(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068886
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240514BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179534
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲庸▼文
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA14
5E021FA16
5E021FC36
5E021FC38
5E021HC09
5E021JA05
5E021KA06
5E021KA15
(57)【要約】
【課題】電気コネクタの未嵌合状態における嵌合検知部材の前進位置への移動を良好に防止できる電気コネクタを提供する。
【解決手段】嵌合検知部材30の係止部34は、操作部32の被圧部32Aに対して上方にずれた位置に設けられ、嵌合検知部材30が後退位置にあるとき、ハウジング10におけるロック腕部12以外の部分に対して後方から係止可能に位置し、後退位置にある嵌合検知部材30の操作部32の被圧部32Aが後方から押圧されたとき、係止部34とハウジング10との係止位置を支点として、嵌合検知部材30の前端が上方へ変位し、当接部35がロック腕部12の一部に後方から当接する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタに対して前方へ向けて嵌合接続される電気コネクタであって、
ハウジングと、
コネクタ幅方向に配列され前記ハウジングに保持された複数の端子と、
前進位置と後退位置との間で前記ハウジングに対して前後方向に相対移動可能な状態で前記ハウジングに保持された、前記相手コネクタとの嵌合状態を検知するための嵌合検知部材とを有する電気コネクタにおいて、
前記ハウジングは、前後方向に延び上下方向に弾性変位可能で、相手コネクタに対して前後方向で係止可能なロック腕部を有し、
前記嵌合検知部材は、前記嵌合検知部材の後部に設けられた操作部と、前記ロック腕部に沿って前後方向に延び上下方向に弾性変位可能な弾性腕部と、前記弾性腕部の後部からコネクタ幅方向に突出する係止部と、前記ロック腕部よりも下方で前記嵌合検知部材の前端側に形成された当接部とを有し、
前記操作部は、後方からの押圧操作を受けるための被圧部を後端部に有し、
前記係止部は、前記被圧部に対して上方にずれた位置に設けられ、前記嵌合検知部材が後退位置にあるとき、前記ハウジングにおける前記ロック腕部以外の部分に対して後方から係止可能に位置し、
後退位置にある前記嵌合検知部材の前記操作部の前記被圧部が後方から押圧されたとき、前記係止部と前記ハウジングとの係止位置を支点として、前記嵌合検知部材の前端が上方へ変位し、該当接部が前記ロック腕部の一部に後方から当接することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロック腕部の一部は、段部として形成されていることとする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記電気コネクタが前記相手コネクタに対して半嵌合状態にあるとき、前記ロック腕部が前記相手コネクタとの当接により下方へ弾性変位し、前記操作部が前記ロック腕部に対して後方から当接可能な状態となることとする請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記操作部は、下方へ弾性変位した前記ロック腕部の後端面に対して、前記操作部の前端面で後方から当接可能な状態となることとする請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記段部は、コネクタ幅方向での前記ロック腕部の全域にわたって形成されており、
前記当接部は、コネクタ幅方向での前記ロック腕部の全域に対応する範囲に形成されていることとする請求項2に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手コネクタとの嵌合状態を検知するための嵌合検知部材を有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電気コネクタとして、例えば、特許文献1のような、相手コネクタに対して前方へ向けて嵌合接続される電気コネクタが知られている。この特許文献1の電気コネクタにおいては、嵌合検知部材は、前進位置(本係止位置)と後退位置(仮係止位置)との間でハウジングに対して前後方向に相対移動可能な状態で該ハウジングに保持されている。該嵌合検知部材は、電気コネクタが相手コネクタに嵌合接続された後、前方へ押し込まれて前進位置へ移動する。そして、嵌合検知部材が前進位置に移動したことをもって電気コネクタが相手コネクタに正規に嵌合接続されたことが検知される。
