(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068924
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】両回転式スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179610
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA13
3H039BB04
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC11
3H039CC27
(57)【要約】
【課題】作動中にスクロール室に溜まる潤滑油を摺動部に供給するとともに、その潤滑油による摺動部の冷却効果を高めることにより、摺動部における摺動抵抗の増加を抑えて、ひいては効率低下を抑えることのできる両回転式スクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】ハウジング60には、スクロール圧縮部80を収容するスクロール室としての吸入室61Aと、吸入室61Aに対して区画壁としての第1底壁63を隔てて隣接された貯留室70Aと、潤滑油供給通路63Hとが設けられている。潤滑油供給通路63Hは、吸入室61Aに設けられる貯油部83に連通し、スクロール圧縮部80や第2軸受72、第3軸受73等に潤滑油を供給する。潤滑油供給通路63Hの途中には、潤滑油供給通路63H内の潤滑油を貯留室70Aの液冷媒によって冷却する潤滑油冷却部78が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離し、液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによりスクロール圧縮部が構成され、
前記スクロール室には、潤滑油が貯油される貯油部が設けられており、
前記貯油部に連通し、前記スクロール圧縮部又は前記軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を備え、
前記潤滑油供給通路の途中には、前記潤滑油供給通路内の潤滑油を前記貯留室内の液冷媒によって冷却する潤滑油冷却部が設けられていることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記駆動スクロールは、駆動端板と、前記駆動端板と一体をなし、前記従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、前記駆動端板に対して前記従動スクロールを挟みつつ前記駆動端板と連結されるカバー体とを有し、
前記従動スクロールは、従動端板と、前記従動端板と一体をなし、前記駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し、
前記従動端板と前記カバー体との摺動部に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給される請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記軸受に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給され、
前記潤滑油供給通路は前記支持部を貫通している請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記従動軸部が挿通されたブッシュを備え、
前記従動スクロールと前記ブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ、
前記ブッシュ用軸受に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給され、
前記潤滑油供給通路は前記従動軸部又は前記ブッシュを貫通している請求項2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記潤滑油供給通路は前記カバー体を貫通している請求項2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記潤滑油冷却部は、前記区画壁における前記貯留室側の壁面に凹設された溝と、前記溝が延びる方向に延在し、前記溝の開口を塞ぐように前記壁面に固定された板状の蓋体とにより形成され、
前記溝の内面と前記蓋体とにより区画された通路が前記潤滑油供給通路の一部を構成している請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項7】
前記潤滑油冷却部は、前記貯留室内に配置されたパイプにより形成され、
前記パイプ内の通路が前記潤滑油供給通路の一部を構成している請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両回転式スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より両回転式スクロール型圧縮機が知られている。この両回転式スクロール型圧縮機は、駆動機構、駆動スクロール、従動機構、従動スクロール及びハウジングを備えている。
【0003】
ハウジングは、駆動スクロール及び従動スクロールよりなるスクロール圧縮部を収容するスクロール室を有している。
【0004】
駆動スクロールは、駆動機構によって駆動軸心周りで回転駆動される。従動スクロールは、駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで駆動スクロール及び従動機構によって回転従動される。
【0005】
駆動スクロールは、駆動端板及び駆動渦巻体を有している。駆動端板は、駆動軸心と交差して延びている。駆動渦巻体は、駆動端板から従動スクロールに向かって突出し、渦巻状をなしている。
【0006】
従動スクロールは、従動端板及び従動渦巻体を有している。従動端板は、従動軸心と交差して延びている。従動渦巻体は、従動端板から駆動スクロールに向かって突出し、渦巻状をなしている。
【0007】
駆動スクロール及び従動スクロールは、駆動渦巻体と従動渦巻体とが互いに対向して圧縮室を形成するとともに、回転駆動及び回転従動によって圧縮室の容積を変化させ、その容積変化に応じて吸入室から吸入した流体を圧縮して吐出室に吐出する。
【0008】
この両回転式スクロール型圧縮機のように、圧縮部が回転することにより圧縮室内の流体を圧縮する回転式圧縮機においては、圧縮部をハウジングに対して回転可能に支持する軸受等の摺動部が摺動摩擦により発熱する。また、その熱によって軸受内の潤滑油の粘性が低下することで摺動抵抗が増加し、さらに発熱量が増加するという悪循環も生じる。そして、摺動部の摺動抵抗が増加すれば、摺動損失による効率低下に繋がる。
【0009】
そのため、回転式圧縮機の作動中においては、軸受等の摺動部に潤沢に潤滑油を供給するとともに、摺動部を連続的に冷却して摺動熱の発生を抑える必要がある。
【0010】
そこで、特許文献1に記載の回転式圧縮機では、圧縮機内の底部に設けられた貯油部から汲み上げ手段により潤滑油を汲み上げ、圧縮部や回転軸の軸受へ潤滑油を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来の回転式圧縮機における対策では、潤滑油の熱容量や圧縮機内の貯油部に溜められた潤滑油温度を考慮すると、摺動部の冷却不足が懸念され、その対策は十分とは言えない。
