IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

特開2024-68974入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法
<>
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図1
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図2
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図3
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図4
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図5
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図6
  • 特開-入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068974
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240514BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G06F3/03 400B
G06F3/044 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179694
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(57)【要約】
【課題】ペンダウン操作よりも早いタイミングでかつ自動的に、静電容量結合方式の通信に関する通信モードを切り替え、又は、切り替える準備を行う。
【解決手段】電子ペン1は、アップリンク信号を受信する受信部11と、ダウンリンク信号を送信する送信部12と、電子機器2から給電信号を受信する受電部14と、受信部11及び送信部12に対して静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、受電部14が受信した給電信号が示すデータを取得するペンコントローラ16と、を備える。データは、通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、ペンコントローラ16は、更新情報の内容に応じて通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンと、当該電子ペンとの間で通信を行う電子機器と、を備える入力システムであって、
前記電子機器は、
静電容量結合方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、
前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、
前記電子ペンは、
前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、
前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、
前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、
前記受信部及び前記送信部に対して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、
前記データは、前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、
前記ペンコントローラは、前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う、入力システム。
【請求項2】
前記通信モードの更新は、複数種類の通信モードの中から1種類の通信モードへの切替、又は、1種類の通信モードにおける通信動作を特定するための通信制御条件の変更である、
請求項1に記載の入力システム。
【請求項3】
前記更新情報は、前記通信モードの種類を含み、
前記ペンコントローラは、前記更新情報に含まれる種類に対応する前記通信モードに切り替えて通信動作を行う、
請求項2に記載の入力システム。
【請求項4】
前記複数種類の通信モードには、
一方向通信によって前記ダウンリンク信号の送信のみを行う一方向モードと、
双方向通信によって前記アップリンク信号の受信及び前記ダウンリンク信号の送信の両方を行う双方向モードと、が含まれる、
請求項3に記載の入力システム。
【請求項5】
前記複数種類の通信モードには、
前記アップリンク信号の受信を契機として前記ダウンリンク信号を送信する同期モードと、
前記アップリンク信号の受信状況にかかわらず予め定められた送信周期で前記ダウンリンク信号を送信する非同期モードと、が含まれる、
請求項3に記載の入力システム。
【請求項6】
前記ペンコントローラは、前記更新情報の内容に応じて、前記センサコントローラとの間で前記通信モードを更新するための交渉動作の実行が必要であるかを判定する、
請求項1に記載の入力システム。
【請求項7】
前記ペンコントローラは、前記交渉動作の実行が必要であると判定された場合、前記静電容量結合方式の通信における前記電子機器との接続を契機として前記交渉動作を開始する、
請求項6に記載の入力システム。
【請求項8】
前記ペンコントローラは、前記交渉動作の実行が必要であると判定され、かつ前記アップリンク信号の受信が無効である場合、前記アップリンク信号の受信を無効から有効に切り替えて前記交渉動作を開始する、
請求項6に記載の入力システム。
【請求項9】
