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特開2024-68880時刻表示装置、時刻表示方法、時刻表示プログラム
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  • 特開-時刻表示装置、時刻表示方法、時刻表示プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068880
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】時刻表示装置、時刻表示方法、時刻表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G04G 5/00 20130101AFI20240514BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G04G5/00 J
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179520
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭伴
【テーマコード(参考)】
2F002
5K047
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002FA16
2F002GA06
5K047AA18
5K047GG56
(57)【要約】
【課題】元の時刻情報を失うことなく適切な時刻を表示できる時刻表示装置等を提供する。
【解決手段】時刻表示装置10は、第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計11の第1内部時刻を記録する第1時刻記録部12と、第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における内部時計11の第2内部時刻を記録する第2時刻記録部13と、第1絶対時刻および第2絶対時刻の差と、第1内部時刻および第2内部時刻の差のずれを、内部時計11の計時誤差として演算する計時誤差演算部14と、第1絶対時刻および第2絶対時刻の間に内部時計11に基づいて記録されたイベントの時刻を、計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正部15と、補正前のイベントの時刻の記録を保持しながら、補正後のイベントの時刻を表示するイベント時刻表示部16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計の第1内部時刻を記録する第1時刻記録部と、
前記第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における前記内部時計の第2内部時刻を記録する第2時刻記録部と、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の差と、前記第1内部時刻および前記第2内部時刻の差のずれを、前記内部時計の計時誤差として演算する計時誤差演算部と、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の間に前記内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、前記計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正部と、
前記補正前の前記イベントの時刻の記録を保持しながら、前記補正後の前記イベントの時刻を表示するイベント時刻表示部と、
を備える時刻表示装置。
【請求項2】
前記イベント時刻補正部は、前記第1絶対時刻と前記第2絶対時刻の間の時間に対する、前記第1絶対時刻または前記第2絶対時刻と前記イベントの時刻の間の時間の比と、前記計時誤差に基づいて前記イベントの時刻を補正する、請求項1に記載の時刻表示装置。
【請求項3】
前記イベント時刻補正部は、前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻より後に前記内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、前記計時誤差に基づいて補正する、請求項1または2に記載の時刻表示装置。
【請求項4】
前記補正前の前記イベントの時刻の記録と共に、前記補正後の前記イベントの時刻の記録を保持する記録保持部を備える、請求項1または2に記載の時刻表示装置。
【請求項5】
前記コントローラは、通信ネットワークへの接続が制限される産業装置に設けられる、請求項1または2に記載の時刻表示装置。
【請求項6】
第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計の第1内部時刻を記録する第1時刻記録ステップと、
