(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006887
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ゴマ蛋白の酵素分解物を含む穀物茶飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20240110BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240110BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240110BHJP
A23L 33/18 20160101ALN20240110BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 A
A23L2/38 J
A23L2/00 F
A23L33/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184003
(22)【出願日】2022-11-17
(62)【分割の表示】P 2022107367の分割
【原出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 翔大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将紘
(72)【発明者】
【氏名】武藤 麻里
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD07
4B018MD20
4B018MD49
4B018MD50
4B018MD56
4B018ME04
4B018MF01
4B018MF02
4B018MF12
4B018MF14
4B117LC02
4B117LC04
4B117LE10
4B117LG24
4B117LG30
4B117LK06
4B117LK15
4B117LP01
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ゴマ蛋白の酵素分解物に起因する後味のぬめりが低減されている飲料を開発することである。
【解決手段】本発明に係る飲料は、(a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料であって、5-メチル-2-フルアルデヒドの濃度が150~2000ppbである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料であって、5-メチル-2-フルアルデヒドの濃度が150~2000ppbである、上記飲料。
【請求項2】
45~1300ppbのLVYペプチドを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
50~450ppbのLVYペプチドを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
穀物茶抽出物が麦茶抽出物を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
60~400ppbのLVYペプチドを含有し、内容量が400~1000mLであり、樹脂製容器に充填されている、請求項1に記載の飲料。
【請求項6】
(a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料を製造する方法であって、飲料中の5-メチル-2-フルアルデヒド濃度を150~2000ppbに調整することを含む、上記方法。
【請求項7】
(a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料において後味を改善する方法であって、飲料中の5-メチル-2-フルアルデヒド濃度を150~2000ppbに調整することを含む、上記方法。
【請求項8】
ゴマ蛋白の酵素分解物の配合量が160~2700ppmである、請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマ蛋白の酵素分解物を含む穀物茶飲料に関する。ゴマ蛋白の酵素分解物は、優れた特性を有するゴマペプチドを含んでおり、本発明に係る穀物茶飲料は、特定量の5-メチル-2-フルアルデヒドを含有する。
【背景技術】
【0002】
ゴマ由来のタンパク質(ゴマ蛋白)の酵素分解物に含まれるゴマペプチドは、血圧降下作用等を有することが知られている(特許文献1)。また、ゴマペプチドの生理活性を活かしたサプリメントや飲料が販売されており、特許文献2には、ゴマペプチドを利用した食品改質剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-231588号公報
【特許文献2】特開2006-271381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴマ蛋白の酵素分解物は、独特の後味を有しており、脂のようなぬめりのある舌触り(脂様のぬめり)が感じられることがある。そのため、特に飲料にゴマ蛋白の酵素分解物を配合すると、飲料の味わいを悪くしてしまうことがある。
【0005】