前記ペンコントローラは、前記交渉動作の実行が必要であると判定された時点から有効期間が経過するまでの間に前記交渉動作の実行ができなかった場合、前記交渉動作を終了する、
請求項6に記載の入力システム。
【請求項10】
前記センサコントローラは、前記ペンコントローラとの間の前記交渉動作を通じて、変更すべき前記通信モードを決定する、
請求項6に記載の入力システム。
【請求項11】
前記ペンコントローラは、前記センサコントローラとの間の前記交渉動作を通じて、変更すべき前記通信モードを決定する、
請求項6に記載の入力システム。
【請求項12】
前記更新情報は、前記通信モードの種類、前記通信制御条件、及び、前記通信モードを更新するための交渉を要求する交渉指令のうちの少なくとも1つを含む、
請求項2に記載の入力システム。
【請求項13】
電子機器とともに用いられる電子ペンであって、
前記電子機器は、
静電容量方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、
前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、
前記電子ペンは、
前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、
前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、
前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、
前記受信部及び前記送信部を介して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、
前記データは、前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、
前記ペンコントローラは、前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う、電子ペン。
【請求項14】
電子機器とともに用いられる電子ペンの制御方法であって、
前記電子機器は、
静電容量結合方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、
前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、
前記電子ペンは、
前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、
前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、
前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、
前記受信部及び前記送信部を介して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、
前記ペンコントローラが、
前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含む前記データを取得し、
前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う、電子ペンの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置指示器である電子ペン(あるいは、スタイラス)と、タッチセンサを備える電子機器と、から構成される入力システムが知られている。例えば、静電容量結合方式の電子ペンにおいて、電子機器との間で通信動作の適正化を行うための様々な技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、第一ペン信号又は第二ペン信号のいずれか一方のペン信号を受信可能であるセンサコントローラとの間で、スタイラスとセンサコントローラが接続されたセンサとの静電結合を利用して信号の送受信を行うアクティブスタイラスが開示されている。また、同文献には、アクティブスタイラスが操作面にタッチしたことが検出されたことを契機に、動作モードを遷移する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-054544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常、ペンダウン操作は通信セッションの開始後に行われるため、上記特許文献1に開示される電子ペンでは、通信モードを更新するタイミングが遅延する場合がある。
【0006】
そこで本発明は、ペンダウン操作よりも早いタイミングでかつ自動的に、静電容量結合方式の通信に関する通信モードを切り替え、又は、切り替える準備を行うことができる、入力システム、電子ペン、及び、電子ペンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係る入力システムは、電子ペンと、当該電子ペンとの間で通信を行う電子機器と、を備えるシステムであって、前記電子機器は、静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、前記電子ペンは、前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、前記受信部及び前記送信部に対して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、前記データは、前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、前記ペンコントローラは、前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【0008】
