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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069002
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】包装用フィルム及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240514BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179742
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】緩詰 宏
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA15
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA32
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AR00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA16
4F100EH66D
4F100GB16
4F100HB31A
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JD03D
4F100JD04D
4F100JK07
4F100JL12B
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】異なる種類の樹脂を使用せずにリサイクル適性及びシール適性の改善を図った環境対応の包装用フィルム及びその包装袋を提供する。
【解決手段】A層20とB層30とM層40を含む3層以上で構成され、各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、A層20の樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10min、密度ρは0.900~0.970g/mであり、M層40の樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~30g/10min、密度ρは0.850~0.970g/mであり、B層30の樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10min、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつMFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)を満たし、ρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)満たし、A層20及びB層30の層厚さはフィルム全体の2%以上を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製袋されて用いられる包装用フィルムであって、
袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層の少なくとも2層で構成され、
各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、
前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、
前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつ(MFR)<(MFR),ρ>ρを満たす
ことを特徴とする包装用フィルム。
【請求項2】
製袋されて用いられる包装用フィルムであって、
袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層と前記A層と前記B層との間のM層とを含む3層以上で構成され、
各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、
前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、
前記M層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.970g/mであり、
前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつMFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)を満たし、ρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)満たし、
前記A層及び前記B層の層厚さはフィルム全体の2%以上を有する
ことを特徴とする包装用フィルム。
【請求項3】
前記M層のポリオレフィン系樹脂が前記A層又は前記B層のポリオレフィン系樹脂と同一樹脂である請求項2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
前記A層側に印刷又はラベルによる識別部が形成されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルム。
【請求項5】
前記A層側に水蒸気及び酸素透過を抑制するためのコート又は蒸着によるバリア層が形成されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルム。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルム。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムよりなる包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系の同種の樹脂組成物で構成された包装用フィルム及びこの包装用フィルムを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック資源循環戦略のマイルストーンの一つとして、2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインにすることが挙げられている。
