(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068993
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】結露試験装置及び結露試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179725
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】川村 勇登
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050CA08
2G050DA03
2G050EA01
2G050EA02
(57)【要約】
【課題】貯水部に給水することが可能であり、且つ試験サイクルの開始時における貯水部内の水温を安定させることができる結露試験装置を提供することを目的とする。
【解決手段】供試体が配置される試験室12と、試験室12内の環境を調節する空調手段23と、試験室12内に配置され試験室の外部から水が供給される貯水部55と、加熱手段73とを有し、加熱手段73で貯水部55の水を加熱して試験室12内を高湿度環境とし、供試体100に結露させるものであり、熱交換器53a、53bを有し、当該熱交換器53a、53bは試験室12内にあり、熱交換器53a、53bを通過した水が貯水部55に供給される構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が配置される試験室と、前記試験室内の環境を調節する空調手段と、前記試験室内に配置され前記試験室の外部から水が供給される貯水部と、加熱手段とを有し、前記加熱手段で前記貯水部の水を加熱して前記試験室内を高湿度環境とし、前記供試体に結露させる結露試験装置において、
熱交換器を有し、当該熱交換器は前記試験室内にあり、前記熱交換器を通過した水が前記貯水部に供給されることを特徴とする結露試験装置。
【請求項2】
前記貯水部の水を排出する排水弁を有し、当該排水弁は、電気信号で開閉されるものであることを特徴とする請求項1に記載の結露試験装置。
【請求項3】
前記熱交換器はらせん状の管であることを特徴とする請求項1に記載の結露試験装置。
【請求項4】
前記熱交換器を複数有することを特徴とする請求項1に記載の結露試験装置。
【請求項5】
前記熱交換器が前記試験室の側壁側に寄せられた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の結露試験装置。
【請求項6】
前記熱交換器を保持する保持部材を有し、前記保持部材に通気口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の結露試験装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の結露試験装置を用いて行う結露試験方法であって、
前記試験室内の温度を一定の温度に調節しその温度環境に供試体をさらすさらし工程と、
前記加熱手段で前記貯水部の水を加熱して前記試験室内の湿度を徐々に上昇させて前記供試体に結露を生じさせる結露発生工程と、
前記結露発生工程に続く工程であって前記空調手段で前記試験室内の温度を降下させることを含む温度降下工程と、
前記さらし工程と並行して、前記試験室の外部から前記熱交換器を介して前記貯水部に給水する給水工程と、を含むことを特徴とする結露試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に結露させる結露試験装置に関するものである。また本発明は、結露試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
供試体を高湿度の環境にさらし、供試体に結露させる結露試験が知られている。結露試験は、例えば特許文献1に開示された結露試験装置を使用して行われる。
特許文献1に開示された結露試験装置は、試験室内に貯水部が設けられている。貯水部には、ヒータが内蔵されており、ヒータによって貯水部内の水を加熱し、貯水部内の水を気化し、試験室内の湿度を上昇させる。
特許文献1には、結露試験の一例が開示されている。特許文献1に開示された結露試験は、次の様なものである。
【0003】
特許文献1に開示された結露試験では、予め貯水部に水が満たされている。
最初に、試験室内を比較的低温状態に維持し、供試体をこの比較的低温状態の環境にさらす(さらし工程)。
