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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068951
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】障害物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20240514BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240514BHJP
【FI】
G01S7/526 J
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179654
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深代 優輝
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】水谷 厚司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅之
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC18
5J083AC28
5J083AD01
5J083AD04
5J083AD05
5J083AE06
5J083AF05
5J083AF07
5J083AF09
5J083AG05
5J083BA01
5J083BE12
5J083BE19
5J083EB11
(57)【要約】
【課題】障害物の高さの検出結果の信頼性を向上させる。
【解決手段】車両に搭載される障害物検出装置(1)は、探査波を送信する少なくとも1つの送信部(10A)と、送信部とは異なる位置に配置され、反射波を受信する少なくとも1つの受信部(10B)と、上端反射波を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度についての第1閾値と、受信部が受信した反射波のうちの路面反射波の受信強度の時系列変化を示すデータと、を用いて得られる、路面反射波の受信強度が第1閾値以上となる伝搬時間を用いて、車両の現在位置から障害物の高さを検出することが可能である検出可能距離を決定する決定部(53)と、受信部が受信した反射波に基づいて、障害物までの距離を検出する障害物検出部(51)と、検出された距離が検出可能距離以下である場合に、受信部が受信した反射波に基づいて、障害物の高さを検出する高さ検出部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される障害物検出装置(1)であって、
探査波を送信する少なくとも1つの送信部(10A)と、
前記送信部とは異なる位置に配置され、前記探査波が物体に反射することにより生じる反射波を受信する少なくとも1つの受信部(10B)と、
障害物の上端部で反射した前記反射波を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度についての第1閾値と、前記受信部が受信した前記反射波のうちの路面で反射した路面反射波の受信強度の時系列変化を示すデータと、を用いて得られる、前記路面反射波の受信強度が前記第1閾値以上となる前記伝搬時間を用いて、前記車両の現在位置から前記障害物の高さを検出することが可能である検出可能距離を決定する決定部(53)と、
前記受信部が受信した前記反射波に基づいて、前記障害物までの距離を検出する障害物検出部(51)と、
前記障害物の高さを検出する高さ検出部(53)であって、
検出された前記距離が前記検出可能距離以下である場合に、前記受信部が受信した前記反射波に基づいて、前記障害物の高さを検出し、
検出された前記距離が前記検出可能距離より大きい場合に、前記障害物の高さを検出しない高さ検出部と、
を備える障害物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
前記第1閾値は、あらかじめ用意された障害物の上端部で反射した前記反射波の前記受信強度と前記あらかじめ用意された障害物までの距離との関連性を示す距離依存性データに基づいて設定されており、
前記決定部は、前記受信部が受信した前記反射波の前記受信強度の時間軸上における連続したデータを表す波形と、前記第1閾値が表す波形との交点のひとつを求め、前記交点が位置する時間軸上の位置を用いて、前記障害物の高さを検出することが可能な前記検出可能距離を決定する、
障害物検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の障害物検出装置であって、
前記あらかじめ用意された障害物は、車止めもしくは縁石を想定した高さを有する物体である、
障害物検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の障害物検出装置であって、
前記探査波が送信された後のあらかじめ決められた時間区間において、前記受信部が受信した前記反射波の前記受信強度が、前記第1閾値より値が大きい第2閾値を超えることがある場合、
前記決定部は、前記第1閾値と、前記受信部が受信した前記反射波の前記受信強度の時系列変化を示すデータのうち、前記受信強度が前記第2閾値を超えた範囲を少なくとも除く第1範囲を用いて、前記車両の現在位置から前記障害物の高さを検出することが可能であるか否かを判定する、
障害物検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の障害物検出装置であって、
前記探査波としてパルス信号が送信され、
前記決定部は、前記受信部が受信した前記反射波の前記受信強度の時系列変化を表す波形に極大点が含まれ、前記極大点における受信強度が前記第2閾値を超える場合、前記極大点を含む範囲であって前記パルス信号のパルス幅の範囲を除いた範囲を前記第1範囲として用いる、
障害物検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
前記送信部と前記受信部とは、
いずれも前記車両の前端部分に配置されている、もしくは、いずれも前記車両の後端部分に配置されており、
前記車両の車幅方向において前記車両の車両中心より一方の側において、前記車幅方向において異なる位置に配置されている、
障害物検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
第1ペアの前記送信部および前記受信部と、第2ペアの前記送信部および前記受信部と、を備え、
前記第1ペアの前記送信部は、前記第2ペアの前記送信部とは異なる位置に配置されており、
前記第1ペアの前記受信部は、前記第2ペアの前記受信部とは異なる位置に配置されており、
前記第1ペアの前記受信部は、前記第1ペアの前記送信部が送信した前記探査波が反射することにより生じた前記反射波を受信し、
前記第2ペアの前記受信部は、前記第2ペアの前記送信部が送信した前記探査波が反射することにより生じた前記反射波を受信し、
前記決定部は、
前記受信部それぞれについて、前記反射波の前記受信強度の時系列変化を表す波形と前記第1閾値が表す波形との交点が位置する時間軸上の位置を用いて、前記検出可能距離を算出し、
前記受信部それぞれについて算出した前記検出可能距離の平均値を求め、
前記高さ検出部は、
検出された前記距離が、前記検出可能距離の前記平均値以下である場合に、前記障害物の高さを検出し、
検出された前記距離が、前記検出可能距離の前記平均値より大きい場合に、前記障害物の高さを検出しない、
障害物検出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
2以上の前記受信部を備え、
前記受信部それぞれは、
前記送信部、および、他の前記受信部とは異なる位置に配置されており、
