(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069015
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 123/08 20060101AFI20240514BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20240514BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240514BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C09J123/08
C09J153/00
C09J11/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179769
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】高森 愛
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA182
4J040DA041
4J040DA042
4J040DA072
4J040DB042
4J040DM002
4J040DN032
4J040JB01
4J040KA29
4J040LA08
4J040MA09
(57)【要約】
【課題】 糸曳を低減でき、低温から高温までの幅広い温度領域における接着性及び薬剤が塗布された基材への接着性に優れ、耐熱クリープ性、ホットタック性にも優れるホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 (A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体、(B)熱可塑性ブロック共重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)ワックスを含み、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、成分(B)の配合量が1質量部以上、5質量部未満であり、成分(A)が(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体、(B)熱可塑性ブロック共重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)ワックスを含み、
成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(B)熱可塑性ブロック共重合体の配合量が1質量部以上、5質量部未満であり、
(A)ランダム共重合体が(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(A)ランダム共重合体の配合量が25質量部を超え、40質量部未満であり、(D)ワックスの配合量が10質量部以上25質量部以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体が、さらに、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体、(A3)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体、および(A4)メタロセン系エチレン/ブテン共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1に記載のホットメルト接着剤を有する紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは、種々の基材に対して接着性が良好であり、特にダンボール等の紙製基材に対して接着性が良好であり、紙製基材等を用いて紙製品等を組み立てるために好適なホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので瞬間接着及び高速接着が可能であり、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン系共重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、非晶性ポリアルファオレフィン(以下、「APAO」ともいう)等のオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン-イソプレン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SBS」ともいう)及びそれらの水素添加物等の合成ゴム、及びポリウレタン等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、オレフィン樹脂の共重合体であるエチレン/αオレフィン共重合体(例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/オクテン共重合体)を含むホットメルト接着剤は、紙加工や使い捨て製品に利用されることが多い。
【0005】
特許文献1は、オレフィンコポリマーを含有する低温塗工用のホットメルト接着剤に言及している(特許文献1[請求項1]参照)。オレフィン共重合体を含むホットメルト接着剤の詳細な組成は、サンプルとして表1に開示されている([0092]参照)。各サンプルは、オレフィン系ランダム共重合体(Vistamaxxシリーズ、Engageシリーズ)、オレフィン系ブロック共重合体(Infuseシリーズ)、スチレン系ブロック共重合体(Kratonシリーズ)をベースポリマーとして含み、さらに、粘着付与樹脂、ワックス、オイルを含んでいる。
【0006】
特許文献2は、エチレン/αオレフィン共重合体、及びスチレン系ブロック共重合体を含むホットメルト接着剤を開示する(特許文献2[請求項1]参照)。表1~4に示されるように、ホットメルト接着剤は、オレフィン系ランダム共重合体、スチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとして含み、粘着付与樹脂、ワックス、オイルを有している([0080]~[0086]参照)。
【0007】
特許文献3のホットメルト接着剤は、請求項1に開示されているとおり、水素化熱可塑性ブロックコポリマーと、ポリオレフィンを含んでいる。ホットメルト接着剤の組成が実施例として開示されており([0061]~[0063]、[表1]参照)、ホットメルト接着剤は、エチレン/αオレフィン共重合体、及び水素添加型スチレン系ブロック共重合体を含んでいる。
【0008】
特許文献1、特許文献3のホットメルト接着剤は、主に使い捨て製品に利用されている(特許文献1[0004]、特許文献3[0005]参照)。特許文献2のホットメルト接着剤は、紙製品にも利用されている(特許文献2[0064]~[0065]参照)。
【0009】
ホットメルト接着剤を紙製基材へ塗布する場合、ホットメルトアプリケーターという専用の塗布装置が用いられることが多い。ホットメルトアプリケーターは吐出口であるノズルを有しており、ホットメルト接着剤は約120~190℃に加熱され、ノズルの先端から吐出されて被着体に塗布される。ホットメルト接着剤を塗布する際、ノズルの先端から被着体までの間に、ホットメルト接着剤の糸状物が発生することがある。この糸状物は、ホットメルト接着剤の糸曳性に起因するものであり、ノズルやノズル周りの製造設備、被着体を汚してしまう。従って、糸曳の少ないホットメルト接着剤の開発は、接着剤メーカーにとって重要な責務である。
【0010】
特許文献1~3のホットメルト接着剤は、基材へ塗布する際に糸状物を生じさせることがある。特に、ホットメルト接着剤を紙加工分野で利用する場合、ホットメルト接着剤には、糸曳低減性を維持しつつ、低温から高温までの幅広い温度領域における接着性や、薬剤が塗布された紙製基材(難接着基材)への接着性が要求される。
【0011】
紙基材にホットメルト接着剤を高速塗工する場合、紙製品の生産効率を上げるため、ホットメルト接着剤には初期凝集力およびホットタック性に優れることが求められる。
さらに、ホットメルト接着剤で接着された紙製品(例えば、梱包用ダンボール)を夏に倉庫で保管すると、保管温度が上昇した場合にホットメルト接着剤の接着強度が低下し、ダンボールが開いてしまうことがある。ホットメルト接着剤には、高温時でも紙製基材が剥離しない(例えば、ダンボール箱が開かない)ように、耐クリープ性に優れることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2013-502493号公報
【特許文献2】特表2020-521013号公報
