IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-建物 図1
  • 特開-建物 図2
  • 特開-建物 図3
  • 特開-建物 図4
  • 特開-建物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068943
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/342 20060101AFI20240514BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20240514BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E04B1/342 A
E04B1/348 J
E04B1/94 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179638
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田井 暢
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩太
(72)【発明者】
【氏名】和田 純一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 有一
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】尾島 慧亮
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 睦也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA03
2E001GA11
2E001HB02
(57)【要約】
【課題】需要の変化に応じて容易にレイアウト変更可能な建物構造を提供する。
【解決手段】建物10は、外壁と屋根とを形成する外側構造体30と、外側構造体30の内側に複数配置され、ユニット部材で形成された内側構造体40と、向かい合う前記内側構造体の間に形成された通路N1、N2、N3と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁と屋根とを形成する外側構造体と、
前記外側構造体の内側に複数配置され、ユニット部材で形成された内側構造体と、
向かい合う前記内側構造体の間に形成された通路と、
を備えた建物。
【請求項2】
前記外側構造体の前記外壁は耐火性を有し、前記屋根は不燃性を有している、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記外側構造体及び前記内側構造体は、鉄筋コンクリート造の基礎梁及びマットスラブの少なくとも一方に支持されている、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
互いに隣り合う前記内側構造体がそれぞれ構造的に独立している、請求項1又は2に記載の建物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、飲食物などを販売する店舗を短時間で迅速に構築することができる可搬式店舗が記載されている。この可搬式店舗は、組立式店舗躯体を設置スペースに運搬し、天面や扉などの躯体を構成する部材を組み付けて構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-152916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された可搬式店舗は、イベント会場に運搬して組み立てることにより、短期間におけるイベント会場での営業を行うことができる。このような可搬式店舗を複数配置する場合は、風雨に晒された際に水漏れなどが生じないように、それぞれの可搬式店舗を形成する組立式店舗躯体に、対候性を確保する必要がある。そして、需要の変化に応じて可搬式店舗のレイアウトを変更しながら中長期的に使用する場合等は、さらに高い対候性が必要となる。
【0005】
しかしながら、組立式店舗躯体に対候性を確保する場合、対候性を考慮しない構造と比較して、構造が複雑になる。このため、可搬式店舗の設置や撤去に手間がかかる。また、対候性を確保しない場合は、この可搬式店舗を使用できる天候が限定され、可搬式店舗のレイアウトを変更しながら中長期的に使用することも難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、需要の変化に応じて容易にレイアウト変更可能な建物構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建物は、外壁と屋根とを形成する外側構造体と、前記外側構造体の内側に複数配置され、ユニット部材で形成された内側構造体と、向かい合う前記内側構造体の間に形成された通路と、を備える。