前記送信部が送信した前記探査波が反射することにより生じる前記反射波を受信し、
前記決定部は、
前記受信部それぞれについて、前記反射波の前記受信強度の時系列変化を表す波形と前記第1閾値が表す波形との交点が位置する時間軸上の位置を用いて、前記検出可能距離を算出し、
前記受信部それぞれについて算出した前記検出可能距離の平均値を求め、
前記高さ検出部は、検出された前記距離が、前記検出可能距離の前記平均値以下である場合に、前記障害物の高さを検出し、
検出された前記距離が前記検出可能距離より大きい場合に、前記障害物の高さを検出しない、
障害物検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
前記送信部は、前記探査波としてパルス信号を送信した後、あらかじめ決められた時間が経過してから、さらに他のパルス信号を送信し、
前記決定部は、先に受信した前記反射波の波形と後に受信した前記反射波の波形とを平均化することにより得られた波形と、前記第1閾値を表す波形との交点を求め、前記交点が位置する時間軸上の位置を用いて、前記検出可能距離を決定する、
障害物検出装置。
【請求項10】
請求項3に記載の障害物検出装置であって、
前記車両の進行方向にある前記障害物の上端部を撮影し、画像データを出力する画像センサと、
前記障害物の上端部であって前記車両の前端部分および後端部分それぞれの中央位置を通る断面の曲率半径の大きさごとにあらかじめ設定された前記第1閾値と、前記画像センサが出力した画像データの輝度変化の度合いと前記曲率半径との対応付けを示すデータと、を記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記送信部と前記受信部とは、いずれも前記車両の前端部分に配置されている、もしくは、いずれも前記車両の後端部分に配置されており、
前記決定部は、前記画像センサが出力した画像データの輝度変化の度合いから特定される前記曲率半径ごとに定義された前記第1閾値を用いて、前記検出可能距離を決定する、
障害物検出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の障害物検出装置であって、
第1ペアの前記送信部および前記受信部と、第2ペアの前記送信部および前記受信部と、を備え、
前記第1ペアの前記送信部は、前記第2ペアの前記送信部とは異なる位置に配置されており、
前記第1ペアの前記受信部は、前記第2ペアの前記受信部とは異なる位置に配置されており、
前記第1ペアの前記送信部および前記受信部と、前記第2ペアの前記送信部および前記受信部とは、前記車両の後端部分に配置されており、
前記第1ペアの前記送信部および前記受信部は、前記車両の車幅方向において前記車両の車両中心より一方の側に配置され、前記第2ペアの前記送信部および前記受信部は、前記車幅方向において前記車両中心より他方の側に配置され、
前記決定部は、
前記車両が、曲がりながら後方に向かって進行している場合、前記第1ペアと前記第2ペアとのうち、前記車両の内輪に近い側に配置されている方の前記受信部が受信した前記反射波に含まれる前記路面反射波の前記受信強度の時系列変化を示すデータと、前記第1閾値と、を用いて得られる前記伝搬時間を用いて、前記検出可能距離を決定する、
障害物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された技術においては、車両に設けられた超音波センサを用いて、車両の周囲に存在する障害物の高さを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-38977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物の高さを推定するためには、障害物の上端部で反射した反射波の強度が用いられる。例えば、縁石、車止めのように、障害物の高さが低い場合には、障害物の上端部で反射した反射波の強度は、障害物の高さが高い場合に比べて弱くなる傾向にある。このため、障害物の高さが低い場合には、路面反射波を障害物の上端部での反射波と誤判定されることがある。その結果、推定された障害物の高さが不正確となることがある。よって、検出結果の信頼性を向上させることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、障害物検出装置(1)が提供される。この障害物検出装置は、車両に搭載される障害物検出装置であって、探査波を送信する少なくとも1つの送信部(10A)と、前記送信部とは異なる位置に配置され、前記探査波が物体に反射することにより生じる反射波を受信する少なくとも1つの受信部(10B)と、障害物の上端部で反射した前記反射波を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度についての第1閾値と、前記受信部が受信した前記反射波のうちの路面で反射した路面反射波の受信強度の時系列変化を示すデータと、を用いて得られる、前記路面反射波の受信強度が前記第1閾値以上となる前記伝搬時間を用いて、前記車両の現在位置から前記障害物の高さを検出することが可能である検出可能距離を決定する決定部(53)と、前記受信部が受信した前記反射波に基づいて、前記障害物までの距離を検出する障害物検出部(51)と、前記障害物の高さを検出する高さ検出部(53)であって、検出された前記距離が前記検出可能距離以下である場合に、前記受信部が受信した前記反射波に基づいて、前記障害物の高さを検出し、検出された前記距離が前記検出可能距離より大きい場合に、前記障害物の高さを検出しない高さ検出部と、を備える。
【0007】
このような態様によれば、障害物検出装置は、現在の車両の位置から障害物の高さを検出できる検出可能距離を求めることができる。障害物検出装置1は、検出可能距離に基づいて、車両の現在位置から障害物の高さを検出することが可能であると判定した場合に、障害物の高さを検出する。このようにして、障害物の高さを検出することが可能であるかを判定しない態様に比べて、推定結果の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に搭載された距離センサと物体との位置関係を示す図である。
図2】障害物検出装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】距離センサが受信した反射波におけるピークの説明図である。
図4】物体までの距離および物体の高さの算出方法の説明図である。
図5】高い障害物で反射して生じる反射波についての説明図である。
図6】路面反射波を含む反射波の一例を示す図である。
図7】超音波センサを異なる位置に配置する利点についての説明図である。
図8】高さ算出処理のフローチャートである。
図9】対象外範囲の特定方法についての説明図である。
図10】検出可能距離の算出方法についての説明図である。
図11】障害物の断面図である。
図12】2ペアの超音波センサが車両に備えられる例を示した図である。
図13】車両が曲がりながら進む様子を示した図である。
図14】算出された検知可能距離を用いた車両A1の制御についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A1.実施形態
図1に示す車両A1は、車両A1の周囲にある物体M1を検出する機能を備える。図1においては、車両A1の幅方向に平行な方向をX軸とし、車両A1の前後方向に平行な方向をY軸とし、鉛直方向に平行な方向をZ軸とする、左手系の直交座標系を設定する。車両A1の後方をY軸正方向とし、鉛直上方をZ軸正方向とする。実施形態においては、想定されている物体M1は、2個のブロックから構成される車止めである。それぞれのブロックは、X軸方向に延びた略直方体形状を有する。なお、2個のブロックのうち一方は、他方より+X側に配置されているため、図1において図示されていない。実施形態においては、物体M1が高さの低い物体であると仮定する。物体M1を障害物ともよぶ。