そこで本発明は、ゴマ蛋白の酵素分解物に起因する後味のぬめりが低減されている飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、飲料中の5-メチル-2-フルアルデヒド含有量を特定範囲となるように調整することによって、ゴマ蛋白の酵素分解物由来の後味のぬめりが低減され、後味が良好で止渇性の高い穀物茶飲料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下に関する。
[1] (a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料であって、5-メチル-2-フルアルデヒドの濃度が150~2000ppbである、上記飲料。
[2] 45~1300ppbのLVYペプチドを含有する、[1]に記載の飲料。
[3] 50~450ppbのLVYペプチドを含有する、[1]に記載の飲料。
[4] 穀物茶抽出物が麦茶抽出物を含む、[1]に記載の飲料。
[5] 60~400ppbのLVYペプチドを含有し、内容量が400~1000mLであり、樹脂製容器に充填されている、[1]に記載の飲料。
[6] (a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料を製造する方法であって、飲料中の5-メチル-2-フルアルデヒド濃度を150~2000ppbに調整することを含む、上記方法。
[7] (a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料において後味を改善する方法であって、飲料中の5-メチル-2-フルアルデヒド濃度を150~2000ppbに調整することを含む、上記方法。
[8] ゴマ蛋白の酵素分解物の配合量が160~2700ppmである、[6]または
[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゴマ蛋白の酵素分解物を含有しながらも後味が良好で止渇性の高い穀物茶飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一つの態様において、本発明は、(a)ゴマ蛋白の酵素分解物および(b)穀物茶抽出物を含む容器詰飲料であって、150~2000ppbの5-メチル-2-フルアルデヒドを含有する。
【0010】
ゴマ蛋白の酵素分解物
本発明に係る飲料は、ゴマ蛋白(ゴマ由来のタンパク質)の酵素分解物を含有する。ゴマ蛋白は、ゴマの植物組織から抽出されるタンパク質であり、例えば、タンパク質を豊富に含む植物組織である種子から得ることができる。ゴマ蛋白をサーモライシンなどの酵素で処理することによってゴマ蛋白が加水分解され、ゴマ由来のペプチド(ゴマペプチド)を多く含む酵素分解物が得られる。このようなゴマ蛋白の酵素分解物は、公知の方法により自ら調製してもよいが、市販されているもの(KISCO製GPパウダーB20、KM-20など)を利用することができる。なお、本発明で使用するゴマ蛋白の酵素分解物を配合した製品には、原材料として、ゴマタンパク分解物やゴマペプチドと記載される場合がある。
【0011】
サーモライシンなどの酵素でゴマ蛋白を分解する場合、原料となるゴマの性状により処理方法は変わるが、まず前処理として、脱脂を行うことが好ましい。脱脂処理の方法は制限されないが、例えば、搾汁による脱脂、アルコール類、アセトン、ヘキサンなどの溶媒を用いた脱脂を行うことができる。また、原料であるゴマを効率よく酵素分解するために、原料となる素材は細かく粉砕してから水に攪拌・懸濁することが好ましい。また、原料が難溶性の場合には、苛性ソーダなどの薬品を加えたり、加熱処理などをしたりして、原料を均一に溶解・懸濁させてもよい。
【0012】
酵素分解は、酵素の特性を踏まえて適宜実施すればよい。酵素としてサーモライシンを用いる場合、例えば、蛋白1gあたり、500~50000PUのサーモライシンを加え、pH5~9、温度10~80℃で0.5~48時間、静置もしくは攪拌操作を加えながら蛋白分解反応を行うことができる。ここで、PUはプロテアーゼユニット(Protease Unit)を略したものであり、具体的には、乳性カゼインを基質として、pH7.2、35
℃において1分間に1μgのチロシンに相当する非蛋白性のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1PUとする。酵素反応が十分に進行したことは、公知の方法によって確認すればよいが、例えば、高速液体クロマトグラフィーなどによって反応液を分析することができる。具体的には、酵素反応を確認するために、ODSカラムなどを用いた高速液体クロマトグラフィーに付し、所定の波長(例えば、210nm)における吸光度によって溶出液を分析することができる。酵素反応の停止は公知の方法によればよいが、例えば、塩酸などの酸を添加したり、加熱処理をしたりすることができ、酸の添加と加熱処理の両方を行って反応を停止してもよい。酵素処理後の反応液は適宜処理すればよいが、例えば、遠心や濾過処理等で沈殿物を除き、得られた濾液を塩酸や苛性ソーダなどの薬品を適宜用いて中和し、濃縮することができる。さらに活性炭などを用いた処理を行って、香味上の問題、例えば、えぐ味や苦味、異臭などを低減することもできる。
【0013】
ゴマ蛋白の酵素分解物をさらにイオン交換樹脂やハイポーラスポリマー樹脂等で処理してもよい。また、ゴマ蛋白の酵素分解物については、粉末に加工するためにデキストリンなどが添加されていてもよい。
【0014】