【0003】
例えば、食品等の包装分野では、高い要求品質の実現のために複数の異なる種類の合成樹脂フィルムを積層した包装用フィルムが使用されている。しかしながら、廃棄後のリサイクルに際して、フィルムを構成する樹脂を再溶融しても、複数種類のフィルムが積層されている場合には、相溶化しない樹脂の混合物となってリサイクル資源の品質が大きく低下するという課題があった。
【0004】
このような環境問題を解決すべく、積層フィルムの基材層をヒートシール層と同一素材とする包装用フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、基材層とヒートシール層を同一素材としても、積層時に使用する接着剤により、リサイクル樹脂の品質が大きく低下する問題がある。
【0005】
また、樹脂層を積層することなく単一樹脂で包装可能なフィルムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、単一樹脂の包装用フィルムの製造に際しては、電子線照射装置の導入が必要であり、初期投資が嵩む問題があった。さらに、単一樹脂構成の包装用フィルムでは、シール適性が低下する傾向があり、例えばガゼット折り等を施した際に折り込み部分に未溶着部分が生じる等の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-171860号公報
【特許文献2】特開2020-55176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、異なる種類の樹脂を使用せずにリサイクル適性及びシール適性の改善を図った環境対応の包装用フィルム及びその包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、製袋されて用いられる包装用フィルムであって、袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層の少なくとも2層で構成され、各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつ(MFR)<(MFR),ρ>ρを満たすことを特徴とする包装用フィルムに係る。
【0009】
請求項2の発明は、製袋されて用いられる包装用フィルムであって、袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層と前記A層と前記B層との間のM層とを含む3層以上で構成され、各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、前記M層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.970g/mであり、前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつMFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)を満たし、ρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)満たし、前記A層及び前記B層の層厚さはフィルム全体の2%以上を有することを特徴とする包装用フィルムに係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記M層のポリオレフィン系樹脂が前記A層又は前記B層のポリオレフィン系樹脂と同一樹脂である請求項2に記載の包装用フィルムに係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記A層側に印刷又はラベルによる識別部が形成されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムに係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記A層側に水蒸気及び酸素透過を抑制するためのコート又は蒸着によるバリア層が形成されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムに係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムに係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムに係る。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムよりなる包装袋に係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る包装用フィルムによると、製袋されて用いられる包装用フィルムであって、袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層の少なくとも2層で構成され、各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつ(MFR)<(MFR),ρ>ρを満たすため、リサイクル資源としての品質が損なわれるおそれがなくてリサイクル適正に優れるとともに、より広い温度域で適切なヒートシールが可能となって優れたヒートシール適性が得られる。
【0017】
