(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068941
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ロボットアーム、ロボットアームシステム及びロボットアーム制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179633
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】596184605
【氏名又は名称】高瀬 國克
(71)【出願人】
【識別番号】504454060
【氏名又は名称】株式会社アプライド・ビジョン・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100169753
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100218051
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 政允
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 國克
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕信
(72)【発明者】
【氏名】吉見 隆
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU05
3C707EV04
3C707KS06
3C707KS17
3C707KS30
3C707KT01
3C707KT04
3C707LT11
3C707LV07
(57)【要約】
【課題】対象物の被把持位置を正確に決定し、対象物を把持することのできるロボットアーム、ロボットアームシステム及びロボットアーム制御方法を提供する。
【解決手段】ロボットアーム1は、対象物を把持する把持部110を直線移動させる把持部移動機構と、把持部移動機構の基部である第3リンク140を固定ベース500に対して移動させる基部移動機構と、把持部110が移動する直線移動方向であって、把持部110に向かう方向に視線方向を有し、基部に固定されたカメラ510と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、
前記把持部移動機構の基部を、固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、
前記把持部が移動する直線移動方向であって、前記把持部に向かう方向に視線方向を有し、前記基部に固定されたカメラと、を備える、
ロボットアーム。
【請求項2】
前記把持部移動機構は、
前記把持部を先端に有する第1リンクを、前記第1リンクの延在方向に垂直な第1軸周りに回転させる第1関節と、
前記第1関節から前記第1軸に垂直な方向に延在する第2リンクを、前記第1軸に平行な第2軸周りに回転させる第2関節と、を備え、
前記基部は、前記第2関節を支持する、
請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記第1リンクと前記第2リンクの長さは同じであり、
前記第1リンクの前記第1軸周りの回転は、前記第2リンクの前記第2軸周りの回転の2倍である、
請求項2に記載のロボットアーム。
【請求項4】
前記第2リンクに結合され前記第1リンクに平行の第1補助リンクと、
前記第1リンクに結合され前記第2リンクに平行の第2補助リンクと、
前記第1補助リンクと前記第2補助リンクとを互いに回転可能に結合する結合部を直線移動させる直線ガイドと、を更に備える、
請求項2に記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記基部移動機構は、前記基部を前記第2軸と同じ又は平行の第3軸周りに回転する第3関節と、前記第3関節を支持する第4リンクを、前記固定ベースから鉛直上方に延びた第4軸周りに回転させる第4関節と、を含む、
請求項2に記載のロボットアーム。
【請求項6】
前記カメラの撮影画像に基づいて、前記第3関節又は第4関節を回転させて、前記カメラの視野の中心と対象物とを一致させた後に、前記第1関節及び前記第2関節を回転させて、前記カメラの視線方向において前記把持部の把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させる制御を行う制御部を更に備える、
請求項5に記載のロボットアーム。
【請求項7】
前記把持部の指の根元に、前記把持基準点に向かう方向であって、前記第1リンクの延在方向に光線を照射する光線照射装置を更に備え、
前記把持部は、前記対象物上に現れた前記光線のパターンの位置に基づいて前記把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させた時に、前記指で前記対象物を把持する、
請求項6に記載のロボットアーム。
【請求項8】
