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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069014
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】流体制御機器
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/145 20060101AFI20240514BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16K31/145
F16K51/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179768
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 教巨
【テーマコード(参考)】
3H056
3H066
【Fターム(参考)】
3H056AA01
3H056BB50
3H056CA07
3H056CB03
3H056CD08
3H056DD08
3H056GG11
3H066AA01
3H066BA38
3H066DA09
(57)【要約】
【課題】サックバック機能の応答性および安定性を向上させることが可能な流体制御機器を提供すること。
【解決手段】制御流体を入力する入力ポート111と、制御流体を出力する出力ポート112と、入力ポート111と出力ポート112を連通する下流側流体室116aと、を備える流体制御機器1において、下流側流体室116aに隣接する圧力作用室116bを備えること、下流側流体室116aと圧力作用室116bとを区画するダイアフラム部材15を備えること、ダイアフラム部材15は、圧力作用室116b内の流体圧力のみに基づき、下流側流体室116aの側または圧力作用室116bの側に弾性変形すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御流体を入力する入力ポートと、前記制御流体を出力する出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する流体室と、を備える流体制御機器において、
前記流体室に隣接する隣接空間を備えること、
前記流体室と前記隣接空間とを区画するダイアフラム部材を備えること、
前記ダイアフラム部材は、前記隣接空間内の流体圧力のみに基づき、前記流体室の側または前記隣接空間の側に弾性変形すること、
を特徴とする流体制御機器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御機器において、
前記隣接空間は、負圧発生器に接続されていること、
前記負圧発生器により前記流体圧力が負圧にされるとき、前記ダイアフラム部材は、前記隣接空間の側に弾性変形し、前記隣接空間の容積を減少させること、
前記隣接空間の容積の減少に応じて、前記流体室の容積が増大することで、前記制御流体のサックバックを行うこと、
を特徴とする流体制御機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御機器において、
前記隣接空間は、前記ダイアフラム部材の弾性変形する方向において前記ダイアフラム部材に対向する位置に、前記隣接空間の側に弾性変形する前記ダイアフラム部材に当接して、前記ダイアフラム部材の最大変形量を規制する規制部を備えること、
を特徴とする流体制御機器。
【請求項4】
請求項3に記載の流体制御機器において、
前記規制部は、前記ダイアフラム部材の弾性変形する方向において、位置の調整が可能であること、
を特徴とする流体制御機器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の流体制御機器において、
前記流体室の上流側に設けられる上流側流体室と、
前記流体室と前記上流側流体室とを連通させる弁孔と、
前記弁孔の外周に沿って設けられる環状弁座と、
前記上流側流体室に収容され、前記環状弁座に対して、前記ダイアフラム部材が弾性変形する方向と一致する方向に当接離間する弁体と、
を備えること、
前記弁体は、前記上流側流体室から、前記弁孔を通じて、前記流体室まで延在する、延在部を備えること、
前記延在部は、前記ダイアフラム部材と分離可能に遊嵌されていること、
を特徴とする流体制御機器。
【請求項6】
請求項1に記載の流体制御機器において、
前記隣接空間は、圧力調整器を介して、前記隣接空間に操作流体を供給するための操作流体供給源と、負圧を発生する負圧発生器と、に接続されていること、
前記圧力調整器は、前記操作流体と前記負圧により、前記流体圧力の調整を行うこと、
を特徴とする流体制御機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御流体を入力する入力ポートと、制御流体を出力する出力ポートと、入力ポートと出力ポートを連通する流体室と、を備える流体制御機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶などの製造工程で使用される薬液や純水等は、供給源からノズル等の吐出口へと圧送される途中で弁によってその流量が制御される。その際、一定量の薬液を供給するために弁を一定間隔で開閉するが、その閉弁時にノズル側流路内の薬液を吸引することによって、吐出停止後に薬液がそのノズル先端から過剰に滴下されることが防止されている。その薬液吸引のために、例えば、特許文献1に開示される、開閉弁の機能とサックバック機能とを備えた流体制御機器が用いられている。
