(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068999
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】資金繰り表作成のためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20240514BHJP
G06Q 10/06 20230101ALN20240514BHJP
【FI】
G06Q40/12
G06Q10/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179732
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】522439375
【氏名又は名称】西野 光則
(71)【出願人】
【識別番号】522439386
【氏名又は名称】一般社団法人日本中小企業経営支援専門家協会
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 光則
【テーマコード(参考)】
5L010
5L040
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L010AA00
5L040BB63
5L049AA00
5L055BB63
(57)【要約】
【課題】容易に異なる条件に応じた資金繰り表を作成するためのプログラムを提供する。
【解決手段】資金繰り表作成のためのプログラムは、コンピューターに、収支データを参照することと、開始期の残高である開始残高値を取得することと、使用者により選択された科目の入力を受け付けることと、収支データに基づいて、選択された科目の各々について単位期間ごとに、収入額の合計値及び支出額の合計値を算出することと、開始期について、開始残高値と収入額及び支出額の合計値とに基づいて、次期繰越額を算出することと、開始期より後の各期について、前期の次期繰越額と当期の収入額及び支出額の合計値とに基づいて、当期の次期繰越額を算出することと、各期についての収入額及び支出額の合計値と次期繰越額とを含む資金繰り表を作成することとを実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターに、
時と科目と収入額又は支出額との組合せを複数含む収支データを参照することと、
開始期の残高である開始残高値を取得することと、
使用者により選択された前記科目の入力を受け付けることと、
前記収支データに基づいて、選択された一つ又は複数の前記科目の各々について単位期間ごとに収入額の合計値を算出することと、
前記収支データに基づいて、選択された一つ又は複数の前記科目の各々について単位期間ごとに支出額の合計値を算出することと、
前記開始期について、前記開始残高値と前記収入額の合計値と前記支出額の合計値とに関する値に基づいて、次期繰越額を算出することと、
前記開始期より後の各期について、前期の前記次期繰越額と当期の前記収入額の合計値及び前記支出額の合計値とに関する値に基づいて、当期の次期繰越額を算出することと、
各期についての前記収入額の合計値と前記支出額の合計値と前記次期繰越額とを含む資金繰り表を作成することと
を実行させる、資金繰り表作成のためのプログラム。
【請求項2】
前記収支データは、条件が異なる場合の前記収入額又は支出額が、異なる前記科目と関連付けられるように構成されており、
コンピューターに、使用者による前記収支データの少なくとも一部の入力を受け付ける収支データ入力処理をさらに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記開始残高値を取得することは、前記開始期と前記開始残高値との関係を含む開始残高設定表を参照することを含み、
コンピューターに、使用者による前記開始期の入力を受け付けることをさらに実行させる、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
コンピューターに、
前記単位期間ごとの所定の値と、少なくとも前年の対応する単位期間の値とを比較して分析することと、
複数の前記単位期間の所定の値の推移と、少なくとも前年の対応する単位期間の値の推移とを比較して分析することと
の何れかをさらに実行させる、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項5】
コンピューターに、前記分析の結果を示す文章を出力させることをさらに実行させる、請求項4に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資金シミュレーションのための資金繰り表作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業の経営において正しい意思決定をするためには、資金の増減を把握することも求められる。資金の増減を把握するための経営管理資料の一つとして資金繰り表がある。資金繰り表を容易に作成できると便利である。
【0003】