前記把持部の把持基準点を通り前記第1リンクの延在方向に延びた第1基準線と前記第1軸との交点を肘中心とし、前記肘中心を通り前記第2リンクの延在方向に平行な第2基準線と前記第2軸との交点を肩中心としたとき、
前記把持基準点と前記肘中心との間の距離は、前記肘中心と前記肩中心との間の距離と同じであり、
前記第1関節と前記第2関節の回転により、前記把持基準点は、前記肩中心を通る第3基準線上を直線移動する、
請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項9】
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、前記把持部移動機構の基部を固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、前記把持部が移動する直線移動方向であって前記把持部に向かう方向に視線方向を有し前記基部に固定されたカメラと、を備えるロボットアームと、
前記カメラの撮影画像に基づいて前記基部移動機構を駆動させて、前記カメラの視野の中心と対象物とを一致させた後に、前記把持部移動機構を駆動させて、前記カメラの視線方向において前記把持部の把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させる制御を行う制御コンピュータと、を備える、
ロボットアームシステム。
【請求項10】
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、前記把持部移動機構の基部を固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、を備えるロボットアームの制御方法であって、
前記把持部が移動する直線移動方向であって前記把持部に向かう方向を、前記基部に固定されたカメラで撮影する撮影ステップと、
前記カメラの撮影画像に基づいて、前記基部移動機構により前記基部を固定ベースに対して移動させる基部移動ステップと、
前記把持部移動機構により前記把持部を直線移動させる把持部移動ステップと、を有する、
ロボットアームの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム、ロボットアームシステム及びロボットアーム制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を把持して搬送するロボットアーム又はロボットハンドが広く用いられている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1に記載の搬送ロボットは、ベース体のモータ軸に固定された第1アームが、モータ軸側の第1プーリと他端の第2プーリを備え、第2アームが、第2プーリと同軸の第3プーリと他端の第4プーリを備え、第4プーリの軸に保持部が固定されている。第1プーリと第2プーリの回転比を1:2とし、第3プーリと第4プーリの回転比を2:1とすることにより、保持部を同一姿勢で直線運動させることができると説明されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の移動ロボットシステムは、上方から照射マークを照射し、移動ロボットの先端に設置したカメラで照射マークを検出することにより、位置ずれ量を求めている。このように照射マーク及びカメラを用いることによりロボットアームの動作ポイントの位置補正に要する時間を短くすることができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-20258号公報
【特許文献2】特開2001-252883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような搬送ロボットにおいて、直線運動する時の直線の方向や、保持位置を決定するためには、カメラで対象物又は保持位置を撮影し、撮影画像に基づいて搬送ロボットを動作させる。このとき、特許文献2のように、ロボット又は対象物の上方から照射マークを照射させ、ロボットの先端に配置したカメラで撮影する場合、ロボットアームの形状又は向きによっては、照射マークをロボットアームが遮り、設定された位置に照射されない場合がある。
【0006】
また、対象物を把持して搬送するロボットアームの先端にカメラを配置する場合、対象物を把持する時にカメラも対象物に近づくため環境監視できなくなる。このため、対象物を把持した後の搬送又は解放を含む動作を、カメラ画像に基づいて制御するのが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、対象物の被把持位置を正確かつ容易に決定し、対象物を容易に把持することのできるロボットアーム、ロボットアームシステム及びロボットアーム制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るロボットアームは、
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、
