(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068942
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】接合部材塗布装置及び接合部材塗布方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01L21/52 G
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179636
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成実
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA14
5F047AB09
5F047BA21
5F047BA52
5F047BB11
5F047CA01
5F047FA21
(57)【要約】
【課題】接合部材を所定の塗布領域に適切に塗布する。
【解決手段】弾性シート63により吸引孔61a5の外周が連続して環状に取り囲まれている。吸引孔61a5から絶縁回路基板20を吸引しても、弾性シート63により吸引孔61a5と絶縁回路基板20とが密着する。このため、吸引孔61a5から、絶縁回路基板20とステージ領域61aとの隙間と絶縁回路基板20と内側面との隙間と転写口71とに通じる吸引経路の発生が防止される。したがって、吸引孔61a5から吸引されている絶縁回路基板20にマスク70の転写口71を介して接合部材を転写しても、接合部材の広がりが防止される。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象部材が配置されるステージ領域が設定されたおもて面を含み、前記おもて面の前記ステージ領域に、少なくとも1つの吸引孔が形成されている台座と、
前記吸引孔を通じて前記おもて面から前記おもて面の反対側に吸引する吸引部と、
前記ステージ領域に設けられ、前記吸引孔に通じ、前記吸引孔の外周を連続して環状に取り囲む貫通孔を含み、前記塗布対象部材が配置される弾性部材と、
を含む接合部材塗布装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、シート状を成している、
請求項1に記載の接合部材塗布装置。
【請求項3】
前記弾性部材の平面視の形状は、前記おもて面の前記ステージ領域の平面視の形状に対応している、
請求項2に記載の接合部材塗布装置。
【請求項4】
前記台座の前記おもて面は、前記ステージ領域の外側に支持領域が設定されて、前記おもて面に対して前記ステージ領域は窪んで前記支持領域よりも下位に位置する、
請求項3に記載の接合部材塗布装置。
【請求項5】
前記ステージ領域の前記支持領域に対する深さは、前記塗布対象部材の厚さ及び前記弾性部材の厚さを合わせた高さである、
請求項4に記載の接合部材塗布装置。
【請求項6】
前記塗布対象部材は平面視で矩形状を成しており、前記ステージ領域は平面視で前記塗布対象部材に対応する矩形状を成している、
請求項5に記載の接合部材塗布装置。
【請求項7】
前記塗布対象部材は、絶縁板と前記絶縁板の前記おもて面に形成された回路パターンと前記絶縁板の裏面に形成された金属板とを含む絶縁回路基板である、
請求項6に記載の接合部材塗布装置。
【請求項8】
前記台座の前記ステージ領域は、前記ステージ領域に配置された前記絶縁回路基板の前記金属板に対応する範囲内に前記吸引孔が形成されている、
請求項7に記載の接合部材塗布装置。
【請求項9】
前記ステージ領域に配置された前記塗布対象部材を前記ステージ領域に向かって押圧する押圧部材をさらに含む、
請求項5に記載の接合部材塗布装置。
【請求項10】
前記台座の前記おもて面に配置され、前記支持領域に支持されて、前記絶縁回路基板を覆い、前記回路パターンの接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクをさらに含む、
請求項7に記載の接合部材塗布装置。
【請求項11】
前記台座の前記ステージ領域の少なくとも一つの第1角部に、平面視で、前記第1角部の外側に窪んだ窪みが形成され、
前記おもて面の前記ステージ領域に配置された前記弾性部材の前記第1角部に対応する第2角部に前記窪みに嵌る固定部が形成されている、
請求項6に記載の接合部材塗布装置。
【請求項12】
前記弾性部材に形成されている前記貫通孔の個数は、前記ステージ領域に形成されている前記吸引孔の個数と等しく、または、前記吸引孔の個数よりも少ない、
請求項1に記載の接合部材塗布装置。
【請求項13】
接合部材と、塗布対象部材と、を用意する用意工程と、
ステージ領域が設定されたおもて面を含み、前記おもて面の前記ステージ領域に、少なくとも1つの吸引孔が形成されている台座の前記ステージ領域に、前記吸引孔に通じ、前記吸引孔の外周を連続して環状に取り囲む貫通孔を含む弾性部材をセットする第1セット工程と、
前記弾性部材上に前記塗布対象部材をセットする第2セット工程と、
前記吸引孔に対して、前記おもて面から前記おもて面の反対側に吸引する吸引工程と、
前記吸引孔を吸引しながら、前記塗布対象部材の所定の塗布領域に前記接合部材を塗布する塗布工程と、
を含む接合部材塗布方法。
【請求項14】
前記塗布工程の前であって、前記吸引工程の前または後に、前記塗布対象部材を前記台座に向かって押圧する押圧工程をさらに含む、
請求項13に記載の接合部材塗布方法。
【請求項15】
前記台座の前記おもて面は、前記ステージ領域の外側に支持領域が設定されて、前記おもて面に対して前記ステージ領域は窪んで前記支持領域よりも下位に位置する、
請求項14に記載の接合部材塗布方法。
【請求項16】
前記吸引工程及び前記押圧工程の後に、前記台座に向かう押圧を解放し、前記塗布対象部材の前記接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクを前記台座の前記おもて面に配置して、前記マスクが前記支持領域に支持されて、前記塗布対象部材を覆う第3セット工程をさらに含み、
前記塗布工程では、前記マスクの前記転写口を介して前記接合部材を前記塗布対象部材に転写により塗布する、
請求項15に記載の接合部材塗布方法。
【請求項17】
前記第2セット工程の後であって、前記吸引工程の前に、前記塗布対象部材の前記接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクを前記台座の前記おもて面に配置して、前記塗布対象部材を覆う第3セット工程をさらに含み、
前記塗布工程では、前記マスクの前記転写口を介して前記接合部材を前記塗布対象部材に転写により塗布する、
請求項13に記載の接合部材塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材塗布装置及び接合部材塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に含まれる絶縁回路基板は反りが生じる。接合部材を絶縁回路基板に塗布する際には、絶縁回路基板が配置される台座のステージ上に形成された吸引孔から絶縁回路基板が吸引されて、平坦に矯正された状態でマスクを用いたスクリーン印刷が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような矯正のために、例えば、矯正部材により矯正された基板がステージに保持された後であって、基板の上面の表面状態を検出する検出部の移動が開始する前に、ステージに保持された基板の上面の高さ位置よりも低い位置に矯正部材を退避させる退避部を備えている。これにより、矯正部材とステージの上面に沿って移動する検出部との干渉が防止される(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
別の例として、テーブル面に載置された基板を負圧によりテーブル面に対して吸引・固定する際に、基板が吸引・固定された状態でこの基板の反りを安定させ、小さくすることができる(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
また、基板載置台に吸引により固定される基板に印刷されたバーコードを読み取ってこの基板の大きさを識別し、この大きさに応じて、孔開領域を含むシート部分を選択する。これにより、シート部分の孔開き領域外の範囲内に位置する吸引孔からの減圧による吸引を禁止することができる(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-090137号公報
【特許文献2】特開2020-136480号公報
【特許文献3】特開2006-286815号公報
【特許文献4】特開2004-322254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、台座のステージ上に配置された絶縁回路基板を吸引により平坦に矯正しても、絶縁回路基板は完全な平坦にはならない。このため、絶縁回路基板の所定の塗布領域に接合部材を適切に塗布することができない場合がある。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、接合部材を所定の塗布領域に適切に塗布することができる接合部材塗布装置及び接合部材塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様においては、塗布対象部材が配置されるステージ領域が設定されたおもて面を含み、前記おもて面の前記ステージ領域に、少なくとも1つの吸引孔が形成されている台座と、前記吸引孔を通じて前記おもて面から前記おもて面の反対側に吸引する吸引部と、前記ステージ領域に設けられ、前記吸引孔に通じ、前記吸引孔の外周を連続して環状に取り囲む貫通孔を含み、前記塗布対象部材が配置される弾性部材と、を含む接合部材塗布装置を提供する。
【0010】
また、前記弾性部材は、シート状を成してよい。
