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  • 特開-食品飲料排水の脱色方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069038
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】食品飲料排水の脱色方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20230101AFI20240514BHJP
【FI】
C02F1/56 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179806
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 知之
(72)【発明者】
【氏名】安永 利幸
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA12
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA02
4D015CA04
4D015CA09
4D015DA03
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA13
4D015DA16
4D015DB02
4D015DB08
4D015DB12
4D015DB18
4D015DB19
4D015DB24
4D015DB30
4D015DB31
4D015DC02
4D015DC04
4D015DC08
4D015EA04
4D015EA07
4D015EA17
4D015EA32
4D015FA01
4D015FA22
(57)【要約】
【課題】色度の高い食品飲料排水を脱色するに際し、凝集汚泥の生成量を抑制しながらも高水準の色度低減効果を得ることが可能な脱色方法を提供する。
【解決手段】生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水に、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加し、前記排水を撹拌する工程1と、工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤を添加し、前記排水を撹拌する工程2と、工程2を実施後の前記排水から着色成分を固液分離し、色度が低下した処理水を得る工程3と、を実施することを含む食品飲料排水の脱色方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水に、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加し、前記排水を撹拌する工程1と、
工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤を添加し、前記排水を撹拌する工程2と、
工程2を実施後の前記排水から着色成分を固液分離し、色度が低下した処理水を得る工程3と、
を実施することを含む食品飲料排水の脱色方法。
【請求項2】
工程1において、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、前記排水に対して固形物換算で50~300mg/Lとなるように添加する請求項1に記載の脱色方法。
【請求項3】
カチオン性置換基を有するタンニン誘導体には、トリメチルアンモニウムクロリド基を有するタンニン誘導体が含まれる請求項1に記載の脱色方法。
【請求項4】
工程2において、アニオン性高分子凝集剤は、前記排水に対して固形物換算で0.01~10mg/Lとなるように添加する請求項1に記載の脱色方法。
【請求項5】
工程1において、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体が添加される前の前記排水のpHが5~9である請求項1に記載の脱色方法。
【請求項6】
工程1、工程2、及び工程3をそれぞれ別の槽内で実施する請求項1に記載の脱色方法。
【請求項7】
工程2を実施前に、工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤以外の有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加して撹拌する工程1’を実施することを含む請求項1に記載の脱色方法。
【請求項8】
工程1’において、有機凝結剤は、前記排水に対して固形物換算で5~200mg/Lとなるように添加する請求項7に記載の脱色方法。
【請求項9】
工程1’において、無機凝集剤は、前記排水に対して固形物換算で50~500mg/Lとなるように添加する請求項7に記載の脱色方法。
【請求項10】
工程1、工程2、工程3、及び工程1’をそれぞれ別の槽内で実施する請求項7に記載の脱色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品飲料排水の脱色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油、コーヒー飲料、麦茶飲料等の製造の際に生じる排水は非常に濃く着色しており、これらの排水(以下、「着色排水」という)の浄化処理においては脱色処理が施されるのが一般的である。脱色処理の技術としては、従来、凝集沈殿処理、生物学的処理(生物処理)、オゾン(O3)等の酸化剤を用いた酸化処理等が知られているが、生物学的処理では着色排水に対する色度低減効果が不十分であり、また酸化処理では十分な色度低減効果を得るためにイニシャルコスト及びランニングコストが増大してしまうという問題がある。