前記把持部移動機構の基部を、固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、
前記把持部が移動する直線移動方向であって、前記把持部に向かう方向に視線方向を有し、前記基部に固定されたカメラと、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記把持部移動機構は、
前記把持部を先端に有する第1リンクを、前記第1リンクの延在方向に垂直な第1軸周りに回転させる第1関節と、
前記第1関節から前記第1軸に垂直な方向に延在する第2リンクを、前記第1軸に平行な第2軸周りに回転させる第2関節と、を備え、
前記基部は、前記第2関節を支持するものであってもよい。
【0010】
前記第1リンクと前記第2リンクの長さは同じであり、
前記第1リンクの前記第1軸周りの回転は、前記第2リンクの前記第2軸周りの回転の2倍であってもよい。
【0011】
前記第2リンクに結合され前記第1リンクに平行の第1補助リンクと、
前記第1リンクに結合され前記第2リンクに平行の第2補助リンクと、
前記第1補助リンクと前記第2補助リンクとを互いに回転可能に結合する結合部を直線移動させる直線ガイドと、を更に有してもよい。
【0012】
前記基部移動機構は、前記基部を前記第2軸と同じ又は平行の第3軸周りに回転する第3関節と、前記第3関節を支持する第4リンクを、前記固定ベースから鉛直上方に延びた第4軸周りに回転させる第4関節と、を含んでもよい。
【0013】
前記カメラの撮影画像に基づいて、前記第3関節又は第4関節を回転させて、前記カメラの視野の中心と対象物とを一致させた後に、前記第1関節及び前記第2関節を回転させて、前記カメラの視線方向において前記把持部の把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させる制御を行う制御部を更に備えてもよい。
【0014】
前記把持部の指の根元に、前記把持基準点に向かう方向であって、前記第1リンクの延在方向に光線を照射する光線照射装置を更に備え、
前記把持部は、前記対象物上に現れた前記光線のパターンの位置に基づいて前記把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させた時に、前記指で前記対象物を把持してもよい。
【0015】
前記把持部の把持基準点を通り前記第1リンクの延在方向に延びた第1基準線と前記第1軸との交点を肘中心とし、前記肘中心を通り前記第2リンクの延在方向に平行な第2基準線と前記第2軸との交点を肩中心としたとき、
前記把持基準点と前記肘中心との間の距離は、前記肘中心と前記肩中心との間の距離と同じであり、
前記第1関節と前記第2関節の回転により、前記把持基準点は、前記肩中心を通る第3基準線上を直線移動してもよい。
【0016】
また、本発明の第2の観点に係るロボットアームシステムは、
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、前記把持部移動機構の基部を固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、前記把持部が移動する直線移動方向であって前記把持部に向かう方向に視線方向を有し前記基部に固定されたカメラと、を備えるロボットアームと、
前記カメラの撮影画像に基づいて前記基部移動機構を移動させて、前記カメラの視野の中心と対象物とを一致させた後に、前記把持部移動機構を駆動させて、前記カメラの視線方向において前記把持部の把持基準点と前記対象物の被把持位置とを一致させる制御を行う制御コンピュータと、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第3の観点に係るロボットアーム制御方法は、
把持部を直線移動させる把持部移動機構と、前記把持部移動機構の基部を固定ベースに対して移動させる基部移動機構と、を備えるロボットアームの制御方法であって、
前記把持部が移動する直線移動方向であって前記把持部に向かう方向を、前記基部に固定されたカメラで撮影する撮影ステップと、
前記カメラの撮影画像に基づいて、前記基部移動機構により前記基部を固定ベースに対して移動させる基部移動ステップと、
前記把持部移動機構により前記把持部を直線移動させる把持部移動ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、把持部が移動する直線上に視線方向を有し、基部に固定されたカメラを用いるため、把持部移動機構の動作によらず、対象物の被把持位置を正確に決定し、対象物を把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1に係るロボットアームの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るロボットアームの基準線を通る断面から見た図である。
【
図5】ロボットアームシステムの構成を示す図である。
【
図6】ロボットアーム制御処理のフローチャートである。
【
