(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068965
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240514BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240514BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01G4/33 102
H01G4/30 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179676
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】徳矢 浩章
(72)【発明者】
【氏名】青池 将之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅博
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5F038
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC09
5E001AE01
5E001AH03
5E001AJ02
5E082AB01
5E082BC19
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG27
5E082FG42
5F038AC05
5F038AC15
5F038AC16
5F038EZ01
5F038EZ02
5F038EZ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラックが発生しても信頼性の低下が生じにくいキャパシタを含む電子部品及び電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品において、化合物半導体からなる基板10の一方の面である上面10Aの一部の領域の上に、基板側から順番に積層された下層電極21、誘電体膜23及び上層電極22を含むMIMキャパシタ20が配置されている。また、誘電体膜23より上に、絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜24が配置されている。被膜24は、上面を平面視したとき、下層電極21の縁の全周に亘って、下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体からなる基板と、
前記基板の一方の面である上面の一部の領域の上に、前記基板側から順番に積層された下層電極、誘電体膜、及び上層電極を含むキャパシタと、
前記誘電体膜より上に配置され、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周に亘って、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜と
を備えた電子部品。
【請求項2】
前記被膜は前記誘電体膜より薄い請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記被膜の下地表面は、前記基板の前記上面に平行な平坦領域と、前記下層電極の側面からなる段差が反映された段差領域とを含み、前記被膜のうち前記段差領域を覆う部分の厚さが、前記平坦領域を覆う部分の厚さと等しい請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記被膜を構成する金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化亜鉛、及びチタン酸ストロンチウムからなる群より選択された少なくとも1つである請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記被膜は、前記誘電体膜と前記上層電極との間に配置されている請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記被膜は、前記上層電極の上に配置されている請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項7】
さらに、前記上層電極と前記被膜との間に配置された絶縁膜を備えた請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁と前記上層電極の縁とが、相互にずれた位置に配置されている請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項9】
前記上面を平面視したとき、前記上層電極の縁の一部分が前記下層電極の縁より内側に配置されており、残りの一部分が前記下層電極の縁より外側に配置されている請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記上面を平面視したとき、前記上層電極の縁の全周が前記下層電極の縁より外側に配置されている請求項8に記載の電子部品。