【0003】
ハウジングは、後方へ向けて延び上下方向で弾性変位可能なロックアームを有している。該ロックアームは、コネクタ嵌合状態にあるとき、その後端側に設けられたロック部で相手ハウジングに係止してロック可能となっている。嵌合検知部材は、前方へ向けて延び上下方向で弾性変位可能な検知ロックアームを有している。検知ロックアームは、嵌合検知部材が後退位置にあるとき、自由状態のロックアームのロック部に後方から係止可能な係止部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1では、例えば、電気コネクタの未使用時など、相手コネクタに対して嵌合接続されていないコネクタ未嵌合状態にあるとき、検知ロックアームは後退位置にあるので、仮に、嵌合検知部材に前方へ向けた外力が作用したとしても、検知ロックアームの係止部が、自由状態にあるハウジングのロックアームのロック部に後方から当接して係止することにより、嵌合検知部材の前進位置への移動が阻止される。
【0006】
しかし、コネクタ未嵌合状態において、仮に、ハウジングのロックアーム部が不用意な外力を受けて弾性変位状態にあった場合には、嵌合検知部材に前方へ向けた外力が作用すると、検知ロックアームの係止部はロックアームのロック部に係止しないので、嵌合検知部材はそのまま前進位置へ移動してしまう。もしコネクタ未嵌合状態で嵌合検知部材が前進位置に移動してしまった場合には、その後、電気コネクタを相手コネクタに嵌合接続させる際に、前進位置にある嵌合検知部材を一旦後退位置に戻す作業を行う必要がある。したがって、電気コネクタ同士を嵌合させる作業を行う際に余計な手間がかかり、その結果、作業効率が低下することとなる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、電気コネクタの未嵌合状態における嵌合検知部材の前進位置への移動を良好に防止できる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る電気コネクタは、相手コネクタに対して前方へ向けて嵌合接続される電気コネクタであって、ハウジングと、コネクタ幅方向に配列され前記ハウジングに保持された複数の端子と、前進位置と後退位置との間で前記ハウジングに対して前後方向に相対移動可能な状態で前記ハウジングに保持された、前記相手コネクタとの嵌合状態を検知するための嵌合検知部材とを有する。
【0009】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、前記ハウジングは、前後方向に延び上下方向に弾性変位可能で、相手コネクタに対して前後方向で係止可能なロック腕部を有し、前記嵌合検知部材は、前記嵌合検知部材の後部に設けられた操作部と、前記ロック腕部に沿って前後方向に延び上下方向に弾性変位可能な弾性腕部と、前記弾性腕部の後部からコネクタ幅方向に突出する係止部と、前記ロック腕部よりも下方で前記嵌合検知部材の前端側に形成された当接部とを有し、前記操作部は、後方からの押圧操作を受けるための被圧部を後端部に有し、前記係止部は、前記被圧部に対して上方にずれた位置に設けられ、前記嵌合検知部材が後退位置にあるとき、前記ハウジングにおける前記ロック腕部以外の部分に対して後方から係止可能に位置し、後退位置にある前記嵌合検知部材の前記操作部の前記被圧部が後方から押圧されたとき、前記係止部と前記ハウジングとの係止位置を支点として、前記嵌合検知部材の前端が上方へ変位し、該当接部が前記ロック腕部の一部に後方から当接することを特徴としている。
【0010】
本発明では、嵌合検知部材に設けられた係止部は、前記ハウジングにおける前記ロック腕部以外の部分に対して後方から係止可能に位置している。つまり、係止部が後方から係止可能な部分は、ハウジングにおいて弾性変位しない不動の部分である。したがって、コネクタ未嵌合状態において、嵌合検知部材が前方へ押し込まれたとき、嵌合検知部材の係止部は、確実にハウジングに後方から係止し、この状態が維持されるので、嵌合検知部材への前進位置への移動が良好に阻止される。
【0011】
