(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068885
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】歩行周期特定システム、歩行周期特定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179533
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清原 武彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴成
(72)【発明者】
【氏名】樋口 誠
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VB35
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】長期的な歩行状態の改善に適した歩行状態評価システムを提供する。
【解決手段】被験者の歩行する様子を時系列に沿って撮影した複数の歩行画像に基づき、前記歩行画像それぞれについて少なくとも被験者の股関節から左右一方の対象脚に至る領域の骨格モデルを生成するモデル生成手段と、前記モデル生成手段により生成された複数の前記骨格モデルに基づき、前記対象脚上の所定部位が、被験者の歩行する進行方向に沿った前方側で股関節から最も離れた前方位置と後方側で股関節から最も離れた後方位置との間で変位する周期のモデル波形を生成する波形生成手段と、それぞれ波形としての成分を異ならせた複数種類の正弦波のうち、前記波形生成手段により生成された前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する周期特定手段と、を備える歩行周期特定システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の歩行する様子を時系列に沿って撮影した複数の歩行画像に基づき、前記歩行画像それぞれについて少なくとも被験者の股関節から左右一方の対象脚に至る領域の骨格モデルを生成するモデル生成手段と、
前記モデル生成手段により生成された複数の前記骨格モデルに基づき、前記対象脚上の所定部位が、被験者の歩行する進行方向に沿った前方側で股関節から最も離れた前方位置と後方側で股関節から最も離れた後方位置との間で変位する周期のモデル波形を生成する波形生成手段と、
それぞれ波形としての成分を異ならせた複数種類の正弦波のうち、前記波形生成手段により生成された前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する周期特定手段と、を備える、
歩行周期特定システム。
【請求項2】
前記周期特定手段は、それぞれ振幅がゼロから正方向の最大値へと1/4周期よりも早いタイミングで到達し、かつ、振幅がゼロから負方向の最大値へと1/4周期よりも遅いタイミングで到達するように変形させた複数種類の正弦波のうち、前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する、
請求項1に記載の歩行周期特定システム。
【請求項3】
複数の前記歩行画像を取得する画像取得手段、を備え、
前記波形生成手段は、前記画像取得手段により取得された前記歩行画像それぞれに基づいて複数の前記骨格モデルを生成する、
請求項1または請求項2に記載の歩行周期特定システム。
【請求項4】
被験者の歩行する様子を時系列に沿って撮影した複数の歩行画像に基づき、前記歩行画像それぞれについて少なくとも被験者の股関節から左右一方の対象脚に至る領域の骨格モデルを生成するモデル生成手順と、
前記モデル生成手順により生成された複数の前記骨格モデルに基づき、前記対象脚上の所定部位が、被験者の歩行する進行方向に沿った前方側で股関節から最も離れた前方位置と後方側で股関節から最も離れた後方位置との間で変位する周期のモデル波形を生成する波形生成手順と、
それぞれ波形としての成分を異ならせた複数種類の正弦波のうち、前記波形生成手段により生成された前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する周期特定手順と、を備える、
歩行周期特定方法。
【請求項5】