本発明の第二態様に係る電子ペンは、電子機器とともに用いられるペンであって、前記電子機器は、静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、前記電子ペンは、前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、前記受信部及び前記送信部を介して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、前記データは、前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、前記ペンコントローラは、前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【0009】
本発明の第三態様に係る電子ペンの制御方法は、電子機器とともに用いられる電子ペンの制御方法であって、前記電子機器は、静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサを介して前記電子ペンとの間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラと、前記電子ペンが特定の状態にある場合、前記センサコントローラからの指令に応じて、前記電子ペンに電力を供給するための給電信号を、前記静電容量結合方式の通信とは別の通信によって前記電子ペンに出力する送電部と、を備え、前記電子ペンは、前記電子機器からアップリンク信号を受信する受信部と、前記電子機器にダウンリンク信号を送信する送信部と、前記別の通信によって前記電子機器から前記給電信号を受信する受電部と、前記受信部及び前記送信部を介して前記静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、前記受電部が受信した前記給電信号が示すデータを取得するペンコントローラと、を備え、前記ペンコントローラが、前記通信モードの更新を要求するための更新情報を含む前記データを取得し、前記更新情報の内容に応じて前記通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペンダウン操作よりも早いタイミングでかつ自動的に、静電容量結合方式の通信に関する通信モードを切り替え、又は、切り替える準備を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る入力システムの全体構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図2】双方向モードを概略的に示す図である。
図3】一方向モードを概略的に示す図である。
図4図1の入力システムによるモード更新動作の第一例を示すシーケンス図である。
図5図1の入力システムによるモード更新動作の第二例を示すシーケンス図である。
図6図1の入力システムによる交渉動作の第一例を示すシーケンス図である。
図7図1の入力システムによる交渉動作の第二例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
[入力システムの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る入力システムの全体構成の一例を概略的に示すブロック図である。図1に示すように、(以下、本実施形態)に係る入力システムは、電子ペン1、及び、電子ペン1との間で通信を行う電子機器2を主要部として備えている。ユーザは、電子機器2のタッチ面に対して電子ペン1のペン先を押し当てながら移動させたり、自身の指をタッチ面に接触させて移動させたりすることで、電子機器2に絵や文字を書き込む等の所望の操作を行うことができる。
【0014】
<電子ペン1の装置構成>
本実施形態では、電子ペン1は、アクティブ静電容量結合(AES)方式のアクティブスタイラスから構成される。具体的には、電子ペン1は、受信部11、送信部12、受電部14、蓄電部15、ペンコントローラ16、及び、磁石17を主要部として備えている。なお、電子ペン1は、上記構成以外にも、筆圧を検出する筆圧センサや、ユーザによる押下操作を受け付けるスイッチ操作部を備えているが、これらの図示及び詳細な説明については省略する。
【0015】
受信部11は、ペンコントローラ16による受信制御を通じて、電子機器2が有するタッチセンサ21を介して送信された信号(以下、「アップリンク信号」と呼称する)を受信する。具体的には、受信部11は、電子ペン1の先端に設けられるペン先電極13と、ペン先電極13に接続される受信回路11cと、を備える。
【0016】
送信部12は、ペンコントローラ16による送信制御を通じて、ダウンリンク信号を生成するとともに当該ダウンリンク信号を電子機器2に送信する。具体的には、送信部12は、電子ペン1の先端に設けられたペン先電極13と、ペン先電極13に接続される送信回路12cと、を備える。なお、図1では、受信部11のペン先電極13と送信部12のペン先電極13は、同一の構成であるが、別々の構成であってもよい。
【0017】
受電部14は、電子ペン1に電力を供給するための信号(以下、「給電信号」と呼称する)を電子機器2から受信する。例えば、電磁誘導方式の無線給電の場合、受電部14は、受電コイル及び受電用ワンターンコイルからなる受電素子を含んで構成される。また、電界結合方式の無線給電の場合、受電部14は、一対の電極からなる受電素子を含んで構成される。
【0018】
上記した給電信号は、無線信号又は有線信号のいずれであってもよい。このうち無線信号の場合、給電信号は電界、磁界、あるいはそれら両方を含む電磁波によって伝達される。また、無線信号、有線信号の給電規格は、機関により定められた規格であってもよいし、独自の規格であってもよい。無線給電の規格として、例えば、Qi(登録商標)、NFC(Near Field Communication)が挙げられる。有線給電の規格として、例えば、USB Type-C(登録商標)、USB PD(Power Delivery)が挙げられる。
