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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069051
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】凍結管用継手及び凍結管
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
E02D3/115
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179827
(22)【出願日】2022-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(71)【出願人】
【識別番号】596011792
【氏名又は名称】大東工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清時 健士
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 靖典
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA14
(57)【要約】
【課題】作業員の技りょうによらず液密性を確保しつつ、凍結管の施工性を向上させること。
【解決手段】凍結管用継手4は、ケーシングチューブ1内に挿入される凍結管2を構成するために、複数の凍結管本体3の端部同士を、ねじ部44によって接続する凍結管用継手4である。凍結管用継手4の最も外径が大きい部分の外径が、凍結管本体3の外径以下となるように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングチューブ内に挿入される凍結管を構成するために、複数の凍結管本体の端部同士を、ねじ部によって接続する凍結管用継手であって、
前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている、凍結管用継手。
【請求項2】
前記凍結管本体の一方の端部に接続される外筒体と、
前記凍結管本体の他方の端部に接続され、前記外筒体内に嵌め込まれて前記ねじ部で接続されることで前記凍結管本体の端部同士を接続する内筒体と、
を備え、
前記外筒体が前記凍結管用継手における最も外径が大きい部分を有する、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項3】
前記凍結管本体の中心軸方向において、前記ねじ部に並ぶようにして配置された液密部を更に備える、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項4】
前記最も外径が大きい部分の外面は、前記凍結管本体の径方向において、前記凍結管本体の肉厚内に位置している、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項5】
前記外筒体は、
前記凍結管本体の一方の端部に接続される内嵌め部と、
前記内嵌め部から中心軸に沿って延びて前記凍結管本体の対向する端部の間に位置し、前記内筒体の外周面と対向する被接続部と、
を有し、
前記被接続部が、前記外筒体のうちの最も外径が大きい部分を含む、
請求項2に記載の凍結管用継手。
【請求項6】
中心軸が一直線上に配置された複数の凍結管本体と、
前記複数の凍結管本体の隣り合う端部同士をねじ部によって接続する凍結管用継手と、
を備え、
前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている、
凍結管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結管用継手及び凍結管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の凍結管が開示されている。特許文献1に記載の凍結管は、掘削用ケーシングの内部に挿入される。掘削用ケーシングの下端には、ビットが設けられており、地中に建て込まれている。凍結管は、ケーシング内に挿入された状態で、凍結管の内部をブラインが循環することで、ケーシングに冷熱を伝導し、ケーシングの周囲の土を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-224521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の凍結管は、長尺であるため、1つの凍結管を用いて、ケーシング内に挿入することは難しい。このため、実際には、現場での作業によって、複数の凍結管を溶接し、中心軸方向に継ぎながら、ケーシング内に挿入してゆく作業が行われる。