【0010】
図2に示すように、障害物検出装置1は、射出部10Aおよび受取部10Bと、送信回路20と、受信回路30と、処理部50とを備える。図1に示すように、射出部10Aおよび受取部10Bは、車両A1のリアバンパーに設置されている。射出部10Aと受取部10Bとは、車両A1のX軸方向において距離をおいて配置されている。なお、受取部10Bは、射出部10Aより+X側に配置されているため、図1においては図示されていない。射出部10Aおよび受取部10BのY軸上およびZ軸上における位置は同じであるとする。
【0011】
射出部10Aおよび受取部10Bは、圧電素子が用いられた超音波センサである。射出部10Aは、探査波として超音波を送信する。例えば、射出部10Aは、水平方向に超音波を送信する。受取部10Bは、探査波が車両A1の周囲にある物体により反射された反射波を受信する。射出部10Aを送信部ともよぶ。受取部10Bを受信部ともよぶ。実施形態においては、射出部10Aは、反射波の受信のために用いられない。また、受取部10Bは、探査波の送信のために用いられない。探査波の送信と反射波の受信とを異なる位置に配置された2つの超音波センサを用いて行う理由については後述する。
【0012】
図2に示すように、送信回路20は、処理部50の制御に従って、射出部10Aを駆動し、射出部10Aにあらかじめ設定された周波数の超音波を送信させる。また、受信回路30は、受取部10Bが受信した反射波を示す受信信号を処理部50に供給する。射出部10Aと、受取部10Bと、送信回路20と、受信回路30とは、車両A1に搭載されているソナーを構成する。
【0013】
処理部50は、射出部10Aおよび受取部10Bを使用して、物体M1の位置および高さを検出する。処理部50は、機能部として、障害物検出部51と、高さ検出部53と、記憶部55とを有する。処理部50が備える各機能は、プロセッサ、メモリ等を備え、車両A1に搭載されているコンピュータにより実現される。このコンピュータは、車両A1が備えるECU(Electronic Control Unit)と通信可能である。
【0014】
障害物検出部51は、受取部10Bが受信した反射波の受信強度に基づいて、車両A1の周囲に障害物があるか否かを判定する。さらに、障害物検出部51は、受信された反射波の受信強度に基づいて車両A1から障害物までのY軸上における距離を検出する。車両A1から障害物までのY軸上における距離を求める具体的な方法を以下に説明する。
【0015】
図3に示すように、受信された反射波には、2つのピークが含まれている。ピークとは、反射波の受信強度の時系列変化を表した波形において、傾きを示す値が正の値から負の値に変化した点であって、その点を極大点とする波が示す受信強度があらかじめ設定された閾値を超えるものである。ピークのことを極大点ともよぶ。時刻Tpk1のピークを有する反射波は、物体の上端部で反射した反射波である。時刻Tpk2のピークを有する反射波は、物体の下端部で反射した反射波である。超音波は、上端部においては、物体と、物体の周囲の空気との境界で反射するため、物体の上端部での反射波がピークとして表れる。また、超音波は、下端部においては、物体と路面との境界で反射するため、物体の下端部での反射波がピークとして表れる。このように、ある物質と異なる物質との境界で反射した反射波がピークとして表れる。
【0016】
また、物体の上端部で反射した反射波の受信強度は、下端部で反射した反射波の受信強度より小さくなる。これは、物体M1の上端部の方が、路面と接している物体の下端部に比べて、受取部10Bに正対する面の面積が小さいためである。なお、2つのピークが同一の物体において反射した反射波であるか否かは、次のように判定される。例えば、図3に示す例において、時刻Tpk1と時刻Tpk2との差を示す時間T12が、あらかじめ設定された値以下である場合に、時刻Tpk1のピークと時刻Tpk2のピークとが、同一の物体M1において反射した反射波であると判定される。
【0017】
障害物検出部51は、射出部10Aが探査波を送信した時刻である時刻T0から、反射波の受信強度があらかじめ設定された閾値Vth2を超えた時刻T2までの時間を、時間Tr2として求める。図4に示すように、射出部10Aおよび受取部10Bと、物体M1の下端部の反射点との間の距離を距離L2とする。障害物検出部51は、音速に時間Tr2を乗じて得られた値を2で割ることにより、距離L2を算出する。
【0018】
図4に示すように、距離L2の斜辺を有する直角三角形を仮定する。直角を挟む一方の辺の距離D1は、射出部10Aおよび受取部10Bと、地面とのZ軸上における距離である。距離D1は、車両A1の設計時に定められる値であり、既知である。直角を挟む他方の辺の距離D2は、射出部10Aおよび受取部10Bと、物体M1の下端部の反射点とのY軸上における距離である。距離L2と距離D1とを用いて、距離D2を算出できる。
【0019】
図2に示す、高さ検出部53は、検出可能距離を決定する。検出可能距離は、障害物の高さを検出することが可能である車両A1から障害物までの距離である。障害物の高さを検出することが可能であるとは、あらかじめ決められた検出精度で、障害物の高さを検出できることをいう。高さ検出部53を決定部ともよぶ。詳細は後述するが、高さの低い障害物の上端部で反射された反射波の受信強度は弱いため、障害物の高さを検出することが可能である車両A1から障害物までの距離は限定される。車両A1から障害物までの距離が検出可能距離以下である場合に、障害物の高さが検出される。一方、車両A1から障害物までの距離が検出可能距離を超えている場合、障害物の高さは検出されない。検出可能距離の決定方法については後述する。障害物の高さは以下のように求められる。
【0020】
図3に示すように、障害物検出部51は、射出部10Aが探査波を送信した時刻である時刻T0から、反射波の受信強度があらかじめ設定された閾値Vth1を超えた時刻T1までの時間を、時間Tr1として求める。図4に示すように、射出部10Aおよび受取部10Bと、物体M1の上端部の反射点との間の距離を距離L1とする。障害物検出部51は、音速に時間Tr1を乗じて得られた値を2で割ることにより、距離L1を算出する。
【0021】
図4に示すように、距離L1の斜辺を有する直角三角形を仮定する。直角を挟む一方の辺の距離D2は、射出部10Aおよび受取部10Bと、物体M1の下端部の反射点とのY軸上における距離である。距離D2は上述の方法で算出できる。距離D3は、射出部10Aおよび受取部10Bと、物体M1の上端部とのZ軸上における距離である。高さ検出部53は、距離L1と距離D2とを用いて、距離D3を算出する。さらに、高さ検出部53は、既知である距離D1から距離D3を引いて得られる値を、物体M1の上端部の高さD4として算出する。実施形態においては、物体M1の上端部の高さを物体M1の高さとする。
【0022】
記憶部55は、障害物検出装置1において、各種の処理に使用されるデータを記憶する。例えば、記憶部55は、上述した閾値Vth1、Vth2を記憶する。また、記憶部55は、高さ検出部53が、検出可能距離を決定する処理において用いる第1閾値を記憶する。第1閾値については後述する。
【0023】
以下、射出部10Aと、受取部10Bとを異なる位置に配置する理由を説明する。
【0024】
一般的に、高さの低い障害物で反射された反射波の受信強度は、高さの高い障害物で反射波の受信強度に比べて弱い。本明細書においては、射出部10Aおよび受取部10Bが設置されている位置の高さより、上端部の位置が低い障害物を、高さの低い障害物という。車両A1の車高より、上端部の位置が高い障害物を、高さの高い障害物という。図1に示すように、物体M1の上端部は、射出部10Aが設置されている位置より低い位置にある。物体M1は高さの低い障害物である。図5に示すように、物体M2の上端部は、車両A1の車高より高い位置にある。物体M2は高さの高い障害物である。なお、技術の理解を容易にするため、物体M2の幅は、車両A1の幅より大きいものとする。
