(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068944
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ステム抜き具
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179642
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
(72)【発明者】
【氏名】古谷 弘幸
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202CA21
4F202CU01
4F202CU07
4F202CU20
4F202CV10
(57)【要約】
【課題】 金型をコンテナに取り付けた状態でステムを金型から引き抜くことが可能なステム抜き具を提供する。
【解決手段】 ステム抜き具は、金型の成形面から飛び出したスプリングベントプラグのステムの頭部を保持可能な保持部を備える。斯かる構成によれば、保持部でステムの頭部を保持した状態でステム抜き具をタイヤ径方向の内側に引っ張ることによって、ステムを金型の成形面側から引き抜くことができる。これにより、金型をコンテナに取り付けた状態でステムを金型から引き抜くことができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の成形面から飛び出したスプリングベントプラグのステムの頭部を保持可能な保持部を備える、ステム抜き具。
【請求項2】
前記保持部が取り付けられる本体部を備え、
前記保持部は、前記ステムの頭部を掴むことが可能なアームと、前記アームで前記ステムの頭部を掴んだ状態で前記本体部に前記アームを固定する固定部と、を備える、請求項1に記載のステム抜き具。
【請求項3】
前記保持部による前記ステムの頭部の保持前に前記ステムの頭部と吸着可能な磁石を備える、請求項1又は2に記載のステム抜き具。
【請求項4】
前記保持部が取り付けられる本体部と、
使用者に把持される把持部と、
前記本体部と前記把持部とを揺動可能に連結する連結部と、を備え、
前記磁石は、前記本体部に取り付けられている、請求項3に記載のステム抜き具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型からスプリングベントプラグのステムを引き抜くためのステム抜き具に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型には、タイヤの外表面を成形する成形面に多数の排気孔が設けられている。排気孔は、金型の内部と外部に通じ、加硫成形時にタイヤの外表面と成形面との間の空気を排出させ、それによりベアと呼ばれる凹み傷の発生を防止する。加硫成形時にはタイヤの外表面のゴムが排気孔に流入するため、加硫済みタイヤの外表面には、スピューと呼ばれる多数のゴム突起が形成される。これに対し、排気孔にスプリングベントプラグを装着することによりスピューの形成を防ぐ手法が知られている。
【0003】
スプリングベントプラグとして、排気路を内部に有する円筒状のハウジングと、ハウジングに挿入されて排気路を開閉する頭部を成形面側の端部に有するステムと、該ステムを成形面側へ付勢するスプリングとを有する、スプリングベントプラグが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スプリングベントプラグには、タイヤの加硫成形を繰り返すうちにステムとハウジングとの間にゴムカスが固着する場合がある。このゴムカスの固着は、スプリングベントプラグの頭部の開閉の妨げとなる。特許文献1には、スプリングベントプラグのゴムカスを超音波振動で除去する洗浄装置及び洗浄方法が開示されている。ステムに超音波振動を加えることによって、ステム、ハウジング及びスプリングがそれぞれ振動し、これらに固着したゴムカスが除去される。
【0005】
ところで、そのような洗浄時やスプリングベントプラグの点検時において、ステムが正常に動作していない場合、そのステムを交換することがあった。ステムの交換のためにステムを金型から抜く作業は、金型の成形面と反対側から排気孔に棒状具を挿入して、棒状具でステムを押し抜く作業が一般的であった。そのため、ステムの交換の際、金型をコンテナから取り外す必要が生じ、作業が煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、金型をコンテナに取り付けた状態でステムを金型から引き抜くことが可能なステム抜き具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のステム抜き具は、金型の成形面から飛び出したスプリングベントプラグのステムの頭部を保持可能な保持部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】同実施形態に係るステム抜き具でステムの頭部を保持した状態を示す縦断面図
