(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069028
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ノニオンオキシム型化合物、有機金属化合物、酸発生剤、レジスト用感光材、及びレジスト、
(51)【国際特許分類】
C07C 251/66 20060101AFI20240514BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240514BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20240514BHJP
C07C 321/20 20060101ALI20240514BHJP
C07C 321/28 20060101ALI20240514BHJP
C07C 309/73 20060101ALI20240514BHJP
C07C 309/65 20060101ALI20240514BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240514BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07C251/66
G03F7/004 503A
G03F7/004
G03F7/004 531
C07F7/00 Z CSP
C07C321/20
C07C321/28
C07C309/73
C07C309/65
G03F7/20 521
G03F7/20 503
G03F7/20 504
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179788
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 智幸
(72)【発明者】
【氏名】木津 智仁
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4H006
4H049
4J011
【Fターム(参考)】
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H225AB03
2H225AC22
2H225AF00P
2H225AF82P
2H225AN02P
2H225AN39P
2H225AN80P
2H225CA12
2H225CB13
2H225CC01
2H225CC18
2H225CD05
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H006AB48
4H006BW21
4H006BW23
4H006TA05
4H006TB54
4H049VN07
4H049VP01
4H049VQ25
4H049VQ40
4H049VR44
4H049VR54
4H049VS20
4H049VW02
4J011AA05
4J011AC04
4J011SA65
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超短波長の光線を照射すると、速やかに分解して酸を発生する、新規のノニオンオキシム型化合物を提供する。
【解決手段】例えば、R1-N=C(Ar1)R2-COOH(式1-1)で表されるノニオンオキシム型化合物が提供される。式中、Ar1は、ハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基で置換された芳香環を示し、R1は-O(C=O)R基、-OS(=O)2R基、又は-OPO(OR)2基を示し、前記Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。R2は単結合又は連結基を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物。
【化1】
(式中、Ar
1、Ar
2は同一又は異なって、芳香環構造、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した構造を示す。R
1は-O(C=O)R基、-OS(=O)
2R基、又は-OPO(OR)
2基を示し、前記Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
2、R
5はそれぞれ独立に単結合又は連結基を示す。R
3はハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
4は置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い炭化水素基の2個以上が単結合若しくは連結基を介して結合した基、又はシアノ基を示す。n1は1~5の整数を示し、n2は1~4の整数を示す)
【請求項2】
前記R3がフッ素原子又はトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
金属又は金属酸化物(1)に、請求項1又は2に記載の化合物が配位結合した構成を有する有機金属化合物。
【請求項4】
前記(1)が、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、コバルト、パラジウム、アンチモン、及びこれらの酸化物から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の有機金属化合物。
【請求項5】
請求項3に記載の有機金属化合物を含むレジスト用感光材。
【請求項6】
極端紫外線用感光材又は電子線用感光材である、請求項5に記載のレジスト用感光材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のノニオンオキシム型化合物、前記化合物を含む酸発生剤、前記酸発生剤を含む化学増幅レジスト、前記ノニオンオキシム型化合物由来の配位子を含む有機金属化合物、及び前記有機金属化合物を含むレジスト用感光材、前記レジスト用感光材を含むメタルレジストに関する。
【背景技術】
【0002】
ノニオンオキシム型化合物は光線を照射することで酸を発生する化合物であり、化学増幅レジストの酸発生剤として用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下記式で表されるオキシムスルホネート化合物は、365nmの波長の光線に対して高感度であり、膜厚が大きくても充分な酸発生能を有することが開示されている。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子デバイスの更なる小型化・高容量化・高性能化に対応するため、パターンの一層の微細化が求められているが、これは、フォトリソグラフィーに使用する光線を短波長化することにより実現可能である。
【0007】
そして、前記光線として、極端紫外線(EUV;波長13.5nm)等の超短波長の光線を使用することが検討されている。しかし、前記式で表されるオキシムスルホネート化合物は、超短波長の光線に対して感度が低いことが問題であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、超短波長の光線を照射すると、速やかに分解して酸を発生する、新規のノニオンオキシム型化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線に対して感度良好な酸発生剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線を露光することで、高解像度のパターンを有し、且つエッチング耐性に優れるレジスト膜を形成するレジスト材料に好適な有機金属化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線を露光することで、高解像度のパターンを有し、且つエッチング耐性に優れるレジスト膜を形成するレジスト材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線を露光することで、高解像度のパターンを有するレジスト膜を形成するレジストを提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線を露光することで、高解像度のパターンを有し、且つエッチング耐性に優れるレジスト膜を形成するレジストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式(1-1)又は(1-2)で表されるノニオンオキシム型化合物は、超短波長の光線に対して極めて高感度であり、超短波長の光線を照射すると速やかに分解して酸を発生する性質を有することを見いだした。
また、前記ノニオンオキシム型化合物は、金属又は金属酸化物に配位性を示すカルボキシル基を有し、金属又は金属酸化物と混合すると、金属又は金属酸化物をコアとする有機-無機複合体である有機金属化合物を形成すること、前記有機金属化合物は光応答性に優れ、超短波長の光線を照射すると速やかに凝集して凝集体(或いは、塊状物)を形成することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物を提供する。
【化1】
(式中、Ar
1、Ar