【0003】
一方、凝集沈殿処理の場合は、生物学的処理に比べて色度低減効果が高く、また酸化処理のようなコスト面の問題もないため、着色排水の脱色に適していると言える。凝集沈殿処理としては、排水に無機凝集剤を添加して凝集汚泥と処理水とに分離する方法が知られているが、色度低減効果の更なる向上を図るべく、無機凝集剤の代わりに凝結剤又は有機高分子凝集剤を用いる方法や、これらを組み合わせて用いる方法も提案されている(特開平6-226265号公報、特開2001-162285号公報)。
【0004】
特開2001-79309号公報には、水よりコロイド状物質を除くための植物性凝固/凝集剤として、第四級アンモニウムタンニン酸塩が記載されている。
【0005】
特開2001-79563号公報には、ピロカテキンタンニン、Acacia mearnsii樹皮の水性抽出液であり、カチオン特性を有する植物起源の有機凝固/凝集剤が記載されている。
【0006】
特開昭61-97362号公報には、赤キャベツを酸性の水、又はアルコール水に浸漬して得た色素抽出液にタンニン及び又はタンニン酸を添加し、共存する蛋白質その他の夾雑物を共沈させ、上澄部を採取することを特徴とする赤キャベツ色素の製造法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-226265号公報
【特許文献2】特開2001-162285号公報
【特許文献3】特開2001-79309号公報
【特許文献4】特開2001-79563号公報
【特許文献5】特開昭61-97362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、凝集沈殿処理による上記従来の脱色方法にあっては、例えば、着色排水の色度を十分に低減するために非常に多くの無機凝集剤や有機凝結剤を添加する必要があり、その結果、多量の汚泥が発生してしまう。また、上記の特許文献に記載されているように、第四級アンモニウムタンニン酸塩等のタンニン誘導体が凝集剤として知られているが、着色排水に対する脱色効果には改善の余地が残されている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一側面において、色度の高い食品飲料排水を脱色するに際し、凝集汚泥の生成量を抑制しながらも高水準の色度低減効果を得ることが可能な脱色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体及びアニオン性高分子凝集剤を用いて所定の手順に従って食品飲料排水から着色成分を固液分離することが有利であることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0011】
[態様1]
生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水に、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加し、前記排水を撹拌する工程1と、
工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤を添加し、前記排水を撹拌する工程2と、
工程2を実施後の前記排水から着色成分を固液分離し、色度が低下した処理水を得る工程3と、
を実施することを含む食品飲料排水の脱色方法。
[態様2]
工程1において、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、前記排水に対して固形物換算で50~300mg/Lとなるように添加する態様1に記載の脱色方法。
[態様3]
カチオン性置換基を有するタンニン誘導体には、トリメチルアンモニウムクロリド基を有するタンニン誘導体が含まれる態様1又は2に記載の脱色方法。
[態様4]
工程2において、アニオン性高分子凝集剤は、前記排水に対して固形物換算で0.01~10mg/Lとなるように添加する態様1~3の何れかに記載の脱色方法。
[態様5]
工程1において、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体が添加される前の前記排水のpHが5~9である態様1~4の何れかに記載の脱色方法。
[態様6]
工程1、工程2、及び工程3をそれぞれ別の槽内で実施する態様1~5の何れかに記載の脱色方法。
[態様7]
工程2を実施前に、工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤以外の有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加して撹拌する工程1’を実施することを含む態様1~6の何れかに記載の脱色方法。
[態様8]
工程1’において、有機凝結剤は、前記排水に対して固形物換算で5~200mg/Lとなるように添加する態様7に記載の脱色方法。
[態様9]
工程1’において、無機凝集剤は、前記排水に対して固形物換算で50~500mg/Lとなるように添加する態様7又は8に記載の脱色方法。
[態様10]