【0008】
請求項1の建物は、外側構造体の内側に複数の内側構造体が配置された入れ子構造の建物である。そして、内側構造体は、ユニット部材で形成されている。このため、内側構造体は、在来工法で形成される構造体と比較して組み立て及び解体し易い。
【0009】
また、建物の外壁及び屋根は外側構造体によって形成されている。このため、内側構造体は、外側構造体の内側で、風雨に晒されない状態で組み立て及び解体できる。また、内側構造体を、風雨に晒される構造体と比較して軽微な構成とすることができる。
【0010】
さらに、内側構造体の間には通路が形成されている。すなわち、内側構造体同士が離間して配置されている。このため、内側構造体の組み立て及び解体の作業スペースを確保し易い。
【0011】
このように、内側構造体は、構造上及び施工上、組み立て及び解体し易い。このため、内側構造体による建物の改修が容易にできる。これにより、需要の変化に応じて、建物内部を容易にレイアウト変更できる。
【0012】
請求項2の建物は、請求項1に記載の建物において、前記外側構造体の前記外壁は耐火性を有し、前記屋根は不燃性を有している。
【0013】
請求項2の建物は、外側構造体の外壁が耐火性を有し、屋根が不燃性を有している。つまり、建物の耐火性及び不燃性を、外側構造体によって確保している。このため、内側構造体を、例えば木質構造とすることができる。すなわち、内側構造体の構造や仕上げ材の選択肢を拡げられる。
【0014】
請求項3の建物は、請求項1又は2に記載の建物において、前記外側構造体及び前記内側構造体は、鉄筋コンクリート造の基礎梁及びマットスラブの少なくとも一方に支持されている。
【0015】
請求項3の建物では、外側構造体及び内側構造体が、鉄筋コンクリート造の基礎梁及びマットスラブの少なくとも一方に支持されている。このため、例えば内側構造体を独立基礎で支持する場合と比較して、内側構造体のレイアウトの自由度を高くできる。また、例えば外側構造体の内側に搬入用のトラックを走行させることもできる。このため、内側構造体を改修する際に施工し易い。
【0016】
請求項4の建物は、請求項1又は2に記載の建物において、互いに隣り合う前記内側構造体がそれぞれ構造的に独立している。
【0017】
請求項4の建物は、互いに隣り合う内側構造体がそれぞれ構造的に独立している。このため、内側構造体により建物を増築・減築する場合、隣り合う内側構造体の使用に影響を与え難い。
【0018】
請求項4の建物は、請求項1~3に記載の建物において、互いに隣り合う前記内側構造体がそれぞれ構造的に独立していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、需要の変化に応じて容易にレイアウト変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る建物の構成を示す立断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る建物の外側構造体の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る建物の内側構造体の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る建物の内側構造体の配置を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る建物の基礎構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る建物について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0022】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0024】
<建物>
図1には、本発明の実施形態に係る建物10が示されている。建物10は、基礎20、外側構造体30及び内側構造体40を含んで形成されている。建物10は、外側構造体30を常設のスケルトンとして、内側構造体40を改修可能なインフィルとする、スケルトン・インフィル構造の建物である。
【0025】
(基礎)
基礎20は、外側構造体30及び内側構造体40を支持する鉄筋コクリート製の構造躯体である。図5にも示すように、基礎20は、外周基礎梁22、マットスラブ24、内側構造体基礎26及び内側構造体基礎28を備えて形成されている。
【0026】
外周基礎梁22は、建物10の外周に沿って形成された布基礎である。
【0027】
