(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068866
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】生育支援システム、生育支援方法及び生育支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179490
(22)【出願日】2022-11-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】下山 真人
(72)【発明者】
【氏名】畑 浩二
(72)【発明者】
【氏名】溝田 陽子
(57)【要約】
【課題】植物の生育を、効率的に支援する生育支援システム、生育支援方法及び生育支援プログラムを提供する。
【解決手段】支援サーバ20は、植物の栽培装置10と、前記植物の計測装置30とに接続された制御部21を備える。そして、制御部21が、計測装置30から、栽培装置10の植物の撮影画像を取得し、撮影画像に含まれる画素の色要素を解析し、解析した結果を、色要素を軸とする空間にマッピングし、マッピングの形状に応じて植物の生育状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の栽培装置と、前記植物の計測装置とに接続された制御部を備えた生育支援システムであって、
前記制御部が、
前記計測装置から、前記栽培装置の植物の撮影画像を取得し、
前記撮影画像に含まれる画素の色要素を解析し、
前記解析した結果を、前記色要素を軸とする空間にマッピングし、
前記マッピングの形状に応じて前記植物の生育状態を判定することを特徴とする生育支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、
前記撮影画像において、前記植物の背丈を判定し、
前記背丈の判定結果に応じて、前記生育状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の生育支援システム。
【請求項3】
前記制御部が、
前記撮影画像において、前記植物の部位の形状を判定し、
前記形状の判定結果に応じて、前記生育状態を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の生育支援システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記生育状態に応じて、前記栽培装置に対して、前記植物の栽培環境の制御指示を送信することを特徴とする請求項1に記載の生育支援システム。
【請求項5】
植物の栽培装置と、前記植物の計測装置とに接続された制御部を備えた生育支援システムを用いて、前記植物の生育を支援する方法であって、
前記制御部が、
前記計測装置から、前記栽培装置の植物の撮影画像を取得し、
前記撮影画像に含まれる画素の色要素を解析し、
前記解析した結果を、前記色要素を軸とする空間にマッピングし、
前記マッピングの形状に応じて前記植物の生育状態を判定することを特徴とする生育支援方法。
【請求項6】
植物の栽培装置と、前記植物の計測装置とに接続された制御部を備えた生育支援システムを用いて、前記植物の生育を支援するための生育支援プログラムであって、
前記制御部を、
前記計測装置から、前記栽培装置の植物の撮影画像を取得し、
前記撮影画像に含まれる画素の色要素を解析し、
前記解析した結果を、前記色要素を軸とする空間にマッピングし、
前記マッピングの形状に応じて前記植物の生育状態を判定する手段として機能させるための生育支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物の栽培を行なうための生育支援システム、生育支援方法及び生育支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場は、LED等による照明装置による人工光を使用して植物を栽培している。更に植物工場は、植物に養液を与える養液供給装置や、栽培室内の温度や湿度を調整する空調装置等を備えている。そして、照明装置の明るさ、養液のEC値、および栽培室内の温度等は、栽培植物の生育に影響するため、栽培植物の生長に合わせて制御される。
【0003】
そこで、栽培植物の管理の負担を軽減するための技術も検討されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された栽培装置は、画像センサの検出結果に基づき、栽培植物が規定の生育状態かどうかを判定する。そして、規定の生育状態の場合に、生長促進制御を行なう。一方、規定の生育状態よりも劣る場合に、生長補助制御を行なうように生育環境形成装置を制御する。
【0004】
また、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測する技術も検討されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載された灌水制御システムは、植物の草姿に関する画像を取得するカメラと、周囲環境に関する測定データを出力する環境センサと、を備える。そして、カメラから取得した画像を用いて、萎れ具合に関する特徴量である数値ベクトルを算出する。更に、算出された数値ベクトル、環境センサから出力された測定データに基づいて、機械学習を用いて対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-051134号公報