次いで、ヒータによって貯水部内の水を加熱して貯水部内の水を気化させる。このとき、貯水部内の水の温度が一定の上昇曲線を描く様にヒータの熱量が制御される。貯水部内の水が気化することによって、試験室内の湿度(相対湿度、以下同じ)が上昇し、低温の供試体に水蒸気が触れて水蒸気が凝縮し、結露して水滴(以下、水滴についても結露と称する)が発生する(結露発生工程)。
その後、試験室内の湿度を低下させ、結露を蒸発させる。また試験室内の温度も低下させる(温度降下工程)。
試験室内の温度を低下させることによって貯水部内の水の温度が低下する。即ち、試験室内の空気によって貯水部内の水が冷却される。
【0004】
特許文献1に開示された結露試験は、試験室内を比較的低温状態に維持し供試体を低温環境にさらすさらし工程と、貯水部内の水を加熱して貯水部内の水を気化させて供試体に結露させる結露発生工程と、試験室内の湿度を低下させて結露を蒸発させるとともに試験室内の温度も低下させる温度降下工程を一つの試験サイクルとし、この試験サイクルを複数回繰り返すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の結露試験は、貯水部に水を満たした状態で試験を開始し、その水を使用して一連の試験サイクルを繰り返すものであり、原則的に試験の中途で貯水部の水を入れ替えたり、新たに水を補給することはない。
そのため従来技術の結露試験装置を使用すると、試験サイクルの回数が進むにつれて貯水部内の水が濃縮される可能性がある。
即ち、結露試験は、供試体の表面に強制的に結露(水滴)を生じさせるものであり、結露に供試体由来の有機物や無機物が混じることがある。その結露のしずくが貯水部に落下すると、貯水部内の水に供試体由来の夾雑物が混入することとなる。
【0007】
結露試験は、複数回に渡って貯水部の水を加熱し蒸発させるので、貯水部内の夾雑物が濃縮されてゆく可能性がある。
また結露の中に、油脂の様な気化可能な物質が混じっている場合は、当該油脂等が再度気化して供試体に付着し、結露試験に悪い影響を与える可能性もある。
【0008】
そこで本発明者らは、一回の試験サイクルを終えるごとに貯水部内の水を入れ替えることとした。
試作した結露試験装置は、試験室の外部に給水タンクを設置し、当該給水タンクから試験室内に設置された貯水部に給水するものであった。ところが、試作機を使用し、一回の試験サイクルを終えるごとに貯水部内の水を入れ替えて結露試験を行ったところ、試験サイクル開始時における貯水部内の水温が所定の範囲に収まらない場合があるという課題に直面した。
なお、貯水部内の水温が所定の範囲に収まらない理由は、試験室の外部に設置された給水タンク内の水温が、結露試験装置が設置された場所の温度に影響を受けるためであると予想される。
【0009】
本発明は、上記した新たな課題を解決するものであり、貯水部に給水することが可能であり、且つ試験サイクルの開始時における貯水部内の水温を所定の範囲に収めることができる結露試験装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための態様は、供試体が配置される試験室と、前記試験室内の環境を調節する空調手段と、前記試験室内に配置され前記試験室の外部から水が供給される貯水部と、加熱手段とを有し、前記加熱手段で前記貯水部の水を加熱して前記試験室内を高湿度環境とし、前記供試体に結露させる結露試験装置において、熱交換器を有し、当該熱交換器は前記試験室内にあり、前記熱交換器を通過した水が前記貯水部に供給されることを特徴とする結露試験装置である。
【0011】
本態様の結露試験装置は、空調手段を有し、当該空調手段によって試験室内の温度等が調節される。また本態様の結露試験装置は、熱交換器を有し、当該熱交換器は試験室内にあり、熱交換器を通過した水が貯水部に供給される。そのため熱交換器を通過する水が試験室内の空気と熱交換され、貯水部に供給される水の温度が所定の範囲に収まる。
【0012】
上記した態様において、前記貯水部の水を排出する排水弁を有し、当該排水弁は、電気信号で開閉されるものであることが望ましい。
【0013】
本態様の結露試験装置は、排水弁を備えているので、貯水部の水を抜いて新たに供給される水と入れ替えることができる。また排水弁は電気信号で開閉されるものであるから、制御装置等からの信号によって適切な時期に排水弁を開くことができる。
【0014】
上記した態様において、前記熱交換器はらせん状の管であることが望ましい。
【0015】
本態様の結露試験装置で採用する熱交換器は、簡単な構造でありながら、貯水部に供給される水の温度を一定の水準に維持することができる。
【0016】
上記した態様において、前記熱交換器を複数有することが望ましい。
【0017】
本態様によると、貯水部に供給される水の温度がより安定する。
【0018】