【0005】
しかし、複数の凍結管を現場での作業で溶接する場合、作業性が悪いだけでなく、作業者の技りょうによっては溶接不良が生じ得るため、液密性が保てない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作業者の技りょうに関係なく液密性を確保しつつ、凍結管の施工性を向上させることができる凍結管用継手及び凍結管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の凍結管用継手は、ケーシングチューブ内に挿入される凍結管を構成するために、複数の凍結管本体の端部同士を、ねじ部によって接続する凍結管用継手であって、前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている。
【0008】
本発明に係る一態様の凍結管は、中心軸が一直線上に配置された複数の凍結管本体と、前記複数の凍結管本体の隣り合う端部同士を接続する凍結管用継手と、を備え、前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る上記態様の凍結管用継手及び凍結管は、作業者の技りょうに関係なく液密性を確保しつつ、凍結管の施工性を向上させることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る凍結管をケーシングチューブ内に挿入した使用態様の模式断面図である。
図2図1のA部分の拡大図である。
図3】変形例1に係る凍結管継手の模式断面図である。
図4】変形例2に係る凍結管継手の模式断面図である。
図5】変形例3に係る凍結管継手の模式断面図である。
図6】変形例4に係る凍結管継手の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本実施形態に係る凍結管用継手4及び凍結管2について、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態に係る凍結管用継手4は、図1に示すように、地盤凍結工法に用いられる凍結管2において、中心軸方向に複数のパイプ(凍結管本体3)を接続するために用いられる継手である。地盤凍結工法は、地中の工事を行う際に、工事予定箇所の周囲の土を凍結させて、工事予定箇所を保護するための凍土壁(「遮断壁」又は「耐力壁」という場合がある)を作ったうえで、工事を行う工法である。地盤凍結工法としては、ブライン方式と、低温液化ガス方式とが挙げられる。
【0013】
ここで、ブライン方式は、地上に設置された冷凍機と地中に挿入された凍結管2との間で不凍液(ブライン)を循環させることで、地盤を冷却する方式である。ブラインは、冷凍機によって、-30℃程度に冷却される。低温液化ガス方式は、液体窒素を凍結管2に流し込み、液体窒素の気化熱で地盤を冷却する方式である。気化した窒素ガスは大気中に放出される。本実施形態では、地盤凍結工法の一例として、ブライン方式を挙げて説明する。
【0014】
凍結管2は、図1に示すように、ケーシングチューブ1内に挿入されて使用される。ケーシングチューブ1は、穴壁の崩落防止のために、地中に建て込まれる鋼管である。ケーシングチューブ1は、円筒状に形成されており、下端にはビット(不図示)が設けられる。ケーシングチューブ1は、中心軸が地面Gに対して交差するようにして地中に埋め込まれる。本実施形態では、ケーシングチューブ1は、地面Gに対して直交しているが、本発明では、地面Gに対して傾斜していてもよい。また、ケーシングチューブ1は、水平な地面Gに対して建て込まれてもよいし、水平面に対して傾斜した斜面に対して建て込まれてもよい。ケーシングチューブ1の内径としては、特に制限はないが、例えば、85mm以上145mm以下が挙げられる。
【0015】
(凍結管2)