【特許文献2】特開2018-029568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像認識による植物の生育の判定は容易ではない。例えば、特許文献1に記載された技術では、栽培植物の葉全体の緑の部分と茶褐色の部分とを比較する。そして、茶褐色の部分の割合が30%以上であれば、その栽培植物にチップバーンが発生することにより、病気と判定する。しかしながら、チップバーン解消のための具体的な制御を考慮していない。また、特許文献2に記載された技術では、機械学習により萎れ具合を判定する。しかしながら、萎れ具合は形状や色等の多様な画像要素に反映されるため、機械学習は容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する生育支援システムは、植物の栽培装置と、前記植物の計測装置とに接続された制御部を備える。そして、前記制御部が、前記計測装置から、前記栽培装置の植物の撮影画像を取得し、前記撮影画像に含まれる画素の色要素を解析し、前記解析した結果を、前記色要素を軸とする空間にマッピングし、前記マッピングの形状に応じて前記植物の生育状態を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物の生育を、効率的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の生育支援システムの説明図である。
【
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図5】実施形態の画像分析処理の処理手順の説明図である。
【
図8】実施形態の健全状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図9】実施形態の発症状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図10】実施形態の第1進行状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図11】実施形態の第2進行状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図12】実施形態の第1重症化状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図13】実施形態の第2重症化状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図14】実施形態の枯死状態の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は加工画像、(c)はRGBの各階調の頻度分布、(d)はRGBの3次元分布である。
【
図15】実施形態の各状態のRGBの3次元分布である。
【
図16】他の実施形態の各状態のRGBの3次元分布である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図15に従って、生育支援システム、生育支援方法及び生育支援プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、植物(ホウレンソウ)を生育するとともに、苗を撮影した撮影画像を用いて、生育状態を特定する。そして、生育状態に応じて、生育環境を制御する場合を想定する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の生育支援システムは、ネットワークを介して接続された栽培装置10、支援サーバ20、計測装置30を用いる。
(ハードウェア構成例)
図2は、支援サーバ20等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例を示す。
【0012】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0014】
入力装置H12は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0015】
記憶装置H14は、支援サーバ20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0016】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、支援サーバ20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、支援サーバ20のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0017】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0018】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0019】
(生育支援システムの機能)
図3は、栽培装置10の斜視図、
図4は、栽培装置10の側面図である。
図3に示すように、栽培装置10は、コンテナ100、散水管110、トレー120、排水管121を備える。
【0020】
コンテナ100は、吸水性の育苗マットを備えており、一つの栽培ロットの植物P1が区画毎に植えられる。
このコンテナ100の育苗マットは、トレー120上に載置される。トレー120は、植物P1への潅水において、コンテナ100で吸収されなかった残水を受ける。この残水は、トレー120の下方に接続された排水管121により排出される。
【0021】
コンテナ100の上方(z軸方向)には、2本の散水管110が設けられる。この散水管110は、コンテナ100の短手方向(x軸方向)に、平行して配置されている。そして、散水管110から噴出された水W1を植物P1に散布する。更に、散水管110は、駆動装置(図示せず)により、直交方向(y軸方向)に往復運動することにより、コンテナ100全面に潅水を行なう。
【0022】