図7】変形例に係るロボットアームの外観を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態2に係るロボットアームの基準線を通る断面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0021】
本実施の形態1に係るロボットアーム1は、対象物を把持し移動させるロボットであり、対象物を把持する把持部110を直線的に移動させる把持部移動機構と、把持部移動機構の基部を固定ベース500に対して移動させる基部移動機構と、を備える。
【0022】
図1は、本実施の形態1に係るロボットアーム1の外観を示す斜視図である。本実施の形態1において、ロボットアーム1が、回転関節から構成される多関節機構のロボットである場合について説明する。ロボットアーム1の把持部移動機構は、
図1に示すように、把持部110を先端に有する第1リンク120と、第1関節210により第1リンク120と回転可能に結合された第2リンク130と、第2リンク130を回転させる第2関節220を支持する第3リンク140と、を備える。ここで、第3リンク140は、把持部移動機構の基部として機能する。
【0023】
また、ロボットアーム1の基部移動機構は、第3関節230により第3リンク140と回転可能に結合された第4リンク150と、固定ベース500と、を備え、第4リンク150は、固定ベース500に設けられた第4関節240により回転される。ここで、
図1は、機能的構成を表した概略図であり、機構又は構造を簡略化して表している。以下、各構成部の機能及び動作について説明する。
【0024】
まず、第4関節240は、固定ベース500から鉛直方向に延びた回転軸(第4軸)を有しており、駆動装置440により回転駆動される。第4関節240の第4軸周りの回転角度をθ
4とする。第4関節240の回転により、第4関節240に結合された第4リンク150は、鉛直軸である第4軸周りに回転する。第4リンク150の形状は任意であるが、例えば、
図1に示すように、断面がL字の板状体である。駆動装置440は、例えば、位置制御型又は速度制御型のデジタルサーボである。
【0025】
第3関節230は、第4リンク150から水平方向に延びた回転軸(第3軸)を有しており、駆動装置430により回転駆動される。第3関節230の第3軸周りの回転角度をθ
3とする。第3関節230の回転により、第3関節230に結合された第3リンク140は、水平軸である第3軸周りに回転する。第3リンク140の形状は任意であるが、例えば、
図1に示すように、断面がU字の板状体である。駆動装置430は、例えば、位置制御型又は速度制御型のデジタルサーボである。
【0026】
第2関節220は、第3リンク140に支持され水平方向に延在する回転軸(第2軸)を有しており、駆動装置420により回転駆動される。第2関節220の第2軸周りの回転角度をθ2とする。第2関節220の回転により、第2関節220に結合され、第2軸に対して垂直方向に延びる第2リンク130は、水平軸である第2軸周りに回転する。駆動装置420は、例えば、位置制御型又は速度制御型のデジタルサーボである。
【0027】
ここで、第2関節220の回転軸は、第3リンク140に支持されて水平であれば任意の方向でよいが、視認性又は操作性の観点から、第3関節230と同軸又は平行が好ましい。例えば、第3リンク140が、
図1に示すように断面がU字の板状体である場合には、第2関節220の第2軸は、対向する2枚の板の少なくともいずれか一方に支持されている。第2リンク130は、例えば、片端が第2関節220に結合された柱状体である。
【0028】
第2リンク130の第2関節220と反対側の端部は第1関節210に結合されている。第1関節210は、第2関節220の回転軸(第2軸)に平行な回転軸(第1軸)を有しており、第2リンク130は、第1関節から第1軸に垂直な方向に延在していると言える。第1関節210は、駆動装置420から伝達された駆動力により回転駆動され、第1関節210の第1軸周りの回転角度をθ1とする。
【0029】
第1関節210に結合され第1軸に対して垂直方向に延びる第1リンク120は、水平軸である第1軸周りに回転する。第1リンク120は、例えば、片端が第1関節210に結合された柱状体と、柱状体の先端に備えられた把持部110と、を含む。把持部110は、柱状体と同方向に延在する。
【0030】
ここで、把持部110を含む第1リンク120の長さと第2リンク130の長さは同じであり、第1関節210と第2関節220は、θ1=2×θ2の関係を保った状態で回転する。これにより、第2関節220の回転によりθ2が変化したとき、第1リンク120の先端に位置する把持部110の把持基準点C1は、直線的に移動する。ここで把持基準点C1は、対象物の被把持位置に一致させることで対象物の把持を可能にする点である。
【0031】