【
図7】ステム抜き具の使用方法を説明するための縦断面図
【
図8】他の実施形態に係るステム抜き具の
図5に相当する矢視図
【
図9】他の実施形態に係るステム抜き具の
図6に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[加硫装置]
まずは、タイヤ加硫金型10を有する加硫装置100の構成の一例について、
図1を参照しながら説明する。なお、各図(
図2~
図9も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1は、タイヤ子午線断面に沿った加硫装置100の断面を示す。
【0011】
図1に示すように、加硫装置100は、タイヤ加硫金型10(以下、単に「金型10」と呼ぶ場合がある)と、金型10を保持するコンテナ20と、を備えている。
図1に示す金型10は、型閉め状態である。タイヤTは、タイヤ軸方向を上下に向けてセットされる。
図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。
【0012】
金型10は、キャビティ15にセットされたタイヤTの外表面に接する成形面10aを備える。成形面10aには、金型10の内部(キャビティ15)と外部とを連通させる排気孔16が設けられている。加硫成形時には、排気孔16を通じてタイヤTと成形面10aとの間の空気が排出される。排気孔16には、スプリングベントプラグ9が装着されている。
【0013】
金型10は、タイヤTのトレッドを成形するトレッド型11と、タイヤTのサイドウォールを成形するサイド型12,13と、タイヤTのビード部が嵌合されるビードリング14,14とを備えている。トレッド型11は、タイヤ周方向に分割された複数のセクターで構成されており、型閉め状態ではそれらが寄り集まって環状に連なっている。成形面10aは、トレッド型11の内面と、サイド型12,13の内面とを含んでいる。図示を省略しているが、トレッド型11の内面には、タイヤTのトレッド面に溝を形成するための凸部と、ブロックなどの陸部を形成するための凹部が設けられている。
図1では、トレッド型11の内面で開口する1本の排気孔16しか描いていないが、実際には、トレッド型11やサイド型12,13の内面で開口する多数の排気孔が設けられている。
【0014】
コンテナ20は、トレッド型11のセクターの各々に対応して設けられた複数のセグメント201と、セグメント201のタイヤ径方向の外側に配置されたアウターリング202と、を備えている。トレッド型11は、セグメント201によって保持されている。セグメント201の外周面及びそれに係合するアウターリング202の内周面は、互いに同じ傾斜を有するテーパ面である。これらのテーパ面は、それぞれ下方に向かってタイヤ径方向の外側に傾斜している。トレッド型11は、アウターリング202の昇降に伴ってタイヤ径方向に移動自在に構成されている。
【0015】
コンテナ20は、上側のサイド型12を支持する上側プラテン203と、下側のサイド型13を支持する下側プラテン204と、アウターリング202を支持する支持アーム205とを備えている。上側プラテン203は、昇降可能に構成されている。上側プラテン203の下面には、セグメント201がタイヤ径方向に沿って摺動可能に支持されている。支持アーム205は、上側プラテン203の上面に立設されたガイド206に昇降可能に取り付けられている。ガイド206に対して支持アーム205が相対的に昇降することで、セグメント201に対してアウターリング202が相対的に昇降し、セグメント201に保持された各セクターがタイヤ径方向に移動する。
【0016】
[スプリングベントプラグ]
次に、スプリングベントプラグ9(以下、単に「ベントプラグ9」と呼ぶ場合がある)の構成の一例について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、
図1の領域IIの拡大図を示している。
図2において、上方向がタイヤ径方向内側であり、下方向がタイヤ径方向外側である(
図3、
図4、
図7も同様)。