【0025】
図1に示す例においては、射出部10Aから送信された探査波のうち、一部は物体M1を越え、他の一部は物体M1で反射する。一方、図5に示す例においては、射出部10Aから送信された探査波は、物体M2を超えずに反射する。よって、探査波のうちの大部分が物体M1で反射する。このような違いが生じるのは、射出部10Aに正対する物体M1の面の面積が、射出部10Aに正対する物体M2の面の面積より小さいためである。よって、高さの低い障害物である物体M1で反射した反射波の受信強度は、高さの高い障害物である物体M2で反射した反射波の受信強度より、小さくなる。
【0026】
図6に示すように、受取部10Bは、物体M1で反射した反射波WAと路面反射波WBとが合成された合成波WCを受信する。射出部10Aから送信された探査波の一部は路面で反射するためである。以下、路面で反射した反射波を路面反射波とよぶ。図示する波形においては、一点鎖線で表した波が障害物で反射した反射波WAである。破線で表した波が路面反射波WBである。実線で表した波が合成波WCである。障害物検出装置1が検出すべきものは障害物で反射した反射波WAであるので、路面反射波WBはノイズ成分である。
【0027】
また、高さの低い障害物の上端部は、高さの高い障害物の上端部に比べて、路面に近い。よって、路面反射波の受信強度によっては、高さの低い障害物で反射した反射波の受信強度と、路面反射波の受信強度とが近くなることが想定される。このような場合、受取部10Bが受信した反射波から、障害物の上端部で反射した反射波を抽出することが困難となる。よって、受信した反射波における信号対雑音比(以下、S/N比)を上げることが必要となる。実施形態においては、S/N比を向上させるため、探査波を送信する射出部10Aと、反射波を受信する受取部10Bと、が異なる位置に配置される。以下、探査波を送信する送信部と、反射波を受信する受信部とを異なる位置に配置することにより、S/N比を向上させることができる理由を説明する。
【0028】
図7を参照して、探査波の送信部と反射波の受信部とが同じ位置に配置されている場合(以下、ケースC1)と、探査波の送信部と反射波の受信部とが異なる位置に配置されている場合(以下、ケースC2)とを比較する。ケースC1においては、同一の超音波センサS1が、探査波の送信と、反射波の受信とを行う。ケースC2においては、超音波センサS1が探査波を送信し、超音波センサS1とは異なる超音波センサS2が反射波を受信する。ケースC2においては、超音波センサS1は反射波を受信しない。超音波センサS1とS2とは、Y軸上において同じ位置であって、X軸上およびZ軸上において異なる位置に配置されている。ケースC1の場合も、ケースC2の場合も送信される探査波の強度は同じであることを前提とする。図7に示す例では、超音波センサS1、S2の検出可能範囲において障害物がないものとし、探査波は路面のみで反射するものとする。また、路面がアスファルトであると仮定し、探査波は路面において等方散乱するものとする。
【0029】
一点鎖線で表した曲線H1は、超音波センサS1から同時刻に送信された探査波が路面で反射することにより生じた反射波が、超音波センサS1に到達するまでの経過時間が時間T10となるときの、探査波の路面での反射位置を表す。図示するように、曲線H1は、超音波センサS1の位置を鉛直方向に投影した位置を原点とした半円である。
【0030】
実線で表した曲線H2は、超音波センサS1から同時刻に送信された探査波が路面で反射することにより生じた反射波が、超音波センサS2に到達するまでの経過時間が同じ時間T10となるときの、探査波の路面での反射位置を表す。なお、技術の理解を容易にするため、探査波の路面での反射位置を示す曲線H2が半円となるように、超音波センサS1と超音波センサS2とは配置されているものとする。
【0031】
曲線H1の領域(曲線の内側を含まず)は、ケースC1における探査波が路面で反射する面積を表す。曲線H2の領域(曲線の内側を含まず)は、ケースC2における探査波が路面で反射する面積を表す。曲線H2の曲線部分の長さは、曲線H1の曲線部分の長さより短い。つまり、ケースC1の場合に比べて、ケースC2の場合の方が、同時に受信される反射波の路面での反射面積が小さいといえる。これは、送信部と受信部とが異なる位置に配置されている場合の方が、送信部と受信部とが同じ位置に配置されている場合に比べて、同時刻で受信される路面反射波の反射強度が小さくなることを意味する。よって、送信部と受信部とが異なる位置に配置されている方が、送信部と受信部とが同じ位置に配置されている場合より、受信した反射波における信号対雑音比(以下、S/N比)を向上させられる。
【0032】
さらに、探査波を送信する送信部である超音波センサS1が、反射波を受信する受信部としても機能する場合、探査波を送信することにより生じる残響振動が生じるので、受信した信号が反射波を表すものか、残響振動を表すものかを区別することが困難となる。しかし、送信部と受信部とが異なる位置に配置されている場合には、残響振動の影響を受けない。
【0033】
上記のような利点があるので、実施形態においては、探査波を送信する射出部10Aと、反射波を受信する受取部10Bとを異なる位置に配置する。例えば、受信部が送信部より高く配置された場合、受信部との高さと送信部の高さが同じにする場合に比べて、路面上に置かれている障害物での反射波の受信強度が弱くなる傾向にある。よって、実施形態においては、射出部10Aと受取部10BとをZ軸方向において同じ位置であって、X軸方向において距離をおいて配置する。
【0034】
図8に示す、障害物の高さを算出するための高さ算出処理は、あらかじめ決められた開始条件が満たされると開始される。開始条件は、例えば、車両A1が、あらかじめ決められた速度以下で、後方に向かって進み始めることである。あらかじめ決められた速度は、例えば、時速10キロメートルである。
【0035】
ステップS101において、処理部50は、送信回路20を介して射出部10Aに探査波を送信させる。探査波は、例えば、パルス信号である。このとき、処理部50は、探査波の送信時刻をメモリに記憶させておく。
【0036】
ステップS102において、処理部50は、探査波の送信時刻から一定時間が経過するまでの期間、受信回路30を介して受取部10Bに反射波を受信させる。一定時間は、例えば、15ミリ秒である。例えば、車両A1が、時速10キロメートルで、15ミリ秒間に進む距離は、約42ミリメートルである。よって、車両A1が停止した状態で、探査波が送信されて、反射波が受信された場合と同様に、受信された反射波を処理することができる。処理部50は、受取部10Bが受信した反射波の受信信号をメモリに記憶させておく。探査波の送信時刻から一定時間が経過するまでの期間を、探査波が送信された後のあらかじめ決められた時間区間ともよぶ。
【0037】
ステップS103において、処理部50は、受信された反射波が路面反射波のみであるか否かを判定する。受信された反射波に、路面反射波だけではなく、車両の周囲の何らかの障害物で反射することにより生じた反射波が含まれる場合があるためである。具体的には、処理部50は、受信された反射波の受信強度があらかじめ設定された障害物検出用閾値ThAを超えない場合、受信された反射波が路面反射のみであると判定する。一方、処理部50は、受信された反射波の受信強度が、障害物検出用閾値ThAを超える場合、受信された反射波が路面反射波と何らかの障害物で反射した反射波とを含むと判定する。障害物検出用閾値ThAは、障害物の有無を判定するために受信強度についてあらかじめ決められた値である。障害物検出用閾値ThAは、探査波が射出されてから経過した時間に応じて決められている。障害物検出用閾値ThAを第2閾値ともよぶ。障害物検出用閾値ThAは、後述する第1閾値より大きい値を有するように設定されている。
