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特開2024-68877歩容計測装置、推定システム、歩容計測方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068877
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】歩容計測装置、推定システム、歩容計測方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179514
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 浩司
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる歩容計測装置等を提供する。
【解決手段】磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、第1センサから出力された起動信号に応じて起動して、クロックおよび第2センサを起動させる制御部と、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成し、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成するデータ生成部と、計測データを出力する出力部と、を備える歩容計測装置とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、
クロックカウント値を生成するクロックと、
足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、
前記第1センサから出力された前記起動信号に応じて起動して、前記クロックおよび前記第2センサを起動させる制御手段と、
前記第2センサによって計測された前記物理量を用いたセンサデータを生成し、前記物理量が計測されたタイミングにおける前記クロックカウント値と前記センサデータと紐づけた計測データを生成するデータ生成手段と、
前記計測データを出力する出力手段と、を備える歩容計測装置。
【請求項2】
前記第1センサは、
歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された磁気テープによって発生した磁界の検出に応じて、前記起動信号を出力する請求項1に記載の歩容計測装置。
【請求項3】
前記第1センサは、
歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された電線への通電によって発生した磁界の検出に応じて、前記起動信号を出力する請求項1に記載の歩容計測装置。
【請求項4】
前記第2センサは、
加速度を検出する加速度センサと、
角速度を検出する角速度センサと、を含む請求項1に記載の歩容計測装置。
【請求項5】
前記データ生成手段は、
前記第2センサによって計測された前記物理量と、前記クロックから出力された前記クロックカウント値とを取得する取得手段と、
前記物理量をデジタルデータの前記センサデータに変換して、変換後の前記センサデータを前記クロックカウント値に紐づける変換手段と、
前記センサデータの時系列データを正規化する正規化手段と、
正規化された前記センサデータの時系列データから歩行に関する特徴量を抽出する抽出手段と、
抽出された前記特徴量を前記計測データとして出力するデータ出力手段と、を有する請求項1に記載の歩容計測装置。
【請求項6】
請求項2に記載の歩容計測装置と、
歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された磁気テープと、を備える推定システム。
【請求項7】
請求項3に記載の歩容計測装置と、
歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された電線と、を備える推定システム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の歩容計測装置と、
前記歩容計測装置から出力された計測データを取得し、取得した前記計測データを用いて身体状態を推定する身体状態推定装置と、を備える推定システム。
【請求項9】
磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、を備える歩容計測装置を用いた歩容計測方法であって、
コンピュータが、
前記第1センサから出力された前記起動信号に応じて前記クロックおよび前記第2センサを起動させ、
前記第2センサによって計測された前記物理量を用いたセンサデータを生成し、
前記物理量が計測されたタイミングにおける前記クロックカウント値と前記センサデータと紐づけた計測データを生成し、
前記計測データを出力する歩容計測方法。
【請求項10】
磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、を備える歩容計測装置を用いた歩容計測のためのプログラムであって、
前記第1センサから出力された前記起動信号に応じて前記クロックおよび前記第2センサを起動させる処理と、
前記第2センサによって計測された前記物理量を用いたセンサデータを生成する処理と、
前記物理量が計測されたタイミングにおける前記クロックカウント値と前記センサデータと紐づけた計測データを生成する処理と、
前記計測データを出力する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩容を計測する歩容計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアへの関心の高まりに伴って、歩容に応じた情報を提供するサービスに注目が集まっている。例えば、靴等の履物に実装されたセンサによって計測されたセンサデータを用いて、歩容を解析する技術が開発されている。センサデータの時系列データには、身体状態と関連する歩行イベントに伴った特徴が表れる。歩行イベントに伴った特徴を含む歩行データを解析することによって、対象者の身体状態を推定できる。
【0003】
特許文献1には、圧力検知装置、歩容解析装置、および表示装置を備えた歩容解析システムが開示されている。歩容解析装置は、圧力検知装置から出力された圧力信号を用いて、被験者の歩行における第1歩目を検出する。歩容解析装置は、第1歩目の足裏の圧力に関する足裏データに基づいて、被験者の状態を解析する。
【0004】
特許文献2には、計測モードの選択が可能なタイマー装置について開示されている。特許文献2の装置は、1回だけ計測を行うシングルモードと、一定周期で繰り返し計測を行うリピートモードとの選択が可能である。特許文献2の装置は、設定値のカウントの終了に応じてカウント回路が計測終了信号を出力することによって、シングルモードを実現する。特許文献2の装置は、第1の外部端子への所定の信号の入力に応じて計測終了信号の出力を終了し、計測終了信号に同期させて所定の信号を入力することで、周期的に計測終了信号を出力するリピートモードを実現する。
【0005】