ゴマ蛋白の酵素分解物を飲料に配合する場合、本発明に係る飲料において、ゴマペプチドの一種であるLVYというアミノ配列を有するトリペプチド(以下、LVYペプチドともいう)が45~1300ppbとなるように配合することが好ましい。一つの態様において、ゴマ蛋白の酵素分解物にはLVYペプチドが0.001~0.1重量%程度含まれている。LVYペプチドは、N末端からC末端にかけてロイシン(Leu)、バリン(Val)、チロシン(Tyr)というアミノ配列を有しており、ゴマ蛋白の酵素分解物に含まれる主
要なゴマペプチドである。LVYペプチドは、特許第4369986号に記載されているように血圧降下効果を有することが知られており、本発明に係る飲料において、このトリペプチドの含有量の下限値は50ppb以上が好ましく、60ppb以上がより好ましく、70ppb以上がさらに好ましく、上限値は900ppb以下が好ましく、700ppb以下がより好ましく。500ppb以下がさらに好ましく、450ppb以下がよりさらに好ましく、430ppb以下が最も好ましく、400ppb以下や380ppb以下としてもよい。
【0015】
本発明の穀物茶飲料において、ゴマ蛋白の酵素分解物の配合量は、160~2700ppmが好ましく、200~2500ppmがより好ましく、300~2000ppm以上がさらに好ましい。
【0016】
5-メチル-2-フルアルデヒド
本発明に係る飲料は、5-メチル-2-フルアルデヒドを含有する。5-メチル-2-フルアルデヒドは、下式で表される有機化合物(CAS登録番号:620-02-0)であり、植物中に存在することが知られている。
【0017】
【0018】
また、5-メチル-2-フルアルデヒドは、植物素材の焙煎や発酵などによっても生成し、コーヒー、紅茶、焼酎などに含まれる焦げ臭成分であることが知られている。本発明においては、5-メチル-2-フルアルデヒドは、穀物茶飲料におけるゴマペプチドに起因する後味のぬめりの抑制効果を有する。本発明の穀物茶飲料に用いられる5-メチル-2-フルアルデヒドの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0019】
本発明の穀物茶飲料における5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量は150~2000ppbである。5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が上記の範囲より多いと、5-メチル-2-フルアルデヒド由来の特異的な臭いによって穀物茶飲料が飲用しづらくなる可能性があるため、5-メチル-2-フルアルデヒド含有量の上限は、1800ppb以下が好ましく、1500ppb以下がより好ましく、1200ppb以下がさらに好ましく、800ppb以下としてもよい。一方、5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が上記の範囲より少ないと後味のぬめり抑制効果が十分に得られなくなる可能性がある。そのような観点から、本発明の穀物茶飲料における5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量は、180ppb以上が好ましく、250ppb以上がより好ましく、300ppb以上がよりさらに好ましい。本発明において、5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー・質量分析法(GC-MS法)によって測定することができる。
【0020】
穀物茶抽出物
本発明に係る飲料は、穀物茶抽出物を含有する。麦茶などに代表される穀物茶は、焙煎した穀物などを原料とする飲料であり、焙煎穀物由来の香ばしい香りを有し、カフェイン含有量が少なく胃などへの刺激が少ないことから、日常的に広く飲用されている。また、麦茶などの穀物茶は、体温を下げる、血流を改善するなどの生理効果を有することも知られており、特に夏場において冷たくして飲用されている。そのため、ゴクゴクと飲みやすく、飲み続けやすい止渇性の高い味わいであることが非常に重要である。
【0021】
本発明の穀物茶抽出物は、好ましい態様において、焙煎麦抽出物を含有する。ここで、焙煎麦抽出物とは、焙煎処理された麦の種子から抽出溶媒を用いて抽出されたものをいう。麦原料にはイネ科に属する大麦(Hordeum vulgare)やハトムギ(Coix lacryma-jobi varma-yuen)からなる1種類以上を含む。
【0022】
焙煎麦抽出物としては、焙煎麦抽出液又はその濃縮物を1種又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。ここで「焙煎麦濃縮物」とは、焙煎麦抽出液のうち溶媒の一部を除去するなどして成分濃度を高めたものであり、例えば濃縮方法として、常圧濃縮、減圧濃縮、膜濃縮等を挙げることができる。焙煎麦濃縮物は液体であっても固体(粉末など)であってもよく、市販のエキスを使用してもよい。
【0023】
一つの態様において、本発明にかかる飲料は、焙煎麦抽出物を含む穀物茶抽出物を含有し、食品表示法(平成27年4月施行)で表記される原材料表示において、「大麦」「はと麦」などの麦茶に関する表記が上位に記載される飲料をいう。好ましくは、原材料表示で麦茶に関する表記が1番目又は2番目に表記される飲料であり、より好ましくは1番目に表記される飲料である。
【0024】