2は同一又は異なって、芳香環構造、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した構造を示す。R
1は-O(C=O)R基、-OS(=O)
2R基、又は-OPO(OR)
2基を示し、前記Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
2、R
5はそれぞれ独立に単結合又は連結基を示す。R
3はハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
4は置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い炭化水素基の2個以上が単結合若しくは連結基を介して結合した基、又はシアノ基を示す。n1は1~5の整数を示し、n2は1~4の整数を示す)
【0011】
本発明は、また、前記R3がフッ素原子又はトリフルオロメチル基である前記化合物を提供する。
【0012】
本発明は、また、金属又は金属酸化物(1)に、前記化合物が配位結合した構成を有する有機金属化合物を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記(1)が、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、コバルト、パラジウム、アンチモン、及びこれらの酸化物から選択される少なくとも1種である前記有機金属化合物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記有機金属化合物を含むレジスト用感光材を提供する。
【0015】
本発明は、また、極端紫外線用感光材又は電子線用感光材である前記レジスト用感光材を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のノニオンオキシム型化合物は、ハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を含有しているため超短波長の光線に対して感度良好であり、超短波長の光線を照射すると、速やかに分解して酸(HR1;R1は式(1-1)又は(1-2)中のR1に該当する)を発生する。さらに、前記ノニオンオキシム型化合物は溶剤溶解性に優れるため、レジスト中において均一に分散する。さらにまた、前記ノニオンオキシム型化合物はカルボン酸基を含有しているため現像性に優れ、現像残渣を減少させる効果を有する。
そのため、前記ノニオンオキシム型化合物と感光性樹脂を含む化学増幅レジストに、超短波長の光線を照射すれば、微細パターンを精度良く転写することができ、高解像度の微細パターンを有するレジスト膜を製造することができる。
【0017】
また、前記ノニオンオキシム型化合物は、カルボン酸基を含有しているため、金属又は金属酸化物に配位性を示す。そして、前記ノニオンオキシム型化合物が、金属又は金属酸化物に配位結合してなる有機金属化合物は、溶剤に対して良好な溶解性を示す。そして、前記有機金属化合物は優れた光応答性を有し、光線を照射すると、照射する光線が超短波長の光線であっても効率よく感受して、凝集体を形成する。そして、有機金属化合物の凝集体は、もはや溶剤に対して溶解性を示さない。また、前記凝集体は金属又は金属酸化物が凝集した構成を有するため、エッチングに耐え得る強靱性を有する。
そのため、前記有機金属化合物を高分散した状態で含む層であって、超短波長の光線が底部にまで到達できる厚みにまで薄化した層に、超短波長の光線を用いてパターン形状に露光し、その後、溶剤で洗浄すれば、未露光部の有機金属化合物は洗い流されるが、露光部の有機金属化合物は凝集して洗い流されること無く残存するので、高解像度の微細パターンを有するレジスト膜を精度良く製造することができる。また、このようにして得られたレジスト膜は薄くてもエッチング耐性を備える。
【0018】
そして、上記レジスト膜を使用して基板にエッチング(例えば、反応性ガスやプラズマを用いたドライエッチング)処理を施せば、高解像度のパターン(例えば、配線パターン、回路パターン等)を有する半導体素子を歩留まり良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ノニオンオキシム型化合物]
本発明のノニオンオキシム型化合物は、下記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物である。
【化3】
(式中、Ar
1、Ar
2は同一又は異なって、芳香環構造、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した構造を示す。R
1は-O(C=O)R基、-OS(=O)
2R基、又は-OPO(OR)
2基を示し、前記Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
2、R
5はそれぞれ独立に単結合又は連結基を示す。R
3はハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を示す。R
4は置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い炭化水素基の2個以上が単結合若しくは連結基を介して結合した基、又はシアノ基を示す。n1は1~5の整数を示し、n2は1~4の整数を示す)
【0020】
前記Ar1、Ar2における芳香環構造としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の炭素数6~15の芳香族炭化水素環の構造が挙げられる。
【0021】
前記Ar1、Ar2における2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した構造としては、例えば、2個以上の芳香族炭化水素環が単結合、エーテル結合(-O-)、又はチオエーテル結合(-S-)を介して結合した構造が挙げられる。
【0022】
前記Ar
1、Ar
2としては、超短波長の光線に対する感度を高める観点から、ベンゼン環構造、又は2個以上のベンゼン環が単結合又は連結基(好ましくは、エーテル結合又はチオエーテル結合)を介して結合した構造であることが好ましく、ベンゼン環構造、及び下記式(ar-1)~(ar-3)で表される構造から選択される少なくとも1種の構造が特に好ましい。
【化4】
【0023】
前記R1中のRにおける炭化水素基(=1価の炭化水素基)には、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した1価の基が含まれる。
【0024】
前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等の炭素数1~5(好ましくは、炭素数1~3)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等の炭素数2~5(好ましくは、炭素数2~3)の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~5(好ましくは、炭素数2~3)のアルキニル基等が挙げられる。
【0025】
前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3~10員(好ましくは、5~8員)のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3~10員(好ましくは、5~8員)のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン-1-イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン-3-イル基等の橋かけ環式炭化水素基等を挙げることができる。
【0026】
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-10アリール基が挙げられる。
【0027】
前記R1中のRにおけるハロゲン化炭化水素基としては、上記1価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アスタチン原子があげられる。ハロゲン原子は、レジスト感度を高める観点から、好ましくはフッ素、ヨウ素であり、特に好ましくはフッ素である。
【0028】
前記ハロゲン化炭化水素基としては、中でも、上記1価の炭化水素基が有する水素原子の全てがハロゲン原子で置換された基(すなわち、パーハロゲン化炭化水素基)が好ましい。また、前記ハロゲン化炭化水素基の炭素数は、例えば1~10個、好ましくは1~6個である。
【0029】
前記ハロゲン化炭化水素基は、好ましくはハロアルキル基又はハロアリール基であり、特に好ましくはハロC1-5アルキル基又はハロC6-10アリール基である。
【0030】
前記ハロゲン化炭化水素基は、好ましくはパーハロアルキル基又はパーハロアリール基であり、特に好ましくはパーハロC1-5アルキル基又はパーハロC6-10アリール基である。
【0031】
前記R1中のRとしては、1価の脂肪族炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、1価のハロゲン化脂肪族炭化水素基、又は1価のハロゲン化芳香族炭化水素基が好ましく、とりわけ、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基(=ハロアルキル基)、又はハロゲン化アリール基(=ハロアリール基)が好ましい。