上記した態様において、前記熱交換器が前記試験室の側壁側に寄せられた位置にあることが望ましい。
【0019】
本態様によると、貯水部から発生した蒸気が供試体に達する前に結露するのを抑制することができる。このため、供試体により多くの結露を生じさせることができる。
【0020】
上記した態様において、熱交換器を保持する保持部材を有し、当該保持部材に通気口が設けられていることが望ましい。
【0021】
本態様の結露試験装置では、熱交換器が保持部材によって保持される。本態様で採用する保持部材は、通気口が設けられているので、熱交換器を保持しつつも熱交換器への通気が確保され、熱交換効率が高い。
【0022】
結露試験方法に関する態様は、上記したいずれかに記載の結露試験装置を用いて行う結露試験方法であって、前記試験室内の温度を一定の温度に調節しその温度環境に供試体をさらすさらし工程と、前記加熱手段で前記貯水部の水を加熱して前記試験室内の湿度を徐々に上昇させて前記供試体に結露を生じさせる結露発生工程と、前記結露発生工程に続く工程であって前記空調手段で前記試験室内の温度を降下させることを含む温度降下工程と、前記さらし工程と並行して、前記試験室の外部から前記熱交換器を介して前記貯水部に給水する給水工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
本態様の結露試験方法では、貯水部に試験サイクルごとに給水するので、夾雑物の濃縮が起こりにくい。また貯水部に供給される水の温度を所定の範囲に収めることができるため、信頼性の高い結露試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の結露試験装置は、結露用の貯水部に水を供給することができる。また本発明の結露試験装置は、貯水部内に供給される水の温度が安定しており、試験サイクルの開始時における貯水部内の水温を一定の範囲に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態の結露試験装置の斜視図である。
【
図2】
図1の結露試験装置の断熱槽の断面図である。
【
図4】
図1の結露試験装置の試験室内の斜視図である。
【
図8】結露試験における各機器の状況を示すものであり、(a)は、試験室内の温度及び湿度の変化を示すグラフであり、(b)は、貯水容器内の水の温度変化を示すグラフであり、(c)は、排水弁の開閉を示すタイムチャートであり、(d)は、ポンプのオンオフを示すタイムチャートであり、(e)は、空調機器のオンオフを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の結露試験装置1は、本体装置2と、結露用加湿装置50によって構成されている。
本体装置2は、
図2の様に、供試体100が配置される試験室12と、試験室12内の環境を調節する空調機器23(空調手段)を有する装置である。
本体装置2の上側は、断熱槽7で構成されている。断熱槽7は、
図2の様に本体部3及び扉5を有している。
【0027】
本体部3の内槽側であって断熱槽7の内部には
図2の様に仕切り壁10があり、仕切り壁10によって、断熱槽7内が試験室12と空調部15に分かれている。
仕切り壁10の上端と下端には開口が設けられている。仕切り壁10の上端の開口は空気吹き出し部20として機能し、仕切り壁10の下端の開口は空気導入部21として機能する。
試験室12と空調部15は、空気吹き出し部20と空気導入部21の二か所で連通している。
【0028】
空調部15は、試験室12と環状に連通する空調通風路であり、内部に空調機器23と送風機30が配置されている。空調機器23は、空調用加湿装置31、冷却装置32及び加熱装置33によって構成されている。冷却装置32は、公知の様に試験室12内の温度を低下させる冷却機能と、試験室12内の湿度を低下させる除湿機能を備えている。
送風機30を起動すると、試験室12内の空気が空気導入部21から空調部15内に導入される。そして空調部15が通風状態となり、空調機器23に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、空気吹き出し部20から試験室12内に調整後の空気が吹き出される。
【0029】
また空気吹き出し部20の近傍に、温度センサー37と湿度センサー38が設けられている。
温度センサー37と湿度センサー38の信号は、制御装置18に入力される。そして当該制御装置18で、温度センサー37と湿度センサー38の各検出値と各設定値が比較される。