【特許文献3】特表2021-516265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、糸曳を低減でき、低温から高温までの幅広い温度領域における接着性及び薬剤が塗布された基材への接着性に優れ、なおかつ、耐熱クリープ性、ホットタック性にも優れるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定のエチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体と、特定の熱可塑性ブロック共重合体、粘着付与樹脂、及びワックスを含むホットメルト接着剤は、上述の課題を解決することができ、そのようなホットメルト接着剤が特に紙加工分野に好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本明細書は、以下の実施形態を含む。
1.(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体、(B)熱可塑性ブロック共重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)ワックスを含み、
成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(B)熱可塑性ブロック共重合体の配合量が1質量部以上、5量部未満であり、
(A)ランダム共重合体が、(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤。
2.成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(A)ランダム共重合体の配合量が25質量部を超え、40質量部未満であり、(D)ワックスの配合量が10質量部以上25質量部以下である、1に記載のホットメルト接着剤
3.(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体が、さらに、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体、(A3)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体、および(A4)メタロセン系エチレン/ブテン共合体から選ばれる少なくとも1種を含む、1または2に記載のホットメルト接着剤。
4.成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(A1)メタロセン系エチレン-プロピレン共重合体の配合量が2質量部以上20質量部以下である、1~3のいずれか1に記載のホットメルト接着剤。
5.(B)熱可塑性ブロック共重合体は、(B1)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのブロック共重合体、及び(B2)スチレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、1~4のいずれか1に記載のホットメルト接着剤。
6.成分(B1)がエチレン/オクテンブロック共重合体を含み、(B2)スチレンブロック共重合体が水素添加型スチレン系ブロック共重合体を含む、5に記載のホットメルト接着剤。
7.水素添加型スチレン系ブロック共重合体が、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体を含む、6に記載のホットメルト接着剤。
8.さらに、(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体を含む、1~7のいずれか1に記載のホットメルト接着剤。
9.成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体の配合量が0.5質量部以上5.0質量部以下である、8に記載のホットメルト接着剤。
10.(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体が、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン/アクリル酸ブチル共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、8または9に記載のホットメルト接着剤。
11.1~10のいずれか1に記載のホットメルト接着剤を有する紙製品。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳低減に優れ、広い温度領域で紙への接着性に優れるだけでなく、難接着基材への接着性に優れており、さらに、ホットタック性や耐熱クリープにも優れている。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤を吐出機器のノズルから紙等の被着体へ塗布する際、糸曳が低減されるので、糸状物でノズルやノズル周りの設備、被着体を汚し難い。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、難接着基材への接着性に優れるため、コーティング剤が塗布された紙製包装容器の加工に適している。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、ホットタック性が優れているので、接着時のセットタイムを短縮でき、紙加工品の生産効率を向上させることができる。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は耐熱クリープ性に優れるので、紙製基材が剥離し難く、ホットメルト接着剤が塗布されたダンボール箱を真夏に倉庫で保管しても、温度上昇によってダンボール箱が開き難い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのランダム共重合体(エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体、エチレン-炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体)、(B)熱可塑性ブロック共重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)ワックスを必須成分として含む。
本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0017】
「共重合体」とは、複数種類の単量体が重合して得られる“重合体(ポリマー、高分子)”である。
「ランダム共重合体」は複数の異なる単量体から成る重合体で、1本の高分子鎖の中で単量体(繰り返し単位)の配列に秩序がない共重合体である。
「ブロック共重合体」は複数の異なる単量体から成る重合体で、それぞれ同種の単量体から成る高分子鎖が、1本の鎖の中で結合している重合体である。
【0018】
<(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体>
本発明の実施形態において「(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体」とは、エチレンと炭素数3~20のオレフィンの配列に秩序がない共重合体をいう。(A)共重合体は、(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(メタロセン系エチレン-プロピレン共重合体)を含んでいる。
【0019】
「炭素数3~20のオレフィン」として、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、イソブチレン、cis-2-ペンテン、trans-2-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン及び2,3-ジメチル-2-ブテン等を例示できる。「炭素数3~20のオレフィン」は、炭素数3~10のオレフィンを含むことが好ましく、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンから選択される少なくとも1種であることが更により好ましく、オクテンであることが特に好ましい。
【0020】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体は、メタロセン触媒で重合された共重合体であることが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、メタロセン触媒で重合された(A)ランダム共重合体(メタロセン系エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体)を含むことで、高温での接着性に優れ、耐熱クリープ性が向上する。
【0021】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、2~20質量部の(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体を含むことが好ましく、5~15質量部含むことがより好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A1)の含有量が上述範囲である場合、低温から高温の広い温度領域での接着性により優れる。
