(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069046
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 4/02 20220101AFI20240514BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240514BHJP
F24H 15/315 20220101ALI20240514BHJP
F24H 15/16 20220101ALI20240514BHJP
F24H 15/223 20220101ALI20240514BHJP
F24H 15/375 20220101ALI20240514BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240514BHJP
【FI】
F24H4/02 C
F24H1/18 G
F24H15/315
F24H15/16
F24H15/223
F24H15/375
F24H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179821
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田附 洋人
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA13
3L122BA14
3L122BB02
3L122BB12
3L122CA15
3L122DA13
3L122DA21
3L122FA02
3L122FA13
3L122FA24
3L122FA27
(57)【要約】
【課題】電力抑制時のヒートポンプのランニングコストを低減しつつ、燃焼式熱源機の作動に対するヒートポンプの遅延時間を短縮することができる給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システム1は、貯湯タンク11と、ヒートポンプ23と、燃焼式熱源機50と、制御装置70とを備える。制御装置は、貯湯タンクの湯水を供給する非燃焼給湯運転又は燃焼式熱源機により湯水を加熱する燃焼給湯運転を実行可能であり、通常運転と、抑制電力以下でヒートポンプを作動させる電力抑制運転とを実行可能である。制御装置は、電力抑制運転且つ非燃焼給湯運転を実行中に、タンク温度センサ12aの検出温度が所定温度以下となった場合に、抑制電力を第2の所定量Bまで低下させる。次に、燃焼給湯運転の指示があったとき、抑制電力を第1の所定量Cまで低下させる指示を行い、ヒートポンプの消費電力が第1の所定量C以下となってから燃焼給湯運転を開始する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯える湯水を電力により加熱するヒートポンプと、
給水源から供給される給湯用水を前記貯湯タンクに導入するための給水回路と、
前記貯湯タンク内の湯水を給湯対象部に供給するための給湯回路と、
前記給湯回路から給湯対象部に供給される湯水を燃料の燃焼により加熱可能とする燃焼式熱源機と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記燃焼式熱源機を非作動として前記貯湯タンクの湯水を給湯対象部に供給する非燃焼給湯運転と、前記貯湯タンクの湯水を前記燃焼式熱源機により加熱して供給する燃焼給湯運転と、を選択的に実行する機能を有する給湯運転制御部を備え、
更に、前記制御装置は、前記ヒートポンプを最大消費電力まで作動可能な通常運転と、最大消費電力よりも低い抑制電力以下で前記ヒートポンプを作動させる電力抑制運転を実行する機能を有する電力抑制制御部を備える給湯システムであって、
前記制御装置は、前記電力抑制制御部が前記電力抑制運転を実行中であり且つ前記給湯運転制御部が前記非燃焼給湯運転を実行中に、前記燃焼給湯運転開始の指示があったとき、当該燃焼給湯運転の開始に先立って、前記電力抑制制御部に対して前記抑制電力を第1の所定量まで低下させる指示を行うように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の給湯システムにおいて、
前記貯湯タンクは、該貯湯タンク内の湯水の温度を検出するタンク温度センサを備え、