本体装置2は、試験室12内に所望の環境を創出することができるものである。制御装置18は、送風機30を運転して空調部15内を通風状態とし、温度センサー37及び湿度センサー38の検出値が設定環境の温度及び湿度に近づく様に、空調機器23を制御する。
即ち送風機30を運転することによって、試験室12内の空気が、空気導入部21から空調部15に導入され、空調部15内の空調機器23を通過して温度・湿度が整えられる。そして温度・湿度が調整された空気が、空気吹き出し部20から試験室12に戻され、試験室12内に所望の温度・湿度の環境が作られる。
【0030】
次に結露用加湿装置50について説明する。
結露用加湿装置50は、
図1の様に、給水タンク51、給水ポンプ52、熱交換器53a、53b、貯水容器(貯水部)55及び排水弁56によって構成されている。
また
図2、
図3、
図4の様に、貯水容器(貯水部)55に結露用ヒータ(加熱手段)73が設けられている。
【0031】
給水タンク51は、公知の樹脂製タンクである。給水ポンプ52は、公知の電動ポンプである。
熱交換器53a、53bは、
図2、
図3、
図4の様に、銅製の裸管がらせん状に巻かれたコイル状の物であり、それぞれ一連の通水路が形成されたものである。熱交換器53a、53bは、
図5の様に縦置きされ、上部側が入水口80である。熱交換器53a、53bの下端は排出口81となっており、下方に折り曲げられている。
【0032】
貯水容器(貯水部)55は、金属、樹脂または陶器で作られた底の浅いトレイである。貯水容器(貯水部)55は、
図4の様に、底部58と、4片の縦壁71a、71b、72a、72bを有し、上面側が全面的に開放されている。即ち、貯水容器55は、上面側に開口57がある。また貯水容器55の底部58には、排水口60(
図6参照)がある。本実施形態で採用する貯水容器55は、平面形状が長方形である。
貯水容器55には脚部61があり、水が溜められる部位は脚部61によって支持され、床面から持ち上げられている。
貯水容器55には水温センサー83(
図2参照)が取り付けられている。
貯水容器55の底部に、結露用ヒータ(加熱手段)73が配置されている。結露用ヒータ(加熱手段)73は、公知の電気ヒータである。
排水弁56は、公知の電磁弁であり、電気信号で開閉される。
【0033】
本実施形態では、
図4に示す様に、熱交換器53a、53bは、保持部材63a、63bに保持され、貯水容器55の脇に取り付けられている。
保持部材63a、63bは、
図5の様に、「L」字状の板であり、水平壁66と縦壁67を有している。また縦壁67には通気口70が複数設けられている。通気口70は、長方形のスリットである。
【0034】
図4に示す様に、一方の保持部材63aは、貯水容器55の一方の長辺側の縦壁71aの一端側に取り付けられ、他方の保持部材63bは、貯水容器55の他方の長辺側の縦壁71bの他端側に取り付けられている。
保持部材63a、63bは、水平壁66の自由端側が、貯水容器55の長辺側の縦壁71a、71bの上端に接続されている。そのため、保持部材63は、貯水容器55の長辺側の縦壁71a、71bから横に張出した状態で取り付けられている。
熱交換器53a、53bは、図示しない金具によって、保持部材63a、63bに固定されている。熱交換器53a、53bは、保持部材63の水平壁66と縦壁67によって囲まれた領域にあるから、熱交換器53a、53bは、貯水容器55の開口57の側方にあり、開口57とは平面的には重なっていない。
また熱交換器53a、53bのらせん状の部分の最低部は、貯水容器55の開口57の高さ位置よりも上にある。即ち、熱交換器53a、53bのらせん状の部分の高さ方向の位置は、全体的に、貯水容器55の開口57よりも高い位置にある。
また排出口81を含む熱交換器53a、53bの最低部は、貯水容器55の想定される水面よりも高い位置にある。
二つの熱交換器53a、53bは、貯水容器55の外側であって、対角の位置にある。
【0035】
図2、
図3、
図4の様に、貯水容器55及び熱交換器53a、53bは、本体装置2の試験室12内に配置されている。
具体的には、貯水容器55の脚部61が試験室12の床面75と接し、貯水容器55の底部58は、床面75から持ち上げられている。貯水容器55は、
図3の様に、扉5側から見て試験室12の幅方向の中央にあり、二つの熱交換器53a、53bは、試験室12の側壁76a、76bに寄った位置にある。
なお本実施形態では、貯水容器55と熱交換器53a、53bが一体化されており、試験室12に対して着脱可能である。
【0036】
給水タンク51、給水ポンプ52及び排水弁56は、
図1の様にいずれも本体装置2の外にある。即ち、給水タンク51、給水ポンプ52及び排水弁56は、試験室12の外にある。
結露用加湿装置50を構成する各機器は、