【0038】
図9に示す信号波形は、探査波の送信時刻から一定時間が経過するまでに受信された反射波の受信強度を表す。図示する信号波形には複数のピークが含まれている。図9において、時刻Tpk10に発生したピークは、一点鎖線で表す障害物検出用閾値ThAを超えている。このような場合、処理部50は、受信された反射波が、路面反射波と何らかの障害物で反射した反射波とを含むと判定する。
【0039】
図8に示すように、ステップS103において、受信された反射波が路面反射波のみであると判定された場合(ステップS103;YES)、ステップS105の処理が実行される。一方、受信された反射波が路面反射波のみでない場合(ステップS103;NO)、ステップS104の処理が実行される。
【0040】
ステップS104において、処理部50は、受信された反射波のうち、検出可能距離の算出に用いる範囲を特定する。具体的には、処理部50は、障害物検出用閾値ThAを超えているピークを含む範囲であって探査波として送信されたパルス信号のパルス幅と同じ時間幅を有する範囲を、検出可能距離の算出の処理の対象外範囲として特定する。また、処理部50は、対象外範囲を除く範囲を検出可能距離の算出に用いる対象範囲として特定する。障害物検出用閾値ThAを超えているピークは、探査波が何らかの障害物で反射して生じた反射波である。このような反射波が発生している時間幅は、探査波のパルス信号のパルス幅に対応する。このようにして、対象範囲を容易に特定することができる。対象範囲を第1範囲ともよぶ。
【0041】
図9に示す例では、時刻Tpk10に発生したピークを含む範囲であって探査波のパルス幅と同じ時間幅を有する範囲が対象外範囲Ex1として特定される。対象外範囲Ex1を除いた範囲が、検出可能距離の算出に用いられる対象範囲として特定される。このように、対象範囲を特定する理由については後述する。
【0042】
なお、図9に示す波形においては、送信時刻から約1.5ミリ秒が経過したときと、送信時刻から約3ミリ秒が経過したときにも、受信強度が障害物検出用閾値ThAを越えている。これらは、射出部10Aから送信された探査波が、射出部10Aのほぼ真下の地面で反射した反射波である。よって、探査波を送信してから決められた期間に受信された反射波は、検出可能距離の算出の処理に用いられないものとする。決められた期間は、例えば、受取部10Bが反射波を受信する一定時間の20パーセントの期間と設定できる。図9においては、探査波を送信してから決められた期間の反射波が、検出可能距離の算出の処理に用いられない対象外範囲Ex0として設定されている。ステップS104が実行された後、図8に示す、ステップS105が実行される。
【0043】
ステップS105において、処理部50は、検出可能距離L5を算出する。なお、処理部50は、受信された反射波が路面反射波のみである場合、受信された反射波すべてを検出可能距離L5の算出のために使用する。また、処理部50は、受信された反射波が路面反射波のみでない場合、ステップS104の処理により特定された対象範囲を検出可能距離L5の算出のために使用する。
【0044】
検出可能距離は、路面反射波の受信強度が第1閾値以上となる伝搬時間を用いて算出される。第1閾値は、障害物の上端部で反射した反射波(上端反射波)を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度についての閾値である。より具体的には、第1閾値は、あらかじめ用意された障害物の上端部で反射した反射波の受信強度とあらかじめ用意された障害物までの距離との関連性を示すデータ(距離依存性データ)に基づいて決定されている。
【0045】
図10に示すように、処理部50は、受信された反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とを重ねた場合において、波形W1と波形W2とが交差する点が位置する時間軸上の位置を特定する。波形W1と波形W2との交点は2つ以上存在することもあるため、処理部50は、対象範囲において最初の交点P1が位置する時間軸上の位置を特定する。処理部50は、探査波の送信時刻から、交点P1の位置に対応する時刻までの経過時間を求める。その後、処理部50は、経過時間を2で割った値に音速を乗じて得られた値を検出可能距離L5として求める。
【0046】
図8に示すように、ステップS106において、障害物が検出されている場合には(ステップS106;YES)、ステップS107の処理が実行される。なお、ステップS103の処理において、受信された反射波が路面反射波のみでないと判定された場合に、障害物が検出されたとみなされる。一方、障害物が検出されていない場合(ステップS106;NO)、高さ算出処理が終了される。
【0047】
ステップS107において、処理部50は、上述した方法により障害物までの距離L2を算出する。ステップS108において、処理部50は、距離L2が検出可能距離L5以下である場合(ステップS108;YES)、ステップS109の処理を実行する。一方、距離L2が検出可能距離L5より大きい場合(ステップS108;NO)、高さ算出処理が終了される。
【0048】
ステップS109において、処理部50は、距離L1と距離D2とを用いて、障害物の高さD4を算出する。距離L1は、上述した方法により算出される。処理部50は、算出した障害物の高さD4をメモリに記憶させる。その後、高さ算出処理の処理が終了される。
【0049】
例えば、車両A1が駐車スペースに進入するため、後方に向かって進んでいる場合、車両A1と障害物との距離は徐々に小さくなる。よって、処理部50は、例えば、車両A1が停止するまで、上記の処理を、決められた時間間隔で繰り返し実行してもよい。図1に示すように、物体M1は、車両A1の運転者が運転席からは視認することが困難な高さの低い障害物である。図1に示すように、例えば、車両A1が後方(+Y方向)に向かって進行した場合、物体M1の高さによっては、車両A1のバンパー部分が物体M1に接触する可能性がある。車両Aが進んでいる間、上記の処理を繰り返す場合、距離D2が検出可能距離L5より大きいときには、高さの検出が行われない。距離D2が検出可能距離L5以下となったときに、即ち、高さを検出することが可能な距離まで、車両A1が物体M1に接近したときに、障害物の高さD4が検出される。例えば、高さ検出部53は、検出した高さを、車両A1が備えるECUに通知する。これにより、高さの低い障害物が検出されたことを示す警報が出力されてもよい。
【0050】
続いて、第1閾値を決める方法を説明する。例えば、ニューラルネットワークによる学習を行うことにより第1閾値が決められる。この場合、あらかじめ用意された、既知の高さを有する物体を路面上に配置した状態で、探査波を送信し、探査波が物体で反射することにより生じた反射波を表す受信信号を、ニューラルネットワークに入力して、物体の高さを推定させる。さらに、例えば、物体を配置する路面を変えながら、上記の処理を繰り返すことにより、複数の高さの推定値を求める。また、それぞれの受信信号から、物体の上端部で反射した反射波の受信強度と路面反射強度とを求めておく。物体の上端部で反射した反射波の受信強度は、例えば、物体を路面上に配置していない状態で送信された探査波が路面で反射して生じた反射波の波形と、物体を配置した状態で送信された探査波が路面で反射して生じた反射波の波形との差分から求めることができる。
【0051】
さらに、例えば、高さの推定値の標準偏差σから、3σを算出する。高さの推定値が3σの範囲内にあるそれぞれの受信信号についての、物体の上端部で反射した反射波の受信強度と路面反射強度との比のうち、最も大きい値を係数αとして求める。その後、あらかじめ用意された、既知の高さを有する物体をある路面上に配置した状態で、探査波を送信し、得られた反射波の受信強度に、係数αを乗じて得られた値が第1閾値とされる。このように、第1閾値は、上端反射波を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度に基づいて決定される。