工程1、工程2、工程3、及び工程1’をそれぞれ別の槽内で実施する態様7~9の何れかに記載の脱色方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る食品飲料排水の脱色方法によれば、色度の高い食品飲料排水を脱色するに際し、凝集汚泥の生成量を抑制しながらも高水準の色度低減効果を得ることが可能となる。また、脱色に伴ってCOD成分の除去も可能である。更には、汚泥発生の原因であった無機凝集剤の使用量を大幅に抑えられるので薬品代だけでなく産業廃棄物の処理コストも削減可能である。このため、当該脱色方法は、色度の高い食品飲料排水の低コスト処理方法として産業上の利用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る食品飲料排水の脱色方法を実施するのに好適な排水処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.食品飲料排水の脱色方法>
本発明の一実施形態に係る食品飲料排水の脱色方法は、
生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水に、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加し、前記排水を撹拌する工程1と、
工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤を添加し、前記排水を撹拌する工程2と、
工程2を実施後の前記排水から着色成分を固液分離し、色度が低下した処理水を得る工程3と、
を実施することを含む。
【0015】
(1-1.工程1)
本発明に係る脱色方法が処理対象とする排水は、生物処理を受けた後の色度が450以上、典型的には450~1000、より典型的には450~600の食品飲料排水である。色度が450未満の食品飲料排水であれば公知の凝集沈殿法での色度除去が可能であるからである。食品飲料排水というのは、食品及び飲料の少なくとも一種を含有する排水を指し、典型的には醤油等の食品製造工程から排出される排水、コーヒー、麦茶、清涼飲料、果汁等の飲料製造工程から排出される排水が挙げられる。
【0016】
本発明において、色度は、JIS K0101:1998に規定される、白金・コバルトによる色度を指し、390nm付近の吸光度を測定する透過光測定法により測定される。色度が高すぎる場合は純水で適宜希釈した上で測定し、希釈倍率を掛けて測定値としてもよい。
【0017】
本発明に係る脱色方法が処理対象とする排水は、予め生物処理を受けている。食品飲料排水が予め生物処理を受けていることで、本発明に係る脱色方法による色度低減効果の向上効果が得られる。生物処理法の種類には特段の制限はないが、好気性処理法、嫌気性処理法、及び両者の組み合わせが挙げられる。また、生物処理の過程で固形分を除去する工程を行っていてもよい。
【0018】
また、本発明に係る脱色方法が処理対象とする排水は、予め生物処理を受けているので、中性に近いpHであるのが通常である。具体的には、生物処理を受けた後の排水のpHは、5~9であるのが一般的であり、6~8であるのが典型的である。但し、必要に応じて工程1を実施する際に、pH調整剤を添加することで6~8の範囲にpHを調整してもよい。
【0019】
工程1では、生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水に、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加して撹拌する。工程1のみでは着色成分を凝集させる効果は小さいが、工程1を実施しておくことで、タンニン誘導体に着色成分やCOD成分が吸着するので、フロックの生成及び/又は成長が促進され、後段の工程においてアニオン性高分子凝集剤を添加したときに排水中の着色成分やCOD成分が沈降しやすいフロックを形成しやすくなる。
【0020】
本明細書において、タンニンとは、タンニン酸類、カテキン類、ロイコアントシアン類、クロロゲン酸類を包括する多価フェノールを指し、広く自然界の植物に含まれる。タンニンは、大別すると加水分解型タンニン(ピロガロール型タンニン)および縮合型タンニン(カテコール型タンニン)の二つに分けられる。加水分解型タンニンとしては、例えば、チェスナットタンニン、ミロバランタンニンが挙げられ、縮合型タンニンとしては、例えば、ミモザタンニン、ケブラチョタンニンが挙げられる。タンニン酸としては、例えば、五倍子タンニン、没食子タンニンが挙げられる。これらの中でも、工業的に大量に生産されているミモザ、ケブラチョ、チェストナット等から抽出される植物性タンニンが好ましい。これらのタンニンは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合してタンニン誘導体の製造に使用することができる。
【0021】
また、カチオン性置換基は一級から四級のアミノ基であれば特に限定されず、例えば、トリアルキルアンモニウムクロリド基等が挙げられる。なかでもトリメチルアンモニウムクロリド基が好ましい。カチオン性置換基の位置は特に限定されない。
【0022】
このようなカチオン性置換基を有するタンニン誘導体を製造する方法は、特に限定されず、例えば、特開2001-79309号公報及び特開2001-79563号公報に記載されている方法を使用できる。具体的には、タンニンを炭素数1~2のジアルキルアミンとホルマリンを用いてマンニッヒ反応でアミノメチル化したものを、鉱酸及び有機酸により第三級アンモニウム塩とする方法、並びに、マンニッヒ反応で同様にアミノメチル化したタンニンを炭素数1~2のアルキルハライド、ベンジルハライド及び炭素数1~2のアルコールと硫酸のジエステルにより第四級アンモニウム塩とする方法等が挙げられる。