また、本発明では、嵌合検知部材において、係止部は、後方からの押圧操作を受けるための被圧部に対して上方にずれた位置に設けられている。したがって、係止部がハウジングに後方から係止すると、係止部とハウジングとの係止位置を支点として、嵌合検知部材の前端が上方へ変位する。そして、本発明では、嵌合検知部材の前端側に形成された当接部がロック腕部の一部に後方から当接する。つまり、上記係止部と上記ハウジングが係止するだけでなく、上記当接部と上記ロック腕部の一部とが当接することとなるので、より確実に嵌合検知部材の前方への移動が阻止される。
【0012】
(2) (1)の発明において、前記ロック腕部の一部は、段部として形成されていてもよい。
【0013】
(3) (1)または(2)の発明において、前記電気コネクタが前記相手コネクタに対して半嵌合状態にあるとき、前記ロック腕部が前記相手コネクタとの当接により下方へ弾性変位し、前記操作部が前記ロック腕部に対して後方から当接可能な状態となることとしてもよい。このような構成とすると、コネクタ半嵌合状態において、嵌合検知部材の操作部を前方へ押し込むことにより、該操作部がロック腕部に後方から当接して該ロック腕部を押圧するようになるので、嵌合検知部材を前方へ移動させるのと同時に、ハウジングも前方へ移動させることができる。したがって、嵌合検知部材の操作部を前方へ押し込むという1つの動作を行うだけで、相手コネクタにハウジングを嵌合接続させるとともに、嵌合検知部材を前進位置へ移動させることができる。その結果、コネクタ嵌合動作における作業効率が向上する。
【0014】
(4) (3)の発明において、前記操作部は、下方へ弾性変位した前記ロック腕部の後端面に対して、前記操作部の前端面で後方から当接可能な状態となることとしてもよい。
【0015】
(5) (2)ないし(4)の発明において、前記段部は、コネクタ幅方向での前記ロック腕部の全域にわたって形成されており、前記当接部は、コネクタ幅方向での前記ロック腕部の全域に対応する範囲に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、段部に対する当接部の当接面積が大きくなるので、コネクタ未嵌合状態における嵌合検知部材の前方への移動をより確実に防止できる。また、当接面積が大きくなる分、当接力が分散されるので、上記段部および上記当接部にかかる負担が軽減され、該段部および該当接部の損傷を良好に回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、電気コネクタの未嵌合状態における嵌合検知部材の前進位置への移動を良好に防止できる電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の電気コネクタを相手コネクタとともに示す斜視図であり、コネクタ嵌合前の状態を示している。
【
図2】
図1の電気コネクタを相手コネクタとともに示す斜視図であり、コネクタ嵌合後の状態を示している。
【
図3】
図1の電気コネクタの各部材を分解して示した斜視図である。
【
図4】ハウジングと嵌合検知部材とを分離して示した斜視図である。
【
図5】嵌合検知部材の斜視図であり、(A)は上方側から見た状態、(B)は下方側から見た状態を示している。
【
図6】コネクタ嵌合前の状態における電気コネクタおよび相手コネクタの縦断面図であり、(A)はロック部の位置での断面、(B)は突部の位置での断面を示している。
【
図7】コネクタ未嵌合状態にて嵌合検知部材が押し込まれたときの電気コネクタの縦断面図であり、(A)はロック部の位置での断面、(B)は突部の位置での断面を示している。
【
図8】コネクタ半嵌合状態における電気コネクタおよび相手コネクタの縦断面図であり、(A)はロック部の位置での断面、(B)は突部の位置での断面を示している。
【
図9】コネクタ嵌合後、嵌合検知部材が後退位置にある状態における電気コネクタおよび相手コネクタの縦断面図であり、(A)はロック部の位置での断面、(B)は係止部の位置での断面、(C)は突部の位置での断面を示している。
【
図10】コネクタ嵌合後、嵌合検知部材が前進位置へ移動した状態における電気コネクタおよび相手コネクタの縦断面図であり、(A)はロック部の位置での断面、(B)は係止部の位置での断面、(C)は突部の位置での断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1および
図2は、本実施形態の電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)を相手コネクタ2とともに示す斜視図であり、