また、本発明に係る飲料は、焙煎麦抽出物に加えて、麦以外の穀類の種子を含有してもよい。麦以外の穀類の種子としては、例えば、玄米、白米、黒ごま、白ごま、大豆、とうもろこし、黒豆、そば、ケツメイシ(ハブ茶)、麦芽などを挙げることができる。また本発明に係る飲料は、茶の抽出物を含んでいてもよく、茶としてはカメリアシネンシスの茶葉を好適に挙げることができ、例えば、発酵茶、半発酵茶、不発酵茶などを制限なく用いることができる。
【0025】
麦などの穀物原料の焙煎に関し、焙煎機、焙煎方法は特に限定されない。一般的な焙煎機として、連続流動式焙煎機や回転ドラム方式の焙煎機等があり、焙煎方法は、加熱方法により分類すれば、直火、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどの方法がある。
【0026】
焙煎処理された穀物原料の抽出方法は、浸漬抽出又はドリップ抽出のいずれの方法を用いてもよい。抽出溶媒は、飲用可能で抽出に適する溶媒であれば特に限定されないが、好ましくは水性溶媒であり、最も簡便には水を用いることができる。水は、食品の処理に使用可能な水質であればよく、例えば、蒸留水、脱塩水、アルカリイオン水、海洋深層水、イオン交換水、脱酸素水或いは水溶性の有機化合物(例えば、アルコール類)や無機塩類を含む水などを用いることができるが、好ましくは純水を用いる。
【0027】
容器詰飲料
本発明の容器詰飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ビタミン、エキス類、品質安定剤などが挙げられ、添加剤を単独で使用してもよいし、複数の添加剤を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の容器詰飲料のpHは、香味及び保存安定性の観点から、好ましくは5.5~8.0であり、より好ましくは6.0~7.0である。
本発明の容器詰飲料に使用される容器は、特に制限されず、一般的な容器を使用することができる。樹脂製容器としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)を好適な例として挙げることができる。樹脂製容器の他にも、例えば、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などを挙げることができ、このような容器に密閉した形態で提供することができる。内容量は、特に限定されないが、例えば190mL~2000mLであり、好ましくは300mL~1500mL、より好ましくは350mL~1000mL、さらに好ましくは400mL~800mLである。
【0029】
上述のとおり、本発明は、ゴマ蛋白の酵素分解物に起因する後味のぬめりを効果的に抑制するものであるが、後味のぬめりは、加熱殺菌によって特に顕在化する。そのため、本発明による効果を特に大きく享受できるため、好ましい態様において本発明に係る飲料は、加熱殺菌済の容器詰飲料である。本発明における加熱殺菌の条件は特に制限されないが、例えば、食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択することができ、具体的には、60~150℃、好ましくは90~150℃、より好ましくは110~150℃で、1秒間~60分間、好ましくは1秒間~30分間とすることができる。容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス等)を使用する場合には、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)を行えばよい。
【0030】
また、容器として非耐熱性容器(PETボトル、紙容器等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却した後、容器に充填することができる。
【実施例0031】
以下、具体的な実験例を示して本発明の詳細を説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0032】
各成分の定量
各サンプルにおける5-メチル-2-フルアルデヒド、LVYペプチドは、以下の方法にて定量した。
【0033】
<5-メチル-2-フルアルデヒド>
サンプル中の5-メチル-2-フルアルデヒドの分析は、ガスクロマトグラフィー・質量分析法(GC-MS法)を用いて行った。サンプル1gに精製水を加えて20mlとし、ジエチルエーテル10ml、塩化ナトリウム8gを加えて、10分振とうさせた。その後、2000r/min、5分間の条件で遠心分離をし、ジエチルエーテル層を下記の条件で分析した。
【0034】
【0035】
<LVYペプチド>
LVYペプチドの定量は、固相抽出カートリッジを用いてサンプルを前処理してから、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。
【0036】
市販の固相抽出カートリッジ(OASIS HLB 3 cc、60 mg、Waters 社)を製品マニュアルに記載の方法で処理してから、サンプル2.0mLを固相抽出カートリッジにロードし、蒸留水2.0mLを流して洗浄した。さらに、5%メタノール2.0mLを流して溶出洗浄してから、15%メタノール2.0mLを2回流し、溶出液を試験管に採取し、溶出液を5.0mLのメスフラスコまたはメスシリンダーに移した。次いで、採取に用いた試験管に残存する微量の溶出液を15%メタノールで共洗いすることにより回収してから、溶出液を5.0mLにメスアップし、十分に混合し均一化したものを試験溶液として使用した。