【0023】
また、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、市販品を使用することもできる。このような市販品としては、例えば、Tanac S.A.社(ブラジル)の「TANFLOC SA」(商品名)や「TANFLOC SS」(商品名)等が挙げられる。市販のカチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、使用に際しては水に溶解してポンプ等で定量添加することが好ましい。カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を水溶液の形態で添加する場合、溶解濃度は1~10w/v%(水100mL中のタンニン誘導体のg数)が適当である。
【0024】
カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、排水に対して固形物換算で10~500mg/Lとなるように添加することが好ましい。10mg/L以上とすることで優れた脱色効果が得られる。また、500mg/Lを超えて添加しても脱色効果が飽和する傾向にあるため、500mg/L以下とすることで脱色効果と経済性を両立可能である。カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は、排水に対して固形物換算で50~300mg/Lとなるように添加することがより好ましく、排水に対して100~300mg/Lとなるように添加することが更により好ましい。カチオン性置換基を有するタンニン誘導体は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用することもできるが、二種以上を混合して使用する場合は、合計濃度が上記濃度範囲となるように添加することが好ましい。
【0025】
工程1におけるカチオン性置換基を有するタンニン誘導体の添加完了後は、排水を撹拌した後に次工程を実施することが好ましい。添加したカチオン性置換基を有するタンニン誘導体を排水中に均一に拡散させるためである。撹拌方法には特に制限はないが、撹拌装置を用いて機械的に撹拌する方法の他、水流だけで混合させる方法も撹拌の概念に含まれる。排水の撹拌を開始するタイミングは、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体の添加前でもよいし、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体の添加途中でもよいし、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体の添加完了後でもよい。中でも、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体を速やかに排水中に分散させ着色成分やCOD成分と接触させる観点から、予め撹拌を開始させた状態でカチオン性置換基を有するタンニン誘導体を添加することが望ましい。
【0026】
カチオン性置換基を有するタンニン誘導体の添加完了後に排水を撹拌する時間には特段に制約はなく、被処理水中の着色成分やCOD成分との接触機会を増やす観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。
【0027】
(1-2.工程1’)
工程1の後、続けてアニオン性高分子凝集剤を添加する工程2を実施してもよいが、工程2の実施に先立ってアニオン性高分子凝集剤以外の有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加してもよい。具体的には、工程2を実施前に、工程1を実施後の前記排水にアニオン性高分子凝集剤以外の有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加して撹拌する工程1’を実施する。これにより、フロックの生成及び/又は成長を促進する効果を得ることができる。但し、工程1を実施せずに、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加しても、フロックの生成及び/又は成長は限定的であり、工程1を実施した上で有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を添加することが後工程で着色成分の凝集を効果的に行うためには有利である。
【0028】
無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等が挙げられる。有機凝結剤はカチオン性のものが多いが、例えば、ポリアミン系、ジシアンジアミド系、ポリジシアンジアミド系、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド系(「ポリDADMAC系」とも称する)、アミノ縮合系、メラミン酸コロイド系等が挙げられる。より具体的には、ポリアルキルポリアミン、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、メチロールメラミン酸コロイド、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ポリエチレン・ポリアミン・ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物(特にジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物)、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化イオウの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体等が挙げられる。これらの有機凝結剤及び/又は無機凝集剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