【0003】
ここで、特許文献1に開示される流体制御機器について説明する。なお、符号は、特許文献1に記載のものを用いている。特許文献1に開示される流体制御機器は、制御流体を入力する入力ポート11と、制御流体を出力する出力ポート12と、入力ポート11と出力ポート12とを連通する弁孔14と、弁孔14の外周部に形成される弁座13と、弁座13に対して当接離間する環状の弁体部5aを備えたダイアフラム弁体5と、弁体部5aに係着する案内管21を備えた第1ピストン22と、第1ピストン22を貫いて案内管21内に嵌挿されダイアフラム弁体5の中心部に係着するロッド31を備えた第2ピストン32と、第1ピストン22をダイアフラム弁体5の閉方向に付勢するための第1スプリング27と、第2ピストン32をダイアフラム弁体5の開方向に付勢するための第2スプリング36と、を備えている。
【0004】
第1ピストン22により駆動されるダイアフラム弁体5の弁体部5aが、弁孔14の外周部に形成される弁座13と当接離間することで、開閉弁の機能が得られている。また、閉弁状態で、第2ピストン32を閉方向に駆動するための操作エアの供給を停止すると、第2スプリング36の付勢力により、第2ピストン32が開方向に駆動される。これにより、ダイアフラム弁体5の中心部5cが開方向に上昇され、弁孔14の容積を拡大するため、サックバックを行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-051223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した流体制御機器には、以下のような問題があった。
【0007】
特許文献1に開示される流体制御機器は、第2スプリング36の付勢力により第2ピストン32を駆動することで、サックバックを行う。しかし、第2ピストンが動こうとする際には、案内管21の内面との間の摺動抵抗や、シールリング35の摺動抵抗が働く。このため、第2スプリングの付勢力のみで第2ピストン32を駆動しようとすると、操作エアの供給停止から、第2ピストン32の駆動が開始されるまでにタイムラグが生じ、サックバック機能の応答性が低下することが懸念される。また、第2ピストン32の駆動源である第2スプリング36は、経年変化により付勢力が低下することも考えられるところ、この付勢力の低下によっても、サックバック機能の応答性が低下することが懸念される。
【0008】
半導体製造装置においては、薬液等の制御流体の吐出停止後にサックバックを開始するタイミングが早すぎると、ノズル等の吐出口の先端から気泡を流体制御機器内に巻き込むおそれがある。気泡が巻き込まれると、次に薬液の吐出を行う際に、薬液とともに気泡も吐出され、半導体の製造不良を招きかねない。一方で、サックバックを開始するタイミングが遅すぎれば、薬液の過剰な吐出が行われ、これも半導体の製造不良を招きかねない。このため、サックバック開始のタイミングとしては、±0.05秒の繰り返し精度が求められる。そのような中で、上記のような応答性の低下は好ましくない。
【0009】
さらに、特許文献1に開示される流体制御機器を構成する部品の寸法公差により、機器によって上記した摺動抵抗の働き具合が変わることが考えられる。これにより、安定した第2ピストン32の駆動を得られず、サックバック機能の安定性が低下することが懸念される。
【0010】
サックバック機能の応答性および安定性の低下は、過剰な薬液の滴下の原因となり得る。近年、半導体の高性能化に伴って、サックバック機能の高精度化が必要になっていることから、サックバック機能の応答性および安定性の向上が望まれている。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、サックバック機能の応答性および安定性を向上させることが可能な流体制御機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における流体制御機器は、次のような構成を有している。
【0013】
(1)制御流体を入力する入力ポートと、前記制御流体を出力する出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する流体室と、を備える流体制御機器において、前記流体室に隣接する隣接空間を備えること、前記流体室と前記隣接空間とを区画するダイアフラム部材を備えること、前記ダイアフラム部材は、前記隣接空間内の流体圧力のみに基づき、前記流体室の側または前記隣接空間の側に弾性変形すること、を特徴とする。
【0014】
(2)(1)に記載の流体制御機器において、前記隣接空間は、負圧発生器に接続されていること、前記負圧発生器により前記流体圧力が負圧にされるとき、前記ダイアフラム部材は、前記隣接空間の側に弾性変形し、前記隣接空間の容積を減少させること、前記隣接空間の容積の減少に応じて、前記流体室の容積が増大することで、前記制御流体のサックバックを行うこと、を特徴とする。
【0015】