【0052】
図10に示すように、交点P1以降においては、波形W1により表されている反射波の受信強度が、波形W2により表されている第1閾値を上回る。これは、時間軸上において交点P1以降に上端反射波が路面反射波に埋もれてしまうことを意味する。よって、実施形態においては、交点P1の時間軸上の位置に対応する距離が、検出可能距離として決定される。
【0053】
また、上述したように、受信された反射波のうち、受信強度が障害物検出用閾値ThAを超えているピークを含む範囲であってパルス幅と同じ時間幅を有する対象外範囲を除いた範囲を用いて、車両の現在位置から障害物の高さを検出できるか否かが判定される。このようにして、路面反射波以外を検出可能距離の算出処理に用いないので、求められた検出可能距離が不正確となることを避けることができる。これにより、車両の現在位置から障害物の高さを検出することが可能であるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0054】
また、障害物検出装置1は、受信した反射波の受信強度の時系列変化を表す波形と、距離依存性データに基づいて設定された第1閾値が表す波形と、の交点が位置する時間軸上の位置を用いて、路面反射波の受信強度が第1閾値以上となる伝搬時間を求める。さらに、障害物検出装置1は、路面反射波の受信強度が第1閾値以上となる伝搬時間を用いて検出可能距離を算出する。よって、あらかじめ用意された障害物と同程度の高さを有する障害物について、障害物の上端部での反射波が路面反射波に埋もれない障害物までの距離を算出することができる。算出された検出可能距離は、障害物の上端部で反射した反射波と路面反射波とを区別することが可能である、車両と障害物との距離を示す。
【0055】
さらに、障害物検出装置1は、検出可能距離に基づいて車両の現在位置から障害物の高さを検出することが可能であると判定した場合に、障害物の高さを検出する。このようにして、障害物の高さを検出することが可能であるかを判定しない態様に比べて、推定結果の信頼性を向上させることができる。
【0056】
B1.他の実施形態1
第1閾値を得るためのあらかじめ用意された物体は、車両A1が駐車する駐車スペースに設置される物体であることが好ましい。例えば、車止め、縁石である。なお、あらかじめ用意された物体はこれらに限られず、盛り土、段差等でもよい。
【0057】
図11に示すように、車止めM5の上端の形状と、縁石M6の上端の形状とはそれぞれ異なる。よって、探査波が、車止めM5の上端部で反射した場合と、縁石M6で反射した場合とでは、反射波の受信強度はそれぞれ異なる。なお、図においては上端部を破線で囲んでいる。よって、車止め用の第1閾値を示す波形と、縁石用の第1閾値を波形とを個別に用意しておくことが望ましい。このため、車止め、あるいは、車止めを想定した高さを有する物体をあらかじめ用意して、用意した物体の上端部で反射した反射波の受信強度に基づいて車止め用の第1閾値を決定することができる。さらに、縁石、あるいは、縁石を想定した高さを有する物体をあらかじめ用意して、用意した物体の上端部で反射した反射波の受信強度に基づいて縁石用の第1閾値を決定することができる。
【0058】
車両A1には、後方を撮影するカメラが装備されているとする。カメラは、車両A1が後方に向かって進行しているときに、車両A1の進行方向にある障害物の少なくとも上端部を撮影する。処理部50は、カメラが出力した画像データに基づいて、障害物が車止めであるか、縁石であるかを判定する。カメラを画像センサともよぶ。
【0059】
障害物が車止めであるか、縁石であるかは、次のように判定される。図11に示すように、車止めM5の上端部の断面の形状にくらべ、縁石M6の上端部における断面の形状はなだらかにカーブしている。よって、車止めM5と縁石M6とのうち、それぞれの撮影された画像内の上端部が写っている範囲において、画素ごとの輝度値の変化の度合いが他方より大きくなるのは、車止めM5である。よって、処理部50は、撮影された画像内の上端部が写っている範囲における輝度変化の度合いに基づいて、撮影された物体が車止めM5であるか、縁石M6であるかを判定することができる。
【0060】
具体的には、処理部50は、上端部が写っている範囲における輝度を、その範囲の画素の数で割ることにより得られた値を、輝度変化の度合いを表す値として求める。処理部50は、求めた輝度変化の度合いを表す値が、車止めM5についてあらかじめ設定された輝度変化の度合いを表す基準値と同じ、あるいは、基準値との差が一定値以下である場合に、物体が車止めM5であると判定する。また、処理部50は、求めた輝度変化の度合いを表す値が、縁石M6についてあらかじめ設定された輝度変化の度合いを表す基準値と同じ、あるいは、基準値との差が一定値以下である場合に、物体が縁石M6であると判定する。
【0061】
車止めであると判定された場合、車止め用の第1閾値を用いて、検出可能距離L5を算出することができる。一方、縁石であると判定された場合、縁石用の第1閾値を用いて、検出可能距離L5を算出することができる。
【0062】
このように、あらかじめ、用意された障害物として、車止めおよび縁石、あるいは、これらと同程度の高さを有する物体で反射した反射波の受信強度の測定値から設定された第1閾値を用いて、検出可能距離L5が算出される。実施形態と同様に、障害物までの距離が検出可能距離L5以下である場合には、障害物の高さが算出される。よって、車止めもしくは縁石の高さの検出精度を向上させることができる。
【0063】
B2.他の実施形態2
また、第1閾値は、3種類以上用意しておくこともできる。例えば、物体の上端部の断面の曲率半径ごとに第1閾値があらかじめ決定されてもよい。さらに、物体の断面の曲率半径ごとに、撮影された画像内の上端部の範囲における、画素ごとの輝度変化の度合いをあらかじめ求めておく。ここで、断面とは、図1のように、車両A1の後端部が、物体に対向している状態において、車両A1の前端部分の中央位置と後端部分の中央位置とを通る面で切断された場合の断面である。処理部50は、撮影された画像における上端部の範囲における輝度変化の度合いから、物体の断面の曲率半径を特定する。記憶部55には、画像の輝度変化の度合いと曲率半径との対応付けを示すデータがあらかじめ記憶されているものとする。また、記憶部55には、障害物の上端部の断面の曲率半径ごとに決定された第1閾値を示すデータがあらかじめ記憶されているものとする。処理部50は、特定された曲率半径に対応する第1閾値を用いて検出可能距離L5を求める。上端部の断面の曲率半径ごとに定義された第1閾値を用いるので、精度よく検出可能領域を算出することができる。
【0064】
B3.他の実施形態3
実施形態においては、障害物検出用閾値ThAを超えているピークを含む範囲であって探査波として送信されたパルス信号のパルス幅と同じ時間幅を有する範囲が、検出可能距離の算出の処理の対象外範囲として特定された。また、それ以外の範囲が、検出可能距離の算出の処理の対象となる対象範囲として特定された。しかしながら、対象外範囲および対象範囲の特定方法はこれに限られない。受信強度が障害物検出用閾値ThAを超えた範囲が少なくとも除かれればよいので、受信強度が障害物検出用閾値ThAを超えた範囲すべてが、対象外範囲とされてもよい。また、受信強度が障害物検出用閾値ThAを超えていない範囲すべてが、検出可能距離の算出の処理の対象となる対象範囲とされてもよい。
【0065】
B4.他の実施形態4