【請求項11】
前記基板を構成する化合物半導体はGaAsである請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項12】
化合物半導体からなる基板の一方の面である上面の上に、下層電極を形成し、
前記下層電極の上に誘電体膜を形成し、
前記誘電体膜の上に上層電極を形成し、
前記誘電体膜を形成した後であって前記上層電極を形成する前、または前記上層電極を形成した後に、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周において、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜を形成する電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記被膜は、原子層堆積法を用いて形成する請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板の上に配置されたMIMキャパシタが公知である(特許文献1)。特許文献1に記載されたMIMキャパシタは、下部電極及び上部電極にTiNが用いられ、下部電極と上部電極との間に、誘電体膜としてZrO2膜及びTiO2膜の2層が配置されている。上部電極及び誘電体膜の側壁に、側壁絶縁用酸化シリコン膜が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板とMIMキャパシタの電極との間の線膨張係数の相違に起因して応力が発生する。応力は、下部電極や上部電極の縁の近傍に集中し、この部分にクラックが発生しやすい。クラックが発生すると、外部からクラックを通してMIMキャパシタ内に水分が侵入し、MIMキャパシタの信頼性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、クラックが発生しても信頼性の低下が生じにくいキャパシタを含む電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
化合物半導体からなる基板と、
前記基板の一方の面である上面の一部の領域の上に、前記基板側から順番に積層された下層電極、誘電体膜、及び上層電極を含むキャパシタと、
前記誘電体膜より上に配置され、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周に亘って、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜と
を備えた電子部品が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
化合物半導体からなる基板の一方の面である上面の上に、下層電極を形成し、
前記下層電極の上に誘電体膜を形成し、
前記誘電体膜の上に上層電極を形成し、
前記誘電体膜を形成した後であって前記上層電極を形成する前、または前記上層電極を形成した後に、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周において、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜を形成する電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
被膜が、下層電極、上層電極、及び誘電体膜への水分の侵入を抑制する。これにより、電子部品の信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施例による電子部品の各構成要素の平面的な位置関係を示す図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、それぞれ
図1の一点鎖線2A-2A、及び一点鎖線2B-2Bにおける断面図である。
【
図3】
図3は、比較例及び実施例による電子部品の信頼性の測定結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、比較例及び実施例による電子部品の被膜下の誘電体膜の酸素原子濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図5】
図5A、
図5B、及び
図5Cは、それぞれ第1実施例の複数の変形例による電子部品の各構成要素の平面的な位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施例]
図1から
図4までの図面を参照して第1実施例による電子部品について説明する。
