(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068870
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/569 20210101AFI20240514BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/209
H01M50/55 101
H01M50/503
H01M50/507
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179500
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 知実
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY10
5H040DD03
5H040DD13
5H040DD26
5H040JJ03
5H040LL06
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA27
5H043FA04
5H043HA08F
5H043JA04F
5H043JA07F
5H043KA19F
(57)【要約】
【課題】過剰設計による製造コストの増大が抑制された電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュールは、第1の方向に配列され、筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを各々有する複数の電池セルと、複数の電池セルの電極端子を接続する板状のバスバーと、バスバーの電圧を検出するための電圧検出線と、電圧検出線と電気的に接続され、バスバーの少なくとも一部を挟持するように付勢された導電性のクリップ部材とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配列され、筐体と、前記筐体上に設けられた電極端子とを各々有する複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの前記電極端子を接続する板状のバスバーと、
前記バスバーの電圧を検出するための電圧検出線と、
前記電圧検出線と電気的に接続され、前記バスバーの少なくとも一部を挟持するように付勢された導電性のクリップ部材とを備えた、電池モジュール。
【請求項2】
前記電圧検出線は、前記第1の方向から前記クリップ部材にカシメ接続される、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記クリップ部材は、前記バスバーを挟持するコの字状部分を含む、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記コの字状部分は、前記第1の方向に直交する第2の方向から前記バスバーに嵌合される、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記バスバーは、前記クリップ部材の一部を受け入れる溝部を有する、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記溝部は、前記バスバーの両面に形成される、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記バスバーおよび前記クリップ部材の少なくとも一部を取り囲む壁部をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記壁部は絶縁性樹脂からなる、請求項7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記複数の電池セルの前記筐体は角形形状を有する、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記複数の電池セルは、リチウムイオン電池セルである、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1,2に示されるように、バスバーおよび導体、またはバスバーどうしをクリップ部材により挟持して互いに接続することが従来から行われている。
【0003】
また、特許文献3には、配電盤、分電盤等の主回路の電圧、電流を試験計測する際に、配電盤端子等にリード線を接続するための開閉型試験用接続端子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-51999号公報
【特許文献2】特開2014-154246号公報
【特許文献3】特開2009-176662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧検出線をバスバーに接続する構造において、ねじ締め構造および溶接構造が用いられている。しかし、ねじ締め構造および溶接構造を採用した場合には、製造コストが増大する。たとえば、電圧検出線とバスバーとの接続構造に要求される抵抗値はmΩオーダーであるところ、溶接構造を採用した場合の抵抗値はμΩオーダーであり、過剰設計となり得る。
【0006】
本技術の目的は、過剰設計による製造コストの増大が抑制された電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、以下の電池モジュールを提供する。
【0008】
[1]第1の方向に配列され、筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを各々有する複数の電池セルと、複数の電池セルの電極端子を接続する板状のバスバーと、バスバーの電圧を検出するための電圧検出線と、電圧検出線と電気的に接続され、バスバーの少なくとも一部を挟持するように付勢された導電性のクリップ部材とを備えた、電池モジュール。
【0009】
[2]電圧検出線は、第1の方向からクリップ部材にカシメ接続される、[1]に記載の電池モジュール。
【0010】
[3]クリップ部材は、バスバーを挟持するコの字状部分を含む、[1]または[2]に記載の電池モジュール。
【0011】
[4]コの字状部分は、第1の方向に直交する第2の方向からバスバーに嵌合される、[3]に記載の電池セル。
【0012】
[5]バスバーは、クリップ部材の一部を受け入れる溝部を有する、[1]から[4]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0013】
[6]溝部は、バスバーの両面に形成される、[5]に記載の電池モジュール。
【0014】
[7]バスバーおよびクリップ部材の少なくとも一部を取り囲む壁部をさらに備えた、[1]から[6]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0015】
[8]壁部は絶縁性樹脂からなる、[7]に記載の電池モジュール。
【0016】
[9]複数の電池セルの筐体は角形形状を有する、[1]から[8]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0017】
[10]複数の電池セルは、リチウムイオン電池セルである、[1]から[9]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【発明の効果】
【0018】
本技術によれば、過剰設計による電池モジュールの製造コスト増大を回避し得る。なお、電圧検出線には大電流が流れないため、必ずしも溶接構造を採用しなくても、要求される抵抗値の仕様を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電池モジュールの基本的構成を示す図である。
【
図3】電池モジュールにおけるバスバーの配置を示す図である。
【
図4】電池モジュールにおけるバスバーと電圧検出線との接続構造を示す分解斜視図である。