【0032】
前記R2、R5はそれぞれ独立に単結合又は連結基を示す。前記連結基は1以上の原子を有する2価の基であり、例えば、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0033】
前記2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基;1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3~18のシクロアルキレン基;o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン、ナフチレン基等の炭素数6~14のアリーレン基等が挙げられる。
【0034】
前記2価のハロゲン化炭化水素基としては、上記2価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0035】
前記R2としては、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、又はこれらの基の2個以上がエーテル結合又はチオエーテル結合を介して結合してなる2価の基が好ましい。
【0036】
前記R2としては、溶剤溶解性を高める観点から、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、又はこれらの基の2個以上がエーテル結合若しくはチオエーテル結合を介して結合してなる2価の基が好ましい。
【0037】
前記R5としては、溶剤溶解性及び熱安定性を高める観点から、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、又はこれらの基とエーテル結合若しくはチオエーテル結合が結合してなる2価の基、又は単結合が好ましい。
【0038】
前記R5としては、中でも、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、又はこれらの基とエーテル結合若しくはチオエーテル結合が結合してなる2価の基、又は単結合が好ましい。
【0039】
前記R3はAr1に結合する置換基であり、ハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アスタチン原子があげられる。ハロゲン原子は、超短波長の光線に対する感度を高める観点から、好ましくはフッ素、ヨウ素であり、特に好ましくはフッ素である。
【0040】
前記ハロゲン化炭化水素基としては、前記R1中のRにおけるハロゲン化炭化水素基と同様の例が挙げられる。前記ハロゲン化炭化水素基としては、中でも、パーハロゲン化炭化水素基が好ましい。また、前記ハロゲン化炭化水素基の炭素数は、例えば1~5個、好ましくは1~3、特に好ましくは1又は2個である。
【0041】
前記ハロゲン化炭化水素基は、好ましくはハロアルキル基、特に好ましくはC1-5ハロアルキル基である。
【0042】
前記ハロゲン化炭化水素基は、好ましくはパーハロアルキル基、特に好ましくはC1-5パーハロアルキル基である。
【0043】
n1は前記Ar1に結合するR3の数を示し、1~5の整数である。中でも、1~3の整数が好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0044】
n2は前記Ar2に結合するR3の数を示し、1~4の整数である。
【0045】
前記Ar1には、R3以外にも他の置換基を有していても良い。また、前記Ar2には、R3や式(1-2)中に示されるR5-COOHで表される基以外にも他の置換基を有していても良い。他の置換基としては、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、オキソ基、カルボキシル基、及び下記式(r)で表される基等が挙げられる。
-X1-R (r)
(式(r)中、X1は-O-、-S-、又は-CO-を示し、Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。式(r)の左端から出る結合手が、前記Ar1、Ar2における芳香環構造を構成する炭素原子に結合する)
【0046】
前記式(r)中のRにおける炭化水素基及びハロゲン化炭化水素基としては、前記R1中のRにおけるハロゲン化炭化水素基と同様の例が挙げられる。
【0047】
前記式(r)中のRとしては、中でも、1価の脂肪族炭化水素基又は1価のハロゲン化脂肪族炭化水素基が好ましく、なかでもアルキル基、又はハロアルキル基が好ましく、とりわけC1-5アルキル基又はハロC1-5アルキル基が好ましい。
【0048】
前記R4は置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い炭化水素基の2個以上が単結合若しくは連結基を介して結合した基、又はシアノ基を示す。
【0049】
前記R4における炭化水素基(=1価の炭化水素基)としては、前記R1中のRにおける1価の炭化水素基と同様の例が挙げられる。また、前記連結基としては、前記R2、R5における連結基と同様の例が挙げられる。
【0050】
前記R4における炭化水素基としては、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基が好ましく、なかでもアルキル基又はアリール基が好ましく、とりわけC1-5アルキル基又はC6-10アリール基が好ましい。
【0051】
前記R4における炭化水素基としては、溶剤溶解性を高める観点から、1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、特にアルキル基が好ましく、とりわけC1-5アルキル基が好ましい。
【0052】
また、前記R4における炭化水素基の2個以上が連結基を介して結合した基としては、前記炭化水素基の2個以上が、エーテル結合はチオエーテル結合を介して結合してなる1価の基が好ましい。
【0053】
前記R4における炭化水素基が有していても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。
【0054】
前記ノニオンオキシム型化合物としては、下記式(1-1-1)又は(1-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化5】
【0055】
上記式中、R1、R2、R3、R4、n1、及びn2としては上記に同じである。
【0056】
n1が4以下の整数を示す場合、式(1-1-1)中に示されるベンゼン環はR3以外に他の置換基を有していても良い。また、n2が3以下の整数を示す場合、式(1-2-1)中に示されるベンゼン環はR3及びR5-COOHで表される基以外に他の置換基を有していても良い。他の置換基としては、例えば、炭化水素基、オキシ炭化水素基、及びチオ炭化水素基から選択される基が挙げられる。
【0057】
前記オキシ炭化水素基は、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等の、[-O-R;Rは炭化水素基]で表される基であり、前記Rにおける炭化水素基としては、上記R1中のRにおける1価の炭化水素基と同様の例が挙げられる。前記オキシ炭化水素基の炭素数は、例えば1~5個、好ましくは1~3、特に好ましくは1又は2個である。
【0058】
前記チオ炭化水素基は、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等の、[-S-R;Rは炭化水素基]で表される基であり、前記Rにおける炭化水素基としては、上記R1中のRにおける1価の炭化水素基と同様の例が挙げられる。前記チオ炭化水素基の炭素数は、例えば1~5個、好ましくは1~3、特に好ましくは1又は2個である。
【0059】
[酸発生剤]
本発明の酸発生剤は、前記ノニオンオキシム型化合物を、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含む。
【0060】
前記酸発生剤は、前記ノニオンオキシム型化合物以外にも他の成分を含有していても良いが、前記酸発生剤に含まれる、光線照射により分解して酸を発生する化合物全量において、前記ノニオンオキシム型化合物の占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、とりわけ好ましくは99.9重量%以上である。尚、上限値は100重量%である。
【0061】
前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)は溶剤(例えば、PGMEA)への溶解性に優れ、常温常圧下において、PGMEA100重量部に溶解する前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)量は、例えば2重量部超、好ましくは3重量部以上、更に好ましくは4重量部以上、特に好ましくは5重量部以上、最も好ましくは8重量部以上、とりわけ好ましくは15重量部以上である。尚、上限値は例えば30重量部である。
【0062】