【0022】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体として、例えば、エチレンとオクテンとの共重合体(エチレン/オクテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体)、エチレン、プロピレン、1-ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体)、エチレンとプロピレンとの共重合体(エチレン/プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体)、エチレンとヘキセンとの共重合体(エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体)等が挙げられる。
【0023】
(A)メタロセン系エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体としては、(A1)メタロセン触媒で重合されたエチレンとプロピレンとの共重合体(メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体、メタロセン系エチレン-プロピレン共重合体)、(A2)メタロセン触媒で重合されたエチレンとオクテンとの共重合体(メタロセン系エチレン/オクテン共重合体、メタロセン系エチレン-オクテン共重合体)、(A3)メタロセン触媒で重合されたエチレンとヘキセンとの共重合体(メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体、メタロセン系エチレン-ヘキセン共重合体)、(A4)メタロセン触媒で重合されたエチレンとブテンとの共重合体(メタロセン系エチレン/ブテン共重合体、メタロセン系エチレン-ブテン共重合体)が挙げられる。
これら(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体として、市販品を使用することができる。
【0024】
(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体として、例えば、エクソンモービル社製のビスタマックス(商品名)シリーズ等を例示できる。
(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体として、例えば、ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティGA1875(商品名)、アフィニティGA1000R(商品名)、アフィニティGP1570(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
【0025】
(A3)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体として、例えば、日本ポリエチレン社製のカーネルKJ604T(商品名)、東ソー社製のニポロンZ HM510R、住友化学社製のエクセレンFX402等が挙げられる。
尚、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体は、(A4)メタロセン触媒で重合されたエチレンとブテンとの共重合体(エチレン/ブテン共重合体)や、メタロセン触媒で重合されていないポリマーを含んでも差し支えない。
(A4)メタロセン系エチレン/ブテン共重合体としては、例えば、三井化学社製のタフマーA4085(商品名)、タフマーDF7350(商品名)、住友化学社製のエクセレンFX352(商品名)、エクセレンFX555(商品名)、エクセレンFX532(商品名)、エクセレンFX558(商品名)を例示できる。
【0026】
メタロセン触媒で重合されていないポリマーとしては、具体的に、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体であるエボニックデグサ社製のベストプラスト730(商品名)、ベストプラスト708(商品名);
エチレン/プロピレン共重合体として、イーストマンケミカル社製のEastoflex(商品名) E1016PL-1、アエラフィン35(商品名)、アエラフィン17(商品名)、レックスタック社製のレキセンタック2304(商品名);
等を例示できる。
このような(A)エチレンと炭素数3~20のオレフィンとの共重合体は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、耐熱性向上のために、(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体を含む。(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体は、ホットメルト接着剤のホットタック性、及び低温での難接着性基材の接着性を向上させる。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体と、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体を含むことが好ましい。成分(A1)と成分(A2)を含むことで、ホットメルト接着剤の低温領域の接着性能が著しく向上する。
【0028】
(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体は、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物による変性物、具体的には、例えば、『無水マレイン酸とのグラフト重合によって、無水マレイン酸で変性されたメタロセン系エチレン/オクテン共重合体』を含むことが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、『カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物変性メタロセン系エチレン/オクテン共重合体』を含む場合、薬剤が塗布された基材への接着性や、低温接着性により優れる。
「無水マレイン酸変性メタロセン系エチレン/オクテン共重合体」の市販品として、ダウケミカル社製のアフィニティGA1000R(商品名)が挙げられる。
【0029】
<(B)熱可塑性ブロック共重合体>
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、1質量部以上、5質量部未満の(B)熱可塑性ブロック共重合体を有する。(B)熱可塑性ブロック共重合体の含有量は、1質量部以上、4質量部以下がさらに好ましく、1.5質量部以上3.5質量部以下が最も好ましい。
(B)熱可塑性ブロック共重合体の配合量が上記範囲であることにより、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、ホットタック性と低温領域の接着性のバランスをより良好に保つことができる。
【0030】
成分(B)として、例えば、(B1)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのブロック共重合体、(B2)スチレンブロック共重合体が挙げられる。
(B1)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとのブロック共重合体は、エチレンと炭素数が3~10のオレフィンとのブロック共重合体を含むことが好ましい。
【0031】
(B1)エチレンと炭素数炭素数が3~20のオレフィンとのブロック共重合体として、エチレンとオクテンとのブロック共重合体、エチレンとブテンとのブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのブロック共重合体が挙げられる。(B1)エチレンと炭素数炭素数が3~20のオレフィンとのブロック共重合体は、エチレンとオクテンとのブロック共重合体、エチレンとブテンとのブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのブロック共重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレンとオクテンとのブロック共重合体を含むことがより好ましい。
【0032】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、エチレンとオクテンとのブロック共重合体を含む場合、成分(A)と成分(B)との相溶性がより向上し、ホットタック性と低温領域の接着性のバランスをより保ち易くなる。
エチレンとオクテンとのブロック共重合体として市販品を使用することができ、そのような市販品として、ダウ・グローバル社製のInfuse9817(商品名)、Infuse9807(商品名)、Infuse9900(商品名)が挙げられる。
【0033】
(B2)スチレンブロック共重合体として、具体的には、例えばスチレン-イソプレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。