【0013】
特に、両回転式スクロール型圧縮機では、スクロール圧縮部を収容するスクロール室内において、回転するスクロール圧縮部から潤滑油が流出するとともに、回転するスクロール圧縮部の遠心力の影響によりその回転方向に流体流れが生じて遠心力が発生する。その結果、スクロール室内の最外周部に潤滑油が溜まる。スクロール室の最外周部に溜まる潤滑油が増え続けると、本来必要である摺動部の潤滑油量が低下してしまう。潤滑油量が低下すれば摺動抵抗が増加するので、効率が低下するおそれがある。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、作動中にスクロール室に溜まる潤滑油を摺動部に供給するとともに、その潤滑油による摺動部の冷却効果を高めることにより、摺動部における摺動抵抗の増加を抑えて、ひいては効率低下を抑えることのできる両回転式スクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離し、液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによりスクロール圧縮部が構成され、
前記スクロール室には、潤滑油が貯油される貯油部が設けられており、
前記貯油部に連通し、前記スクロール圧縮部又は前記軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を備え、
前記潤滑油供給通路の途中には、前記潤滑油供給通路内の潤滑油を前記貯留室内の液冷媒によって冷却する潤滑油冷却部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機では、スクロール室に、潤滑油が貯油される貯油部が設けられる。この貯油部は例えば、以下のようにして設けられる。すなわち、スクロール圧縮部の作動中、回転するスクロール圧縮部内に供給された潤滑油が遠心力によりスクロール圧縮部からスクロール室に流出する。スクロール室内においては、回転するスクロール圧縮部の遠心力の影響によりその回転方向に流体流れが生じる。このため、遠心力の作用により潤滑油がスクロール室の外周部に溜まる。こうしてスクロール室には、潤滑油が貯油される貯油部が設けられる。
【0017】
ここで、スクロール室内においては、スクロール圧縮部の回転中心により近い方が流体の遠心力の作用を受け難い。このため、スクロール室の外周部の圧力と、スクロール圧縮部の回転中心側の圧力とを比較すると、流体の遠心力の作用をより受ける外周部の方が高圧になる。また、スクロール圧縮部内には、駆動スクロール又は従動スクロールに設けられた吸入口を介してスクロール室内の流体が吸入されるため、スクロール圧縮部の吸入口の圧力は、スクロール室の外周部の圧力よりも低圧となる。
【0018】
そこで、例えば、潤滑油供給通路の入口をスクロール室の外周部に開口し、潤滑油供給通路の出口を例えばスクロール圧縮部内やスクロール室内のスクロール圧縮部の回転中心側に開口すれば、潤滑油供給通路の入口は出口よりも高圧になる。このため、その圧力差により、スクロール室の外周部に設けられた貯油部に溜まった潤滑油が潤滑油供給通路の入口に導入され、その潤滑油は潤滑油供給通路の出口からスクロール圧縮部内やスクロール室内のスクロール圧縮部の回転中心側に導出される。そして、潤滑油供給通路の出口から出た潤滑油は、遠心力の作用により出口よりも外周側に流れ、出口よりも外周側に位置するスクロール圧縮部の部位や軸受に供給される。
【0019】
こうしてスクロール室に設けられる貯油部の潤滑油をスクロール圧縮部や軸受の摺動部に供給ことができるので、これらの摺動部において潤滑油不足により摺動抵抗が増加することを抑えることができる。
【0020】
しかも、潤滑油供給通路を流通途中の潤滑油は、潤滑油冷却部で貯留室内の液冷媒によって冷却される。このため、スクロール室の貯油部に溜まっていた潤滑油よりも低温の潤滑油がスクロール圧縮部や軸受の摺動部に供給される。その結果、粘性がより適切に確保された潤滑油によってその摺動部を潤滑することができるとともに、より低温の潤滑油でその摺動部を冷却することによって、その摺動部からの熱で潤滑油の粘性が低下することを抑えることができる。これらにより、スクロール圧縮部や軸受の摺動部において摺動抵抗が増加することを抑えることができる。
【0021】
したがって、本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、作動中にスクロール室に溜まる潤滑油を摺動部に供給するとともに、その潤滑油による摺動部の冷却効果を高めることにより、摺動部における摺動抵抗の増加を抑えて、ひいては効率低下を抑えることができる。
【0022】
駆動スクロールは、駆動端板と、駆動端板と一体をなし、従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、駆動端板に対して従動スクロールを挟みつつ駆動端板と連結されるカバー体とを有し得る。また、従動スクロールは、従動端板と、従動端板と一体をなし、駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し得る。そして、従動端板とカバー体との摺動部に潤滑油供給通路から潤滑油が供給されることが好ましい。
【0023】
この場合、スクロール圧縮部においては、従動端板とカバー体との摺動部が潤滑油を必要とする。この点、この従動端板とカバー体との摺動部に潤滑油供給通路から潤滑油が供給される。このため、この従動端板とカバー体との摺動部に対して、液冷媒により冷却された潤滑油を良好に供給することができる。
【0024】
軸受に潤滑油供給通路から潤滑油が供給され、潤滑油供給通路は支持部を貫通していることが好ましい。
【0025】
この場合、支持部よりも外周側に位置する軸受に対して、支持部を貫通する潤滑油供給通路から液冷媒により冷却された潤滑油を良好に供給することができる。
【0026】
また、軸受は、スクロール室内において比較的スクロール圧縮部の回転中心に近い。スクロール室内においては、スクロール圧縮部の回転中心に近いほど潤滑油量が不足し易い。潤滑油供給通路が支持部を貫通していれば、潤滑油量が不足し易い軸受に対して良好な潤滑油供給が可能になる。
【0027】
さらに、支持部は、スクロール圧縮部の作動中であっても回転することがない。このため、支持部を貫通してその先端面に開口する出口から安定して潤滑油を導出させることができる。
【0028】
従動軸部が挿通されたブッシュを備え得る。また、従動スクロールとブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ得る。そして ブッシュ用軸受に潤滑油供給通路から潤滑油が供給されることが好ましい。また、潤滑油供給通路は従動軸部又はブッシュを貫通していることが好ましい。
【0029】
この場合、従動軸部又はブッシュよりも外周側に位置するブッシュ用軸受に対して、従動軸部又はブッシュを貫通する潤滑油供給通路から液冷媒により冷却された潤滑油を良好に供給することができる。
【0030】
また、ブッシュ用軸受は、スクロール室内においてスクロール圧縮部の回転中心に近く、潤滑油量が不足し易い。潤滑油供給通路が従動軸部又はブッシュを貫通していれば、潤滑油量が不足し易いブッシュ用軸受に対して良好な潤滑油供給が可能になる。
【0031】