特許文献3には、歩行数を計測する通信システムについて開示されている。特許文献3のシステムは、第1通信装置と第2通信装置を備える。第1通信装置は、路面から離れた位置に装着される。第2通信装置は、路面の近傍の位置に装着される。第2通信装置は、電極が路面と電気的に接地したタイミングにおける電界信号の強度の変化に応じて、歩行数を計測する。第1通信装置と第2通信装置は、人体を信号伝送路として通信する。
【0006】
特許文献4には、足に関するリスクを推定するリスク推定装置が開示されている。特許文献4の装置は、左右の靴に設けられたセンサによって測定された足圧の測定データを取得する。特許文献4の装置は、足圧の測定データを用いて、左右の足に関する立脚相の開始および終了のタイミングを特定する。特許文献4の装置は、立脚相における左右の足に関する足圧の非対称性に基づいて、下肢異常リスクを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-168281号公報
【特許文献2】特開2013-117923号公報
【特許文献3】特開2010-219976号公報
【特許文献4】特開2022-013407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
履物に搭載されるセンサは、外部からの指示で起動させたり、予め設定された時刻で起動させたりする必要がある。実用的には、ユーザの歩行動作に合わせて、歩容の計測を開始することが求められる。そのような場合、スマートフォンなど端末装置を用いて、歩容計測装置を起動させる指示を送信する必要がある。
【0009】
特許文献1のシステムは、圧力検知装置による圧力の検知に応じて、歩容の計測を開始する。しかし、特許部兼1の手法では、圧力検知装置による圧力を検知できない限り、歩容の計測を開始できなかった。
【0010】
特許文献2の装置は、計測の開始を指示する信号を外部から受信することによって、一定周期で計測を開始することができる。しかし、特許文献2の装置は、計測の開始を指示する信号を外部から受信しない限り、任意のタイミングで計測を開始できなかった。
【0011】
特許文献3のシステムは、第2通信装置の電極が路面と電気的に接地したタイミングにおける電界信号の強度の変化に応じて、歩行数を計測する。そのため、特許文献3のシステムは、第2通信装置の電極が路面と電気的に接続されない限り、歩行数を計測できなかった。
【0012】
特許文献4の装置は、足圧の測定データに基づいて、立脚相の開始および終了のタイミングを検出する。そのため、特許文献4の装置は、足圧を測定できない限り、歩行の開始を検出できなかった。
【0013】
本開示の目的は、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる歩容計測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様の歩容計測装置は、磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、第1センサから出力された起動信号に応じて起動して、クロックおよび第2センサを起動させる制御部と、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成し、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成するデータ生成部と、計測データを出力する出力部と、を備える。
【0015】
本開示の一態様の歩容計測方法は、磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、を備える歩容計測装置を用いた歩容計測方法であって、第1センサから出力された起動信号に応じてクロックおよび第2センサを起動させ、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成し、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成し、計測データを出力する。
【0016】
本開示の一態様のプログラムは、磁界の検出に応じて起動信号を出力する第1センサと、クロックカウント値を生成するクロックと、足の動きに関する物理量を計測する第2センサと、を備える歩容計測装置を用いた歩容計測のためのプログラムであって、第1センサから出力された起動信号に応じてクロックおよび第2センサを起動させる処理と、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成する処理と、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成する処理と、計測データを出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる歩容計測装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る歩容計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る歩容計測装置の配置例を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る歩容計測装置が有する第2センサの構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る歩容計測装置に設定される座標系について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る歩容計測装置が有するデータ生成部の構成の一例を示すブロック図である。
図6】歩行周期について説明するための概念図である。
図7】第1の実施形態に係る歩容計測装置による歩行開始の検出例を示す概念図である。
図8】第1の実施形態に係る歩容計測装置による歩行開始の検出例を示す概念図である。
図9】第1の実施形態に係る歩容計測装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図10】第1の実施形態に係る歩容計測装置のデータ生成部による計測データ生成処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係る推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る推定システムによる身体状態の推定結果に応じた情報の出力の一例を示す概念図である。
図13】第3の実施形態に係る歩容計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図14】各実施形態の制御や処理を実行するハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る歩容計測装置の構成について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の歩容計測装置は、靴などの履物に設置される。本実施形態の歩容計測装置は、対象者の歩行に応じて、足の動きに関する物理量に応じたセンサデータを計測する。本実施形態の歩容計測装置は、予め配置された磁気テープや電線などの基準線を用いて、計測を開始する。