コンピュータを請求項1に記載の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の歩行周期を特定する歩行周期特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の歩行状態と健康状態との関係に注目が集まっており、歩行状態を解析するために様々な歩行パラメータの活用が進められている。この種の歩行パラメータとしては、例えば、歩行に際しての周期的な脚の変位である歩行周期があげられ、これを被験者に取り付けたセンサからの出力値の変化に基づいて特定するといったことが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、上述した技術では、センサを取り付ける必要があるなど被験者に過度な負担を強いるものであるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被験者に過度な負担を強いることなく歩行周期を特定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1局面は、被験者の歩行する様子を時系列に沿って撮影した複数の歩行画像に基づき、前記歩行画像それぞれについて少なくとも被験者の股関節から左右一方の対象脚に至る領域の骨格モデルを生成するモデル生成手段と、前記モデル生成手段により生成された複数の前記骨格モデルに基づき、前記対象脚上の所定部位が、被験者の歩行する進行方向に沿った前方側で股関節から最も離れた前方位置と後方側で股関節から最も離れた後方位置との間で変位する周期のモデル波形を生成する波形生成手段と、それぞれ波形としての成分を異ならせた複数種類の正弦波のうち、前記波形生成手段により生成された前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する周期特定手段と、を備える、歩行周期特定システムである。
【0007】
上記局面の歩行周期特定システムであれば、被験者を側方から撮影した複数の歩行画像をそれぞれ骨格モデル化した後、これら骨格モデルにおいて対象脚の特定部位が変化するモデル波形を正弦波で近似することにより、ここから歩行周期を特定することができる。このように、被験者を撮影した画像から歩行周期を特定できるため、被験者にセンサを取り付けるといった過度の負担を強いる必要がない。
【0008】
ここで、歩行画像の中には、対象脚が左右他方の脚(非対象脚)と揃うタイミングとなっているものも含まれうるところ、このタイミングの歩行画像において非対象脚を対象脚と誤認識したままで骨格モデル化されてしまう恐れがある。この場合のモデル波形は、非対象脚に起因するピーク成分が加わり、本来の歩行周期よりも極端に短い周期とも判断できる波形となってしまう。
【0009】
これに対し、本願出願人は、この種のピーク成分が極短時間でしか発生しないことを確認しており、その影響を抑えるべく創意工夫を施した結果として、上記局面のように、モデル波形を正弦波で近似する構成に想到している。モデル波形を正弦波で近似する構成であれば、極短時間のピーク成分が近似度に与える影響を相対的に小さくできる結果、歩行周期を精度よく特定できるようになる。
【0010】
また、上記局面は以下に示す第2局面のようにしてもよい。第2局面の歩行周期特定システムにおいて、前記周期特定手段は、それぞれ振幅がゼロから正方向の最大値へと1/4周期よりも早いタイミングで到達し、かつ、振幅がゼロから負方向の最大値へと1/4周期よりも遅いタイミングで到達するように変形させた複数種類の正弦波のうち、前記モデル波形と最も成分としての近似度が高い正弦波の周期を被験者の歩行周期として特定する。
【0011】
歩行周期における特定部位の変位は、立脚期において足先が接地している期間と遊脚期において足先が接地していない期間とでは脚の動作パターンや速度が異なることに起因し、股関節直下にある状態から前方位置に到達するのに要する時間がひずみのない正弦波より早まる一方、股関節直下にある状態から後方位置に到達するのに要する時間は同正弦波よりも遅れる。つまり、歩行周期となる波形は、同じ周期でひずみのない正弦波と相違したものとなっている可能性が高い。
【0012】
上記局面では、このような相違に応じて変形させた正弦波でモデル波形を近似することにより、近似に際しての精度を高めつつ処理負荷を下げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一形態である歩行周期特定システムの構成を示すブロック図