潤滑油供給通路はカバー体を貫通していることが好ましい。
【0032】
この場合、カバー体を貫通する潤滑油供給通路の出口よりも外周側に位置する従動端板とカバー体との摺動部に対して、液冷媒により冷却された潤滑油を良好に供給することができる。
【0033】
潤滑油冷却部は、区画壁における貯留室側の壁面に凹設された溝と、溝が延びる方向に延在し、溝の開口を塞ぐように壁面に固定された板状の蓋体とにより形成されていることが好ましい。そして、溝の内面と蓋体とにより区画された通路が潤滑油供給通路の一部を構成していることが好ましい。
【0034】
この場合、溝の内面と蓋体とにより区画された通路を通過中の潤滑油を、蓋体を介して貯留室内の液冷媒により冷却することができる。
【0035】
潤滑油冷却部は、貯留室内に配置されたパイプにより形成されていることが好ましい。そして、パイプ内の通路が潤滑油供給通路の一部を構成していることが好ましい。
【0036】
この場合、パイプ内の通路を通過中の潤滑油を、パイプの周壁を介して貯留室内の液冷媒により冷却することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機によれば、作動中にスクロール室に溜まる潤滑油を摺動部に供給するとともに、その潤滑油による摺動部の冷却効果を高めることにより、摺動部における摺動抵抗の増加を抑えて、ひいては効率低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機に係り、要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施例5の両回転式スクロール型圧縮機に係り、要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を具体化した実施例1~5を図面を参照しつつ説明する。
【0040】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という)は、ハウジング60、スクロール圧縮部80、電動モータ10、駆動スクロール30、従動スクロール40、従動機構20、貯留室70Aを備えている。電動モーラ10は、本発明における「駆動機構」の一例である。この圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両用空調装置を構成している。
【0041】
本実施例では、
図1~
図6に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。なお、前後方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。ただし、本実施例の圧縮機は、後述する潤滑油供給通路63Hの入口63Cが吸入室61Aの最下部に位置する姿勢で車両に搭載される。
【0042】
ハウジング60は、ハウジング本体61と、前カバー65と、軸受ハウジング67と、後カバー70によって構成されている。
【0043】
ハウジング本体61は、第1外周壁62及び第1底壁63を有する有底筒状部材である。第1底壁63は、本発明における「区画壁」の一例である。第1外周壁62は、駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心R1は前後方向と平行である。また、第1外周壁62は内周面62Bを有している。第1底壁63は、ハウジング本体61の後端に位置している。第1底壁63は、駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。
【0044】
第1底壁63の外周縁は、第1外周壁62の後端に接続している。第1底壁63は、は、前面631と、前面631の対側に位置する後面632とを有している。第1底壁63の前面631の中央には、前方に向かって突出する円柱状の第2軸支部64が凸設されている。第2軸支部64は、本発明における「支持部」の一例である。
【0045】
第2軸支部64の先端面641には、第2軸支部64に対して偏心して配置された円柱状の第3軸支部90が配置されている。第3軸支部90は、本発明における「ブッシュ」の一例である。第2軸支部64には偏心軸91が設けられている。偏心軸91は、本発明における「従動軸部」の一例である。偏心軸91は、第2軸支部64の先端面641から駆動軸心R1と平行に前方に延びている。偏心軸91は、駆動軸心R1に対して偏心している。第3軸支部90は、偏心軸91に対して回転可能に取り付けられている。また、後述する凹部74には、第3軸受73が内嵌している。第3軸受73は、本発明における「ブッシュ用軸受」の一例である。これらにより、第3軸支部90は、後述する凹部74及び偏心軸91に対して回転可能とされている。
【0046】
軸受ハウジング67は、ハウジング本体61の前方に配置されている。軸受ハウジング67は、駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。軸受ハウジング67は、その外周縁がハウジング本体61の第1外周壁62の前端に当接する状態で、図示しないボルトによって前カバー65と共に第1外周壁62に締結されている。これにより、軸受ハウジング67は、ハウジング本体61を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体61内に吸入室61Aが形成されている。
【0047】
軸受ハウジング67の中央には、駆動軸心R1を中心とする円筒状の第1軸支部66が設けられている。第1軸支部66には、第1軸受71が内嵌している。
【0048】
前カバー65は、軸受ハウジング67の前方に配置されている。前カバー65は、第2外周壁68及び第2底壁69を有する有底筒状部材である。第2外周壁68は、駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。第2底壁69は、前カバー65の前端に位置している。第2底壁69は、駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。第2底壁69の外周縁は、第2外周壁68の前端に接続している。
【0049】
前カバー65は、第2外周壁68の後端を軸受ハウジング67の前面に当接させた状態で、図示しないボルトによって軸受ハウジング67と共に第1外周壁62に締結されている。これにより、前カバー65は、軸受ハウジング67との間に第2吐出部65Aを形成している。第2吐出部65Aは、吸入室61Aの前方で吸入室61Aと隣接している。第2吐出部65Aは、軸受ハウジング67によって、吸入室61Aと区画されている。
【0050】
前カバー65には、吐出連絡口65Bが形成されている。吐出連絡口65Bは、前カバー65における外周縁近くに位置し、駆動軸心R1と平行な方向において前カバー65を貫通している。吐出連絡口65Bは、第2吐出部65Aと圧縮機の外部とを連通している。吐出連絡口65Bには、配管が接続されており、第2吐出部65Aに吐出された冷媒を凝縮器に向けて流通させる。なお、配管、蒸発器及び凝縮器の図示は省略する。
【0051】
後カバー70は、ハウジング本体61の後方に配置されている。後カバー70は、第3外周壁75及び第3底壁76を有する有底筒状部材である。第3外周壁75は、駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。第3底壁76は、後カバー70の後端に位置している。第3底壁76は、駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。第3底壁76の外周縁は、第3外周壁75の後端に接続している。