【0021】
(構成)
図1は、本実施形態に係る歩容計測装置10の構成の一例を示すブロック図である。歩容計測装置10は、第1センサ11、制御部12、クロック13、第2センサ15、データ生成部16、記憶部17、および出力部18を備える。歩容計測装置10は、第1センサ11および第2センサ15の制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータやマイクロコントローラを有する。例えば、歩容計測装置10は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有する。
【0022】
図2は、両足の靴100の中に、歩容計測装置10が配置される一例を示す概念図である。図2の例では、足弓の裏側に当たる位置に、歩容計測装置10が設置される。歩容計測装置10は、足の動きに関するセンサデータを計測できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。例えば、歩容計測装置10は、靴100の中に挿入されるインソールに配置される。歩容計測装置10は、靴100の底面に配置されてもよい。歩容計測装置10は、靴100の本体に埋設されてもよい。歩容計測装置10は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。また、歩容計測装置10は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレット等の装飾品に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。図2には、両足の靴100に歩容計測装置10が設置される例を示す。歩容計測装置10は、片足の靴100に設置されてもよい。
【0023】
第1センサ11は、電磁界を検出する磁気センサである。第1センサ11の出力端は、制御部12のインタラプト信号入力端子に接続される。例えば、第1センサ11は、電磁界の変化を検出する。第1センサ11は、電磁界の検出に応じて、起動信号を出力する。起動信号は、HI信号およびLO信号のいずれであってもよい。例えば、第1センサ11は、MR(Magneto Resistive)センサ素子や、ホール素子、コイル、リードスイッチなどの磁気センサによって実現される。例えば、第1センサ11は、異方性磁気抵抗(AMR:Anisotropic Magneto Resistive)の効果を利用したAMRセンサ素子によって実現される。
【0024】
制御部12(制御手段)は、第1センサ11から出力された起動信号を受信する。制御部12のインタラプト信号入力端子は、第1センサ11の出力端に接続される。制御部12は、起動信号の入力に応じて起動する。また、制御部12は、起動信号の入力に応じて、クロック13および第2センサを起動させる。例えば、制御部12は、CPUによって実現される。
【0025】
クロック13は、クロックカウント値を生成する。クロック13は、生成されたクロックカウント値をデータ生成部16に出力する。クロック13は、クロックカウント値を出力する素子であれば、特に限定を加えない。例えば、クロック13は、水晶振動子を含むクロック発信器によって実現される。
【0026】
第2センサ15は、足の動きに応じた物理量を計測するセンサである。第2センサ15は、計測した物理量をデータ生成部16に出力する。例えば、第2センサ15は、加速度や角速度などの足の動きに応じた物理量を計測する。
【0027】
図3は、第2センサ15の構成の一例を示すブロック図である。第2センサ15は、加速度センサ151と角速度センサ152を有する。図3には、第2センサ15が加速度センサ151および角速度センサ152を含む例をあげる。第2センサ15は、加速度センサ151および角速度センサ152以外のセンサを含んでもよい。
【0028】
加速度センサ151は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ151は、足の動きに関する物理量として、加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測する。加速度センサ151は、計測した加速度をデータ生成部16に出力する。例えば、加速度センサ151には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。加速度センサ151として用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0029】
角速度センサ152は、3軸周りに関する角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ152は、足の動きに関する物理量として、角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。角速度センサ152は、計測した角速度をデータ生成部16に出力する。例えば、角速度センサ152には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。角速度センサ152として用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0030】
第2センサ15は、例えば、加速度や角速度を計測する慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸方向の加速度を計測する加速度センサ151と、3軸周りに関する角速度を計測する角速度センサ152を含む。第2センサ15は、VG(Vertical Gyro)やAHRS(Attitude Heading)などの慣性計測装置によって実現されてもよい。また、第2センサ15は、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)によって実現されてもよい。第2センサ15は、足の動きに関する物理量を計測できれば、慣性計測装置以外の装置によって実現されてもよい。
【0031】
図2の例では、歩容計測装置10(第2センサ15)を基準として、左右方向のx軸、進行方向のy軸、垂直方向のz軸を含むローカル座標系が設定される。図2の例では、x軸は左方が正であり、y軸は後方が正であり、z軸は上方が正である。歩容計測装置10に設定される軸の向きは、左右の足で同じでもよく、左右の足で異なっていてもよい。例えば、同じスペックで生産された歩容計測装置10が左右の靴100の中に配置される場合、左右の靴100に配置される歩容計測装置10の上下の向き(Z軸方向の向き)は、同じ向きである。その場合、左足に由来するセンサデータに関するローカル座標系の3軸と、右足に由来するセンサデータに関するローカル座標系の3軸とは、左右で同じにある。左右で異なるスペックで生産された歩容計測装置10が靴100の中に配置される場合、左右の靴100に配置される歩容計測装置10の上下の向き(Z軸方向の向き)は、異なる向きであってもよい。その場合、左足に由来するセンサデータに関するローカル座標系の3軸と、右足に由来するセンサデータに関するローカル座標系の3軸とは、左右で異なる。