図1はコネクタ嵌合前の状態、
図2はコネクタ嵌合後の状態を示している。
図3は、コネクタ1の各部材を分解して示した斜視図である。
図4は、ハウジング10と嵌合検知部材30とを分離して示した斜視図である。なお、
図2では、ケーブルの図示が省略されている。また、
図3では、ケーブル付端子は1つだけ示されており、それ以外のケーブル付端子の図示は省略されている。
【0020】
コネクタ1は、前後方向(X軸方向)に延びる複数のケーブルCが結線された端子20を保持するケーブル用電気コネクタであり、相手コネクタ2に対して前方(X1側)へ向けて嵌合接続される。相手コネクタ2は、回路基板(図示せず)の実装面上に実装される回路基板用電気コネクタである。本実施形態では、X軸方向(前後方向)にて、X1方向を前方、X2方向を後方とする。また、回路基板の実装面に平行な面内(XY平面内)で前後方向(X軸方向)に対して直角をなすY軸方向をコネクタ幅方向とし、回路基板の実装面に対して直角なZ軸方向を上下方向(Z1方向が上方、Z2方向が下方)とする。
【0021】
コネクタ1は、ハウジング10と、コネクタ幅方向を端子配列方向としてハウジング10に配列保持される複数の端子20と、前進位置(
図10(A)~(C)参照)と後退位置(
図9(A)~(C)参照)との間でハウジング10に対して前後方向に相対移動可能な状態でハウジング10に保持される嵌合検知部材30とを有している。
【0022】
ハウジング10は、樹脂等の電気絶縁材製であり、コネクタ幅方向を長手方向とする略直方体外形をなしている。ハウジング10には、
図3に示されるように、端子20を収容保持するための端子収容部11が、端子配列方向に配列形成されている。また、端子収容部11は、
図3に示されるように、上下方向で2段をなしている。端子収容部11は、前後方向に延びてハウジング10を貫通しており、ケーブルCに結線された端子20を後方から受け入れて収容保持するようになっている。
【0023】
ハウジング10の上面には、コネクタ幅方向での中央位置に、上下方向に弾性変位可能なロック腕部12が設けられている。ロック腕部12は、ハウジング10の前端の上面から後方へ向けてハウジング10の後端位置まで延びる片持ち梁状をなしている。ロック腕部12の前後方向での中間位置には、相手コネクタ2とのロックのためのロック部12Aが、ロック腕部12の上面から突出して設けられている。ロック部12Aは、前端面が、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面をなしており、後端面が、前後方向に対して直角な面をなしている(
図6(A)参照)。
【0024】
ロック腕部12の前端部の下面には、
図3および
図4に示されるように、段部12Bが形成されている(
図6(A)等も参照)。段部12Bは、コネクタ幅方向でのロック腕部12の全域にわたって形成されており、後退位置にある嵌合検知部材30の前端よりも前方位置で下方へ突出している(
図6(A)等も参照)。また、段部12Bは、ロック部12Aよりも前方に設けられている。
【0025】
ロック腕部12の後端部は、
図1および
図4に示されるように、その上部におけるコネクタ幅方向の両端部がコネクタ幅方向外方へ向けて突出している。この突出する部分は、嵌合検知部材30の後述の弾性腕部33Aの後端部の直上に位置しており、弾性腕部33Aの後端部を下方へ押圧可能な押圧部12Cとして形成されている。
【0026】
ハウジング10の上面には、コネクタ幅方向でのロック腕部12の両側に複数のガイド溝部13が形成されている。ガイド溝部13は、相手コネクタ2との挿抜過程にて相手コネクタ2の後述のガイド突部42Aによる案内を受けるための部分であり、前後方向に延びて形成されている。ハウジング10の後部の上面には、ロック腕部12の上方にてコネクタ幅方向でロック腕部12を跨ぐように延びる規制部14が設けられている。規制部14は、ロック腕部12の上方への所定量以上の変位を規制するようになっている。
【0027】
図4に示されるように、ロック腕部12の直下に位置するハウジング10の上面には、嵌合検知部材30を支持するための支持部15が形成されている。支持部15の後端部は、
図4に示されるように、ハウジング10の後端面から突出している。支持部15は、コネクタ幅方向での両端に、嵌合検知部材30を案内するための案内溝部15Aが前後方向に延びて形成されている。
【0028】
また、ロック腕部12の直下に位置するハウジング10の上面には、前後方向での中間位置にて、ハウジング10からの嵌合検知部材30の後方への不用意な抜けを防止するための抜止突部16(