【0011】
また、前記弾性部材の平面視の形状は、前記おもて面の前記ステージ領域の平面視の形状に対応してよい。
【0012】
また、前記台座の前記おもて面は、前記ステージ領域の外側に支持領域が設定されて、前記おもて面に対して前記ステージ領域は窪んで前記支持領域よりも下位に位置してよい。
【0013】
また、前記ステージ領域の前記支持領域に対する深さは、前記塗布対象部材の厚さ及び前記弾性部材の厚さを合わせた高さにしてよい。
【0014】
また、前記塗布対象部材は平面視で矩形状を成しており、前記ステージ領域は平面視で前記塗布対象部材に対応する矩形状を成してよい。
【0015】
また、前記塗布対象部材は、絶縁板と前記絶縁板の前記おもて面に形成された回路パターンと前記絶縁板の裏面に形成された金属板とを含む絶縁回路基板であってよい。
【0016】
また、前記台座の前記ステージ領域は、前記ステージ領域に配置された前記絶縁回路基板の前記金属板に対応する範囲内に前記吸引孔が形成されてよい。
【0017】
また、前記ステージ領域に配置された前記塗布対象部材を前記ステージ領域に向かって押圧する押圧部材をさらに含んでよい。
【0018】
また、前記台座の前記おもて面に配置され、前記支持領域に支持されて、前記絶縁回路基板を覆い、前記回路パターンの接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクをさらに含んでよい。
【0019】
また、前記台座の前記ステージ領域の少なくとも一つの第1角部に、平面視で、前記第1角部の外側に窪んだ窪みが形成され、前記おもて面の前記ステージ領域に配置された前記弾性部材の前記第1角部に対応する第2角部に前記窪みに嵌る固定部が形成されてよい。
【0020】
また、前記弾性部材に形成されている前記貫通孔の個数は、前記ステージ領域に形成されている前記吸引孔の個数と等しく、または、前記吸引孔の個数よりも少なくてよい。
【0021】
また、本発明の第2の態様においては、接合部材と、塗布対象部材と、を用意する用意工程と、ステージ領域が設定されたおもて面を含み、前記おもて面の前記ステージ領域に、少なくとも1つの吸引孔が形成されている台座の前記ステージ領域に、前記吸引孔に通じ、前記吸引孔の外周を連続して環状に取り囲む貫通孔を含む弾性部材をセットする第1セット工程と、前記弾性部材上に前記塗布対象部材をセットする第2セット工程と、前記吸引孔に対して、前記おもて面から前記おもて面の反対側に吸引する吸引工程と、前記吸引孔を吸引しながら、前記塗布対象部材の所定の塗布領域に前記接合部材を塗布する塗布工程と、を含む接合部材塗布方法を提供する。
【0022】
また、前記塗布工程の前であって、前記吸引工程の前または後に、前記塗布対象部材を前記台座に向かって押圧する押圧工程をさらに含んでよい。
【0023】
また、前記台座の前記おもて面は、前記ステージ領域の外側に支持領域が設定されて、前記おもて面に対して前記ステージ領域は窪んで前記支持領域よりも下位に位置してよい。
【0024】
また、前記吸引工程及び前記押圧工程の後に、前記台座に向かう押圧を解放し、前記塗布対象部材の前記接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクを前記台座の前記おもて面に配置して、前記マスクが前記支持領域に支持されて、前記塗布対象部材を覆う第3セット工程をさらに含み、前記塗布工程では、前記マスクの前記転写口を介して前記接合部材を前記塗布対象部材に転写により塗布してよい。
【0025】
また、前記第2セット工程の後であって、前記吸引工程の前に、前記塗布対象部材の前記接合部材の塗布領域に対応して開口された転写口を含むマスクを前記台座の前記おもて面に配置して、前記塗布対象部材を覆う第3セット工程をさらに含み、前記塗布工程では、前記マスクの前記転写口を介して前記接合部材を前記塗布対象部材に転写により塗布してよい。
【0026】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0027】
開示の技術によれば、接合部材を所定の塗布領域に適切に塗布することができ、接合部材を含む装置の信頼性の低下を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施の形態の半導体モジュールのおもて面の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体モジュールの側断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体ユニットのおもて面の平面図である。
【
図4】第1の実施の形態の絶縁回路基板のおもて面の平面図である。
【
図5】第1の実施の形態の半導体モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施の形態の接合部材塗布装置の斜視図である。
【
図8】第1の実施の形態の台座のおもて面の平面図である。
【
図10】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図である。
【
図11】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。
【
図12】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す平面図である。
【
図13】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す側断面図である。
【
図14】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の吸引開始工程及び押圧工程を示す側断面図である。
【
図15】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスクセット工程を示す平面図である。
【
図16】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスクセット工程を示す側断面図である。
【
図17】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す平面図(その1)である。
【
図18】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図(その1)である。
【
図19】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す平面図(その2)である。
【
図20】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図(その2)である。
【
図21】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去工程、吸引停止工程を示す平面図である。
【
図22】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去工程、吸引停止工程を示す側断面図である。
【
図23】参考例1の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図(その1)である。
【
図24】参考例1の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図(その2)である。
【
図25】参考例1の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去、吸引停止工程を示す側断面図である。
【
図26】参考例2の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図である。
【
図27】参考例2の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。
【
図28】参考例2の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す側断面図である。
【
図29】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程で用いられる別の弾性シートを示す平面図である。
【
図30】第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程で用いられる別の弾性シートを示す側断面図である。
【
図31】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程を示すフローチャートである。
【
図32】第2の実施の形態の台座のおもて面の平面図である。
【
図33】第2の実施の形態の台座の側断面図である。
【
図34】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図である。
【
図35】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。
【
図36】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程及び吸引開始工程を示す平面図である。
【
図37】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程及び吸引開始工程を示す側断面図である。
【