【0032】
図4は、足弓の裏側に設置された歩容計測装置10(第2センサ15)に設定されるローカル座標系と、地面に対して設定される世界座標系とについて説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、進行方向に正対した状態のユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。なお、図4の例は、ローカル座標系と世界座標系の関係を概念的に示すものであり、ユーザの歩行に応じて変動するローカル座標系と世界座標系の関係を正確に示すものではない。
【0033】
データ生成部16(データ生成手段)は、第2センサによって計測された足の動きに関する物理量を取得する。また、データ生成部16は、クロック13によって生成されたクロックカウント値を取得する。データ生成部16は、物理量とクロックカウント値とを対応付けたセンサデータを生成する。データ生成部16は、生成したセンサデータを出力部18に出力する。例えば、データ生成部16は、生成されたセンサデータから、歩行に関する特徴量を抽出してもよい。その場合、データ生成部16は、抽出された特徴量を出力部18に出力する。
【0034】
図5は、データ生成部16の構成の一例を示すブロック図である。図5の構成は、センサデータから特徴量を抽出する構成である。データ生成部16は、取得部161、変換部162、正規化部163、抽出部165、およびデータ出力部167を有する。出力部18からセンサデータを出力する場合、データ生成部16から正規化部163および抽出部165を省略できる。
【0035】
取得部161(取得手段)は、第2センサ15から計測値を取得する。具体的には、取得部161は、加速度センサ151から、3軸方向の加速度を取得する。また、取得部161は、角速度センサ152から、3軸周りの角速度を取得する。さらに、取得部161は、クロック13からクロックカウント値を取得する。
【0036】
変換部162(変換手段)は、取得した加速度および角速度の計測値をセンサデータに変換する。変換部162は、変換後のセンサデータに、そのセンサデータの基となる計測値が計測されたタイミングのクロックカウント値を紐づける。変換部162は、クロックカウント値が紐づけられたセンサデータを、正規化部163に出力する。センサデータから特徴量を抽出しない場合、変換部162は、クロックカウント値が紐づけられたセンサデータを正規化部163に出力する。
【0037】
例えば、変換部162は、取得された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)する。加速度センサ151および角速度センサ152によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ151および角速度センサ152の各々においてデジタルデータに変換されるように構成されてもよい。変換部162は、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)を、クロックカウント値に紐づけて、正規化部163に出力する。変換部162は、図示しない記憶部に、センサデータを記憶させるように構成されてもよい。センサデータには、デジタルデータに変換された加速度データと、デジタルデータに変換された角速度データとが少なくとも含まれる。加速度データは、3軸方向の加速度ベクトルを含む。角速度データは、3軸周りの角速度ベクトルを含む。また、変換部162は、加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えてもよい。
【0038】
正規化部163(正規化手段)は、クロックカウント値が紐づけられたセンサデータを、変換部162から取得する。正規化部163は、センサデータに含まれる3軸方向の加速度および3軸周りの角速度の時系列データから、一歩行周期分の時系列データ(歩行波形データとも呼ぶ)を抽出する。正規化部163は、抽出された一歩行周期分の歩行波形データの時間を、0~100%(パーセント)の歩行周期に正規化(第1正規化とも呼ぶ)する。0~100%の歩行周期に含まれる1%や10%などのタイミングを、歩行フェーズとも呼ぶ。また、正規化部163は、第1正規化された一歩行周期分の歩行波形データに関して、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように正規化(第2正規化とも呼ぶ)する。立脚相は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している期間である。遊脚相は、足の裏側が地面から離れている期間である。歩行波形データを第2正規化すれば、複数の歩行周期に亘る時間方向における歩行のぶれを均一化できる。
【0039】
図6は、右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。左足を基準とする一歩行周期も、右足と同様である。図6の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期である。図6の横軸は、一歩行周期を100%として第1正規化されている。また、図6の横軸は、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように第2正規化されている。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、荷重応答期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。なお、図6は一例であって、一歩行周期を構成する期間や、それらの期間の名称等を限定するものではない。
【0040】
図6のように、歩行においては、複数の事象(歩行イベントとも呼ぶ)が発生する。E1は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。E2は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。E3は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。E4は、左足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。E5は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。E6は、左足の足裏が接地した状態で、左足と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。E7は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。E8は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。E8は、E1から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。なお、図6は一例であって、歩行において発生する事象や、それらの事象の名称を限定するものではない。