前記第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における前記内部時計の第2内部時刻を記録する第2時刻記録ステップと、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の差と、前記第1内部時刻および前記第2内部時刻の差のずれを、前記内部時計の計時誤差として演算する計時誤差演算ステップと、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の間に前記内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、前記計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正ステップと、
前記補正前の前記イベントの時刻の記録を保持しながら、前記補正後の前記イベントの時刻を表示するイベント時刻表示ステップと、
を備える時刻表示方法。
【請求項7】
第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計の第1内部時刻を記録する第1時刻記録ステップと、
前記第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における前記内部時計の第2内部時刻を記録する第2時刻記録ステップと、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の差と、前記第1内部時刻および前記第2内部時刻の差のずれを、前記内部時計の計時誤差として演算する計時誤差演算ステップと、
前記第1絶対時刻および前記第2絶対時刻の間に前記内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、前記計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正ステップと、
前記補正前の前記イベントの時刻の記録を保持しながら、前記補正後の前記イベントの時刻を表示するイベント時刻表示ステップと、
をコンピュータに実行させる時刻表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、監視対象で発生したイベントを時刻情報と共に記録する監視装置が開示されている。監視装置の内部時計の計時誤差が検出された場合、当該計時誤差に応じて過去の全てのイベントの時刻情報が書き換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-258942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように過去のイベントの時刻情報が一斉に上書きされてしまうと、元の時刻情報が失われてしまう。元の時刻情報が計時誤差を含むものだったとしても、例えば各イベントの分析において有用である可能性があるため、一斉に上書きすることは得策ではない場合もある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、元の時刻情報を失うことなく適切な時刻を表示できる時刻表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の時刻表示装置は、第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計の第1内部時刻を記録する第1時刻記録部と、第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における内部時計の第2内部時刻を記録する第2時刻記録部と、第1絶対時刻および第2絶対時刻の差と、第1内部時刻および第2内部時刻の差のずれを、内部時計の計時誤差として演算する計時誤差演算部と、第1絶対時刻および第2絶対時刻の間に内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正部と、補正前のイベントの時刻の記録を保持しながら、補正後のイベントの時刻を表示するイベント時刻表示部と、を備える。
【0007】
この態様では、補正前のイベントの時刻の記録が保持されながら、補正後のイベントの時刻が表示される。従って、元の(補正前の)時刻情報を失うことなく適切な(補正後の)時刻を表示できる。
【0008】
本発明の別の態様は、時刻表示方法である。この方法は、第1絶対時刻および当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計の第1内部時刻を記録する第1時刻記録ステップと、第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻および当該第2絶対時刻における内部時計の第2内部時刻を記録する第2時刻記録ステップと、第1絶対時刻および第2絶対時刻の差と、第1内部時刻および第2内部時刻の差のずれを、内部時計の計時誤差として演算する計時誤差演算ステップと、第1絶対時刻および第2絶対時刻の間に内部時計に基づいて記録されたイベントの時刻を、計時誤差に基づいて補正するイベント時刻補正ステップと、補正前のイベントの時刻の記録を保持しながら、補正後のイベントの時刻を表示するイベント時刻表示ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、元の時刻情報を失うことなく適切な時刻を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】時刻表示装置を模式的に示す機能ブロック図である。