図4に示すように、この散水管110には、潅水装置111から水W1が供給される。この潅水装置111は、肥料(栄養分)を含む水W1を供給する。本実施形態では、水W1の栄養分(肥料)として、カリウム、硫黄、マンガン、カルシウムを用いる。
【0023】
散水管110には、計測装置30(カメラ31、高さ計測装置32)が取り付けられている。カメラ31は、散水管110に沿って、駆動装置(図示せず)により、x軸方向に往復運動する。
【0024】
また、高さ計測装置32は、散水管110のx軸方向の中央付近に取り付けられている。
カメラ31は、x軸方向に往復運動しながら、植物P1を上方から撮影する。なお、散水管110の移動速度に対して、カメラ31の移動速度は十分に速いため、植物P1が植栽された各区画を撮影することができる。
【0025】
高さ計測装置32は、レーザ光をx軸方向にスキャンすることにより、植物P1の高さ分布を計測する。
コンテナ100の上方(z軸方向)には、コンテナ100の全面(全区画)に亘って、照明装置150が配置される。照明装置150は、上方から植物P1に光を照射する。この照明装置150は、コンテナ100への照射光の照度やスペクトルを変更することができる。
【0026】
図1に示す支援サーバ20は、計測装置30から取得した情報に基づいて、栽培装置10を制御するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、環境制御情報記憶部22、計測情報記憶部23、ロット情報記憶部24を備えている。
【0027】
この制御部21は、後述する処理(情報取得段階、分析段階、環境制御段階等を含む処理)を行なう。このための生育支援プログラムを実行することにより、制御部21は、情報取得部211、分析部212、環境制御部213等として機能する。
【0028】
情報取得部211は、計測装置30から、植物P1の状態情報を取得する処理を実行する。本実施形態では、情報取得部211は、カメラ31から、コンテナ100の各領域(各区画)に植栽された植物P1の撮影画像を取得する。また、情報取得部211は、高さ計測装置32から、コンテナ100の各領域(各区画)に植栽された植物P1の背丈を特定する。
【0029】
分析部212は、植物P1の状態情報を用いて、植物P1の生育状態を分析する。分析部212は、画像認識処理により、植物P1のRGB解析処理、植物P1の部位を特定についての領域・形状認識処理を行なう。
【0030】
環境制御部213は、植物P1の生育状態に応じて、栽培環境を制御する。本実施形態では、例えば、コンテナ100の栽培ロット毎に、潅水装置111、照明装置150の制御を行なう。
【0031】
環境制御情報記憶部22には、栽培環境を制御するための環境制御情報が記録される。この環境制御情報は、生育状態に応じた栽培環境を決定した場合に記録される。環境制御情報には、分析結果に対して環境制御条件に関するデータが記録される。
【0032】
図5に示すように、分析方法には、植物P1の領域認識・形状認識、RGB解析が含まれる。
制御条件は、分析結果に応じて、栽培環境を制御する条件である。
【0033】
分析結果において、「健全」と判定した場合には、標準制御条件221を用いる。
分析結果において、「肥料成分」の不足と判定した場合には、潅水装置111により肥料制御条件222を用いる。肥料制御条件222においては、カリウム(K)調整、硫黄(S)調整、マンガン(Mn)調整、カルシウム(Ca)調整を行なう。肥料制御条件222の詳細は後述する。
【0034】
分析結果において、「葉焼け」と判定した場合には、光強度制御条件223を用いる。この光強度制御条件223では、赤のスペクトルを減らし、緑、青系のスペクトルを増やす照明制御を行なう。
分析結果において、「伸長成長遅延」と判定した場合には、成長促進条件224を用いる。この成長促進条件224では、遠赤領域のスペクトルを増やす。
【0035】
図1の計測情報記憶部23には、計測装置30から取得した計測情報を用いた計測管理データが記録される。この計測情報は、計測装置30を用いた計測情報を用いて分析を行なった場合に記録される。計測管理データには、ロットID、区画ID、計測日時、画像、高さ、生育状態に関するデータが記録される。
【0036】
ロットIDは、各コンテナ100(栽培ロット)を特定するための識別子である。
区画IDは、このコンテナ100において、植物P1が植えられた領域(区画)を特定するための識別子である。
【0037】
計測日時は、この区画について、計測した年月日及び時刻である。
画像は、この区画について、カメラ31により撮影した植物P1の画像である。
高さは、この区画について、高さ計測装置32により特定した植物P1の背丈である。
【0038】
生育状態は、この区画の植物P1の生育状態である。生育状態には、「健全」~「枯死」、「肥料成分不足」、「葉焼け」、「伸長成長遅延」等がある。「健全」~「枯死」は、後述するRGB解析処理により判定する。「肥料成分不足」~「伸長成長遅延」は、後述する領域認識処理、形状認識処理により判定する。
【0039】
ロット情報記憶部24には、植物P1の生育状態に応じて行なわれた環境制御についてのロット管理データが記録される。このロット管理データは、コンテナ100の環境制御を行なった場合に記録される。ロット管理データには、ロットID、制御日時、ロット状態、制御指示に関するデータが記録される。
【0040】
ロットIDは、各コンテナ100(栽培ロット)を特定するための識別子である。
制御日時は、この区画を分析した年月日及び時刻である。
ロット状態は、コンテナ100に植えられた各区画の植物P1の生育状態(総合判定)である。ロット状態は、計測情報記憶部23に記録された計測管理データの生育状態の統計処理により算出される。