【0052】
後カバー70は、第3外周壁75の前端をハウジング本体61の第1底壁63の後面632に当接させた状態で、図示しないボルトによってハウジング本体61の第1外周壁62に締結されている。これにより、後カバー70は、ハウジング本体61との間に貯留室70Aを形成している。貯留室70Aは、吸入室61Aの後方で吸入室61Aと隣接している。貯留室70Aは、ハウジング本体61の第1底壁63によって、吸入室61Aと区画されている。
【0053】
後カバー70の第3外周壁75には、吸入連絡口70Bが形成されている。吸入連絡口70Bは、駆動軸心R1と交差する方向において第3外周壁75を貫通している。吸入連絡口70Bは、貯留室70Aと圧縮機の外部とを連通している。吸入連絡口70Bには配管が接続されている。これにより、貯留室70Aには、配管を通じて蒸発器を経た低温低圧の冷媒が吸入される。
【0054】
ハウジング本体61の第1底壁63には、吸入連通口63Aが形成されている。吸入連通口63Aは、第1底壁63における外周縁近くで、かつ、吸入連絡口70Bの近くに位置し、駆動軸心R1と平行な方向において第1底壁63を貫通している。吸入連通口63Aは、吸入室61Aと貯留室70Aとを連通している。
【0055】
図2に示すように、第1底壁63の最下部には、第1通路63Bが形成されている。第1通路63Bは、駆動軸心R1と平行な方向において第1底壁63を貫通している。第1通路63Bにおける吸入室61A側の開口が、後述する潤滑油供給通路63Hの入口63Cとなる。入口63Cは、スクロール室としての吸入室61Aの最外周部に位置しており、より具体的には吸入室61Aの最下部に位置している。
【0056】
第1底壁63の中央付近には、第2通路63Dが形成されている。第2通路63Dは、駆動軸心R1の近くに位置し、駆動軸心R1と平行な方向において第1底壁63を貫通している。第2通路63Dは、第1底壁63における第2軸支部64の部分を貫通している。第2通路63Dにおける吸入室61A側の開口が、後述する潤滑油供給通路63Hの出口63E1となる。第2通路63Dは、偏心軸91の上方に位置している。出口63E1は、偏心軸91の上方において、第3軸受73よりも駆動軸心R1側に位置している。
【0057】
第1底壁63の後面632には、溝63Fが凹設されている。溝63Fの一端である下端は第1通路63Bに接続し、溝63Fの他端である上端は第2通路63Dに接続している。第1底壁63の後面632は、本発明における「区画壁における貯留室側の壁面」に相当する。
【0058】
第1底壁63の後面632には、図示しないボルトにより金属板よりなる蓋体77が固定されている。蓋体77は、溝63Fが延びる方向に延在して、溝63Fの開口縁を塞いでいる。これにより、溝63Fの内面と蓋体77とにより第3通路63Gが区画されている。第3通路63Gは、第1通路63Bと第2通路63Dとを連通している。
【0059】
蓋体77には、貯留室70A内に溜まった液冷媒が接触するとともに、貯留室70A内のガス冷媒、すなわち圧縮機内に吸入された直後で吸入室61Aの最外周部に溜まる潤滑油よりも低温のガス冷媒が接触する。このため、第3通路63Gは、第3通路63G内を流通する潤滑油を貯留室70A内の液冷媒及びガス冷媒により冷却する潤滑油冷却部78となる。
【0060】
こうして、第1通路63B、第3通路63G及び第2通路63Dにより潤滑油供給通路63Hが構成されている。
【0061】
なお、後カバー70の後方には、コネクタ部が設けられたインバータケースが結合されている。インバータケース内には、回路基板及びスイッチング素子等を有するインバータ回路が収容されている。インバータ回路は、コネクタを通じて車両のバッテリと電気的に接続されるとともに、第3底壁76及び第1底壁63等に設けられた気密通路を通じて後述するステータ17と電気的に接続されている。これにより、インバータ回路は、バッテリから供給された直流電流を交流電流に変換しつつステータ17に給電を行う。なお、コネクタ部、インバータケース、インバータ回路及びバッテリの図示は省略する。
【0062】
電動モータ10は吸入室61A内に収容されている。これにより、吸入室61Aは、電動モータ10を収容するモータ室を兼ねている。電動モータ10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。
【0063】
ステータ17は、駆動軸心R1を中心とする円筒状であり、巻き線18を有している。ステータ17は、ハウジング本体61の第1外周壁62の内周面62Bに嵌入することにより、ハウジング本体61、ひいてはハウジング60に固定されている。
【0064】
ロータ11は、駆動軸心R1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する積層鋼板とで構成されている。
【0065】
スクロール圧縮部80は、吸入室61A内に収容されている。これにより、吸入室61Aは、スクロール圧縮部80を収容するスクロール室を兼ねている。すなわち、吸入室61Aは、本発明における「スクロール室」の一例である。スクロール圧縮部80は、駆動スクロール30及び従動スクロール40によって構成されている。
【0066】
図1に示すように、駆動スクロール30は、駆動端板31、駆動周壁32、駆動渦巻体33、軸受カバー体34及びカバー体35を有している。
【0067】
駆動端板31は、駆動軸心R1と直交して略円板状に延びている。駆動端板31は、前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。
【0068】
駆動端板31の前面311には、吐出弁室36が形成されている。吐出弁室36は、前面311が後述する圧縮室55に向かって部分的に凹む凹部により形成されている。吐出弁室36は、後述する吐出弁機構56を収容可能なように吐出弁機構56の外形状にほぼ対応した内面形状を有している。また、駆動端板31の中央付近には、駆動端板31を前後方向に貫通する吐出口37が形成されている。吐出口37の一端が後述する圧縮室55に開口するとともに、吐出口37の他端が吐出弁室36の底面に開口しており、吐出口37は圧縮室55と吐出弁室36とを連通している。吐出口37は、駆動軸心R1の近傍に配置されている。
【0069】
吐出弁室36内には吐出弁機構56が配設されている。吐出弁機構56は、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59を有している。吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって吐出弁室36の底面に固定されている。吐出リード弁57は、吐出口37を開閉可能となっている。また、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。吐出リード弁57において、吐出口37を開閉する先端弁部は固定ボルト59により固定される基端固定部よりも駆動軸心R1の近くに配置されている。
【0070】