工程1’において、無機凝集剤は、排水に対して固形物換算で50~500mg/Lとなるように添加することが好ましく、100~300mg/Lとなるように添加することがより好ましい。工程1’において、有機凝結剤は、排水に対して固形物換算で5~200mg/Lとなるように添加することが好ましく、10~100mg/Lとなるように添加することがより好ましい。無機凝集剤及び有機凝結剤が固体状の場合、溶解してから添加してもよい。上記の無機凝集剤及び有機凝結剤の添加割合は一般的な数値であるが、タンニン誘導体を併用することで、同じ色度低下効果及びCOD低下効果を得るのに必要な添加割合を削減することが可能である。
【0030】
工程1’における有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加完了後は、排水を撹拌した後に次工程を実施することが好ましい。添加した有機凝結剤及び/又は無機凝集剤を排水中に均一に拡散させるためである。撹拌方法には特に制限はないが、撹拌装置を用いて機械的に撹拌する方法の他、水流だけで混合させる方法も撹拌の概念に含まれる。排水の撹拌を開始するタイミングは、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加前でもよいし、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加途中でもよいし、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加完了後でもよい。また、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加により排水中のpHが中性付近から変動するときは、pH調整剤を添加してpHを中性付近、例えば6~8の範囲に調整してもよい。
【0031】
有機凝結剤及び/又は無機凝集剤の添加完了後に排水を撹拌する時間には特段に制約はないが、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤と被処理水中の着色成分やCOD成分と効率よく接触させるという観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。
【0032】
(1-3.工程2)
工程2では、工程1を実施後、好ましくは工程1’を実施後の排水にアニオン性高分子凝集剤を添加する。これにより、前工程で生成されたフロックが凝集反応により成長し、次工程で沈殿しやすくなる。工程1を実施後、工程2と工程1’の順序を逆転したり、工程2を実施せずに工程1’のみを実施したりしても満足の行く沈降速度を得るのは困難である。
【0033】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの重合体、アニオン性モノマーとアクリルアミド等のノニオン性モノマーとの共重合体が挙げられる。アニオン性高分子凝集剤は、限定的ではないが、重量平均分子量が300万~2000万であることが好ましく、500万~1500万であることがより好ましい。アニオン性高分子凝集剤は、一種を単独で使用することもできるが、二種以上を併用することもできる。一般に、アニオン性高分子凝集剤は水溶液として提供され、その溶解濃度は0.01~0.5質量%程度である。
【0034】
アニオン性モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アリルアミドエタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタリルアミドエタンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4-アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4-メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。これらアニオン性モノマーは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ノニオン性モノマーとしてはアクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらノニオン性モノマーは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明のアニオン性高分子凝集剤には上記ノニオン性モノマーの単独重合体も含む。
【0036】
アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体として好ましいものは、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体である。
【0037】
工程2において、アニオン性高分子凝集剤は、通常の凝集沈殿処理における添加量と同程度でよい。具体的には、排水に対して固形物換算で0.01~10mg/Lとなるように添加することが好ましく、0.1~5mg/Lとなるように添加することがより好ましい。