図6(A)等参照)が上方へ向けて突出して設けられている。また、ハウジング10の後部には、
図3および
図4に示されるように、ロック腕部12の後部のコネクタ幅方向での両側で、ロック腕部12の後部を挟んで位置するようにして、被係止部17が形成されている(
図6(B)等も参照)。被係止部17は、ハウジング10の後端よりも前方に位置し、ロック腕部12を収容する空間の内壁面から該空間に突出している。
【0029】
端子20は、金属板部材を板厚方向に屈曲して形成されており、
図3に示されるように、前後方向に延びた形状をなしおり、その後部でケーブルCの前端部に結線されている。端子20は、前端部が箱状をなしており、相手コネクタ2に設けられた雄型の相手端子50(
図6(A)参照)を前方から受け入れて、弾性変位可能な接触部(図示せず)で該相手端子50に接触可能となっている。つまり、端子20は雌型の端子である。
【0030】
図5(A),(B)は、嵌合検知部材30の斜視図であり、
図5(A)は上方側から見た状態、
図5(B)は下方側から見た状態を示している。嵌合検知部材30は、樹脂等の電気絶縁材製であり、上下方向に対して直角な板面を持つ基部31と、基部31の後部に設けられた操作部32と、基部31の前端から後方へ向けて延び上下方向に弾性変位可能な弾性部33と、前記弾性部33の後部からコネクタ幅方向外方に突出する係止部34と、嵌合検知部材30の前端側に形成された当接部35とを有している。
【0031】
基部31は、前後方向を長手方向とする略直方体外形をもつ板状をなしている。基部31は、
図5(B)に示されるように、コネクタ幅方向での中央域で前後方向に延びるとともに上下方向に貫通する孔部31Aが形成されている。該孔部31Aの両側縁部(前後方向に延びる縁部)は、前端に寄った位置でコネクタ幅方向に延びる前方連結部31Bで連結されている。基部31の後部の両側縁部には、ハウジング10の案内溝部15Aによる案内を受ける被案内板部31Cが形成されている。
【0032】
操作部32は、基部31の後端部の上面から突出して設けられている。操作部32は、後方からの押圧操作を受けるための被圧部32Aを後端部(前後方向に対して直角な後端面をもつ部分)に有している。弾性部33は、コネクタ幅方向で間隔をもった2位置、詳細には、ハウジング10のロック腕部12の両外側となる2位置にそれぞれ設けられた弾性腕部33Aを有している。つまり、2つの弾性腕部33A同士の間隔は、ロック腕部12の幅寸法よりも若干大きくなっている。
【0033】
2つの弾性腕部33Aは、基部31の前端の上面から後方へ向けて操作部32の若干前方の位置まで延びる片持ち梁状をなしている。弾性腕部33Aの前後方向での中間位置には、相手コネクタ2と係止可能な突部33Bが、弾性腕部33Aの上面から突出して設けられている。突部33Bは、コネクタ幅方向に見て、略三角形状をなして突出している。つまり、突部33Bは、前端面が、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面をなしており、後端面が、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面をなしている(
図6(B)参照)。
【0034】
2つの弾性腕部33Aの後端部同士は、コネクタ幅方向に延びる後方連結部33Cによって連結されている。また、弾性腕部33Aの後端部は、
図1に示されるように、コネクタ幅方向でロック腕部12の押圧部12Cと重複する範囲をもって、該押圧部12Cの直下に位置している。したがって、弾性腕部33Aの後端部は、ロック腕部12が下方へ弾性変位したときに、押圧部12Cからの下方へ向けた押圧力を受けるようになっている。
【0035】
係止部34は、各弾性腕部33Aの後部からコネクタ幅方向外方へ向けて突出している。係止部34は、
図6(B)に示されるように、弾性腕部33Aが自由状態にあるとき、ハウジング10の被係止部17に後方から対向して位置している。また、係止部34は、
図6(B)に示されるように、弾性腕部33Aが自由状態にあるとき、被圧部32Aに対して上方にずれた位置に設けられている。ここで、「上方にずれた位置」とは、被圧部32Aの上下方向での中心位置よりも上方の位置を意味する。したがって、
図6(B)に示されるような被圧部32Aよりも上方に係止部34が位置しているような場合だけでなく、被圧部32Aの上半部に対して上下方向で重複して係止部34が位置している場合も含まれる。
【0036】
当接部35は、