実施形態においては車両A1の後端部分に1ペアの射出部および受取部が配置される例を説明したが、2ペア以上の射出部および受取部が配置されてもよい。図12に示すように、車両A1の後端部分には、射出部10A-1および10A-2と、受取部10B-1および受取部10B-2とが配置されてもよい。後端部分とは、車両A1においてその位置より後ろに何もない部分をいう。射出部10A-1と受取部10B-1とは、車幅方向において車両中心より-Y側において、異なる位置に配置されている。図において、車幅方向における車両中心の位置を破線F1で示す。射出部10A-2と受取部10B-2とは、車幅方向において車両中心より+Y側において、異なる位置に配置されている。
【0066】
一般的に、駐車スペースには、車両A1の後輪の位置に合わせて2つの車止めが、間隔を開けて設置されていることが多い。車両A1が後ろ向きに進む場合、車両A1の後方において、物体M1である車止めが設置されている領域と、車止めが設置されていない領域があることになる。
【0067】
図12に示すように、射出部10A-1と受取部10B-1とが車幅方向において車両中心より一方の側に配置されている。射出部10A-2と受取部10B-2とが車幅方向において車両中心より他方の側に配置されている。射出部10A-1と受取部10B-1との車幅方向における距離は、車幅の半分以下となる。射出部10A-2および受取部10B-2についても同様である。このように配置することにより、例えば、車両の後輪の位置に合わせて2つの車止めが間隔を開けて設置されている場合に、障害物である車止めを確実に検出できる。
【0068】
あるいは、射出部10A-1および10A-2と、受取部10B-1および受取部10B-2とは、後端部分ではなく、車両A1の前端部分に配置されていてもよい。前端部分とは、車両A1においてその位置より前に何もない部分をいう。また、あるいは、車両A1の前端部分と後端部分とにそれぞれ2ペアの送信部および受信部が配置されていてもよい。
【0069】
B5.他の実施形態5
図12に示すように、車両の後端部分に2ペアの射出部および受取部が配置されている場合、以下のように検出可能距離を算出できる。射出部10A-1および受取部10B-1を第1ペアともよぶ。射出部10A-2および受取部10B-2を第2ペアともよぶ。なお、他の実施形態5においては、射出部10A-1から送信された探査波の反射波が、受取部10B-1により受信され、射出部10A-2から送信された探査波の反射波が、受取部10B-2により受信されることを前提とする。
【0070】
例えば、射出部10A-1、10A-2は、それぞれ異なる周波数で探査波を送信する。このため、反射波の周波数に基づいて送信元を特定することができる。受信回路30は、受取部10B-1が受信した反射波のうち、射出部10A-1から送信された探査波の反射波だけを、受取部10B-1の受信信号として取り扱う。さらに、受信回路30は、受取部10B-2が受信した反射波のうち、射出部10A-2から送信された探査波の反射波だけを、受取部10B-2の受信信号として取り扱う。
【0071】
あるいは、射出部10A-1、10A-2は、同じ周波数で探査波を同時刻に送信する。受信回路30は、探査波の送信時刻からの経過時間に基づいて、受取部10B-1が受信した反射波のうち、射出部10A-1から送信された探査波の反射波であるか否かを判定してもよい。以下、図12に示す-Y側に配置されている物体M1を、左の物体M1とよぶ。図12に示すように、例えば、射出部10A-1から送信された探査波が、左の物体M1に到達するまでの時間は、射出部10A-2から送信された探査波が、左の物体M1に到達するまでの時間に比べて短い。よって、射出部10A-1から送信された探査波が、左の物体M1で反射して受取部10B-1に到達するまでの時間は、射出部10A-2から送信された探査波が、左の物体M1で反射して受取部10B-1に到達するまでの時間に比べて短くなる。このように、探査波の送信時刻からの経過時間に基づいて、送信元を特定することができる。受取部10B-2が受信した反射波についても同様である。
【0072】
処理部50は、受取部10B-1が受信した路面反射波の波形と、第1閾値を表す波形W2とを重ねた場合における交点が位置する時間軸上の位置を求める。処理部50は、求めた交点の時間軸上の位置を用いて、1つめの検出可能距離L5-1を算出する。さらに、処理部50は、受取部10B-2が受信した路面反射波の波形と、第1閾値を表す波形W2とを重ねた場合における交点が位置する時間軸上の位置を求める。処理部50は、求めた交点の時間軸上の位置を用いて、2つめの検出可能距離L5-2を算出する。
【0073】
その後、処理部50は、検出可能距離L5-1と検出可能距離L5-2との平均値を、検出可能距離L5として求める。複数の受取部が受信した路面反射波の波形を用いるので、路面反射波の受信強度にばらつきがある場合であっても、精度よく検出可能距離を算出することができる。
【0074】
また、車両の前端部分に2ペアの送信部および受信部が配置されている場合も同様である。処理部50は、各受信部が受信した路面反射波の受信強度の時系列変化を示すデータと、第1閾値とを用いて、検出可能距離をそれぞれ算出し、算出された2つの検出可能距離の平均値を求めればよい。また、車両の前端部分または後端部分に、3ペアあるいは4ペアの送信部および受信部が配置されている場合も、同様に算出された検出可能距離の平均値を求めることができる。
【0075】
B6.他の実施形態6
他の実施形態5においては、車両に2ペアの送信部および受信部が備えられている例(図12を参照)を説明した。あるいは、車両の後端部分または前端部分には、それぞれ異なる位置に配置された、1つの射出部と2つの受取部とが備えられていてもよい。
【0076】
処理部50は、一方の受取部が受信した路面反射波の波形と第1閾値を表す波形W2とを重ねた場合における交点が位置する時間軸上の位置を用いて、1つめの検出可能距離L5-3を算出する。さらに、処理部50は、他方の受取部が受信した路面反射波の波形と第1閾値を表す波形W2とを重ねた場合における交点が位置する時間軸上の位置を用いて、2つのめ検出可能距離L5-4を算出する。その後、処理部50は、検出可能距離L5-3と検出可能距離L5-4との平均値を、検出可能距離L5として求める。複数の受取部が受信した路面反射波の波形を用いるので、路面反射波の受信強度にばらつきがある場合であっても、精度よく検出可能距離を算出することができる。
【0077】
また、車両の後端部分または前端部分に、1つの射出部と、3つ以上の受取部とが配置されている場合も、検出可能距離を同様に求めることができる。
【0078】
B7.他の実施形態7
また、図13に示すように、車両A1が、曲がりながら後方に向かって進行している場合、車両A1の内輪に近い側に配置されている距離センサを用いて、検出可能距離を算出することが望ましい。車両A1の後端部分には、2ペアの射出部および受取部が配置されていることを前提とする。2ペアの射出部および受取部はそれぞれ異なる位置に配置されている。射出部10A-1および受取部10B-1を第1ペアともよぶ。射出部10A-1および受取部10B-1を第2ペアともよぶ。
【0079】
図13に示すように、車両A1が、車両B1と車両B2とがそれぞれ駐車している駐車スペースの間に、曲がりながら後方に向かって進行しているとする。この場合、射出部10A-1から送信された探査波が車両B1で反射することにより生じた反射波が、受取部10B-1で受信されることがあり得る。このような場合、受取部10B-1が受信した反射波が用いられると、車止めである物体M1を検出するより前に、隣の駐車スペースに駐車されている車両B1を周囲にある障害物であると誤って認識されてしまう状況が発生し得る。
【0080】
よって、車両A1が、曲がりながら後方に向かって進行している場合、車両の内輪に近い側に配置されているペアの受取部が受信した反射波の受信強度の時系列変化を示すデータと、第1閾値と、を用いて、検出可能距離を算出することが望ましい。これにより、車両A1が進むルートから外れた範囲にある物体を誤って検出してしまうことを抑制することができる。