より詳細には、第1リンク120の延在方向に沿った基準線(第1基準線)をL1、基準線L1と第1関節210の回転軸(第1軸)との交点を肘中心C2、肘中心C2を通り第2リンク130の延在方向に平行である基準線(第2基準線)をL2、基準線L2と第2関節220の回転軸(第2軸)との交点を肩中心C3とするとき、基準線L1上の把持基準点C1から肘中心C2までの距離と、肘中心C2から肩中心C3までの距離が同じになるように把持基準点C1を設定する。θ1=2×θ2の関係を保った状態で第1関節210及び第2関節220が回転したとき、把持基準点C1は肩中心C3を通る基準線(第3基準線)L3上を直線移動する。
【0032】
θ
1=2×θ
2の関係を保つための機構は任意である。例えば、径が2:1である2つのプーリ、2つのかさ歯車、又は、内歯歯車及び外歯歯車を用いる。
図2、3は、径が2:1の内歯歯車221と外歯歯車222とを備えるロボットアーム1の例を示した図である。
図2が基準線L1,L2,L3を通る断面からx方向に見た図であり、
図3が第2~第4リンク130,140,150の拡大図である。
【0033】
図2,3の例において、第3リンク140には、中心軸Bが第2関節220の回転軸と一致しておりピッチ円半径がRの内歯歯車221が固定されている。この内歯歯車221にかみ合いピッチ円半径がR/2の外歯歯車222が、その回転軸が基準線L2に直交するように第2リンク130に設置されている。外歯歯車222の回転が補助リンク131、補助リンク132を含む平行リンク機構で第1リンク120に伝達される。補助リンク131を外歯歯車222に固定した状態で、第3リンク140の内歯歯車221に対して第2リンク130を回転させたとき、θ
1=2×θ
2の関係を維持しつつ、第1リンク120が回転する。
【0034】
第3リンク140には、把持基準点C1を中心とする一定の領域を撮影するカメラ510が固定されている。カメラ510は、把持基準点C1と肩中心C3を通る基準線L3上に備えられ、視線方向が把持部110の把持基準点C1が移動する直線移動方向であって、把持基準点C1に向かう方向である。カメラ510は、第3リンク140とともに回転移動するが、把持基準点C1は基準線L3上を直線移動するため、カメラ510の視野の中心には把持基準点C1が存する。
【0035】
つまり、カメラ510は把持基準点C1を常に観察できるため、対象物の被把持位置を正確に特定することができる。また、カメラがロボットアームの先端に位置する場合と比較して、把持基準点C1から離れた位置より撮影するため、対象物を把持した後の移動又は解放を含む動作時も、カメラ510は環境を含めて対象物を観察することができる。
【0036】
さらに、ロボットアームの先端にカメラがある場合には、接近時に対象物までの距離が大きく変化し、遠距離から近距離の撮影を行う必要があるため、すべての距離において焦点が合った鮮明な画像を得ることが難しいという課題があった。これに対し、本実施の形態においては、カメラ510が第3リンク140に固定されていることにより把持部が対象物に近づいてもカメラと対象物の距離は変わらないため、鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0037】
把持部110は、
図4に示すように、第1リンク120の先端に設けられ、第1リンク120の延在方向である基準線L1に沿った2以上の指111を有する。把持部110は、把持装置112により2以上の指111を互いに近づけることで対象物を把持する。
図4は、把持部110を含む第1リンク120の例を示した拡大図である。なお、指111と把持装置112の形状及び機構は任意である。例えば、2以上の指111に代えて、先端に吸着パッド等を備えた1の指を第1リンク120の先端に設けて、対象物を吸着させてもよい。
【0038】
図4の例において、把持装置112は、指111が固定されたウォーム歯車114と、ウォーム歯車114と噛み合わされるウォームギア113と、ウォームギア113を回転させるギアド直流モータ115と、を含む。ギアド直流モータ115の駆動により、ウォームギア113が回転し、ウォームギア113に噛み合わされたウォーム歯車114が互いに反対の方向に回転し、ウォーム歯車114に固定された指111が開閉する。
【0039】
指111の根元に位置する把持装置112には、光線照射装置520が備えられ、把持基準点C1に向かって基準線L1の方向に光線を照射している。光線照射装置520は、例えばレーザポインタである。光線が対象物又は環境に当たったときのパターンの、カメラ510の撮影画像における位置(xy座標)に基づいて、対象物又は環境におけるパターンが存する3次元位置を取得することができる。パターンが撮影画像の中心に来たとき、把持基準点C1とパターンの位置が一致する。なお、パターンの形状は任意であるが、スポット又は十字型のパターンのように中心が認識しやすいパターンが好ましい。
【0040】
ロボットアーム1は、カメラ510の撮影画像におけるパターンの位置に基づいて各リンクを回転させることにより、対象物の被把持位置に把持基準点C1を合わせた後、把持部110の指111により対象物を把持する。
図5はロボットアーム1を動作させるためのロボットアームシステム10の概要図である。
【0041】