凍結管2は、ケーシングチューブ1内に挿入される。凍結管2は、凍結管2の中心軸に沿って複数のパイプ(凍結管本体3)を継ぐことで構成されている。凍結管2の内部には、凍結管2に供給管6が挿入されている。供給管6の先端部(下端部)は、凍結管2の先端部材5の上面から離れている。なお、供給管6の先端部は、供給管6の中心軸に対して傾斜していれば、先端部材5の上面に一部が接していてもよい。なお、本実施形態では、供給管6と冷凍管2とは同心状に配置されるが、同心状でなくてもよく、例えば、供給管6は、冷凍管2の中心軸から外れた位置にあってもよい。また、供給管6の断面形状は、円形でなくてもよく、例えば、楕円形、角形形状等であってもよい。
【0016】
冷凍機に接続されたブラインヘッダー(不図示)から供給管6に供給されたブラインは、供給管6の先端開口から出た後、供給管6と凍結管2との間を通って上昇し、ブラインヘッダーに入り、冷凍機に戻る。これにより、冷凍機と凍結管2との間でブラインが循環し、凍結管2によって、凍結管2の周囲の土を冷却することができる。
【0017】
凍結管2は、図1に示すように、複数の凍結管本体3と、隣り合う凍結管本体3の端部同士を接続する1つ又は複数の凍結管用継手4と、中心軸方向の最も下側の凍結管本体3の端部に取り付けられた先端部材5と、を備える。
【0018】
(凍結管本体3)
凍結管本体3は、凍結管2の主体を構成するパイプである。複数の凍結管本体3は、ケーシングチューブ1の中心軸に沿って配置される。各凍結管本体3の外径は、ケーシングチューブ1の内径に対して、75%以上であることが好ましく、より好ましくは、80%以上である。一方、各凍結管本体3の外形の上限は、ケーシングチューブ1の内径に対して、100%未満であればよいが、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下である。凍結管本体3の外径の具体例は、76mm以上115mm以下が例示できる。
【0019】
凍結管本体3の材料としては、特に制限はなく、例えば、配管用炭素鋼管、ステンレス鋼管、合金鋼鋼管等が挙げられる。各凍結管本体3の中心軸方向の両端面は、開口面である。冷凍管本体3の下側の開口面は、先端部材5によって閉じられる。
【0020】
(先端部材5)
先端部材5は、中心軸方向の最も下側の凍結管本体3の端部に取り付けられる。先端部材5の上側の端部は、凍結管本体3の端部に嵌め込まれ、先端部材5の下側の端部は、下端ほど小径となった尖鋭状に形成されている。先鋭状の先端部材5が設けられることで、凍結管2をケーシングチューブ1内に挿入しやすい。なお、先端部材5は、必ずしも先鋭状でなくてもよい。
【0021】
(凍結管用継手4)
凍結管用継手4は、隣り合う凍結管本体3の端部同士を接続し、ケーシングチューブ1の中心軸に沿って延びた凍結管2を構成することができる。凍結管用継手4は、図2に示すように、外筒体41と、内筒体42と、液密部と、を備える。本実施形態では、液密部として、複数のシール材43が用いられるが、後述の変形例で示すように、金属同士の圧接により止水をする構造であってもよい。
【0022】
(外筒体41)
外筒体41は、凍結管本体3の一方の端部に接続される。本実施形態では、外筒体41は、隣り合う凍結管本体3のうちの下側の凍結管本体3に接続されているが、上側の凍結管本体3に接続されてもよい。外筒体41は筒状に形成されている。外筒体41は、内嵌め部411と、被接続部412と、を備える。内嵌め部411と被接続部412とは一体に形成されている。
【0023】
内嵌め部411は、凍結管本体3の端部に嵌め込まれ、当該端部に固定される。内嵌め部411は、凍結管本体3の端部に対して、内側に嵌め込まれた状態で、溶接により固定されている。内嵌め部411の外径は、凍結管本体3の内径と略同じであることが好ましい。凍結管本体3と内嵌め部411との接続は、工場出荷時又は現場での作業で行われるが、予め工場出荷時に実施しておくことが好ましい。
【0024】
被接続部412は、内筒体42が嵌め込まれる部分であり、その内周面の少なくとも一部が内筒体42の外周面と対向する。被接続部412は、内嵌め部411から、凍結管2の中心軸に沿って延びており、凍結管2の中心軸方向に隣り合う凍結管本体3の端部間に位置している。
【0025】
被接続部412は、外筒体41のうちの最も外径が大きい部分である。被接続部412は、内嵌め部411の外周面よりも径方向の外側に突き出している。すなわち、被接続部412の外径は、内嵌め部411の外径よりも大きい。一方、被接続部412の外径は、凍結管本体3の外径以下となるように形成されている。被接続部412の外径は、凍結管本体3の径方向において、凍結管本体3の肉厚内に位置していることが好ましく、より好ましくは、被接続部412の外径は、凍結管本体3の外径と同じである。