特許文献1には、売上債権及び月商に関する情報を用いて、所定の期間における売上債権又は売掛金の回収率を算出し、算出された回収率を用いて月商に対応させて実績の売上債権を算出し、実績の売上債権を使用して資金残高を算出し、それを用いて資金繰り表を生成するプログラムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、異なる条件に応じた資金繰り表を容易に作成することができる資金繰り表作成のためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、資金繰り表作成のためのプログラムは、コンピューターに、時と科目と収入額又は支出額との組合せを複数含む収支データを参照することと、開始期の残高である開始残高値を取得することと、使用者により選択された前記科目の入力を受け付けることと、前記収支データに基づいて、選択された一つ又は複数の前記科目の各々について単位期間ごとに収入額の合計値を算出することと、前記収支データに基づいて、選択された一つ又は複数の前記科目の各々について単位期間ごとに支出額の合計値を算出することと、前記開始期について、前記開始残高値と前記収入額の合計値と前記支出額の合計値とに関する値に基づいて、次期繰越額を算出することと、前記開始期より後の各期について、前期の前記次期繰越額と当期の前記収入額の合計値及び前記支出額の合計値とに関する値に基づいて、当期の次期繰越額を算出することと、各期についての前記収入額の合計値と前記支出額の合計値と前記次期繰越額とを含む資金繰り表を作成することとを実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、選択された科目に応じた値が算出されて資金繰り表が作成されるので、異なる条件に応じた資金繰り表を容易に作成することができる資金繰り表作成のためのプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るシミュレーターの機能の構成例の概略を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、シミュレーターによる資金シミュレーションの動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、準備処理の概略について説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、登録された科目マスターの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、残高入力処理で用いられる開始残高設定表の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、経常収入テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、経常支出テーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、財務等収入テーブルの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、財務等支出テーブルの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、資金繰り表作成処理の概略について説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、資金繰り表が表示された操作画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、計算処理の概略について説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13は、出力される資金繰り表の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係るシミュレーターの機能の構成例の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係るシミュレーターでは、後述するように、登録した複数の科目のデータを含む収支データのうち、指定した科目のデータのみが瞬時に集計されて資金繰り表が作成されるように構成されている。このシミュレーターによれば、条件を異ならせた各種の金額を異なる科目と関連付けて登録することで、異なる条件に基づく資金繰り表が瞬時に作成される。使用者は、収支データの登録において、科目と金額との関連付けを工夫することで、様々な条件における資金繰り表を次々と作成して比較することができる。使用者は、これらの比較に基づいて、種々の経営判断を行うことができる。
【0010】
〈シミュレーターの装置構成〉
図1は、本実施形態に係るシミュレーター1の機能の構成例の概略を示すブロック図である。
図1に示すように、シミュレーター1は、コンピューター10を備える。コンピューター10は、一般的なハードウェア構成を有している。例えば、コンピューター10は、Central Processing Unit(CPU)などの集積回路を備える。また、コンピューター10は、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、ストレージ、各種インターフェースなどを備える。コンピューター10は、所定のプログラムに従って動作する。また、コンピューター10には、例えばキーボード及びマウスなどといった入力装置62、液晶ディスプレイなどといった表示装置64、プリンターなどといった出力装置66、外部の機器と情報交換するための通信装置68などの外部装置が接続されている。