上記の流体制御機器によれば、ダイアフラム部材は、隣接空間内の流体圧力のみに基づき、流体室の側または隣接空間の側に弾性変形することを特徴としているため、例えば、負圧発生器により、隣接空間の流体圧が負圧にされると、ダイアフラム部材は、隣接空間の側に弾性変形し、隣接空間の容積を減少させる。すると、隣接空間の容積の減少に応じて、流体室の容積が増大するため、制御流体のサックバックを行うことが可能になる。
【0016】
流体圧力のみによりダイアフラム部材を弾性変形させることでサックバックを行うのであり、特許文献1に開示される流体制御機器のようにピストンの駆動によりサックバックを行うものではない。よって、流体制御機器を構成する部品間の摺動抵抗の影響を受けにくい。また、ダイアフラム部材を弾性変形させるための駆動源は流体圧であるため、ダイアフラム部材を弾性変形させる力が経年変化により低下するおそれも少ない。よって、摺動抵抗や経年変化によるサックバック機能の応答性の低下を防止することが可能である。
【0017】
また、流体制御機器を構成する部品間の摺動抵抗の影響を受けにくいことから、流体制御機器を構成する部品の寸法公差によって、サックバック機能の安定性が低下するおそれもない。
【0018】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御機器において、前記隣接空間は、前記ダイアフラム部材の弾性変形する方向において前記ダイアフラム部材に対向する位置に、前記隣接空間の側に弾性変形する前記ダイアフラム部材に当接して、前記ダイアフラム部材の最大変形量を規制する規制部を備えること、を特徴とする。
【0019】
(4)(3)に記載の流体制御機器において、前記規制部は、前記ダイアフラム部材の弾性変形する方向において、位置の調整が可能であること、を特徴とする。
【0020】
特許文献1に開示される流体制御機器は、第2ピストンの駆動量に応じて、弁孔の容積の変動量が定まる。第2ピストンの最大駆動量は、ロッドにより定まるところ、寸法公差等の積み重ねにより、弁孔の容積の変動量にばらつきが生じるおそれがある。弁孔の容積の変動量にばらつきが生じると、サックバック量の安定性が低下するおそれがある。例えば、半導体製造装置において、サックバックにより、制御流体がノズル等の吐出口の先端から数mm後退することとした場合、サックバック量の安定性低下により、サックバック量が多くなると、制御流体が後退する量が大きくなり過ぎて、次に制御流体の吐出を行うタイミングが遅れたり、吐出量が少なくなったりするおそれがある。これは、半導体の製造不良を招きかねないため、好ましくない。
【0021】
一方、(3)または(4)に記載の流体制御機器は、ダイアフラム部材の変形量により、流体室および隣接空間の容積の増減量が定まるところ、ダイアフラム部材に当接することで、最大変形量を規制する規制部を備えている。規制部がダイアフラム部材に直接当接するものであれば、寸法公差に積み重ねが少なくなり、流体室および隣接空間の容積の増減量にばらつきが生じるおそれが低減される。これにより、サックバック量の安定性を確保できる。
【0022】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の流体制御機器において、前記流体室の上流側に設けられる上流側流体室と、前記流体室と前記上流側流体室とを連通させる弁孔と、前記弁孔の外周に沿って設けられる環状弁座と、前記上流側流体室に収容され、前記環状弁座に対して、前記ダイアフラム部材が弾性変形する方向と一致する方向に当接離間する弁体と、を備えること、前記弁体は、前記上流側流体室から、前記弁孔を通じて、前記流体室まで延在する、延在部を備えること、前記延在部は、前記ダイアフラム部材と分離可能に遊嵌されていること、を特徴とする。
【0023】
(5)に記載の流体制御機器によれば、隣接空間の流体圧を調整することで、弁体の環状弁座に対する当接離間の動作を制御することが可能になるため、サックバック機能の他、開閉弁としての機能と、制御流体の圧力調整が可能なレギュレータとしての機能と、を持たせることが可能である。
【0024】
また、特許文献1に開示される流体制御機器は、スプリングの付勢力により弁閉を行うが、スプリングは偏荷重が発生するため、弁体に傾きが生じるおそれがある。弁体に傾きが生じると、弁座に片当たりし、摩耗等によるパーティクルが発生しやすくなる。一方、(5)に記載の流体制御機器は、流体圧により弁体の開度調整を行うため、スプリングのような偏荷重が生じない。よって、弁体が環状弁座に片当たりするおそれが低減され、摩耗等によるパーティクルの発生を抑えることが可能である。
【0025】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体制御機器1において、隣接空間(圧力作用室116b)は、圧力調整器22を介して、隣接空間(圧力作用室116b)に操作流体(例えば、操作エア)を供給するための操作流体供給源(例えば、圧縮エア供給源23)と、負圧を発生する負圧発生器24と、に接続されていること、圧力調整器22は、上記操作流体(操作エア)と上記負圧により、隣接空間(圧力作用室116b)内の流体圧力の調整を行うこと、を特徴とする。
【0026】
(6)に記載の流体制御機器1によれば、圧力調整器22により隣接空間(圧力作用室116b)内の流体圧力を調整可能である。よって、流体圧力を正圧から負圧に調整する際や、負圧から正圧に調整する際に リニアに調整することが可能となるため、サックバックの応答性の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の流体制御機器によれば、サックバック機能の応答性および安定性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】弁開状態にある流体制御機器の断面図である。