マットスラブ24は、外周基礎梁22の内側に形成されたスラブであり、外側構造体30及び内側構造体40を支持している。マットスラブ24は、厚さが200mm程度である。なお、マットスラブ24は、概ね500kg/m程度の耐荷重を備えていることが好ましく、この耐荷重を有するものであれば、厚さは200mm程度に限定されない。
【0028】
内側構造体基礎26は、マットスラブ24と一体化され、マットスラブ24の下方に突出した構造体である。内側構造体基礎26は、内側構造体40をマットスラブ24に固定するための部分である。また、内側構造体基礎26は、図4に一部を模式的に示すように、内側構造体40の設置が想定される位置に、内側構造体40の外形に沿うように略格子状に形成されている。
【0029】
外側構造体基礎28は、マットスラブ24及び外周基礎梁22と一体化され、マットスラブ24の下方に突出した構造体である。また、内側構造体基礎28は、外側構造体30における柱32Aをマットスラブ24に固定するための部分である。内側構造体基礎28は、柱32Aが配置される位置に形成されている。
【0030】
(打ち込みプレート)
マットスラブ24の上方には打増しコンクリート24Aが打設され、打増しコンクリート24Aにおける内側構造体基礎26の上方部分には、内側構造体40を固定するための打ち込みプレート50が埋設されている。打ち込みプレート50の上面は、打増しコンクリート24Aの上面と面一に構成されている。なお、この打増しコンクリート24Aは省略してもよく、この場合、打ち込みプレート50はマットスラブ24に埋設し、打ち込みプレート50の上面を、マットスラブ24の上面と面一に構成する。
【0031】
また、打ち込みプレート50の下面には、アンカーボルトB1の上端が溶接されている。アンカーボルトB1は、打ち込みプレート50に溶接された部分から下方に折り曲げられ、両端部がフック状に形成されている。内側構造体基礎26がマットスラブ24の下方に突出することで、アンカーボルトB1の定着長が確保されている。なお、アンカーボルトB1の両端部は、フック状に形成する態様に代えて、定着プレートを取り付ける態様としてもよい。
【0032】
打ち込みプレート50及びアンカーボルトB1は、内側構造体基礎26に沿って所定の間隔で配置されている。打ち込みプレート50及びアンカーボルトB1は、1つの内側構造体40あたり、4か所以上設置することが好ましい。
【0033】
(外側構造体)
図1に示すように、外側構造体30は、建物10の外壁及び屋根を形成する構造体であり、内側構造体40が風雨に晒されることを抑制している。外側構造体30は、フレーム32、外壁材34及び屋根材36を備えて形成されている。
【0034】
フレーム32は、一対の柱32A及び柱32Aに架け渡された梁32Bを備えて形成された、鉄骨製の門型フレームである。このうち、柱32Aは、下端部から上端部に亘って、柱32A同士の対向方向における幅が漸増する形状である。梁32Bは、中央部が両端部より高い位置に配置された屈曲形状である。
【0035】
なお、柱32A及び梁32Bの形状は、上記に限定されるものではない。例えば梁32Bは、柱32A間のスパンを広くする観点から、トラス梁としてもよい。また、柱32Aは下端部から上端部に亘って幅を同一に形成してもよいし、梁32Bも中央部と両端部との高さを一致してもよい。
【0036】
図4に示すように、フレーム32を形成する柱32Aは建物10の幅方向(X方向)において対向している。また、フレーム32は、建物10の奥行き方向(Y方向)に間隔を空けて複数配置されている。図5に示すように、柱32Aの下端部に形成されたベースプレート32Cは、内側構造体基礎28に埋設されたアンカーボルトB2を介して、内側構造体基礎28に固定されている。
【0037】
図2に示すように、互いに隣り合うフレーム32同士は、連結部材32Dを用いて連結されている。連結部材32Dは、柱32A同士及び梁32B同士を連結している。なお、連結部材32Dは、後述する間欠部36Aには配置されない。
【0038】
外壁材34は、サンドイッチパネル等の耐火性材料を用いて形成された、耐火性を有する壁体である。サンドイッチパネルは、例えば2枚のガルバリウム鋼板(登録商標)で断熱材を挟んで形成される。
【0039】
図1に示すように、外壁材34は、柱32Aの外周面に沿って上下方向に配置されている。また、外壁材34は、図4に示すように、柱32A間に亘って配置され、建物10の外壁を形成している。さらに、外壁材34は、図5に示すように、固定金物34Aを介して、柱32Aに固定されている。
【0040】
屋根材36は、ガルバリウム鋼板等の不燃材料を用いて形成された、不燃性を有する面材である。屋根材36は、図1に示すように、梁32Bの上面に沿って傾斜して配置され、梁32Bに固定されている。また、屋根材36は、建物10の屋根を形成している。