また、前記酸発生剤は超短波長の光線に対する感応性に優れ、前記光線を照射すれば、速やかに酸(HR1;R1は式(1-1)又は(1-2)中のR1に該当する)を発生する。尚、前記光線の波長は、例えば100nm以下(例えば1~100nm)、好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下、最も好ましくは30nm以下、とりわけ好ましくは20nm以下である。前記光線には、例えば、X線、電子線、EUV等が含まれる。
【0063】
前記酸発生剤は熱安定性を備え、加熱処理(例えば、50℃以上100℃未満の温度で1~5分加熱)を施しても、分解を抑制することができる。そのため、前記酸発生剤を含む塗膜を、酸発生能を保持しつつ加熱乾燥することができ、作業性に優れる。
【0064】
前記酸発生剤は上記特性を有するため、極端紫外線や電子線などの超短波長の光線を使用するフォトレジスト(例えば、化学増幅型レジスト)用の酸発生剤として好適に使用することができる。
【0065】
[化学増幅レジスト]
本発明の化学増幅レジストは、前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)と感光性樹脂を含む。前記酸発生剤と感光性樹脂はそれぞれ1種を単独で含有しても良いし、2種以上を組み合わせて含有しても良い。
【0066】
前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)の含有量は、感光性樹脂全量に対して、例えば0.001~20重量%、好ましくは0.01~15重量%、特に好ましくは0.05~7重量%である。
【0067】
前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)の含有量が0.001重量%以上であれば、X線、EUV等の超短波長の光線に対して優れた感光性を発揮することができる。また、前記含有量が20重量%以下であれば、フォトレジストの解像度を向上する効果が得られる。
【0068】
前記感光性樹脂には、光照射により溶解性が減少する(或いは、未露光部が除去される)ネガ型感光性樹脂(QN)と、光照射により溶解性が増大する(或いは、露光部が選択的に除去される)ポジ型感光性樹脂(QP)が含まれる。これらは、用途に応じて選択して使用することができる。
【0069】
ネガ型感光性樹脂(若しくは、ネガ型化学増幅樹脂;QN)は、例えば、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)と架橋剤(QN2)を、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含有する組成物である。
【0070】
フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)は、フェノール性水酸基を含有する樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール性水酸基を含有するポリイミド、フェノール性水酸基を含有するポリアミック酸、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。
【0071】
フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)は、成分の一部にフェノール性低分子化合物を含有していても良い。
【0072】
フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)の、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば2000~20000である。
【0073】
架橋剤(QN2)は、酸発生剤から発生した酸により、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)を架橋し得る化合物であればよく、例えば、ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有尿素化合物、メチロール基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有尿素化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、カルボキシメチル基含有メラミン樹脂、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン樹脂、カルボキシメチル基含有尿素樹脂、カルボキシメチル基含有フェノール樹脂、カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有尿素化合物及びカルボキシメチル基含有フェノール化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
架橋剤(QN2)の含有量は、精度良くパターンを形成する観点から、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)中の全酸性官能基に対して、例えば10~40モル%である。
【0075】
ポジ型感光性樹脂(若しくは、ポジ型化学増幅樹脂;QP)としては、保護基として酸解離性基が導入されたアルカリ可溶性樹脂(保護基導入樹脂;QP1)が挙げられる。
【0076】
保護基導入樹脂(QP1)は、アルカリ可溶性樹脂中の酸性官能基(例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホニル基等)の水素原子の一部或いは全部が酸解離性基で置換された樹脂である。
【0077】
保護基導入樹脂(QP1)自体はアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂であり、酸発生剤から発生した強酸によって酸解離性基が解離すると、アルカリ現像液に易溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂が生成する。
【0078】
アルカリ可溶性樹脂は、例えばHLB値が4~19(好ましくは5~18、特に好ましくは6~17)の樹脂である。
【0079】
アルカリ可溶性樹脂には、フェノール性水酸基含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂、及びスルホン酸基含有樹脂が含まれる。
【0080】
フェノール性水酸基含有樹脂としては、上記フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)と同様の樹脂が例示される。
【0081】
カルボキシル基含有樹脂としては、カルボキシル基を有するポリマーでああれば特に制限はなく、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー(Ba)のホモポリマーや、カルボキシル基含有ビニルモノマー(Ba)と疎水基含有ビニルモノマー(Bb)とのホモポリマーが挙げられる。
【0082】
カルボキシル基含有ビニルモノマー(Ba)としては、例えば、(メタ)アクリル酸である。
【0083】
疎水基含有ビニルモノマー(Bb)としては、C1-20アルキル(メタ)アクリレート、脂環基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル(Bb1)、及びスチレン骨格を有する炭化水素モノマーやビニルナフタレン等の芳香族炭化水素モノマー(Bb2)等が挙げられる。
【0084】
スルホン酸基含有樹脂としては、スルホン酸基を有するポリマーであれば特に制限はなく、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニルモノマー(Bc)と、必要により疎水基含有ビニルモノマー(Bb)とをビニル重合することで得られる。
【0085】
保護基導入樹脂(QP1)が有する酸解離性基としては、例えば、メトキシメチル基、ベンジル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等の1-置換メチル基;1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基等の1-置換エチル基;tert-ブチル基等の1-分岐アルキル基;トリメチルシリル基等のシリル基;トリメチルゲルミル基等のゲルミル基;tert-ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アシル基;テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基等の環式酸解離性基等が挙げられる。これらは1種を単独で含有していても良いし、2種以上を組み合わせて含有していても良い。
【0086】
保護基導入樹脂(QP1)における酸解離性基の導入率{保護基導入樹脂(QP1)中の保護されていない酸性官能基と酸解離性基との合計数に対する酸解離性基の数の割合}は、酸解離性基や該基が導入されるアルカリ可溶性樹脂の種類により一概には規定できないが、好ましくは10~100%、さらに好ましくは15~100%である。
【0087】