【0017】
図2に示すように、ベントプラグ9は、内部に排気路94が形成される筒状のハウジング91と、ハウジング91に挿入されたステム92と、排気路94を開放するようにステム92を成形面10a側に付勢するスプリング93と、を備えている。
【0018】
ハウジング91は、成形面10aに対して固定されている。具体的には、ハウジング91は、締まり嵌めによって排気孔16に圧入されている。ハウジング91は、筒状のハウジング本体911と、排気路94を開閉するための弁座912と、スプリング93を支持する支持部913と、を備えている。
【0019】
弁座912は、ハウジング本体911の成形面10a側の端部に設けられている。弁座912は、成形面10a側に向かって拡径するテーパ状に形成されている。支持部913は、ハウジング本体911の成形面10aと反対側(反成形面側)の端部に設けられている。支持部913は、ハウジング本体911の内面から内側に突出した円環状に形成されている。
【0020】
ステム92は、鉄などの磁性材料によって形成されている。ステム92は、ハウジング91の中心線方向に延びる円柱状の軸部921と、スプリング93によって成形面10a側に付勢される拡径部922と、排気路94を開閉するための頭部923と、ステム92がハウジング91から抜け落ちることを防止するストッパー924と、を備えている。
【0021】
軸部921の外径は、支持部913の内径よりも若干小さい。拡径部922は、軸部921と頭部923との間に設けられている。拡径部922は、軸部921よりも外径の大きい円柱状に形成されている。
【0022】
頭部923は、ステム92の成形面10a側の端部に設けられている。頭部923は、成形面10a側に向かって拡径した円錐台形状に形成されている。頭部923の側面は、弁座912の面と実質的に平行である。
【0023】
ストッパー924は、ステム92の反成形面側の端部に設けられている。ストッパー924は、反成形面側に向かって縮径した円錘状に形成されている。ストッパー924の最大外径は、軸部921の外径や支持部913の内径よりも大きい。これにより、ストッパー924が支持部913に引っ掛かり、ステム92がハウジング91から抜け落ちない。ステム92を引き(押し)抜いた場合、ストッパー924が変形して支持部913を通過する。
【0024】
排気路94は、ハウジング91の内周面とステム92の外周面とによって円環状に形成されている。
図2は、ステム92の頭部923がスプリング93によって押し上げられ、排気路94が開放された状態を示している。排気路94が開放された状態において、頭部923は、金型10の成形面10aよりもキャビティ15に向かって飛び出している。なお、後述するステム抜き具1を用いることが可能なベントプラグ9は、上記構成に限られない。
【0025】
[ステム抜き具]
次に、ステム抜き具1の構成の一例について、
図3~
図6を参照しながら説明する。
図3は、ステム抜き具1の縦断面図である。
図4は、ステム抜き具1でステム92の頭部923を保持した状態を示す縦断面図である。
【0026】
図3及び
図4に示すように、ステム抜き具1は、金型10の成形面10aから飛び出したベントプラグ9のステム92の頭部923を保持可能な保持部2を備えている。斯かる構成によれば、保持部2でステム92の頭部923を保持した状態でステム抜き具1をタイヤ径方向の内側に引っ張ることによって、ステム92を金型10の成形面10a側から引き抜くことができる。これにより、金型10をコンテナ20(
図1参照)に取り付けた状態でステム92を金型10(ハウジング91)から引き抜くことができる。その結果、金型10をコンテナ20から取り外す作業を省略することができ、ステム92の交換作業を容易にすることができる。本実施形態においては、ステム92と同時にスプリング93も引き抜いて、交換している。なお、ステム抜き具1でステム92を動かすことによって、ステム92が正常な動作に戻る場合もある。その場合は、ステム92の交換を見送ってもよい。
【0027】
保持部2は、ステム92の頭部923の側面を保持可能に構成されている。保持部2は、本体部3に対して径方向D2に相対移動可能に構成されている。ステム92の径方向D2の外側から内側に向かって保持部2を移動させることによって、ステム92を保持部2で保持可能である。
【0028】
ステム抜き具1は、保持部2が取り付けられる本体部3を備えていることが好ましい。本体部3は、棒状に形成されている。本実施形態において、本体部3は、丸棒状に形成されているが、これに限られない。例えば、本体部3は、角棒状に形成されていてもよい。保持部2及び本体部3は、硬質材料(例えば、金属)で形成されている。