制御指示は、このコンテナ100の環境制御内容である。
【0041】
(栽培支援処理)
図6を用いて、栽培支援処理を説明する。この栽培支援処理は、定期的(例えば、毎日の所定時刻)に、栽培ロット毎に実行される。
【0042】
まず、支援サーバ20の制御部21は、植物P1が植えられた区画毎に以下の処理を実行する。
ここでは、支援サーバ20の制御部21は、計測情報の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、カメラ31から、植物P1の撮影画像を取得する。また、情報取得部211は、高さ計測装置32から、植物P1の高さ分布を取得し、高さ分布から、処理対象の区画の植物P1の背丈を特定する。次に、情報取得部211は、区画ID、撮影日時を記録した計測管理データに、植物P1の撮影画像を、計測情報記憶部23に記録する。更に、情報取得部211は、計測管理データに、特定した植物P1の高さ(背丈)を記録する。
【0043】
次に、支援サーバ20の制御部21は、画像分析処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の分析部212は、取得した植物P1の撮影画像を用いて、RGB解析処理を行なう。この画像分析処理については、
図7を用いて後述する。
【0044】
更に、分析部212は、植物P1の撮影画像及び高さ(背丈)に基づいて、分析結果(生育状態)を判定する。ここでは、分析部212は、領域認識、形状認識を行なう。そして、分析部212は、植物P1の生育状態を、計測管理データに記録する。
【0045】
栽培ロットに含まれる全区画についての植物P1の生育状態の判定を完了した場合、支援サーバ20の制御部21は、環境制御情報の特定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の分析部212は、栽培ロットの状態を判定する。ここでは、分析部212は、区画毎の植物P1の生育状態の統計値を用いて、今回のロット状態を算出する。例えば、統計値としては最頻値等を用いることができる。
【0046】
ここで、分析部212は、計測情報記憶部23から、直近の計測管理データを取得し、高さ(背丈)、撮影画像を取得する。そして、分析部212は、直近の状態に対して、植物P1が高くなるとともに、今回の撮影画像において、新葉を検出した区画が多いと判定した場合には、成長促進効果があり、ロット状態が「健全」と判定する。この場合には、環境制御情報記憶部22から、環境制御情報として標準制御条件221を取得する。
【0047】
一方、ロット状態が「健全」でない場合には、分析部212は、光強度を落とすとともに、担当者端末にアラームを送信する。更に、分析部212は、環境制御情報記憶部22から、ロット状態に応じた環境制御条件を特定する。例えば、肥料成分不足と判定した場合には、肥料制御条件222を取得する。「葉焼け」と判定した場合には、光強度制御条件223を取得する。「伸長成長遅延」と判定した場合には、成長促進条件224を取得する。
【0048】
次に、支援サーバ20の制御部21は、環境制御処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の環境制御部213は、特定した環境制御条件を含めた制御指示を栽培装置10に送信する。この場合、栽培装置10は、環境制御条件に応じて、潅水装置111、照明装置150を制御する。
【0049】
(画像分析処理)
図5を用いて、画像分析処理を説明する。
まず、支援サーバ20の制御部21は、画像取得処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、カメラ31から、植物P1の撮影画像を取得する。
【0050】
図8(a)は、植物P1の健全な生育状態である「健全状態」の撮影画像500である。
図9(a)は、植物P1の病状が発生した生育状態である「発症状態」の撮影画像510である。
図10(a)は、植物P1の病状が進行した生育状態である「第1進行状態」の撮影画像520である。
【0051】
図11(a)は、植物P1の病状が更に進行した生育状態である「第2進行状態」の撮影画像530である。
図12(a)は、植物P1の病状が更に進行した生育状態である「第1重症化状態」の撮影画像540である。
【0052】
図13(a)は、植物P1の重症化が進んだ生育状態である「第2重症化状態」の撮影画像550である。
図14(a)は、植物P1が枯れた生育状態である「枯死状態」の撮影画像560である。
【0053】
次に、支援サーバ20の制御部21は、領域認識処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の分析部212は、植物P1の画像認識により、撮影画像から背景を除去した植物画像(加工画像)を取得する。
【0054】
図8(b)は、植物P1の生育状態が「健全状態」の植物画像501である。
図9(b)は、植物P1の生育状態が「発症状態」の植物画像511である。
図10(b)は、植物P1の生育状態が「第1進行状態」の植物画像521である。
【0055】
図11(b)は、植物P1の生育状態が「第2進行状態」の植物画像531である。
図12(b)は、植物P1の生育状態が「第1重症化状態」の植物画像541である。
図13(b)は、植物P1の生育状態が「第2重症化状態」の植物画像551である。
図14(b)は、植物P1の生育状態が「枯死状態」の植物画像561である。
【0056】
次に、支援サーバ20の制御部21は、RGB解析処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の分析部212は、植物画像において、ピクセル毎にRGB値を取得する。
【0057】
図8(c)は、植物P1の生育状態が「健全状態」の植物画像501におけるRGB階調の頻度割合グラフ502である。