【
図5】電池モジュールにおけるバスバーと電圧検出線との接続構造を示す斜視図である。
【
図7】バスバーと電圧検出線との接続構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0021】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0022】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0023】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0024】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0025】
本明細書において、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0026】
図1は、電池モジュール1の基本的構成を示す図である。
図1に示すように、電池モジュール1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300とを備える。
【0027】
複数の電池セル100は、Y軸方向(第1方向)に並ぶように設けられる。これにより、電池セル100の積層体が形成される。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0028】
エンドプレート200は、Y軸方向において電池モジュール1の両端に配置されている。エンドプレート200は、電池モジュール1を収納するケースなどの基台に固定される。拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。
【0029】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に固定し、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0030】
図2は、電池セル100を示す斜視図である。
図2に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120(外装缶)とを有する。すなわち、電池セル100は角型二次電池セルである。
【0031】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0032】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0033】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。筐体120には、ガス排出弁126が設けられている。
【0034】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0035】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0036】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0037】
ガス排出弁126は、上面121に設けられている。ガス排出弁126は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0038】
図3は、電池モジュール1におけるバスバー400の配置を示す図である。
図3の例では、隣接する電池セル100の正極端子111と負極端子112とがバスバー400により電気的に接続され、複数の電池セル100が電気的に直列接続される。
【0039】
すなわち、電池モジュール1は、電極端子110を各々有し、所定の方向に沿って配列された複数の電池セル100と、複数の電池セル100の電極端子110どうしを接続するバスバー400とを備える。バスバー400は、たとえば0.8mm以上1.5mm以下程度の厚みを有する板状部材である。バスバー400は、たとえばアルミニウム、銅などにより構成される。
【0040】
図4は、バスバー400と電圧検出線600との接続構造を示す分解斜視図である。
図5は、
図4に示されるバスバー400と電圧検出線600とが接続された状態を示す斜視図であり、
図6は、
図5におけるVI-VI断面図である。
図7は、変形例に係るバスバー400と電圧検出線600との接続構造を示す断面図である。
【0041】
図4ないし
図7に示すように、導電性素材からなるクリップ部材500は、バスバー400を挟持するコの字状部分を含む。クリップ部材500は、たとえばニッケルめっきが施された真鍮などにより構成される。クリップ部材500は、X軸方向からバスバー400に嵌合される。クリップ部材500は、バスバー400を挟持するように付勢されている。
【0042】
電池モジュール1に含まれる各電池セル100の性能が想定通り発揮されていることを確かめるために、各々のバスバー400の電位を測定することが一般的に行われる。電圧検出線600は、各々のバスバー400の電圧を測定するために設けられる。
【0043】
電圧検出線600としては、通常よく用いられる銅線が使用可能である。電圧検出線600は、Y軸方向からクリップ部材500に接続(たとえばタブカシメ接続)される。これにより、クリップ部材500と電圧検出線600とが電気的に接続される。
【0044】
図5に示すように、バスバー400は、プレート700および壁部800を含むバスバーモジュール上に設けられる。壁部800は、バスバー400およびクリップ部材500の少なくとも一部を取り囲むように設けられる。プレート700および壁部800は、たとえば絶縁性樹脂からなる。
【0045】
プレート700における壁部800に囲まれた領域にバスバー400が載置される。プレート700は、Y軸方向に配列された複数の電池セル100の上方に設けられる。壁部800は、バスバー400に接続されたクリップ部材500にも隣接する。したがって、クリップ部材500がバスバー400から意図せずに外れることを抑制し得る。
【0046】
バスバー400には、クリップ部材500の一部を受け入れる溝部410が形成されている。
図5,
図6に示すように、クリップ部材500に設けられた突出部510がバスバー400の溝部410に係合する。これにより、クリップ部材500および電圧検出線600の位置が固定される。
【0047】
溝部410は、
図6に示すように、バスバー400の両面に形成されてもよいし、
図7に示すように、バスバー400の片面にのみ形成されてもよい。なお、
図6および
図7においては、図示の便宜上、プレート700および壁部800を図示していない。
【0048】
電圧検出線600をバスバー400に接続するとき、その接続構造に要求される抵抗値はmΩオーダーである。したがって、抵抗値がμΩオーダーとなる溶接構造を採用すると、過剰設計となり得る。
【0049】
これに対し、本実施の形態に係る電池モジュール1においては、クリップ部材500をバスバー400に係合させることによりバスバー400と電圧検出線600とを電気的に接続している。このとき、電圧検出線600には大電流が流れないため、バスバー400とクリップ部材500との間に必ずしも溶接を施さなくても、要求される抵抗値の仕様を満足することができる。以上の結果として、過剰設計による電池モジュール1の製造コスト増大を回避し得る。
【0050】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 電池モジュール、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、126 ガス排出弁、200 エンドプレート、300 拘束部材、400 バスバー、410 溝部、500 クリップ部材、510 突出部、600 電圧検出線、700 プレート、800 壁部。