図2】時刻表示装置による処理の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る時刻表示装置10を模式的に示す機能ブロック図である。この時刻表示装置10は、例えば、通信ネットワークおよび/またはコンピュータネットワーク(以下では単純にネットワークとも表される)や、他の装置および/またはコンピュータへの接続またはアクセスが制限される産業装置に設けられる。
【0014】
本実施形態に係る時刻表示装置10は、任意の産業装置における時刻情報の表示に利用できる。産業装置は、各種の製品やサービスの生産や提供を行う産業現場において、特定の用途に使用される装置である。産業装置は、例えば、日本産業機械工業会が取り扱っているボイラ・原動機、鉱山機械、化学機械、環境装置、タンク、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械、動力伝導装置、製鉄機械、業務用洗濯機等の企業の工場等の産業現場で使用される産業用機械、産業機械、産業機器等や、半導体等の製造装置、工作機械、印刷機、塗工機、産業ロボットを含む。具体的には、処理対象の半導体ウェハ等が載置されるテーブルの位置を制御するステージ装置、プラスチック製品等の生産に利用される射出成形機、シート状の被搬送物を搬送する搬送装置(典型的には印刷機や塗工機の一部を構成する)等が例示される。なお、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の用途が限定されない汎用装置は産業装置に含まれない。
【0015】
時刻表示装置10が実装される産業装置のコントローラ(不図示)は、水晶振動子等によって構成される計時機能を有する内部時計11を備える。但し、水晶振動子等の品質のばらつきや産業装置内の熱等の影響で、内部時計11には計時誤差が伴うのが一般的である。また、ネットワークに常時接続可能な汎用装置であれば、ネットワークを通じて正確な時刻情報を取得できるが、産業装置はセキュリティ等の観点から、ネットワークや他の装置および/またはコンピュータへの接続またはアクセスが制限される場合も多く、正確な時刻情報を取得できる機会が制限される。ネットワーク経由で産業装置に正確な時刻情報を提供可能なTSN(Time-Sensitive Networking)等のプロトコルも存在するが、このようなプロトコルを全ての産業装置が利用している訳ではない。
【0016】
このように、本実施形態は、計時誤差を伴う内部時計11を備え、正確な時刻情報を取得できる機会が制限される産業装置に実装される時刻表示装置10を主な対象とする。なお、本実施形態では、産業装置外に存在し、正確な時刻情報としての絶対時刻を提供可能な物や人を絶対時計20と総称する。具体的には、絶対時計20は、例えば、産業装置が限定された機会に接続される絶対時刻情報を保持する他のコンピュータ等でもよいし、産業装置が限定された機会に接続されるネットワーク上で絶対時刻情報を提供可能な他のコンピュータ等でもよいし、絶対時刻情報を産業装置にマニュアルで入力するユーザ等でもよい。このように、時刻表示装置10が実装される産業装置が、絶対時計20にアクセスして絶対時刻情報を取得できる機会は限られる(例えば、1年に数回)。産業装置が絶対時計20にアクセスできない期間に産業装置で発生するイベントの時刻としては、内部時計11による内部時刻が後述する記録保持部17に記録されるが、前述のように計時誤差を伴う。
【0017】
このような内部時計11の計時誤差に対処するために、時刻表示装置10は、第1時刻記録部12と、第2時刻記録部13と、計時誤差演算部14と、イベント時刻補正部15と、イベント時刻表示部16と、記録保持部17を備える。時刻表示装置10が以下で説明する作用および/または効果の少なくとも一部を実現できる限り、これらの機能ブロックの一部は省略されてもよいし、これらの機能ブロックの一部または全部が産業装置外に設けられてもよい。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。以下では、図2に示される例を参照しながら、時刻表示装置10の各機能ブロックについて順番に説明する。
【0018】
第1時刻記録部12は、第1絶対時刻を記録する第1絶対時刻記録部121と、当該第1絶対時刻におけるコントローラの内部時計11の第1内部時刻を記録する第1内部時刻記録部122を備える。第1絶対時刻記録部121は、時刻表示装置10(産業装置)が絶対時計20にアクセス可能な限られた機会に、絶対時計20から絶対時刻情報としての第1絶対時刻を取得して記録する。以下の例では、第1絶対時刻が「2020年1月1日12時00分00秒」であるものとする。第1内部時刻記録部122は、第1絶対時刻記録部121が絶対時計20から第1絶対時刻を取得した時の内部時計11の第1内部時刻を取得して記録する。
【0019】
図2の例では、第1絶対時刻および第1内部時刻が共にT1である。実際には、第2時刻記録部13に関して後述するように、第1絶対時刻記録部121によって第1絶対時刻T1が記録されると、内部時計11の第1内部時刻が第1絶対時刻T1に自動的に補正される結果、第1絶対時刻および第1内部時刻が等しくなる。これらの第1絶対時刻および/または第1内部時刻は「2020年1月1日12時00分00秒」に発生した時刻補正イベントの時刻情報(タイムスタンプ)として記録保持部17に記録されてもよい。