【0026】
本明細書において、「被接続部412の外径が凍結管本体3の外径と同じ」とは、被接続部412の外径に対する±5%以内の誤差を含む。すなわち、被接続部412の外面と凍結管本体3の外面とが面一(同一面上)である場合だけでなく、外径の±5%以内であれば、外面同士が径方向にずれている場合も含む。同様に「被接続部412の外径が凍結管本体3の外径以下」とは、被接続部412の外径が、凍結管本体3の外径の同等以下である場合を意味する。「同等」とは、技術的に同じとみなせる範囲を意味する。したがって、例えば、被接続部412の外径が、凍結管本体3の外径の+5%以内で大きい場合でも「被接続部412の外径が凍結管本体3の外径以下」の範疇であることとする。
【0027】
被接続部412は、内筒体42にねじ込まれるねじ部44を有する。被接続部412に形成されたねじ部44は、雌ねじ441であり、被接続部412の開口内周面に形成されている。雌ねじ441は、被接続部412において、シール材43よりも開口端側に位置している。より詳細には、雌ねじ441は、被接続部412の開口端部の内周面に形成されている。ねじ部44としては、特に制限はなく、例えば、三角ねじ、台形ねじ、角ねじ等が挙げられる。
【0028】
(内筒体42)
内筒体42は、隣り合う凍結管本体3のうちの外筒体41が取り付けられた凍結管本体3とは反対側の凍結管本体3に接続される。内筒体42は筒状に形成されている。内筒体42は、内嵌め部421と、接続部422と、を備える。内嵌め部421と接続部422とは一体に形成されている。
【0029】
内嵌め部421は、凍結管本体3の端部に嵌め込まれ、当該端部に固定される。内嵌め部421は、凍結管本体3の端部に対して、内側に嵌め込まれた状態で、溶接により固定されている。内嵌め部421の外径は、凍結管本体3の内径と略同じであることが好ましい。
【0030】
内筒体42の内周面の少なくとも一部は、凍結管2の中心軸方向の上側の端部から下側にいくに従って小径となるようにテーパ状に形成されている。内筒体42の内周面に含まれるテーパ状の面を「テーパ面」という。テーパ面の下端の内径としては、例えば、40mm以上であり、より具体的には、45mm以上が例示される。テーパ面間のなす角度としては、例えば、20°以上45°以下であり、より具体的には、25°以上40°以下である。ただし、これらは一例に過ぎない。このようにすることで、ブラインの流れが滞ることを抑制することができるうえに、凍結管2に供給管6を挿入する際にスムーズに挿入することができる。
【0031】
接続部422は、外筒体41の被接続部412に対して、取外し可能に接続される。接続部422は、内嵌め部421から、凍結管本体3の中心軸に沿って延びており、中心軸方向に隣り合う凍結管本体3の端部間に位置する。接続部422は、被接続部412に対して接続されると、被接続部412に嵌め込まれ、被接続部412に対して径方向の内側に同心円状に重なる。
【0032】
接続部422の外周面の基端部には、ねじ部44が形成されている。接続部422のねじ部44は、被接続部412の雌ねじ441にねじ込まれる雄ねじ442である。被接続部412のねじ部44(雌ねじ441)に対し、接続部422のねじ部44(雄ねじ442)がねじ込まれることで、外筒体41と内筒体42とは互いに接合される。
【0033】
接続部422の外周面には、シール材43が取り付けられる複数の凹部423が形成されている。凹部423は、接続部422の中心軸を中心とした円環状に形成されている、複数の凹部423は、接続部422の中心軸方向に離れている。
【0034】
(シール材43)
シール材43は、外筒体41の内周面と内筒体42の外周面との間に配置されている。本実施形態に係るシール材43は、内筒体42と凍結管本体3との間ではなく、外筒体41の内周面と内筒体42の外周面との間に配置されているため、加工精度の高い面をシール材43の対向面とすることができ、液密性能(止水性能)を発揮させやすくできる。
【0035】
シール材43は、外筒体41と内筒体42との間において、凍結管2の中心軸回りの全長にわたって形成されている。すなわち、シール材43はリング状である。シール材43としては、例えば、Oリング、Xリング(ツイスターリング)、断面四角形状の角リング、断面ドーナツ状の中空リング等が挙げられる。シール材43の材料としては、例えば、エラストマ、軟質樹脂、ウレタン等、耐寒性のあるゴムが挙げられる。エラストマとしては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム(熱硬化性エラストマ)、天然ゴム等が挙げられる。本実施形態に係るシール材43は、エラストマからなるOリングである。