図1は、第1実施例による電子部品の各構成要素の平面的な位置関係を示す図である。化合物半導体からなる基板10の一方の縁である上面の一部の領域に、下層電極21が配置されている。基板10の上面を平面視したとき(以下、「平面視において」という。)、下層電極21は、平面視においてほぼ長方形の主部21Aと、主部21Aの1つの辺の中央から外側に向かって突出した突出部21Bとを含む。
【0011】
下層電極21の主部21Aと重なるように上層電極22が配置されており、突出部21Bと重なるように引出配線25が配置されている。下層電極21と上層電極22との間、及び下層電極21と引出配線25との間には、後述するように、誘電体膜23及び被膜24が配置されている。誘電体膜23及び被膜24は、平面視において下層電極21の縁の全周に重なり、下層電極21の縁の全周にわたって、下層電極21の縁より内側の領域から外側の領域まで広がっている。なお、被膜24は、下層電極21の縁より内側の全域に配置されていなくてもよい。ここで、「ある部分の縁より内側」とは、平面視において当該部分の縁を仕切りとして、仕切りより中のほうを意味し、「ある部分の縁より外側」とは、平面視において当該部分の縁を仕切りとして、仕切りより外のほうを意味する。
【0012】
平面視において、上層電極22の縁は、下層電極21の縁からずれた位置に配置されている。例えば、下層電極21の主部21Aの4つの辺のうち、突出部21Bが突出する辺、及びそれに隣り合う2つの辺においては、上層電極22の縁が下層電極21の縁より内側にずれて配置されている。他の1つの辺においては、上層電極22の縁が下層電極21の主部21Aの縁より外側にずれて配置されている。引出配線25は、その下の誘電体膜に設けられた開口26を通って下層電極21に接続されている。
【0013】
図2A及び
図2Bは、それぞれ
図1の一点鎖線2A-2A、及び一点鎖線2B-2Bにおける断面図である。化合物半導体からなる基板10の一方の面である上面10Aの一部の領域に、下層電極21が配置されている。基板10の上面10A及び下層電極21を覆うように、誘電体膜23が配置されている。誘電体膜23は、例えば基板10の上面10Aの全域に配置される。
【0014】
誘電体膜23の下地表面(誘電体膜23の下面)には、下層電極21の側面からなる段差を含む。誘電体膜23の上面は、下層電極21の上面及び下層電極21が配置されていない領域の基板10の上面10Aを覆う平坦領域23F、及び下層電極21の側面からなる段差を反映した段差領域23Sを含む。誘電体膜23の上面の平坦領域23Fは、基板10の上面10Aに平行である。ここで、「平行」は、幾何学的に厳密な平行であることを意味しているわけではなく、製造プロセス上のばらつき等によって許容される範囲内で、厳密な平行からずれている関係も「平行」に含まれる。
【0015】
誘電体膜23の上に、絶縁性の被膜24が配置されている。被膜24の下地表面である誘電体膜23の上面の平坦領域23F及び段差領域23Sをコンフォーマルに覆う。例えば、平坦領域23Fを覆う被膜24の厚さと、段差領域23Sを覆う被膜24の厚さとが等しい。ここで、「厚さが等しい」とは、例えば、下地表面の形状に依らず、平坦領域23F及び段差領域23Sのいずれの領域においても同じ厚さの膜が形成される条件で形成された膜の、平坦領域23F上の部分の厚さと段差領域23S上の部分の厚さとが等しいことを意味する。成膜プロセス上の許容範囲内のばらつきに起因する膜厚のばらつき程度の厚さの違いがある場合でも「厚さが等しい」といえる。被膜24の厚さは、例えば1nm以上20nm以下であり、被膜24で覆われている領域の誘電体膜23のいずれの箇所の厚さより薄い。
【0016】
被膜24の一部の上に、上層電極22及び引出配線25が配置されている。上層電極22の一部分は、平面視において下層電極21の主部21Aと重なっている。下層電極21、上層電極22、及び両者の間に配置された誘電体膜23によってMIMキャパシタが構成される。引出配線25の一部は、平面視において下層電極21の突出部21Bと重なっており、誘電体膜23及び被膜24に設けられた開口26を通って下層電極21に接続されている。上層電極22、引出配線25、及び被膜24を、絶縁膜28が覆う。
【0017】
次に、電子部品の各構成要素の材料について説明する。
基板10として、化合物半導体基板、例えば半絶縁性のGaAs基板が用いられる。なお、基板10として、下地基板と、その上に形成されたエピタキシャル成長層または絶縁層を含むものを用いてもよい。下層電極21、上層電極22、及び引出配線25には、例えばAu、Ti、Pt、W等の金属材料が用いられる。誘電体膜23には、例えば窒化シリコン(SiN)が用いられる。なお、誘電体膜23は、不純物として酸素を含んでいてもよい。
【0018】
被膜24には、絶縁性の金属酸化物、またはシリコン酸化物(SiO2)が用いられる。絶縁性の金属酸化物の例として、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等が挙げられる。なお、実際の被膜24は、カッコ内に示した化学式の化学量論的組成からずれている場合もある。