【0029】
本体部3の中心線Lcの延びる方向を中心線方向D1とし、中心線Lcと直交すると共に中心線Lcから放射状に延びる方向を径方向D2とし、中心線Lc周りの方向を周方向D3とする。中心線方向D1の一方(成形面10aに近づく方向)は、
図3及び
図4の下方を示し、中心線方向D1の他方(成形面10aから離れる方向)は、
図3及び
図4の上方を示す。径方向D2の内側は、中心線Lcに近づく方向を示し、径方向D2の外側は、中心線Lcから離れる方向を示す。
【0030】
保持部2は、ステム92の頭部923を掴むことが可能なアーム21と、ステム92を保持した状態で本体部3にアーム21を固定する固定部22と、を備えていることが好ましい。斯かる構成によれば、アーム21でステム92の頭部923を掴むと共に固定部22で本体部3にアーム21を固定することによって、ステム92を保持部2で保持することができる。その状態でステム抜き具1をタイヤ径方向の内側に引っ張ることによって、ステム92を金型10の成形面10a側から引き抜くことができる。保持部2は、アーム21を固定部22に向かって付勢する弾性部材23をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
アーム21は、ステム92の頭部923を不保持の不保持位置X1(
図3参照)と、ステム92の頭部923を保持した保持位置X2(
図4参照)と、に移動可能である。アーム21は、本体部3に対して径方向D2の内側に相対移動することによって、不保持位置X1から保持位置X2へ移動する。これにより、ステム92の頭部923の側面をアーム21で掴むことができる。アーム21は、本体部3に対して径方向D2の外側に相対移動することによって、保持位置X2から不保持位置X1へ移動する。
【0032】
本実施形態において、アーム21は、不保持位置X1から保持位置X2への移動において、本体部3に対して中心線方向D1の一方側にさらに相対移動する。アーム21は、保持位置X2から不保持位置X1への移動において、本体部3に対して中心線方向D1の他方側にさらに相対移動する。なお、アーム21の移動は、これに限られない。
【0033】
本実施形態において、アーム21の向き(姿勢)は、不保持位置X1と保持位置X2とにおいて実質的に同じであるが、これに限られない。例えば、アーム21は、本体部3に対して揺動可能であり、アーム21の向き(姿勢)は、不保持位置X1と保持位置X2とで異なっていてもよい。アーム21が揺動可能な場合、アーム21は、例えば、アーム21と弾性部材23との接触部を支点として径方向D2に沿って揺動する。アーム21は、本体部3に揺動可能に取り付けられていてもよい。
【0034】
図5は、
図3のV方向の矢視図である。
図6は、
図4のVI-VI線断面図である。
図5及び
図6に示しように、アーム21は、複数設けられ、周方向D3に沿って均等に配置されていることが好ましい。本実施形態において、アーム21は、3つ設けられているが、これに限られない。
【0035】
図3及び
図4に示すように、アーム21は、鉤状に形成されている。アーム21は、アーム本体211と、ステム92の頭部923を保持するための爪部212と、弾性部材23によって中心線方向D1の他方側に付勢される被付勢部213と、を備えている。爪部212は、アーム21の中心線方向D1の一方側の端部に設けられ、被付勢部213は、アーム21の中心線方向D1の他方側の端部に設けられている。
【0036】
アーム本体211は、中心線方向D1に延びる円弧柱状に形成されている。アーム本体211の径方向D2の厚みは、被付勢部213から爪部212に向かって漸増している。アーム本体211の内面211aは、本体部3の外面3aと実質的に平行である。アーム本体211の外面211bは、中心線方向D1の一方に向かって径方向D2の外側に傾斜している。
【0037】
爪部212は、アーム本体211の内面211aから径方向D2の内側に突出した形状である。爪部212の中心線方向D1の厚みは、径方向D2の内側に向かって漸減している。本実施形態において、爪部212は、断面略三角形状であるが、これに限られない。
【0038】
爪部212は、中心線方向D1の一方に向かって径方向D2の内側に傾斜する傾斜面212aを備えている。保持位置X2において、傾斜面212aは、ステム92の頭部923の側面と当接する。傾斜面212aは、ステム92の頭部923の側面に沿った形状であることが好ましい。本実施形態において、傾斜面212aは、凹曲面状に形成されているが、これに限られない。例えば、傾斜面212aは、平面状に形成されていてもよく、凸曲面状に形成されていてもよい。