図38】第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体モジュール1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体モジュール1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体モジュール1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体モジュール1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「高位」とは、図の半導体モジュール1において、上側(+Z側)の位置を表す。同様に、「低位」とは、図の半導体モジュール1において、下側(-Z側)の位置を表す。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、70wt%以上含む場合を表す。
【0030】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の半導体モジュールについて、
図1~
図4を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体モジュールのおもて面の平面図であり、
図2は、第1の実施の形態の半導体モジュールの側断面図である。
図3は、第1の実施の形態の半導体ユニットのおもて面の平面図である。
図4は、第1の実施の形態の絶縁回路基板のおもて面の平面図である。なお、
図1の半導体モジュール1は封止部材9の記載を省略している。
図2は、
図1の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
図4は、
図3において半導体チップ30a~30dを除いた絶縁回路基板20の平面図である。
【0031】
半導体装置は、例えば、インバータ回路を構成する等価回路を含んでよい。このような半導体装置は、単一の半導体モジュール1を複数含んでいる。例えば、半導体装置は、半導体モジュール1をU相、V相、W相の順にX方向に3つ並んで配置される。
【0032】
このような半導体モジュール1は、半導体ユニット10と半導体ユニット10が配置されたベース基板8とベース基板8上に配置され、半導体ユニット10を収納するケース2とを含んでいる。さらに、半導体モジュール1は、ケース2内に充填されて半導体ユニット10を封止する封止部材9を備える。
【0033】
ケース2は、外枠3と出力端子5と正極端子6と負極端子7とを含んでいる。外枠3は、平面視で略矩形状を成しており、一対の長側壁3a,3cと一対の短側壁3b,3dとを備えている。外枠3は、一対の長側壁3a,3cと一対の短側壁3b,3dとに四方が囲まれた収納部3eを備えている。収納部3eには、半導体ユニット10が収納されて、封止部材9により封止されている。
【0034】
出力端子5は、外枠3の短側壁3bに配置されている。出力端子5は、平面視でU字状を成している。すなわち、出力端子5は、二股に分かれてその先に内部接合部5a,5bを含んでいる。出力端子5の内部接合部5a,5bは、回路パターン23d,23cに直接接続されている。
【0035】
入力端子である正極端子6及び負極端子7は、出力端子5に対して収納部3eを挟んで短側壁3dに配置されている。正極端子6は、平面視でU字状を成している。すなわち、正極端子6は、二股に分かれてその先に内部接合部6a,6bを含んでいる。正極端子6の内部接合部6a,6bは、回路パターン23b,23aに直接接続されている。負極端子7は、平面視でU字状を成している。すなわち、負極端子7は、二股に分かれてその先に内部接合部7a,7bを含んでいる。負極端子7の内部接合部7a,7bは、回路パターン23f,23eに直接接続されている。
【0036】
内部接合部5a,6a,7a,5b,6b,7bは、回路パターン23a~23fに対して、接合部材25により、または、超音波接合により接合されてよい。接合部材25は、はんだ、または、焼結材が用いられる。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫、銀、銅、亜鉛、アンチモン、インジウム、ビスマスの少なくとも2つを含む合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。焼結材は、例えば、銀、銅または少なくともこれらを1つ含む合金を含む金属材料が用いられる。
【0037】
なお、内部接合部5a,6a,7a,5b,6b,7bがこのように接合されることで、出力端子5と正極端子6と負極端子7とは、収納部3eに収納されている半導体ユニット10の半導体チップ30a~30dと電気的に接続されている。具体的には、正極端子6(内部接合部6a,6b)は、回路パターン23b,23aを経由して、半導体チップ30c,30aの入力電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0038】
負極端子7(内部接合部7a,7b)は、回路パターン23f,23e及びリードフレーム40d,40bを経由して、半導体チップ30d,30bの出力電極32d,32bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
出力端子5(内部接合部5a,5b)は、回路パターン23d,23cを経由して、半導体チップ30d,30bの入力電極にそれぞれ電気的に接続されている。また、出力端子5(内部接合部5a,5b)は、回路パターン23d,23c及びリードフレーム40c,40aを経由して、半導体チップ30c,30aの出力電極32c,32aにそれぞれ電気的に接続されている。
【0040】
なお、出力端子5と正極端子6と負極端子7とは、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金が挙げられる。出力端子5と正極端子6と負極端子7との表面には、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この場合のめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0041】
封止部材9は、収納部3e内に配置された半導体ユニット10を封止する。封止部材9は、熱硬化性樹脂であってよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、ポリエステル樹脂である。好ましくは、エポキシ樹脂である。さらに、封止部材9は、フィラーが添加されていてもよい。フィラーは、絶縁性で高熱伝導を有するセラミックスである。このようなフィラーは、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素または窒化アルミニウムである。
【0042】
ベース基板8は、平板状であり平面視で長方形状を成している。また、ベース基板8は、平面視でケース2(外枠3)の収納部3eを裏面から覆っていてよい。このようなベース基板8は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような材質として、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの1種を含む合金が挙げられる。このような合金の例として、金属複合材が用いられる。金属複合材は、例えば、アルミニウム-炭化珪素(Al-SiC)またはマグネシウム-炭化珪素(Mg-SiC)が挙げられる。ベース基板8の表面に、耐食性を向上させるために、例えば、めっき材によりめっき処理を行ってもよい。この際のめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル合金である。
【0043】
さらに、ベース基板8の裏面には冷却ユニット(図示を省略)を取り付けることができる。この場合の冷却ユニットは、例えば、熱伝導性に優れた金属により構成される。金属は、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの1種を含む合金等である。また、冷却ユニットは、1以上のフィンを備えるヒートシンクまたは水冷ジャケット等である。また、ベース基板8は、このような冷却ユニットと一体化されてもよい。
【0044】
半導体ユニット10は、絶縁回路基板20と半導体チップ30a~30dとリードフレーム40a~40dとを含んでいる。絶縁回路基板20は、平面視で矩形状である。絶縁回路基板20は、絶縁板21と、絶縁板21のおもて面に形成された配線層と、絶縁板21の裏面に形成された金属板22と、を有している。配線層は、例えば、複数の回路パターン23a~23iを含んでいる。複数の回路パターン23a~23i及び金属板22の外形は、平面視で、絶縁板21の外形より小さく、絶縁板21の内側に形成されている。なお、複数の回路パターン23a~23iの形状、個数、大きさは一例である。
【0045】
絶縁板21は、平面視で矩形状を成す。また、絶縁板21は、角部が面取りされていてもよい。例えば、C面取りあるいはR面取りされていてよい。絶縁板21は、外周辺である長側面21a、短側面21b、長側面21c、短側面21dにより四方が囲まれている。このような絶縁板21は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。また、絶縁板21の厚さは、例えば、0.2mm以上、0.5mm以下である。
【0046】
金属板22は、平面視で矩形状を成す。また、角部が、例えば、C面取りあるいはR面取りされていてもよい。金属板22は、絶縁板21のサイズより小さく、絶縁板21の縁部を除いた裏面全面に形成されている。金属板22は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、金属板22の厚さは、例えば、0.1mm以上、1.5mm以下である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0047】
回路パターン23a~23iは、絶縁板21の縁部を除いた全面にわたって形成されている。好ましくは、平面視で、回路パターン23a~23iの絶縁板21の外周に面する端部は、金属板22の絶縁板21の外周側の端部と重畳する。このため、絶縁回路基板20は、絶縁板21の裏面の金属板22との応力バランスが維持される。絶縁板21の過度な反り、割れ等の損傷が抑制される。