図5(A)に示されるように、コネクタ幅方向での2つの弾性腕部33Aの間の位置で、基部31の前端部の上面から突出するとともに、2つの弾性腕部33Aの前端部同士を連結している。当接部35の前端面は前後方向に対して直角な平坦面をなしている。
【0037】
嵌合検知部材30は、ハウジング10に後方から挿入することにより取り付けられる。具体的には、基部31の前部を、ハウジング10の上面とロック腕部12との間の空間に後方から挿入し、さらに、基部31の被案内板部31Cをハウジング10の案内溝部15A内へ後方ら挿入する。これによって、嵌合検知部材30は、被案内板部31Cで案内溝部15Aよる前方への案内を受ける。本実施形態では、2つの弾性腕部33Aは、コネクタ幅方向でハウジング10のロック腕部12の両外側に位置しているので、嵌合検知部材30を前方へ移動させると、ロック腕部12が2つの弾性腕部33Aの間に前方から進入する。そして、嵌合検知部材30の前方連結部31Bが抜止突部16を乗り越えて該抜止突部16の前方にもたらされ、該抜止突部16に対して前方から係止可能となった時点で、嵌合検知部材30の取付けが完了する(
図6(A),(B)参照)。
【0038】
このとき、嵌合検知部材30は、後退位置に配置された状態となっており、前方連結部31Bが抜止突部16により前方から係止することにより、ハウジング10から後方へ抜けてしまうことが防止されている。また、この後退位置において、嵌合検知部材30の係止部34は、ハウジング10の被係止部17の若干後方で、被係止部17に後方から対向している。したがって、仮に、嵌合検知部材30に前方へ向けた不用意な外力が作用しても、係止部34が被係止部17に後方から係止することで、嵌合検知部材30の前方への移動が規制される。
【0039】
相手コネクタ2は、
図1に示されるように、相手ハウジング40と、コネクタ幅方向を端子配列方向として相手ハウジング40に配列保持される複数の相手端子50(
図6(A),(B)参照)と、コネクタ幅方向での相手ハウジング40の両端部で保持される固定金具60とを有している。
【0040】
相手ハウジング40は、樹脂等の電気絶縁材製であり、コネクタ幅方向を長手方向とする略直方体外形をなしている。相手ハウジング40には、コネクタ1を受入可能な受入部41が後方へ向けて開口して形成されている。相手ハウジング40の上壁42には、コネクタ幅方向でコネクタ1のガイド溝部13に対応する位置にガイド突部42Aが形成されている。ガイド突部42Aは、上壁42の下面から下方へ突出するとともに、前後方向に延びる突条をなしている。ガイド突部42Aは、コネクタ嵌合過程において、コネクタ1のガイド溝部13へ前方から進入し、コネクタ1を前方へ案内するようになっている。
【0041】
上壁42の後端部は、コネクタ幅方向において少なくともコネクタ1のロック部12Aおよび突部33Bに対応する位置で、下方へ向けて突出している。本実施形態では、ロック部12Aに対応する位置での突出部分が、ロック部12Aと係止可能な被ロック部42Bとして形成され(
図10(A)等参照)、また、突部33Bに対応する位置での突出部分が、突部33Bと係止可能な突縁部42Cとして形成されている(
図10(B)等参照)。
【0042】
相手端子50は、金属条片を屈曲して形成されており、コネクタ1の端子20に対応するように配列された状態で相手ハウジング40に保持されている。
図6(A),(B)に示されるように、相手端子50の後端部は、受入部41内に位置しており、コネクタ1の端子20に接触可能な接触部51として形成されている。また、相手端子50の前端部は、相手ハウジング40のよりも前方に位置しており、回路基板(図示せず)の対応回路部に半田接続可能な接続部52として形成されている。
【0043】
固定金具60は、金属板部材を板厚方向に屈曲して形成されており、
図1に示されるように、相手ハウジング40の両端部に形成された金具保持溝部43に下方から圧入されて保持されている。固定金具60は、コネクタ幅方向外方へ向けて延びる固定部61を下部に有しており、該固定部61で回路基板(図示せず)の対応部に半田接続されて固定されるようになっている。
【0044】
コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合接続動作を、
図6ないし
図10に基づいて説明する。まず、嵌合接続動作の開始に先立って、
図6(A),(B)に示されるように、コネクタ1の嵌合検知部材30を後退位置に位置させておく。もし、相手コネクタ2との嵌合接続動作の開始前の状態、すわなち、コネクタ未嵌合状態において、後退位置にある嵌合検知部材30に前方へ押し込むような不用意な外力が作用したとき、