前記制御装置は、前記電力抑制運転の実行中に前記タンク温度センサの検出温度を監視し、前記タンク温度センサの検出温度が所定温度以下となった場合に、前記電力抑制制御部に対して前記抑制電力を前記第1の所定量と異なる第2の所定量まで低下させる指示を行うように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の給湯システムにおいて、
前記給湯回路は、該給湯回路を流通する湯水の流量を調節する流量調節弁を備え、
前記燃焼式熱源機は、前記給湯回路に介設され、
前記制御装置は、前記電力抑制制御部に前記抑制電力を前記第1の所定量低下させる指示を行った後に、前記ヒートポンプの実際の消費電力が前記抑制電力から前記第1の所定量まで低下する間、前記給湯対象部に供給される湯水を前記流量調節弁により減少させるように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプで加熱した湯を貯留する貯湯タンクの下流側に燃焼式熱源機を接続した給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に湯水を貯える貯湯タンクと、貯湯タンク内に水を供給する給水回路と、貯湯タンク内に貯えられた湯水をカラン等の給湯対象部に供給する給湯回路と、貯湯タンク内から湯水を導出して加熱し、加熱して生成した湯を貯湯タンク内に戻すヒートポンプと、貯湯タンクの下流側に接続されて給湯回路を流れる湯水を加熱可能とする燃焼式熱源機とを備えた給湯システムが知られている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
ヒートポンプは、エネルギー効率が比較的高く、電力を用いるために、電気料金がガス燃料等に比べて安価である反面、単位時間当たりの加熱能力が低いので、湯を加熱生成するために比較的長い時間を要する。
【0004】
一方、燃焼式熱源機は、ガス燃料等を用いたバーナの燃焼によって給湯回路の水を加熱するため、比較的短時間で湯を生成することができる。燃焼式熱源機は、加熱運転に際しての電力消費は比較的少ないものの、電力のみで作動するヒートポンプに比べてガス燃料等の燃料費が高価となる。
【0005】
そこで、ヒートポンプと燃焼式熱源機とを備えた上記従来の給湯システムにおいては、貯湯タンクが湯切れした(貯湯タンク内の湯が水に置換された)ときにのみ、燃焼式熱源機により給湯回路の水を加熱する。これにより、貯湯タンクの湯切れを意識することなく給湯を行うことができる。このように、この種の給湯システムは、給湯時に、可能な限り貯湯タンクの湯を使用し、燃焼式熱源機の作動頻度を低減させることで、ランニングコストを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-198424号公報
【特許文献2】特開2017-227402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の給湯システムは、一般に、家庭用電源から電力が供給される。中には、屋外コンセントから電力が供給されるものがある。他の電気機器と同時使用された場合にブレーカの遮断による給電停止が生じないように、ヒートポンプの運転の際に消費電力を抑制することが行われる。
【0008】
ヒートポンプにおける消費電力の調整は、ヒートポンプが備える圧縮機のモータ回転数を制御することにより行われる。圧縮機のモータ回転数は、指示値で制御される。電力の抑制時は、消費電力が、通常運転時の最大消費電力よりも低く設定された電力抑制値を超えないように指示値で制御される。即ち、電力抑制値を設定することにより、ヒートポンプ運転時の消費電力を抑制するための電力抑制運転が実行される。
【0009】
ところが、ヒートポンプの消費電力を抑えると、給湯の際に燃焼式熱源機の作動頻度が高くなる場合がある。特に、比較的大量の給湯が行われて貯湯タンク内の湯量が低下すると、ヒートポンプの運転により貯湯タンク内の湯水の沸き上げ速度よりも、貯湯タンク内の湯量の低下が速いため、燃焼式熱源機によって給湯を維持する必要が生じる。
【0010】
そして、ヒートポンプと燃焼式熱源機とが同時に作動すると、ヒートポンプが使用できる電力の割り合いが減ることから、ブレーカの遮断による給電停止を防止するためには、ヒートポンプに供給する電力の取り分を下げる(電力抑制値を更に低下させる)必要がある。
【0011】
しかし、ヒートポンプの電力抑制値を極度に低下させて消費電力を即座に抑えようとしても、ヒートポンプの圧縮機のモータ回転数を急速に低下させることは困難である。そのため、電力抑制値にヒートポンプの消費電力が追従するまで時間を要し、比較的長い遅延時間が生じる。この間に、燃焼式熱源機の動作に伴う電力が加わった場合、ブレーカの遮断による給電停止が生じるおそれがある。