駆動渦巻体33は、駆動端板31と一体に形成されており、駆動周壁32の内側に位置している。駆動渦巻体33は、駆動端板31の後面312から後方に向かって駆動軸心R1と平行に延びている。駆動渦巻体33は駆動軸心R1周りで渦巻状をなしている。より具体的には、前方から見て、駆動渦巻体33は、渦巻中心から駆動軸心R1周りで右巻きに形成されている。
【0071】
駆動周壁32は、駆動端板31の後面312の外周縁に配置されたロータ11と、ロータ11の後方に配置されたカバー体35の後述する筒状部51とにより構成されている。駆動周壁32は、駆動端板31の外周縁から後方、すなわち従動スクロール40に向かって駆動軸心R1と平行に延びている。駆動周壁32は、駆動軸心R1を中心とする略円筒状をなしている。
【0072】
カバー体35は、筒状部51及び底壁部52を有する有底筒状部材である。筒状部51は、駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。底壁部52は、カバー体35の後端に位置している。底壁部52は、駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。
【0073】
底壁部52の外周縁は、筒状部51の後端に接続している。底壁部52の中央には、後方に向かって突出する第2ボス53が凸設されている。第2ボス53には、第2軸受72が内嵌している。第2ボス53は、駆動軸心R1を中心として駆動軸心R1方向に円筒状に延びている。
【0074】
底壁部52の外周縁の近傍には、吸入口54が形成されている。吸入口54は、カバー体35の周方向に延びる略楕円形状に形成されている。吸入口54は、底壁部52を駆動軸心R1方向、すなわち前後方向に貫通している。なお、吸入口54の形状や個数は適宜設計可能である。
【0075】
軸受カバー体34は、カバー部38と、カバー部38に一体に形成された第1ボス39とを有している。
【0076】
カバー部38は、駆動軸心R1と直交して略円板状に延びている。カバー部38は、前面381と、前面381の反対側に位置する後面382とを有している。カバー部38の中央には貫通孔38Aが形成されている。
【0077】
第1ボス39は、カバー部38の内周縁、すなわちカバー部38の前面381の中央から前方に向かって突出している。第1ボス39は、駆動軸心R1を中心として駆動軸心R1方向に円筒状に延びている。第1ボス39の円柱状の内部空間は第1吐出部39Aを構成している。第1ボス39の円柱状の内部空間である第1吐出部39Aの内径及び第1ボス39の外径は、吐出弁機構56の最長部の長さよりも短くされている。なお、この圧縮機では、吐出弁室36、第1吐出部39A及び第2吐出部65Aにより吐出室が構成されている。
【0078】
カバー部38の後面382と駆動端板31の前面311との間には、図示しない円板状のガスケットが配置されている。ガスケットの中央には第1ボス39の内径と同じ大きさの口径を有する連通口が貫設されている。ガスケットは、駆動端板31の前面311と、カバー部38の後面382との間で挟持されて、両者間を封止している。
【0079】
軸受カバー体34のカバー部38、図示しないガスケット、駆動スクロール30の駆動端板31、ロータ11及びカバー体35の筒状部51は、駆動軸心R1と平行に延びる複数本のボルト50によって締結されている。ボルト50によるこれらの部材の結合は、カバー体35に対して従動機構20及び従動スクロール40をセットするとともに、駆動端板31に対して吐出弁機構56をセットした後に行われる。
【0080】
従動スクロール40は、従動端板41と従動渦巻体43とを有している。
【0081】
従動端板41は、従動軸心R2と直交して略円板状に延びている。従動軸心R2は、駆動軸心R1に対して偏心しつつ駆動軸心R1と平行に延びている。つまり、従動軸心R2も前後方向に平行である。従動端板41は、前面411と、前面411の反対側に位置する後面412とを有している。
【0082】
従動端板41の後面412には、従動端板41の中央から圧縮室55に向かって部分的に凹む有底円柱状の凹部74が形成されている。凹部74は、従動軸心R2を中心として従動軸心R2方向に円柱状に延びている。凹部74は、第3軸支部90の外形状に対応する内面形状を有している。
【0083】
従動渦巻体43は、従動端板41と一体に形成されており、従動端板41の前面411から前方、すなわち、駆動スクロール30の駆動端板31に向かって従動軸心R2と平行に延びている。従動渦巻体43は従動軸心R2周りで渦巻状をなしている。より具体的には、前方から見て、従動渦巻体43は、渦巻中心から従動軸心R2周りで右巻きに形成されている。
【0084】
従動機構20は、4つの自転阻止ピン21と4つのリング22とで構成されている。なお、自転阻止ピン21及びリング22は、それぞれ3つ以上であればその個数は適宜設計可能である。また、
図1では、各自転阻止ピン21及び各リング22について、それぞれ2つを図示している。
【0085】
各自転阻止ピン21は、従動端板41の後面412にそれぞれ挿通されつつ固定されている。これにより、各自転阻止ピン21は、従動端板41よりも後方に突出した状態で従動端板41に固定されている。
【0086】
各リング22は、各自転阻止ピン21に対向するように駆動スクロール30のカバー体35の底壁部52の前面521に設けられている。各リング22はそれぞれ、底壁部52の前面521に凹設された円形有底穴に嵌着されている。
【0087】
この圧縮機では、駆動スクロール30及び従動スクロール40により構成されるスクロール圧縮部80が吸入室61A内に配置されている。
【0088】
駆動スクロール30において、駆動周壁32にロータ11が一体化されている。また、駆動スクロール30では、軸受ハウジング67の第1軸支部66と軸受カバー体34の第1ボス39との間に第1軸受71が介在するとともに、第1底壁63の第2軸支部64とカバー体35の第2ボス53との間に第2軸受72が介在している。これにより、駆動スクロール30は、駆動軸心R1周りで回転可能にハウジング60に支持されている。ここで、この圧縮機では、駆動スクロール30は、所謂両持ちの状態でハウジング60に支持されている。
【0089】
一方、従動スクロール40は、駆動スクロール30内において、従動渦巻体43を駆動端板31側に向けた状態で、駆動端板31の後方に配置されている。これにより、駆動端板31の後面312と、従動端板41の前面411とが駆動軸心R1方向及び従動軸心R2方向で対向している。そして、駆動スクロール30と従動スクロール40とは、駆動周壁32の内側で駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させるとともに、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させる。こうして、駆動端板31と従動端板41とが前後方向に対向した状態で、駆動スクロール30内に従動スクロール40が組み付けられている。また、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とは、双方の間に圧縮室55を形成している。
【0090】
従動スクロール40では、第1底壁63の第2軸支部64に対して偏心配置された第3軸支部90と従動端板41の凹部74との間に第3軸受73が介在している。これにより、従動スクロール40は、従動軸心R2周りで回転可能にハウジング60に支持されている。ここで、この圧縮機では、従動スクロール40は、所謂片持ちの状態でハウジング60に支持されている。
【0091】