【0038】
工程2におけるアニオン性高分子凝集剤の添加完了後は、排水を撹拌した後に次工程を実施することが好ましい。添加したアニオン性高分子凝集剤を排水中に均一に拡散させるためである。撹拌方法には特に制限はないが、撹拌装置を用いて機械的に撹拌する方法の他、水流だけで混合させる方法も撹拌の概念に含まれる。排水の撹拌は、アニオン性高分子凝集剤の添加前でもよいし、アニオン性高分子凝集剤の添加途中でもよいし、アニオン性高分子凝集剤の添加完了後でもよい。中でも、アニオン性高分子凝集剤を被処理水中に拡散させるという観点から、アニオン性高分子凝集剤の添加前のタイミングで排水の撹拌を開始することが望ましい。
【0039】
アニオン性高分子凝集剤の添加完了後に前記排水を撹拌する時間には特段に制約はないが、アニオン性高分子凝集剤を被処理水中に拡散させるという観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。また、アニオン性高分子凝集剤で生成したフロックを壊さないという観点から、アニオン性高分子凝集剤の添加完了後に排水を撹拌する時間は、30分以下であることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0040】
(1-4.工程3)
工程2を実施することで、排水中の着色成分は凝集反応によって粗大なフロックに成長している。このため、工程3では、工程2を実施後の排水から着色成分を固液分離し、色度が低下した処理水を得る。固液分離する方法としては、限定的ではないが、凝集沈殿法が好ましい。凝集沈殿法を採用する場合、工程2を実施後の排水を静置することで、凝集した着色成分のフロックを沈殿させることができる。静置時間は排水量に応じて適宜設定すればよい。次いで、得られた上澄み水を沈殿物から分離することで、色度が低下した処理水が得られる。
【0041】
上記の一連の工程は、一つの槽ですべて行うバッチ処理式の排水処理装置で行ってもよいし、それぞれ別の槽で行う連続式の排水処理装置で行ってもよい。処理対象となる食品飲料排水の量に応じて好ましい方式を選択すればよい。
【0042】
<2.排水処理装置の構成例>
以下、図面を用いて本発明の一実施形態に係る食品飲料排水の脱色方法を実施するのに好適な連続式の排水処理装置について説明する。図1には、本発明に係る排水処理装置100の構成例が模式的に示されている。排水処理装置100は、中継槽110、一次反応槽120、二次反応槽130、凝集槽140、沈殿槽150、処理水槽160を備える。
【0043】
(2-1.中継槽)
生物処理を受けた後の色度が450以上の食品飲料排水10は、排水ライン101を通って中継槽110に流入する。中継槽110では、食品飲料排水10が一時的に貯留される。中継槽110に貯留されている食品飲料排水10は適宜、中継槽110と一次反応槽120の間に設置された送液ライン102を通って一次反応槽120へ送られる。中継槽110から一次反応槽120への食品飲料排水10の送液は、例えば送液ライン102の途中に設置されたポンプ112により行うことができる。
【0044】
(2-2.一次反応槽)
一次反応槽120に流入した食品飲料排水10は、一次反応槽120に添加されるカチオン性置換基を有するタンニン誘導体122の作用を受ける。これにより、食品飲料排水10に含まれる着色成分のフロックの生成及び/又は成長が促進される。また、一次反応槽120には撹拌機121を設置することが好ましい。これにより、食品飲料排水10を撹拌した状態でカチオン性置換基を有するタンニン誘導体122を添加することが可能である。カチオン性置換基を有するタンニン誘導体122の添加が完了した後も食品飲料排水10を撹拌することが可能である。撹拌機121の種類には特段の制約はなく、一般的に当該分野で使用される撹拌装置が使用可能であるが、例えばプロペラやブレード等で槽内の液を回転撹拌する機械式撹拌装置が挙げられる。
【0045】
機械式撹拌装置の場合、回転数は適宜設定すればよいが、一次反応槽120でカチオン性置換基を有するタンニン誘導体122を均一に分散させながらフロックを生成及び/又は成長させるという観点から、回転数は30rpm~500rpmが好ましく、100rpm~500rpmがより好ましい。
【0046】
カチオン性置換基を有するタンニン誘導体122は、水に溶解して添加してもよいし、粉体の状態で添加してもよい。注入量の制御の容易さの観点から、カチオン性置換基を有するタンニン誘導体122は、水に溶解してポンプ等で定量添加することが好ましい。
【0047】
食品飲料排水10の一次反応槽120での滞留時間は、限定的ではないが、タンニン誘導体122と被処理水中の着色成分やCOD成分と効率よく接触させるという観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。食品飲料排水10を連続して一次反応槽120に供給しながら処理する場合、一次反応槽120内の食品飲料排水10の容積Vを、一次反応槽120に供給される食品飲料排水10の流量Fで除した値V/Fを滞留時間とすることができる。
【0048】
(2-3.二次反応槽)
一次反応槽120での処理を受けた後の食品飲料排水10は次いで、二次反応槽130に送られる。食品飲料排水10を一次反応槽120から二次反応槽130へ送る方法には特に制限はなく、一次反応槽120の上部に設けられた溢流堰等の溢流部からの溢流を二次反応槽130に流し込むことによる送液方法、ポンプを用いた送液方法等が挙げられる。
【0049】