【
図2】本開示の一形態においてカメラにより被験者を撮影する様子を示す模式図
【
図3】本開示の一形態における歩行周期特定処理の手順を示すフローチャート
【
図4】本開示の一形態におけるモデル波形を示すグラフ(1/4)
【
図5】本開示の一形態における波形近似処理の手順を示すフローチャート
【
図6】本開示の一形態におけるモデル波形を示すグラフ(2/4)
【
図7】本開示の一形態におけるモデル波形を示すグラフ(3/4)
【
図8】本開示の一形態におけるモデル波形を示すグラフ(4/4)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
【0015】
歩行周期特定システム1は、
図1に示すように、歩行周期特定システム1全体の動作を制御する制御部10と、各種データを格納する記憶部20と、ユーザとのやりとりを行うユーザインタフェース(U/I)30と、外部との通信を制御する通信部40と、被験者が歩行する様子を撮影するカメラ50と、を備える。
【0016】
これらのうち、カメラ50は、被験者100の股関節による伸展および屈曲の動作を観察すべく、
図2に示すように、被験者100の歩行する様子をその側方から撮影可能な位置に設置され、その歩行の様子を側方から撮影した歩行画像を取得する。
【0017】
なお、本実施形態では、歩行周期特定システム1が単体の装置により構成されているものを例示したが、それぞれ通信可能な複数の装置で構成されていてもよい。
【0018】
(2)歩行周期特定処理
続いて、制御部10が実行する歩行周期特定処理の処理手順を
図3に基づいて説明する。この歩行周期特定処理は、記憶部20に格納されたプログラムに従って実行されるものであり、ユーザインタフェース30経由で所定の指令を受けた際に起動される。
【0019】
この歩行周期特定処理では、まず、被験者の歩行する様子を側方から時系列に沿って撮影した複数の歩行画像が取得される(s110)。ここでは、カメラ50の撮影範囲を被験者が横切るタイミングに合わせ、制御部10からカメラ50へと撮影開始および撮影終了の指令が順になされる。そして、この指令の間に所定の時間間隔で撮影された複数の歩行画像が取得される。
【0020】
ここで、カメラ50への撮影開始および撮影終了の指令は、ユーザインタフェース30経由でユーザの指令を受けたタイミングで人為的になされるものであってもよく、撮影範囲における画像の変化や図示されないセンサの検出結果に基づいて自動的になされるものであってもよい。
【0021】
次に、上記s110にて取得された複数の歩行画像に基づき、各歩行画像に対応する骨格モデルが生成される(s120)。ここでは、歩行画像ごとに周知の骨格推定を行うことによって、身体の各部位に対応するノードそれぞれを画像中の座標として示すデータが骨格モデルとして生成される。
【0022】
本実施形態では、
図2に示すように、被験者100における頭、肩、右肘、左肘、右手首、左手首、右手指先、左手指先、股関節、右膝、左膝、右足首、左足首、右足指先および左足指先などの部位に対応するノード(同図「○」で示された箇所)それぞれの座標を示すデータが生成される。各ノードは、側面画像中の所定位置(例えば左下)を原点として座標が定められる。
【0023】
次に、上記s120にて生成された骨格モデルそれぞれの座標変換が行われる(s130)。ここでは、各骨格モデルの座標それぞれが、特定部位(本実施形態では股関節)に対応するノードが原点となるように各ノードの座標が変換される。
【0024】
上記s120にて生成された骨格モデルそれぞれは、その元となる歩行画像がカメラ50の撮影範囲を通過する被験者の画像であり、時系列に沿って画像中の被験者も移動しているため、ノードの変位に着目した観察に適していない。このことを踏まえ、上記s130では、座標を変換して各骨格モデルが同じ座標空間で比較できるようにすることで、ノードの変位に着目した観察に適したものとしている。
【0025】
次に、上記s130にて座標変換された各骨格モデルから左右一方の脚(以降「対象脚」という)に対応するノードの座標(以降「対象座標」という)が抽出される(s140)。ここでは、各骨格モデルから、対象脚上にある所定部位(膝または足首;以下同様)に対応するノードの座標がそれぞれ抽出される。
【0026】