図2】弁閉状態にある流体制御機器の断面図である。
図3】サックバックを行った状態の流体制御機器の断面図である。
図4】流体制御機器に供給される操作エアの圧力を制御する圧力制御回路を示すブロック図である。
図5】制御信号と操作エアの圧力との関係の一例を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る流体制御機器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、弁開状態にある流体制御機器1の断面図である。図2は弁閉状態にある流体制御機器1の断面図である。図3は、サックバックを行った状態の流体制御機器1の断面図である。なお、図1図3中の上下方向が、後述する弁体14の開閉方向である。また、参照する図面は、分かり易さのためにデフォルメされたものであり、各部材の形状や寸法等を正確に表したものではない。
【0030】
(流体制御機器の構成について)
【0031】
本実施形態に係る流体制御機器1は、半導体製造工程に用いられる薬液や純水等(制御流体の一例)の圧力制御を行うレギュレータである。
【0032】
流体制御機器1は、図1図3に示すように、弁本体11と、上カバー12と、下カバー13とを備えている。上カバー12と下カバー13とは、図中の上下方向(後述する弁体14の開閉方向と同一の方向)から弁本体11を挟むようにして、弁本体11に組付けられている。なお、弁本体11は、内部を制御流体が流れる接液部材であるため、耐腐食性の高いフッ素系合成樹脂により成形されている。一方、接液部材ではない上カバー12と下カバー13は、例えばポリプロピレン樹脂により成形されている。
【0033】
弁本体11は、制御流体が入力される入力ポート111と、制御流体が出力される出力ポート112とが形成されている。入力ポート111には、制御流体の供給源(不図示)が接続されており、当該供給源から流体制御機器1に制御流体が入力される。出力ポート112にはノズル(不図示)が接続されており、流体制御機器1から出力される制御流体を半導体等に滴下する。
【0034】
弁本体11には、弁本体11の下カバー13の側の端面(図1図3中の下端面)から上カバー12の側に向かって、上流側流体室113が穿設されている。上流側流体室113は、入力流路111aによって入力ポート111と連通している。さらに、上流側流体室113の上カバー12側の内面113aには、弁孔114が穿設されている。この弁孔114は、上流側流体室113と同軸上に位置している。上流側流体室113の内面113aには、弁孔114の外周に沿って環状弁座115が突設されている。環状弁座115の先端は平坦にされており、後述する弁体14が当接する当接面である。
【0035】
さらに、弁本体11には、弁本体11の上カバー12の側の端面(図1図3中の上端面)から下カバー13の側に向かって、略円柱状の空間として開口部116が穿設されている。この開口部116は、上流側流体室113および弁孔114と同軸上に設けられている。また、開口部116は、後述するダイアフラム部材15によって、開閉方向において、2室に区画されている。すなわち、下流側流体室116a(流体室の一例)と、圧力作用室116b(隣接空間の一例)と、に区画されている。下流側流体室116aは、弁孔114により上流側流体室113に連通している。さらに、下流側流体室116aは、出力流路112aにより出力ポート112に連通している。したがって、弁本体11には、入力流路111aと、上流側流体室113と、弁孔114と、下流側流体室116aと、出力流路112aとによって、入力ポート111から出力ポート112までの一連の流路が構成されている。
【0036】
上流側流体室113には、開閉方向に往復動可能な略円柱形状の弁体14が収容されている。この弁体14は、接液部材であるため、耐腐食性の高い、例えばフッ素系合成樹脂により成形されている。
【0037】
弁体14には、その軸線方向の中央部に、他の部分よりも径の大きい拡径部141が形成されている。拡径部141の、弁座115aに対向する端面は、環状弁座115に当接する当接面141aである。よって、図2に示すように、流体制御機器1が閉弁状態にあるとき、弁体14と環状弁座115は平面同士で当接する。このように、当接面141aが環状弁座115に当接した状態では、入力ポート111から出力ポート112までの流路が遮断された状態である。一方、図1に示すように、当接面141aが弁座115aから離間した状態では、入力ポート111から出力ポート112までの流路が連通された状態である。
【0038】
さらに弁体14は、下カバー13側の端部に、弁体14と一体に成形された薄膜部142と、薄膜部142の外周に形成された固定部143と、を備えている。固定部143は弁本体11と下カバー13とに挟持されており、これにより、弁体14は、上流側流体室113と同軸上に位置するように固定されている。そして、薄膜部142は、弁体14が開閉方向に往復運動するに伴って弾性変形可能なように形成されている。
【0039】