保護基導入樹脂(QP1)の、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば1000~150000、好ましくは3000~100000である。
【0088】
本発明の化学増幅レジストは、例えば、前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)を有機溶剤に溶解し、これを感光性樹脂と混合することにより調製することができる。
【0089】
本発明の化学増幅レジストは、前記酸発生剤(若しくは、前記ノニオンオキシム型化合物)と感光性樹脂以外にも必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含有することができる。他の成分としては、例えば、有機溶剤、顔料、染料、光増感剤、分散剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤等が挙げられる。
【0090】
前記有機溶剤としては、前記感光性樹脂を溶解させることができ、フォトレジストに良好な塗布性を付与することができる溶剤であれば良いが、なかでも、沸点が200℃以下のものを使用することが、フォトレジストを塗布後、容易に乾燥させることができる点で好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素;エタノール、メタノール等のアルコール;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールモノエーテルモノエステルなどが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
本発明の化学増幅レジストは、X線、電子線、EUV等の超短波長の光線に対して高い感光性を有するノニオンオキシム型化合物を含有する。そのため、本発明の化学増幅レジストを利用すれば、超短波長の光線を用いたフォトリソグラフィーにより、高解像度の微細パターンを有するレジスト膜を製造することができる。
【0092】
[有機金属化合物]
本発明の有機金属化合物は、金属又は金属酸化物(1)に上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物が配位結合した構成を有する化合物である。
【0093】
本発明の有機金属化合物は、金属又は金属酸化物(1)と、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物由来の配位子を含む。
【0094】
本発明の有機金属化合物は、金属又は金属酸化物(1)に錯化剤(2)を反応させて得られる有機-無機複合体であり、前記錯化剤(2)として、少なくとも上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物を含む。
【0095】
前記有機金属化合物には金属又は金属酸化物(1)と錯化剤(2)由来の配位子以外の成分を含んでいても良いが、前記有機金属化合物全量(100重量%)において、金属又は金属酸化物(1)と錯化剤(2)由来の配位子の合計重量の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。尚、上限値は100重量%である。
【0096】
前記有機金属化合物は溶剤への溶解性(或いは、分散性)に優れ、溶剤(例えば、PGMEA)中における平均粒子径(動的光散乱法により求められる粒径)は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。尚、下限値は、例えば1nmである。
【0097】
前記有機金属化合物は、光線に対して優れた感受性を有し、光線を照射すると酸(HR1;R1は式(1-1)又は(1-2)中のR1に該当する)を発生し、速やかに凝集する。前記光線の波長は、例えば100nm以下(例えば、0~100nm)、好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下、最も好ましくは30nm以下、とりわけ好ましくは20nm以下である。前記光線には、例えば、X線、電子線(EB)、EUV等が含まれる。
前記有機金属化合物は、例えば、金属又は金属酸化物(1)と、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物を少なくとも含む錯化剤(2)を溶剤中で混合することにより製造することができる。
【0098】
錯化剤(2)の使用量は、上記金属又は金属酸化物(1)1重量部に対して、例えば0.01~20重量部、好ましくは0.1~10重量部である。
【0099】
上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の使用量(式(1-1)で表される化合物と式(1-2)で表される化合物を使用する場合はその合計量)は、上記金属又は金属酸化物(1)1重量部に対して、例えば0.01~20重量部、好ましくは0.1~10重量部である。
【0100】
前記溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0101】
前記溶剤の使用量は、金属又は金属酸化物(1)と錯化剤(2)の総量に対して、例えば50~300重量%程度である。
【0102】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製することができる。
【0103】
(金属又は金属酸化物(1))
金属又は金属酸化物(1)は、前記有機金属化合物のコア部を形成する成分であり、金属及び金属酸化物から選択される少なくとも1種が含まれる。
【0104】
前記金属としては、例えば、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、コバルト、パラジウム、アンチモン、チタン、アルミニウム等が挙げられる。
【0105】
前記金属酸化物には、前記金属の酸化物や、その部分水酸化物(或いは、水和物)が含まれる。前記金属酸化物としては、例えば、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2、Zr6O4(OH)4)、酸化スズ(SnO2、Sn2O3、Sn3O4、Sn6O12、Sn12O25H16、(C4H9Sn)12O14(OH)6)、酸化コバルト(CoO、Co2O3、Co3O4)、酸化パラジウム(PdO)、酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等が挙げられる。
【0106】
前記金属酸化物は、例えば、ゾル-ゲル法により製造することができる。詳細には、金属アルコキシドを出発原料とし、加水分解、重縮合反応からゾル/ゲル状態を経由して、最終的に金属酸化物が得られる。
【0107】
金属又は金属酸化物(1)の形状としては特に制限が無く、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状など)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状など)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。また、金属又は金属酸化物(1)は、中空状、多孔質、中実状の何れであってもよい。
【0108】
金属又は金属酸化物(1)の平均粒子径(動的光散乱法により求められる粒径)は、例えば1~200nm、好ましくは2~100nm、特に好ましくは2~50nmである。
【0109】
前記有機金属化合物全量(若しくは、金属又は金属酸化物(1)と上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物由来の配位子の合計重量)において、金属又は金属酸化物(1)の占める割合は、例えば10~90重量%、好ましくは30~70重量%である。
【0110】
(錯化剤(2))
前記錯化剤(2)は、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物を含み、それ以外にも他の錯化剤を1種又は2種以上を有していても良い。
【0111】
他の錯化剤としては、例えば、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸、スルホン酸が挙げられる。
【0112】
前記カルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、フタル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、グリコ-ル酸、グリセリン酸、乳酸等のC1-10アルキルカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、チグリン酸2-メチルイソクロトン酸、3-メチルクロトン酸等のC2-10アルケニルカルボン酸;安息香酸、サリチル酸、クロトン酸等のC6-10アリールカルボン酸などが挙げられる。
【0113】
前記リン酸としては、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸ヘキシル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジヘキシルのC1-10アルキルリン酸;リン酸ジフェニル等のC6-10アリールリン酸などが挙げられる。