更に、(B2)スチレンブロック共重合体として、上述の「(B2)スチレンブロック共重合体」の水素添加物を例示することができる。そのような水素添加物として、具体的には、例えば、水素添加されたスチレン-イソプレンブロック共重合体(「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン-ブタジエンブロック共重合体(「SEBS」ともいう)を例示できる。
【0034】
本発明の実施形態では、成分(B2)は、水素添加型スチレンブロック共重合体を含むことが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、水素添加型スチレンブロック共重合体を含む場合、成分(B)の(C)粘着付与樹脂との相溶性がより高くなり、結果として、接着性がより向上する。
【0035】
成分(B2)の市販品として、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレンT439(商品名)、アサプレンT436(商品名)、アサプレンT432(商品名)、タフテックH1052(商品名)、タフテックH1221(商品名);
JSR(株)製のTR2600(商品名);
ファイヤーストン社製のステレオン857(商品名)及びステレオン841A(商品名);
クレイトンポリマー社製のクレイトンD1162PT(商品名)、クレイトンG1657(商品名)、クレイトンG1652(商品名);
Enichem社(株)製のSol T166(商品名);
日本ゼオン社(株)製のクインタック3433N(商品名)及びクインタック3421(商品名);
クラレ社(株)製のSepton2063(商品名)Septon4044(商品名)を例示できる。
これらは、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0036】
<(C)粘着付与樹脂>
本発明の実施形態において、(C)粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤に通常使用され、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば特に限定されることはない。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(C)粘着付与樹脂を含む場合、低温接着性が著しく向上し、ホットタック性により優れる。
【0037】
本発明が目的とするホットメルト接着剤を考慮すると、部分水添粘着付与樹脂と、完全水添粘着付与樹脂の双方を含むことが好ましい。
本明細書において、部分水添粘着付与樹脂は粘着付与樹脂中の二重結合の一部に水素が付加されている粘着付与樹脂であり、完全水添粘着付与樹脂は粘着付与樹脂中の二重結合の全てに水素が付加されている粘着付与樹脂である。
部分水添粘着付与樹脂は、後述する(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体と相溶性が良く、完全水添粘着付与樹脂は(A)エチレン/炭素数が3~20のオレフィン系ランダム共重合体との相溶性が良い。すなわち、(C)粘着付与樹脂が部分水添粘着付与樹脂と完全水添粘着付与樹脂の双方を含むと、本発明の実施形態のホットメルト接着剤の相溶性が全体的に向上し、その結果、糸曳低減性、接着性が著しく向上する。
【0038】
(C)粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。
【0039】
(C)粘着付与樹脂は、軟化点120℃未満の炭化水素樹脂と、軟化点120℃以上の炭化水素樹脂の双方を含むことが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、軟化点120℃未満の炭化水素樹脂と、軟化点120℃以上の炭化水素樹脂の双方を有する場合、広い温度範囲で接着性をより向上させつつ、糸曳をより低減できる。尚、(C)粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に準じて測定される。
【0040】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名)、T-REZ HA103(商品名)T-REZ HA125(商品名)、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、アイマーブP125(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0041】
部分水添粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)が好ましく、完全水添粘着付与樹脂として、例えば、T-REZ HA103(商品名)T-REZ HA125(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブP125(商品名)が好ましい。
【0042】
<(D)ワックス>
本発明の実施形態において、(D)ワックスとは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(D)ワックスを含むことで、高温領域の接着性、ホットタック性、糸曳低減性により優れる。
【0043】
(D)ワックスとして、例えば、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等を例示することができる。ワックスとして、市販品を使用することができ、ワックスは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0044】
本明細書において、(D)ワックスは、フィッシャートロプシュワックスを含むことが好ましい。「フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。代表的なフィッシャートロプシュワックスとして、シェル社製のSARA WAX SX105(商品名)、SARA WAX SX80(商品名)や、サゾールワックス社製のサゾールH1(商品名)、サゾールC105(商品名)及びサゾールC80(商品名)を例示することができる。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、フィッシャートロプシュワックスを含む場合、熱安定性、さらには高温領域の接着性により優れる。
【0045】
(D)ワックスの融点は、例えば、60~160℃であってよく、65~150℃であってよい。
フィッシャートロプシュワックスの融点は、70~120℃であることが好ましい。ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
(D)ワックスの融点が上記範囲にある場合、本発明の実施形態のホットメルト接着は、高温領域の接着性、ホットタック性、糸曳低減性のバランスにより優れたものとなる。
【0046】
<(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体>
本発明の実施形態において、「(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体」(以下「((E)共重合体」又は「成分(E)」ともいう)とは、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体であって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0047】
本明細書における、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体」とは、エチレンと付加重合することができる炭素原子間二重結合を有するカルボン酸誘導体(カルボン酸を含む)をいい、具体的には、例えば、本明細書では「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」及び「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」等をいう。
【0048】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」とは、エチレン性二重結合とカルボキシル基を有する化合物であって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示することができる。
【0049】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」としては、2分子のカルボン酸を脱水縮合させた化合物又は1分子内に2つあるカルボキシル基を脱水させた化合物をいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されない。具体的には、無水フマル酸及び無水マレイン酸等を例示することができる。