【0037】
なお、サンプルのロードから蒸留水での洗浄までは、自然落下の流速で行った一方、その後の5%メタノールでの溶出洗浄、15%メタノールでの溶出については、1~2分程度、400rpm、30×gの条件で遠心処理をして溶出させた。
【0038】
LVYペプチドは、化学合成品(トリフルオロ酢酸塩、純度:90.0%以上、ペプチド研究所)を用いてあらかじめ検量線を作成し、検量線に基づいてサンプルに含まれるLVYペプチド濃度を測定した。すなわち、LVYペプチド濃度が0.25μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL、2.0μg/mL、4.0μg/mLである標準溶液を調製してから、この標準溶液を下記の条件で分析し、横軸にLVY濃度、縦軸にピーク面積をとり、検量線を作成した。
【0039】
【0040】
実験1:穀物茶飲料の製造と評価(参考例)
100gの穀物原料(焙煎大麦80%、玄米10%、焙煎はと麦10%)に対し1600mLの熱水(80~90℃)を用いて5分間抽出処理を行った後、穀物原料を分離し、さらに200メッシュを通液させ、粉砕組織や穀物粒子などの固形分を除去した。穀物茶抽出物に水を加えて10倍に希釈し、約1分間、130℃で殺菌を行い、麦茶を含有する穀物茶飲料を得た。得られた穀物茶飲料に、ゴマ蛋白の酵素分解物(GPパウダーB20、KISCO社)を表1の含有量となるように配合し、容器詰飲料を製造した(サンプル1-1~1-4)。また、ゴマ蛋白の酵素分解物に代えて、大豆タンパク質分解物(ハイニュートAM、フジ政府)、アンセリン含有ペプチド(イミダ40、日本ハム)、デキストリン(サンデック#70、三和澱粉工業)をそれぞれ200ppm配合して、容器詰穀物茶飲料を製造した(サンプル1-5~1-7)。
【0041】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、専門パネル5名で官能評価を行った。具体的には、ゴマ蛋白の酵素分解物を添加していないサンプル1-1を対照として、各パネルが個別に各サンプルの後味を評価し、下記の基準に基づいて3段階で評価した。
<後味の評価基準>
〇:5名のパネル全員が対照と同等の後味であると評価した場合
△:3~4名のパネルが対照と同等の後味であると評価した場合
×:2名以下のパネルが対照と同等の後味であると評価した場合
(対照と変わらないと評価したパネルが一人もいない場合を含む)
【0042】
【0043】
評価結果を表1に示す。ゴマ蛋白の酵素分解物を飲料に多く配合すると、後味の脂様のぬめりを強く感じられるようになり、飲料の止渇性が下がっていると感じられた。
また、大豆タンパク質分解物、アンセリン含有ペプチド、デキストリンを200ppm配合した穀物茶飲料については、5名のパネル全員が脂様のぬめりを感じなかった。
【0044】
実験2:穀物茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1-1に、ゴマ蛋白の酵素分解物(GPパウダーB20、KISCO社)と5-メチル-2-フルアルデヒド(富士フイルム和光純薬)を添加し、それぞれの含有量が表2の通りである容器詰飲料を調製した(サンプル2-1~2-4)。
【0045】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、専門パネル5名で官能評価を行った。官能評価にあたっては、先ず、パネルがサンプル2-1と2-2を飲用し、飲料の後味(脂様のぬめり)についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各パネルが以下の評価基準に基づいて評価をした。各パネルの評価点の平均値を下表に示すが、平均値が2.0点以上であると明らかに後味が改善されていると考えられた。
<後味の評価基準>
4:脂様のぬめりがない(サンプル2-1と同等)
3:脂様のぬめりがやや感じられる
2:脂様のぬめりが感じられる
1:脂様のぬめりが強く感じられる(サンプル2-2と同等)
【0046】
【0047】
評価結果を上記の表に示す。5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が200ppbおよび2000ppbである飲料(サンプル2-3、2-4)は、サンプル2-2と比較して明らかに後味が改善されており、後味(脂様のぬめり)が改善された結果、飲料として止渇性が高くなったというパネルのコメントも得られた。
【0048】
実験3:穀物茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1-1に、ゴマ蛋白の酵素分解物と5-メチル-2-フルアルデヒドを添加し、実験2と同様にして下表に示す容器詰飲料を調製した(サンプル3-
1~3-5)。
【0049】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、実験2と同様にして、専門パネル5名で官能評価を行った。官能評価にあたっては、先ず、パネルがサンプル3-1と3-2を飲用し、飲料の後味(脂様のぬめり)についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各パネルが以下の評価基準に基づいて評価をした。各パネルの評価点の平均値を下表に示すが、平均値が2.0点以上であると明らかに後味が改善されていると考えられた。