二次反応槽130に流入した食品飲料排水10は、二次反応槽130に添加される有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132の作用を受ける。これにより、食品飲料排水10に含まれる着色成分のフロックの生成及び/又は成長が促進される。また、二次反応槽130には撹拌機131を設置することが好ましい。これにより、食品飲料排水10を撹拌した状態で有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132を添加することが可能である。有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132の添加が完了した後も食品飲料排水10を撹拌することが可能である。撹拌機131の種類には特段の制約はないが、一般的に当該分野で使用される撹拌装置が使用可能であり、例えばプロペラやブレード等で槽内の液を回転撹拌する機械式撹拌装置が挙げられる。
【0050】
機械式撹拌装置の場合、回転数は適宜設定すればよいが、二次反応槽130で有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132を均一に分散させながらフロックを生成及び/又は成長させるという観点から、回転数は30rpm~1000rpmが好ましく、100rpm~500rpmがより好ましい。
【0051】
有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132は、液体品が多いためそのままポンプ等で定量添加することが好ましい。有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132が粉等の固体物で提供される場合は水に溶解してから添加してもよいし、粉体の状態で添加してもよいが、注入量制御の容易さの観点から、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132は、水に溶解してポンプ等で定量添加することが好ましい。
【0052】
食品飲料排水10の二次反応槽130での滞留時間は、限定的ではないが、有機凝結剤及び/又は無機凝集剤132と被処理水中の着色成分やCOD成分と効率よく接触させるという観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。食品飲料排水10を連続して二次反応槽130に供給しながら処理する場合、二次反応槽130内の食品飲料排水10の容積Vを、二次反応槽130に供給される食品飲料排水10の流量Fで除した値V/Fを滞留時間とすることができる。
【0053】
なお、二次反応槽130を省略し、一次反応槽120での処理を受けた後の食品飲料排水10を直接、凝集槽140に送ってもよいが、二次反応槽130を設ける方がフロックの生成及び/又は成長を促進する効果が高まるので好ましい。
【0054】
(2-4.凝集槽)
二次反応槽130での処理を受けた後の食品飲料排水10は次いで、凝集槽140に送られる。食品飲料排水10を二次反応槽130から凝集槽140へ送る方法には特に制限はなく、二次反応槽130の上部に設けられた溢流堰等の溢流部からの溢流を凝集槽140に流し込むことによる送液方法、ポンプを用いた送液方法等が挙げられる。
【0055】
凝集槽140に流入した食品飲料排水10は、凝集槽140に添加されるアニオン性高分子凝集剤142の作用を受ける。これにより、食品飲料排水10に含まれる着色成分のフロックが成長し、粗大化する。また、凝集槽140には撹拌機141を設置することが好ましい。これにより、食品飲料排水10を撹拌した状態でアニオン性高分子凝集剤142を添加することが可能である。アニオン性高分子凝集剤142の添加が完了した後も食品飲料排水10を撹拌することが可能である。撹拌機141の種類には特段の制約はなく、一般的に使用される撹拌装置が使用可能であるが、プロペラやブレード等で槽内の液を回転撹拌する機械式撹拌装置が挙げられる。
【0056】
機械式撹拌装置の場合、回転数は適宜設定すればよいが、凝集槽140でアニオン性高分子凝集剤142を均一に分散させながらフロックを成長させるという観点から、回転数は10rpm~300rpmが好ましく、30rpm~200rpmがより好ましく、50rpm~100rpmが更により好ましい。
【0057】
アニオン性高分子凝集剤142は、水に溶解して添加してもよいし、粉体の状態で添加してもよい。注入量の制御の容易さの観点から、アニオン性高分子凝集剤142は、水に溶解してポンプ等で定量添加することが好ましい。
【0058】
食品飲料排水10の凝集槽140での滞留時間は、限定的ではないが、アニオン性高分子凝集剤142を被処理水中に拡散させるという観点から、1分以上であることが好ましく、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更により好ましい。また、アニオン性高分子凝集剤142で生成したフロックを壊さないという観点から、アニオン性高分子凝集剤142の添加完了後に排水を撹拌する時間は、30分以下であることが好ましいが、特に限定されるものではない。食品飲料排水10を連続して凝集槽140に供給しながら処理する場合、凝集槽140内の食品飲料排水10の容積Vを、凝集槽140に供給される食品飲料排水10の流量Fで除した値V/Fを滞留時間とすることができる。
【0059】
(2-5.沈殿槽)