【0050】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニルエステル及びカルボン酸アリルエステル等を例示することができる。
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの双方を表す。
【0051】
本発明の実施形態において、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、又は(メタ)アクリル酸ブチルを含むことがより好ましく、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルを含むことが望ましい。
【0052】
「(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体」として、例えば、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体(エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸共重合体、エチレン-エチレン性二重結合を有するカルボン酸共重合体)、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物との共重合体(エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物共重合体、エチレン-エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物共重合体)及びエチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体(エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル共重合体、エチレン-エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル共重合体)を例示できる。
【0053】
エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体として、例えば、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)等を例示することができる。
エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体として、例えば、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体);
エチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体(エチレン/カルボン酸ビニル共重合体、エチレン-カルボン酸ビニル共重合体);
エチレンとカルボン酸アリルとの共重合体(エチレン/カルボン酸アリル共重合体、エチレン-カルボン酸アリル共重合体)が挙げられる。
【0054】
本発明の実施形態において、(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体は、「エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体」を含むことが好ましい。「エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体」は、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体及びエチレン/(メタ)アクリル酸無水物共重合体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが最も好ましい。
成分(E)が「エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体」を含むことによって、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳低減性がより向上する。
【0055】
エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことが好ましく、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及びエチレン/(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことが更により好ましく、特に、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、及び/又はエチレン/アクリル酸エチル共重合体を含むことが好ましい。
【0056】
成分(E)は、エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体を含み、成分(E)のメルトフローレートは、1~400g/10minであってよく、1~360g/10minであり得、1~200g/10minであることが好ましく、2~150g/10minであることが最も好ましい。
成分(E)のメルトフローレートが上述の範囲にあると、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳がより低減され、熱安定性もより向上する。なお、本明細書では、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定される、190℃、2.16kg荷重で測定された値を用いる。
【0057】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(E)がエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合、糸曳をより低減することができ、さらに、紙への接着性に優れ、短いセットタイムを得ることができる。
成分(E)に含まれるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が、2~24質量%であることが好ましく、4~24質量%であることが特に好ましく、6~24質量%であることがさらに好ましく、7~24質量%であることが最も好ましい。
成分(E)に含まれるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が上述の範囲である場合、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は熱安定性が著しく向上しえる。
【0058】
本明細書において、(E)に含まれるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量とは、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の総量に対し、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の質量%を示す。
(E)に含まれるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチレンに由来する化学構造と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する化学構造を有している。
「(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位」とは、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が有する化学構造のうち、(メタ)アクリル酸エステルに由来する化学構造をいう。
【0059】
例えば、メタクリル酸メチルの含有量が20質量%のエチレン/メタクリル酸メチル共重合体とは、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体の総質量100質量部中に、メタクリル酸メチルに由来する化学構造の総量が20質量部含まれることを意味する。
【0060】
本明細書では、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位の含有量は、成分(E)のプレスシートを用い、赤外線吸収スペクトル分析法により測定できる。
例えば、(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルの場合、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位の含有量はJIS K7192に従い測定することができる。
赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に帰属されるピークを用い、吸光度をプレスシート厚みで補正して、コモノマー含有量を求める。例えば、(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルの場合、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体のメタクリル酸メチル単位の含有量は、厚み0.3mmのプレスシートを作成し、赤外分光装置を用いて、赤外線吸収スペクトル分析法により測定することができる。赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、メタクリル酸メチルに帰属される3448cm-1のピークを用い、下記式に従い、吸光度を厚みで補正し、含有量を求める。
【0061】
MMA=4.1×log(I0/I)/t-5.3
〔式中、MMAはメタクリル酸メチル単位の含有量(質量%)、Iは周波数3448cm-1での透過光強度、I0は周波数3448cm-1での入射光強度、tは測定試料シートの厚み(cm)を表わす。〕
【0062】
(E)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の液相重合方法や高圧ラジカル重合方法などを挙げることができる。高圧ラジカル重合方法による成分(E)の製造方法として、例えば、一般に槽型反応器又は管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140MPa以上300MPa以下、重合温度100℃以上300℃以下の条件下でエチレンと(メタ)アクリル酸誘導体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル)を重合する方法があげられる。
また、メルトフローレートを調節するために、分子量調節剤として水素、メタン及びエタンなどの炭化水素を用いることができる。
【0063】
(E)エチレン/(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体として、市販品を使用することができる。そのような市販品として、
住友化学社製のアクリフト WH401-F(商品名)、アクリフト WH206-F(商品名)、アクリフト WD301-F(商品名)、アクリフト WD203-1(商品名)等;
アルケマ社製のロトリル17BA07N(商品名)、ロトリル24MA02N(商品名)、ロタダー4503(商品名)等;
ダウケミカル社製のNUC-6220(商品名)、DPDJ-9169(商品名)等;
三井ダウケミカル社製のニュークレルN1035(商品名);
エクソンモービル社製のEscor5080(商品名)
が挙げられる。
【0064】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、成分(A)の含有量が25質量部を超え、40質量部未満であることが好ましく、30質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)ランダム共重合体の含有量が上述の範囲である場合、接着性、ホットタック性、耐熱クリープ性のバランスにより優れ、特に広い温度範囲での接着性と耐熱クリープ性がより向上する。
【0065】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、(C)粘着付与樹脂の含有量が30質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましく、45質量部以上60質量部以下であることが最も好ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(C)粘着付与樹脂の含有量が上述の範囲である場合、他成分との相溶性がより向上し、糸曳低減性、接着性、ホットタック性により優れる。
【0066】
本願発明のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、成分(D)の含有量が10~25質量部であるのが好ましく、15~25質量部が特に好ましい。
本願発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(D)ワックスの含有量が上述の範囲である場合、高温領域の接着性、ホットタック性、糸曳低減性のバランスにより優れる。
【0067】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(A)~成分(D)の総量100質量部に対し、成分(E)の含有量が0.5~5.0質量部であることが好ましく、0.5~3.0質量部が特に好ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(E)共重合体の含有量が上述の範囲である場合、糸曳を低減しつつ、接着性、ホットタック性、耐熱クリープ性をより高いレベルで保つことができる。
【0068】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、可塑剤、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤)、微粒子充填剤、蛍光増白剤を例示することができる。
【0069】
「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、成分(A)~(C)と相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
【0070】
可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0071】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0072】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0073】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0074】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、BASF社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、ADEKAのアデカスタブAO-60(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)、JP-650(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。
【0075】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0076】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、更に、蛍光増白剤を含むことができる。蛍光増白剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。蛍光増白剤として、市販品を使用することができる。蛍光増白剤の市販品として、BASF社製のチノパールOB(商品名)が挙げられる。
【0077】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン系ランダム共重合体、(B)熱可塑性ブロック共重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)ワックス、更に必要に応じて(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体や、各種添加剤を配合して製造することができる。
【0078】
例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0079】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、種々の基材に塗工(塗布)して、種々の物質を製造することができる。
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とするもの(例えば、紙製品)を得ることができる限り、特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーP4メルター(商品名)、プロブルーP10メルター(商品名)等を例示することができる。
【0080】
塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。
【0081】
ホットメルトアプリケーターで本発明の実施形態のホットメルト接着剤を塗工する場合(ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗工する場合であっても)、ホットメルト接着剤の糸状物が、より吐出し難くなり、好ましくは殆ど吐出しなくなる。従って、被着体やアプリケーターが糸状物で、より汚れ難くなり、好ましくは実質的に汚れることがない。
【0082】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙製品等の分野に幅広く利用されるが、紙製品を製造するために好適に使用することができ、紙製品用ホットメルト接着剤として有用である。