【0041】
例えば、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データ(実線)からは、踵接地HSや爪先離地TOなどの歩行イベントを検出できる。歩行イベントのタイミングは、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データにおいて特定のピークが表れるタイミングである。例えば、ロール角(X軸周り角速度)の時系列データ(破線)からは、立脚中期のタイミングを検出できる。ロール角が最小のタイミングと、ロール角が最大のタイミングとの中点のタイミングが、立脚中期に相当する。例えば、歩行速度や、歩幅、分回し、内旋/外旋、底屈/背屈などのパラメータ(歩容パラメータとも呼ぶ)は、立脚中期を基準として求めることができる。
【0042】
抽出部165(抽出手段)は、正規化部163によって正規化された一歩行周期分の歩行波形データを取得する。抽出部165は、一歩行周期分の歩行波形データから特徴量を抽出する。抽出部165は、予め設定された条件に基づいて、特徴量を抽出する。例えば、抽出部165は、一歩行周期分の歩行波形データから、身体状態の推定に用いられる特徴量を抽出する。
【0043】
データ出力部167(データ出力手段)は、抽出部165によって抽出された特徴量に関する特徴量データを記憶部17に記憶させる。センサデータから特徴量を抽出しない場合、データ出力部167は、センサデータを記憶部17に記憶させる。以下においては、特徴量データおよびセンサデータを総称して、計測データと呼ぶ。
【0044】
記憶部17(記憶手段)は、データ生成部16から出力された計測データを記憶する。例えば、記憶部17は、RAMやROM等のメモリによって実現される。記憶部17は、RAMやROM等のメモリではない記憶装置によって実現されてもよい。データ生成部16によって生成された計測データを記憶部17に記憶させずに、出力部18から出力するように構成されてもよい。その場合、記憶部17が省略されてもよい。
【0045】
出力部18(出力手段)は、送信タイミングにおいて、記憶部17に記録された計測データを出力する。例えば、出力部18は、無線通信を介して、計測データを送信する。出力部18から出力された計測データの用途については、限定を加えない。例えば、計測データは、対象者の身体状態の推定に用いられる。計測データの送信タイミングについては、限定を加えない。例えば、計測データの送信タイミングは、予め設定される。例えば、出力部18は、歩容計測装置10と通信可能に接続された携帯端末などの端末装置からの指示に応じて、計測データを送信してもよい。
【0046】
(検出例)
次に、歩容計測装置10による歩行開始の検出に関して2つの検出例をあげて説明する。1つ目の検出例(検出例1)は、計測開始のスタートラインとなる基準線として磁気テープを用いた例である。2つめの検出例(検出例2)は、計測開始のスタートラインとなる基準線として電線を用いた例である。基準線は、歩容計測装置10を装着した対象者の歩行の開始を検出するための部材である。歩容計測装置10と基準線とを組み合わせたシステムを、推定システムと呼ぶ。以下においては、検出例1および検出例2について個別に説明する。
【0047】
〔検出例1〕
図7は、検出例1について説明するための概念図である。本検出例では、磁気テープ111を基準線とする。磁気テープ111は、磁気を帯びた帯状の部材である。磁気テープ111は、永久磁石を含む。磁気テープ111に含まれる永久磁石の種類や形態には、特に限定を加えない。
【0048】
本検出例では、歩容計測装置10に内蔵された第1センサ11によって、磁気テープ111の周辺の磁界を検出する。歩容計測の対象者は、歩容計測装置10が装着された靴100を履いている。対象者は、磁気テープ111の上に両足を並べて直立する。例えば、対象者は、理学療法士や医師などの計測者の指示に応じて、磁気テープ111の上に両足を並べて直立する。例えば、磁気テープ111の近傍における歩容計測装置10の検出に応じて、磁気テープ111の上に両足を並べて直立することを指示する音声を出力するようにしてもよい。例えば、磁気テープ111の近傍における歩容計測装置10の検出に応じて、磁気テープ111の上に足形などの目印を、プロジェクタを用いて表示させてもよい。音声や表示で計測の指示を出せば、計測者がいなくても、歩容計測を自動で開始できる。
【0049】
対象者が歩行を開始すると、磁界の変化に応じて、動き出した方の足の靴100に装着された歩容計測装置10の第1センサ11から、起動信号が出力される。そのため、動き出した方の足の靴100に装着された歩容計測装置10のクロックカウント値の計測が開始される。すなわち、本検出例によれば、外部と通信せずに、足の動き出しに応じて、靴100に装着された歩容計測装置10による計測を開始できる。
【0050】
〔検出例2〕
図8は、検出例2について説明するための概念図である。本検出例では、電線112を基準線とする。電線112には、電源170が接続される。電源170のスイッチ175を入れることによって、電線112が通電される。電線112は、導電性のある部材であれば、特に限定を加えない。
【0051】
本検出例では、歩容計測装置10に内蔵された第1センサ11によって、通電された電線112の周辺の磁界を検出する。歩容計測の対象者は、歩容計測装置10が装着された靴100を履いている。対象者は、スイッチ175が入っていない状態の電線112の上に両足を並べて直立する。例えば、対象者は、理学療法士や医師などの計測者の指示に応じて、電線112の上に両足を並べて直立する。計測者は、対象者の歩行を開始させるタイミングにおいて、電源170のスイッチ175を入れる。電源170のスイッチ175は、対象者の操作に応じて、操作されてもよい。
【0052】
電線112の通電に応じて発生した磁界の検出に応じて、左右の靴100に装着された歩容計測装置10の第1センサ11から、同じタイミングで起動信号が出力される。そのため、左右の靴100に装着された歩容計測装置10のクロックカウント値が同期される。すなわち、本検出例によれば、外部と通信せずに、靴100に装着された歩容計測装置10による計測を開始できるだけではなく、靴100に装着された歩容計測装置10の時刻を同期できる。
【0053】
(動作)
次に、歩容計測装置10の動作の一例(歩容計測方法)について図面を参照しながら説明する。図9は、歩容計測装置10の動作について説明するためのフローチャートである。図9のフローチャートに沿った説明においては、歩容計測装置10の構成要素を動作主体とする。
【0054】
図9において、磁界の検出に応じて、第1センサ11が起動信号を出力する(ステップS11)。起動信号は、制御部12に入力される。
【0055】
次に、起動信号に応じて、制御部12が起動する(ステップS12)。