図1、
図6の様に配管接続されている。
即ち、給水タンク51に給水ポンプ52の吸入部が挿入されている。給水ポンプ52が接続された給水管62は、試験室12内で二つの枝管68a、68bに分岐され、熱交換器53a、53bの上部側の入水口80に接続されている。即ち、枝管68aは熱交換器53aの上部側の入水口80に接続され、枝管68bは熱交換器53bの上部側の入水口80に接続されている。
熱交換器53a、53bの下部側の排出口81は、貯水容器(貯水部)55の水面よりも上に位置する様に配置されている。即ち、熱交換器53a、53bの排出口81は、貯水容器(貯水部)55の水面より上の空間に開放されている。
貯水容器55の底部58に設けられた排水口60は排水管82を介して試験室12の外部に導かれ、排水弁56に接続されている。
試験室12内の配管(枝管68a、68b及び排水管82)には、シリコンチューブ等の耐熱性を有すチューブが使用されている。
【0037】
給水タンク51内の水は、給水ポンプ52に吸入されて熱交換器53a、53bの上部側の入水口80に導入される。熱交換器53a、53bに導入された水は、らせん状の管路を通過して排出口81に流れ、貯水容器(貯水部)55に導入される。
ここで熱交換器53a、53bは、試験室12内にあるから、熱交換器53内を流れる水は、らせん状の管路を通過する間に試験室12内の空気と熱交換され、温度が変化する。試験室12内の温度が給水タンク51が置かれた部屋よりも低温であるならば、熱交換器53a、53bを通過する間に、水の熱が試験室12に放熱され、貯水容器(貯水部)55に導入される水の温度は、給水タンク51内の水温よりも低いものとなる。
排水弁56を開くと、貯水容器(貯水部)55内の水が、試験室12の外に排水される。
【0038】
本実施形態の結露試験装置1は、結露試験を実施する装置である。
結露実験に際しては、
図2、
図3、
図4の様に、試験室12の中段に網等の通気性が極めて高い棚85を設置し、当該棚85に供試体100を載せる。供試体100は、貯水容器55の平面内の真上の位置に置かれる。また供試体100には通気性の無い覆い部材101が被せられる。
【0039】
結露試験は、前記した様に、最初に試験室内を比較的低温状態に維持し、供試体をこの比較的低温状態の環境にさらす「さらし工程」と、貯水容器55内の水を加熱して貯水容器55内の水を気化させ、試験室12内の湿度が上昇されて供試体に結露を生じさせる「結露発生工程」と、比較的高温状態の環境を維持した後に温度及び湿度を降下させる「温度下降工程」とを含み、これらを繰り返すものである。
【0040】
本実施形態では、この工程に加えて、試験室12の外部から供給されて熱交換器53a、53bを通過した水を貯水容器55に供給する「給水工程」と、貯水容器55内の水を排水する「排水工程」が、制御装置18の信号によって自動的に実施される。給水工程は、さらし工程と並行して実施される。排水工程は、温度降下工程と並行して実施される。
本実施形態の結露試験装置1では、制御装置18に結露試験の各工程を自動的に実行するプログラムが格納されている。
即ち、本実施形態の結露試験装置1は、
図7のフローチャートに示された一連の工程が、制御装置18に内蔵されたコンピュータによって自動的に実行される。具体的には、一回の試験サイクルとして、さらし工程・給水工程、結露発生工程、排水工程・温度降下工程が順次実行される。
【0041】
また結露試験において、試験室12内の温度及び湿度は、
図8(a)に示すグラフの様な軌跡をたどる。貯水容器55内には、
図8(b)の様に水が有る時と無い時があり、水の温度は、
図8(b)に示すグラフの様な軌跡をたどる。排水弁56は、排水工程の際に限って開かれ、
図8(c)の様なタイミングでオンオフされて開閉する。具体的には、結露発生工程の終了時に排水弁56をオンして、貯水容器55内の水を排水する。給水ポンプ52は、給水工程の際に限って駆動され、
図8(d)の様なタイミングでオンオフされて駆動・停止する。具体的には、給水ポンプ52は、さらし工程の開始時に駆動され、貯水容器55内に水を供給する。空調機器23は、
図8(e)の様なタイミングで駆動・停止する。具体的には、空調機器23(空調手段)は、さらし工程・給水工程と、排水工程・温度降下工程の際に駆動し、結露発生工程の際には停止している。
【0042】
以下、結露試験の内容について、順を追って説明する。
さらし工程は、
図8の期間Aの時間帯で実施される工程であり、
図8(e)の様に空調機器23を駆動して、