【0114】
前記ホスホン酸としては、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸等のC1-10アルキルホスホン酸;ビニルホスホン酸等のC2-10アルケニルホスホン酸;フェニルホスホン酸等のC6-10アリールホスホン酸が挙げられる。
【0115】
前記スルホン酸としては、例えば、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸、ブチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸等のC1-10アルキルスルホン酸;フェニルスルホン酸等のC6-10アリールスルホン酸;ビニルスルホン酸等のC2-10アルケニルスルホン酸が挙げられる。
【0116】
他の錯化剤としては、なかでも、有機金属化合物に良好な分散性を付与する点において、C6-10アリール基を備えた、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸、又はスルホン酸が好ましく、特にC6-10アリールカルボン酸塩が好ましい。
【0117】
錯化剤(2)が、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物と共に他の錯化剤を含む場合、錯化剤(2)全量において、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の占める割合(上記式(1-1)で表される化合物と上記式(1-2)で表される化合物を含む場合はその合計割合)は、例えば0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上である。尚、上限値は、例えば50重量%、好ましくは30重量%である。
【0118】
前記有機金属化合物全量(若しくは、金属又は金属酸化物(1)と配位子の合計重量)において、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物由来の配位子の占める割合(上記式(1-1)で表される化合物由来の配位子と上記式(1-2)で表される化合物由来の配位子を含む場合はその合計割合)は、例えば0.1~50重量%、好ましくは0.5~30重量%である。
【0119】
また、上記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物由来の配位子の含有量(上記式(1-1)で表される化合物由来の配位子と上記式(1-2)で表される化合物由来の配位子を含む場合はその合計含有量)は、金属又は金属酸化物(1)100重量部に対して、例えば0.1~50重量部、好ましくは0.5~30重量部、特に好ましくは1~20重量部である。
【0120】
前記有機金属化合物は、光線を照射すると凝集する。この凝集メカニズムとしては、次のように考えられる。すなわち、金属又は金属酸化物(1)は微粒子であり凝集し易い性質を有するが、前記有機金属化合物は金属又は金属酸化物(1)の表面に式(1-1)又は(1-2)で表される化合物が結合することで、金属又は金属酸化物(1)同士の凝集が抑制され、分散性を獲得している。そして、光線照射すると、下記1、2、3の反応を経て、結合している配位子の数が減少して分散性を喪失し、凝集体を形成すると考えられる。
1.式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の一部は分解して酸(HR1)を発生する。
2.発生した酸(HR1)が有機金属化合物に反応して、金属酸化物(1)表面に結合している配位子を剥離させる。
3.金属又は金属酸化物(1)は、その表面に結合する配位子が減少することで、分散性を喪失する。
【0121】
錯化剤(2)として、式(1-1)で表される化合物を使用した場合の有機金属化合物の凝集反応を次に示す。下記式中、Mは金属又は金属酸化物(1)を示す。下記式中のR
aは、下記式中のMに配位結合する配位子(=上記式(1-1)で表される化合物由来の配位子)の破線で囲まれた部分を示す。
【化6】
【0122】
[レジスト用感光材]
前記レジスト用感光材(例えば、フォトレジスト用感光材)は、フォトリソグラフィー分野において用いられる感光性を有する材料(例えば、光線照射により、溶剤に対する溶解性が変化する化合物)であり、上述の有機金属化合物を含む。
【0123】
前記レジスト用感光材は、上述の有機金属化合物以外にも他の成分を含有していても良いが、前記フォトレジスト用感光材全量において、上述の有機金属化合物の占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、とりわけ好ましくは99.9重量%以上である。尚、上限値は100重量%である。
【0124】
前記レジスト用感光材は溶剤(例えば、PGMEA等)への溶解性(或いは、分散性)に優れる。前記フォトレジスト用感光材の、溶剤中における平均粒子径(動的光散乱法により求められる粒径)は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。尚、下限値は、例えば1nmである。
【0125】
また、前記レジスト用感光材は超短波長の光線に対する感応性に優れ、前記光線を照射すれば、速やかに凝集体を形成する。尚、前記光線の波長は、例えば100nm以下、好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下である。前記光線には、例えば、X線、電子線(EB)、EUV等が含まれる。
【0126】
前記レジスト用感光材は熱安定性を備え、加熱処理(例えば、50℃以上130℃未満の温度で1~5分加熱)を施しても、凝集は抑制される。そのため、前記レジスト用感光材を含む塗膜を、凝集を抑制しつつ加熱乾燥することができ、作業性に優れる。
【0127】
前記レジスト用感光材は上記特性を有するため、ネガ型レジスト用感光材として好適に使用することができる。また、極端紫外線や電子線などの超短波長の光線を使用するフォトレジスト(例えば、メタルレジスト)用感光材として好適に使用することができる。
【0128】
[メタルレジスト]
本発明のメタルレジストは、フォトリソグラフィー分野において用いられる、パターンを有するレジスト膜を形成するためのレジストであり、上述の有機金属化合物と溶剤を含み、前記有機金属化合物は前記溶剤に溶解(或いは、高分散)した状態で含まれる。
【0129】
前記レジスト中において、前記有機金属化合物は安定的に溶解(或いは、高分散)した状態で含有される。前記レジスト中における前記有機金属化合物の平均粒子径(動的光散乱法により求められる粒径)は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。尚、下限値は、例えば1nmである。そのため、前記レジストを使用すれば、低LER、高解像度の微細パターンを有するレジスト膜が得られる。
【0130】
前記溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等の(ポリ)C1-5アルキレングリコールエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル等の(ポリ)C1-5アルキレングリコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の(ポリ)C1-5アルキレングリコールエーテルエステル;ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0131】
前記有機金属化合物の含有量は、前記レジスト全量(100重量%)の、例えば0.5~50重量%、好ましくは1.0~30重量%である。
【0132】
前記溶剤の含有量は、前記レジスト全量(100重量%)の、例えば50~99.5重量%、好ましくは70~99重量%である。
【0133】
前記レジストは、前記有機金属化合物と溶剤以外にも他の成分を含有していても良く、例えば、レベリング剤、クエンチャー等を含有することができる。
【0134】
前記レジスト全量(100重量%)において、前記有機金属化合物と溶剤の合計重量の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。尚、上限値は100重量%である。
【0135】
前記レジストは、不揮発分として少なくとも前記有機金属化合物を含有する。前記不揮発分全量(100重量%)において、前記有機金属化合物の含有量の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。尚、上限値は100重量%である。
【0136】
尚、本明細書において、レジストの不揮発分とは、前記有機金属化合物を含む成分であって、例えば、レジストを常圧下において100℃で1時間加熱した後に残る成分である。
【0137】
また、前記レジストに光線を照射(積算光量は、例えば5~500mJ/cm2)すれば、レジストに含まれる前記有機金属化合物は速やかに凝集体を形成する。尚、パターンをより微細化する観点から、光線の波長を短波長化することが好ましく、例えば100nm以下(例えば、1~100nm)が好ましく、80nm以下が更に好ましく、50nm以下が特に好ましく、30nm以下が最も好ましく、20nm以下がとりわけ好ましい。前記光線には、例えば、X線、電子線(EB)、EUV等が含まれる。