【0036】
複数のシール材43は、凍結管2の中心軸に沿って間隔をおいて配置されている。隣り合うシール材43の間の間隔L1は、シール材43同士が互いに干渉しないような距離であればよい。シール材43は、複数あるほうが好ましいが、1つでもよい。ただし、シール材43が複数あることで、施工の際、万が一、1つのシール材43が損傷しても、液密性が損なわれることを防ぐことができる。
【0037】
(効果)
本実施形態に係る凍結管用継手4は、外筒体41のうちの最も外径が大きい部分の外径が、凍結管本体3の外径以下となるように形成されているため、凍結管本体3の外径を、ケーシングチューブ1の内径にできる限り近いサイズの凍結管本体3を採用することができる。すなわち、本実施形態に係る凍結管用継手4を使用した凍結管2によれば、凍結管用継手4による表面積(冷却面積)の減少を抑制できるため、冷凍能力を損なうことを軽減できる。また、凍結管用継手4を用いることで、凍結管本体3を溶接により継ぐ従来の凍結管2に比べて、現場での作業を減らすことができるし、作業者の技りょうに関わらず、ブラインの漏洩等の不良リスクなしに、凍結管本体3を接続することができる。この結果、本実施形態に係る凍結管用継手4によれば、作業員の技りょうに左右されずに液密性を確保しつつ、凍結管2の施工性を向上させることができる。
【0038】
また、凍結管用継手4は、ねじ部44に並ぶように配置された液密部を備えるため、より高い液密性能を得ることができる。
【0039】
また、外筒体41及び内筒体42は、互いに接合するねじ部44を有しているため、外筒体41の中心軸と内筒体42の中心軸を一致させやすい。これにより、外筒体41の内周面と内筒体42の外周面との間の間隔を均一にしながら接合することができるため、シール材43を周方向に均等に圧縮させることができる。
【0040】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0041】
(変形例1)
上記実施形態では、外筒体41は、内嵌め部411と被接続部412とを備えたが、図3に示すように、内嵌め部411はなくてもよい。すなわち、外筒体41は、凍結管本体3に対して、突合せ溶接により接続されてもよい。なお、外筒体41の溶接は、作業現場に搬入される前(例えば、製造現場)で行われることが好ましい。
【0042】
(変形例2)
上記実施形態では、シール材43は、中心軸方向において、内筒体42のねじ部44(雄ねじ442)よりも開口面側に位置したが、図4に示すように、内筒体42において、ねじ部44よりも基端部側に位置するように配置されてもよい。すなわち、液密部は、ねじ部44に対して並ぶように設けられれば、中心軸方向のいずれの側に設けられてもよい。
【0043】
(変形例3)
上記実施形態に係る凍結管用継手4では、外筒体41と内筒体42とが、ねじ部44によって接続されることで、複数の凍結管本体3の端部同士を接続したが、図5に示すように、凍結管用継手4と凍結管本体3とを、直接、ねじ部44によって接続してもよい。この場合、各凍結管本体3の内周面には、雌ねじ441と、シール材対向面31とが形成される。シール材対向面31は、シール材に接触することで液密性を発揮させる面であり、表面粗さが小さくなるように、表面処理がなされている。
【0044】
凍結管用継手4において、最も外径が大きい部分は、一対の凍結管本体3の間に配置される。この凍結管用継手4の最も外径が大きい部分の外周面には、少なくとも一対の平行な面が形成されることが好ましい。このようにすることで、スパナ等の工具によって当該外周面を保持でき、冷凍管用継手4を、中心軸を中心にして回転させることができる。凍結管用継手4は、中心軸方向の両側の各々に、雄ねじ442と、液密部(一対のシール材43)とを有している。シール材43は、シール材対向面31によって潰されることで、液密性を発揮することができる。
【0045】
(変形例4)
上記実施形態では、液密部が、複数のシール材43を備えたが、例えば、図6に示すように、当接面711,721同士の接触により、液密性を確保してもよい。図6に示すように、凍結管用継手4は、凍結管本体3に接続される第1接続部71と、第1接続部71に回転自在に取り付けられた袋ナット73と、袋ナット73によってねじ込まれることで第1接続部71に接続される第2接続部72と、を備える。