次に、s140にて抽出された対象座標それぞれに基づき、対象脚が周期的に変位するパターンを示すモデル波形が生成される(s150)。ここでは、対象脚の所定部位が、被験者の歩行する進行方向に沿った前方側で股関節から最も離れた前方位置と、後方側で股関節から最も離れた後方位置との間で変位する周期の波形がモデル波形として生成される。このモデル波形は、
図4に示すように、進行方向に沿った所定部位の位置を振幅(同図縦軸)とし、歩行画像それぞれの撮影間隔を周期(同図横軸)とする二軸のグラフとして表現される。
【0027】
そして、上記s150にて生成されたモデル波形に基づき、被験者の歩行周期が特定される(s160)。ここでは、それぞれ波形としての成分を異ならせた複数種類の正弦波のうち、モデル波形と最も成分としての近似度の高い正弦波の周期が、被験者の歩行周期として特定される。
【0028】
本実施形態において、モデル波形との近似度の高い正弦波は、以下に示す波形近似処理により特定される。この波形近似処理では、
図5に示すように、複数種類の正弦波のうちその時点でまだ選択されていないいずれかの正弦波を選択し(s161)、この正弦波およびモデル波形それぞれの時間軸上の各位置における差分の合計値を算出する(s163)、といった処理が、全ての正弦波が選択済みとなるまで繰り返される(s165:NO→s161)。
【0029】
複数種類の正弦波は、人の歩行周期が正弦波に近似するものであることを前提に、それぞれ人が歩行する際に想定される範囲内で成分(振幅、周波数、位相)を異ならせたものであり、各正弦波を示すデータとして記憶部20に格納されている。上記s161では、この記憶部20に格納されているデータのうち、該当する正弦波を示すデータが選択的に読み出される。
【0030】
なお、正弦波yは、振幅をA、周波数をH、周期T、位相をΔTとする数式「y=A×sin(2×π×H×(T-ΔT))」により表されるものであり、本実施形態では、この数式に基づいて各成分を異ならせた複数種類(例えば、数十~数百種類)のものが用意されている。
【0031】
ここで、各正弦波としては、
図6に示すように、基準となるひずみのない正弦波w0に対し、それぞれ振幅がゼロから正方向の最大値へと1/4周期(周期Tの25%)よりも早いタイミングで到達し、かつ、振幅がゼロから負方向の最大値へと1/4周期(同75%)よりも早いタイミングで到達するように変形させた波形w1につき、各成分を異ならせた複数種類のものが用いられる。
【0032】
例えば、波形w1のうち、振幅がゼロから正方向の最大値へと到達するタイミングを周期Tの「X%」、振幅がゼロから負方向の最大値へと到達するタイミングを周期Tの「100%-X%(=75%+Y%)」とした場合、この波形w1は、周期Tが「0%」~「X%」までの期間および「100%-X%(=75%+Y%)」~「100%」までの期間が「y=A×π×H×(25/X)×(T-ΔT))となり、周期Tが「X%」~「100%-X%」までの期間が「y=A×π×H×(25/(50-X))×(T-ΔT))となる。本実施形態では、振幅がゼロから正方向の最大値へと3/20周期(周期Tの15%)で到達し、かつ、振幅がゼロから負方向の最大値へと7/20周期(周期Tの85%=100%-15%)で到達するように変形させた正弦波w1が用いられる。
【0033】
また、上記s163では、差分の合計値が算出された後、これが直前の上記s161にて選択された正弦波に対応するものとして記憶部20に格納される。
【0034】
こうして、s161~s165が繰り返された後、全ての正弦波が選択済みとなった場合(s165:YES)、上記s163にて算出された差分の合計値のうち、最小の合計値に対応する正弦波が、最もモデル波形と近似する正弦波として登録される(s167)。ここでは、各正弦波を示すものとして記憶部20に格納されているデータのうち、該当する正弦波に対応するデータが最もモデル波形と近似するものであるものとして登録される(そのことが記憶部20に記憶される)。
【0035】
そして、上記s160では、上記s167にて登録されたデータに基づき、このデータで示される正弦波の周期を、被験者の歩行周期として特定する。ここでは、被験者の歩行周期を示すデータをユーザインタフェース30経由で出力させたり、通信部40を介して外部へ送信させたりすることとしてもよい。
【0036】