図8(a)の様に試験室12内の温度を10度程度の低温に制御し、この低温環境下に、供試体100を一定時間にわたってさらす工程である。供試体100を一定時間の間、低温環境下に置くことにより、供試体100の温度の表面温度及び内部温度が、試験室12内の温度と同等の低温となる。
またさらし工程では、次工程の結露発生工程に円滑につなげるため、
図8(a)の様に試験室12内の湿度を上昇させる。具体的には、空調機器23の空調用加湿装置31を駆動して試験室12内の湿度を上昇させる。
【0043】
給水工程は、
図8(d)の様に給水ポンプ52を起動して給水タンク51内の水を吸い上げ、熱交換器53a、53bを経由して貯水容器55に導入する工程である。この際、水は熱交換器53a、53bで滞留することなく、熱交換器53a、53bを通過する。なお給水工程の際には、
図8(c)の様に排水弁56は閉じられている。
給水工程は、
図8の期間Aの時間帯に実施される工程であり、さらし工程と並行して実施される。ここでさらし工程の段階においては、試験室12内が
図8(a)の様に低温である。熱交換器53a、53bは、試験室12内に配置されているから低温環境下にあり、熱交換器53a、53bを通過する水は、熱を奪われて温度が低下する。従って、貯水容器55には、熱交換器53a、53bで冷却された水が供給される。また試験室12内の温度は、空調機器23によって一定の温度に制御されているから、熱交換器53a、53bから排出された水は、温度が比較的低い。
【0044】
本実施形態では、試験室12内に2つの熱交換器53a、53bが設けられ、給水管62から分岐して供給された水が、これらの熱交換器53a、53bを通過する。このため、貯水容器55に供給される水は試験室12内の温度に比較的近い温度となる。
【0045】
また本実施形態で採用する本体装置2では、空気吹き出し部20から試験室12に温度調節された空気が吹き出され、試験室12内の空気が空気導入部21に吸引される。そのため試験室12内が通風環境となり、熱交換器53a、53bに風が当たって熱交換が促進される。特に本実施形態で採用する熱交換器53a、53bの保持部材63a、63bは、縦壁67に通気口70が複数設けられているので、風の通過を妨げない。そのため空気と熱交換器53a、53bの接触機会が多く、熱交換効率が高い。
【0046】
また給水工程では、
図8(d)の様に、
図8の期間Aの時間帯に給水ポンプ52を一定時間に渡って駆動し、貯水容器55に必要量の水が導入されると、給水ポンプ52を停止する。
ここで、本実施形態では、熱交換器53a、53bの排出口81の高さが貯水容器55の水面よりも高い位置に設定されている。そのため熱交換器53a、53b内の水が空気と置換されて排出され、熱交換器53a、53b内に残りにくい。
即ち、本実施形態では、水は熱交換器53a、53bの上部側の入水口80に導入され、下部側の排出口81から排出される。そのため熱交換器53a、53b内の水は重力によって下方に付勢される。一方、下部側の排出口81は水面と接せず空間に開放されているので、空気が入りやすい状態となっている。また、熱交換器53は、弁等の内部を遮るものがない。そのため排出口81から熱交換器53a、53b内に空気が入り、熱交換器53内部の水が空気と置換されて排出される。
【0047】
結露発生工程は、
図8の期間Bの時間帯に実施される工程である。結露発生工程では、結露用ヒータ(加熱手段)73に通電し、貯水容器(貯水部)55内の水を加熱する。ここで水温の上昇は、所定の上昇曲線を描くことが望ましい。そこで本実施形態では、水温センサー83によって貯水容器55内の水温を監視し、水温の上昇が一定の上昇曲線を描くように、結露用ヒータ73がP.I.D制御される。その結果、貯水容器55内の水は、
図8(b)に示すグラフの様な軌跡をたどって昇温する。
【0048】
本実施形態の結露試験装置1によると、先の給水工程で試験室12の外から貯水容器55に供給される水の温度が低い状態で安定しているので、結露発生工程の開始時における貯水容器55の水温が比較的低いものとなる。そのため結露発生工程における水温上昇を水温が低い状態から開始することができ、理想的な温度上昇を実現することができる。
結露発生工程では、水温の上昇によって水が気化し、
図8(a)の様に、試験室12内の湿度が飽和状態またはそれに近い状態となる。
供試体100の温度は、期間Aのさらし工程によって下げられているので、供試体100の表面や内部で水蒸気が凝縮し、結露が生じる。
【0049】
また本実施形態では、試験室12の下部の中央に貯水容器55があり、熱交換器53a、53bはその脇に張り出した位置にある。試験室12との関係で説明すると、二つの熱交換器53a、53bは、試験室12の側壁76a、76bに寄った位置にある。