【0041】
図2に示すように、建物10の屋根には、部分的に屋根材36が配置されない部分としての間欠部36Aが形成されている。この間欠部36Aの下方には、陸屋根としてのスラブ36Bが配置されている。本実施形態において、スラブ36Bは、断熱パネル及びシート防水を用いて形成される乾式スラブであるが、これをコンクリートスラブとしてもよい。
【0042】
なお、本実施形態の外側構造体30はシステム建築を想定して記載している。しかし、本発明の実施形態はそれに限られるものではなく、例えば外側構造体30は在来工法によって形成してもよい。
【0043】
(内側構造体)
図1に示すように、内側構造体40は、外側構造体30の内側に複数配置された、箱状のユニット部材である。図3に示すように、内側構造体40は、床材42、天井材44及び壁材46をCLTやツーバイフォーパネルなどのユニット部材を組み合わせて構成した構造とされている。
【0044】
床材42及び天井材44は例えばCLTで形成され、壁材46を上下方向に挟んで配置されている。天井材44は、二点鎖線で示すように、壁材46の外側へ跳ね出すように形成することもできる。なお、後述するように、天井材44の上方に歩行空間を形成する場合は、天井材44が300kg/m程度の積載荷重に耐えられるように、内側構造体40を構成する。
【0045】
壁材46を形成するツーバイフォーパネルは、ツーバイフォー材46Aと、ツーバイフォー材46Aを挟んで配置されるパネル材46Bと、を用いて形成されるパネル材である。ツーバイフォー材46Aは、壁材46の面内方向に沿って所定の間隔で配置されている。パネル材46Bは、複数のツーバイフォー材46Aに固定された合板等の面材である。壁材46には、開口部46Cを適宜形成することができる。なお、ツーバイフォー材とは、断面形状が概ね38mm×89mmの既成角材である。壁材46は、ツーバイフォー材46A及びパネル材46Bを組み合わせた構成のほか、CLTを用いて形成してもよい。
【0046】
床材42、天井材44及び壁材46は、所定のモジュールに従った大きさで形成されている。このため、内側構造体40も、所定のモジュールに従った大きさで形成される。このため、複数の内側構造体40を連結した場合に、天井材44の高さや、壁材46の軸線が揃えて配置される。
【0047】
内側構造体40は、床材42、天井材44及び壁材46を組付けた状態で、搬入トラックなどを用いて外側構造体30の内側へ搬入される。但し、後述するホールダウン金物66(図5参照)をパネル材46Bの内側でツーバイフォー材46Aに固定する場合は、パネル材46Bを組み付けない状態で搬入してもよい。
【0048】
図4に示すように、内側構造体40は、外側構造体30の内側において、単独で又は連結して配置される。複数の内側構造体40を連結して配置する態様としては、建物10の奥行き方向(Y方向)に連結する態様、建物10の幅方向(X方向)に連結する態様、建物10の奥行き方向(Y方向)及び幅方向(X方向)に連結する態様、など、様々な態様を採用できる。
【0049】
複数の内側構造体40を連結して配置する場合においても、それぞれの内側構造体40における壁材46は省略されることなく設けられる。すなわち、内側構造体40は、それぞれ構造的に独立して形成されている。
【0050】
図5に示すように、内側構造体40は、接合部材60を用いて、基礎20の内側構造体基礎26及びマットスラブ24に固定される。
【0051】
具体的には、接合部材60は、座金62、ボルト64及びホールダウン金物66を備えて形成されている。このうち、床材42を貫通して配置されるボルト64の下端は座金62に溶接され、ボルト64の上端はホールダウン金物66に挿通される。ホールダウン金物66は、内側構造体40に固定される。
【0052】
内側構造体40を内側構造体基礎26に固定する際には、座金62を打ち込みプレート50の上面に溶接する。そして、内側構造体40を上方から吊下げて打増しコンクリート24Aに載置する。この際、床材42に形成された貫通孔に、ボルト64を挿通する。
【0053】
次に、ホールダウン金物66を内側構造体40に固定する。この際、ボルト64をホールダウン金物66に形成された貫通孔に挿通した状態で固定する。そして、ボルト64にナット68を捩じ込んでホールダウン金物66を下方に引寄せることにより、内側構造体40が内側構造体基礎26及びマットスラブ24に固定される。
【0054】
なお、内側構造体40を撤去する際は、ナット68を取り外し、内側構造体40を撤去してから、座金62と打ち込みプレート50との溶接部分を切り離す。打ち込みプレート50は残置する。撤去した内側構造体40を、仮に同形状の内側構造体40と入れ替える場合は、座金62及びボルト64を残置できる。
【0055】