【0011】
図1に示すように、コンピューター10は、制御部20及びデータベース40としての機能を備える。制御部20は、収支データ参照部21、開始残高値取得部22、科目受付部23、合計値算出部24、繰越額算出部25、資金繰り表作成部26などの機能を備える。また、データベース40には、科目マスター41、開始残高設定表42、収支データ43などが含まれる。収支データ43には、収入テーブル44、支出テーブル45などが含まれる。
【0012】
収支データ参照部21は、時と科目と収入額又は支出額との組合せを複数含む収支データ43を参照する。収支データの詳細については後に例示して説明する。開始残高値取得部22は、開始期の残高である開始残高値を取得する。開始期は、資金繰り表に含まれる複数の単位期間のうち最初の期間である。科目受付部23は、使用者により選択された科目の入力を受け付ける。合計値算出部24は、収支データ43に含まれる収入テーブル44に基づいて、選択された一つ又は複数の科目の各々について、単位期間ごとに収入額の合計値を算出したり、単位期間ごとに支出額の合計値を算出したりする。繰越額算出部25は、開始期について、開始残高値と収入額の合計値と支出額の合計値とに基づいて、次期繰越額を算出したり、開始期より後の各期について、前期の次期繰越額と当期の収入額の合計値及び支出額の合計値とに基づいて、当期の次期繰越額を算出したりする。資金繰り表作成部26は、各期について算出された収入額及び支出額の合計値、次期繰越額などを含む資金繰り表を作成する。
【0013】
〈シミュレーターの動作〉
シミュレーター1の動作について説明する。ここでは、月次収支の計画に係る資金繰り表を例に挙げて説明する。資金繰り表は、月次、すなわち、単位期間が月である場合に限らず、週次又は年次などで作成されてもよいことはもちろんである。
【0014】
図2は、シミュレーター1による資金シミュレーションの動作例の概略を示すフローチャートである。この図に示すように、シミュレーター1の制御部20は、資金シミュレーションに関する動作として、ステップS101の準備処理と、ステップS102の資金繰り表作成処理とを行う。ステップS101の準備処理は、資金シミュレーションに必要なデータの入力に関する。ステップS102の資金繰り表作成処理は、ステップS101で入力されたデータを用いた、資金繰り表の作成に関する。この資金繰り表の作成では、条件が異なる資金繰り表が容易に作成され得る。
【0015】
図3は、ステップS101の準備処理の概略について説明するためのフローチャートである。準備処理について、
図3及び
図4乃至
図9を参照して説明する。
【0016】
ステップS201において、制御部20は、科目マスターの登録を行う科目マスター登録処理を行う。科目マスターは、資金繰り表に使用する科目のマスターデータである。
図4は、登録された科目マスターの一例を示す。ここで示す一例では、経常収入、経常支出、財務等収入、財務等支出の各々において、科目コードと科目名とが登録されている。シミュレーター1では、科目コード及び科目名について使用者が必要な項目を自由に設定できるように構成されている。科目マスター登録処理において、制御部20は、科目マスターのテーブルを表示装置64に表示させつつ、入力装置62への入力を取得し、科目コード及び科目名をマスターデータとして登録する処理を行う。
【0017】
図3に戻って説明を続ける。ステップS202において、制御部20は、残高入力処理を行う。残高入力処理は、各期における残高を設定するための処理である。
図5は、残高入力処理で用いられる開始残高設定表の一例を示す。この開始残高設定表は、複数の銀行口座等について、月ごとの残高が登録できるようになっている。また、入力された複数の銀行口座等の残高に基づいて、それら残高の合計が月ごとに算出されるようになっている。この残高の合計値は、資金繰り表における開始時の残高として用いられるように構成されている。残高入力処理において、制御部20は、開始残高設定表を表示装置64に表示させつつ、入力装置62への入力を取得し、各銀行口座等の各月の残高を登録する処理を行う。
図5に示す例では、銀行口座等の数は10個であり、月数は24月であるが、これらの数はいくつであってもよい。
【0018】
図3に戻って説明を続ける。ステップS203において、制御部20は、収支データ入力処理を行う。ここで示す一例では、収支データ43の収入テーブル44として、経常収入テーブル及び財務等収入テーブルが用意され、収支データ43の支出テーブル45として、経常支出テーブル及び財務等支出テーブルが用意されている。収支データ入力処理において、経常収入、経常支出、財務等収入、財務等支出の各々について、各期における科目と金額とが登録されるように構成されている。
【0019】
図6は、経常収入テーブルの一例を示す。
図7は、経常支出テーブルの一例を示す。
図8は、財務等収入テーブルの一例を示す。