弁体14の、当接面141aから上カバー12側に向かって延在部145が突設されている。この延在部145は、弁孔114を通じて下流側流体室116aまで延在しており、延在部145の先端部144は、ダイアフラム部材15に対して分離可能に遊嵌されている。このダイアフラム部材15は、略円盤状に形成されている。また、ダイアフラム部材15は、接液部材であるため、耐腐食性の高い、例えばフッ素系合成樹脂により成形されている。
【0040】
ダイアフラム部材15は、中央部151と、中央部151の外周に形成される薄膜部152と、薄膜部152の外周に形成される環状の固定部153と、からなる。中央部151には、弁体14側の端面の中央に、嵌合部151aが穿設されている。そして、この嵌合部151aに、弁体14の上カバー12側の先端部144が遊嵌されている。この遊嵌とは、弁体14が閉方向(図中の上方向)に移動する際に中心軸位置がブレないように位置決めするためのものである一方、ダイアフラム部材15と弁体14とが離れる方向に力が働いた時には離間可能なものである。
【0041】
ダイアフラム部材15の固定部153は、上カバー12と弁本体11とにより挟持されており、これにより、ダイアフラム部材15が固定されている。このように固定されることで、中央部151が、薄膜部152を弾性変形させながら、弁体14とともに開閉方向に往復運動になっている。固定部153と、上カバー12の間には、Oリング19が配設されており、圧力作用室116bの気密を保っている。
【0042】
上カバー12には、圧力作用室116bに連通する導入ポート121が形成されており、導入ポート121を通じて圧力作用室116bに操作エアを供給することができる。圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力は、後述する圧力制御回路21(図4参照)により調整可能となっている。そして、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力と下流側流体室116aとの圧力バランスに応じて、ダイアフラム部材15は、薄膜部152を弾性変形させながら、開閉方向における位置を変動させる。これにより、弁体14の開閉方向における位置が調節される。
【0043】
開閉方向に変位可能なダイアフラム部材15の上限位置は、圧力作用室116b内に設けられる規制部1813により定まる。規制部1813は、上カバー12に挿通される調整部材18により設けられている。
【0044】
上カバー12は、圧力作用室116bに連通する貫通孔122と、貫通孔122に連通するとともに同軸上に位置する雌ネジ部123と、を備えており、調整部材18は、この貫通孔122と雌ネジ部123とに挿通されている。調整部材18は、ロッド181と、ハンドル182と、からなる。ロッド181は、略円柱形状に形成されており、上カバー12に挿入されている側の太径部1811と、太径部1811から上方に延在する細径部1822とを備える。太径部1811のダイアフラム部材15に対向する面が、ダイアフラム部材15の上限位置を定める規制部1813である。また、太径部1811の外周面と、上カバー12の貫通孔122の内周面との間には、Oリング20が配設されており、圧力作用室116bの気密を保っている。また、細径部1822の外周面は雄ネジ部181bであり、上カバー12の雌ネジ部123と螺合している。ロッド181の、上カバー12から突出している側の端部には、ハンドル182が結合されており、このハンドル182を握って、ロッド181の中心軸を中心にして回転させることが可能になっている。調整部材18の雄ネジ部181bと上カバー12の雌ネジ部123が螺合されているため、ロッド181が回転されることで、調整部材18の開閉方向における位置を無段階に調整可能になっている。すなわち、開閉方向における規制部1813の位置を調整可能であり、ダイアフラム部材15が変形する際の上限位置を調整可能である。
【0045】
下カバー13には、弁体14と同軸上に、略円柱状の空間として、ばね収容室131が形成されている。ばね収容室131は、弁体14の薄膜部142を挟んで上流側流体室113と反対側に位置している。ばね収容室131には、圧縮コイルばね16が収容されている。
【0046】
さらに、ばね収容室131には、弁体14と同軸上に凹状のガイド部132が設けられている。ガイド部132には、弁体14を下カバー13側から支持する支持部材17が挿入されている。支持部材17の外周面から突出して設けられているフランジ部171には、圧縮コイルばね16が当接している。これにより、支持部材17は、弁本体11側(図中の上方)に向かって付勢されている。
【0047】
また、支持部材17は、弁体14側の上端面に穿設された溝172に弁体14の下端部が差し込まれており、これにより弁体14を支持している。支持部材17は圧縮コイルばね16により上方に付勢されているため、支持部材17に支持される弁体14も上方に付勢されている。つまり、弁体14は、環状弁座115に当接しようとする閉方向へ付勢されている。そして、弁体14が開方向に移動する際には、圧縮コイルばね16の付勢力に抗して移動することになる。圧縮コイルばね16に偏荷重が発生した場合、弁体14傾きが生じるおそれがあるが、支持部材17の溝172と弁体14の下端部は球面同士で接触しているため、弁体14が環状弁座115に当接したときに、弁体14の姿勢が自然と補正されるようになっている。これにより、弁体14が環状弁座115に片当たりすることを防いでいる。