図9(c)は、植物P1の生育状態が「発症状態」の植物画像511におけるRGB階調の頻度割合グラフ512である。
【0058】
図10(c)は、植物P1の生育状態が「第1進行状態」の植物画像521におけるRGB階調の頻度割合グラフ522である。
図11(c)は、植物P1の生育状態が「第2進行状態」の植物画像531におけるRGB階調の頻度割合グラフ532である。
【0059】
図12(c)は、植物P1の生育状態が「第1重症化状態」の植物画像541におけるRGB階調の頻度割合グラフ542である。
図13(c)は、植物P1の生育状態が「第2重症化状態」の植物画像551におけるRGB階調の頻度割合グラフ552である。
【0060】
図14(c)は、植物P1の生育状態が「枯死状態」の植物画像561におけるRGB階調の頻度割合グラフ562である。
RGB階調の頻度割合グラフ502、512、…562では、生育状態に応じて、RGB毎に頻度分布が変化する。
【0061】
更に、分析部212は、植物画像における画素のRGB値(256階調)を、R軸、G軸、B軸の3次元空間の3次元マップ上にマッピングした3次元分布を生成する。3次元分布は、RGB値に応じた座標に、健全性(Soundness)に応じて着色された点群により構成される。図面では、グレースケールで表示されているが、健全性は、RGB値の256階調で、(255,0,0)~(255,255,0)~(0,255,0)~(0,255,255)~(0,0,255)で順次変化させた配色を用いる。
図8(d)は、植物P1の生育状態が「健全状態」の植物画像501における画素のRGB値の3次元分布503である。3次元分布503は、カラーC0で着色される。
【0062】
図9(d)は、植物P1の生育状態が「発症状態」の植物画像511における画素のRGB値の3次元分布513である。3次元分布513は、カラーC1で着色される。
図10(d)は、植物P1の生育状態が「第1進行状態」の植物画像521における画素のRGB値の3次元分布523である。3次元分布523は、カラーC2で着色される。
【0063】
図11(d)は、植物P1の生育状態が「第2進行状態」の植物画像531における画素のRGB値の3次元分布533である。3次元分布533は、カラーC3で着色される。
図12(d)は、植物P1の生育状態が「第1重症化状態」の植物画像541における画素のRGB値の3次元分布543である。3次元分布543は、カラーC4で着色される。
【0064】
図13(d)は、植物P1の生育状態が「第2重症化状態」の植物画像551における画素のRGB値の3次元分布553である。3次元分布553は、カラーC5で着色される。
図14(d)は、植物P1の生育状態が「枯死状態」の植物画像561における画素のRGB値の3次元分布563である。3次元分布563は、カラーC6で着色される。
【0065】
3次元分布503、513、…563では、生育状態に応じて、3次元マップ上のRGB値の3次元分布が変化する。
そして、分析部212は、RGB分布の3次元形状に応じて、「健全」~「枯死」を判定する。
【0066】
図15に示すように、撮影画像500,520,560等に応じて、RGB値の3次元分布が変化する。本実施形態では、分析部212は、生育状態「健全」~「枯死」(ラベル)に対して、3次元分布の形状を教師データとして、機械学習(形状のパターン認識)を行なうことにより、植物P1の生育状態を判定する予測モデルを用いる。
【0067】
次に、支援サーバ20の制御部21は、領域・形状認識処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の分析部212は、「発症」~「枯死」において、植物画像に含まれる葉の形状を特定する。
【0068】
ここでは、葉の色の状態から、栽培ロットの肥料成分の不足を判定する。ここで、葉の縁が上部にまくれ上がったり、丸くなったりしている場合には、カリウム(K)の不足と判定する。また、葉が全体に黄色になっている場合には、硫黄(S)の不足と判定する。また、葉の先端部の黄色化しており、葉面の褐色斑点が生じている場合には、マンガン(Mn)の不足と判定する。葉の先端が白くなっている場合には、カルシウム(Ca)の不足と判定する。
【0069】
また、株の上面の葉での褐色化や葉が丸くなっている場合には、光強度が強いことによる「葉焼け」と判定する。
また、分析部212は、計測情報記憶部23から、直近の計測管理データを取得し、背丈、撮影画像を取得する。そして、分析部212は、直近の状態に対して、植物P1の伸長成長速度が基準値より低く、今回の撮影画像において、新葉を検出できないと判定した場合には、「伸長成長遅延」と判定する。
【0070】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、計測情報の取得処理を実行する(ステップS11)。これにより、コンテナ100の各区画の植物P1の状態を把握するための情報を効率的に取得することができる。
【0071】
(2)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、画像分析処理を実行する(ステップS12)。これにより、撮影画像に基づいて、各植物P1の生育状態を予測することができる。
【0072】
(3)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、環境制御情報の特定処理を実行する(ステップS13)。これにより、栽培ロットに含まれる各植物P1に適した環境制御条件を特定することができる。
【0073】
(4)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、環境制御処理を実行する(ステップS14)。これにより、栽培ロットの植物P1の育成状態に応じて、栽培環境を調整することができる。