【0019】
蓄電部15は、例えば、バッテリーやキャパシタを含んで構成され、ペンコントローラ16を含む駆動部に対して電力を供給する。また、給電信号が有する電気エネルギーが供給されることにより、蓄電部15の充電が行われる。
【0020】
ペンコントローラ16は、受信回路11c、送信回路12c、及び受電部14にそれぞれ接続された集積回路から構成される。具体的には、ペンコントローラ16は、MCU(Micro Control Unit)を含むプロセッサ、及び不揮発性のメモリを含んで構成される。このメモリには、電子ペン1における処理の実行に必要な様々なプログラム、又はペンコントローラ16の識別情報(つまり、ペンID)を含む様々なデータが記憶されている。これにより、ペンコントローラ16は、[1]受信部11に対する受信制御、[2]送信部12に対する送信制御、及び[3]受電部14に対する受電制御を行う。
【0021】
磁石17は、後述する磁石25とは反対の磁極を有する。磁石17は、永久磁石に代えて、電力の供給により磁化する磁性体から構成されてもよい。磁石17は、例えば、図示しない筐体の外周面に設けられている。
【0022】
<電子機器2の装置構成>
本実施形態では、電子機器2は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータからなるコンピュータである。具体的には、電子機器2は、タッチセンサ21、送電部22、センサコントローラ23、ホストプロセッサ24、及び、磁石25を主要部として備えている。
【0023】
タッチセンサ21は、複数の検出電極を面状に配置してなる静電容量方式の面状センサである。このタッチセンサ21は、例えば、センサ座標系のX軸の位置を検出するための複数本のXライン電極と、Y軸の位置を検出するための複数本のYライン電極とを含んで構成される。各々のライン電極は、ITO(Indium Tin Oxide)を含む透明導電性材料から構成されてもよいし、ワイヤメッシュセンサから構成されてもよい。なお、タッチセンサ21は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0024】
送電部22は、センサコントローラ23が生成したデータを含む給電信号を電子ペン1に出力する。例えば、電磁誘導方式の無線給電の場合、送電部22は、送電用ワンターンコイル及び送電コイルなる送電素子を含んで構成される。また、電界結合方式の無線給電の場合、受電部14は、一対の電極からなる受電素子を含んで構成される。
【0025】
センサコントローラ23は、タッチセンサ21及び送電部22にそれぞれ接続された集積回路から構成される。具体的には、センサコントローラ23は、MCUを含むプロセッサ、及び不揮発性のメモリを含んで構成される。このメモリには、電子機器2における処理の実行に必要な様々なプログラム、又はセンサコントローラ23の識別情報を含む様々なデータが記憶されている。これにより、センサコントローラ23は、[1]タッチセンサ21に対する送受信制御、[2]送電部22に対する出力制御、及び[3]ホストプロセッサ24との連携動作を行う。
【0026】
ホストプロセッサ24は、CPU(Central Processing Unit)、又は、GPU(Graphics Processing Unit)からなるプロセッサである。ホストプロセッサ24は、図示しない不揮発性のメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、センサコントローラ23からのデータを用いてストロークデータを生成し、レンダリングして表示パネルに表示させる処理、及び、データの送受信制御を含む、様々な機能を実行する。
【0027】
磁石25は、上記の磁石17とは反対の磁極を有する。磁石25は、永久磁石に代えて、電力の供給により磁化する磁性体から構成されてもよい。磁石25は、例えば、図示しない筐体の側部に設けられている。
【0028】
[入力システムの動作]
続いて、本実施形態に係る入力システムの動作について、図1及び図2図7を参照しながら説明する。
【0029】
<通信モードの説明>
電子ペン1及び電子機器2は、ペン先電極13及びタッチセンサ21を介して、静電容量結合方式による通信を行う。この通信の際、電子ペン1のペンコントローラ16は、複数種類の通信モードに従って通信制御を行う。
【0030】
通信モードの種類(あるいは、モード種類)は、機能別に分類されるモード種類と、規格別に分類されるモード種類に大別される。機能別に分類されるモード種類の例として、[1]一方向モード、[2]双方向モード(さらには、同期モード/非同期モード)、[3]連続送信モード、[4]断続送信モード等が挙げられる。規格別に分類されるモード種類の例として、電子ペン1の製造業者毎に定められた独自のプロトコル、電子機器2の製造業者毎に定められた独自のプロトコル等が挙げられる。
【0031】
図2は、双方向モードを概略的に示す図である。まず、電子機器2は、予め定められた周期でアップリンク信号を送信する。このアップリンク信号は、電子機器2の近くにある電子ペン1により受信される。そして、電子ペン1は、アップリンク信号を受信したことを契機としてダウンリンク信号を生成して電子機器2に送信する。このダウンリンク信号は、電子ペン1の近くにある電子機器2により受信される。このように、「双方向モード」とは、電子ペン1が、双方向通信によってアップリンク信号の受信及びダウンリンク信号の送信の両方を行う通信モードに相当する。特に、「同期モード」とは、電子ペン1が、電子機器2からのアップリンク信号の指示に基づいたタイミング(時間スロット)でダウンリンク信号を電子機器2へ送信する通信モードに相当する。また、「非同期モード」とは、電子ペン1が、アップリンク信号の指示によらないタイミング(時間スロット)でダウンリンク信号を電子機器2へ送信する通信モードに相当する。