<後味の評価基準>
4:脂様のぬめりがない(サンプル3-1と同等)
3:脂様のぬめりがやや感じられる
2:脂様のぬめりが感じられる
1:脂様のぬめりが強く感じられる(サンプル3-2と同等)
【0050】
【0051】
評価結果を上記の表に示す。5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が200ppbおよび2000ppbである飲料(サンプル3-3、3-4)は、サンプル3-2と比較して明らかに後味が改善されており、後味のぬめりが改善された結果、飲料として止渇性が高くなったというパネルのコメントも得られた。また、5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が2500ppbである飲料(サンプル3-5)については、後味のぬめりは改善されたが、酸味を感じ、飲料としての止渇性が低下すると評価をしたパネルがいた。
【0052】
実験4:穀物茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1-1に、ゴマ蛋白の酵素分解物と5-メチル-2-フルアルデヒドを添加し、実験2と同様にして下表に示す容器詰飲料を調製した(サンプル4-1~4-4)。
【0053】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、実験2と同様にして、専門パネル5名で官能評価を行った。官能評価にあたっては、先ず、パネルがサンプル4-1と4-2を飲用し、飲料の後味(脂様のぬめり)についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各パネルが以下の評価基準に基づいて評価をした。各パネルの評価点の平均値を下表に示すが、平均値が2.0点以上であると明らかに後味が改善されていると考えられた。
<後味の評価基準>
4:脂様のぬめりがない(サンプル4-1と同等)
3:脂様のぬめりがやや感じられる
2:脂様のぬめりが感じられる
1:脂様のぬめりが強く感じられる(サンプル4-2と同等)
【0054】
【0055】
評価結果を上記の表に示す。5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が200ppbおよび1000ppbである飲料(サンプル4-3、4-4)は、サンプル4-2と比較して明らかに後味が改善されており、後味のぬめりが改善された結果、飲料として止渇性が高くなったというパネルのコメントも得られた。
【0056】
実験5:穀物茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1-1に、ゴマ蛋白の酵素分解物と5-メチル-2-フルアルデヒドを添加し、実験2と同様にして下表に示す容器詰飲料を調製した(サンプル5-1~5-3)。
【0057】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、実験2と同様にして、専門パネル5名で官能評価を行った。官能評価にあたっては、先ず、パネルがサンプル5-1と5-2を飲用し、飲料の後味(脂様のぬめり)についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各パネルが以下の評価基準に基づいて評価をした。各パネルの評価点の平均値を下表に示すが、平均値が2.0点以上であると明らかに後味が改善されていると考えられた。
<後味の評価基準>
4:脂様のぬめりがない(サンプル5-1と同等)
3:脂様のぬめりがやや感じられる
2:脂様のぬめりが感じられる
1:脂様のぬめりが強く感じられる(サンプル5-2と同等)
【0058】
【0059】
評価結果を上記の表に示す。5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が200ppbである飲料(サンプル5-1)は、サンプル5-2と比較して明らかに後味が改善されており、後味のぬめりが改善された結果、飲料として止渇性が高くなったというパネルのコメントも得られた。
【0060】
実験6:穀物茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1-1に、ゴマ蛋白の酵素分解物と5-メチル-2-フルアルデヒドを添加し、実験2と同様にして下表に示す容器詰飲料を調製した(サンプル6-1~6-3)。
【0061】
製造した容器詰飲料の後味(脂様のぬめり)について、実験2と同様にして、専門パネル5名で官能評価を行った。官能評価にあたっては、先ず、パネルがサンプル6-1と6-2を飲用し、飲料の後味(脂様のぬめり)についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各パネルが以下の評価基準に基づいて評価をした。各パネルの評価点の平均値を下表に示すが、平均値が2.0点以上であると明らかに後味が改善されていると考えられた。
<後味の評価基準>
4:脂様のぬめりがない(サンプル6-1と同等)
3:脂様のぬめりがやや感じられる
2:脂様のぬめりが感じられる
1:脂様のぬめりが強く感じられる(サンプル6-2と同等)
【0062】
【0063】
評価結果を上記の表に示す。飲料に配合するゴマ蛋白の酵素分解物が多くなり過ぎると、脂様のぬめりが非常に強く、5-メチル-2-フルアルデヒドの含有量が2000ppbであっても脂様のぬめりが強く感じられた。