【0074】
(5)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、領域認識処理を実行する(ステップS22)。これにより、植物P1の各部位の状態を評価することができる。
(6)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、RGB解析処理を実行する(ステップS25)。これにより、撮影画像に含まれる各画素のRGB値を用いて、植物P1の生育状態を評価することができる。特に、RGB値の3次元分布を用いることにより、分布形状に応じて、効率的に生育状態を判定することができる。
【0075】
(7)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、領域・形状認識処理を実行する(ステップS23)。これにより、不健全な植物P1の要因を予測することができる。
【0076】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、植物P1としてホウレンソウを用いるが、これに限定されるものではない。例えば、葉面積が小さいカラマツにも適用することができる。
【0077】
図16に示すように、カラマツの撮影画像601,602,603においても、RGB値の3次元分布形状が変化する。撮影画像601は「健全」、撮影画像602は「やや不健全」、撮影画像603は「不健全」の画像である。生育状態に対して、3次元分布の形状を教師データとして、機械学習(形状のパターン認識)を行なうことにより、植物P1の生育状態を判定する予測モデルを用いることができる。この場合も、3次元分布は、RGB値に応じた座標に、健全性に応じて着色された点群により構成される。「健全」は緑~青に分布し、「やや不健全」は赤を含み、「不健全」は赤の比率が高くなる。この健全性は、3次元分布を、RGB値の256階調で、(255,0,0)~(255,255,0)~(0,255,0)~(0,255,255)~(0,0,255)で順次変化させた配色を用いて表示できる。
【0078】
・上記実施形態では、分析結果に応じて、植物P1の生育状態を判定する。ここで、分析結果において、「冬芽」を判定してもよい。例えば、カラマツ等においては、領域・形状認識処理(ステップS24)において、冬芽の有無を判定する。そして、冬芽を検出した場合には、照明装置150を用いて、日長(明期)を短くするように調整する。日長を落としていくと、葉が黄葉して来るので、黄色の割合が80%になった場合に、処理完了と判定する。
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、環境制御処理を実行する(ステップS14)。ここで、環境制御において、潅水や照明を制御する。制御対象はこれらに限定されるものではない。例えば、温度、湿度、二酸化炭素濃度等、植物P1の生育に影響を与える環境条件を制御すればよい。
【0079】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、領域・形状認識処理を実行する(ステップS24)。ここで、分析部212が、撮影画像において、「培地の色」を分析してもよい。この場合には、分析部212は、培地の画像認識を行なう。例えば、培地の画像認識結果によって土の乾燥状態を判定し、この判定結果に応じて潅水量を制御するようにしてもよい。
また、分析部212が、葉だけではなく、茎の色を分析するようにしてもよい。例えば、茎の色が茶色になっている場合には、光強度や照射角度を調整する。
【0080】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、植物P1が植えられた区画毎に、計測情報の取得処理(ステップS11)、画像分析処理(ステップS12)を実行する。ここで、栽培ロットの植物P1の生育状態を把握できれば、すべての区画を評価する必要はない。例えば、栽培ロットの中でサンプリングした植物P1について、計測情報の取得処理(ステップS11)、画像分析処理(ステップS12)を実行してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、RGB解析処理を実行する(ステップS23)。植物P1の撮影画像に含まれる画素を色要素の色分析ができれば、RGB解析に限定されない。
【0082】
・上記実施形態では、ロット状態を算出する統計値としては、各植物P1の生育状態の最頻値を用いる。統計値は最頻値に限定されるものではない。
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、環境制御処理を実行する(ステップS14)。ここでは、コンテナ100の栽培ロット毎に環境制御処理を行なうが、環境制御可能な範囲毎(例えば、コンテナ100の区画毎)に環境制御処理を行なえばよい。
【0083】
・上記実施形態では、計測装置30として、カメラ31、高さ計測装置32を用いる。これらの配置や種類は限定されない。例えば、広角カメラや天球カメラを用いて、1回で複数の植物P1を撮影してもよい。また、高さ計測装置32として、3次元計測が可能な3次元カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…栽培装置、100…コンテナ、110…散水管、111…潅水装置、120…トレー、121…排水管、150…照明装置、20…支援サーバ、21…制御部、211…情報取得部、212…分析部、213…環境制御部、22…環境制御情報記憶部、23…計測情報記憶部、24…ロット情報記憶部、30…計測装置、31…カメラ、32…高さ計測装置。