図7(B)に示されるように、係止部34がハウジング10の被係止部17に後方から係止するので、嵌合検知部材30の前方への移動が阻止される。本実施形態では、被係止部17は、ハウジング10におけるロック腕部12とは異なる部分、すなわち弾性変位することのない不動の部分に形成されている。したがって、嵌合検知部材30の係止部34は確実に被係止部17に係止し、この状態が維持されるので、嵌合検知部材30への前進位置への移動が良好に阻止される。
【0045】
また、本実施形態では、嵌合検知部材30において、係止部34は、操作部32の被圧部32Aに対して上方にずれた位置に設けられている。したがって、係止部34が被係止部17に後方から係止すると、
図7(B)に示されるように、係止部34と被係止部17との係止位置を支点として、嵌合検知部材の前端が上方へもち上がるように変位する。その結果、
図7(A)に示されるように、嵌合検知部材30の当接部35がロック腕部12の段部12Bに後方から当接する。つまり、本実施形態では、係止部34と被係止部17とが係止するだけでなく、当接部35と段部12Bとが当接することとなるので、より確実に嵌合検知部材30の前方への移動が阻止される。また、本実施形態では、
図7(A)に示されるように、嵌合検知部材の前端が上方へ変位したとき、当接部35は、ロック腕部12に対して下方からも当接する。
【0046】
このように、本実施形態では、コネクタ未嵌合状態において、後退位置にある嵌合検知部材30に対して前方へ向けた不用意な外力が作用しても、嵌合検知部材30の前方への移動が良好に阻止される。したがって、コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合接続動作を開始する際には、嵌合検知部材30は必ず後退位置にある状態となっているので、従来のように、すでに前進位置へ移動してしまった嵌合検知部材を後退位置に戻す作業が不要となり、コネクタ嵌合接続動作の作業効率を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、嵌合検知部材30の当接部35は、その前端面が嵌合検知部材30の前端面の一部を形成するような位置に設けられているが、当接部をそのような位置に設けることは必須ではなく、例えば、嵌合検知部材の前端面よりも若干後方の位置に当接部を設けてもよい。つまり、当接部は、嵌合検知部材の前端側に設けられていて、嵌合検知部材の前端が上方へ変位したときにロック腕部の一部に後方から当接するようになっていればよい。
【0048】
また、本実施形態では、当接部35は、コネクタ幅方向で2つの弾性腕部33Aの間の全範囲にわたって形成されている。つまり、当接部35は、コネクタ幅方向でロック腕部12の段部12Bの全域に対応する範囲、具体的には段部12Bの全域を含む範囲に形成されている。したがって、当接部35と段部12Bとの当接面積が大きくなるので、コネクタ未嵌合状態における嵌合検知部材30の前方への移動をより確実に防止できる。また、当接面積が大きくなる分、当接力が分散されるので、当接部35および段部12Bにかかる負担が軽減され、当接部35および段部12Bの損傷を良好に回避できる。
【0049】
コネクタ嵌合接続動作を開始する際には、
図6(A),(B)に示されるように、コネクタ1の嵌合検知部材30を後退位置に位置させた状態で、コネクタ1を、その前端部が相手コネクタ2の受入部41の開口部に後方から対向するように配置する。次に、コネクタ1を前方へ移動して受入部41内へ進入させる。
【0050】
コネクタ嵌合過程において、
図8(A)に示されるように、ロック腕部12のロック部12Aが相手ハウジング40の被ロック部42Bに当接し、被ロック部42Bから下方へ向けた力を受けることにより、ロック腕部12が下方へ弾性変位する。ロック腕部12が下方へ弾性変位する結果、
図8(A)に示されるように、ロック腕部12の後端部は、上下方向で操作部32の下部と重複する範囲をもつ位置まで下がり、該操作部32の前方に位置する。このとき、ロック腕部12の押圧部12Cが嵌合検知部材30の弾性腕部33Aの後端部を下方へ押し下げるので、弾性腕部33Aも下方へ弾性変位する。その結果、
図8(B)に示されるように、嵌合検知部材30の係止部34が被係止部17よりも下方に変位する。したがって、コネクタ1のさらなる前方への移動が許容された状態となる。
【0051】
コネクタ1がさらに前方へ移動し、ロック部12Aが被ロック部42Bの位置を通過して、被ロック部42Bよりも前方の位置に達すると、