【0048】
なお、回路パターン23aに示されている破線の領域は、2つの半導体チップ30aのチップ領域23a1をそれぞれ表している。回路パターン23bに示されている破線の領域は、2つの半導体チップ30cのチップ領域23b1をそれぞれ表している。回路パターン23cに示されている破線の領域は、2つの半導体チップ30bのチップ領域23c1をそれぞれ表している。回路パターン23dに示されている破線の領域は、2つの半導体チップ30dのチップ領域23d1をそれぞれ表している。
【0049】
また、回路パターン23a~23iの厚さは、例えば、0.1mm以上、1.5mm以下である。回路パターン23a~23iは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、回路パターン23a~23iの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0050】
回路パターン23aは、絶縁板21の長側面21a側に、長側面21aに沿って、短側面21bから短側面21dにかけて形成されている。回路パターン23bは、回路パターン23aに対して±Y方向の直線に対してほぼ線対称を成している。回路パターン23bは、絶縁板21の長側面21c側に、長側面21cに沿って、短側面21bから短側面21dにかけて形成されている。
【0051】
回路パターン23cは、回路パターン23aの+Y方向の部分に対して+X方向に隣接して、長側面21aに沿って短側面21bから-Y方向に延伸している。回路パターン23cの-Y方向の端部は、短側面21dから離隔している。回路パターン23cの長側面21c側の側部が途中で窪んでいる。回路パターン23dは、回路パターン23cに対して±Y方向の直線に対してほぼ線対称を成している。回路パターン23dは、回路パターン23bの+Y方向の部分に隣接して、長側面21cに沿って短側面21bから-Y方向に延伸している。回路パターン23dの-Y方向の端部は、短側面21dから離隔している。回路パターン23dの長側面21a側の側部が途中で窪んでいる。また、回路パターン23dの短側面21b側であって、+X方向側の角部に切り欠き領域が形成されている。
【0052】
回路パターン23eは、回路パターン23aの-Y方向の部分と短側面21dと回路パターン23cとで囲まれる領域に配置されている。すなわち、回路パターン23eは、略L字状を成している。回路パターン23fは、回路パターン23eに対して±Y方向の直線に対してほぼ線対称を成している。回路パターン23fは、回路パターン23bの-Y方向の部分と短側面21dと回路パターン23dとで囲まれる領域に配置されている。すなわち、回路パターン23fは、略L字状を成している。
【0053】
回路パターン23gは、平面視でI字状を成し、回路パターン23c,23dの窪みで囲まれる領域に回路パターン23a側であって、長側面21aに沿って配置されている。回路パターン23hは、平面視でL字状を成し、回路パターン23c,23dの窪みで囲まれる領域に回路パターン23b側であって、長側面21cに沿って配置されている。回路パターン23hは、回路パターン23gを囲うように配置されている。回路パターン23iは、平面視でI字状を成し、回路パターン23c,23dの間に、長側面21a,21cに沿って配置されている。
【0054】
このような構成を有する絶縁回路基板20として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いてもよい。絶縁回路基板20は、後述する半導体チップ30a~30dで発生した熱を回路パターン23a~23d、絶縁板21及び金属板22を介して、絶縁回路基板20の裏面側に伝導させて放熱する。
【0055】
このような絶縁回路基板20は、平坦が維持された状態の厚さは、0.5mm以上、3.0mm以下である。また、絶縁板21と金属板22及び複数の回路パターン23a~23iとは線膨張係数が異なる。また、複数の回路パターン23a~23iのサイズ、形成位置によって、絶縁板21に対する金属板22及び複数の回路パターン23a~23iによる応力バランスが崩れる。このため、絶縁回路基板20は、単体である場合には上に凸または下に凸に反ってしまう。
【0056】
なお、上に凸とは、絶縁回路基板20のおもて面(複数の回路パターン23a~23i側)の略中央部がおもて面の外縁部よりも上方(+Z方向)に突出し、これに応じて裏面(金属板22側)がおもて面側(+Z方向)に窪んでいる状態である。下に凸とは、絶縁回路基板20の裏面の略中央部が裏面の外縁部よりも下方(-Z方向)に突出し、これに応じておもて面が裏面側(-Z方向)に窪んでいる状態である。
【0057】
半導体チップ30a~30dは、炭化シリコンにより構成されるパワーデバイスである。このパワーデバイスの一例として、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が挙げられる。このような半導体チップ30a~30dは、裏面に入力電極(主電極)としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極31a~31dとしてゲート電極及び出力電極32a~32d(主電極)としてソース電極をそれぞれ備えている。
【0058】
また、半導体チップ30a~30dは、シリコンにより構成されるパワーデバイスであってもよい。この場合のパワーデバイスは、例えば、RC(Reverse Conducting)-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。RC-IGBTは、スイッチング素子であるIGBT及びダイオード素子であるFWD(Free Wheeling Diode)が1チップ内に構成されたものである。このような半導体チップ30a~30dは、例えば、裏面に入力電極(主電極)としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極、出力電極(主電極)としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。
【0059】
なお、半導体チップ30a~30dは、
図1に示されるように、回路パターン23a,23c,23b,23dにそれぞれ複数配置されている。第1の実施の形態では、それぞれ、2つずつ配置されている場合を示している。この場合、各半導体チップ30a~30dは、制御電極31a~31dがそれぞれ対向するように配置されている。なお、半導体チップ30a~30dは接合部材25により回路パターン23a,23c,23b,23dに接合されている。
【0060】
リードフレーム40a~40dは、半導体チップ30a~30dのおもて面の出力電極32a~32dと回路パターン23c,23e,23d,23fとを電気的に接続する。なお、リードフレーム40a~40dは半導体チップ30a~30dの出力電極32a~32dに対して既述の接合部材25により接合される。リードフレーム40a~40dは回路パターン23c,23e,23d,23fに対して既述の接合部材25または超音波接合により接合される。
【0061】
リードフレーム40a~40dは、導電性及び熱伝導性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金が挙げられる。また、リードフレーム40a~40dの表面には、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この場合のめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0062】
なお、図示を省略するものの、半導体チップ30a,30cの制御電極31a,31cは、配線部材により、回路パターン23g,23hにそれぞれ接続される。半導体チップ30b,30dの制御電極31b,31dは、配線部材により、回路パターン23iにそれぞれ接続される。回路パターン23g,23h,23iには外部から制御信号が入力される。
【0063】
配線部材は、例えば、リードフレーム、または、ワイヤであってよい。ワイヤは、導電性に優れた材質を主成分としている。このような材質は、例えば、金、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金により構成されている。好ましくは、ワイヤは、シリコンを微量含むアルミニウム合金であってよい。
【0064】
次に、半導体モジュール1の製造方法について、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態の半導体モジュールの製造方法を示すフローチャートである。まず、半導体モジュール1の構成部品を用意する用意工程を行う(ステップS1)。構成部品は、例えば、半導体チップ30a~30d、絶縁回路基板20、ケース2、ベース基板8、封止部材9が挙げられる。構成部品は、上記以外でも半導体モジュール1の製造に必要なものを用意してよい。また、構成部品と共に、半導体モジュール1の製造に用いる治具、製造装置も用意してよい。
【0065】
次いで、半導体ユニット10を組み立てる半導体ユニット組み立て工程を行う(ステップS2)。ここでは、絶縁回路基板20の回路パターン23a~23dに後述する接合部材25aを塗布して半導体チップ30a,30c,30b,30dを接合する。また、半導体チップ30a,30c,30b,30dと回路パターン23c,23d,23e,23fとをリードフレーム40a,40c,40b,40dにより接合する。以上により、半導体ユニット10が組み立てられる。なお、半導体ユニット組み立て工程の詳細については後述する。
【0066】