【0056】
次に、起動した制御部12が、クロック13と第2センサ15を起動させる(ステップS13)。クロック13は、起動すると、クロックカウント値を生成し始める。第2センサ15は、起動すると、足の動きに関する物理量を計測し始める。
【0057】
次に、データ生成部16が、計測データ生成処理を実行する(ステップS14)。計測データ生成処理の詳細については、後述する。ステップS14の計測データ生成処理で生成された計測データは、記憶部17に記憶される。
【0058】
次に、出力部18が、記憶部17に記憶された計測データを出力する(ステップS15)。
【0059】
〔計測データ生成処理〕
次に、図9のステップS14の計測データ生成処理について図面を参照しながら説明する。図10は、計測データ生成処理について説明するためのフローチャートである。図10のフローチャートに沿った説明においては、データ生成部16を動作主体として説明する。
【0060】
図10において、データ生成部16は、第2センサ15から計測値を取得するとともに、クロック13からクロックカウント値を取得する(ステップS141)。
【0061】
次に、データ生成部16は、計測値とクロックカウント値とを紐づけする(ステップS142)。
【0062】
次に、特徴量を抽出する場合(ステップS143でYes)、データ生成部16は、計測値の時系列データを正規化する(ステップS144)。特徴量を抽出しない場合(ステップS143でNo)、ステップS146に進む。
【0063】
ステップS144の次に、データ生成部16は、正規化された計測値の時系列データから特徴量を抽出する(ステップS145)。
【0064】
ステップS144の次、またはステップS143でNoの場合、データ生成部16は、計測データを記憶部17に記憶させる(ステップS146)。
【0065】
以上のように、本実施形態の歩容計測装置は、第1センサ、制御部、クロック、第2センサ、データ生成部、記憶部、および出力部を備える。第1センサは、磁界の検出に応じて起動信号を出力する。制御部は、第1センサから出力された起動信号に応じて起動して、クロックおよび第2センサを起動させる。クロックは、クロックカウント値を生成する。第2センサは、足の動きに関する物理量を計測する。データ生成部は、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成する。データ生成部は、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成する。記憶部は、生成された計測データを記憶する。出力部は、記憶部に記憶された計測データを出力する。
【0066】
本実施形態の歩容計測装置は、第1センサによる磁界の検出に応じて、第2センサによる足の動きに関する物理量の計測を開始する。そのため、本実施形態の歩容計測装置は、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる。
【0067】
本実施形態の一態様において、第1センサは、歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された磁気テープによって発生した磁界の検出に応じて、起動信号を出力する。例えば、本態様によれば、基準線として設置された磁気テープによって発生した磁界によって、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる。例えば、本実施形態の歩容計測装置と磁気テープとを備える推定システムが構築されてもよい。
【0068】
本実施形態の一態様において、第1センサは、歩容計測のスタートラインとなる基準線として予め設置された電線への通電によって発生した磁界の検出に応じて、起動信号を出力する。例えば、本態様によれば、基準線として設置された電線への通電によって発生した磁界によって、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる。本態様によれば、両足の履物に実装された歩容計測装置のクロックを同期できる。例えば、本実施形態の歩容計測装置と電線とを備える推定システムが構築されてもよい。
【0069】
本実施形態の一態様のデータ生成部は、取得部、変換部、正規化部、抽出部、およびデータ出力部を有する。取得部は、第2センサによって計測された物理量と、クロックから出力されたクロックカウント値とを取得する。変換部は、物理量をデジタルデータのセンサデータに変換して、変換後のセンサデータをクロックカウント値に紐づける。正規化部は、センサデータの時系列データを正規化する。抽出部は、正規化されたセンサデータの時系列データから歩行に関する特徴量を抽出する。データ出力部は、抽出された特徴量を計測データとして出力する。本態様によれば、第2センサによって計測された物理量を用いて抽出された特徴量を計測データとして生成できる。抽出された特徴量は、身体状態の推定などに使用できる。
【0070】
一般的な歩行において、一歩の期間は1秒程度である。10ミリ秒以下の誤差で、左右の足の時刻を合わせることは難しい。計測周期が100ヘルツの場合、10ミリ秒は一点の差しかないが、歩容パラメータの計算においては大きな誤差になりうる。左右の足の時刻がずれると、左右の足に関して測定されたデータは入れ違う可能性もある。健常者であれば、左右の足の時刻が10ミリ秒程度ずれても、算出される歩容パラメータに大きな誤差は発生しない。しかし、歩行における左右のバランスがずれている人では、左右の足の時刻に関して同期が取れていないと、歩容パラメータを正確に計測できない。本実施形態では、左右の足の時刻を正確に同期できる。例えば、左右の時刻を同期できれば、ダブルサポートタイム(両足支持期間)を実測できる。また、左右の時刻を同期できれば、転倒リスク等をより正確に推定できる。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る推定システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の推定システムは、第1の実施形態の計測装置を備える。本実施形態の推定システムは、計測装置から出力される特徴量(センサデータ)を用いて、ユーザの身体状態に関するデータ処理を実行する。
【0072】
(構成)
図11は、本実施形態に係る推定システム2の構成の一例を示すブロック図である。推定システム2は、歩容計測装置20および身体状態推定装置25を備える。本実施形態においては、ユーザの携帯する携帯端末に身体状態推定装置25がインストールされているものとする。
【0073】
歩容計測装置20は、第1の実施形態に係る歩容計測装置10と同様の構成である。歩容計測装置20は、ユーザの履物に設置される。歩容計測装置20は、磁界の検出に応じて、足の動きに関する物理量の計測を開始する。例えば、歩容計測装置20は、予め設置された磁気テープの磁気によって発生した磁界を検出する。例えば、歩容計測装置20は、予め設置された電線を流れる電流によって発生した磁界を検出する。
【0074】