以上のように構成されたこの圧縮機では、図示しないインバータ回路がステータ17に給電を行いつつ電動モータ10の作動制御を行うことにより、電動モータ10が作動する。これによりロータ11が回転することで、吸入室61A内において、駆動スクロール30が駆動軸心R1周りで回転駆動する。つまり、ロータ11を駆動周壁32に一体的に含む駆動スクロール30が回転駆動する。この際、従動機構20において、各自転阻止ピン21は各リング22の内周面に摺接しつつ各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、従動スクロール40に駆動スクロール30のトルクを伝達する。
【0092】
その結果、従動スクロール40は、従動軸心R2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、従動スクロール40が自転することを規制する。これにより、駆動スクロール30及び従動スクロール40は、その回転駆動及びその回転従動によって従動スクロール40が駆動スクロール30に対して駆動軸心R1周りで相対的に公転することで、圧縮室55の容積を変化させる。
【0093】
このため、吸入室61A内の冷媒は、吸入口54によって圧縮室55に吸入され、圧縮室55で圧縮される。そして、圧縮室55で吐出圧力まで圧縮された冷媒は、吐出口37から吐出弁室36に吐出され、第1吐出部39Aを通過して第2吐出部65Aに吐出され、さらに、吐出連絡口65Bから凝縮器に吐出される。こうして、車両用空調装置による空調が行われる。
【0094】
ここで、スクロール圧縮部80においては、摺動熱を発生し得る複数の摺動部が存在する。例えば、第1軸受71、第2軸受72、第3軸受73、従動端板41の後面412と第2軸支部64の先端面641との摺動部81、従動端板41の後面412とカバー体35の底壁部52の前面521との摺動部82、従動機構20、駆動渦巻体33と従動渦巻体43との摺動部、駆動渦巻体33の先端面と従動端面41の前面411との摺動部、従動渦巻体43の先端と駆動端板31の後面312との摺動部である。これらの摺動部に対しては、潤滑油を供給して潤滑するとともに冷却する必要がある。
【0095】
この圧縮機では、作動中にスクロール室である吸入室61Aに溜まる潤滑油を貯留室70Aの液冷媒で冷却してから摺動部に供給する。
【0096】
すなわち、回転するスクロール圧縮部80内には遠心力が作用するため、冷媒から潤滑油が遠心分離されるとともに、冷媒から分離された潤滑油がスクロール圧縮部80から吸入室61Aに流出する。そして、吸入室61A内においては、回転するスクロール圧縮部80の遠心力の影響によりその回転方向に流体流れが生じる。このため、遠心力の作用により潤滑油が吸入室61Aの最外周部に溜まり、貯油部83が形成される。
【0097】
吸入室61Aの最下部には潤滑油供給通路63Hの入口63Cが開口している。そして、この潤滑油供給通路63Hの出口63E1は、第2軸支部64の先端面641に開口している。すなわち、出口63E1は、スクロール圧縮部80内、かつ、圧縮室55外であって、駆動軸心R1の近くに開口している。
【0098】
吸入室61Aの最外周部である最下部は、吸入室61A内で最も圧力が高い。一方、スクロール圧縮部80内、かつ、圧縮室55外の圧力は、吸入室61A内、かつ、スクロール圧縮部80外の圧力よりも低い。また、スクロール圧縮部80内には、吸入口54を介してスクロール室61A内の冷媒が吸入されるため、スクロール圧縮部80の吸入口54の圧力は、吸入室61Aの外周部の圧力よりも低圧となる。特に、第2軸支部64のある駆動軸心R1の近くの圧力は、スクロール圧縮部80内、かつ圧縮室55外の圧力の中でも低い方である。このため、この潤滑油供給通路63Hの出口63E1における圧力は、潤滑油供給通路63Hの入り口63Cにおける圧力に比べて低く、出口63E1と入口63Cとの間には圧力差がある。その結果、吸入室61Aの最下部に溜まった貯油部83の潤滑油は、潤滑油供給通路63Hの入口63Cに導入され、その潤滑油は潤滑油供給通路63Hを流通して出口63E1から第2軸支部64の先端面641に導出される。この潤滑油供給通路63Hからの潤滑油供給は、圧縮機の作動中連続的に行われる。
【0099】
そして、潤滑油供給通路63Hの出口63E1から出た潤滑油は、遠心力の作用により出口63E1よりも外周側に流れる。これにより、出口63E1の外周側に存在する、第3軸受73、従動端板41の後面412と第2軸支部64の先端面641との摺動部81、第2軸受72、従動端板41の後面412とカバー体35の底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20に潤滑油が供給される。第3軸受73、従動端板41の後面412と第2軸支部64の先端面641との摺動部81、第2軸受72、従動端板41の後面412とカバー体35の底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20は、これらの摺動部をまとめて潤滑油供給摺動部と呼ぶことがある。
【0100】
こうして、吸入室61Aの最下部に溜まった貯油部83の潤滑油を潤滑油供給摺動部に連続的に供給ことができるので、これらの潤滑油供給摺動部において潤滑油不足により摺動抵抗が増加することを効果的に抑えることができる。
【0101】
しかも、潤滑油供給通路63Hを流通途中の潤滑油は、潤滑油冷却部78で貯留室70A内の液冷媒及びガス冷媒によって冷却される。このため、粘性がより適切に確保された潤滑油によって潤滑油供給摺動部を潤滑することができる。また、より低温の潤滑油で潤滑油供給摺動部を冷却することができるので、潤滑油供給摺動部からの熱で潤滑油の粘性が低下することを抑えることができる。これらにより、潤滑油供給摺動部において摺動抵抗が増加することを抑えることができる。
【0102】
したがって、実施例1の圧縮機は、作動中にスクロール室に溜まる潤滑油を摺動部に供給するとともに、その潤滑油による摺動部の冷却効果を高めることにより、摺動部における摺動抵抗の増加を抑えて、ひいては効率低下を抑えることができる。
【0103】
また、この圧縮機では、潤滑油供給通路63Hが、圧縮機の作動中であっても回転することがない第1底壁63に形成された第1通路63B、第3通路63G及び第2通路63Dにより形成されている。すなわち、潤滑油供給通路63Hは、非回転体である第2軸支部64を貫通して第2軸支部64の先端面641に開口している。このため、潤滑油供給通路63Hによる潤滑油の供給が安定したものとなる。
【0104】
さらに、第2軸受72及び第3軸受73はスクロール圧縮部80内において駆動軸心R1に近い位置に在る。スクロール圧縮部80内においては、駆動軸心R1に近いほど潤滑油量が不足し易い。この点、この圧縮機では、潤滑油供給通路63Hが第2軸支部64を貫通して、潤滑油供給通路63Hの出口63E1が第3軸受73よりも駆動軸心R1に近い位置に開口しているので、潤滑油量が不足し易い第2軸受72及び第3軸受73に良好に潤滑油を供給することができる。
【0105】
(実施例2)
図3に示すように、実施例2の圧縮機では、実施例1の圧縮機において、潤滑油供給通路63Hの出口63E1の位置を出口63E2の位置に変更している。
【0106】
すなわち、底壁部52の第2ボス53に第4通路63Jが形成されている。第4通路63Jは、駆動軸心R1と平行な方向において第2ボス53を貫通している。第4通路63Jは、第2ボス53における最上部付近に位置している。第4通路63Jにおける前方側の開口が、潤滑油供給通路63Hの出口63E2となる。