次いで、半導体ユニット10をケース2に収納する収納工程を行う(ステップS3)。半導体ユニット10をベース基板8の所定領域に接合部材25により接合する。ケース2を、ベース基板8の外周部に接着部材により接着する。この際、ベース基板8上の半導体ユニット10はケース2により囲まれている。以上により、半導体ユニット10をケース2に収納する。
【0067】
次いで、ケース2内の半導体ユニット10を電気的に配線する配線工程を行う(ステップS4)。ケース2内において、絶縁回路基板20の回路パターン23c,23dに出力端子5の内部接合部5b,5aをそれぞれ接合する。絶縁回路基板20の回路パターン23a,23bに正極端子6の内部接合部6b,6aをそれぞれ接合する。絶縁回路基板20の回路パターン23e,23fに負極端子7の内部接合部7b,7aをそれぞれ接合する。なお、これらの接合は超音波接合、または、接合部材25により接合してよい。また、半導体チップ30a~30dの制御電極31a~31dと回路パターン23g,23h,23iとをそれぞれワイヤにより接合する。
【0068】
次いで、ケース2内に封止部材9を充填して、半導体ユニット10を封止する封止工程を行う(ステップS5)。半導体ユニット10が収納されるケース2の収納部3eに封止部材9を充填する。この際、少なくとも半導体ユニット10の全体が封止されるまで封止部材9を収納部3eに充填する。充填した封止部材9が固化すると、
図1及び
図2に示す半導体モジュール1が製造される。
【0069】
次に、ステップS2の半導体ユニット組み立て工程について
図6を用いて説明し、また、本工程で利用される台座について
図7~
図9を用いて説明する。
図6は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程を示すフローチャートである。
図7は、第1の実施の形態の接合部材塗布装置の斜視図であり、
図8は、第1の実施の形態の台座のおもて面の平面図であり、
図9は、第1の実施の形態の台座の側断面図である。なお、
図9は、
図8の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0070】
まず、半導体ユニット組み立て工程の説明の前に接合部材塗布装置50について説明する。接合部材塗布装置50は、
図7に示すように、台座60と後述する弾性シート63と吸引装置65とを含む。台座60は、平板状を成しており、おもて面61とおもて面61の四方を順に取り囲む側面60a~60dとを含んでいる。なお、おもて面61は平面視で矩形状を成している。平面視で、側面60a,60cは、台座60(おもて面61)の長辺側に、側面60b,60dは、台座60(おもて面61)の短辺側にそれぞれ対応している。側面60a~60dはおもて面61に対して直角を成して接続されている。なお、台座60は、おもて面61を備えていればよく、平板状であることに限らない。
【0071】
台座60のおもて面61の中央部にステージ領域61aとステージ領域61aの全体の外側に支持領域61bとが設定されている。すなわち、支持領域61bは、おもて面61においてステージ領域61aを除いた範囲である。ステージ領域61a及び支持領域61bは実質的に平坦である。
【0072】
ステージ領域61aは絶縁回路基板20に対応して平面視で矩形状を成し、絶縁回路基板20と同程度の大きさである。ステージ領域61aはおもて面61よりも下位(-Z方向)に窪んでおり、支持領域61bに略平行を成している。すなわち、ステージ領域61aは、支持領域61bに対して段差を成している。
【0073】
ステージ領域61aには、複数の吸引孔61a5が形成されている。複数の吸引孔61a5は、後述するようにステージ領域61aに配置された絶縁回路基板20の金属板22に対応する範囲に形成されている。これにより、後述するように、複数の吸引孔61a5により金属板22を確実に吸引することができる。また、複数の吸引孔61a5は、ステージ領域61aに偏らず均一に分散して格子状を成して形成されてよい。複数の吸引孔61a5は、ステージ領域61aに配置された絶縁回路基板20の金属板22に対応する範囲に形成されていれば、格子状を成していなくてもよい。吸引孔61a5の平面視の形状は、例えば、円形状、正方形状、菱形状であってよい。複数の吸引孔61a5のそれぞれのサイズ及び個数は確実に吸引できるように設定されている。
【0074】
窪んだステージ領域61aの四方と支持領域61bとが内側面61a1~61a4により一体的に接続されている。内側面61a1~61a4は、ステージ領域61a及び支持領域61bに対して略直角を成している。内側面61a1~61a4は、実質的に平坦であってよい。内側面61a1~61a4の高さ(ステージ領域61aの支持領域61bに対する±Z方向の深さ)は、平坦な絶縁回路基板20及び後述する弾性シート63を合わせた厚さ程度であってよい。このようなステージ領域61a及び内側面61a1~61a4で囲まれて収納領域61a7が構成される。すなわち、収納領域61a7は、平坦に維持された絶縁回路基板20を収納することができるサイズである。収納領域61a7に収納された、平坦に維持された絶縁回路基板20(回路パターン23a~23i)のおもて面と支持領域61bとは略同一平面を成す。
【0075】
また、ステージ領域61aの各角部に窪み61a6が形成されている。窪み61a6は、平面視で、ステージ領域61aの各角部から外側(支持領域61b側)に窪んでいる。窪み61a6は平面視で窪んでいればよく、例えば、円形状を成している。窪み61a6は、平面視で既述のように窪んで、ステージ領域61aと同じ位置まで開口されている。このような窪み61a6は、ステージ領域61aの4つの角部の少なくとも1つに形成されてよい。第1の実施の形態では、窪み61a6がステージ領域61aの全ての角部に形成されている場合を例に挙げている。また、ステージ領域61aに弾性シート63(
図10及び
図11)が配置される。弾性シート63の詳細については後述する。
【0076】
台座60は側面60bに吸引管62が形成されている。吸引管62は、側面60bから台座60の内部で複数の吸引孔61a5にそれぞれ繋がっている。すなわち、複数の吸引孔61a5と吸引管62とは通気可能に接続されている。なお、
図7に示す吸引管62の台座60に対する取り付け箇所は一例である。吸引管62の取り付け箇所として、例えば、側面60a,60c,60dのいずれであってよく、また、台座60の裏面でもよい。または、吸引管62は複数設けてもよい。さらに、吸引管62は台座60に一体的に接続してよい。このような吸引管62は、吸引装置65に通気可能に接続される。なお、このような台座60並びに吸引管62は、線膨張係数が小さい材質で構成されることが好ましい。このような材質の一例として、ステンレスが挙げられる。
【0077】
吸引装置65は負圧を発生させて吸引管62を経由して複数の吸引孔61a5によりステージ領域61aのおもて面からステージ領域61aの反対側に吸引する。吸引装置65は、単位時間当たりの吸引量を制御する。吸引装置65は、例えば、単位時間当たりの吸引量を増加して、吸引力を上昇させ、また、単位時間当たりの吸引量を減少して、吸引力を低下させる。さらに、吸引装置65は、単位時間当たりの吸引量を維持して、一定の吸引力で吸引する。
【0078】
このような接合部材塗布装置50を用いて、以下のような半導体ユニット組み立て工程を行う。まず、台座60のステージ領域61aに弾性シート63をセットする弾性シートセット工程を行う(ステップS2a)。弾性シートセット工程について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図であり、
図11は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。なお、
図11は、
図10の一点鎖線Y-Yによる断面図である。
【0079】
弾性シート63は、所定の弾性率を有する材質を主成分としてシート状に構成されている。このような材質は、例えば、シリコン樹脂(シリコーン)、フッ素樹脂(PTFE(PolyTetraFluoroEthylene))が挙げられる。このような弾性シート63は、平面視で矩形状を成して、四方が順に側面63a1~63a4で囲まれている。なお、平面視で、側面63a1,63a3は長辺側に、側面63a2,63a4は短辺側にそれぞれ対応している。弾性シート63の形状及びサイズは、平面視で、ステージ領域61aの形状及びサイズに対応している。また、弾性シート63の厚さは、全体的に均一の厚さであって、50μm以上、200μm以下である。
【0080】
弾性シート63は、複数の貫通孔63bが形成されている。複数の貫通孔63bは、弾性シート63がステージ領域61aに配置された際に、複数の吸引孔61a5に通じ、複数の吸引孔61a5の外周を連続して環状に取り囲む。この際、複数の貫通孔63bは、複数の吸引孔61a5に通じていればよく、複数の貫通孔63bの形状、サイズは、複数の吸引孔61a5の形状、サイズと必ずしも同一でなくてよい。なお、第1の実施の形態では、複数の貫通孔63bの個数、形状、サイズは、複数の吸引孔61a5にそれぞれ対応した場合を例示している。
【0081】
また、複数の貫通孔63bは、既述の通り、複数の吸引孔61a5に通じ、複数の吸引孔61a5の外周を連続して環状に取り囲めばよい。このため、弾性シート63に複数の貫通孔63bが形成される場合に限らない。例えば、弾性シート63と同じ材質により構成され、環状(リング状)を成すシートを、複数の吸引孔61a5のそれぞれに設けてもよい。但し、このような環状のシートよりも弾性シート63の方がステージ領域61aにセットしやすい。
【0082】
さらに、弾性シート63の4つの角部にそれぞれ固定部63cが形成されている。固定部63cは、弾性シート63と同じ材質であって、弾性シート63に一体的に形成されている。固定部63cは、少なくとも、弾性シート63の4つの角部のいずれかに形成されればよい。弾性シート63をステージ領域61aにセットする際に、固定部63cを窪み61a6内に取り付ける。これにより、弾性シート63の位置ずれが防止される。