【0032】
図3は、一方向モードを概略的に示す図である。電子機器2は、第一の送信タイミングが到来した場合、アップリンク信号を生成して電子機器2に送信する。このアップリンク信号は、電子機器2の近くにある電子ペン1により受信される。第一の送信タイミングから予め定められた時間(つまり、送信周期)が経過した後、電子ペン1は、ダウンリンク信号を生成して電子機器2に送信する。この送信は、電子ペン1の近くにある電子機器2がダウンリンク信号を送信したか否かにかかわらずに行われる。このように、「一方向モード」とは、電子ペン1が、電子機器2からのアップリンク信号を受信したことを契機として、その後、一方向通信によってダウンリンク信号の送信のみを行う通信モードに相当する。
【0033】
例えば、電子ペン1及び電子機器2の両方に「双方向モード」が設定されている場合、電子ペン1及び電子機器2は、同一の通信モード(つまり、双方向モード)に従って通信セッションを円滑に開始することができる。ところが、電子ペン1に「一方向モード」が電子機器2に「同期モード」がそれぞれ設定されている場合、電子ペン1によるアップリンク信号の受信に遅延が生じ、通信セッションを円滑に開始できない場合がある。そこで、本実施形態に係る入力システムは、電子ペン1及び電子機器2の協働を通じて、より早いタイミングでかつ自動的に通信モードを切り替える動作(以下、「モード変更動作」と呼称する)を行う。
【0034】
<モード変更動作の説明>
まず、電子機器2のセンサコントローラ23は、電子ペン1が特定の状態であるか否かを検出する。ここで、「特定の状態」とは、電子ペン1が給電可能状態であることを意味する。「特定の状態」の一例として、[1]磁石25の近くに設けられた磁気センサにより検出される磁力の大きさが閾値を超えたこと、[2]送電部22の近くに設けられた光学センサにより物体(ここでは、電子ペン1)が検出されたこと、[3]電子ペン1と電子機器2の間の電気的な接続が確認されたことが挙げられる。
【0035】
センサコントローラ23は、上記した特定の状態が検出された場合、電子ペン1に提供しようとするデータを生成し、当該データを送電部22に出力する。このデータは、電子ペン1が実行する通信モードの更新を要求するための情報(以下、「更新情報」と呼称する)を含む。ここで、「通信モードの更新」とは、[1]複数種類の通信モードの中から1種類の通信モードへの「切替」、又は[2]1種類の通信モードにおける電子ペン1の通信動作を特定するための通信制御条件の「変更」を意味する。また、更新情報は、[1]通信モードの種類、[2]通信制御条件、及び、[3]通信モードを更新するための交渉を要求するコマンド(以下、「交渉指令」と呼称する)のうちの少なくとも1つを含む。通信制御条件の一例として、送信周期(いわゆる、スロット時間)、利用周波数、搬送波の波形・振幅、信号フォーマット等が挙げられる。
【0036】
送電部22は、センサコントローラ23から供給されたデータに対して変調処理を含む信号処理を施して、得られた給電信号を電子ペン1に出力する(すなわち、送電部22は、静電容量結合方式の通信とは別の通信によって給電信号を電子ペン1に出力する)。これにより、電子ペン1のペンコントローラ16は、受電部14を介して給電信号を受信するとともに、給電信号が示すデータを取得する。
【0037】
ペンコントローラ16は、取得したデータに含まれる更新情報の内容に応じて、通信モードの更新を行う。例えば、更新情報に含まれるモード種類が選択可能な値を示す場合、ペンコントローラ16は、該当する種類の通信モードに切り替える。また、更新情報に含まれる通信制御条件が選択可能な値を示す場合、ペンコントローラ16は、該当する通信制御条件に変更する。
【0038】
また、ペンコントローラ16は、通信モードの変更に先立ち、更新情報の内容から通信モードの更新の可否を判定してもよい。例えば、ペンコントローラ16は、更新情報に含まれるモード種類又は通信制御条件が選択可能な値を示す場合、通信モードの更新が可能であると判定し、該当する通信モードに更新する。反対に、ペンコントローラ16は、更新情報に含まれるモード種類又は通信制御条件が選択可能でない値を示す場合、通信モードの更新が不可であると判定し、通信モードを更新しない。
【0039】
また、ペンコントローラ16は、データに含まれる更新情報の内容から、通信モードの更新の準備を行ってもよい。ここで、「更新の準備」とは、電子ペン1が給電信号を受信している間は更新を行わないが、受信の停止後に更新を行える状態におくことを意味し、例えば、通信モードを決定するために電子機器2との間で行われる交渉に関する動作(以下、「交渉動作」と呼称する)が含まれる。
【0040】
ペンコントローラ16は、更新情報に交渉指令が含まれる場合、交渉動作の実行が必要であると判定するとともに、静電容量結合方式の通信における電子機器2との接続を契機として交渉動作を開始してもよい。この交渉動作に関して、通信モードの決定主体は、ペンコントローラ16であってもよいし、センサコントローラ23であってもよい。また、ペンコントローラ16は、上記した交渉動作の実行が必要であると判定された時点から有効期間が経過するまでの間に交渉動作の実行ができなかった場合、交渉動作を終了してもよい。
【0041】
ペンコントローラ16は、交渉動作の実行が必要であると判定し、かつ、受信部11のアップリンク信号の受信が無効に設定されている場合には、アップリンク信号の受信を無効から有効に切り替えて交渉動作を開始してもよい。ここで、「受信の無効」とは、[1]アップリンク信号を受信しない状態、又は[2]受信したアップリンク信号が示すデータを演算処理に使用しない状態を意味する。例えば、ペンコントローラ16は、「一方向モード」から「双方向モード」に一時的に切り替えた後に、交渉動作を開始してもよい。