図9は、財務等支出テーブルの一例を示す。この例では、科目コードが入力されることで、マスターデータに基づいて対応する科目名が自動的に入力されるように構成されている。使用者は、年、月、科目コード、金額、備考を入力する。収支データ入力処理において、制御部20は、経常収入、経常支出、財務等収入及び財務等支出の各テーブルを表示装置64に表示させつつ、入力装置62への入力を取得し、各テーブルの年、月、科目コード、金額、備考の各項目を登録する処理を行う。
【0020】
ここでは月次資金繰り表を例に挙げて説明しているので、時の情報として、年月が入力される例を示しているが、年月日が入力され、それに基づいて年月が集計されてもよい。また、資金繰り表に応じて時の単位は適宜に変更され得る。また、これらのデータは、使用者によって全て入力されるものでなくてもよい。例えば、過去の実績データを読み込んだり、読み込んだデータに基づき所定の規則に従って将来の値が入力されたり、その一部が使用者によって修正されたりするものであってもよい。
【0021】
本実施形態に係るシミュレーター1では、後述するように、登録した収支データ43のうち、指定した科目のみが集計されるように構成されている。そこで、条件を異ならせた金額を異なるコードを用いて登録することで、異なる条件に基づく資金繰り表が容易に作成され得る。
【0022】
例えば、経常収入に係る科目として、「現金売上予算」、「実績見込現金売上」を登録しておき、各月に関してこれら科目にそれぞれの金額を登録しておくことができる。シミュレーター1によれば、例えば、「現金売上予算」を採用した場合の資金繰り表と「実績見込現金売上」を採用した場合の資金繰り表とが、それぞれ瞬時に作成される。これらを比較することで予算と実績見込みとを容易に比較することができる。シミュレーター1によれば、使用者の登録の仕方に応じて、様々な資金繰りの分析を行うことができる。
【0023】
以上の登録処理が完了したら、準備処理は完了となる。以上で登録したデータを用いて、資金繰り表が作成される。
【0024】
図10は、ステップS102の資金繰り表作成処理の概略について説明するためのフローチャートである。
図11は、資金繰り表が表示された操作画面100の一例である。資金繰り表作成処理について、
図10及び
図11を参照して説明する。
【0025】
ステップS301において、制御部20は、開始時が設定されたか否かを判定する。
図11に示す例は月次資金繰り表の例であるので、開始時は、開始月である。開始月は、開始月入力領域111に入力されるように構成されている。開始時が入力又は変更されて設定されたとき、処理はステップS302に進む。ステップS302において、制御部20は、入力された開始時を取得する。その後、処理はステップS305に進む。ステップS301において、開始時が入力又は変更されていないとき、処理はステップS303に進む。
【0026】
ステップS303において、制御部20は、科目コードが設定されたか否かを判定する。科目コードは、科目コード入力領域112に入力されるように構成されている。科目コードが入力又は変更されて設定されたとき、処理はステップS304に進む。ステップS304において、制御部20は、入力された科目コードを取得する。その後、処理はステップS305に進む。ステップS303において、科目コードが入力又は変更されていないとき、処理はステップS307に進む。
【0027】
ステップS305において、制御部20は、取得された開始時及び科目コードを用いて資金繰り表に必要な値を計算する計算処理を行う。ステップS306において、制御部20は、計算結果に基づいて、操作画面100の表示を更新する。その後、処理はステップS307に進む。
【0028】
図12は、ステップS305の計算処理の概略について説明するためのフローチャートである。ステップS305の計算処理について、
図12を参照して説明する。
【0029】
ステップS401において、制御部20は、取得した開始時に基づいて、集計対象とする単位期間を設定する。
図11の例は、月次資金繰り表であるので、この例では、開始月から12カ月の月次が設定される。月数は適宜に決定され得る。設定された月次は、操作画面100において、月次表示欄121に表示される。
【0030】
ステップS402において、制御部20は、開始時の残高を設定する。この開始残高は、上述のステップS202の残高入力処理で設定された、
図5を参照して説明した開始残高設定表に基づいて設定される。すなわち、取得された開始月における各口座等の残高の合計が開始残高として設定される。開始残高は、操作画面100において、開始月の前月繰越欄122に表示される。
【0031】
続いて、以下のステップS403乃至ステップS406の処理が、全ての単位期間について順に繰り返し行われる。
図11の例では、月次ごとに順に処理が行われる。
【0032】
ステップS403において、制御部20は、該当期について、取得した科目コードに基づいて、設定された収入科目ごとの合計を算出する。例えば、
図11に示す例では、経常収入の科目コード入力領域112の一番上に科目コードが「1」の「穿孔工事売上」が設定されている。そこで、