(3)変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上記実施形態では、カメラ50で撮影された複数の歩行画像を取得するように構成されたものを例示した。しかし、歩行画像は別のシステムで生成されたものを外部から取得するものとしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、歩行周期特定処理のs120~s140において、身体の各部位に対応するノードそれぞれを示す骨格モデルを生成し、ここから対象脚における所定部位に対応するノードの座標を抽出するように構成されたものを例示した。しかし、歩行画像から骨格モデルを生成する際に、股関節から対象脚に至る領域のみの骨格モデルを生成し、ここから所定部位に対応するノードの座標を抽出するように構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、被験者100の歩行する様子をその側方から撮影した歩行画像に基づいて生成されるモデル波形から歩行周期を特定するように構成されたものを例示した。しかし、歩行画像としては、モデル波形の生成に用いることができるものであればよく、歩行する様子を側方から撮影したものに限らない。例えば、被験者100の歩行する様子を前後一方や上方から撮影した歩行画像を用い、対象脚上のつけ根などの部位が前方位置と後方位置との間で変位するモデル波形を生成するようにしてもよい。
【0040】
(4)作用効果
上記実施形態における歩行周期特定システム1であれば、被験者を側方から撮影した複数の歩行画像をそれぞれ骨格モデル化した後、これら骨格モデルにおいて対象脚の特定部位が変化するモデル波形を正弦波で近似することにより、歩行周期を特定できる。このように、被験者を撮影した画像から歩行周期を特定できるため、被験者にセンサを取り付けるといった過度の負担を強いる必要がない。
【0041】
ここで、上述した歩行画像の中には、対象脚が左右他方の脚(非対象脚)と揃う(より具体的には重なる)タイミングとなっているものが含まれうるところ、
図7(a)に示すように、このタイミングの歩行画像において非対象脚を対象脚と誤認識したままで骨格モデル化されてしまう恐れがある。この場合のモデル波形wmは、非対象脚に起因するピーク成分が加わり、本来の歩行周期(
図7(b))よりも極端に短い周期とも判断できる波形になってしまう。
【0042】
これに対し、本願出願人は、この種のピーク成分が極短時間でしか発生しないことを確認しており、その影響を抑えるべく創意工夫を施した結果として、上記実施形態のように、モデル波形を正弦波で近似する構成に想到している。モデル波形を正弦波で近似する構成であれば、極短時間のピーク成分が近似度に与える影響を相対的に小さくできる結果、歩行周期を精度よく特定できるようになる。
【0043】
また、本願出願人は、上記歩行周期特定システム1によって種々の被験者の歩行周期を特定しており、非対象脚に起因するピーク成分の有無を問わず、モデル波形を正弦波で精度よく近似できることを確認している。ここでは、
図8として、非対象脚に起因するピーク成分が含まれていないモデル波形wm(同図(a))、ピーク成分が1箇所のみ含まれているモデル波形wm(同図(b))、ピーク成分が複数箇所含まれているモデル波形wm(同図(c))それぞれについて正弦波で近似した状態を示すグラフを示す。ここからは、いずれもピーク成分に大きな影響を受けることなく、正弦波w1での近似ができている。
【0044】
また、歩行周期における特定部位の変位は、立脚期において足先が接地している期間と遊脚期において足先が接地していない期間とでは脚の動作パターンや速度が異なることに起因し、股関節直下にある状態から前方位置に到達するのに要する時間がひずみのない正弦波より早まる一方、股関節直下にある状態から後方位置に到達するのに要する時間は同正弦波よりも遅れる。つまり、歩行周期となる波形は、同じ周期でひずみのない正弦波と相違したものとなっている可能性が高い。
【0045】
上記実施形態では、このような相違に応じて変形させた正弦波でモデル波形を近似することにより、近似に際しての精度を高めつつ処理負荷を下げることもできる。
【0046】
(5)本発明との対応関係
上記実施形態では、歩行周期特定処理のs110が画像取得手段であり、s120~s140がモデル生成手段であり、同s150が波形生成手段であり、同s160および波形近似処理のs161~s167が周期特定手段である。
【符号の説明】
【0047】
1…歩行周期特定システム、10…制御部、20…記憶部、30…ユーザインタフェース、40…通信部、50…カメラ、100…被験者。