【0042】
<モード更新動作の第一例>
続いて、入力システムが行うモード更新動作の第一例について、図4のシーケンス図を参照しながら説明する。第一例は、電子ペン1と電子機器2の間で交渉動作が行われない場合を想定する。
【0043】
図4のステップSP10において、ユーザが、電子ペン1を使用していない間、電子ペン1を電子機器2の側部の位置に固定する。そうすると、電子機器2のセンサコントローラ23は、電子ペン1の特定の状態、すなわち、磁石17,25同士が引き合う状態を検出されたことを確認する。
【0044】
ステップSP12において、電子機器2の送電部22は、ステップSP10での検出を開始した後に、センサコントローラ23の指令に応じて、電子ペン1の受電部14への給電信号の出力を開始する。
【0045】
ステップSP14において、電子ペン1のペンコントローラ16は、受電部14を介して受信された給電信号が示すデータを取得する。ここでは、「双方向モード」のモード種類がデータに含まれる場合を想定する。
【0046】
ステップSP16において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP14で取得されたデータの内容に応じて、通信モードの更新を行う。これにより、電子ペン1が実行する通信モードが「双方向モード」に更新される。その後、ステップSP12~SP16が順次繰り返される。
【0047】
ステップSP18において、ユーザが、電子ペン1を使用するため、電子ペン1を電子機器2の側部の位置から取り外す。そうすると、電子機器2のセンサコントローラ23は、電子ペン1の特定の状態、すなわち、磁石17,25同士で引き合う状態が検出されないことを確認する。
【0048】
ステップSP20において、電子機器2の送電部22は、ステップSP18での検出が終了した後に、電子ペン1の受電部14への給電信号の出力を停止する。
【0049】
ステップSP22において、ステップSP20にて給電信号の出力が停止した後、電子ペン1のペン先電極13が電子機器2のタッチセンサ21に接近することにより、電子ペン1と電子機器2とが、静電容量結合方式による通信セッションを開始する。その後、ステップSP16にて更新された通信モード(つまり、双方向モード)に従って通信が行われる。
【0050】
<モード更新動作の第二例>
続いて、入力システムが行うモード更新動作の第二例について、図5のシーケンス図を参照しながら説明する。第二の具体例は、電子ペン1と電子機器2の間で交渉動作が行われる場合を想定する。
【0051】
図5のステップSP30において、ユーザが、電子ペン1を使用していない間、電子ペン1を電子機器2の側部の位置に固定する。そうすると、電子機器2のセンサコントローラ23は、電子ペン1の特定の状態、すなわち、磁石17,25同士で引き合う状態が検出されたことを確認する。
【0052】
ステップSP32において、電子機器2の送電部22は、ステップSP30での検出を開始した後に、センサコントローラ23の指令に応じて、電子ペン1の受電部14への給電信号の出力を開始する。
【0053】
ステップSP34において、電子ペン1のペンコントローラ16は、受電部14を介して受信された給電信号が示すデータを取得する。ここでは、データに交渉指令が含まれる場合を想定する。その後、ステップSP32~SP34が順次繰り返される。
【0054】
ステップSP36において、ユーザが、電子ペン1を使用するため、電子ペン1を電子機器2の側部の位置から取り外す。そうすると、電子機器2のセンサコントローラ23は、電子ペン1の特定の状態、すなわち、磁石17,25同士で引き合う状態が検出されないことを確認する。
【0055】
ステップSP38において、電子機器2の送電部22は、ステップSP18での検出が終了した後に、電子ペン1の受電部14への給電信号の出力を停止する。
【0056】
ステップSP40において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP34で取得されたデータの内容に応じて、交渉動作の実行が必要であるか否かを判定する。ここでは、更新情報に交渉指令が含まれているので、ペンコントローラ16は、交渉動作の実行が「必要」であると判定し、次のステップSP42に進む。
【0057】
ステップSP42において、電子ペン1のペンコントローラ16は、必要に応じて、アップリンク信号の受信を有効化する。例えば、ペンコントローラ16は、通信モードを「一方向モード」から「双方向モード」に切り替えて待機する。
【0058】
ステップSP44において、電子ペン1のペン先電極13が電子機器2のタッチセンサ21に接近することにより、電子ペン1と電子機器2とが、静電容量結合方式による通信セッションを開始する。
【0059】
ステップSP46において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP44における通信セッションの開始を契機として、電子機器2のセンサコントローラ23との間の交渉動作を行う。この交渉動作を通じて、更新すべき通信モードが決定される。
【0060】
ステップSP48において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP46での交渉動作を通じて決定された通信モードに切り替える。その後、ステップSP48にて更新された通信モードに従って通信が行われる。
【0061】
<交渉動作の第一例>
続いて、交渉動作(図5のステップSP46)の第一例であるステップSP46Aについて、図6のシーケンス図を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