図6に示した経常収入テーブルに基づいて、まず年月が「2022年1月」であって科目コードが「1」であるレコードの金額の合計を算出する。同様に、経常収入の設定された各科目について、該当月の金額の合計が算出される。同様に、財務等収入の設定された科目について、該当月の金額の合計が算出される。算出された値は、上述のステップS306において、操作画面100の該当する欄に表示されることになる。
【0033】
ステップS404において、制御部20は、該当期について、取得した科目コードに基づいて、設定された支出科目ごとの合計を算出する。すなわち、経常支出及び財務等支出に関して設定された科目について、該当月の金額の合計が算出される。この処理は、上述のステップS403の処理と同様である。同様に、算出された値は、上述のステップS306において、操作画面100の該当する欄に表示されることになる。
【0034】
ステップS405において、制御部20は、該当月の各小計及び総計を算出する。
図11の例では、経常収入、経常支出、財務等収入及び財務等支出のそれぞれの合計、経常資金収支過不足、財務等資金収支過不足、収入合計、支出合計、総合資金収支過不足が算出される。
【0035】
ステップS406において、制御部20は、該当月について前月繰越額とステップS405で算出した総計とに基づいて、次期繰越額を算出する。ここで、前月繰越額は、該当月が開始月であるときには、上述のとおり、開始残高設定表に基づいて設定された値であり、該当月が開始月よりも後の月である場合には、前月分について次期繰越額として算出された値である。算出された値は、上述のステップS306において、操作画面100の該当する欄に表示されることになる。
【0036】
このように、ステップS403乃至ステップS406の処理は、全ての単位期間について順に繰り返し行われる。すなわち、
図11の例では、月次ごとに順に12月分計算され、上述のステップS306において、操作画面100の該当する欄に表示されることになる。以上のようにして全ての値が計算されて、本計算処理は終了する。
【0037】
図10に戻って説明を続ける。ステップS307において、制御部20は、上述のようにして算出した資金繰り表を出力するか否かを判定する。出力は、例えば、所定のフォーマットの電子データとしてであってもよいし、プリンターで印刷した紙としてであってもよいし、その他の形式であってもよい。出力しないとき、処理はステップS309に進む。出力するとき、処理はステップS308に進む。
【0038】
ステップS308において、制御部20は、出力処理を行う。出力処理では、例えば、
図11に示した資金繰り表において、空白行を削除したり、標題をつけたりなど、所定の規則にしたがって、書式が整えられる。
図13は、出力される資金繰り表の一例である。出力される期の数が変更されてもよい。出力処理では、所定のフォーマットの電子データが作成されたり、プリンターにデータが出力されたりする。出力された資金繰り表は、銀行等へ提出され得る。また、出力処理では、資金繰り表の提出先や提出日の情報が、当該資金繰り表と関連付けられて記録されてもよい。出力処理の後、処理はステップS309に進む。
【0039】
ステップS309において、制御部20は、当該資金繰り表作成処理を終了するか否かを判定する。終了しないとき、処理はステップS301に戻り、上述の処理が繰り返される。すなわち、開始時や科目コードが変更されるごとに、資金繰り表に含まれる各値は再計算されて、表示が更新される。使用者は、開始時や科目コードを変更しながら、様々な資金繰り表を容易に作成することができる。また、必要な資金繰り表を出力することができる。ステップS309において終了すると判定されたとき、当該資金繰り表作成処理は終了する。以上によって、資金シミュレーションに係る処理は終了する。
【0040】
〈シミュレーターについて〉
本実施形態に係るシミュレーター1によれば、
図11を参照して説明した資金繰り表の操作画面100において、科目コード入力領域112に入力するコードが変更されることで、各種条件に応じた資金繰り表が瞬時に作成される。使用者は、科目コード入力領域112に入力するコードを変更しながら各種条件における資金繰り表を見て、経営に係る分析を行ったり各種検討を行ったりすることができる。
【0041】
例えば、上述のとおり、経常収入に係る科目として、「現金売上予算」、「実績見込現金売上」、「現金売上増加目標」を登録しておき、各月に関してこれら科目にそれぞれの金額を登録しておくことができる。シミュレーター1によれば、例えば、「現金売上予算」のみを採用した場合の資金繰り表と「実績見込現金売上」のみを採用した場合の資金繰り表とが、それぞれ瞬時に作成される。これらを比較することで予算と実績見込みとを容易に比較することができる。あるいは、「現金売上予算」のみを採用した場合の資金繰り表と、「現金売上予算」と「現金売上増加目標」とを採用した場合の資金繰り表とが、それぞれ瞬時に作成される。これらを比較することで、予算に対してどれだけ努力目標を積み上げることが必要かというシミュレーションが可能になる。
【0042】