【0081】
また、車両の前端部分に2ペアの送信部および受信部が配置されており、車両A1が、曲がりながら前方に進行している場合も、車両A1の内輪に近い側に配置されている距離センサを用いて、検出可能距離を算出することが望ましい。
【0082】
B8.他の実施形態8
実施形態に示す例のように、車両A1に1ペアの射出部10Aおよび受取部10Bが備えられているとする。実施形態においては、探査波を1回送信して、受信した反射波を用いて、検出可能距離を求めていた。あるいは、例えば、処理部50は、先に送信した探査波の送信時刻からあらかじめ決められた時間が経過してから、新たに探査波を送信してもよい。この場合、先に送信した探査波の反射波の受信強度の時間軸上における連続したデータと、後に送信した探査波の反射波の受信強度の時間軸上における連続したデータとを用いて、受信強度の平均値により合成された波形を、反射波の波形として用いてもよい。なお、波形を合成する際には、受信強度が障害物検出用閾値ThAを超えた範囲を除くものとする。よって、路面反射波の受信強度にばらつきがある場合であっても、精度よく検出可能距離を算出することができる。受信強度の平均値により合成された波形を、先に受信した前記反射波の波形と後に受信した前記反射波の波形とを平均化することにより得られた波形ともよぶ。
【0083】
B9.他の実施形態9
実施形態においては、反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とが交点を有する例(図10を参照)を説明した。しかしながら、反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とが交点を有しないこともある。このような場合、処理部50は、検知可能距離についての限定がないものとして、検出された障害物の高さを算出する。
【0084】
例えば、車両A1が自動駐車を行う機能を備えている場合に、算出された検知可能距離を用いて、車両A1の制御を行うことができる。以下の車両A1の制御は、例えば、障害物検出装置1と、車両A1に備えられているECUとが連動して行う。
【0085】
図14に示すように、(A)の状態においては、反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とが交点から、検出可能距離が2メートルであると算出されたとする。このとき、受信された反射波に、障害物検出用閾値ThAを超えるピークが含まれておらず、物体M1が検出されていない。この場合、決められた速度以下で、車両A1がさらに後方に進むように制御される。
【0086】
(B)の状態において、反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とが交点から、検出可能距離が2メートルであると算出されたとする。また、受信された反射波に、障害物検出用閾値ThAを超えるピークが含まれており、物体M1が検出されたとする。さらに、物体M1までの距離が3メートルであると算出されたとする。しかしながら、物体M1までの距離が検出可能距離より大きいため、物体M1の高さの検出は行われない。この場合、減速して、車両A1がさらに後方に進むように制御される。
【0087】
(C)の状態において、反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2とが交点から、検出可能距離が2メートルであると算出されたとする。また、受信した反射波から物体M1が検出されたとする。さらに、物体M1までの距離が2メートルであると算出されたとする。物体M1までの距離が検出可能距離以下であるので、物体M1の高さが算出される。物体M1の高さと、あらかじめ決められた基準値とが比較され、車両A1が物体M1を乗り越えることが難しいと判定された場合、車両A1は、物体M1にぶつからない程度の位置までさらに後方に進んでから停止するように制御される。
【0088】
B10.他の実施形態10
実施形態においては、受信された反射波の時系列変化を表す波形W1と、第1閾値を表す波形W2と、の交点P1が位置する時間軸上の位置を用いて、検出可能距離L5を算出する例を説明した。しかしながら、検出可能距離L5の算出方法はこれに限られない。
【0089】
例えば、検出可能距離L5は、学習済みの機械学習モデルを用いて決定することもできる。学習フェーズにおいて、教師データとして、路面反射波を表す波形のデータと、障害物の上端部で反射した反射波を受信するまでの伝搬時間に応じて決まっている受信強度についての第1閾値と、を用いて機械学習が行われ、機械学習モデルが生成される。推論フェーズにおいては、反射波の波形に含まれる、あらかじめ設定された期間ごとの受信強度と、それぞれの受信強度に対応する時刻情報と、が学習済みの機械学習モデルに入力されると、検出可能距離L5が出力される。
【0090】
B11.他の実施形態11
障害物の高さを検出する方法は、実施形態において説明した方法に限られない。障害物の高さは、学習済みの機械学習モデルを用いて推定することもできる。受信信号を表す波形から、ピークを含む一定の範囲の波形が切り出される。切り出された波形に含まれる、あらかじめ設定された期間毎の受信強度と、それぞれの受信強度に対応する時刻情報と、が学習済みの機械学習モデルに入力されると、機械学習モデルは、物体M1の高さを出力する。
【0091】
また、例えば、反射波の信号を表す波形を入力すると、障害物の高さの推定値を出力するように構成されたニューラルネットワークを用いることができる。例えば、ニューラルネットワークは、3層構造のニューラルネットワークだけではなく、4層以上のDNN(Deep Neural Network)、畳み込み層とプーリング層とを有するCNN(Convolutional Neural Network)等を含むものとする。
【0092】
B12.他の実施形態12
また、射出部10Aおよび受取部10Bは、車両A1の車高方向(Z軸方向)において距離をおいて配置されてもよい。あるいは、射出部10Aおよび受取部10Bは、車両A1の車幅方向(X軸方向)に距離をおいて、かつ、車高方向(Z軸方向)において距離をおいて配置されてもよい。受信部が送信部より高く配置された場合、受信部との高さと送信部の高さが同じ場合に比べて、路面上に置かれている障害物での反射波の受信強度が弱くなる傾向にある。しかしながら、探査波を送信する射出部と反射波を受信する受取部とが異なる位置に配置されることにより、S/N比を向上できる。よって、上端反射波が路面反射波に埋もれてしまうことを抑制し、上端反射波を検出することができる。
【0093】
実施形態においては、探査波として超音波が用いられる例を説明したが、探査波として電波が用いられてもよい。
【0094】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0095】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…障害物検出装置、10A,10A-1,10A-2…射出部、10B,10B-1,10B-2…受取部、20…送信回路、30…受信回路、50…処理部、51…障害物検出部、53…高さ検出部、55…記憶部、A1…車両、B1…車両、B2…車両、D1,D2,D3…距離、Ex0…対象外範囲、Ex1…対象外範囲、F1…破線、H1,H2…曲線、L1,L2…距離、L5,L5-1,L5-2…検出可能距離、M1,M2…物体、M5…車止め、M6…縁石、P1…交点、S1,S2…超音波センサ、T0…時刻、T1…時刻、T2…時刻、ThA…障害物検出用閾値、Tpk1,Tpk2,Tpk10…時刻、Tr1…時間、Tr2…時間、Vth1…閾値、Vth2…閾値、W1…波形、W2…波形、WA…反射波、WB…路面反射波、WC…合成波
図1
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