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  • 特開-固体二次電池の短絡予測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069010
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】固体二次電池の短絡予測方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240514BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/00 S
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179758
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】向山 真登
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA09
5H030AA06
5H030AA10
5H030FF31
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】本開示は、固体二次電池が将来において短絡する可能性をより高い精度で予測することができる固体二次電池の短絡予測方法を提供する。
【解決手段】本開示の短絡予測方法は、記憶装置に記憶されている短絡予測モデルであって、固体二次電池の充放電時において変化する面圧分布データを入力すると前記固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを出力する短絡予測モデルに対して、前記面圧分布データを入力することにより、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測すること、を有している、固体二次電池の短絡予測方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置に記憶されている短絡予測モデルであって、固体二次電池の充放電時において変化する面圧分布データを入力すると前記固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを出力する短絡予測モデルに対して、前記面圧分布データを入力することにより、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測すること、
を有している、固体二次電池の短絡予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体二次電池の短絡予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二次電池の表面に取り付けられ、取付位置の電池表面の圧力を検出する少なくとも4つの圧力検出部と、前記少なくとも4つの圧力検出部の測定値に基づいて、前記二次電池の劣化を判定する劣化判定部と、を備え、前記劣化判定部は、前記二次電池の表面のうち、前記少なくとも4つの圧力検出部により区画される領域の中で、体積膨張が最大となる膨張最大位置を推定する、二次電池の劣化判定システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-24809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体二次電池は、正極層、固体電解質層、及び負極層をこの順に有している二次電池である。
【0005】
固体二次電池では、構成材が固体であるが故に電極内の面圧分布が生じやすく、製造条件や使用条件等によっては、短絡が生じる場合がある。特に、固体二次電池の充放電中に正極層及び負極層でキャリアイオンの挿入脱離がおこると、多くの種類の活物質は膨張収縮する。当該膨張収縮は、正極層及び負極層の厚み方向及び面内方向の変位となって現れる。固体二次電池では、固体電解質を上記3つの層に密に充填することで入出力特性を確保しており、活物質の膨張収縮は電極面の変位となって現れやすい。そのため、正極層及び負極層の厚み方向及び面内方向の変位ムラがある場合、電極面内の面圧分布を生じてしまう。
【0006】
電極面内の面圧分布は、固体二次電池の短絡、特に内部短絡を生じさせる一因である。
【0007】
そこで、本開示は、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測することができる固体二次電池の短絡予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
記憶装置に記憶されている短絡予測モデルであって、固体二次電池の充放電時において変化する面圧分布データを入力すると前記固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを出力する短絡予測モデルに対して、前記面圧分布データを入力することにより、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測すること、
を有している、固体二次電池の短絡予測方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測することができる固体二次電池の短絡予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1の実施形態に従う方法のフローチャートである。
図2】本開示の第1の実施形態に従う方法において、面圧分布データを取得するための手段の一例を示す模式図である。
図3】本開示の第2の実施形態に従う方法のフローチャートである。
図4】本開示の第3の実施形態に従う方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示の方法は、固体二次電池の短絡を予測する方法である。本開示の方法は、記憶装置に記憶されている短絡予測モデルに対して、面圧分布データを入力することにより、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測するデータを得ることを有している。ここで、短絡予測モデルは、固体二次電池の充放電時において変化する面圧分布データを入力すると固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを出力する。
【0013】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う方法のフローチャートである。
【0014】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態に従う方法では、まず、固体二次電池を作製101する。そして、作製した固体二次電池に対して、コンディショニング充放電を行うと共に面圧分布データを取得102する。次いで、短絡予測モデルに面圧分布データを入力103して、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを取得する104。