請求項2の発明に係る包装用フィルムによると、製袋されて用いられる包装用フィルムであって、袋外側に配されるA層と袋内側に配されるB層と前記A層と前記B層との間のM層とを含む3層以上で構成され、各層はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物からなり、前記A層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~10g/10minであり、密度ρは0.900~0.970g/mであり、前記M層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.970g/mであり、前記B層のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は3~30g/10minであり、密度ρは0.850~0.930g/mであり、かつMFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)を満たし、ρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)満たし、前記A層及び前記B層の層厚さはフィルム全体の2%以上を有するため、リサイクル資源としての品質が損なわれるおそれがなくてリサイクル適正に優れるとともに、より広い温度域で適切なヒートシールが可能となって優れたヒートシール適性が得られる。
【0018】
請求項3の発明に係る包装用フィルムによると、請求項2において、前記M層のポリオレフィン系樹脂が前記A層又は前記B層のポリオレフィン系樹脂と同一樹脂であるため、リサイクル品の純度はさらに高まり、リサイクル品質の向上につながる。
【0019】
請求項4の発明に係る包装用フィルムによると、請求項1ないし3において、前記A層側に印刷又はラベルによる識別部が形成されてなるため、包装袋として使用した際に意匠性や顧客への訴求性等を高めて商品価値の向上に寄与することができる。
【0020】
請求項5の発明に係る包装用フィルムによると、請求項1ないし3において、前記A層側に水蒸気及び酸素透過を抑制するためのコート又は蒸着によるバリア層が形成されてなるため、当該フィルムにガスバリア性が付与されて、包装袋として使用した際に袋内への酸素や水蒸気等の透過を抑制して、内容物の鮮度維持や劣化の抑制等の品質保持を可能とする。
【0021】
請求項6の発明に係る包装用フィルムによると、請求項1ないし3において、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂であるため、安価で加工しやすく包装用フィルムに好適な樹脂材料であることに加え、リサイクル資源として活用しやすい樹脂材料であり、実用性に優れ環境負荷低減にも貢献することができる。
【0022】
請求項7の発明に係る包装用フィルムによると、請求項1ないし3において、前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であるため、安価で加工しやすく包装用フィルムに好適な樹脂材料であることに加え、リサイクル資源として活用しやすい樹脂材料であり、実用性に優れ環境負荷低減にも貢献することができる。
【0023】
請求項8の発明に係る包装袋によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用フィルムよりなるため、リサイクル適正に優れるとともに、優れたヒートシール適性を備えた包装袋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る包装用フィルムの概略断面図である。
図2】他の実施形態に係る包装用フィルムの概略断面図である。
図3】製袋により4枚重ねでシールされたフィルムのシール部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す本発明の一実施形態に係るフィルム10は、製袋されて用いられる包装用フィルムであって、袋外側に配されるA層20と袋内側に配されるB層30の少なくとも2層で構成される。このフィルム10は、Tダイ法等の公知の製造方法により製造される。
【0026】
本発明の包装用フィルム10は、例えば、ガゼット袋、溶断袋、二方袋、三方袋、合掌袋、サイドシール袋、ボトムシール袋、角底袋、スタンド袋等の各種の包装袋の材料として好適に使用することができる。包装用フィルム10を製袋して得られた包装袋では、食品、雑貨、医薬品、電子材料、精密部材等の適宜の物品が収容される。
【0027】
本発明の包装用フィルム10では、各層20,30がポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物で構成される。ポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物とは、ポリオレフィン系樹脂のうち特定の構造で分類される樹脂であり、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂である。ポリエチレン系樹脂では、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等がポリエチレン系樹脂の同種の樹脂組成物として挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂では、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体やプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン系エラストマー等がポリプロピレン系樹脂の同種の樹脂組成物として挙げられる。なお、各層20,30では、単一のポリオレフィン系樹脂で構成してもよいし、同種の樹脂組成物であれば混合して構成することも可能である。
【0028】
このように包装用フィルム10では、各層20,30が同種の樹脂組成物(例えば、A層20及びB層30がともにポリエチレン系樹脂の同種の樹脂組成物)で構成されることにより、再溶融した際に相溶化されてリサイクル資源としての品質が損なわれるおそれがなく、リサイクル適正に優れる。また、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、安価で加工しやすく包装用フィルムに好適な樹脂材料であることに加え、リサイクル資源として活用しやすい樹脂材料であるため、実用性に優れ環境負荷低減にも貢献することができる。