ステップSP50において、電子ペン1は、自身の識別情報(つまり、ペンID)を含むダウンリンク信号を電子機器2に送信する。
【0063】
ステップSP52において、電子機器2は、ステップSP50で送信されたダウンリンク信号を受信するとともに、当該ダウンリンク信号に含まれるペンIDを取得する。
【0064】
ステップSP54において、電子機器2は、ステップSP52で取得されたペンIDに基づいて、変更すべき通信モードを決定する。
【0065】
ステップSP56において、電子機器2は、ステップSP54で決定された通信モードに関する更新情報(ここでは、モード種類又は通信制御条件)を含むアップリンク信号を電子ペン1に送信する。
【0066】
ステップSP58において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP58で送信されたアップリンク信号を受信するとともに、当該アップリンク信号に含まれる更新情報を取得する。このようにして、ステップSP46Aによる交渉動作が終了し、電子ペン1のペンコントローラ16は、次のステップSP48(図5)に移行する。
【0067】
<交渉動作の第二例>
続いて、交渉動作(図5のステップSP46)の第二例であるステップSP46Bについて、図7のシーケンス図を参照しながら詳細に説明する。
【0068】
ステップSP70において、電子機器2は、複数種類の通信モードの中から、まだ選択されていない1種類の通信モード候補を選択する。
【0069】
ステップSP72において、電子機器2は、ステップSP70で選択された通信モード候補に関する更新情報(ここでは、モード種類又は通信制御条件)を含むアップリンク信号を電子ペン1に送信する。
【0070】
ステップSP74において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP72で送信されたアップリンク信号を受信するとともに、当該アップリンク信号に含まれる更新情報を取得する。
【0071】
ステップSP76において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP74にて取得した更新情報により特定される通信モード候補を採用するか否かを判定する。ここでは、「不採用」の旨の判定結果が得られたとする。
【0072】
ステップSP78において、電子ペン1は、通信モード候補が「不採用」である旨の判定結果を含むダウンリンク信号を電子機器2に送信するとともに、ステップSP70に戻る。
【0073】
二回目のステップSP70において、電子機器2は、複数種類の通信モードの中から、まだ選択されていない1種類の通信モード候補を選択する。その後、ステップSP76にて「採用」の旨の判定結果が得られるまでの間、電子ペン1及び電子機器2は、ステップSP70~SP78を順次繰り返して実行する。
【0074】
ステップSP80において、電子ペン1のペンコントローラ16は、ステップSP76において「採用」の旨の判定結果が得られた場合、該当する通信モード候補を、更新されるべき通信モードとして決定する。
【0075】
ステップSP82において、電子ペン1は、通信モード候補が「採用」である旨の判定結果を含むダウンリンク信号を電子機器2に送信する。このようにして、ステップSP46Bによる交渉動作が終了し、電子ペン1のペンコントローラ16は、次のステップSP48(図5)に移行する。
【0076】
[本実施形態のまとめ]
本実施形態に係る入力システムは、電子ペン1と、電子ペン1との間で通信を行う電子機器2と、を備える。電子機器2は、静電容量方式のタッチセンサ21と、タッチセンサ21を介して電子ペン1との間で静電容量結合方式の通信に関する通信制御を行うセンサコントローラ23と、電子ペン1が特定の状態にある場合、センサコントローラ23からの指令に応じて、電子ペン1に電力を供給するための給電信号を、静電容量結合方式の通信とは別の通信によって電子ペン1に出力する送電部22と、を備える。
【0077】
また、本実施形態に係る電子ペン1は、電子機器2からアップリンク信号を受信する受信部11と、電子機器2にダウンリンク信号を送信する送信部12と、別の通信によって電子機器2から給電信号を受信する受電部14と、受信部11及び送信部12に対して静電容量結合方式の通信に関する通信モードに従って通信制御を行うとともに、受電部14が受信した給電信号が示すデータを取得するペンコントローラ16と、を備える。そして、データは、通信モードの更新を要求するための更新情報を含み、ペンコントローラ16は、更新情報の内容に応じて通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【0078】
また、本実施形態に係る電子ペン1の制御方法によれば、ペンコントローラ16が、通信モードの更新を要求するための更新情報を含むデータを取得し、更新情報の内容に応じて通信モードの更新又は当該更新の準備を行う。
【0079】
このように、ペンコントローラ16は、静電容量結合方式の通信とは別の通信によって給電信号を出力するので、静電容量結合方式の通信が行われていない可能性が高い状況において、前もって通信モードの更新を促すことが可能となる。これにより、ペンダウン操作よりも早いタイミングでかつ自動的に、静電容量結合方式の通信に関する通信モードを切り替え、又は、切り替える準備を行うことができる。
【0080】
また、通信モードの更新は、複数種類の通信モードの中から1種類の通信モードへの切替、又は、1種類の通信モードにおける電子ペン1の通信動作を特定するための通信制御条件の変更であってもよい。また、更新情報には、通信モードの種類、通信制御条件、及び、通信モードを更新するための交渉を要求する交渉指令のうちの少なくとも1つが含まれてもよい。