凝集槽140での処理を受けた後の食品飲料排水10は次いで、沈殿槽150に送られる。食品飲料排水10を凝集槽140から沈殿槽150へ送る方法には特に制限はなく、凝集槽140の上部に設けられた溢流堰等の溢流部からの溢流を沈殿槽150に流し込むことによる送液方法、ポンプを用いた送液方法等が挙げられる。
【0060】
食品飲料排水10中の着色成分は凝集槽140で粗大なフロックに成長している。従って、食品飲料排水10が沈殿槽150に流入すると、着色成分のフロックの更なる粗大化も相まって、凝集が進展して沈殿し、凝集汚泥となる一方で、色度が低下した上澄み水が得られる。
【0061】
食品飲料排水10を連続して沈殿槽150に供給しながら処理する場合、沈殿槽150内の食品飲料排水10の容積Vを、沈殿槽150に供給される食品飲料排水10の流量Fで除した値V/Fを滞留時間とすることができる。
【0062】
(2-6.処理水槽)
沈殿槽150内の上澄み水は、そのまま処理水として沈殿槽150から排出してもよいが、排出する処理水の量を調節する目的で処理水槽160に送ってもよい。上澄み水を沈殿槽150から処理水槽160へ送る方法には特に制限はなく、沈殿槽150の上部に設けられた溢流堰等の溢流部からの溢流を処理水槽160に流し込むことによる送液方法、ポンプを用いた送液方法等が挙げられる。処理水槽160では色度が低下した上澄み水を貯留することができ、処理水20として適宜排出される。例えば、処理水槽160の上部に設けられた溢流堰等の溢流部から溢流させることで処理水を排出可能である。
【実施例0063】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0064】
<実施例1>
麦茶の製造工程から排出される排水を流動床型生物膜処理の方法で生物処理した。得られた生物処理後の排水(以下、「被処理水」という。)の色度を390nm付近の吸光度を測定する透過光測定法を採用した日本電子工業株式会社製の色度計WA7700を用いて測定したところ454であった。また、pHは5~9の範囲内であった。
【0065】
Tanac S.A.社(ブラジル)の「TANFLOC SA」(商品名)を用いて10w/v%の水溶液(以下、「10%タンニン」という。)を調製し、上記で用意した被処理水100mLを100mLビーカーに取り、10%タンニンを固形物換算で100mg/L添加し、マグネチックスターラーで3分間撹拌した。
【0066】
次いで、液状の無機凝集剤(PAC)を固形物換算で100mg/L添加し、10%苛性ソーダを滴下してpHを7.5に調整した後に3分間撹拌(回転数:800rpm)を継続した。
【0067】
次いで、アクリル酸ソーダとアクリルアミドの共重合体を含有する水ing株式会社製の粉末アニオン性高分子凝集剤「エバグロース(登録商標)A-151」(商品名)を水に溶解して0.1質量%水溶液とした後、固形物換算で2mg/L添加して3分間撹拌(回転数:200rpm)を行った後、撹拌を停止し3分間静置した。これにより、着色成分のフロックが沈殿し、上澄み水が得られた。
【0068】
上澄み水を採取して色度を測定した結果、218であった。CODを測定した結果165mg/Lであった。
【0069】
<比較例1>
生物処理を受けてない排水を処理した他は、実施例と同様の試験を行った。この場合、フロックの生成が見られず、色度低下・COD除去の効果は確認されなかった。この結果から、生物処理を予め行うことが必要であることが分かる。
【0070】
<比較例2>
無機凝集剤(PAC)及びアニオン性高分子凝集剤の何れも使用しなかった他は、実施例と同様の試験を行った。この場合、フロックの生成が見られず、色度低下・COD除去の効果は確認されなかった。この結果から、タンニン誘導体のみでは色度低下・COD除去の効果は得られないことが分かる。
【0071】
<比較例3>
実施例と同じ被処理水に対して、液状の無機凝集剤(PAC)を300mg/L添加し、10%苛性ソーダと滴下してpHを7.5に調整した後に3分間撹拌(回転数800rpm)を継続した。
次いでアクリル酸ソーダとアクリルアミドの共重合体を含有する水ing株式会社製の粉末アニオン性高分子凝集剤「エバグロース(登録商標)A-151」(商品名)を水に溶解して0.1質量%水溶液とした後、固形物換算で2mg/L添加して3分間撹拌(回転数200rpm)を行った後、撹拌を停止し3分間静置した。これにより、着色成分のフロックが沈殿し、上澄み水が得られた。
【0072】
上澄み水を採取して色度を測定した結果、316であった。CODを測定した結果165mg/Lであった。
【0073】
<比較例4>
無機凝集剤(PAC)の添加割合を100mg/Lとした他は比較例3と同じ試験を行った。上澄み水を採取して色度を測定した結果、377であった。CODを測定した結果、195mg/Lであった。
【0074】
比較例3及び4の結果から、タンニン誘導体による処理は行わず、無機凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤のみで処理した場合、実施例と同程度の色度低下効果を得るのに、無機凝集剤を実施例に比べて3倍以上使用することが必要であることが理解できる。
【符号の説明】
【0075】
10 :食品飲料排水
20 :処理水
100 :排水処理装置
101 :排水ライン
102 :送液ライン
110 :中継槽
112 :ポンプ
120 :一次反応槽
121 :撹拌機
122 :タンニン誘導体
130 :二次反応槽
131 :撹拌機
132 :無機凝集剤
140 :凝集槽
141 :撹拌機
142 :アニオン性高分子凝集剤
150 :沈殿槽
160 :処理水槽
図1