【0029】
なお、本発明の包装用フィルム10に使用される材料は、化石由来、バイオマス由来、マテリアルリサイクル由来、ケミカルリサイクル由来等の材料から自由に選択できる。また、各層には、必要に応じてアンチブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、防曇材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤等の各種添加剤や端材等の添加剤を適宜添加することができる。
【0030】
本発明の包装用フィルム10では、A層20のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が0.5~10g/10min、密度ρが0.900~0.970g/mであり、B層30のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が3~30g/10min、密度ρが0.850~0.930g/mであり、さらにA層20とB層30のポリオレフィン系樹脂が(MFR)<(MFR),ρ>ρを満たすように構成される。
【0031】
A層20のメルトフローレート(MFR)がB層30のメルトフローレート(MFR)以上であったり、A層20の密度がB層30の密度未満であったりする場合、低温で適切にヒートシールすることが困難であったり、高温シール時にフィルムの熱変形が生じやすくなったりするおそれがあるため、適切なヒートシールが可能な温度域が限定的となって、十分なヒートシール適性が得られない。一方、A層20とB層30のポリオレフィン系樹脂が上記メルトフローレートと密度の条件を満たすことにより、低温で適切なヒートシールが可能になるとともに、高温ヒートシール時のフィルムの熱変形を抑制することが可能となるため、より広い温度域で適切なヒートシールが可能となり、優れたヒートシール適性が得られる。
【0032】
図2は、他の実施形態に係る包装用フィルム10Aであって、袋外側に配されるA層20と袋内側に配されるB層30とA層20とB層30との間のM層40とを含む3層以上で構成される。この包装用フィルム10Aは、各層20,30,40が、包装用フィルム10と同様にポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物、特にポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂からなることが好ましい。
【0033】
この包装用フィルム10Aでは、A層20のポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.5~10g/10min、密度ρが0.900~0.970g/mであり、B層30のポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が3~30g/10min、密度ρが0.850~0.930g/mであり、M層40のポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.5~30g/10min、密度ρが0.850~0.970g/mであり、さらにA層20、M層40、B層30のポリオレフィン系樹脂がMFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)を満たし、ρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)満たし、A層20及びB層30の層厚さがフィルム全体の2%以上を有するように構成される。
【0034】
A層20、B層30、M層40のポリオレフィン系樹脂において、MFR≦MFR≦MFR(ただしMFR≠MFR)やρ≧ρ≧ρ(ただしρ≠ρ)を満たしていない場合、低温で適切にヒートシールすることが困難であったり、高温シール時にフィルムの熱変形が生じやすくなったりするおそれがあるため、適切なヒートシールが可能な温度域が限定的となって、十分なヒートシール適性が得られない。A層20、B層30、M層40のポリオレフィン系樹脂が上記メルトフローレートと密度の条件を満たすことにより、低温で適切なヒートシールが可能になるとともに、高温ヒートシール時のフィルムの熱変形を抑制することが可能となるため、より広い温度域で適切なヒートシールが可能となり、優れたヒートシール適性が得られる。
【0035】
また、包装用フィルム10Aでは、M層40のポリオレフィン系樹脂が、A層20又はB層30のポリオレフィン系樹脂と同一樹脂であることが好ましい。この包装用フィルム10Aは、例えば、A層20とM層40とB層30の3層で構成されている場合、A層20とM層40とB層30はポリオレフィン系樹脂の同種の樹脂組成物であって、A層20とM層40とが同一樹脂(A層20及びM層40とB層30は異なる同種の樹脂組成物)、又はM層40とB層30とが同一樹脂(M層40及びB層30とA層20は異なる同種の樹脂組成物)で構成される。このように、M層40がA層20又はB層30と同一樹脂であることにより、フィルムを構成する樹脂の組成がシャープになりリサイクル品の純度はさらに高まるため、リサイクル品質の向上につながる。
【0036】
本発明の包装用フィルム10(10A)では、包装袋として製袋した際に袋外側となるA層20側に、印刷又はラベルによる識別部が形成される。識別部は、当該包装用フィルム10(10A)から得られた包装袋に収容される食品等の内容物に関する情報(商品名や原材料等)、図柄や写真等の装飾、バーコード等の記号等の識別情報を表示可能とする。包装用フィルム10(10A)に識別部が形成されることにより、包装袋として使用した際に意匠性や顧客への訴求性等を高めて商品価値の向上に寄与することができる。