【0039】
不保持位置X1において、複数のアーム21の爪部212によって形成される円環の内径Dm1は、ステム92の頭部923の最大外径Dm2と実質的に同じ又はよりも大きい(
図3参照)。保持位置X2において、内径Dm1は、最大外径Dm2よりも小さい(
図4参照)。
【0040】
爪部212の中心線方向D1の一方側の端面212bは、平面状に形成されているが、これに限られない。例えば、端面212bは、成形面10aに沿った形状(凸曲面状)に形成されていてもよい。
【0041】
被付勢部213は、アーム本体211の内面211aから径方向D2の内側に突出した形状である。複数の被付勢部213によって形成される円環の内径は、本体部3の外径よりも大きい。本実施形態において、被付勢部213は、断面長方形状に形成されていが、これに限られない。
【0042】
固定部22は、アーム21及び本体部3に対し相対移動可能なように本体部3に取り付けられている。固定部22は、アーム21を非固定の非固定位置X3(
図3参照)と、アーム21を本体部3に固定する固定位置X4(
図4参照)と、に移動可能である。固定部22の位置が非固定位置X3にあるときに、アーム21の位置は、不保持位置X1である。固定部22の位置が固定位置X4であるときに、アーム21の位置は、保持位置X2である。本実施形態において、本体部3は、固定部22に挿通されている。固定部22は、中心線方向D1に沿って移動可能である。固定部22は、非固定位置X3においてアーム21よりも中心線方向D1の他方側に配置されている。
【0043】
本実施形態において、固定部22は、固定位置X4においてアーム21を固定部22の内部に収容している。固定部22は、アーム21が収容される固定部本体221と、本体部3に取り付けるための取付部222と、を備えている。
【0044】
固定部本体221は、筒状に形成されている。本実施形態において、固定部本体221は、円筒状に形成されているが、これに限られない。例えば、固定部本体221は、角筒状に形成されていてもよい。固定部本体221の内径Dm3は、不保持位置X1におけるアーム21によって形成される円環の最大外径Dm4よりも小さい。
【0045】
アーム21は、固定部本体221の内面221aを摺動する。固定部22を非固定位置X3から固定位置X4に移動させた際、アーム21は、固定部本体221の内面221aを摺動すると共に爪部212が径方向D2の内側に移動する。固定部22を固定位置X4から非固定位置X3に移動させた際、アーム21は、弾性部材23の復元力によって固定部本体221の内面221aを摺動すると共に爪部212が径方向D2の外側に移動する。
【0046】
固定部22の位置が固定位置X4にあるときに、アーム21は、固定部22(固定部本体221)に実質的に収容されている。固定部22の位置が非固定位置X3にあるとき、少なくともアーム21の被付勢部213は、固定部22に収容されている。即ち、被付勢部213は、固定部22に常に収容されている。
【0047】
取付部222は、固定部本体221の内面221aから径方向D2の内側に突出した形状である。本実施形態において、取付部222は、内鍔状に形成されている。取付部222は、固定部22の中心線方向D1の他方側の端部に設けられている。取付部222の内径は、本体部3の外径と実質的に同じ又はよりも若干大きい。
【0048】
取付部222は、非固定位置X3において、取付部222の内径よりも外径の大きい部材(本実施形態においては、後述する連結部6)と接触している。これにより、固定部22が本体部3から外れることを防止できる。また、取付部222をそのような部材と接触させることによって、非固定位置X3における固定部22のがたつきを抑制できる。
【0049】
図5及び
図6に示すように、固定部22は、アーム21の移動をガイドする複数のガイド部223を備えていることが好ましい。ガイド部223は、アーム21,21同士の間に設けられている。ガイド部223は、取付部222よりも中心線方向D1の一方側に設けられている。本実施形態において、ガイド部223は、取付部222から固定部本体221の中心線方向D1の一方端まで延びている。ガイド部223の個数は、アーム21の個数と同じである。
【0050】