ロボットアームシステム10は、ロボットアーム1を制御する制御コンピュータ11と、ネットワーク12を介して制御コンピュータ11と通信接続されたユーザ端末13と、を備える。ネットワーク12は、任意の通信方式の有線又は無線のネットワークであり、インターネットでもよく、又は、専用ネットワークでもよい。なお、制御コンピュータ11とユーザ端末13は、近距離無線等により直接通信接続されていてもよい。
【0042】
制御コンピュータ11はプロセッサ1100と記憶部1110を備え、プロセッサ1100は、記憶部1110に記憶されている制御プログラムを実行することにより、画像転送部1101、操作信号生成部1102として機能する。
【0043】
制御コンピュータ11は、入出力インタフェース1120と、カメラインタフェース1130と、を更に備える。入出力インタフェース1120は、ロボットアーム1の駆動装置420,430,440に通信接続され、また、ドライバ1140を介して光線照射装置520及び把持装置112に通信接続されている。カメラインタフェース1130は、ロボットアーム1のカメラ510に通信接続されている。
【0044】
画像転送部1101は、ロボットアーム1のカメラ510からカメラインタフェース1130を介して取得した撮影画像を、ネットワーク12を介してユーザ端末13に転送する。
【0045】
操作信号生成部1102は、ユーザ端末13からの操作指示に基づいて操作信号を生成し、入出力インタフェース1120を介して、駆動装置操作信号、把持装置操作信号及び光線照射操作信号をロボットアーム1に対して送信する。
【0046】
ユーザ端末13は、任意の通信端末であり、例えば、スマートフォンまたはタブレット型端末であり、ロボットアーム制御用のアプリケーションがインストールされている。ユーザ端末13のプロセッサは、該アプリケーションを実行することにより、モニタに制御コンピュータ11から受信した撮影画像1301と、ロボットアーム1制御用の操作キー1302と、を表示させ、ユーザの操作キー1302への入力に基づく操作指示データを制御コンピュータ11に送信する。
【0047】
以下、ロボットアームシステム10におけるロボットアーム1の動作について、
図6に示すフローチャートに沿って、詳細に説明する。
図6は、制御コンピュータ11が実行するロボットアーム制御処理を示すフローチャートである。
【0048】
まず、画像転送部1101が、カメラ510の撮影画像1301の転送を開始する(ステップS101:撮影ステップ)。ユーザはユーザ端末13のモニタで撮影画像1301を見て、対象物がカメラ510の視野の中心と一致しているか否かを判定する。より詳細には、対象物の被把持位置が撮影画像1301の中心から一定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、撮影画像1301の画面には中心位置を明示するマーカーを表示させてもよい。
【0049】
被把持位置が撮影画像1301の略中心にない場合には(ステップS102:No)、ユーザは、ユーザ端末13の操作キー1302を操作して、第4関節240の回転角θ4又は第3関節230の回転角θ3を変更させる操作指示を行う。操作信号生成部1102は、操作指示に基づいて、第4関節240又は第3関節230を回転させて第3リンク140を移動させる操作信号(駆動装置操作信号)を生成し、駆動装置430,440に対して出力する(ステップS103:基部移動ステップ)。そして、被把持位置が撮影画像1301の略中心に来るまで、第3リンク140を移動させる処理を繰り返す。
【0050】
被把持位置が撮影画像1301の略中心に来たときに(ステップS102:Yes)、ユーザは、ユーザ端末13の操作キー1302を操作して、光線照射指示を行う。操作信号生成部1102は、操作指示に基づいて、光線照射装置520に対して光線照射操作信号を出力し、光線照射を開始させる(ステップS104)。
【0051】
次に、ユーザはユーザ端末13のモニタで撮影画像1301を見て、光線照射によるパターンが撮影画像1301の中心にあるか否かを判定する(ステップS105)。パターンが撮影画像1301の中心にない場合には(ステップS105:No)、ユーザは、ユーザ端末13の操作キー1302を操作して、第2関節220の回転角θ2を変更させる操作指示を行う。操作信号生成部1102は、操作指示に基づいて、第2関節220を回転させ肘中心C2及び把持基準点C1を移動させる操作信号(駆動装置操作信号)を生成し、駆動装置420に対して出力する(ステップS106:把持部移動ステップ)。これにより把持基準点C1は、基準線L3上を直線移動する。そして、パターンが撮影画像1301の中心に来るまで、把持基準点C1を移動させる処理を繰り返す。
【0052】
パターンが撮影画像1301の中心に来たときに(ステップS105:Yes)、把持基準点C1は、光線の光軸と対象物表面との交点(把持前点)に位置する。その後、さらにθ2,θ3,θ4を変化させて位置を調整し、カメラ510の視線方向において、把持基準点C1と被把持位置とを一致させる。
【0053】