【0037】
また、包装用フィルム10(10A)では、必要に応じてA層20側に水蒸気及び酸素透過を抑制するためのコート又は蒸着によるバリア層が形成される。バリア層は、包装用フィルム10(10A)にガスバリア性を付与するものであり、当該フィルム10(10A)を使用した包装袋において、袋内への酸素や水蒸気等の透過を抑制して、内容物の鮮度維持や劣化の抑制等の品質保持を可能とする。
【0038】
包装用フィルム10(10A)では、加工適性や強度等の観点から、フィルム全体の厚さを15~200μmとすることが好ましい。特に、包装用フィルム10(10A)では、A層20及びB層30の層厚さは、それぞれフィルム全体の2%以上を有するように構成される。A層20の層厚さがフィルム全体の2%未満となると、ヒートシール時にフィルム10(10A)にかかる熱負荷に対し溶融、変形が生じるおそれがある。一方B層30は、袋内側に配されてヒートシール時に溶融して接着する機能を担うため、層厚さがフィルム全体の2%未満となると安定したヒートシール強度が得られないおそれがある。
【0039】
また、包装用フィルム10(10A)では、包装袋として使用する際に適切な透明性やコシの強さ等を備える。透明性としては、ヘーズが30%未満であることが好ましい。ヘーズが30%を超えると、包装袋として使用する際に内容物を適切に視認することができなくなるおそれがある。コシの強さとしては、引張弾性率が0.05~10GPaであることにより、適切な製袋適性等が得られる。
【実施例0040】
[包装用フィルムの作製]
試作例1~5の包装用フィルムの作製に際し、後述する各材料を所定の配合割合(重量%)に基づいて混練、溶融してTダイ法にて共押出しして、A層とM層とB層からなる各試作例1~5のフィルムを製膜した。なお、試作例1~5のフィルムに関し、フィルム各層に使用された樹脂材料について、後述の表1に示した。
【0041】
[使用材料]
各層の樹脂材料として、以下の樹脂を使用した。各材料において、メルトフローレート(MFR)はJIS K 7210(2014)に準拠し、ポリエチレン系樹脂は試験温度190℃、ポリプロピレン系樹脂は試験温度230℃で測定した値である。また、混合樹脂(A)は、混合する2つの樹脂を成分A1、成分A2として、密度(層密度)を下記式(i)、MFRを粘度の経験式を変形した下記式(ii)からそれぞれ求めた。なお、下記式において、Wは重量%である。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
・PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;「4040F」)、MFR(190℃、2.16kg):4g/10min、密度0.937g/cm
・PE2:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;「2040F」)、MFR(190℃、2.16kg):4g/10min、密度0.918g/cm
・PE3:直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;「KC581」)、MFR(190℃、2.16kg):10g/10min、密度0.918g/cm
【0045】
・PP1:プロピレン単独共重合体(日本ポリプロ株式会社製;「FL203D」)、MFR(230℃、2.16kg):3.0g/10min、密度0.90g/cm
・PP2:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製;「FB3B」)、MFR(230℃、2.16kg):7.5g/10min、密度0.90g/cm
・PP3:プロピレン-エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製;「WXK1233」)、MFR(230℃、2.16kg):7g/10min、密度0.90g/cmを70重量%と、プロピレン系エラストマー(ExxonMobil社製;「VISTAMAXX3980FL」、MFR(230℃、2.16kg):8g/10min、密度0.88g/cmを30重量%との混合樹脂、MFR(230℃、2.16kg):7.3g/10min、密度0.89g/cm
【0046】
[試作例1]
試作例1は、A層(印刷層)がPE1、M層(中間層)がPE1、B層(シール層)がPE3からなるポリエチレン系樹脂で構成されたフィルムである。
【0047】
[試作例2]
試作例2は、A層(印刷層)がPE1、M層(中間層)がPE2、B層(シール層)がPE2からなるポリエチレン系樹脂で構成されたフィルムである。
【0048】
[試作例3]
試作例3は、A層(印刷層)がPE3、M層(中間層)がPE3、B層(シール層)がPE3からなるポリエチレン系樹脂で構成されたフィルムである。
【0049】
[試作例4]
試作例4は、A層(印刷層)がPP1、M層(中間層)がPP1、B層(シール層)がPP3からなるポリプロピレン系樹脂で構成されたフィルムである。
【0050】
[試作例5]
試作例5は、A層(印刷層)がPP2、M層(中間層)がPP2、B層(シール層)がPP3からなるポリプロピレン系樹脂で構成されたフィルムである。
【0051】
試作例1~5のフィルムについて、フィルム全体の厚さ(μm)をJIS K 7130(1999)に準拠してそれぞれ測定し、ヘーズ(%)をJIS K 7136(2000)に準拠してヘーズメーター(日本電色工業株式会社製;「NDH-5000」)を使用して測定し、引張弾性率(GPa)をJIS K 7127(1999)に準拠して引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製;「テンシロン万能材料試験機 RTF-1310」)を使用してフィルムの巻き取り方向(MD)とそれに直交する横方向(TD)の2方向において測定を行った。各試作例1~5の各層の使用材料、フィルム全体の厚さ、ヘーズ、MDとTDの引張弾性率をそれぞれ表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