【0020】
第2時刻記録部13は、第1絶対時刻と異なる第2絶対時刻を記録する第2絶対時刻記録部131と、当該第2絶対時刻におけるコントローラの内部時計11の第2内部時刻を記録する第2内部時刻記録部132を備える。第2絶対時刻記録部131は、時刻表示装置10(産業装置)が絶対時計20にアクセス可能な限られた機会に、絶対時計20から絶対時刻情報としての第2絶対時刻を取得して記録する。第1絶対時刻と第2絶対時刻の前後関係は問わないが、以下の例では、第2絶対時刻が第1絶対時刻の1年後の「2021年1月1日12時00分00秒」であるものとする。また、第1絶対時刻と第2絶対時刻の間の期間には、時刻表示装置10(産業装置)が絶対時計20にアクセスできなかったものとする。すなわち、以下の例では、第2絶対時刻において時刻表示装置10が1年振りに絶対時計20にアクセスする。第2内部時刻記録部132は、第2絶対時刻記録部131が絶対時計20から第2絶対時刻を取得した時の内部時計11の第2内部時刻を取得して記録する。
【0021】
図2の例では、第2絶対時刻が第1絶対時刻T1より後(右側)のT2である。また、第2内部時刻は縦軸上のT2′である。そして、両者の間にはΔT(=T2-T2′)の差がある。ΔTは、第2絶対時刻T2における内部時計11の計時誤差である。以下の例では、計時誤差ΔTが「10分」であるものとする。この場合の第2内部時刻T2′は、第2絶対時刻T2「2021年1月1日12時00分00秒」の「10分前」の「2021年1月1日11時50分00秒」である。
【0022】
この計時誤差ΔTは、第2絶対時刻記録部131によって記録された第2絶対時刻T2によって補正される。具体的には、第2絶対時刻記録部131によって第2絶対時刻T2が記録されると、内部時計11の第2内部時刻が計時誤差ΔTを含むT2′から正しい第2絶対時刻T2に自動的に補正される結果、第2絶対時刻および第2内部時刻が等しくなる。これらの第2絶対時刻および/または第2内部時刻は「2021年1月1日12時00分00秒」に発生した時刻補正イベントの時刻情報(タイムスタンプ)として記録保持部17に記録されてもよい。
【0023】
以上のように、時刻表示装置10(産業装置)が絶対時計20にアクセスできるタイミング(第1絶対時刻T1および第2絶対時刻T2)では、内部時計11の計時誤差が自動的に補正される。しかし、時刻表示装置10(産業装置)が絶対時計20にアクセスできない期間、例えば、第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間の期間では、内部時計11と絶対時計20の間に計時誤差が残る。このような期間に産業装置で発生するイベントには、内部時計11による計時誤差を含む内部時刻情報がタイムスタンプとして付与されて記録保持部17に記録されることになる。以下では、第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間の期間における絶対時刻Tに産業装置で発生したイベントについて具体的に説明する。図2に模式的に示されるように、絶対時刻Tでは内部時計11にΔtの計時誤差が存在する。このため、絶対時刻Tに産業装置で発生したイベントには、絶対時刻Tに計時誤差Δtが減算または加算された内部時刻T′(=T-Δt)のタイムスタンプが付与される。
【0024】
計時誤差演算部14は、絶対時刻Tにおける内部時計11の計時誤差Δtを演算する準備として、第2絶対時刻T2における内部時計11の計時誤差ΔTを演算する。具体的には、計時誤差演算部14は、第1絶対時刻記録部121によって記録された第1絶対時刻T1および第2絶対時刻記録部131によって記録された第2絶対時刻T2の差(T2-T1)と、第1内部時刻記録部122によって記録された第1内部時刻T1および第2内部時刻記録部132によって記録された第2内部時刻T2′の差(T2′-T1)のずれを、内部時計11の計時誤差ΔTとして演算する。本実施形態では、第1絶対時刻および第1内部時刻(補正後)が共にT1であるため、ΔT=(T2-T1)-(T2′-T1)=T2-T2′、となり、第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTは、第2絶対時刻T2と第2内部時刻T2′の差に等しい。
【0025】
イベント時刻補正部15は、第1絶対時刻T1および第2絶対時刻T2の間の絶対時刻Tに内部時計11に基づいて記録されたイベントの時刻T′(=T-Δt)を、計時誤差演算部14によって演算された第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに基づいて補正する。換言すれば、イベント時刻補正部15は、第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに基づいて絶対時刻Tにおける計時誤差Δtを演算し、それを内部時計11に基づくイベント時刻T′に加えることで当該イベントが発生した絶対時刻Tを演算または推定する。
【0026】