【0083】
本発明の実施形態の紙製品とは、上述のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品をいう。紙製品の種類は、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される限り、特に限定されることはないが、具体的には、例えば、本(製本)、カレンダー、厚紙(例えば、ダンボール及びカートンなどを含む)、厚紙で製造された箱、容器等を例示できる。本発明の実施形態のホットメルト接着剤の特性を考慮すると、本発明の実施形態の紙製品として、厚紙(例えば、ダンボール、カートン等を含む)、厚紙で製造された箱、容器等が、特に有効である。
【実施例0084】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。ホットメルト接着剤に配合する成分を以下に示す。
【0085】
(A)エチレンと炭素数3~20のオレフィンとのランダム共重合体
(A1-1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(エチレン含有量:6.0質量%、融点:97℃、190℃溶融粘度:1200mPa・s、エクソンモービル社製のビスタマックス8880(商品名))
(A1-2)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体( エチレン含有量:7.1重量%、融点:112℃、190℃溶融粘度:1850mPa・s、エクソンモービル社製のビスタマックスA(試作品))
(A1-3)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(177℃溶融粘度:12500mPa・s、ダウケミカル社製のアフィニティGP1570(商品名))
(A2-1)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:68℃、メルトフローレート:660g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1000R(商品名))
(A2-2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:1000g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名))
(A2-3)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:500g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1950(商品名))
(A2-4)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:1200g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1875(商品名))
(A2-5)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(重量平均分子量:64000、1-オクテンの含有量:13重量%、メルトフローレート:13g/10min、ダウケミカル社製のENGAGE 8137(商品名))
(A3-1)メタロセン系(エチレン/ヘキセン共重合体)(メルトフローレート:30g/10min、融点58℃、日本ポリエチレン社製のカーネルKJ604T)
(A3-2)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体(メルトフローレート:21g/10min、融点110℃、東ソー社製のニポロンBL600K(商品名))
(A4)メタロセン系エチレン/ブテン共重合体(メルトフローレート:35g/10min、融点55℃、三井化学社製のタフマーDF7350(商品名))
【0086】
(B)熱可塑性ブロック共重合体
(B1-1)エチレンとオクテンとのブロック共重合体(ダウケミカル社製のインフューズ9807(商品名))
(B1-2)エチレンとオクテンとのブロック共重合体(ダウケミカル社製のインフューズ9900(商品名))
(B1-3)エチレンとオクテンとのブロック共重合体(ダウケミカル社製のインフューズ9817(商品名))
(B2-1)スチレン-エチレン/ブタジエン―スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体 クレイトンポリマー社製のクレイトンG1657(商品名))
(B2-2)スチレン-エチレン/ブタジエン―スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体 クレイトンポリマー社製のクレイトンG1652(商品名))
(B2-3)スチレン-エチレン/ブタジエン―スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体 旭化成社(株)製のタフテックH1221(商品名))
(B2-4)スチレン-エチレン/ブタジエン―スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体 旭化成社(株)製のタフテックH1052(商品名))
(B2-5)スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEPブロック共重合体 Septon2063(商品名))
(B2-6)スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPSブロック共重合体 クラレ社製のSepton4044(商品名))
【0087】
(C)粘着付与樹脂
(C1)部分水添粘着付与樹脂(軟化点:103℃、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名))
(C2)完全水添粘着付与樹脂(軟化点:103℃、エネオス社製のT-REZ HA103(商品名))
(C3)完全水添粘着付与樹脂(軟化点:125℃、エネオス社製のT-REZ HA125(商品名))
(C4)完全水添粘着付与樹脂(軟化点:125℃、出光石油社製のアイマーブP125(商品名))
(C5)部分水添粘着付与樹脂(軟化点:100℃、Henghe社製のHA100(商品名))
(C6)完全水添粘着付与樹脂(軟化点:100℃、Henghe社製のHM1000(商品名))
【0088】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(融点:108℃、針入度:2、サゾール社製のサゾールH1(商品名))
(D2)フィッシャートロプシュワックス(融点:112℃、針入度:2、サゾール社製のサゾールC105(商品名))
(D3)フィッシャートロプシュワックス(融点:80℃、針入度:7、サゾール社製のサゾールC80(商品名))
(D4)パラフィンワックス(融点:69℃、針入度:12、日本精蝋社製のパラフィン155F(商品名))
(D5)マイクロスタリンワックス(融点:84℃、針入度:12、日本精蝋社製のハイミック1080(商品名))
(D6)ポリエチレンワックス(融点:118℃、Lion Chemtech社製のLC104N(商品名))
(D7)ポリプロピレンワックス(融点:140~148℃、針入度:1以下、三井化学社製のハイワックスNP105(商品名))
【0089】
(E)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体
(E1)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:20質量%、メルトフローレート:20g/10min、住友化学社製のアクリフト WH401-F(商品名))
(E2)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:20質量%、メルトフローレート:2g/10min、住友化学社製のアクリフト WH206-F(商品名))
(E3)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:24質量%、メルトフローレート:2g/10min、アルケマ社製のロトリル24MA02N(商品名))
(E4)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含有量:20質量%、メルトフローレート:20g/10min、ダウケミカル社製のDPDJ-9169(商品名))
(E5)エチレン/アクリル酸共重合体(アタクリル酸含有量:10質量%、メルトフローレート:30g/10min、エクソンモービル社製のEscor5080(商品名))
(E6)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:20質量%、メルトフローレート:20g/10min、東ソー社製のウルトラセン633(商品名))