【0019】
次に、
図2A及び
図2Bを参照しながら、第1実施例による電子部品の製造方法について説明する。まず、基板10の上面10Aの一部の領域に下層電極21を形成する。下層電極21の成膜には、例えば、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法等が用いられる。下層電極21及び基板10の上に、誘電体膜23を形成する。誘電体膜23の形成には、例えばプラズマCVD法等が用いられる。誘電体膜23の一部をエッチング除去することにより、開口26を形成する。誘電体膜23をプラズマCVD法で形成すると、段差領域23Sの部分の厚さが、平坦領域23Fの部分の厚さより薄くなる。
【0020】
誘電体膜23の上に、被膜24を形成する。被膜24の形成には、例えば原子層堆積法(ALD法)が用いられる。ALD法を用いることにより、誘電体膜23の上面の平坦領域23F及び段差領域23Sに、ほぼ同じ厚さの被膜24を堆積させることができるとともに、緻密な膜を形成することができる。被膜24を形成した後、被膜24の一部をエッチング除去することにより開口26を形成する。なお、誘電体膜23と被膜24とを形成した後、この2層の一部を一括してエッチング除去することにより、開口26を形成してもよい。
【0021】
被膜24の上に、上層電極22及び引出配線25を形成する。上層電極22及び引出配線25の形成には、例えばスパッタリング法、蒸着法、メッキ法等が用いられる。上層電極22及び引出配線25を覆うように、絶縁膜28を形成する。絶縁膜28の形成には、例えばプラズマCVD法が用いられる。
【0022】
次に、
図3及び
図4を参照して第1実施例の優れた効果について説明する。
基板10と、下層電極21及び上層電極22との線膨張係数の相違に起因して、熱応力が発生する。熱応力は、特に上層電極22や下層電極21の側面からなる段差の近傍に集中しやすい。その結果、上層電極22の段差近傍の絶縁膜28や誘電体膜23にクラックが発生しやすくなり、下層電極21の段差近傍の絶縁膜28や誘電体膜23にクラックが発生しやすくなる。例えば、絶縁膜28にクラックが発生すると、クラックを通ってMIMキャパシタ20内に水分が侵入することにより、MIMキャパシタの信頼性が低下する。
【0023】
さらに、誘電体膜23に水分が侵入すると、誘電体膜23が変質し、MIMキャパシタ20の電気的特性が目標とする特性からずれてしまう。
【0024】
第1実施例による電子部品においては、被膜24が水分の浸入を抑制するバリア膜として機能する。このため、クラックが発生してもMIMキャパシタ20の下層電極21及び誘電体膜23内に水分が侵入しにくくなり、MIMキャパシタの信頼性の低下を抑制することができる。
【0025】
通常、金属酸化物からなる被膜24の線膨張係数は、窒化シリコンからなる誘電体膜23の線膨張数より大きい。誘電体膜23と被膜24との線膨張係数の差に起因する熱応力の影響を軽減させるために、被膜24を誘電体膜23より薄くすることが好ましく、被膜24の厚さを、誘電体膜23の平坦領域23Fに相当する部分の厚さの1/10以下にすることがより好ましい。
【0026】
図3は、比較例及び実施例による電子部品の信頼性の測定結果を示すグラフである。横軸は、被膜24(
図2A、
図2B)の厚さを単位[nm]で表し、縦軸は、信頼性寿命MTTFを、被膜24の厚さが20nmのときの値を1とした正規化値で表す。被膜24として、酸化アルミニウムを用い、厚さが0nm(比較例)、1nm、5nm、10nm、及び20nmの試料を作製した。被膜24を配置すると、被膜24を配置していない構成とくらべて、MTTFが長くなっていることがわかる。特に、被膜24の厚さが1nm以上のときに、MTTFが長くなる充分な効果が得られている。被膜24が厚くなると、被膜24の成膜に必要な時間が長くなる。また、被膜24を必要以上に厚くしても、信頼性を高める効果は大きく変わらない。信頼性を高める充分な効果が得られ、かつ成膜時間の長大化を抑制するために、被膜24の厚さを20nm以下にすることが好ましい。
【0027】
図4は、比較例及び実施例による電子部品の被膜24下の誘電体膜23の酸素原子濃度の測定結果を示すグラフである。横軸は、被膜24(
図2A、
図2B)の厚さを単位[nm]で表し、縦軸は、酸素原子濃度を単位「O1s原子濃度%(atm%)」で表す。酸素濃度は、X線光電子分光法により測定した。被膜24の厚さが0nmの試料が、比較例によるものである。
【0028】
図4の丸記号及び破線は、製造直後における測定値を示し、三角記号及び実線は、高温高湿試験後における測定値を示す。製造直後及び高温高湿試験後のいずれにおいても、被膜24の厚さが厚くなるにしたがって酸素濃度が低下していることがわかる。これは、水分の浸入が抑制されていることを表す。
【0029】
図3及び
図4に結果を示した評価実験により、被膜24を配置することによって水分の浸入及び信頼性の低下が抑制されることが確認された。
【0030】