試作例1~5のフィルムのシール適性の性能評価として、封緘性評価、高温シール性評価を行った。この性能評価では、ガゼット袋の折込部を想定して作製した試作例1~5のフィルムをガゼット折りし、図3に示すように2枚重ね部分L1と4枚重ね部分L2とを有する折込部50を形成したフィルムFをサンプル品とした。このサンプル品のフィルムFでは、流れ方向を縦方向としたA4サイズのフィルムシートを、コロナ処理面側を表面側として中心を縦方向に谷折りし、その左右35mmの位置を縦方向に山折りして断面視M字状の折込部50を形成した。そして、サンプル品のフィルムFに対し、熱傾斜試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用し、折込部50の末端51がヒートシールバーの中央となるように配置して、圧力0.4MPa、時間1.0secで各試験温度ごとにヒートシールを行った。
【0054】
[封緘性評価]
試作例1~5に対応するフィルム(サンプル品)Fについて、折込部50周辺に赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製;シールチェック)を吹き付け、2枚重ね部分L1と4枚重ね部分L2との境界(折込部50の末端51)に未溶着部分となる空隙Sが生じているか否かを目視にて確認した。2枚重ね部分L1と4枚重ね部分L2との境界部分の全体又は一部に着色があった場合には、境界部分に空隙が生じて封緘が不完全であるため「不可(×)」とし、境界部分に着色がなかった場合には、境界部分が適切に溶着されて封緘が良好であるため「良(○)」として所定の温度ごとの封緘性を評価した。封緘性評価を表2,3に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
[高温シール性評価]
試作例1~5に対応するフィルム(サンプル品)Fについて、光学顕微鏡を用いて4枚重ね部分L2のシールエッジ部分の形状を目視にて確認した。4枚重ね部分L2はヒートシール時に最も圧力がかかりやすい部分であり、高温でのヒートシールにより樹脂が流動して熱変形する肉痩せが生じる場合がある。そこで、肉痩せが確認された場合には「不可(×)」とし、肉痩せが確認されなかった場合には「良(○)」として所定の温度ごとの高温ヒートシール性を評価した。高温シール性評価を表4,5に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
[結果と考察]
試作例1~3のポリエチレン系樹脂のフィルムについて表2に示す封緘性評価を対比すると、試作例1,3のフィルムでは130℃以下のヒートシール温度で封緘が不完全となり、135℃以上のヒートシール温度で封緘が良好となった。一方、試作例2のフィルムは145℃以下のヒートシール温度で封緘が不完全となり、150℃以上のヒートシール温度で封緘が良好となった。
【0061】
また、試作例1~3のポリエチレン系樹脂のフィルムについて表4に示す高温ヒートシール性評価を対比すると、試作例1,2のフィルムでは180℃以上のヒートシール温度で肉痩せが確認され、175℃以下のヒートシール温度で肉痩せが確認されなかった。一方、試作例3のフィルムでは160℃以上のヒートシール温度で肉痩せが確認され、155℃以下のヒートシール温度で肉痩せが確認されなかった。
【0062】
表2,4の結果から理解されるように、試作例2のフィルムは適切に封緘できるヒートシール温度が試作例1,3のフィルムと比較して高く、封緘性が劣っていた。また、試作例3のフィルムは肉痩せが生じるヒートシール温度が試作例1,2のフィルムと比較して低く、高温シール性が劣っていた。一方、試作例1のフィルムは、封緘性と高温ヒートシール性のいずれも良好であった。そうすると、適切なヒートシールが可能な温度域は、試作例2が150℃~175℃、試作例3が135℃~155℃であるのに対し、試作例1は135℃~175℃である。したがって、試作例1のフィルムは、試作例2,3のフィルムと比較して広い温度域で適切なヒートシールが可能であり、シール適性に優れていることがわかった。
【0063】
試作例4,5のポリプロピレン系樹脂のフィルムについて表3に示す封緘性評価を対比すると、試作例4,5のフィルムはいずれも160℃以下のヒートシール温度で封緘が不完全となり、165℃以上のヒートシール温度で封緘が良好となった。
【0064】
また、試作例4,5のポリプロピレン系樹脂のフィルムについて表5に示す高温ヒートシール性評価を対比すると、試作例4のフィルムでは195℃以上のヒートシール温度で肉痩せが確認され、190℃以下のヒートシール温度で肉痩せが確認されなかった。一方、試作例5のフィルムでは185℃以上のヒートシール温度で肉痩せが確認され、180℃以下のヒートシール温度で肉痩せが確認されなかった。
【0065】
表3,5から理解されるように、試作例5のフィルムは肉痩せが生じるヒートシール温度が試作例4のフィルムと比較して低く、高温シール性が劣っていた。一方、試作例4のフィルムは、封緘性と高温ヒートシール性のいずれも良好であった。そうすると、適切なヒートシールが可能な温度域は、試作例5が165℃~180℃であるのに対し、試作例4は165℃~190℃である。したがって、試作例4のフィルムは、試作例5のフィルムと比較して広い温度域で適切なヒートシールが可能であり、シール適性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の包装用フィルムは、リサイクル適正とともにヒートシール適性にも優れているため、リサイクルに適した包装袋を安定して製造することができる。そのため、従来の食包装用フィルム及び包装袋の代替として有望である。
【符号の説明】
【0067】
10,10A 包装用フィルム
20 A層
30 B層
40 M層
50 折込部
51 折込部の末端
F サンプル品のフィルム
L1 2枚重ね部分
L2 4枚重ね部分
S 空隙
図1
図2
図3