(E7)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:20質量%、メルトフローレート:160g/10min、東ソー社製のウルトラセン680(商品名))
(E8)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:20質量%、メルトフローレート:350g/10min、東ソー社製のウルトラセン681(商品名))
【0090】
(F)安定化剤
(F1)フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製のアデカスタブAO-60(商品名))
(F2)リン系酸化防止剤(城北化学社製のJP650)
【0091】
表1~4に示す割合(質量部)で上述成分を溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約145℃で約1時間かけて溶融混合して、実施例1~19、及び比較例1~7のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、(標準的基材への)接着性、難接着基材への接着性、ホットタック性、耐熱クリープ性を、下記の方法を用いて評価した。
(標準的基材への)接着性は、Kライナーダンボールにホットメルト接着剤を塗布して、もう1枚のKライナーダンボールと張り合わせてサンプルを得た。
難接着基材への接着性は、ニスがコーティングされたダンボールにホットメルト接着剤を塗布して、もう1枚のダンボールと張り合わせてサンプルを得た。
ホットタック性及び耐熱クリープ性は、加圧時間を種々変えてサンプルを作製後、剥離試験をして評価した。
以下に各評価の概要について記載する。
【0092】
<一般のダンボール(標準的基材)に対する接着性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/mの割合で塗工し、オープンタイムとして3秒経過後、プレス圧1kg/25cm2、セットタイム(加圧時間)として10秒の条件で、もう一枚のKライナーダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。各々のホットメルト接着剤について、サンプルを、少なくとも3つ作製した。
(評価方法)
作製したサンプルを、60℃、23℃又は-10℃に設定した恒温槽中で、24時間養生した。その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占めるKライナーダンボールの破壊の割合を材破率(材料が破壊された割合)として定義して、Kライナーダンボールの接着面の状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ : 材破率が80%より高い
○ : 材破率が60%以上、80%以下
△ : 材破率が30%以上で、60%未満
× : 材破率が30%未満
【0093】
<薬剤が塗布されたダンボール(難接着基材)に対する接着性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、表面がニスでコーティングされた(難接着)ダンボールに、塗工量2g/mの割合で塗工し、オープンタイムとして3秒経過後、プレス圧1kg/25cm2、セットタイム(加圧時間)として10秒の条件で、もう一枚の(表面がニスでコーティングされた)ダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。各々のホットメルト接着剤について、サンプルを、少なくとも3つ作製した。
(評価方法)
作製したサンプルを、60℃、23℃又は-10℃に設定した恒温槽中で、24時間養生した。その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占める(表面がニスでコーティングされた)ダンボールの破壊の割合を材破率(材料が破壊された割合)として定義して、(表面がニスでコーティングされた)ダンボールの接着面の状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ : 材破率が80%より高い
○ : 材破率が60%以上、80%以下
△ : 材破率が30%以上で、60%未満
× : 材破率が30%未満
【0094】
<ホットタック性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/mの割合で塗工し、オープンタイムとして1秒経過後、プレス圧1kg/25cm2、セットタイム(加圧時間)として0.5秒、1.0秒、1.5秒、2.0秒、又は2.5秒の異なる条件で、もう一枚のKライナーダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。各々のホットメルト接着剤について、各々のセットタイムについてサンプルを、少なくとも3つ作製した。
(評価方法)
作製したサンプルを加圧終了後、すぐに垂直方向に一定速度で強制剥離し、Kライナーダンボールが完全に材料破壊するまでのセットタイム(加圧時間)をホットタックとし、その時間を測定した。
◎ : ホットタックが1.5秒未満
○ : ホットタックが1.5秒以上、2.0秒未満
△ : ホットタックが2.0秒以上、2.5秒未満
× : ホットタックが2.5秒以上
【0095】
<耐熱クリープ性>
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/mの割合で塗工し、オープンタイムとして3秒経過後、プレス圧1kg/25cm2、セットタイム(加圧時間)として10秒の条件で、もう一枚のKライナーダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。各々のホットメルト接着剤について、サンプルを、少なくとも3つ作製した。
(評価方法)
錘でサンプルの片方のKライナーダンボールに荷重を掛け、錘がサンプルから落下する温度で耐熱クリープ性を評価した。具体的には、40℃雰囲気下で、サンプル25cm2(縦5cm×横5cm)当たり、3kgの錘を垂直方向にサンプルの片方のKライナーダンボールに吊り下げ、15分毎に5℃ずつ昇温させ、錘が落下する温度を確認した。
◎ : 錘の落下温度が55℃以上
○ : 錘の落下温度が50℃以上、55℃未満
△ : 錘の落下温度が45℃以上、50℃未満
× : 錘の落下温度が45℃未満
【0096】
<糸曳低減性>
ホットメルトアプリケーターの先端(ノズル)から20cm離れた被着体へホットメルト接着剤を垂直に間欠塗布した。ホットメルトガンと被着体との間の落下物の質量百分率を測定し、糸曳性を評価した。測定条件は以下のとおりである。
(装置)
ノードソン社ホットメルトアプリケーター Problue4
(測定条件)
温度設定:タンク、ホース、及びノズル全て180℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:4orifice(吐出口の数:4)
塗出圧力:0.3MPa
塗出ショット数: 4つのオリフィス(orifice)の各々について180ショット/1分間
(測定方法)
ホットメルトアプリケーターの各ノズル(吐出口)から1分当たり180ショットのホットメルト接着剤を、被着体へ5分間吐出した。ノズルと被着体間に落下した糸状の接着剤を落下物とし、落下物の質量%を下記式から測定し、糸曳低減性を評価した。
落下物の質量百分率(%)=
[ノズルと被着体間に落下した糸状物(落下物)の質量]×100/[5分間で吐出されたホットメルト接着剤の全質量]
評価基準は以下のとおりである。
〇:落下物の質量百分率が、0.18質量%未満
△:落下物の質量百分率が、0.18質量%以上、2.0質量%未満
×:落下物の質量百分率が、2.0質量%以上
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表1~3に示されるように、実施例1~19のホットメルト接着剤は、接着性、難接着基材への接着性、ホットタック性、耐熱クリープ性及び糸曳低減性に×がなく、性能のバランスが非常に優れている。
一方、表4に示されるように、比較例1,2のホットメルト接着剤は、成分(A1)を含まないため、40℃ホットタック性が低下している。比較例3~5のホットメルト接着剤は、成分(B)の配合量が本願発明とは異なるため、糸曳低減性、ホットタック性、難接着基材への接着性のいずれかが劣化し、紙加工用接着剤としての性能バランスに欠けている。比較例6のホットメルト接着剤は、成分(C)を含まないため、糸曳低減性、接着性が低下している。比較例7のホットメルト接着剤は、成分(D)を含まないため、糸曳低減性、接着性だけでなく、ホットタック性や耐熱クリープ性も劣化している。
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された紙製品を提供することができる。本発明の実施形態の紙製品として、例えば、ダンボールやカートン等の厚紙(基材)から製造される紙製品や、薬剤が塗布された難接着性の包装基材から製造される紙製品が特に有効である。