【0083】
次いで、弾性シート63上に絶縁回路基板20をセットする絶縁回路基板セット工程を行う(ステップS2b)。絶縁回路基板セット工程について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す平面図であり、
図13は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す側断面図である。
図13は、
図12の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0084】
絶縁回路基板20は、
図12及び
図13に示されるように、ステージ領域61aにセットされる。但し、ここでは、絶縁回路基板20が下に凸に反っている場合を例示している。このため、絶縁回路基板20の裏面の中央部がステージ領域61aに当接しているものの、絶縁回路基板20の裏面の外縁部はステージ領域61aから浮いて隙間が空いている。このような絶縁回路基板20(回路パターン23a~23i)のおもて面の外縁部は、台座60の支持領域61bよりも上方(+Z方向)に位置している。
【0085】
次いで、吸引を開始する吸引開始工程を行う(ステップS2c)。吸引装置65を駆動して複数の吸引孔61a5から弾性シート63の複数の貫通孔63bを介して、絶縁回路基板20の吸引を開始する。吸引装置65は、吸引開始後、単位時間当たりの吸引量が所定値になると、その吸引量を維持する。上に凸または下に凸に反った絶縁回路基板20は吸引されることで、絶縁回路基板20の裏面がステージ領域61a側に引かれ、絶縁回路基板20とステージ領域61a上の弾性シート63とが密着し隙間が無くなる。
【0086】
上に凸に反った絶縁回路基板20が吸引されると、絶縁回路基板20の裏面の中央部がステージ領域61a側に引かれて、絶縁回路基板20の裏面の全面がステージ領域61aの弾性シート63に密着して、平坦な状態となる。しかしながら、絶縁回路基板20は、上に凸に反った場合でも、反りの大きさ、吸引力によっては、ステージ領域61aとの隙間が小さくなるものの、平坦な状態とならない場合がある。
【0087】
また、下に凸に反った絶縁回路基板20が吸引されると、絶縁回路基板20の裏面の外縁部がステージ領域61a側に引かれて、絶縁回路基板20とステージ領域61aの弾性シート63との隙間が小さくなるものの密着までしない場合が多い。この場合、反りは小さくなるものの、依然として絶縁回路基板20は上に凸に反った状態となる。なお、絶縁回路基板20は、下に凸に反った場合でも、反りの大きさ、吸引力により、平坦な状態となる場合がある。
【0088】
第1の実施の形態では、絶縁回路基板20が上に凸、下に凸のいずれかに反っていても、吸引された絶縁回路基板20とステージ領域61aとの間に隙間が存在している場合を例に挙げて説明する。
【0089】
次いで、絶縁回路基板20を吸引しながら、絶縁回路基板20のおもて面をステージ領域61a側に押圧する押圧工程を行う(ステップS2d)。押圧工程について、
図14を用いて説明する。
図14は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の吸引開始工程及び押圧工程を示す側断面図である。なお、
図14は、
図13の断面図に対応している。
【0090】
ここでは、錘75を絶縁回路基板20のおもて面に配置して、絶縁回路基板20をステージ領域61a側に押圧している。この際、錘75は、平面視でステージ領域61aよりも長い。すなわち、錘75は、ステージ領域61aを挟んで、ステージ領域61aの両側の支持領域61bに及んでいる。このため、錘75は、絶縁回路基板20をステージ領域61a側に押圧しても、支持領域61bにより支持されるため絶縁回路基板20を押圧し過ぎることがない。このため、押圧による絶縁回路基板20が損傷を受けることが防止される。押圧された絶縁回路基板20の裏面の全面が弾性シート63に密着する。絶縁回路基板20は弾性シート63に一旦密着すると複数の貫通孔63bを介して吸引されるために平坦な状態が維持される。特に、ステージ領域61aの複数の吸引孔61a5の外周が弾性シート63により連続して環状に取り囲まれているため、複数の吸引孔61a5は絶縁回路基板20に対して余計な吸引経路が発生せずに絶縁回路基板20を確実に吸引する。このため、錘75を除去しても、絶縁回路基板20は平坦の状態が維持される。この際、平坦な絶縁回路基板20のおもて面は支持領域61bと同一平面を成している。
【0091】
なお、ここでの錘75による押圧は一例である。例えば、押圧力が制御されたプランジャにより絶縁回路基板20のおもて面をステージ領域61a側に押圧させてもよい。また、錘75は絶縁回路基板20を押圧する押圧面を含んでいれば、
図14のようにブロック状ではなくてもよい。
【0092】
なお、ステップS2cの吸引開始工程とステップS2dの押圧工程との実行順序を入れ替えてもよい。すなわち、絶縁回路基板セット工程の後、錘75を絶縁回路基板20のおもて面に配置して、絶縁回路基板20をステージ領域61a側に押圧しつつ、吸引を開始する。このような順序でも、絶縁回路基板20は弾性シート63に密着して平坦な状態が維持される。
【0093】
次いで、平坦が維持された絶縁回路基板20のおもて面にマスクをセットするマスクセット工程を行う(ステップS2e)。マスクセット工程について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスクセット工程を示す平面図であり、
図16は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスクセット工程を示す側断面図である。なお、
図16は、
図15の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0094】
台座60のおもて面61上にマスク70をセットする。マスク70は平面視で矩形状を成し、四方が側面70a~70dにより囲まれている。マスク70は、台座60にセットされた際に、絶縁回路基板20の接合部材25の塗布領域に対応して開口された転写口71が形成されている。マスク70は、台座60のおもて面61(支持領域61b)に配置されると、おもて面61(支持領域61b)の外縁に隙間を空けておもて面61を覆う。この際、マスク70は、絶縁回路基板20のおもて面及び支持領域61bに当接されている。なお、このようなマスク70も台座60と同様に、線膨張係数が小さい材質で構成されることが好ましい。このような材質の一例として、ステンレスが挙げられる。また、マスク70の厚さは、所望の接合部材25の厚さに対応するものであり、例えば、50μm以上、200μm以下である。
【0095】
なお、既述のステップS2dの押圧工程は、ステップS2eのマスクセット工程の前に行われることを要する。すなわち、絶縁回路基板20をマスク70を介して押圧することはない。マスク70を介して絶縁回路基板20を押圧すると、マスク70が損傷を受けてしまうおそれがあるためである。
【0096】
また、ステップS2eのマスクセット工程はステップS2bの絶縁回路基板セット工程の後、ステップS2cの吸引開始工程の前に行ってもよい。但し、この場合、既述の通り、マスク70に対する押圧を避ける必要があるため、ステップS2dの押圧工程は行わない。すなわち、ステップS2aの弾性シートセット工程の後、ステップS2bの絶縁回路基板セット工程、ステップS2eのマスクセット工程、ステップS2cの吸引開始工程の順で行われてよい。
【0097】
次いで、マスク70を用いて絶縁回路基板20に接合部材を塗布する塗布工程を行う(ステップS2f)。塗布工程について、
図17~
図20を用いて説明する。
図17及び
図19は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す平面図であり、
図18及び
図20は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図である。なお、
図17及び
図18は、スキージによる接合部材の転写前を、
図19及び
図20は、スキージによる接合部材の転写後を、それぞれ示している。また、
図18及び
図20は、
図17及び
図19の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0098】
例えば、固化される前の接合部材25aをマスク70のおもて面の側面70b側であって、側面70aから側面70cに渡って配置する。スキージ76をマスク70のおもて面上の接合部材25aよりもさらに側面70b側にセットして、側面70d(-Y方向)に向かって摺動させる(
図17及び
図18)。スキージ76が側面70dに向かって摺動して全てのマスク70の転写口71を通過して側面70dに移動すると接合部材25aが全ての転写口71を埋める(
図19及び
図20)。
【0099】
次いで、マスク70を除去するマスク除去工程(ステップS2g)、吸引を停止する吸引停止工程(ステップS2h)を順に行う。マスク除去工程、吸引停止工程について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去工程、吸引停止工程を示す平面図であり、
図22は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去工程、吸引停止工程を示す側断面図である。なお、
図22は、
図21の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0100】
マスク70を除去すると、マスク70の転写口71により成形された接合部材25aが絶縁回路基板20の回路パターン23a~23dに転写される。転写された接合部材25aは、転写口71の形状に対応した形状を成している。そして、吸引装置65を停止して、絶縁回路基板20の吸引を停止する。
【0101】