ガイド部223は、固定部本体221の内面221aから径方向D2の内側に突出した形状である。本実施形態において、ガイド部223は、円弧柱状に形成されている。これにより、アーム21をガイド部223に沿って移動させることができ、アーム21が周方向D3に倒れることを抑制できる。
【0051】
ガイド部223の周方向D3の側面223aは、アーム21の周方向D3の側面21aと実質的に平行である。固定部22が非固定位置X3にあるときに、ガイド部223の側面223aは、アーム21の側面21aと隙間が設けられている(
図5参照)。これにより、アーム21の爪部212を径方向D2の内側に移動させることができる。なお、固定部22、固定部本体221、取付部222、ガイド部223は、上記に限られない。
【0052】
図3及び
図4に示すように、弾性部材23は、固定部22に向かってアーム21を付勢するように設けられている。弾性部材23は、被付勢部213と本体部3に固定された部材(本実施形態においては、後述する磁石4)との間に設けられている。本実施形態において、弾性部材23は、圧縮コイルスプリングであるが、これに限られない。例えば、弾性部材23は、復元力を有する合成樹脂や合成ゴムなどであってもよい。なお、弾性部材23を引張コイルスプリングやトーションスプリングなどとし、弾性部材23を取り付ける部材をさらに設けてもよい。
【0053】
ステム抜き具1は、保持部2によるステム92の頭部923の保持前にステム92の頭部923と吸着可能な磁石4を備えていることが好ましい。斯かる構成によれば、磁石4でステム92の頭部923を吸着することによって、保持部2の位置を頭部923を保持するための位置に合わせやすくなり、保持部2による頭部923の保持を容易にすることができる。これにより、金型10からステム92を引き抜くことが容易になる。また、磁石4を設けることによって、金型10(ハウジング91)からステム92が抜けないか否かのステム92の抜けチェックやステム92の動作確認をステム抜き具1で行うことができる。
【0054】
磁石4は、ネオジム磁石であることが好ましい。これにより、磁石4でステム92を吸着しやすくなる。磁石4としては、サマリウムコバルト磁石やフェライト磁石などを用いることもできる。
【0055】
磁石4は、本体部3の中心線方向D1の一方端に取り付けられて(固定されて)いる。磁石4は、円柱状に形成されている。磁石4の外径は、ステム92の頭部923の最大外径よりも大きいことが好ましい。これにより、磁石4が頭部923に吸着しやすくなる。磁石4の中心線方向D1の長さは、アーム21の中心線方向D1の長さよりも小さい。磁石4の内径は、ガイド部223の内径よりも小さい(
図5参照)。
【0056】
本実施形態において、磁石4の中心線方向D1の一方側の端面4aは、平面状であるが、これに限られない。例えば、磁石4の端面4aは、成形面10aに沿った形状(凸曲面状)であってもよい。磁石4は、不保持位置X1の爪部212よりも中心線方向D1の一方側に飛び出していることが好ましい。これにより、磁石4がステム92の頭部923に吸着しやすくなる。
【0057】
磁石4は、中心線方向D1の他方側に向かって拡径するテーパ面4bを備えている。テーパ面4bは、磁石4の中心線方向D1の一方側の端部に設けられている。テーパ面4bのテーパ角度は、ステム92の頭部923のテーパ角度と実質的に同じであることが好ましい。
【0058】
テーパ面4bは、爪部212の傾斜面212aと常に接触している。これにより、弾性部材23の中心線方向D1の他方側への付勢力によって、アーム21は、径方向D2の外側にも付勢される。その結果、固定部22を固定位置X4から非固定位置X3に移動したときに、アーム21は、磁石4を介した弾性部材23の付勢力によって保持位置X2から不保持位置X1に移動する。なお、他の弾性部材を用いることによって、アーム21を径方向D2の外側に向かって付勢してもよい。
【0059】
ステム抜き具1が磁石4を備えない場合、ステム抜き具1は、磁石4と同形状の部材を備え、その部材が本体部3の中心線方向D1の一方端に取り付けられていることが好ましい。
【0060】
固定部22を非固定位置X3から固定位置X4に移動させたときに、アーム21は、固定部本体221の内面221aに沿って径方向D2の内側に移動すると共に磁石4のテーパ面4bによって中心線方向D1の一方側に移動する。これにより、磁石4に吸着したステム92の頭部923を中心線方向D1の他方側に引っ張ると共に頭部923をアーム21で保持することができる。
【0061】