図1に示すように、内側構造体40は、上下方向に重ねて複層で用いてもよいし、上下方向に重ねないで単層で用いてもよい。内側構造体40を上下方向に重ねる場合は、上方の階(例えば2階)部分に、壁及び天井を形成できる。また、内側構造体40を上下方向に重ねない場合でも、内側構造体40の天井材44の上方に、歩行空間を形成することができる。
【0056】
すなわち、内側構造体40を上下方向に重ねるか否かに関わらず、建物10の内部空間(外側構造体30に囲まれた空間)には、少なくとも1階及び2階を形成することができる。天井材44の上方に、歩行空間を形成する場合は、必要に応じて、適宜手すりを設けることが好ましい。
【0057】
建物10の内部空間に2階を形成する場合は、図4に示すように、階段70やエレベータ72等を配置する。また、内側構造体40同士を、ブリッジ74A、74B及び74C等を用いて連結することで、2階に一体的な連続した空間を形成することができる。
【0058】
ブリッジ74A、74B及び74Cは、図3を用いて説明したように、天井材44を内側構造体40から跳ね出して形成できる。なお、このように跳ね出して形成した天井材44によって形成されたブリッジと、連結される内側構造体40とは、エキスパンションジョイント(図示略)を用いて連結することが好ましい。これにより、内側構造体40同士の地震時における挙動差を吸収することができる。
【0059】
また、建物10の内部空間の1階部分において、向かい合う内側構造体40の間には、矢印で示すように、通路N1、N2及びN3が形成されている。通路N3及びブリッジ74Bのように、通路の上方にはブリッジを配置してもよい。
【0060】
さらに、内側構造体40は、外側構造体30と離間して配置され、内側構造体40と外側構造体30との間にも通路が形成されている。内側構造体40と外側構造体30との離間する間隔は、必ずしも歩行者が通れる間隔である必要はないが、少なくとも、内側構造体40と外側構造体30とが連結されておらず、構造的に縁切りされていることが好ましい。
【0061】
(その他の構成)
図1に示すように、建物10の内部空間は、床置き型のパッケージエアコン80を用いて空調される。パッケージエアコン80の室外機82は、スラブ36B上、すなわち、屋外に配置される。パッケージエアコン80を用いることで、内側構造体40の内部及び外部を空調(全館空調)しつつ、マルチエアコンと比較してダクトの数を減らすことができる。
【0062】
図2に示すように、外壁材34には複数の開口部が形成されているが、そのうちの少なくとも一つの開口部34Bは、トラック(例えば4トントラック)や揚重用の重機が走行可能な掃き出し開口部である。このような開口部を形成することで、内側構造体40を撤去したり搬入したりする際に、トラックを建物10の内部空間まで案内することができる。
【0063】
<作用及び効果>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る建物10は、外側構造体30の内側に複数の内側構造体40が配置された入れ子構造の建物である。そして、内側構造体40は、ユニット部材で形成されている。このため、内側構造体40は、在来工法で形成される構造体と比較して組み立て及び解体し易い。
【0064】
また、建物の外壁(外壁材34)及び屋根(屋根材36)は外側構造体30によって形成されている。このため、内側構造体40は、外側構造体30の内側で、風雨に晒されない状態で、組み立て及び解体できる。また、内側構造体40を、風雨に晒される構造体と比較して軽微な構成とすることができる。
【0065】
さらに、図4に示すように、内側構造体40の間には、複数の通路(例えば通路N1、N2及びN3)が形成されている。すなわち、内側構造体40同士が離間して配置されている。このため、内側構造体40の組み立て及び解体の作業スペースを確保し易い。
【0066】
このように、内側構造体40は、構造上及び施工上、組み立て及び解体し易い。このため、内側構造体40による建物10の改修が容易にできる。これにより、需要の変化に応じて、建物内部を容易にレイアウト変更できる。
【0067】
例えば建物10を商業建築として内部空間に複数のテナントを誘致する場合、テナントの入れ替えに応じて内側構造体40を入れ替えることができる。また、テナントの拡大に応じて内側構造体40を増やすこともできる。
【0068】
また、建物10は、外側構造体30の外壁を形成する外壁材34が耐火性を有し、屋根を形成する屋根材36が不燃性を有している。つまり、建物10の耐火性及び不燃性を、外側構造体30によって確保している。このため、内側構造体40を木質構造とすることができる。あるいは、内側構造体40を鉄骨造のユニット部材で構成することもできる。すなわち、内側構造体の構造や仕上げ材の選択肢を拡げられる。
【0069】