次いで、台座60から絶縁回路基板20を離脱する離脱工程を行う(ステップS2i)。接合部材25aが転写された絶縁回路基板20を台座60の収納領域61a7から取り出す。次いで、絶縁回路基板20に接合部材25aを介して半導体チップ30a~30dをセットする半導体チップセット工程を行う(ステップS2j)。絶縁回路基板20を、例えば、チップマウント装置にセットして、接合部材25aに半導体チップ30a~30dをそれぞれセットする。
【0102】
次いで、半導体チップ30a~30dを絶縁回路基板20に接合する半導体チップ接合工程を行う(ステップS2k)。半導体チップ30a~30dの上から加熱、加圧することにより、固化した接合部材25を介して半導体チップ30a~30dを絶縁回路基板20の回路パターン23a~23dに接合する。また、リードフレーム40a~40dもまた、半導体チップ30a~30dの出力電極32a~32dと回路パターン23c,23e,23d,23fとを接合する。以上により、
図3に示される半導体ユニット10が製造される。
【0103】
ここで、第1の実施の形態に対する参考例1として、半導体ユニット組み立て工程において台座60のステージ領域61aに弾性シート63をセットせずに、絶縁回路基板20を直接セットして接合部材25aを塗布する場合について
図23~
図25を用いて説明する。
図23及び
図24は、参考例1の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図である。
図25は、参考例1の半導体ユニット組み立て工程のマスク除去、吸引停止工程を示す側断面図である。なお、
図23は、
図18の断面図に対応しており、
図24は、スキージ76のマスク70の転写口71上の通過時を示す断面図である。
図25は、
図22の断面図に対応している。
【0104】
参考例1の半導体ユニット組み立て工程は、
図6に示したフローチャートのステップS2b以降の工程が順に行われる。すなわち、弾性シートセット工程(ステップS2a)が行われず、ステップS2bにおいて台座60のステージ領域61aに絶縁回路基板20が直接セットされて、ステップS2c以降が順に行われる。
【0105】
そして、ステップS2fのマスク70を用いて絶縁回路基板20に接合部材を塗布する塗布工程を行う。塗布工程では、第1の実施の形態と同様に、固化される前の接合部材25aをマスク70のおもて面の側面70b側であって、側面70aから側面70cに渡って配置する(
図17及び
図23)。
【0106】
この際、絶縁回路基板20はステージ領域61aの複数の吸引孔61a5から吸引されている。絶縁回路基板20は平坦が維持されるものの、ステージ領域61aに対して完全に密着することはなく、僅かながら隙間が生じてしまう。このため、複数の吸引孔61a5の吸引により、絶縁回路基板20とステージ領域61aとの隙間と絶縁回路基板20と内側面61a1~61a4との隙間と転写口71とに通じる吸引経路が発生してしまう。例えば、
図23では、絶縁回路基板20とステージ領域61aとの隙間と絶縁回路基板20と内側面61a1との隙間と転写口71とに通じる吸引経路を太い破線で示している。
【0107】
スキージ76をマスク70のおもて面上の接合部材25aよりもさらに側面70b側にセットして、側面70d(-Y方向)に向かって摺動させる。スキージ76が側面70dに摺動して全てのマスク70の転写口71を通過して側面70dに移動すると接合部材25aが全ての転写口71を埋める(
図24)。
【0108】
この際、転写口71から複数の吸引孔61a5に吸引経路が発生しているため、転写口71を埋める接合部材25aが吸引経路に沿って吸引されてしまう。このため、転写口71内の接合部材25aは所望の塗布領域の外側にまで広がってしまう。
【0109】
次いで、マスク70を除去するマスク除去工程(ステップS2g)、吸引を停止する吸引停止工程(ステップS2h)を順に行う。マスク70を除去すると、マスク70の転写口71により成形された接合部材25aが絶縁回路基板20の回路パターン23a~23dに転写される。転写された接合部材25aは、吸引経路に沿って吸引されたために、転写口71の形状に対応せずに、回路パターン23a~23i上で広がっている。接合部材25aの広がり方次第では、例えば、回路パターン23a~23i間を接続してしまう場合もある。この場合、電気的不具合が生じてしまう。そして、吸引装置65を停止して、絶縁回路基板20の吸引を停止する(
図25)。
【0110】
このように組み立てられた半導体ユニット10は接合部材25が所望の塗布領域の外側にも広がってしまい、半導体ユニット10並びに半導体ユニット10を含む半導体モジュール1の信頼性の低下のおそれがある。
【0111】
第1の実施の形態の接合部材塗布装置50は、台座60と吸引装置65と弾性シート63とを含んでいる。台座60は、塗布対象部材である絶縁回路基板20が配置されるステージ領域61aが設定されたおもて面61を含み、おもて面61のステージ領域61aに、少なくとも1つの吸引孔61a5が形成されている。吸引装置65は、吸引孔61a5を通じておもて面61からおもて面61の反対側に吸引する。弾性シート63は、ステージ領域61aに設けられ、吸引孔61a5に通じ、吸引孔61a5の外周を連続して環状に取り囲む貫通孔63bを含み、絶縁回路基板20が配置される。このような接合部材塗布装置50では、弾性シート63により吸引孔61a5の外周が連続して環状に取り囲まれている。吸引孔61a5から絶縁回路基板20を吸引して、弾性シート63により吸引孔61a5と絶縁回路基板20とが密着して、絶縁回路基板20は平坦が維持される。このため、吸引孔61a5から、絶縁回路基板20とステージ領域61aとの隙間と絶縁回路基板20と内側面61a1~61a4との隙間と転写口71とに通じる吸引経路の発生が防止される。したがって、吸引孔61a5から吸引されている絶縁回路基板20にマスク70の転写口71を介して接合部材25aを転写しても、接合部材25aの広がりが防止される。このため、電気的不具合等の発生が防止され、半導体モジュール1の信頼性の低下が抑制される。
【0112】
特に、接合部材25(接合部材25a)に、焼結材を用いる場合、焼結材にはフラックスが含まれておらず、粘度調整を行うことが難しい。接合部材塗布装置50のような塗布方法であれば、このような接合部材25(接合部材25a)でも絶縁回路基板20に対して所望の塗布領域に適切に塗布することができる。
【0113】
第1の実施の形態では、弾性シート63により吸引孔61a5の外周を連続して環状に取り囲むことで吸引孔61a5からマスク70の転写口71への吸引経路の発生を防止している。弾性シート63による吸引孔61a5の取り囲み方は第1の実施の形態の場合に限らない。
【0114】
但し、弾性シート63の好ましくない例として参考例2について、
図26~
図28を用いて説明する。
図26は、参考例2の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図であり、
図27は、参考例2の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。
図28は、参考例2の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程を示す側断面図である。
【0115】
変形例2で用いられる弾性シート63は、
図26及び
図27に示されるように、ステージ領域61aの外周を連続して環状に取り囲む枠型を成して、中央部に開口部63dが形成されている。この場合の弾性シート63は、複数の吸引孔61a5を取り囲んでおり、弾性シート63上に配置された絶縁回路基板20が密着されて複数の吸引孔61a5からマスク70の転写口71への吸引経路の発生を防止することが期待される。
【0116】
実際のところ、このような弾性シート63上に絶縁回路基板20を配置して吸引を行うと、絶縁回路基板20の裏面の外縁部が弾性シート63の外縁により支持されて、絶縁回路基板20の中央部がステージ領域61aに吸引されて絶縁回路基板20が下に凸に反ってしまう。絶縁回路基板20は反ってしまうとマスク70により接合部材25aを適切に塗布することができない。
【0117】
そこで、例えば、次のような弾性シート63を用いることができる。この場合について、
図29及び
図30を用いて説明する。
図29は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程で用いられる別の弾性シートを示す平面図であり、
図30は、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程で用いられる別の弾性シートを示す側断面図である。なお、
図30は、
図29の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0118】
この場合の弾性シート63は、中央部を残して、その両側に開口部63e1,63e2が形成されている。中央部は側面63a2,63a4の中央を接続し、側面63a1,63a3に平行を成している。この中央部には、複数の吸引孔61a5が形成されている。
【0119】
このような弾性シート63上に絶縁回路基板20を配置して吸引を行うと、絶縁回路基板20の裏面の外縁部が弾性シート63の外縁により支持されつつ、絶縁回路基板20がステージ領域61aに吸引される。この際、絶縁回路基板20の裏面の中央部は弾性シート63の中央部に密着して、絶縁回路基板20が平坦に維持される。したがって、複数の吸引孔61a5及び開口部63e1,63e2からマスク70の転写口71への吸引経路の発生を防止することができる。
【0120】
したがって、弾性シート63は、
図26に示したように枠型とする場合には、吸引された絶縁回路基板20の下に凸に反ることを防止するために、中央部を除いて開口されてよい。この場合の開口の個数は2つに限らない。また、開口の平面視の形状は、矩形状に限らず、円形、楕円形、その他の形状の開口でもよい。