そのため貯水容器55の開口57から外れた位置に熱交換器53a、53bがあり、熱交換器53a、53bは貯水容器55から発生した水蒸気の上昇を妨げない。言い換えれば、貯水容器55の開口57と供試体100の間に実質的に障害物となるものはなく、貯水容器55から発生した水蒸気が真っすぐに上昇し、覆い部材101の中にこもる。
そのため、供試体100の表面や内部に多量の結露を生じさせることができる。
【0050】
また、前記したように本実施形態では、熱交換器53a、53b内に水が残りにくい。そのため、熱交換器53a、53b内に水が残留する場合と比較して熱負荷が小さい。したがって、結露発生工程において、試験室12内の温度および湿度の上昇を阻害しにくく、供試体100の表面や内部に多量の結露を生じさせることができる。
【0051】
結露発生工程が実施されている期間Bにおいては、
図8(e)の様に空調機器23は停止している。結露発生工程においては、貯水容器55内の水が高温状態となるので、試験室12内の温度は
図8(a)に示すグラフの様に水温に追従して上昇する。
【0052】
結露発生工程が終了すると排水工程が実施される。即ち、結露発生工程終了後の期間Cにおいて、制御装置18からの信号によって、
図8(c)の様に排水弁56を開き、貯水容器55内の水を抜く。これによって、貯水容器55からの水蒸気による加湿が停止する。
【0053】
また、温度降下工程が排水工程と並行して実施される。温度降下工程は、
図8の期間Cの時間帯で実施される工程である。
温度降下工程では、
図8(e)の様に空調機器23を再度駆動して、試験室12内の温度を
図8(a)に示すグラフの様に下げて10度程度の低温に戻し、且つ湿度を下げる。その結果、供試体100に付着した結露が蒸発する。つまり、温度降下工程は、供試体100の乾燥工程として機能する。
前記したように排水工程で貯水容器55内の水が抜かれているため、温度降下工程において加湿が停止する。そのため、温度降下工程では試験室12内の湿度の低下が早まり、結果として供試体100に付着した結露の蒸発が促進される。
また前記した排水工程により、貯水容器55内の高温の水が排出されているので、試験室12の温度降下が円滑に行われる。即ち、水は熱容量が大きい物質であるから、温度を低下させるためには多くの冷熱を要する。本実施形態では、排水工程により貯水容器55内の高温の水が排出されているので、試験室12の温度を低下させるのに貯水容器55の水が保有する熱エネルギーが妨げにならない。
【0054】
以上の工程によって一つの試験サイクルが終了する。
本実施形態では、引き続き、第二回試験、第三回試験が実施される。
以降の結露試験は、前記した第一回の結露試験と同じであり、さらし工程・給水工程、結露発生工程、排水工程・温度降下工程が順次実施される。
ここで二回目のさらし工程は、一回目の結露試験の温度降下工程に引き続いて行われる。
一回目の温度降下工程で、試験室12内の温度が下げられているから、二回目のさらし工程は、一回目の温度降下工程で低下された試験室12の温度を維持することとなる。一方、一回目の温度降下工程によって、試験室12内の湿度が下げられているから、二回目のさらし工程が開始されると、空調機器23によって試験室12内の湿度が上昇される。
【0055】
二回目の結露試験の開始時は、貯水容器55内が空であり、二回目の給水工程によって貯水容器55に新たに水が供給される。この様に本実施形態によると、試験サイクルごとに貯水容器55内の水が入れ替えられる。そのため、供試体100由来の夾雑物が濃縮されることはなく、毎回同じ条件で試験サイクルを繰り返すことができる。
【0056】
以上説明した実施形態では、熱交換器の例として銅製の裸管がコイル状に巻かれた構造の物を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えばエアロフィンチューブの様なフィン付きチューブを熱交換器とし、当該チューブを単に試験室12に引き回したものであってもよい。またプレートフィン熱交換器であってもよい。
熱交換器の数は任意であり、1個であってもよく、3以上であってもよい。即ち、熱交換器は、単数であっても複数であってもよい。
【0057】
以上説明した実施形態で採用する本体装置2は、試験室12と空調部15が上部側の空気吹き出し部20と下部側の空気導入部21の二か所で連通し、下部側の空気導入部21から空気が空調部15内に導入され、上部側の空気吹き出し部20から試験室12内に調整後の空気が吹き出されるものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