【0015】
なお、面圧分布データは、例えば図2に示すように、固体二次電池10と集電用の金属箔20を重ね合わせ、その上に面圧分布センサ―50を重ね、これらを拘束治具31及び32で挟み込んで拘束し、その後に固体二次電池10に対して初期コンディショニング充放電を行うと同時にデータの取得を行うことで得られる。
【0016】
固体二次電池は、任意の固体二次電池であってよい。固体二次電池の正極層は、正極集電体層と正極活物質層から形成されていることができる。負極層は負極集電体層と負極活物質層とから形成されていることができる。固体二次電池の例としては、固体電解質を電解質として用いたリチウムイオン二次電池を挙げることができる。
【0017】
固体二次電池の短絡とは、例えば固体二次電池が内部短絡することを意味する。内部短絡は、固体二次電池の内部で閉回路が形成されることであり、例えば負極層に析出して成長した金属デンドライトが正極層に到達する等によって生じ得る。
【0018】
短絡予測モデルは、面圧分布データを入力することにより、固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測するデータを得るように構成されたモデルである。このモデルは、例えば面圧分布データから抽出した特徴量を説明変数とし、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを目的変数とした回帰モデルであることができる。
【0019】
面圧分布データの取得は、例えば図2に示すように面圧分布センサーによって得ることができる。面圧分布センサーとしては、例えば歪みゲージを複数並べて配置したものや、タクタイルセンサー等であってよい。分解能については面圧の測定点間のピッチが0.1μm~10cmであるものが好ましい。面圧分布データは、固体二次電池の充放電の際の面圧分布の経時的な変化及び/又は部分的な面圧の変化等を含んでいる。
【0020】
面圧分布データの特徴量としては、例えばテクスチャ解析などの画像解析法、UMAP法などの機械学習法、主成分分析などの統計的手法によって抽出されたものを用いることができる。特徴量は、説明度の高い説明変数選択がアルゴリズム的に行われる手法によって抽出されることが好ましい。
【0021】
固体二次電池が将来において短絡する可能性を予測するデータとしては、所定の期間の経過後に短絡する可能性を示すデータや、所定の回数の充放電後に短絡する可能性を示すデータ等であってよい。このようなデータは、例えば回帰モデルの作成の際に、固体二次電池の面圧分布データを得た後に、該固体二次電池の性能評価によって得ることができる。
【0022】
回帰モデルは、十分な予測精度を持つものであれば特に限定されないが、精度については寄与率Rが0.5~0.99の範囲であるものが望ましく、例えば最小二乗法、lasso回帰、又はRandomForest法等を用いたものが挙げられる。
【0023】
なお、本開示の方法は、例えば固体二次電池を製造して出荷する前の初期不良の判定に用いることができる。また、本開示の方法は、製品として使用開始後における使用状況に応じた将来の短絡の予測に用いることができる。
【0024】
本開示の方法を初期不良の判定に用いる場合には、例えば図3に示すフローチャートに示すように行ってよい。
【0025】
図3は、本開示の第2の実施形態に従う方法のフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、本開示の第2の実施形態に従う方法では、固体二次電池を作製201した後に、初期コンディショニング用治具で固体二次電池を拘束202する。そして、固体二次電池に対して初期コンディショニング充放電を行うと共に面圧分布データを取得203する。次いで、短絡予測モデルに面圧分布データを入力204して、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを取得205する。その後、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータが閾値以下かを判定206し、閾値以下である場合には、固体二次電池を初期コンディショニング用治具から外し207、固体二次電池を製品モジュールに配置及び拘束208して、製品として出荷可能とする。他方、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータが閾値以下でない場合には、初期コンディショニング用治具による拘束圧や、初期コンディショニング充放電の条件を、面圧分布データに基づいて変更209し、再度初期コンディショニング充放電を行うと共に面圧分布データを取得203する工程に戻る。
【0027】
また、本開示の方法を製品として使用開始後における使用状況に応じた将来の短絡の予測に用いる場合には、例えば図4に示すフローチャートに示すように行ってよい。
【0028】
図4に示すように、本開示の第3の実施形態に従う方法では、まず固体二次電池が組み込まれた製品モジュール内に面圧分布センサを組み込む301。そして、製品モジュールを出荷302する。そして、本開示の第3の実施形態に従う方法では、製品モジュールの利用者が製品モジュールの利用を開始した後、所定の使用期間が経過したかを判断303する。所定の使用期間が経過したか否かの判断基準は、日数等の時間の経過であってよいが、固体二次電池の充放電サイクルの回数等、固体二次電池の使用量に応じた期間の経過を示すことができるものであってもよい。所定の使用期間が経過した場合には、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを取得するための工程304~306に進む。所定の使用期間が経過していない場合には、製品モジュールの使用を継続309する。
【0029】
固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを取得するための工程304~306では、まずコンディショニング充放電を行うと共に面圧分布データを取得304する。面圧分布データは、例えば図2に示すのと同様の方法によって取得することが可能である。次いで、短絡予測モデルに面圧分布データを入力305して、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータを取得する306。その後、固体二次電池が将来において短絡する可能性に関するデータが閾値以上かを判定307し、閾値以上でない場合には、製品モジュールの使用を継続309する。閾値以上である場合には、利用者に警告を発信308する。これにより、例えば製品モジュールの交換やメンテナンスを促すことができる。
【符号の説明】
【0030】
10 固体二次電池
20 集電用金属箔
31及び32 拘束治具
40 導線
50 面圧分布センサ
図1
図2
図3
図4