【0012】
そこで、予め、電力抑制運転を実行中のヒートポンプ運転時の電力抑制値を比較的低く設定しておき、燃焼式熱源機の作動に応じて最も低い電力抑制値との差を小さくしておくことが考えられる。しかし、これによると、ヒートポンプ運転時の貯湯タンク内の水の沸き上げ時間も長時間必要となり、その間の燃焼式熱源機の作動頻度を抑えることが困難となるため、ランニングコストが悪化する不都合がある。
【0013】
上記の点に鑑み、本発明は、電力抑制時のヒートポンプのランニングコストを低減することができ、また、燃焼式熱源機の作動に対するヒートポンプの電力抑制時の遅延時間を短縮することができる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明は、湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに貯える湯水を電力により加熱するヒートポンプと、給水源から供給される給湯用水を前記貯湯タンクに導入するための給水回路と、前記貯湯タンク内の湯水を給湯対象部に供給するための給湯回路と、前記給湯回路から給湯対象部に供給される湯水を加熱可能とする燃焼式熱源機と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記燃焼式熱源機を非作動として前記貯湯タンクの湯水を給湯対象部に供給する非燃焼給湯運転と、前記貯湯タンクの湯水を前記燃焼式熱源機により加熱して供給する燃焼給湯運転と、を選択的に実行する機能を有する給湯運転制御部を備え、更に、前記制御装置は、前記ヒートポンプを最大消費電力まで作動可能な通常運転と、最大消費電力より低い抑制電力以下で前記ヒートポンプを作動させる電力抑制運転を実行する機能を有する電力抑制制御部を備える給湯システムであって、前記制御装置は、前記電力抑制制御部が前記電力抑制運転を実行中であり且つ前記給湯運転制御部が前記非燃焼給湯運転を実行中に、前記燃焼給湯運転開始の指示があったとき、当該燃焼給湯運転の開始に先立って、前記電力抑制制御部に対して前記抑制電力を第1の所定量まで低下させる指示を行うように構成されていることを特徴とする。
【0015】
ヒートポンプが作動中に、燃焼給湯運転を開始するため燃焼式熱源機を作動させるときには、給湯システム全体の過剰な消費電力を抑えるために、ヒートポンプの抑制電力を第1の所定量まで低下させる。本発明によれば、制御装置により、燃焼給湯運転の開始に先立って電力抑制制御部の抑制電力を第1の所定量まで低下させる指示を行う。こうすることで、ヒートポンプの消費電力が低下してから燃焼式熱源機を作動させることができる。従って、燃焼給湯運転開始の指示が出る前の抑制電力を比較的高く設定しておくことができるので燃焼式熱源機の作動頻度を抑え、しかも、燃焼給湯運転に先立ってヒートポンプの消費電力を抑えることができるので、ランニングコストを低減することができる給湯システムを提供することができる。
【0016】
また、本発明の給湯システムにおいて、前記貯湯タンクは、該貯湯タンク内の湯水の温度を検出するタンク温度センサを備え、前記制御装置は、前記電力抑制運転の実行中に前記タンク温度センサの検出温度を監視し、前記タンク温度センサの検出温度が所定温度以下となった場合に、前記電力抑制制御部に対して前記抑制電力を前記第1の所定量と異なる第2の所定量まで低下させる指示を行うように構成されていることを特徴とする。
【0017】
給湯時に貯湯タンク内の湯水が導出されると、貯湯タンク内の湯水の温度は、貯湯タンク内部の下層部の水温と上層部の水温とに差が生じる。タンク温度センサにより貯湯タンク内の湯水の温度を検出することで、貯湯タンク内の湯水の残量を把握することが可能となる。従って、貯湯タンク内の湯水の温度に基づいて、貯湯タンクにおける湯切れの時期を予測することが可能となる。そこで、制御装置は、タンク温度センサの検出温度が所定温度(湯切れではないが、湯切れに近づいた状態を示す温度)以下となったとき、第2の所定量まで低下させる指示を行う。
【0018】
第2の所定量は第1の所定量と異なる抑制電力となるが、具体的は、通常運転より小さく第1の所定量より大きい抑制電力に設定することが好ましい。これにより、貯湯タンクが湯切れするのを待たずに、抑制電力を第2の所定量まで低下させておくことができ、最も小さい抑制電力である第1の所定量まで低下するまでの遅延時間を短縮させることができる。
【0019】