即ち試験室や空調部のレイアウトや構成機器は任意であり、上部側から空調部15内に空気を導入し、下部から空気を試験室12に吹き出すものであってもよい。また奥壁の中央付近から空気を吹き出すものであってもよく、奥壁の左右方向から空気を吹き出すものであってもよい。空調部が試験室の下部にあり、試験室の床側から空気が出入りするものであってもよい。
送風機の形式は任意であり、シロッコファン等の遠心送風機であてもよく、軸流送風機であってもよい。
【0058】
以上説明した実施形態では、排水弁56に電磁弁等の電気信号で開閉されるものを使用したが、これに代わって手動弁を採用してもよい。
以上説明した実施形態では、試験サイクルのたびに排水弁56を開いて貯水容器55内の水を抜き、貯水容器55内の水を入れ替えているが、この構成は必須ではない。例えば所定のサイクルおきに水を抜いてもよい。この構成を採用する場合は、排水弁に手動弁を使用することが望ましい。
【0059】
以上説明した実施形態では、結露用加湿装置50は排水弁56を備えていたが、排水弁56は必須ではない。例えば、貯水容器55にオーバーフロー管等のオーバーフロー部を設けて、過剰の水をオーバーフロー部から排水する構成とすることも可能である。
また貯水容器55内の水を入れ替える行為についても必須ではない。即ち本発明が開発された動機は、貯水容器55内の水の濃縮を防ぐことにあったが、本発明は、貯水容器55内の水を入れ替えることなく、単につぎ足すだけで結露試験を続ける場合についても適用可能である。なお、この場合も排水弁56は必須ではない。
これらのような変形例においても、外部から水を供給する関係上、試験サイクル開始時における貯水部内の水温が所定の範囲に収まらない場合があり、本発明の構成を採用することが推奨される。特に最初に実施される試験サイクルにおいては、空の貯水容器5に給水タンク51から水が供給されるので、試験室12の外部に設置された給水タンク51内の水温が、結露試験装置が設置された場所の温度に影響を受けて、貯水容器55内の水温が所定の範囲に収まらない場合がある。本発明を適用することによって、この問題が解消される。
【0060】
貯水容器55に供給される給水量の調整は、例えば給水ポンプ52の駆動時間で制御することができる。また貯水容器55にフロート等の水量センサーを設けてもよい。貯水容器55にオーバーフロー管等を設けてもよい。
【0061】
前記した実施形態の様に、給水工程はさらし工程の開始時から開始するのが望ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらし工程の途中から給水を開始してもよい。
同様に、排水工程は温度降下工程の開始時から開始されるのが望ましいが、これに限定されるものではなく、温度降下工程の途中から排水を開始してもよい。
【0062】
前記した温度下降工程の説明及び
図8のグラフでは、温度下降工程の初期の段階で、比較的高温状態の環境が維持されている。しかしながら、温度降下工程において比較的高温状態の環境を維持することは必須ではない。高温状態を維持しない実験プログラムを採用する場合、排水工程は温度降下中に実施されることとなる。
【0063】
前記した実施形態では、給水タンク51と給水ポンプ52が本体装置2の外に設置されているが、本体装置2の中にこれらの機器があってもよい。例えば、断熱槽7の下方に給水タンク51等があってもよい。この場合でも給水タンク51内の水温は本体装置2が設置されている部屋の温度に影響を受けるため、本発明の効果が得られる。また本体装置2の中には、圧縮機等の熱源があるため、本体装置2の中の空気の温度が高い場合がある。そのため本体装置2の中に給水タンク51を設置するレイアウトを採用する場合は、本発明の構成を採用することが推奨される。
なお給水タンク51と給水ポンプ52は必須ではなく、例えば上水管を直接的に接続することによって、貯水容器55に給水してもよい。高い位置に給水タンク51を設置し、重力によって貯水容器55に給水することにより、給水ポンプ52を省略することもできる。給水タンク51は、結露試験装置1専用のものではなく、他の用途に使用されているものを併用してもよい。
要するに、給水タンク51と給水ポンプ52は、結露試験装置1(結露用加湿装置50)の一部でなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 結露試験装置
12 試験室
15 空調部
23 空調機器
50 結露用加湿装置
51 給水タンク
52 給水ポンプ
53a、53b 熱交換器
55 貯水容器(貯水部)
56 排水弁
63a、63b 保持部材
67 縦壁
70 通気口
73 結露用ヒータ(加熱手段)
100 供試体
101 覆い部材