【0048】
また、支持部材17は、弁体14とは反対側の端部(図中の下端部)に、ガイド部132に挿入される摺動部173を備えている。弁体14の環状弁座115に対する当接離間の動作は、摺動部147がガイド部132に挿入されていることで、ガイド部132によって案内される。
【0049】
(圧力制御回路の構成について)
次に、流体制御機器1に供給される操作エアの圧力を制御するための圧力制御回路21について説明する。図4は、流体制御機器1に供給される操作エアの圧力を制御する圧力制御回路21を示すブロック図である。図5は、制御信号と操作エアの圧力との関係の一例を表したグラフである。
【0050】
圧力制御回路21は、図4に示すように、操作エア供給配管211を介して、流体制御機器1の導入ポート121に接続されており、操作エアを圧力調整した上で圧力作用室116b(図1図3参照)に供給するための回路である。圧力制御回路21は、圧力調整器22と、圧縮エア供給源23(操作流体供給源の一例)と、負圧発生器24と、真空用レギュレータ25と、コントローラ26と、を備えている。
【0051】
圧縮エア供給源23は、例えばコンプレッサであり、圧縮エア供給用配管212を介して、圧力調整器22に接続されている。圧縮エア供給源23は、圧縮エア供給用配管212を通して、圧縮エアを圧力調整器22に供給している。圧縮エアの圧力値は特に限定されないが、本実施形態においては、例えば、0.5MPaの圧縮エアを供給する。
【0052】
負圧発生器24は、例えばエジェクタであり、排気用配管213を介して、圧力調整器22に接続されている。負圧発生器24が発生する負圧の圧力値は特に限定されないが、本実施形態においては、例えば、-0.05から-0.09MPaの負圧を発生する。また、排気用配管213上には、真空用レギュレータ25が配設されている。この真空用レギュレータ25により排気量を調整することで、圧力調整器22から流体制御機器1に供給される操作エアの圧力の安定化を図っている。
【0053】
圧力調整器22は、例えば真空対応の電空レギュレータであり、圧縮エア供給源23から供給される圧縮エアと、負圧発生器24が発生する負圧とにより、流体制御機器1に供給する操作エアの圧力を調整する。本実施形態においては、例えば、-0.05から0.5MPaの間で操作エアの圧力を調整する。この圧力の調整は、コントローラ26から圧力調整器22に出力される制御信号に基づき行われる。制御信号は電圧値として圧力調整器22に与えられるものであり、例えば、図5に示すように、制御信号の電圧値が上昇するに応じ、操作エアの圧力値が比例して上昇するように設定されている。具体的には、制御信号が0Vの時は、圧力調整器22が操作エアの圧力を-0.05MPaに調整するものとされており、制御信号の電圧値が上昇するに応じ、操作エアの圧力値が比例して上昇し、制御信号の最大値5Vの時は、圧力調整器22が操作エアの圧力を0.5MPaに調整するよう設定されている。なお、図5に示すグラフは、あくまでも制御信号の電圧値と、操作エアの圧力値との対応関係を示すものであって、流体制御機器1に供給される操作エアの圧力値が常にリニアに制御されることを示すものでない。
【0054】
また、排気用配管213を分岐させ、複数の圧力調整器22を並列して設けても良い。複数の圧力調整器22および流体制御機器1を並列して設けることとしても良い。
【0055】
(流体制御機器の動作について)
流体制御機器1は、開閉弁の機能と、レギュレータの機能と、サックバックの機能と、を備えている。
【0056】
まず、開閉弁の機能について説明する。流体制御機器1は、流体制御機器1内の入力ポート111から出力ポート112までの一連の流路の開閉を行うことで、制御流体の出力および遮断を行うことができる。
【0057】
流体制御機器1(圧力作用室116b)に対して操作エアの供給が行われていない状態、すなわち、圧力調整器22において操作エアが0KPaに調整されており、圧力作用室116b内が大気圧である状態では、圧縮コイルばね16の付勢力によって弁体14は環状弁座115に当接され、流体制御機器1は閉弁状態(図2示す状態)になる。つまり、流体制御機器1内の流路が閉じられた状態であり、制御流体の流れは遮断されている。
【0058】
一方、圧力調整器22から流体制御機器1(圧力作用室116b)に対して操作エアが供給され、圧力作用室116bの圧力が上昇していくと、ダイアフラム部材15は、圧縮コイルばね16の付勢力に抗して、下流側流体室116aの側に弾性変形し、圧力作用室116bの容積が拡大していく。これに伴い、弁体14が環状弁座115から離間し、流体制御機器1は開弁状態(図1に示す状態)になる。つまり、流体制御機器1内の流路が開かれた状態であり、制御流体の出力が行われる状態である。本実施形態においては、圧力調整器22から0.5MPaの操作エアを供給するときが、最大の弁開度が得られる。
【0059】
次に、レギュレータの機能について説明する。流体制御機器1は、圧力作用室116bに供給する操作エアの圧力調整を行うことで、出力ポート112から出力される制御流体の圧力を安定化させることができる。
【0060】