また、建物10では、外側構造体30及び内側構造体40が、マットスラブ24に支持されている。このため、例えば内側構造体40を独立基礎で支持する場合と比較して、内側構造体40のレイアウトの自由度を高くできる。また、外側構造体30の内側に搬入用のトラックや揚重用の重機を走行させることもできる。このため、内側構造体40を改修する際に施工し易い。
【0070】
また、建物10は、互いに隣り合う内側構造体40がそれぞれ構造的に独立している。このため、内側構造体40を増やして又は減らして建物10を改修する場合、隣り合う内側構造体40の使用に影響を与え難い。
【0071】
また、建物10では、内側構造体40を基礎20に固定する打ち込みプレート50及びアンカーボルトB1が、マットスラブ24の下方へ突出した内側構造体基礎26に沿って所定の間隔で配置されている。また、内側構造体基礎26は、内側構造体40の設置が想定される位置に、内側構造体40の外形に沿うように形成されている。
【0072】
すなわち、内側構造体40の有無に関わらず、内側構造体40の設置が想定される位置に、打ち込みプレート50が配置されている。これにより、内側構造体40を容易に増設できる。また、内側構造体40を増設する際に、打ち込みプレート50の配置に従って増設できるため、建物10の内部空間を整然と構成することもできる。
【0073】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、マットスラブ24に、マットスラブ24の下方へ突出する内側構造体基礎26を形成している。この内側構造体基礎26は、内側構造体40の設置が想定される位置に、内側構造体40の外形に沿うように形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0074】
すなわち、内側構造体基礎26は、任意の位置に設置できる。例えば内側構造体40のレイアウトの自由度を高める観点から、内側構造体40の平面視での大きさより細かい間隔で配置してもよい。
【0075】
また、内側構造体基礎26は省略することもできる。この場合、例えば打ち込みプレート50の平面視での寸法を大きくして、アンカーボルトB1の本数を多くする。これにより、アンカーボルトB1の1本あたりの長さを短くできるので、マットスラブ24の厚みの範囲内にアンカーボルトB1の定着長を確保できる。アンカーボルトB1の定着長を確保するために、マットスラブ24の厚みを適宜調整してもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、内側構造体40を「箱状の」ユニット部材として説明しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば内側構造体40を「板状の」ユニット部材を組み合わせて形成した構造体と解釈することもできる。
【0077】
つまり、床材42、天井材44及び壁材46のそれぞれをユニット部材と見做し、これらを外側構造体30の内側に搬入後組み付けて形成された内側構造体40も、本発明の内側構造体に含まれる。
【0078】
また、上記実施形態においては、外側構造体30において耐火性及び不燃性を確保して内側構造体40を木質構造としているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば内側構造体40を鉄骨や不燃性のパネル材を用いて耐火性及び不燃性を確保すれば、必ずしも外側構造体30に耐火性及び不燃性を確保する必要はなく、構造や仕上げ材の選択肢を広げることができる。
【0079】
すなわち、本発明では、外側構造体30によって内側構造体40が風雨に晒されることを抑制できれば、耐火性及び不燃性は外側構造体30及び内側構造体40のどちらで確保してもよい。さらに、建物10の立地等に応じて、必ずしも耐火性及び不燃性を確保しなくてもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、外側構造体30及び内側構造体40が、マットスラブ24に支持されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば基礎20を、鉄筋コンクリート造の基礎梁として、基礎梁間にスラブ(マットスラブ24より薄いスラブ)を架け渡す構成としてもよい。基礎梁の耐荷重を適切に設定すれば、マットスラブ24を用いなくても、搬入用のトラックを外側構造体30の内側へ案内できる。
【符号の説明】
【0081】
10 建物
24 マットスラブ
30 外側構造体
34 外壁材(外壁)
36 屋根材(屋根)
40 内側構造体(ユニット部材)
42 床材(ユニット部材)
44 天井材(ユニット部材)
46 壁材(ユニット部材)
N1 通路
N2 通路
N3 通路
図1
図2
図3
図4
図5