また、本発明の給湯システムにおいて、前記給湯回路は、該給湯回路を流通する湯水の流量を調節する流量調節弁を備え、前記燃焼式熱源機は、前記給湯回路に介設され、前記制御装置は、前記電力抑制制御部に前記抑制電力を前記第1の所定量低下させる指示を行った後に、前記ヒートポンプの実際の消費電力が前記抑制電力から前記第1の所定量まで低下する間、前記給湯対象部に供給される湯水を前記流量調節弁により減少させるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
ヒートポンプの実際の消費電力が最も消費電力が小さい第1の所定量に低下するまでの遅延時間においては、給湯回路を流れる水は、供給熱量が不足するため捨て水(使用されない水)として流れる。この場合に、給湯回路の水流量を流量調節弁により減少させることにより、捨て水の量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態の給湯システムの全体構成を示す図。
【
図2】ヒートポンプの消費電力と電力抑制値との関係を示す説明図。
【
図3】本実施形態における制御装置による処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の給湯システム1は、加熱された湯水を貯える貯湯タンク11を備えたタンクユニット10と、貯湯タンク11内に貯える湯水を加熱するヒートポンプ23を備えたヒートポンプユニット20と、図示しない給水源から供給される給湯用水を貯湯タンク11に供給し得るように構成された給水回路30と、貯湯タンク11内の湯水を台所や浴室、洗面所等の給湯対象部(図示省略)に供給し得るように構成された給湯回路40と、給湯回路40で給湯対象部に供給される湯水を加熱し得るように構成された燃焼式熱源機50とを備えている。
【0023】
ヒートポンプ23は、蒸発器24、圧縮機25、凝縮器26、及び膨張弁27と、これらを経由させて冷媒を循環させる冷媒循環路28とを備えている。凝縮器26は、貯湯タンク11内の湯水と冷媒との熱交換を行うことで当該湯水を加熱する熱交換器としての機能を有し、貯湯タンク11と凝縮器26との間で湯水を循環させる循環路21を介して貯湯タンク11に接続されている。ヒートポンプ23は、家庭用電源から供給される電力により作動し、圧縮機25が備える図示しないモータの回転数を増減させることにより、ヒートポンプ23の消費電力を制御することができるものとなっている。
【0024】
循環路21は、貯湯タンク11からヒートポンプ23へ湯水を送る往路21aと、ヒートポンプ23から貯湯タンク11へ湯水を戻す復路21bとを備えている。往路21aは貯湯タンク11の下部に接続されており、復路21bは貯湯タンク11の上部に接続されている。循環路21における湯水の循環は、ヒートポンプユニット20(又はタンクユニット10)に搭載された図示しないポンプの作動により行われる。なお、復路21bには、逆止弁22が組付けられている。
【0025】
貯湯タンク11内の湯水は、循環路21で冷媒を循環させつつヒートポンプ23を作動させることで、凝縮器26における冷媒(圧縮機25で圧縮されて昇温した冷媒)との熱交換によって加熱される。
【0026】
給水回路30は、給水源から給湯用水が供給される上流給水路31と、上流給水路31の下流側に分岐されたタンク給水路32及びバイパス給水路33とを備えている。タンク給水路32は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11の下部に流入させるように配設され、バイパス給水路33は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11を経由させずに給湯回路40の混合弁45に流すように配設されている。
【0027】
混合弁45は、貯湯タンク11から出湯する湯水であるタンク出湯湯水に、バイパス給水路33から供給される給湯用水を混合させる部分である。
【0028】
タンク給水路32及びバイパス給水路33には、逆止弁34,35が各々組付けられている。更に、バイパス給水路33には、バイパス給水路33を通って混合弁45に流れる給湯用水の流量である給水流量を検出する流量センサ36が組付けられている。また、上流給水路31には、給水源から上流給水路31に供給された給湯用水の温度である給水温度を検出する温度センサ37が組付けられている。
【0029】