【0121】
また、第1の実施の形態の
図10及び
図11に示した弾性シート63では、ステージ領域61aに形成された複数の吸引孔61a5に対応して貫通孔63bが形成されている。すなわち、この場合は、弾性シート63の貫通孔63bの個数は、ステージ領域61aの吸引孔61a5の個数と等しい。弾性シート63の貫通孔63bの個数もまた、この場合に限らない。貫通孔63bは弾性シート63に対して、絶縁回路基板20の反りの位置、反り具合に応じて、形成されてよい。すなわち、絶縁回路基板20において吸引したい箇所に対応する吸引孔61a5に応じて弾性シート63に貫通孔63bを形成してもよい。このようにして、弾性シート63に形成する貫通孔63bを選択することができ、反りが生じた絶縁回路基板20を効果的に平坦に矯正することができる。したがって、弾性シート63の貫通孔63bの個数は、ステージ領域61aの吸引孔61a5の個数と等しく、または、少なくてよい。
【0122】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、接合部材塗布装置50の含まれる台座60のおもて面61ではステージ領域61aと支持領域61bとが同一平面を成している。このような台座60を用いた半導体ユニット組み立て工程について
図31を用いて説明し、また、本工程で利用される台座60について
図32及び
図33を用いて説明する。
図31は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程を示すフローチャートである。
図32は、第2の実施の形態の台座のおもて面の平面図である。
図33は、第2の実施の形態の台座の側断面図である。なお、
図33は、
図32の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0123】
接合部材塗布装置50は、台座60と吸引装置65と弾性シート63とを含んでいる。第2の実施の形態の台座60は、おもて面61のステージ領域61aと支持領域61bとが同一平面を成している。台座60のその他の構成については、第1の実施の形態と同様である。また、吸引装置65及び弾性シート63も第1の実施の形態と同様である。但し、弾性シート63は、固定部63cが形成されていない場合を例示している。
【0124】
このような接合部材塗布装置50を用いて、以下のような半導体ユニット組み立て工程を行う。なお、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程において、第1の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程と同様の工程については説明を簡略する。
【0125】
まず、台座60のステージ領域61aに弾性シート63をセットする弾性シートセット工程を行う(ステップS2a)。弾性シートセット工程について、
図34及び
図35を用いて説明する。
図34は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す平面図であり、
図35は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の弾性シートセット工程を示す側断面図である。なお、
図35は、
図34の一点鎖線Y-Yによる断面図である。
【0126】
弾性シート63が、
図34及び
図35に示されるように、台座60のおもて面61のステージ領域61aにセットされる。弾性シート63の平面視のサイズは、ステージ領域61aのサイズと同一、または、広くてよい。
【0127】
次いで、弾性シート63上に絶縁回路基板20をセットする絶縁回路基板セット工程(ステップS2b)、セットされた絶縁回路基板20の吸引を開始する吸引開始工程(ステップS2c)を行う。絶縁回路基板セット工程及び吸引開始工程について、
図36及び
図37を用いて説明する。
図36は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程及び吸引開始工程を示す平面図である。
図37は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の絶縁回路基板セット工程及び吸引開始工程を示す側断面図である。なお、
図37は、
図36の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0128】
絶縁回路基板20は、ステージ領域61aに弾性シート63を介してセットされる。吸引装置65を駆動して複数の吸引孔61a5から弾性シート63の複数の貫通孔63bを介して、絶縁回路基板20の吸引を開始して、単位時間当たりの吸引量が所定値になると、その吸引量を維持する。上に凸または下に凸に反った絶縁回路基板20は吸引されることで、絶縁回路基板20の裏面がステージ領域61a側に引かれ、絶縁回路基板20とステージ領域61a上の弾性シート63との隙間が小さくなり、または、隙間が無くなり密着する。なお、
図36及び
図37では、絶縁回路基板20がステージ領域61a上の弾性シート63に密着している場合を示している。
【0129】
次いで、絶縁回路基板20を吸引しながら、絶縁回路基板20のおもて面をステージ領域61a側に押圧する押圧工程を行う(ステップS2d)。第1の実施の形態と同様に、ステップS2cで吸引されている絶縁回路基板20が弾性シート63に隙間なく密着している場合には、ステップS2dの押圧工程を省略してもよい。押圧工程を行う場合には、第1の実施の形態と同様に、錘75を用いてよい。この場合の錘75は、絶縁回路基板20を押しすぎないように、例えば、絶縁回路基板20の厚さ程度の深さを備える箱型を成して、絶縁回路基板20を覆って支持領域61b上に配置してよい。
【0130】
吸引開始工程(ステップS2c)または押圧工程(ステップS2d)を経て絶縁回路基板20が弾性シート63に一旦密着すると、ステージ領域61aの複数の吸引孔61a5は弾性シート63の複数の貫通孔63bを通じて絶縁回路基板20の裏面を吸引する。すなわち、吸引孔61a5からの吸引経路は絶縁回路基板20の裏面にほぼ限られる。このため、絶縁回路基板20の平坦な状態が確実に維持される。
【0131】
次いで、絶縁回路基板20に接合部材を塗布する塗布工程を行う(ステップS2f)。塗布工程について、
図38を用いて説明する。
図38は、第2の実施の形態の半導体ユニット組み立て工程の塗布工程を示す側断面図である。なお、
図38は、第1の実施の形態の
図20に対応する箇所の断面図である。
【0132】
第2の実施の形態の塗布工程では、マスク70を用いずに、例えば、ディスペンサ77により接合部材25aが塗布される。ディスペンサ77から接合部材25aが回路パターン23a~23dのチップ領域23a1~23d1にそれぞれ吐出されて、チップ領域23a1~23d1の全体に延ばされる。この際、絶縁回路基板20は平坦な状態が維持されているために、ディスペンサ77により回路パターン23a~23dのチップ領域23a1~23d1に接合部材25aを略均等な厚さに塗布することができる。
【0133】
なお、上に凸または下に凸に反っている絶縁回路基板20に対してディスペンサ77により接合部材25aを塗布する場合、回路パターン23a~23dのチップ領域23a1~23d1が曲面を成しているため、接合部材25aを略均等な厚さに塗布することができない。
【0134】
このように絶縁回路基板20に接合部材25aが塗布されると、第1の実施の形態と同様に、吸引を停止する吸引停止工程(ステップS2h)、台座60から絶縁回路基板20を離脱する離脱工程(ステップS2i)を行う。続けて、絶縁回路基板20に接合部材25を介して半導体チップ30a~30dをセットする半導体チップセット工程(ステップS2j)、半導体チップ30a~30dを絶縁回路基板20に接合する半導体チップ接合工程(ステップS2k)を行う。以上により、
図3に示される半導体ユニット10が製造される。
【0135】
第2の実施の形態の接合部材塗布装置50では、弾性シート63により吸引孔61a5の外周が連続して環状に取り囲まれている。吸引孔61a5から絶縁回路基板20を吸引しても、弾性シート63により吸引孔61a5と絶縁回路基板20とが密着する。このため、絶縁回路基板20は貫通孔63bを通じて吸引孔61a5により確実に吸引される。このため、絶縁回路基板20が略平坦に維持されて、接合部材25aを所望の領域に塗布することができ、接合部材25aが所望の領域以外に拡がることが防止される。このため、電気的不具合等の発生が防止され、半導体モジュール1の信頼性の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0136】
1 半導体モジュール
2 ケース
3 外枠
3a,3c 長側壁
3b,3d 短側壁
3e 収納部
5 出力端子
5a,5b,6a,6b,7a,7b 内部接合部
6 正極端子
7 負極端子
8 ベース基板
9 封止部材
10 半導体ユニット
20 絶縁回路基板
21 絶縁板
21a,21c 長側面
21b,21d 短側面
22 金属板
23a~23i 回路パターン
23a1~23d1 チップ領域
25,25a 接合部材
30a~30d 半導体チップ
31a~31d 制御電極
32a~32d 出力電極
40a~40d リードフレーム
50 接合部材塗布装置
60 台座
60a~60d 側面
61 おもて面
61a ステージ領域
61a1~61a4 内側面
61a5 吸引孔
61a6 窪み
61a7 収納領域
61b 支持領域
62 吸引管
63 弾性シート
63a 固定部
63a1~63a4 側面
63b 貫通孔
63c 固定部
63d 開口部
63e1,63e2 開口部
65 吸引装置
70 マスク
70a~70d 側面
71 転写口
75 錘
76 スキージ
77 ディスペンサ