ステム抜き具1は、使用者に把持される把持部5を備えていることが好ましい。把持部5は、本体部3よりも中心線方向D1の他方側に設けられている。把持部5は、使用者が把持しやすい形状に形成されていることが好ましい。本実施形態において、把持部5は、本体部3と実質的に同じ丸棒状に形成されているが、これに限られない。把持部5の中心線方向D1の長さは、本体部3の中心線方向D1の長さよりも長い。把持部5は、本体部3と別体に形成されているが、本体部3と一体に形成されていてもよい。
【0062】
ステム抜き具1は、本体部3と把持部5とを少なくとも一方向に揺動可能に連結する連結部6を備えていることが好ましい。斯かる構成によれば、磁石4をステム92に近づけた際、本体部3が把持部5に対して揺動する。これにより、金型10の成形面10aに沿って曲面状に配置されたステム92の頭部923に磁石4を吸着させやすくなる。その結果、保持部2によるステム92の頭部923の保持がしやすくなり、ステム92を引き抜くことが容易になる。
【0063】
連結部6は、本体部3の中心線方向D1の他方端と把持部5の中心線方向D1の一方端とを連結している。連結部6としては、例えば、ボールジョイントやユニバーサルジョイントなどが挙げられる。
【0064】
ステム抜き具1は、ステム92に衝撃を与える衝撃付与部7を備えているという構成であってもよい。衝撃付与部7は、把持部5の中心線方向D1の他方側の端部に取り付けられている。斯かる構成によれば、衝撃付与部7によって把持部5などを介してステム92に衝撃を与えることができる。これにより、ステム92が抜け難いときなどにステム92に衝撃を与えることによって、例えば、ステム92からゴムカスの一部が取れて、ステム92が抜けやすくなる。
【0065】
衝撃付与部7は、把持部5に打撃を与える打撃部71と、把持部5をスライド可能なスライド部72と、を備えている。打撃部71は、円柱状に形成されている。打撃部71は、磁石であることが好ましい。この場合、把持部5は、磁性材料であることが好ましい。これにより、打撃部71と把持部5とに吸引力が生じるので、把持部5に打撃を与えやすくなる。また、打撃部71を把持部5に吸着させることができ、非打撃時に、衝撃付与部7が把持部5から外れることを抑制できる。スライド部72は、筒状に形成されている。
【0066】
[ステム抜き具の使用方法]
次にステム抜き具1の使用方法の一例について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、ステム抜き具1の使用方法を説明するための縦断面図である。
【0067】
図7に示すように、まずは、金型10の成形面10a側からステム抜き具1をステム92の頭部923に近づけ(
図7(a))、磁石4をステム92の頭部923に吸着させる(
図7(b))。なお、
図7(b)の吸着後に、磁石4とステム92とが離れない程度にステム抜き具1でステム92をタイヤ径方向に引っ張ってもよい。これにより、ステム92の成形面10aから飛び出し高さが大きくなり、アーム21でステム92の頭部923を掴み(保持し)やすくなる。
【0068】
次に、固定部22を中心線方向D1の一方側に移動させると共にアーム21を成形面10aと接触させる(
図7(c))。その際、磁石4によってステム92が中心線方向D1の他方に引き上げられると共にアーム21の爪部212によってステム92の頭部923が掴まれる。
【0069】
そして、固定部22を固定位置X4まで移動させて、アーム21でステム92の頭部923を保持させる(
図7(d))。最後に、ステム抜き具1をタイヤ径方向の内側(
図7の上側)に引っ張る。これにより、ステム抜き具1によって金型10の成形面10a側からステム92を引き抜くことができる。
【0070】
本実施形態において、固定部22の移動は、手動であるが、これに限られない。例えば、固定部22を中心線方向D1に移動させる機構を設けて、把持部5での操作によって固定部22を移動可能としてもよい。
【0071】
[1]
以上、ステム抜き具1は、金型10の成形面10aから飛び出したスプリングベントプラグ9のステム92の頭部923を保持可能な保持部2を備える。
【0072】
斯かる構成によれば、保持部2でステム92の頭部923を保持した状態でステム抜き具1をタイヤ径方向の内側に引っ張ることによって、ステム92を金型10の成形面10a側から引き抜くことができる。これにより、金型10をコンテナ20に取り付けた状態でステム92を金型10(ハウジング91)から引き抜くことができる。
【0073】
[2]
上記実施形態[1]に係るステム抜き具1は、保持部2が取り付けられる本体部3を備え、保持部2は、ステム92の頭部923を掴むことが可能なアーム21と、アーム21でステム92の頭部923を掴んだ状態で本体部3にアーム21を固定する固定部22と、を備える、という構成が好ましい。