把持基準点C1が被把持位置に一致したとき、ユーザは、ユーザ端末13の操作キー1302を操作して、把持操作指示を行う。操作信号生成部1102は、操作指示に基づいて、指111を開閉させて対象物を把持させる把持装置操作信号を生成し、把持装置112に対して出力する(ステップS107)。
【0054】
把持部110が対象物を把持した後は、更に、ユーザの操作指示に基づき角度θ2,θ3,θ4を変化させて把持した対象物を目標地点に移動させ、把持部110の指111を開かせることで、対象物を解放する。
【0055】
このようにして、ロボットアーム1は、制御コンピュータ11の制御により、把持基準点C1を被把持位置に移動させて、対象物を把持し、目標地点に移動させて解放する。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態に係るロボットアーム1は、対象物を把持する把持部110を先端に有する第1リンク120を回転させる第1関節210と、第1関節210に接続された第2リンク130を、第1関節210の回転角θ1の半分の回転角θ2で回転させる第2関節220と、を含む把持部移動機構を備える。第2関節220を回転可能に支持する第3リンク140は、第3関節230又は第4関節240を含む基部移動機構により、固定ベース500に対して回転移動する。さらに、前記第3リンク140に対して固定されたカメラ510は、把持基準点C1が直線移動する基準線L3の方向を把持基準点C1に向かって撮影し、カメラ510の撮影画像に基づいて、各関節及び把持部110が制御されるとした。これにより、対象物の被把持位置を正確に決定し、確実に対象物を把持することが可能となる。
【0057】
なお、本実施の形態1において、駆動装置420を駆動することにより第1関節210の回転角θ1の半分の回転角θ2で第2関節220を回転させ、第2関節220を支持する第3リンク140を駆動装置430により駆動させるとしたが、これらの駆動制御は、他の形態で行ってもよい。例えば、第2関節220と第3関節230とを同軸として、2軸一体型のモータを用いて、第2関節220と第3関節230を回転させてもよい。
【0058】
図7は、第2関節220と第3関節230とが同軸であり、2軸一体型のモータである駆動装置450を用いる場合の変形例に係るロボットアーム2の斜視図である。
図7の例において、鉛直線と基準線L2(第2リンク130)との角度をθ
2’とし、鉛直線と基準線L3(肩中心C3と把持基準点C1を通る基準線)との角度をθ
3’としたときに、(θ
3’-θ
2’)=θ
1/2を満たすように、2軸一体型のモータを用いてθ
2’及びθ
3’を制御する。これにより、把持基準点C1を直線移動させ、カメラ510で把持基準点C1を撮影することができる。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態2について
図8を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。本実施の形態2に係るロボットアームシステム10の全体構成、制御方法及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0060】
本実施の形態2に係るロボットアーム2も、実施の形態1と同様に、対象物を把持し移動させるロボットであり、対象物を把持する把持部110を直線的に移動させる把持部移動機構と、把持部移動機構の基部を固定ベース500に対して移動させる基部移動機構と、を備える。本実施の形態2に係るロボットアーム2は、把持部移動機構の構成が実施の形態1と異なるため、把持部移動機構について詳細に説明する。
【0061】
本実施の形態2においても、ロボットアーム1の把持部移動機構は、
図8に示すように、把持部110を先端に有する第1リンク120と、第1関節210により第1リンク120と回転可能に結合された第2リンク130と、第2リンク130を回転させる第2関節220を支持する第3リンク140と、を備える。ここで、第3リンク140は、把持部移動機構の基部として機能する。基部移動機構の構成は実施の形態1と同様である。
【0062】
把持部移動機構は、第2リンク130に一端が結合され第1リンク120に平行の補助リンク141(第1補助リンク)と、第1リンク120に一端が結合され第2リンク130に平行の補助リンク142(第2補助リンク)と、を更に備える。
【0063】
補助リンク141の第2リンク130との結合端と反対側の他端と、補助リンク142の第1リンク120との結合端と反対側の他端と、は互いに回転可能に結合されている。ここで、補助リンク141と補助リンク142の長さは、結合部143が基準線L3上に位置するように決定される。その結合部143は、第3リンク140に設けられた直線ガイド144に沿って直線移動する。
【0064】
駆動装置を第2リンク130上に設置し、第2リンク130に対して、補助リンク141を回転させることにより、結合部143を直線ガイド144に沿って直線移動させることができる。結合部143が直線移動することにより、把持基準点C1は直線ガイド144の直線方向と平行の基準線L4上を直線移動する。