給湯回路40は、貯湯タンク11内の湯水を該貯湯タンク11の上部から混合弁45に流すように配設された第1給湯路41と、混合弁45から燃焼式熱源機50に湯水を流すように配設された第2給湯路42と、燃焼式熱源機50から流出する湯水を図示しないカラン等の給湯対象部に供給するように配設された第3給湯路43とを備えている。
【0030】
第1給湯路41には、貯湯タンク11の上部から出湯する湯水の温度であるタンク出湯温度を検出する温度センサ46と、逆止弁47と、貯湯タンク11から混合弁45に流れる湯水の流量であるタンク出湯流量を検出する流量センサ48とが組付けられている。
【0031】
温度センサ46は、第1給湯路41の上流端寄りの位置で第1給湯路41に組付けられており、貯湯タンク11内の上部のうち、第1給湯路41の上流端の接続部近辺の箇所の湯水の温度の検出用の温度センサとしての機能を持つ。
【0032】
また、第2給湯路42の上流端寄りの箇所(混合弁45の近辺箇所)には、混合弁45から燃焼式熱源機50に供給される湯水の温度である混合給湯温度を検出する温度センサ49が組付けられている。
【0033】
また、貯湯タンク11の側面(図示例では外側面)には、複数(例えば3個)の温度センサ12a,12b,12cが、上下方向に間隔を存して装着されている。これらの温度センサ12a,12b,12cは、それぞれの高さ位置近辺での貯湯タンク11内の湯水の温度の検出用の温度センサである。
【0034】
すなわち、温度センサ12aは、貯湯タンク11内の上部の湯水の温度の検出用の温度センサ、温度センサ12bは、貯湯タンク11内の上下方向中間部の湯水の温度の検出用の温度センサ、温度センサ12cは貯湯タンク11内の下部の湯水の温度の検出用の温度センサである。
【0035】
なお、温度センサ12a,12b,12cは、貯湯タンク11の内側面に装着されていてもよい。本発明におけるタンク温度センサは、本実施形態における温度センサ12aである。
【0036】
燃焼式熱源機50は、入水路51と出湯路52と熱交換器53とバーナ54とを備え、出湯路52が熱交換器53の通水路53aを介して入水路51の下流側に連接されている。そして、入水路51の上流側に第2給湯路42が連接され、出湯路52の下流側に第3給湯路43が連接されている。
【0037】
更に、入水路51と出湯路52との間には、入水路51から熱交換器53を経由させずに出湯路52に湯水を流すためのバイパス路55が熱交換器53の通水路53aと並列に接続されている。そして、入水路51とバイパス路55との接続部には、該接続部の上流側の入水路51から流入する湯水を、下流側の入水路51とバイパス路55とに分配し得るように構成された分配弁56が組付けられている。
【0038】
また、燃焼式熱源機50は、出湯路52から第3給湯路43に流れる湯水の温度である熱源機出湯温度を検出する温度センサ57を備えている。該温度センサ57は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52に組付けられている。更に、出湯路52には、流通する湯水の量を調整可能とする流量調整弁58が設けられている。
【0039】
バーナ54は、例えばガスバーナであり、図示しない燃料供給装置と送風機(ファン)とにより燃料ガスと燃焼用空気とが供給される。そして、バーナ54は、その燃焼運転により発生する燃焼熱(顕熱及び潜熱の一方又は両方)により熱交換器53を加熱し、これによって、熱交換器53の通水路53aを流れる湯水を加熱する。なお、バーナ54はガスバーナに限らず、灯油等の液体燃料を燃焼させるバーナであってもよい。
【0040】
給湯システム1は、更に、該給湯システム1の作動制御を行う機能を有する制御装置70を備えている。制御装置70は、例えば、マイコン等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。
【0041】
制御装置70は、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50のそれぞれに各別に搭載され、且つ、相互に通信を行い得る複数の電子回路ユニットの集合体として構成されていてもよく、或いは、単一構成のものであってもよい。
【0042】
制御装置70は、給湯システム1の運転操作をユーザが行うための操作部75aや表示部75bを備えるリモコン75に電気的に接続されている。リモコン75の操作部75aの操作によって、給湯対象部への給湯を行う給湯運転のオン/オフ操作、目標給湯温度の設定操作等を行うことが可能である。また、リモコン75の表示部75bでは、目標給湯温度の設定値や、給湯システム1の運転状態等を表示することが可能である。
【0043】