【0074】
斯かる構成によれば、アーム21でステム92の頭部923を掴むと共に固定部22で本体部3にアーム21を固定することによって、ステム92の頭部923を保持部2で保持することができる。その状態でステム抜き具1をタイヤ径方向の内側に引っ張ることによって、ステム92を金型10の成形面10a側から引き抜くことができる。
【0075】
[3]
上記実施形態[1]又は[2]に係るステム抜き具1は、保持部2によるステム92の頭部923の保持前にステム92の頭部923と吸着可能な磁石4を備える、という構成が好ましい。
【0076】
斯かる構成によれば、磁石4でステム92の頭部923を吸着することによって、保持部2の位置を頭部923を保持するための位置に合わせやすくなり、保持部2による頭部923の保持を容易にすることができる。これにより、ステム92を金型10から引き抜くことが容易になる。
【0077】
[4]
上記実施形態[3]に係るステム抜き具1は、保持部2と磁石4とが取り付けられる本体部3と、使用者に把持される把持部5と、本体部3と把持部5とを揺動可能に連結する連結部6と、を備える、という構成が好ましい。
【0078】
斯かる構成によれば、磁石4をステム92に近づけた際、本体部3が把持部5に対して揺動する。これにより、金型10の成形面10aに沿って曲面状に配置されたステム92の頭部923に磁石4を吸着させやすくなる。その結果、保持部2によるステム92の頭部923の保持がしやすくなり、ステム92を金型10から引き抜くことが容易になる。
【0079】
なお、ステム抜き具1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ステム抜き具1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0080】
(A)本実施形態において、保持部2は、アーム21を3つ備える、という構成であるが、これに限られない。例えば、
図8に示すように、保持部2は、アーム21を2つ備える、という構成であってもよい。
図8は、他の実施形態に係るステム抜き具1の
図5に相当する矢視図である。斯かる構成においては、ガイド部223も2つとなる。なお、保持部2は、アーム21を4つ以上備える、という構成であってもよい。
【0081】
(B)例えば、
図9に示すように、保持部2は、単一のアーム21を備える、という構成であってもよい。
図9は、他の実施形態に係るステム抜き具1の
図6に相当する断面図である。斯かる構成におけるアーム21は、中心線方向D1視においてU字状に形成されている。アーム21は、ステム92の頭部923を引っ掛けるための切欠部214を備えている。切欠部214の幅は、ステム92の頭部923の最大外径よりも小さい。斯かる構成において、ステム92の頭部923を切欠部214に引っ掛けると共に固定部22によってアーム21が固定された状態が保持部2で保持した状態となる。
【0082】
(C)例えば、保持部2は、固定部22を備えず、単一のアーム21のみを備える、という構成であってもよい。斯かる構成において、アーム21は、本体部3に固定されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0083】
1…ステム抜き具、2…保持部、21…アーム、21a…側面、211…アーム本体、211a…内面、211b…外面、212…爪部、212a…傾斜面、212b…端面、213…被付勢部、214…切欠部、22…固定部、221…固定部本体、221a…内面、222…取付部、223…ガイド部、223a…側面、23…弾性部材、3…本体部、3a…外面、4…磁石、4a…端面、4b…テーパ面、5…把持部、6…連結部、7…衝撃付与部、71…打撃部、72…スライド部、9…スプリングベントプラグ、91…ハウジング、911…ハウジング本体、912…弁座、913…支持部、92…ステム、921…軸部、922…拡径部、923…頭部、924…ストッパー、93…スプリング、94…排気路、100…加硫装置、10…タイヤ加硫金型、10a…成形面、11…トレッド型、12、13…サイド型、14…ビードリング、15…キャビティ、16…排気孔、20…コンテナ、201…セグメント、202…アウターリング、203…上側プラテン、204…下側プラテン、205…支持アーム、206…ガイド、T…タイヤ、X1…不保持位置、X2…保持位置、X3…非固定位置、X4…固定位置