【0065】
第3リンク140には、把持基準点C1を中心とする一定の領域を撮影するカメラ510が固定されている。カメラ510は、把持基準点C1が直線移動する基準線L4上に備えられ、視線方向が把持部110の把持基準点C1が移動する直線移動方向であって、把持基準点C1に向かう方向である。カメラ510は、第3リンク140とともに回転移動するが、把持基準点C1は基準線L4上を直線移動するため、カメラ510の視野の中心には把持基準点C1が存する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係るロボットアーム2は、第2リンク130に結合され第1リンク120に平行の補助リンク141と、第1リンク120に結合され第2リンク130に平行の補助リンク142と、補助リンク141と補助リンク142との結合部143を直線移動させるために第3リンク140に設けられた直線ガイド144と、を備え、カメラ510を第3リンクに固定することとした。これにより、カメラ510で把持基準点C1を常に観察できるため、対象物の被把持位置を正確に特定することができる。また、カメラ510がロボットアームの先端に位置する場合と比較して、把持基準点C1から離れた位置より撮影するため、対象物を把持した後の移動又は解放を含む動作時も、カメラ510は環境を含めて対象物を観察することが可能となる。
【0067】
上述した実施の形態1,2において、把持部移動機構が、第1関節と第2関節とを有する構成としたが、把持部が直線上を移動することのできる構成であれば任意の構成でよい。例えば、3以上の多関節からなり、各回転角度を制御する構成であってもよい。あるいは、直動関節と、その伸縮方向に平行の直線上を移動する把持部とを備えた構成であってもよい。
【0068】
また、実施の形態1,2において、把持部移動機構の基部である第3リンク140を固定ベース500に対して移動させる基部移動機構が、鉛直方向の回転軸を有する第4関節240と水平方向の回転軸を有する第3関節230とからなる構成について説明したが、第3関節230及び第4関節240が、第4リンク150を介した2軸の回転を実現するものであれば他の任意の機構でもよい。
【0069】
また、光線照射装置520は、一直線状の光線を照射するとしたが、照射方向に対して垂直方向に伸びた平面状の光線を照射してもよい。これにより、対象物の周囲の環境にも光線を照射することができ、モニタに表示された画像における対象物の位置把握が容易になる。
【0070】
また、ロボットアーム1と、制御コンピュータ11と、ユーザ端末13と、を備えるロボットアームシステム10でロボットアーム1を動作させるとしたが、ロボットアーム1が制御コンピュータ11を含んでもよい。つまり、ロボットアーム1が、カメラ510の撮影画像に基づいて、第3関節230又は第4関節240を回転させて、カメラ510の視野の中心と対象物とを一致させた後に、第1関節210及び第2関節220を回転させて、カメラ510の視線方向において把持基準点C1と対象物の被把持位置とを一致させる制御を行う制御部を更に備えてもよい。
【0071】
また、制御コンピュータ11又はロボットアーム1の制御部が、カメラ510の撮影画像から対象物を自動検出し、カメラ510の視野の中心と対象物とを一致させるようにθ3又はθ4を求めて、第3関節230又は第4関節240を回転させてもよい。さらに、制御コンピュータ11又はロボットアーム1の制御部が、カメラ510の撮影画像のパターン位置から対象物の被把持位置を自動検出し、カメラ510の視線方向において把持基準点C1と対象物被把持位置とを一致させるようにθ2を求めて、第1関節210及び第2関節220を回転させて、対象物を把持させてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更又は応用が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,2 ロボットアーム
10 ロボットアームシステム
11 制御コンピュータ
12 ネットワーク
13 ユーザ端末
110 把持部
111 指
112 把持装置
113 ウォームギア
114 ウォーム歯車
115 ギアド直流モータ
120 第1リンク
130 第2リンク
131,132 補助リンク
140 第3リンク
141,142 補助リンク
143 結合部
144 直線ガイド
150 第4リンク
210 第1関節
220 第2関節
221 内歯歯車
222 外歯歯車
230 第3関節
240 第4関節
420,430,440,450 駆動装置
500 固定ベース
510 カメラ
520 光線照射装置
1100 プロセッサ
1101 画像転送部
1102 操作信号生成部
1110 記憶部
1120 入出力インタフェース
1130 カメラインタフェース
1140 ドライバ
1301 撮影画像
1302 操作キー
L1,L2,L3,L4 基準線
C1 把持基準点
C2 肘中心
C3 肩中心