【0081】
また、更新情報が通信モードの種類を含む場合、ペンコントローラ16は、更新情報に含まれる種類に対応する通信モードに切り替えて通信動作を行ってもよい。これにより、電子ペン1は、電子機器2が提示した種類の通信モードを選択することができる。
【0082】
また、複数種類の通信モードには、一方向通信によってダウンリンク信号の送信のみを行う一方向モードと、双方向通信によってアップリンク信号の受信及びダウンリンク信号の送信の両方を行う双方向モードと、が含まれてもよい。電子ペン1及び電子機器2が実行する通信モードを一方向モード又は双方向モードのいずれかに一致させることで、アップリンク信号の受信が遅延することが抑制される。
【0083】
また、複数種類の通信モードには、アップリンク信号の受信を契機としてダウンリンク信号を送信する同期モードと、アップリンク信号の受信状況にかかわらず予め定められた送信周期でダウンリンク信号を送信する非同期モードと、が含まれてもよい。電子ペン1及び電子機器2が実行する通信モードを同期モード又は非同期モードのいずれかに一致させることで、アップリンク信号の受信が遅延することが抑制される。
【0084】
また、ペンコントローラ16は、更新情報の内容に応じて、センサコントローラ23との間で通信モードを更新するための交渉動作の実行が必要であるかを判定するとともに、交渉動作の実行が必要であると判定された場合、静電容量結合方式の通信における電子機器2との接続を契機として交渉動作を開始してもよい。これにより、電子ペン1は、電子機器2との交渉を通じて、更新すべき通信モードを決定することができる。
【0085】
また、ペンコントローラ16は、交渉動作の実行が必要であると判定され、かつアップリンク信号の受信が無効である場合、アップリンク信号の受信を無効から有効に切り替えて交渉動作を開始する。これにより、電子ペン1は、電子機器2からのアップリンク信号を受信可能となり、円滑に交渉することができる。
【0086】
また、ペンコントローラ16は、交渉動作の実行が必要であると判定された時点から有効期間が経過するまでの間に交渉動作の実行ができなかった場合、交渉動作を終了してもよい。これにより、交渉動作を実行する可能性が低い状況において、電子ペン1による不必要な動作を停止させることができる。
【0087】
また、ペンコントローラ16は、センサコントローラ23との間の交渉動作を通じて、変更すべき通信モードを決定してもよい。これとは逆に、センサコントローラ23は、ペンコントローラ16との間の交渉動作を通じて、変更すべき通信モードを決定してもよい。
【0088】
[変形例]
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記した具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。また、上記したシーケンス図の各ステップにおける内容又は実行順番は、必要に応じて適宜変更され得る。
【0089】
例えば、上記した実施形態では、静電容量結合方式の通信とは別の通信が一方向で行われる場合(つまり、電子機器2から電子ペン1へ出力される給電信号にデータが含まれるようにする場合)を例に挙げて説明したが、これに代えて、双方向通信が用いられてもよい。この場合、電子ペン1及び電子機器2は、給電信号が出力されている間に、データのやり取りを通じて、通信モードの更新に関する交渉を行ってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…電子ペン、2…電子機器、11…受信部、12…送信部、14…受電部、16…ペンコントローラ、21…タッチセンサ、22…送電部、23…センサコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
送電部22は、センサコントローラ23が生成したデータを含む給電信号を電子ペン1に出力する。例えば、電磁誘導方式の無線給電の場合、送電部22は、送電用ワンターンコイル及び送電コイルなる送電素子を含んで構成される。また、電界結合方式の無線給電の場合、送電部22は、一対の電極からなる送電素子を含んで構成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
図3は、一方向モードを概略的に示す図である。電子機器2は、第一の送信タイミングが到来した場合、アップリンク信号を生成して電子ペン1に送信する。このアップリンク信号は、電子機器2の近くにある電子ペン1により受信される。第一の送信タイミングから予め定められた時間(つまり、送信周期)が経過した後、電子ペン1は、ダウンリンク信号を生成して電子機器2に送信する。この送信は、電子ペン1の近くにある電子機器2がアップリンク信号を送信したか否かにかかわらずに行われる。このように、「一方向モード」とは、電子ペン1が、電子機器2からのアップリンク信号を受信したことを契機として、その後、一方向通信によってダウンリンク信号の送信のみを行う通信モードに相当する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
ステップSP38において、電子機器2の送電部22は、ステップSP36での検出が終了した後に、電子ペン1の受電部14への給電信号の出力を停止する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
このように、送電部22は、静電容量結合方式の通信とは別の通信によって給電信号を出力するので、静電容量結合方式の通信が行われていない可能性が高い状況において、前もって通信モードの更新を促すことが可能となる。これにより、ペンダウン操作よりも早いタイミングでかつ自動的に、静電容量結合方式の通信に関する通信モードを切り替え、又は、切り替える準備を行うことができる。