圧力調整器22が供給可能な圧力値の範囲内において、任意の圧力の操作エアを流体制御機器1に供給し、圧力作用室116b内を正圧の状態にすることで、流体制御機器1を開弁状態にする。すると、流体制御機器1から制御流体が出力される。この場合に、例えば、流体制御機器1の下流側のノズルで制御流体の使用量が増えれば、下流側流体室116aの圧力が低下する。下流側流体室116aの圧力が、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力よりも小さくなると、ダイアフラム部材15の薄膜部152は下流側流体室116aの側に変形し、ダイアフラム部材15は、下流側流体室116aの圧力と圧力作用室116bの圧力とのバランスが取れる位置まで移動する。これに伴い、弁体14の開度が大きくなる。また、一方で、流体制御機器1の下流側のノズルで制御流体の使用量が減少すれば、下流側流体室116aの圧力が上昇する。下流側流体室116aの圧力が、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力よりも大きくなると、ダイアフラム部材15の薄膜部152は圧力作用室116bの側に変形し、ダイアフラム部材15は、下流側流体室116aの圧力と圧力作用室116bの圧力とのバランスが取れる位置まで移動する。これに伴い、弁体14の開度が小さくなる。
【0061】
このように、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力と下流側流体室116aとの圧力バランスに応じて、ダイアフラム部材15は、薄膜部152を弾性変形させながら、開閉方向における位置を変動させる。これにより、弁体14の開閉方向における位置が調節され、出力ポート112から出力される制御流体の圧力を安定化させることができる。
【0062】
次に、サックバックの機能について説明する。流体制御機器1は、閉弁状態となったあと、サックバックの機能を用いることで、出力ポート112側の制御流体を吸引し、制御流体がノズルから過剰に滴下されることを防止することができる。
【0063】
流体制御機器1(圧力作用室116b)に対して操作エアの供給が行われており、流体制御機器1が制御流体を出力している状態から、操作エアの供給を停止すると(すなわち、圧力調整器22において操作エアがゼロKPaに調整されると)、圧縮コイルばね16の付勢力により、弁体14は環状弁座115に当接され、流体制御機器1は閉弁状態になる。この状態から、操作エアを負圧にすると(すなわち、圧力調整器22において操作エアの圧力を-0.05MPaに調整すると)、ダイアフラム部材15が圧力作用室116bの側に弾性変形する。このとき、弁体14は、環状弁座115に当接していて、圧力作用室116bの側に移動できないため、図3に示すように、ダイアフラム部材15は、弁体14から分離し、単体で圧力作用室116bの側に変形する。この際、ダイアフラム部材15は、規制部1813に当接する位置まで変形する。この変形により、圧力作用室116bの容積が減少され、圧力作用室116bの容積の減少に応じて、下流側流体室116aの容積が増大する。下流側流体室116aの容積が増大することで、制御流体のサックバックが行われる。つまり、出力ポート112側の制御流体を吸引し、制御流体がノズルから過剰に滴下されることを防止する。
【0064】
サックバックされる制御流体の量は、下流側流体室116aの容積の増大量に応じて定まる。そして、下流側流体室116aの容積の増大量は、ダイアフラム部材15の圧力作用室116b側への変形量により定まる。圧力作用室116b内の規制部1813の位置は、無段階で調整可能であるため、ダイアフラム部材15の変形量を調整可能である。よって、規制部1813の位置を調整することで、サックバックされる制御流体の量を調整可能である。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る流体制御機器1は、
(1)制御流体を入力する入力ポート111と、制御流体を出力する出力ポート112と、入力ポート111と出力ポート112を連通する流体室(例えば、下流側流体室116a)と、を備える流体制御機器1において、流体室(下流側流体室116a)に隣接する隣接空間(例えば、圧力作用室116b)を備えること、流体室(下流側流体室116a)と隣接空間(圧力作用室116b)とを区画するダイアフラム部材15を備えること、ダイアフラム部材15は、隣接空間(圧力作用室116b)内の流体圧力(例えば操作エアの圧力)のみに基づき、流体室(下流側流体室116a)の側または隣接空間(圧力作用室116b)の側に弾性変形すること、を特徴とする。
【0066】
(2)(1)に記載の流体制御機器1において、隣接空間(圧力作用室116b)は、負圧発生器24に接続されていること、負圧発生器24により流体圧力が負圧にされるとき、ダイアフラム部材15は、隣接空間(圧力作用室116b)の側に弾性変形し、隣接空間(圧力作用室116b)の容積を減少させること、隣接空間(圧力作用室116b)の容積の減少に応じて、流体室(下流側流体室116a)の容積が増大することで、制御流体のサックバックを行うこと、を特徴とする。
【0067】
上記の流体制御機器1によれば、ダイアフラム部材15は、隣接空間(圧力作用室116b)内の流体圧力のみに基づき、流体室(下流側流体室116a)の側または隣接空間(圧力作用室116b)の側に弾性変形することを特徴としているため、例えば、負圧発生器24により、隣接空間(圧力作用室116b)の流体圧が負圧にされると、ダイアフラム部材15は、隣接空間(圧力作用室116b)の側に弾性変形し、隣接空間(圧力作用室116b)の容積を減少させる。すると、隣接空間(圧力作用室116b)の容積の減少に応じて、流体室(下流側流体室116a)の容積が増大するため、制御流体のサックバックを行うことが可能になる。