【0107】
第4通路63Jの形成に伴い、第2通路63Dの位置が第5通路63Kの位置に変更されている。第5通路63Kと第4通路63Jとが同一の直線上に位置しており、第5通路63Kの開口と、第4通路63Jの後方側の開口とが接続している。また、第2通路63Dから第5通路63Kへの位置変更に伴い、溝63Fが上方に延び、溝63Fの内面と蓋体77とにより第6通路63Lが区画されている。第6通路63Lは、第1通路63Bと第5通路63Kとを連通している。これにより、第1通路63B、第6通路63L、第5通路63K及び第4通路63Jにより、潤滑油供給通路63Hが構成されている。
【0108】
実施例2の圧縮機では、第4通路63Jがカバー体35における第2ボス53に形成されており、潤滑油供給通路63Hの出口63E2はカバー体35の底壁部52の前面521に開口している。
【0109】
このため、カバー体35の底壁部52の前面521に開口する潤滑油供給通路63Hの出口63E2から出た潤滑油は、遠心力の作用を受けて、出口63E2よりも外周側に存在する、従動端板41の後面412と底壁部52の前面521との摺動部82と、従動機構20とに供給される。
【0110】
これにより、従動端板41の後面412と底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20に対しては、貯留室70Aの液冷媒及びガス冷媒により冷却された潤滑油を他の摺動部を介することなく直接的に供給することができ、従動端板41の後面412と底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20を効果的に冷却することができる。
【0111】
この圧縮機における他の構成及び作用は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0112】
(実施例3)
図4に示すように、実施例3の圧縮機では、実施例1の圧縮機において、潤滑油供給通路63Hの出口63E1の位置を出口63E3の位置に変更している。
【0113】
すなわち、第2軸支部64の先端面641に配置された第3軸支部90に第7通路63Mが形成されている。第7通路63Mは、駆動軸心R1と平行な方向において第3軸支部90を貫通している。第7通路63Mは、第3軸支部90における最上部付近に位置している。第7通路63Mにおける前方側の開口が、潤滑油供給通路63Hの出口63E3となる。
【0114】
第7通路63Mの形成に伴い、第2通路63Dの位置が第8通路63Nの位置に変更されている。第8通路63Nと第7通路63Mとが同一の直線上に位置しており、第8通路63Nの開口と、第7通路63Mの後方側の開口とが接続している。また、第2通路63Dから第8通路63Nへの位置変更に伴い、溝63Fの長さも変更され、溝63Fの内面と蓋体77とにより第9通路63Pが区画されている。第9通路63Pは、第1通路63Bと第8通路63Nとを連通している。これにより、第1通路63B、第9通路63P、第8通路63N及び第7通路63Mにより、潤滑油供給通路63Hが構成されている。
【0115】
実施例3の圧縮機では、第7通路63Mが第3軸支部90に形成されており、潤滑油供給通路63Hの出口63E3は第3軸支部90の先端面901に開口している。このため、実施例1の圧縮機と同様、出口63E3よりも外周側に存在する、第3軸受73、従動端板41の後面412と第2軸支部64の先端面641との摺動部81、第2軸受72、従動端板41の後面412とカバー体35の底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20に潤滑油が供給される。
【0116】
この圧縮機における他の構成及び作用は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0117】
(実施例4)
図5に示すように、実施例4の圧縮機では、実施例1の圧縮機において、潤滑油供給通路63Hの出口63E1の位置を出口63E4の位置に変更している。
【0118】
すなわち、第2軸支部64に設けられた偏心軸91に第10通路63Qが形成されている。第10通路63Qは、駆動軸心R1と平行な方向において偏心軸91を貫通している。第10通路63Qにおける前方側の開口が、潤滑油供給通路63Hの出口63E4となる。
【0119】
第10通路63Qの形成に伴い、第2通路63Dの位置が第11通路63Rの位置に変更されている。第11通路63Rと第10通路63Qとが同一の直線上に位置しており、第11通路63Rの開口と、第10通路63Qの後方側の開口とが接続している。また、第2通路63Dから第11通路63Rへの位置変更に伴い、溝63Fの長さも変更され、溝63Fの内面と蓋体77とにより第12通路63Sが区画されている。第12通路63Sは、第1通路63Bと第11通路63Rとを連通している。これにより、第1通路63B、第12通路63S、第11通路63R及び第10通路63Qにより、潤滑油供給通路63Hが構成されている。
【0120】
実施例4の圧縮機では、第10通路63Qが偏心軸91に形成されており、潤滑油供給通路63Hの出口63E4は偏心軸91の先端面911に開口している。このため、実施例1の圧縮機と同様、出口63E4よりも外周側に存在する、第3軸受73、従動端板41の後面412と第2軸支部64の先端面641との摺動部81、第2軸受72、従動端板41の後面412とカバー体35の底壁部52の前面521との摺動部82及び従動機構20に潤滑油が供給される。
【0121】
この圧縮機における他の構成及び作用は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0122】
(実施例5)
図6に示すように、実施例5の圧縮機では、潤滑油供給通路63H及び潤滑油冷却部78の形成を変更している。
【0123】
実施例5の圧縮機における第1通路63B及び第2通路63Dは、実施例1の圧縮機におけるものと同じ位置に形成されている。そして、第1通路63B及び第2通路63Dにパイプ84が接続されている。パイプ84は、貯留室70A内に配置されて上下方向に延びている。パイプ84の一端側が屈曲された下方屈曲部841が第1通路63Bに接続され、パイプ84の他端側が屈曲された上方屈曲部842が第2通路63Dに接続されている。
【0124】
これにより、第1通路63B、パイプ84内の第13通路63T及び第2通路63Dにより、潤滑油供給通路63Hが構成されている。そして、貯留室70A内に配置されたパイプ84の部分が潤滑油冷却部78とされている。
【0125】
この実施例では、パイプ84内の第13通路63Tを通過中の潤滑油を、パイプ84の周壁を介して貯留室70A内の液冷媒及びガス冷媒により冷却することができる。
【0126】
この圧縮機における他の構成及び作用は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0127】
以上において、本発明を実施例1~5に即して説明したが、本発明は上記実施例1~5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0128】