【0138】
前記レジストは上記特性を有するため、ネガ型レジストとして好適に使用することができる。また、極端紫外線や電子線などの超短波長の光線を使用したフォトリソグラフィー用レジストとして好適に使用することができる。
【0139】
[電子デバイスの製造方法]
前記化学増幅レジスト又はメタルレジストを使用すれば、例えば下記工程1~3を経て、精度良好な微細なパターンを有し、且つエッチング耐性に優れるレジスト膜を形成することができる。
【0140】
工程1:基板上に、前記レジストを塗布、乾燥して塗膜を形成する工程
工程2:前記塗膜に光照射を行ってパターンを転写する工程
工程3:現像を行う工程
【0141】
(工程1)
本工程は、エッチングする基板上に、前記レジストを塗布、乾燥して有機金属化合物層を形成する工程である。本工程を経て、[基板/有機金属化合物層]積層体が得られる。
【0142】
前記レジストの塗布には、例えば、スピンコート、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷等公知の方法を用いることができる。
【0143】
前記レジストを塗布する基板には、必要に応じて表面処理を施すことができる。例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等の密着剤を基板の表面に塗布して、レジスト膜の密着性を向上させても良い。
【0144】
前記レジストの塗膜の乾燥の方法としては特に制限がないが、前記メタルレジストを使用する場合には、これに含まれる有機金属化合物は熱安定性を備えるため、加熱(例えば、50℃以上130℃未満の温度で1~5分加熱)して乾燥させることもでき、作業性に優れる。
【0145】
前記塗膜の厚みは、例えば1000nm以下、好ましくは100nm以下である。厚みの下限値は例えば1nmである。前記メタルレジストを使用する場合には、前記有機金属化合物の凝集体は、金属又は金属酸化物を含むため強靱性を備える。そのため、塗膜厚みを、照射光が底面に到達できる程度に薄化しても、エッチング耐性に優れたレジスト膜を形成することができる。
【0146】
(工程2)
本工程は、工程1を経て得られた有機金属化合物層に、パターンを有するフォトマスクを介して光照射する等の方法で、光照射を行ってパターンを転写する工程である。
【0147】
パターンを有するフォトマスクを介して光照射すると、前記化学増幅レジストを使用した場合には、これに含まれる酸発生剤が速やかに分解して酸を発生して、感光性樹脂の現像液への溶解性を変化させる。一方、前記メタルレジストを使用した場合には、露光部の有機金属化合物は凝集して基板に密着し、未露光部の有機金属化合物は凝集せず溶解性を維持する。
【0148】
光照射に用いる光線としては、塗膜に含まれる有機金属化合物の凝集を開始させることができれば特に制限はないが、EUVや電子線等の超短波長の光源を使用することが、極めて微細なパターンを精度良く転写することができる点において好ましい。
【0149】
前記メタルレジストを使用する場合には、上述した通り、エッチング耐性を維持しつつ塗膜を薄化することができ、膜を薄化することで、塗膜の底部にまで光線を到達させることができ、精度良好なパターンを形成することができる。
【0150】
(工程3)
本工程は、光照射後の[基板/有機金属化合物層]積層体を、現像処理に付す工程である。現像処理に付すと、有機金属化合物層のうち未露光部は洗い流され、露光部は基板に密着して残存する。
【0151】
現像処理に使用する現像液としては、アルカリ水溶液や有機溶剤を、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0152】
前記アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネンなどが挙げられる。
【0153】
前記有機溶剤としては、例えばフォトレジストに使用できる溶剤と同様の例が挙げられる。なかでも、多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、及び芳香族炭化水素から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エステルを少なくとも含むことが特に好ましく、酢酸ブチルを少なくとも含むことが最も好ましい。
【0154】
現像処理方法としては、例えば、前記[基板/有機金属化合物層]積層体に、ディップ方式、シャワー方式、スプレー方式等の方法により前記現像液を塗布する方法が挙げられる。
【0155】
現像液の温度は、例えば25~40℃である。また、現像時間は、有機金属化合物層の厚さに応じて適宜決定されるが、例えば0.5~5分程度である。
【0156】
現像処理に際しては、塗膜の現像液への溶解/不溶解のコントラストが明確であり、且つ溶解部は完全に除去されることが理想的である。現像残渣が存在すれば、配線形状異常などの問題が発生し易いためである。そして、本発明のメタルレジストは、含有する有機金属化合物が高分散性と熱安定性を備えるので、未露光部は現像液で洗浄することで容易に且つ完全に除去することができ、現像残渣を生じない。そのため、欠陥の無い製品を歩留まり良く製造することができる。
【0157】
工程3を経て、基板上に、精度良好な微細なパターンを有するレジスト膜を形成することができる。特に、前記メタルレジストを使用する場合には、精度良好な微細なパターンを有し、且つエッチング耐性に優れるレジスト膜を形成することができる。
【0158】
このようして得られたレジスト膜を利用して基板をエッチングすれば、高精度の電子デバイスを製造することができる。
【0159】
前記電子デバイスには、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示デバイス;タッチパネル等の入力デバイス;発光デバイス;センサーデバイス;光スキャナー、光スイッチ、加速度センサー、圧力センサー、ジャイロスコープ、マイクロ流路、インクジェットヘッド等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等が含まれる。
【0160】
以上、本発明の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。
【実施例0161】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0162】
実施例1
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
3-(2,4-ジフルオロベンゾイル)プロピオン酸2.1g(0.010モル)をアセトニトリル10gに溶解させ、その後、30℃で50%ヒドロキシルアミン水溶液2.0g(0.030モル)を滴下投入して、6時間攪拌を行った。析出物をろ過回収し、1%塩酸水溶液100mLでスラリー洗浄を行った後、再度ろ過回収し真空乾燥して固形物を得た。
得られた固形物をジクロロメタン100g、トリエチルアミン2.0g(0.020モル)に溶解させた後、氷冷下で無水酢酸1.5g(0.015モル)を滴下し、1時間攪拌を行った。次いで、1%塩酸水溶液100mLを加えて攪拌し、その後、水層を除去して、ジクロロメタン層を得た。得られたジクロロメタン層について、イオン交換水100mLを用いた水洗を2回行った。水洗後、ジクロロメタン層を濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶を行った。これにより化合物(P-1)1.7gを得た。
【0163】
(有機金属化合物の調製)
ハフニウムイソプロポキシド3gをTHF20gに溶解した。これに安息香酸2g、アクリル酸2g、及び実施例1で得られた化合物(P-1)1gをTHF20gで溶解した溶液を、室温で投入して混合溶液を得た。
得られた混合溶液を65℃に温調下、イオン交換水2mLを加えて、24時間のゾル・ゲル反応を行った。反応終了後に沈殿物を回収し、アセトン/水(1:4、体積比)でかけ洗い洗浄を行った。次いで、40℃真空下で24時間の乾燥を行った。これにより、有機金属化合物を得た。
【0164】
(フォトレジストの調製)
得られた有機金属化合物0.1gをPGMEA3.0gに溶解させた後、孔径0.20μmのフィルターろ過を行い、不溶解の凝集体を除去した。これにより、フォトレジスト(R-1)を得た。
【0165】
実施例2
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
2-ブロモ-4’-(トリフルオロメチル)アセトフェノン2.7g(0.010モル)及びトリエチルアミン0.3g(0.030モル)を、アセトニトリル10gに溶解させ、その後、60℃温調下にて、メルカプト酢酸1.2g(0.012モル)を滴下投入し、6時間反応させた。
その後、30℃で50%ヒドロキシルアミン水溶液2.0g(0.030モル)を滴下投入し、6時間攪拌を行った。析出物をろ過回収し、1%塩酸水溶液100mLでスラリー洗浄を行った後、再度ろ過回収し、真空乾燥して固形物を得た。