【0068】
流体圧力のみによりダイアフラム部材15を弾性変形させることでサックバックを行うのであり、特許文献1に開示される流体制御機器のようにピストンの駆動によりサックバックを行うものではない。よって、流体制御機器1を構成する部品間の摺動抵抗の影響を受けにくい。また、ダイアフラム部材15を弾性変形させるための駆動源は流体圧であるため、ダイアフラム部材15を弾性変形させる力が経年変化により低下するおそれも少ない。よって、摺動抵抗や経年変化によるサックバック機能の応答性の低下を防止することが可能である。
【0069】
また、流体制御機器1を構成する部品間の摺動抵抗の影響を受けにくいことから、流体制御機器1を構成する部品の寸法公差によって、サックバック機能の安定性が低下するおそれもない。
【0070】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御機器1において、隣接空間(圧力作用室116b)は、ダイアフラム部材15の弾性変形する方向においてダイアフラム部材15に対向する位置に、隣接空間(圧力作用室116b)の側に弾性変形するダイアフラム部材15に当接して、ダイアフラム部材15の最大変形量を規制する規制部1813を備えること、を特徴とする。
【0071】
(4)(3)に記載の流体制御機器1において、規制部1813は、ダイアフラム部材15の弾性変形する方向(開閉方向と同一の方向)において、位置の調整が可能であること、を特徴とする。
【0072】
(3)または(4)に記載の流体制御機器1は、ダイアフラム部材15の変形量により、流体室(下流側流体室116a)および隣接空間(圧力作用室116b)の容積の増減量が定まるところ、ダイアフラム部材15に当接することで、最大変形量を規制する規制部1813を備えている。規制部1813がダイアフラム部材15に直接当接するものであれば、寸法公差に積み重ねが少なくなり、流体室(下流側流体室116a)および隣接空間(圧力作用室116b)の容積の増減量にばらつきが生じるおそれが低減される。これにより、サックバック量の安定性を確保できる。
【0073】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の流体制御機器1において、流体室(下流側流体室116a)の上流側に設けられる上流側流体室113と、流体室(下流側流体室116a)と上流側流体室113とを連通させる弁孔114と、弁孔114の外周に沿って設けられる環状弁座115と、上流側流体室113に収容され、環状弁座115に対して、ダイアフラム部材15が弾性変形する方向と一致する方向に当接離間する弁体14と、を備えること、弁体14は、上流側流体室113から、弁孔114を通じて、流体室(下流側流体室116a)まで延在する、延在部145を備えること、延在部145は、ダイアフラム部材15と分離可能に遊嵌されていること、を特徴とする。
【0074】
(5)に記載の流体制御機器1によれば、隣接空間(圧力作用室116b)の流体圧を調整することで、弁体14の環状弁座115に対する当接離間の動作を制御することが可能になるため、サックバック機能の他、開閉弁としての機能と、制御流体の圧力調整が可能なレギュレータとしての機能と、を持たせることが可能である。
【0075】
また、特許文献1に開示される流体制御機器は、スプリングの付勢力により弁閉を行うが、スプリングは偏荷重が発生するため、弁体に傾きが生じるおそれがある。弁体に傾きが生じると、弁座に片当たりし、摩耗等によるパーティクルが発生しやすくなる。一方、(5)に記載の流体制御機器1は、流体圧により弁体14の開度調整を行うため、スプリングのような偏荷重が生じない。よって、弁体14が環状弁座115に片当たりするおそれが低減され、摩耗等によるパーティクルの発生を抑えることが可能である。
【0076】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体制御機器において、前記隣接空間は、圧力調整器を介して、前記隣接空間に操作流体を供給するための操作流体供給源と、負圧を発生する負圧発生器と、に接続されていること、前記圧力調整器は、前記操作流体と前記負圧により、前記流体圧力の調整を行うこと、を特徴とする。
【0077】
(6)に記載の流体制御機器によれば、圧力調整器により隣接空間内の流体圧力を調整可能である。よって、流体圧力を正圧から負圧に調整する際や、負圧から正圧に調整する際に リニアに調整することが可能となるため、サックバックの応答性の低下を防止することができる。
【0078】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態における流体制御機器はレギュレータであるが、サックバック機能に特化した流体制御機器であっても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 流体制御機器
15 ダイアフラム部材
111 入力ポート
112 出力ポート
116a 下流側流体室(流体室の一例)
116b 圧力作用室(隣接空間の一例)
図1
図2
図3
図4
図5