制御装置70は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能によって、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50の各制御対象機器の作動制御を行うように構成されている。
【0044】
制御装置70による制御対象機器には、例えば、タンクユニット10の混合弁45や、ヒートポンプ23に接続した循環路21の湯水を循環させるための図示しないポンプ等が含まれる。燃焼式熱源機50の制御装置70による制御対象機器には、バーナ54、図示しない燃料供給装置、送風機(ファン)、及び点火装置等が含まれる。
【0045】
制御装置70は、非燃焼給湯運転と燃焼給湯運転とを選択的に実行する給湯運転制御部71を機能として備えている。非燃焼給湯運転は、燃焼式熱源機50を非作動として貯湯タンク11の湯水を給湯対象部に供給する給湯運転である。燃焼給湯運転は、貯湯タンク11の湯水を燃焼式熱源機50により加熱して給湯対象部に供給する給湯運転である。
【0046】
更に、制御装置70は、ヒートポンプ23を最大消費電力となる電力で作動させる運転を通常運転としたとき、この通常運転より小さい消費電力となる抑制電力を上限としてヒートポンプ23を作動させる電力抑制運転を実行する電力抑制制御部72を機能として備えている。
【0047】
電力抑制制御部72は、予め設定された複数の(本実施形態では3つの)電力抑制値(高位電力抑制値A、中位電力抑制値B、低位電力抑制値C)を用いて電力抑制運転を実行する。電力抑制値は、何れも、ヒートポンプ23の通常運転(消費電力を抑えることを考慮しない運転)における最大消費電力より低い抑制電力である。
【0048】
電力抑制運転では、貯湯タンク11の湯水の残量や燃焼式熱源機50の作動指示に応じて各電力抑制値が選択される。各電力抑制値は、抑制された消費電力の上限値を示す値であり、電力抑制値以下の指示値でヒートポンプ23を制御することにより、ヒートポンプ23は電力抑制値以下の消費電力となるように動作する。
【0049】
本実施形態においては、
図2に示すように、高位電力抑制値Aは、ヒートポンプ23の運転中であって燃焼式熱源機50が停止しているときの電力抑制値である。低位電力抑制値Cは、高位電力抑制値Aから燃焼式熱源機50の消費電力を差し引いた電力抑制値であり、本発明における第1の所定量の抑制電力に相当する。中位電力抑制値Bは、高位電力抑制値Aと低位電力抑制値Cとの間の電力抑制値であるが、高位電力抑制値Aよりも低位電力抑制値Cに近い高さに設定されている。中位電力抑制値Bは、本発明における第2の所定量の抑制電力に相当する。
【0050】
高位電力抑制値Aにより、ヒートポンプ23の消費電力の上限が最大よりも小さく抑えられるが、他の電力抑制値B、Cよりもヒートポンプ23の消費電力は大きくなる。低位電力抑制値Cにより、ヒートポンプ23の消費電力の上限が最も小さく抑えられる。中位電力抑制値Bは、高位電力抑制値Aと低位電力抑制値Cとの間の値に設定されている。
【0051】
また、貯湯タンク11の湯切れ状態は、貯湯タンク11内の所定温度以上の湯量が所定量以下に低下した状態である。そして、貯湯タンク11の湯切れ状態であるか否かは、例えば、貯湯タンク11の側面に装着された温度センサ12aの出力に基づいて判断される。また、貯湯タンク11に湯切れが生じていないが、貯湯タンク11の湯量が湯切れに近づいたことは、温度センサ12aの出力に基づいて判断される。
【0052】
次に、以上の構成による本実施形態の給湯システム1において、本発明に係る制御装置70の作動について説明する。
【0053】
制御装置70は、貯湯タンク11の湯切れ状態が検知された場合等、所定の条件下で貯湯タンク11の湯水を加熱するようにヒートポンプユニット20を作動させる。本実施形態の場合、貯湯タンク11内の湯水の全体又はほぼ全体が予め設定された温度以上(例えば45℃以上)の温度になるようにヒートポンプユニット20の作動制御が行われる。
【0054】
また、制御装置70は、給湯対象部の図示しない給湯栓の開栓等によって、給湯対象部への通水(所定流量以上の通水)が開始されると、当該通水が停止されるまで、
図3のフローチャートに示す処理を実行する。
【0055】
この場合、給湯対象部への通水の開始や停止は、流量センサ36,48によりそれぞれ検出される流量(給水流量及びタンク出湯流量)の総和の流量により判断される。具体的には、制御装置70は、流量センサ36,48の総和の流量が、例えば、2.4リットル/分以上になったとき通水開始と判断し、1.8リットル/分以下になったとき通水停止と判断する。
