよりも高いか否かを判断する(ステップS113)。
【0044】
平滑コンデンサ24の温度Tcが基準温度Ts以下の場合(ステップS113のN)、情報処理部3は、平滑コンデンサ24の劣化判断に用いる閾値Qを第2閾値Q2にセットする(ステップS114)。平滑コンデンサ24の温度Tcが基準温度Tsを超える場合(ステップS113のY)、情報処理部3は、平滑コンデンサ24の劣化判断に用いる閾値Qを第1閾値Q1にセットする(ステップS115)。
【0045】
閾値Qをセットしたら、情報処理部3の電圧取得部36は、平滑コンデンサ24の電圧値V2を取得する(ステップS116)。次に、情報処理部3の記憶部32は、電圧取得部36で取得された平滑コンデンサ24の電圧値V2を経時的に記憶する(ステップS117)。
【0046】
このステップで、電圧取得部36は、所定の時間間隔(例えば、30ms)毎に、所定回数(例えば、30回)、電圧値V2を取得し、記憶部32は、取得された電圧値V2を経時的に記憶する。
【0047】
次に、情報処理部3の劣化判断部34は、記憶部32の記憶情報を用いて平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断する(ステップS118)。
【0048】
図4を参照して、平滑コンデンサ24の劣化判断の手順を説明する。図4は、平滑コンデンサ24の電圧値V2の変化の一例を示す図である。この図では、横軸は、平滑コンデンサ24への給電が停止されてからの経過時間を示し、縦軸は、平滑コンデンサ24の電圧値V2を示す。グラフg1は、非劣化状態の平滑コンデンサ24の電圧値V2の変化を示し、グラフg2は、劣化状態の平滑コンデンサ24の電圧値V2の変化を示す。グラフg1、g2は、ステップS117で記憶された多点(この例では、30点)の電圧値V2をプロットしたものである。
【0049】
平滑コンデンサ24の劣化判断の方法に限定はないが、実施形態では、劣化判断部34は、平滑コンデンサ24の電圧値V2の変化の具合が所定の条件を満たす場合に平滑コンデンサ24が劣化していると判断する。一例として、この所定の条件は、平滑コンデンサ24の電圧値V2の変化の割合が閾値以上である場合であってもよい。電圧値V2の変化の割合は、単位時間当たりの電圧値V2の変化量であってもよい。例えば、電圧値V2の経過時間に対する変化パターンの傾斜が、予め設定された基準パターンの傾斜よりも急である場合に、平滑コンデンサ24は劣化していると判断できる。
【0050】
図4の例では、劣化判断部34は、電圧値V2が初期値から閾値に低下するまでの期間が基準期間より短い場合に、平滑コンデンサ24が劣化していると判断する。図4では、第1閾値Q1および第2閾値Q2を横軸に平行な一点鎖線で示している。ここでは、第2閾値Q2とにより判断する。グラフg1の場合、第2閾値Q2と交差するまでの期間P1が基準期間Psより長いので、平滑コンデンサ24は劣化していないと判断される。グラフg2の場合、第2閾値Q2と交差するまでの期間P2が基準期間Psより短いので、平滑コンデンサ24は劣化していると判断される。
【0051】
劣化判断部34が平滑コンデンサ24は劣化していると判断した場合(ステップS118のY)、情報処理部3の報知部33は、平滑コンデンサ24が劣化していることを外部に報知する(ステップS119)。このステップで、報知部33は、報知装置58を動作させる信号を出力する。報知装置58は、例えば、光、音、振動等の人が認識できる警報を発生させるデバイスであってもよいし、総合制御盤50または上位の管理システムに所定の情報を送信するデバイスであってもよい。この例の報知装置58は、劣化していると判断された場合に点灯するLEDを含む。
【0052】
ステップS119を実行した場合、および平滑コンデンサ24は劣化していないと判断した場合(ステップS118のN)、記憶部32は、劣化判断部34の判断結果を記憶する(ステップS120)。
【0053】
ステップS120を実行したら、プロセスS110は終了する。このプロセスは一例であり、各種の変更が可能である。
【0054】
なお、プロセスS110の実行後に短時間停電が終了したら、情報処理部3の通信部35は、記憶部32に記憶された劣化判断部34の判断結果を総合制御盤50または上位の管理システムに送信してもよい。
【0055】
以上が第1実施形態の説明である。
【0056】
以下、本発明の第2、第3実施形態を説明する。第2、第3実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0057】
本発明の第2実施形態は、ホームドア装置100の診断方法である。この方法は、プラットホーム60上に設置された扉12を開閉駆動する駆動部4に電力供給する平滑コンデンサ24の電圧値V2を経時的に記憶する記憶ステップ(S117)と、記憶ステップで記憶された記憶情報を用いて平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断するステップ(S118)と、を含む。
【0058】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0059】
本発明の第3実施形態は、ホームドア装置100の診断プログラムP100である。このプログラムP100は、プラットホーム60上に設置された扉12を開閉駆動する駆動部4に電力供給する平滑コンデンサ24の電圧値V2を経時的に記憶する記憶ステップ(S117)と、記憶ステップで記憶された記憶情報を用いて平滑コンデンサ24が劣化しているか否かを判断するステップ(S118)と、をコンピュータに実行させる。
【0060】
第3実施形態の診断プログラムP100のこれらの機能は、ホームドア装置100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとして、情報処理部3のストレージ(例えば記憶部32)にインストールされてもよい。第3実施形態のプログラムP100は、情報処理部3に組み込まれたコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0061】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0062】
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0063】
実施形態の説明では、外部事情により生じる短時間停電の機会に劣化判断をする例を示したが、これに限定されない。ホームドア装置は、操作員の操作に基づいて劣化判断できるように構成されてもよい。例えば、整流器23と、平滑コンデンサ24の間にスイッチを設け、操作員がこのスイッチをオフにすることにより平滑コンデンサ24への給電を停止し、プロセスS110を実行するようにしてもよい。
【0064】
また、ホームドア装置は、鉄道の営業が終了した夜間などの時間帯に自動的に劣化判断できるように構成されてもよい。例えば、整流器23と、平滑コンデンサ24の間に半導体スイッチを設け、情報処理部3は、鉄道の営業が終了した夜間などの時間帯に半導体スイッチをオフにして平滑コンデンサ24への給電を停止して、プロセスS110を自動で実行するようにしてもよい。
【0065】
実施形態の説明では、平滑コンデンサ24の劣化の程度(容量減少の程度)を、単一の閾値により2段階に区分して判断する例を示したが、これに限定されない。情報処理部は、劣化の程度を2以上の閾値により3段階以上に区分して判断するようにしてもよい。また、情報処理部は、平滑コンデンサの電圧の傾斜により当該コンデンサの劣化の程度(容量減少の程度)を外部に出力するようにしてもよい。
【0066】
上述の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0067】
上述した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0068】
4 駆動部、 12 扉、 24 平滑コンデンサ、 32 記憶部、 33 報知部、 34 劣化判断部、 39 温度情報取得部、 100 ホームドア装置。
図1
図2
図3
図4