同様に、新規借入、固定資産売却、代表者借入等の項目を用意しておき、これら項目の反映の有無を変更してシミュレーションすることも可能である。あるいは、売上金の回収、支払い、返済等について、異なるいくつのパターンを用意しておき、これらのうちから選択することでシミュレーションすることも可能である。シミュレーター1によれば、使用者が収支データの登録の仕方を工夫することで、資金繰りに関する様々な分析を行うことができる。
【0043】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図14は、第2の実施形態に係るシミュレーター2の機能の構成例の概略を示すブロック図である。この図に示すように、第2の実施形態に係るシミュレーター2は、第1の実施形態に係るシミュレーター1に対して、いくつかの機能が付加されている。すなわち、制御部20は、さらに比較分析部31及びコメント作成部32としての機能を備える。
【0044】
〈過去データとの比較に基づく分析機能〉
付加機能として、シミュレーター1は、比較分析部31による、過去データとの比較に基づく分析機能を備える。このため、本実施形態では、収支データ43の収入テーブル44及び支出テーブル45としての、例えば、経常収入テーブル、財務等収入テーブル、経常支出テーブル、及び財務等支出テーブルには、過去の実績が入力されるように構成されている。過去の実績として、これに限らないが例えば、過去10期間程度の実績データが各テーブルに入力され得る。
【0045】
本実施形態では、比較分析部31は、資金繰り表に含まれる各期の所定の値について、例えば前年同期の値と比較し、所定のアルゴリズムに従って、当該資金繰り表に含まれる値について分析し、当該値に関する評価を出力する。評価は、資金繰り表と共に表示されたり、各種方式で出力されたりする。比較されるのは、次期繰越額であってよいし、収入合計又は支出合計等であってもよいし、科目ごとの合計等であってもよい。前年同期と比較して各期の経営の状態の良否などが評価され得る。
【0046】
また、収支データ43には、過去の実績だけでなく、過去の予定も入力されていてもよい。例えば、ある時点で将来の予定額のデータが入力され、その後、期間が経過して、実績額のデータが追加されることが考えられる。実績額のデータが追加されるとき、過去の予定額のデータもそのまま保持され得る。この場合、過去の予定と過去の実績との対比、過去の予定に基づく資金繰りと実績に基づく資金繰りとの対比なども必要に応じて行われ得る。
【0047】
比較は、各期と前年同期との比較など、期毎の比較に限らない。例えば、資金繰り表に含まれる期間の値の推移と、前年の対応する期間の値の推移とが比較されてもよい。また、各期と前年以前の複数年の同期の推移とが比較されてもよいし、期間の推移と前年以前の複数年の期間の推移とが比較されてもよい。
【0048】
資金繰り表を用いる際、単月の比較をみるのではなく一定期間の推移の比較をみることでより実態に合った有意義な判断が可能になる。資金繰り表に示された全ての値の推移について比較するだけでなく、経常収入だけ、又は、財務収入だけといった特定の項目の比較結果だけを提示することも可能である。全ての値の推移を示すと、表は大きくなってみにくいものになりやすい。特定の項目に限定して示すことで、視認性がよくなる。
【0049】
使用者は、シミュレーター1によって出力された評価を参考にして、経営に関する各種判断を行うことができる。
【0050】
なお、単一色の数字だけの表示又は印刷といった出力では、読みにくく見にくい可能性があるので、出力形態は適宜に修飾されることが好ましい。例えば、比較において収入が少ないときは赤字で示されたり、比較において支出が多いときは背景を赤にして字を白とした反転表示で示されたりといったように、条件に応じて各種の装飾が施され得る。これにより、注目すべき点が一目でわかる表示等になり、使用者は、これに基づいて素早く判断できるようになる。
【0051】
〈コメント作成機能〉
付加機能として、シミュレーター1は、コメント作成部32による、コメント作成機能を備える。コメント作成部32は、所定のアルゴリズムに基づいて、文章を出力する。文章は、資金繰り表と共に表示されたり、各種方式で出力されたりする。コメント作成部32は、例えば資金繰り表に含まれる各値に基づいて、資金繰り表から読み取れる状況を説明する文章を出力する。また、コメント作成部32は、比較分析部31の分析結果を表す文章を出力してもよい。
【0052】
使用者は、シミュレーター1によって出力された文章に基づいて、資金繰り表が示すものを理解したり、資金繰り表にについて説明するための資料を作成したりすることができる。
【0053】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1,2 シミュレーター
10 コンピューター
20 制御部
21 収支データ参照部
22 開始残高値取得部
23 科目受付部
24 合計値算出部
25 繰越額算出部
26 資金繰り表作成部
31 比較分析部
32 コメント作成部
40 データベース
41 科目マスター
42 開始残高設定表
43 収支データ
44 収入テーブル
45 支出テーブル
62 入力装置
64 表示装置
66 出力装置
68 通信装置
100 操作画面
111 開始月入力領域
112 科目コード入力領域
121 月次表示欄
122 開始月の前月繰越欄