得られた固形物をジクロロメタン100g、トリエチルアミン2.0g(0.020モル)に溶解させた後、氷冷下で塩化ベンゾイル2.0g(0.015モル)を滴下し、1時間攪拌を行った。次いで、1%塩酸水溶液100mLを加えて攪拌し、その後、水層を除去して、ジクロロメタン層を得た。得られたジクロロメタン層について、イオン交換水100mLを用いた水洗を2回行った。水洗後、ジクロロメタン層を濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶を行った。これにより化合物(P-2)2.2gを得た。
【0166】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-2)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-2)を得た。
【0167】
実施例3
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
2,6-ジフルオロアニソール1.4g(0.010モル)、テトラフルオロコハク酸1.7g(0.010モル)、及びジクロロメタン100gの溶液に、塩化アルミニウム4.0g(0.030モル)を分割投入した。その後、2時間攪拌を行った。次いで、水200gをゆっくり投入し、2時間攪拌して、その後、水層を除去してジクロロメタン層を得た。得られたジクロロメタン層について、さらに水洗を2回行った後、濃縮した。次いで、この濃縮物をアセトニトリル10gに溶解させた後に、30℃で50%ヒドロキシルアミン水溶液2.0g(0.030モル)を滴下投入し、6時間攪拌を行った。析出物をろ過回収し1%塩酸水溶液100mLでスラリー洗浄を行った後、再度ろ過回収し、真空乾燥して固形物を得た。
得られた固形物をジクロロメタン100g、ピリジン1.6g(0.020モル)に溶解させた後、氷冷下でペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド2.7g(0.010モル)を滴下し、1時間攪拌を行った。次いで、1%塩酸水溶液100mLを加えて攪拌し、その後、水層を除去してジクロロメタン層を得た。得られたジクロロメタン層について、イオン交換水100mLを用いた水洗を2回行った。水洗後、ジクロロメタン層を濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶を行って、化合物(P-3)2.9gを得た。
【0168】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-3)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-3)を得た。
【0169】
実施例4
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
2-ブロモ-4’-(トリフルオロメチル)アセトフェノンを5-アセチル-2-クロロベンゾトリフルオリド2.2g(0.010モル)に変更し、塩化ベンゾイルをヘプタフルオロプロピオン酸クロリドに変更した以外は実施例2と同様に行って、化合物(P-4)2.2gを得た。
【0170】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-4)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-4)を得た。
【0171】
実施例5
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
2,6-ジフルオロアニソールをベンゼン2.1g(0.030モル)に変更し、テトラフルオロコハク酸をテトラフルオロフタル酸無水物2.2g(0.010モル)に変更し、ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリドをブタンスルホニルクロリドに変更した以外は実施例3と同様に行って、化合物(P-5)2.2gを得た。
【0172】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-5)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-5)を得た。
【0173】
比較例1
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
3-(2,4-ジフルオロベンゾイル)プロピオン酸をアセトフェノンにした以外は実施例1と同様に行って化合物(P-6)1.8gを得た。
【0174】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-6)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-6)を得た。
【0175】
比較例2
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
3-(2,4-ジフルオロベンゾイル)プロピオン酸を4-(トリフルオロアセチル)アニソール変更し、無水酢酸をブタンスルホン酸クロリドに変更した以外は実施例1と同様に行って化合物(P-7)2.0gを得た。
【0176】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-7)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-7)を得た。
【0177】
比較例3
(ノニオンオキシム型化合物の調製)
3-(2,4-ジフルオロベンゾイル)プロピオン酸を3-ベンゾイルプロピオン酸にした以外は実施例1と同様に行って化合物(P-8)2.3gを得た。
【0178】
(有機金属化合物、フォトレジストの調製)
化合物(P-1)に代えて、得られた化合物(P-8)を使用した以外は実施例1と同様の方法で有機金属化合物を得、フォトレジスト(R-8)を得た。
【0179】
実施例及び比較例で得られた化合物(P-1)~(P-8)の溶剤溶解性、及び実施例及び比較例で得られたフォトレジスト(R-1)~(R-8)の感光性を下記方法で評価した。
【0180】
(溶剤溶解性評価)
化合物(P-1)~(P-8)をそれぞれ0.2g試験管にとり、25℃温調下でPGMEAを0.2~0.5gずつ、前記化合物が完全に溶解するまで加えた。この完全に化合物が溶解した時点の化合物濃度(重量%)を溶剤溶解性の指標とした。尚、PGMEAを30g加えても完全に溶解しない場合には、溶解しないものとして評価した。結果を下記表に示す。
【0181】
(感光性評価)
ヘキサメチルジシラザン処理を行った基板上に、フォトレジスト(R-1)~(R-8)を、それぞれ、スピンコーターを用いて塗布し、その後、80℃で60秒間加熱を行って溶剤を除去して、約50nmの膜厚の塗膜を得た。
得られた塗膜を、兵庫県立大学ニュースバル放射光施設のBL-3に投入し、13.5nmの放射光を、照射時間を1~30秒の範囲で変更して照射した。その後、塗膜を、酢酸ブチルに30秒間浸して現像し、乾燥を行った。
現像・乾燥後の塗膜について、露光部を顕微鏡で観察し、光照射した部分に残存する塗膜の厚みが40nm以上となる最小露光量(Eth)を測定した。
比較例1で得られたフォトレジスト(R-6)を使用した場合の最小露光量(Eth’)に対する最小露光量(Eth)の比を以下の式から算出して、これを感光性の指標とした。尚、最小露光量比は値が小さい方が感光性は良好である。
最小露光量比=Eth/Eth’
【0182】
【0183】
【0184】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 式(1-1)又は(1-2)(式中、Ar1、Ar2は同一又は異なって、芳香環構造、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した構造を示す。R1は-O(C=O)R基、-OS(=O)2R基、又は-OPO(OR)2基を示し、前記Rは炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を示す。R2、R5はそれぞれ独立に単結合又は連結基を示す。R3はハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基を示す。R4は置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い炭化水素基の2個以上が単結合若しくは連結基を介して結合した基、又はシアノ基を示す。n1は1~5の整数を示し、n2は1~4の整数を示す)で表される化合物。
[2] 前記R3がフッ素原子又はトリフルオロメチル基である、[1]に記載の化合物。
[3] 金属又は金属酸化物(1)に、[1]又は[2]に記載の化合物が配位結合した構成を有する有機金属化合物。
[4] 前記(1)が、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、コバルト、パラジウム、アンチモン、及びこれらの酸化物から選択される少なくとも1種である、[3]に記載の有機金属化合物。
[5] [3]又は[4]に記載の有機金属化合物を含むレジスト用感光材。
[6] 極端紫外線用感光材又は電子線用感光材である、[5]に記載のレジスト用感光材。