例えば、実施例1~5の圧縮機では、潤滑油供給通路63Hの入口63Cをスクロール室の最下部に設けているが、これに限らず、スクロール室における最下部以外の他の最外周部に潤滑油供給通路63Hの入口を設けてもよい。また、潤滑油供給通路63Hの入口の位置は、スクロール室内に設けられる貯油部に連通する位置であれば最外周部でなくてもよい。
【0129】
また、実施例1~5の圧縮機では、潤滑油供給通路63Hの出口63E1~4をそれぞれ1個設けているが、これに限らず、潤滑油供給通路63Hは出口を複数個設けてもよい。
【0130】
実施例1~5の圧縮機では、区画壁としての第1底壁63における貯留室70A側の壁面に凹設した溝63と蓋体77とにより潤滑油冷却部78を形成したり、貯留室70A内に設けたパイプ84により潤滑油冷却部78を形成したりしているが、これに限らず、区画壁の内部に外周側から内周側に延びる通路を設けて潤滑油冷却部を形成したり、あるいはスクロール室側に潤滑油冷却部を形成したりしてもよい。
【0131】
実施例1~5の圧縮機では、ハウジング60に対して駆動スクロール30を両持ちの状態で支持するとともに従動スクロール40を片持ちの状態で支持している。しかし、これに限らず、ハウジング60に対して、駆動スクロール30及び従動スクロール40の双方をハウジング60に対して片持ちの状態で支持してもよい。
【0132】
実施例1~5の圧縮機では、駆動スクロール30のカバー体35に吸入口54を形成している。しかし、これに限らず、駆動スクロール30の駆動端板31に吸入口を形成してもよい。駆動スクロール30及び従動スクロール40の双方が片持ちの状態でハウジング60に支持されている圧縮機においては、駆動端板31又は従動端板41のいずれに吸入口を形成してもよい。
【0133】
実施例1~5の圧縮機では、駆動スクロール30において、吐出弁機構56を収容する吐出弁室36が凹設された駆動端板31の前面311に、吐出弁室36の一部及び吐出弁機構56の一部を覆うカバー部38を有する軸受カバー体34が結合されている。そして、軸受カバー体34の第1ボス39の内部空間である第1吐出部39Aを吐出弁室36と連通させている。しかし、これに限らず、軸受カバー体を省略して、駆動端板又は従動端板に一体に突設されたボス内に吐出弁機構を収容するとともに、そのボスに軸受を装着してもよい。
【0134】
実施例1~5の圧縮機では、従動機構20が自転阻止ピン21及びリング22によって構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20は、2本のピンが1つのフリーリングの内周面に摺接するピン・リング・ピン方式、2本のピンの外周面同士が摺接するピン・ピン方式、オルダム接手を用いる方式等によって構成されていても良い。
【0135】
実施例1~5の圧縮機では、駆動周壁32にロータ11を一体化することにより、駆動スクロール30とロータ11とを一体化させている。しかし、これに限らず、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸によって動力伝達可能に接続することにより、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸心R1方向に離隔して配置する構成としても良い。
【0136】
(付記1)
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離し、液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによりスクロール圧縮部が構成され、
前記スクロール室には、潤滑油が貯油される貯油部が設けられており、
前記貯油部に連通し、前記スクロール圧縮部又は前記軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を備え、
前記潤滑油供給通路の途中には、前記潤滑油供給通路内の潤滑油を前記貯留室内の液冷媒によって冷却する潤滑油冷却部が設けられていることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
【0137】
(付記2)
前記駆動スクロールは、駆動端板と、前記駆動端板と一体をなし、前記従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、前記駆動端板に対して前記従動スクロールを挟みつつ前記駆動端板と連結されるカバー体とを有し、
前記従動スクロールは、従動端板と、前記従動端板と一体をなし、前記駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し、
前記従動端板と前記カバー体との摺動部に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給される付記1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【0138】
(付記3)
前記軸受に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給され、
前記潤滑油供給通路は前記支持部を貫通している付記1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【0139】
(付記4)
前記従動軸部が挿通されたブッシュを備え、
前記従動スクロールと前記ブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ、
前記ブッシュ用軸受に前記潤滑油供給通路から潤滑油が供給され、
前記潤滑油供給通路は前記従動軸部又は前記ブッシュを貫通している付記2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【0140】
(付記5)
前記潤滑油供給通路は前記カバー体を貫通している付記2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【0141】
(付記6)
前記潤滑油冷却部は、前記区画壁における前記貯留室側の壁面に凹設された溝と、前記溝が延びる方向に延在し、前記溝の開口を塞ぐように前記壁面に固定された板状の蓋体とにより形成され、
前記溝の内面と前記蓋体とにより区画された通路が前記潤滑油供給通路の一部を構成している付記1乃至5のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【0142】
(付記7)
前記潤滑油冷却部は、前記貯留室内に配置されたパイプにより形成され、
前記パイプ内の通路が前記潤滑油供給通路の一部を構成している付記1乃至5のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0144】
10…電動モータ(駆動機構)
20…従動機構
30…駆動スクロール
31…駆動端板
33…駆動渦巻体
35…カバー体
40…従動スクロール
41…従動端板
43…従動渦巻体
55…圧縮室
60…ハウジング
61A…吸入室(スクロール室)
63…第1底壁(区画壁)
632…後面(壁面)
63F…溝
63H…潤滑油供給通路
64…第2軸支部(支持部)
70A…貯留室
72…第2軸受(軸受、摺動部)
73…第3軸受(ブッシュ用軸受、摺動部)
77…蓋体
78…潤滑油冷却部
80…スクロール圧縮部
81、82…摺動部
83…貯油部
84…パイプ
90…第3軸支部(ブッシュ)
91…偏心軸(従動軸部)
R1…駆動軸心
R2…従動軸心