図9(A)に示されるように、ロック腕部12が自由状態に戻る。その結果、ロック部12Aが被ロック部42Bに対して前方から係止可能に位置し、コネクタ同士がロック状態となる。このとき、
図9(B)に示されるように、嵌合検知部材30の突部33Bが相手ハウジング40の突縁部42Cに当接し、突縁部42Cから下方へ向けた力を受けることにより、弾性腕部33Aが下方へ弾性変位した状態が維持されている。つまり、ロック腕部12が自由状態に戻っても、弾性腕部33Aは弾性変位状態のままであり、係止部34は被係止部17よりも下方に位置している。また、このとき、相手端子50の接触部51が、ハウジング10の端子収容部11に前方から進入し、端子20の接触部と接触して電気的に導通可能な状態となる。
【0052】
次に、嵌合検知部材30の操作部32を前方へ向けて押圧し、換言すると、被圧部32Aに前方へ向けた操作力を加え、嵌合検知部材30を前進位置へ移動させる。上述したように、係止部34は被係止部17よりも下方に位置しているので、係止部34が被係止部17に係止することはなく、嵌合検知部材30は前方へ向けて円滑に移動する。嵌合検知部材30が前進位置に移動すると、
図10(A)に示されるように、操作部32の前部がロック腕部12の後端部の直下で、該後端部を下方から支持可能に位置する。また、該操作部32自体は、ハウジング10の支持部15によって下方から支持されている。したがって、ロック腕部12の下方への弾性変位が操作部32によって規制されるので、ロック部12Aと被ロック部42Bの係止状態が維持され、コネクタ同士のロック状態が良好に確保される。
【0053】
また、嵌合検知部材30が前進位置へ移動すると、突部33Bが突縁部42Cの位置を通過して突縁部42Cよりも前方の位置に達し、これと同時に、係止部34が被係止部17の位置を通過して、被係止部17よりも前方の位置に達し、弾性腕部33Aが自由状態に戻る。その結果、
図9(B)に示されるように、突部33Bが突縁部42Cに対して前方から係止可能に位置し、また、
図9(C)に示されるように、係止部34が被係止部17に対して前方から係止可能に位置する。したがって、嵌合検知部材30の後方へ向けた不用意な移動が阻止される。このようにして嵌合検知部材30が前進位置に移動したことをもって、コネクタ1が相手コネクタ2に正規に嵌合接続されたことが検知され、コネクタ嵌合接続動作が完了する。
【0054】
仮に、コネクタ嵌合動作の過程で、後退位置にある嵌合検知部材30を前方へ押し込む動作を開始する直前において、コネクタ1が相手コネクタ2に完全には嵌合されていなかった場合、すなわち、
図8(A),(B)に示されるような半嵌合状態であった場合には、次に説明するように、そのまま嵌合検知部材30を前方へ押し込めばよい。
【0055】
本実施形態では、
図8(A),(B)に示されるように、コネクタ半嵌合状態において、ロック腕部12が下方へ変位しており、その後端部が操作部32の前方にて該操作部32と当接可能な状態で位置している。したがって、そのまま操作部32を前方へ押し込む操作を行うと、該操作部32の前端面32B(
図5(A)も参照)はロック腕部12の後端面12D(
図4も参照)に後方から当接し、前方へ向けた操作力が操作部32を介してロック腕部12ひいてはハウジング10に伝達される。その結果、嵌合検知部材30を前方へ移動させるのと同時に、ハウジング10も前方へ移動する。したがって、嵌合検知部材30の操作部32を前方へ押し込むという1つの動作を行うだけで、相手コネクタ2にハウジング10を嵌合接続させるとともに、嵌合検知部材30を前進位置へ移動させることができ、コネクタ嵌合接続動作における作業効率が向上する。
【0056】
なお、コネクタ半嵌合状態において、上述したように嵌合検知部材30とハウジング10を同時に押し込むことは必須ではなく、まずハウジング10だけを前方へ移動させて相手コネクタ2に嵌合させてから、嵌合検知部材30を前方へ移動させてもよいことは言うまでもない。
【0057】
コネクタ1を相手コネクタ2から抜出する際には、まず、嵌合検知部材30を後方に引いて後退位置に移動させてから、コネクタ1を後方へ引いて相手コネクタ2から引き抜けばよい。
【符号の説明】
【0058】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
10 ハウジング
12 ロック腕部
12B 段部
12D 後端面
20 端子
30 嵌合検知部材
32 操作部
32A 被圧部
32B 前端面
33A 弾性腕部
34 係止部
35 当接部