具体的には、イベント時刻補正部15は、第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間の時間に対する、第1絶対時刻(T1)または第2絶対時刻(T2)とイベントの時刻T′(≒T)の間の時間の比と、第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに基づいてイベントの時刻T′を正しい絶対時刻Tに補正する。例えば、第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間の時間「T2-T1」に対する、イベントの時刻T′と第2絶対時刻T2の間の時間「T2-T′」の比は、「(T2-T′)/(T2-T1)≒(T2-T)/(T2-T1)」であり、これを第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに乗算することで、絶対時刻Tにおける計時誤差Δtが演算される。
【0027】
ΔTが「10分」である本実施形態において、絶対時刻Tが第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間の期間の略中心である「2020年7月1日12時00分00秒」付近であった場合、上記の比は約「1/2」となるため、当該絶対時刻T「2020年7月1日12時00分00秒」付近における計時誤差Δtは約「5分」と演算される。この場合、例えば、あるイベントに付与された内部時計11に基づくタイムスタンプ「2020年7月1日11時55分00秒」(T′)に、上記の「5分」の計時誤差Δtを加算することで、当該イベントが実際に発生したと推定される絶対時刻「2020年7月1日12時00分00秒」(T)が演算される。
【0028】
なお、以上のような期間の比を利用した計時誤差Δtの演算は、内部時計11の遅れまたは進みが演算対象の期間に亘って略一定であることを前提としている。しかし、内部時計11を構成する水晶振動子等は温度の影響を受けるため、季節によって遅れまたは進みの程度が変化する可能性がある。そこで、上記のような期間の比だけでなく、季節や気温の変化を考慮することで、より現実的な計時誤差Δtをイベント時刻補正部15が演算または推定してもよい。このような場合、図2において第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間を結ぶ内部時刻の線(太い実線)は、図示の直線から僅かに乖離した曲線状となる。
【0029】
イベント時刻表示部16は、イベント時刻補正部15による補正前のイベントの時刻T′の記録を保持しながら、イベント時刻補正部15による補正後のイベントの時刻Tを表示する。上記の例では、イベント時刻表示部16が、補正後の絶対時刻T「2020年7月1日12時00分00秒」を、当該イベントの発生時刻として表示する。但し、記録保持部17に記録されているイベントログにおける当該イベントの発生時刻は、補正前の内部時刻T′「2020年7月1日11時55分00秒」のまま上書きされずに保持される。このように、イベントログを画面上で確認するユーザに対しては、計時誤差Δtが低減された時刻T「2020年7月1日12時00分00秒」が表示されるため、各イベントが実際に発生したと推測される時刻が効果的に把握される。一方、補正前の内部時刻T′「2020年7月1日11時55分00秒」は、上書きされずに記録保持部17に保持されるため、各イベントの詳細な分析の際等に確認できる。なお、記録保持部17は、補正前のイベントの時刻T′「2020年7月1日11時55分00秒」等の記録と共に、補正後のイベントの時刻T「2020年7月1日12時00分00秒」等の記録を保持してもよい。
【0030】
図2において、イベント時刻補正部15は、第1絶対時刻T1および第2絶対時刻T2より後に内部時計11に基づいて記録されたイベントの時刻を、第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに基づいて補正してもよい。この場合、第2絶対時刻T2における計時誤差ΔTに基づいて、将来時刻における計時誤差Δt′がイベント時刻補正部15によって演算されることになる。
【0031】
上記の例において、第1絶対時刻T1と第2絶対時刻T2の間に生じる計時誤差ΔTが把握されているため、イベント時刻補正部15は、第2絶対時刻T2より先の期間において内部時計11に生じる計時誤差Δt′をプロアクティブに演算または推定できる。上記の例と同様に、イベント時刻表示部16は、イベント時刻補正部15による補正前のイベントの時刻(計時誤差Δt′を含むもの)の記録を保持しながら、イベント時刻補正部15による補正後のイベントの時刻(計時誤差Δt′を含まないもの)を表示する。この場合、時刻表示装置10(産業装置)が第2絶対時刻T2の次に絶対時計20にアクセスできるタイミングまで待たなくても、イベント時刻補正部15によるイベント時刻の補正と、イベント時刻表示部16によるイベント時刻の表示を行える。
【0032】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0033】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0034】
10 時刻表示装置、12 第1時刻記録部、13 第2時刻記録部、14 計時誤差演算部、15 イベント時刻補正部、16 イベント時刻表示部、17 記録保持部、121 第1絶対時刻記録部、122 第1内部時刻記録部、131 第2絶対時刻記録部、132 第2内部時刻記録部。
図1
図2