次に、
図5A、
図5B、及び
図5Cを参照して第1実施例の変形例による電子部品について説明する。
図5A、
図5B、及び
図5Cは、それぞれ第1実施例の複数の変形例による電子部品の各構成要素の平面的な位置関係を示す図である。
【0031】
第1実施例(
図1)では、上層電極22の縁が下層電極21の縁からずれており、上層電極22の3つの辺が下層電極21の対応する辺から内側に向かってずれており、残りの1つの辺が下層電極21の対応する辺から外側に向かってずれている。
図5A、
図5B、及び
図5Cに示した変形例では、下層電極21と上層電極22との各辺の位置関係が異なっている。
【0032】
図5Aに示した変形例では、突出部21Bが設けられていない下層電極21の主部21Aの3つの辺に対応する上層電極22の3つの辺が、下層電極21の主部21Aの対応する3つの辺より外側に向かってずれている。突出部21Bが設けられている下層電極21の主部21Aの辺に対応する上層電極22の1つの辺は、下層電極21の主部21Aの対応する辺より内側に向かってずれている。
【0033】
図5Bに示した変形例では、突出部21Bが設けられている下層電極21の主部21Aの辺、その反対側の辺、及び他の1つの辺に対応する上層電極22の3つの辺が、下層電極21の主部21Aの対応する3つの辺より外側に向かってずれている。上層電極22の残りの1つの辺は、下層電極21の主部21Aの対応する辺より内側に向かってずれている。
【0034】
図5Cに示した変形例では、上層電極22の4つの辺が、下層電極21の主部21Aの対応する4つの辺より外側に向かってずれている。すなわち、平面視において、上層電極22は下層電極21の主部21Aを包含している。
【0035】
図5A、
図5B、
図5Cに示した変形例においても、平面視において上層電極22の縁を下層電極21の縁からずらすことにより、応力の集中を緩和させることができる。これにより、クラックの発生を抑制することができる。
【0036】
また、
図5Cに示した第1実施例の変形例では、下層電極21の主部21Aの縁の全周が、被膜24(
図2A、
図2B)のみならず、上層電極22によっても被覆されている。このため、クラックが発生しても、MIMキャパシタ20の下層電極21及び誘電体膜23への水分の浸入を抑制する効果を高めることができる。
【0037】
[第2実施例]
次に、
図6A及び
図6Bを参照して第2実施例による電子部品について説明する。以下、
図1から
図4までの図面を参照して説明した第1実施例による電子部品と共通の構成については説明を省略する。
【0038】
図6A及び
図6Bは、第2実施例による電子部品の断面図である。
図6A及び
図6Bは、それぞれ
図1の一点鎖線2A-2A、及び一点鎖線2B-2Bにおける断面図に対応する。
【0039】
第1実施例(
図2A、
図2B)では、被膜24が誘電体膜23と上層電極22との間、及び引出配線25と誘電体膜23との間に配置されている。上層電極22及び引出配線25が配置されていない領域においては、被膜24は誘電体膜23と絶縁膜28との間に配置されている。これに対して第2実施例では、被膜24が上層電極22と絶縁膜28との間、及び引出配線25と絶縁膜28との間に配置されている。上層電極22及び引出配線25が配置されていない領域においては、第1実施例と同様に、被膜24は誘電体膜23と絶縁膜28との間に配置されている。
【0040】
第2実施例においても、平面視において、被膜24が、下層電極21の縁の全周にわたって、下層電極21の縁より内側の領域から外側の領域まで広がっている。このため、第1実施例と同様に、下層電極21及び誘電体膜23に水分が浸入しにくくなる。このため、水分の浸入による信頼性の低下を抑制することができる。
【0041】
さらに、第2実施例では、被膜24が上層電極22を覆い、平面視において、上層電極22の縁の全周にわたって、上層電極22の縁より内側の領域から外側の領域まで広がっている。このため、下層電極21及び誘電体膜23のみならず、上層電極22への水分の浸入も抑制することができる。
【0042】
[第3実施例]
次に、
図7A及び
図7Bを参照して第3実施例による電子部品について説明する。以下、
図1から
図4までの図面を参照して説明した第1実施例による電子部品と共通の構成については説明を省略する。
【0043】
図7A及び
図7Bは、第3実施例による電子部品の断面図である。
図7A及び
図7Bは、それぞれ
図1の一点鎖線2A-2A、及び一点鎖線2B-2Bにおける断面図に対応する。
【0044】
第1実施例(
図2A、
図2B)では、被膜24が誘電体膜23と上層電極22との間、及び引出配線25と誘電体膜23との間に配置されている。上層電極22及び引出配線25が配置されていない領域においては、被膜24は誘電体膜23と絶縁膜28との間に配置されている。これに対して第3実施例では、被膜24が絶縁膜28の上に配置されている。
【0045】