歩容計測装置20は、足の動きに関する物理量として、角速度や加速度を計測する。歩容計測装置20は、計測された物理量を用いて、歩行に関する特徴量を検出する。歩容計測装置20は、検出された歩行に関する特徴量を身体状態推定装置25に送信する。例えば、歩容計測装置20は、遊脚相の期間において、特徴量を送信する。例えば、歩容計測装置20は、一歩ごとに特徴量を送信する。例えば、歩容計測装置20は、一歩行周期ごとに特徴量を送信してもよい。また、歩容計測装置20は、複数の歩行周期の特徴量を一括で送信してもよい。
【0075】
歩容計測装置20から送信された特徴量は、ユーザの携帯する携帯端末(図示しない)によって受信される。歩容計測装置20は、ケーブルなどの有線を介して歩容パラメータを送信してもよいし、無線通信を介して歩容パラメータを送信してもよい。例えば、歩容計測装置20は、Bluetooth(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、歩容パラメータを送信するように構成される。なお、歩容計測装置20の通信機能は、Bluetooth(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0076】
携帯端末(図示しない)は、ユーザによって携帯可能な通信機器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンやスマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する通信機器である。携帯端末は、歩容計測装置20から歩行に関する特徴量を受信する。例えば、携帯端末は、その携帯端末にインストールされた身体状態推定装置25によって、受信した特徴量を処理する。例えば、サーバ(図示しない)やクラウド(図示しない)に身体状態推定装置25が実装されている場合、携帯端末は、受信した特徴量を、身体状態推定装置25が実装されたサーバやクラウドに送信する。
【0077】
身体状態推定装置25は、ユーザの歩行に関する特徴量を歩容計測装置20から取得する。身体状態推定装置25は、取得した特徴量を用いて、ユーザの歩行に応じた身体状態に関するデータ処理を実行する。
【0078】
例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザの歩行の対称性を判定する。例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザの外反拇趾の進行度を推定する。例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザを個人識別したり、ユーザを個人認証したりする。例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザのステップ長やストライド長を計算する。例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザの回内/回外の度合を推定する。例えば、身体状態推定装置25は、歩行に関する特徴量を用いて、ユーザの下肢に関する計測を行う。身体状態推定装置25によるデータ処理は、歩容計測装置20から取得した特徴量を用いさえすれば、ここであげた例に限定されない。身体状態推定装置25によるデータ処理の具体的な方法については、説明を省略する。
【0079】
身体状態推定装置25は、データ処理の結果を出力する。例えば、身体状態推定装置25は、データ処理の結果を、身体状態推定装置25がインストールされた携帯端末の画面に表示させる。例えば、身体状態推定装置25は、歩容計測装置20から受信した特徴量を用いて算出された歩容パラメータの数値を、リアルタイムで携帯端末の画面に表示させる。例えば、身体状態推定装置25は、歩容計測装置20から受信した特徴量を用いて算出された歩容パラメータの時系列データを、リアルタイムで携帯端末の画面に表示させる。例えば、身体状態推定装置25は、歩容計測装置20から受信した特徴量を用いて推定されたユーザの身体状態に関する情報や、推定された身体状態に応じた情報を携帯端末の画面に表示させる。例えば、身体状態推定装置25は、受信した歩特徴量をサーバやクラウド等に送信してもよい。携帯端末によって受信された特徴量の用途については、特に限定を加えない。
【0080】
図12は、ユーザの携帯する携帯端末260の画面に、そのユーザの歩行に応じた情報を表示させる例である。図12の例において、ユーザは、歩容計測装置20が設置された靴200を履いて歩行する。図12の例では、歩容計測装置20から受信した特徴量を用いて推定されたユーザの身体状態に応じた情報を、携帯端末260の画面に表示させている。図12の例では、特徴量を用いて算出された歩容パラメータに応じて、「も左右の歩行のバランスに改善が見られます。」という身体状態に応じた情報が、携帯端末260の画面に表示されている。また、図12の例では、身体状態に応じた情報に関して、「医師の診断に従って、リハビリを継続しましょう。」という推薦情報が、携帯端末260の画面に表示されている。携帯端末260の画面に表示された情報を確認したユーザは、その推薦情報に応じて、医師の診断に従ってリハビリを継続することによって、自身の健康状態を向上できる。
【0081】
例えば、身体状態推定装置25は、左右の歩幅のばらつきに応じて、足の症状や、怪我からの回復度を推定する。例えば、以前と比較して、左右の歩幅のばらつきが大きくなっている場合、症状が進行していたり、怪我が悪化していたりする可能性がある。このような場合、診察や治療を受けることを推薦する情報を、ユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、ユーザの症状や怪我を改善できる可能性がある。例えば、以前と比較して、左右の歩幅のばらつきが小さくなっている場合、症状や怪我から回復傾向にある可能性がある。このような場合、回復傾向にあることを示す情報をユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、そのユーザのリハビリ等のモチベーションが向上する可能性がある。
【0082】
例えば、足の捻挫や古傷の影響が足首の動きに及ぶ場合、接地角/離地角の値や左右のバランスに、それらの影響が反映される。そのため、接地角/離地角の値の大きさや、左右のバランスに応じて、捻挫や古傷の回復の程度や状態を検証できる。例えば、捻挫や古傷がある方の足の接地角/離地角の値が所定値を下回った場合、診察や治療を受けることを推薦する情報を、ユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、ユーザの症状を改善できる可能性がある。例えば、捻挫や古傷がある方の足の接地角/離地角の値が所定値を上回った場合、回復傾向にあることを示す情報をユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、そのユーザの生活の質が向上する可能性がある。
【0083】