【0056】
そして、
図3に示すように、給湯対象部への通水が開始されたとき、制御装置70は、STEP1において、温度センサ12aの温度が残量検出温度以下であるか否かを判断する。STEP1の段階では、制御装置70が非燃焼給湯運転を実行しており燃焼式熱源機50は作動していない。更に、制御装置70の電力抑制制御部72は、高位電力抑制値A(
図2参照)を用いてヒートポンプ23の電力抑制運転を行っている。
【0057】
そして、制御装置70は、STEP1において、温度センサ12aの温度が残量検出温度以下であればSTEP2へ進み、温度センサ12aの温度が残量検出温度を超えていればSTEP3へ進む。
【0058】
STEP2において、電力抑制制御部72は、ヒートポンプ23の電力抑制運転を、高位電力抑制値Aから中位電力抑制値B(
図2参照)に下げて実行し、STEP3へ進む。
【0059】
STEP3において、電力抑制制御部72は、制御装置70から燃焼給湯運転開始の指示(例えばバーナ54への点火指示)が出されたか否かを検出し、燃焼給湯運転開始の指示が出された場合にはSTEP4へ進み、燃焼給湯運転開始の指示が出されていない場合にはSTEP1へ戻る。
【0060】
STEP4へ進んだ電力抑制制御部72は、ヒートポンプ23の電力抑制運転を中位電力抑制値Bから低位電力抑制値C(
図2参照)に切り換えて実行する。
【0061】
ヒートポンプ23は、圧縮機25の図示しないモータの回転数を増減させることにより電力の消費量を制御するが、圧縮機25のモータは、回転数を急激に変更することができず、実際の消費電力が電力抑制値と一致するまでにタイムラグが生じる。よって、ヒートポンプ23の電力抑制運転を、高位電力抑制値Aから低位電力抑制値Cに移行させると、実際の消費電力が低位電力抑制値Cまで低下するのに比較的大きなタイムラグが生じるが、STEP4を設けて中位電力抑制値Bから低位電力抑制値Cに移行させると、実際の消費電力が低位電力抑制値Cまで低下するときのタイムラグが小さくなる。
【0062】
そして、電力抑制制御部72はSTEP5へ進み、低位電力抑制値Cにより制御されたヒートポンプ23の実際の消費電力が低位電力抑制値C以下となった場合は、STEP6へ進んで、燃焼式熱源機50を作動させることにより(バーナ54への点火動作を行って)燃焼給湯運転を開始する。
【0063】
一方、STEP5へ進んで、低位電力抑制値Cにより制御されたヒートポンプ23の実際の消費電力が低位電力抑制値Cを超えていた場合は、ヒートポンプ23の電力抑制運転を中位電力抑制値Bから低位電力抑制値C(
図2参照)に切り換えるときのタイムラグが生じていると判断され、STEP7へ進む。
【0064】
STEP5からSTEP7へ進んだ場合には、消費電力の急増を避けるために燃焼式熱源機50を作動させないが、その間、燃焼式熱源機50の出湯路52を流れる水は加熱されない状態の捨て水となる。そこで、STEP7においては、燃焼式熱源機50の出湯路52に設けた流量調整弁58を絞り、捨て水の量を減らす処理を行う。
【0065】
そして、STEP7の処理を、STEP5において低位電力抑制値Cにより制御されたヒートポンプ23の実際の消費電力が低位電力抑制値C以下となるまで継続させ、その後、STEP5からSTEP6へ進むことにより、燃焼式熱源機50が作動して燃焼給湯運転が開始される。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、ヒートポンプ23が高位電力抑制値Aで運転しているときに、給湯に伴って貯湯タンク11内の湯量が少なくなり、湯切れが近いと判断された場合には、燃焼式熱源機50の作動に先立って、中位電力抑制値Bへ電力抑制値が下げられる。
【0067】
これにより、中位電力抑制値Bから低位電力抑制値Cに移行させたときのヒートポンプ23の消費電力の下降時のタイムラグを小さく抑えることができる。加えて、ヒートポンプ23が高位電力抑制値Aで運転しているときは比較的高い消費電力であるので、燃焼式熱源機50を作動させる頻度が少ない分、ランニングコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…給湯システム、11…貯湯タンク、23…ヒートポンプ、30…給水回路、40…給湯回路、50…燃焼式熱源機、70…制御装置、71…給湯運転制御部、72…電力抑制制御部、12a…温度センサ(タンク温度センサ)、58…流量調節弁。