第3実施例においても、平面視において、被膜24が、下層電極21の縁の全周にわたって、下層電極21の縁より内側の領域から外側の領域まで広がっている。このため、第1実施例と同様に、下層電極21及び誘電体膜23に水分が浸入しにくくなる。このため、水分の浸入による信頼性の低下を抑制することができる。
【0046】
さらに、第3実施例では第2実施例と同様に、被膜24が絶縁膜28を介して上層電極22を覆い、平面視において、上層電極22の縁の全周にわたって、上層電極22の縁より内側の領域から外側の領域まで広がっている。このため、上層電極22、絶縁膜28、及び下層電極21に水分が浸入しにくくなる。
【0047】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0048】
本明細書に記載した上記実施例に基づき、以下の発明を開示する。
<1>
化合物半導体からなる基板と、
前記基板の一方の面である上面の一部の領域の上に、前記基板側から順番に積層された下層電極、誘電体膜、及び上層電極を含むキャパシタと、
前記誘電体膜より上に配置され、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周に亘って、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜と
を備えた電子部品。
【0049】
<2>
前記被膜は前記誘電体膜より薄い<1>に記載の電子部品。
【0050】
<3>
前記被膜の下地表面は、前記基板の前記上面に平行な平坦領域と、前記下層電極の側面からなる段差が反映された段差領域とを含み、前記被膜のうち前記段差領域を覆う部分の厚さが、前記平坦領域を覆う部分の厚さと等しい<1>または<2>に記載の電子部品。
【0051】
<4>
前記被膜を構成する金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化亜鉛、及びチタン酸ストロンチウムからなる群より選択された少なくとも1つである<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0052】
<5>
前記被膜は、前記誘電体膜と前記上層電極との間に配置されている<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0053】
<6>
前記被膜は、前記上層電極の上に配置されている<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0054】
<7>
さらに、前記上層電極と前記被膜との間に配置された絶縁膜を備えた<6>に記載の電子部品。
【0055】
<8>
前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁と前記上層電極の縁とが、相互にずれた位置に配置されている<1>乃至<7>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0056】
<9>
前記上面を平面視したとき、前記上層電極の縁の一部分が前記下層電極の縁より内側に配置されており、残りの一部分が前記下層電極の縁より外側に配置されている<8>に記載の電子部品。
【0057】
<10>
前記上面を平面視したとき、前記上層電極の縁の全周が前記下層電極の縁より外側に配置されている<8>に記載の電子部品。
【0058】
<11>
前記基板を構成する化合物半導体はGaAsである<1>乃至<10>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0059】
<12>
化合物半導体からなる基板の一方の面である上面の上に、下層電極を形成し、
前記下層電極の上に誘電体膜を形成し、
前記誘電体膜の上に上層電極を形成し、
前記誘電体膜を形成した後であって前記上層電極を形成する前、または前記上層電極を形成した後に、前記上面を平面視したとき、前記下層電極の縁の全周において、前記下層電極の縁より内側の領域から外側の領域まで広がる絶縁性の金属酸化物またはシリコン酸化物からなる被膜を形成する電子部品の製造方法。
【0060】
<13>
前記被膜は、原子層堆積法を用いて形成する<12>に記載の電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0061】
10 基板
10A 基板の上面
11 サブコレクタ層
20 MIMキャパシタ
21 下層電極
21A 下層電極の主部
21B 下層電極の突出部
22 上層電極
23 誘電体膜
23F 平坦領域
23S 段差領域
24 被膜
25 引出配線
26 開口
27 配線
28 絶縁膜
30 抵抗素子
31 配線
40 ヘテロ接合バイポーラトランジスタ
40B ベース層
40C コレクタ層
40E エミッタ層
41B ベース電極
41C コレクタ電極
41E エミッタ電極
42 絶縁膜
43B ベース配線
43C コレクタ配線
43E エミッタ配線