例えば、クリアランスの絶対値に関連する足上げ高さが小さくなると、段差等で躓いて転倒するリスクが高くなる。そのため、足上げ高さを検証すれば、転倒リスクについて検証できる。例えば、足上げ高さが所定値を下回った場合、診察や治療、トレーニングを受けることを推薦する情報を、ユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、転倒リスクを回避できる行動をユーザが取る可能性がある。例えば、足上げ高さが所定値を上回った場合、健康的な歩行状態であることを示す情報をユーザの携帯端末260の画面に表示させれば、そのユーザの生活の質が向上する可能性がある。
【0084】
例えば、足の症状や怪我のリハビリで通院している状況では、医師の前で歩行して、その医師によって足の状態を判定してもらう。しかし、医師の前では、ユーザの心理状態に左右されて、日常の歩行とは異なる様相を呈する場合がある。そのため、日常生活において計測された数値や指標に基づいて、身体状態が判定できることが望ましい。本実施形態の推定システムは、日常生活において、足の状態を示す数値や指標を計測/推定できるため、ユーザの心理状態に影響を受けることなく、正確な判定が得られやすくなる。また、本実施形態の推定システムは、日常生活において、リアルタイムでユーザの状態を把握できるため、症状や病状が急激に悪化した場合であっても、病院等に緊急連絡するなどして臨機応変に対応できる。
【0085】
以上のように、本実施形態の推定システムは、歩容計測装置および身体状態推定装置を備える。歩容計測装置は、第1の実施形態に係る歩容計測装置である。身体状態推定装置は、歩容計測装置から出力された計測データを取得する。身体状態推定装置は、取得した計測データを用いて、身体状態を推定する。
例えば、身体状態推定装置は、特徴量を用いて算出された歩容パラメータを用いたデータ処理によって、歩容計測装置が実装された履物を履いて歩行するユーザの身体状態を推定する。例えば、身体状態推定装置は、推定されたユーザの身体状態に関する情報を、ユーザによって視認可能な端末装置の画面に表示させる。例えば、身体状態推定装置は、推定されたユーザの身体状態に関する情報を、ユーザの身体状態を検証する人物によって視認可能な端末装置の画面に表示させる。
【0086】
本実施形態の推定システムは、歩容計測装置に対する外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる。そのため、本実施形態の推定システムによれば、外部と通信せずに計測が開始された足の動きに関するセンサデータを用いて、ユーザの身体状態を推定できる。
【0087】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る歩容計測装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の歩容計測装置は、第1の実施形態に係る歩容計測装置10を簡略化した構成である。
【0088】
図13は、本実施形態に係る歩容計測装置30の構成の一例を示すブロック図である。歩容計測装置30は、第1センサ31、制御部32、クロック33、第2センサ35、データ生成部36、および出力部38を備える。
【0089】
第1センサ31は、磁界の検出に応じて起動信号を出力する。制御部32(制御手段)は、第1センサから出力された起動信号に応じて起動して、クロックおよび第2センサを起動させる。クロック33は、クロックカウント値を生成する。第2センサ35は、足の動きに関する物理量を計測する。データ生成部36(データ生成手段)は、第2センサによって計測された物理量を用いたセンサデータを生成する。データ生成部36は、物理量が計測されたタイミングにおけるクロックカウント値とセンサデータと紐づけた計測データを生成する。出力部38(出力手段)は、計測データを出力する。
【0090】
本実施形態の歩容計測装置は、第1センサによる磁界の検出に応じて、第2センサによる足の動きに関する物理量の計測を開始する。そのため、本実施形態の歩容計測装置は、外部と通信せずに、ユーザの歩行動作に合わせて歩容の計測を開始できる。
【0091】
(ハードウェア)
次に、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図面を参照しながら説明する。ここでは、そのようなハードウェア構成の一例として、図14の情報処理装置90(コンピュータ)をあげる。図14の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0092】
図14のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図14においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0093】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0094】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0095】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0096】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0097】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0098】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0099】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0100】
以上が、本開示の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。図14のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本開示の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本開示の範囲に含まれる。
【0101】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本開示の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0102】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0103】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0104】
2 推定システム
10、20、30 歩容計測装置
11、31 第1センサ
12、32 制御部
13、33 クロック
15、35 第2センサ
16、36 データ生成部
17 記憶部
18、38 出力部
25 身体状態推定装置
151 加速度センサ
152 角速度センサ
161 取得部
162 変換部
163 正規化部
165 抽出部
167 データ出力部
図1
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