【0046】
袋ナット73は、内周面に雌ねじ441が形成されている。また、第2接続部72は、先端部の外周面に雄ねじ442が形成されている。第2接続部72の先端面の外角部は、中心軸に対してテーパ状に傾斜している。第1接続部71の先端面の内角部は、中心軸に対してテーパ状に傾斜している。袋ナット73の雌ねじ441が第2接続部72の雄ねじ442にねじ込まれることによって、第1接続部71と第2接続部72とが接続されると、当接面711,721同士が圧接する。このようにすることで、第1接続部71と第2接続部72との間からの漏れが防がれる。この態様では、凍結管用継手4における最も外径が大きい部分は、袋ナット73に含まれる。
【0047】
第1接続部71、袋ナット73及び第2接続部72は、金属によって構成されるが、例えば、合成樹脂、セラミック、カーボン等で構成されてもよい。また、第2接続部72の当接面721は、外角部に形成されたテーパ面であるが、例えば、内角部に形成されたテーパ面であってもよい。この場合、第1接続部72の当接面711は、外角部に形成されたテーパ面となる。また、凍結管用継手4における最も外径が大きい部分は、袋ナット73に限らず、第1接続部72又は/及び第2接続部71に含まれてもよいし、袋ナット73、第1接続部72及び第2接続部71の全てに含まれてもよい。
【0048】
(その他の変形例)
上記実施形態に係る凍結管用継手4は、内筒体42の外周面に形成された凹部423に、シール材43が配置されたが、本発明では、凹部423は、外筒体41の内周面に形成されてもよい。また、シール材43の配置箇所は、凹部423でなくてもよく、例えば、接着により外筒体41の内面又は内筒体42の外面に保持されてもよい。
【0049】
凍結管用継手4の材料としては、凍結管本体3と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、地面Gに対してケーシングチューブ1を建て込む態様について説明したが、例えば、地中のトンネルの内壁からケーシングチューブを建て込み、当該ケーシングチューブに挿入する凍結管2に対しても、本発明に係る凍結管用継手4及び凍結管2を適用可能である。
【0051】
上記実施形態では、凍結管2を挿入した後、ケーシングチューブ1を抜くことなく凍結工法を実施したが、凍結管挿入後、ケーシングチューブ1を抜いて、直接、地面を冷却することも可能である。その際、ねじ部44の形状と厚みを調整し、ねじ部44の強度を高くすることで、凍結管2の上部を引き上げることで、凍結管2を地中から引き抜くこともできる。
【0052】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0053】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0054】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る凍結管用継手4は、ケーシングチューブ1内に挿入される凍結管2を構成するために、複数の凍結管本体3の端部同士をねじ部44によって接続する凍結管用継手4である。凍結管用継手4の最も外径が大きい部分の外径が、凍結管本体3の外径以下となるように形成されている。
【0055】
この態様によれば、凍結管本体3の外径として、ケーシングチューブ1の内径にできる限り近いサイズの凍結管本体3を採用することができる。また、凍結管用継手4により凍結管本体3を接続するため、施工者の技りょうに関わらず、液密性を保ったまま凍結管本体3を接続することができる。すなわち、作業者の技りょうに関係なく液密性を確保しつつ、凍結管2の施工性を向上させることができる。
また、ねじ部44により接続するため、凍結管本体3と凍結管用継手4との中心軸を一致させやすい。この結果、凍結管本体3と凍結管用継手4とが接続した状態の液密性を高めることができる。
【0056】
第2の態様に係る凍結管用継手4では、第1の態様において、凍結管本体3の一方の端部に接続される外筒体41と、凍結管本体3の他方の端部に接続され、外筒体41内に嵌め込まれてねじ部44で接続されることで凍結管本体3の端部同士を接続する内筒体42と、を備える。外筒体41は、凍結管用継手4の最も外径が大きい部分を有する。この態様によれば、外筒体41と内筒体42とを有する凍結管用継手4を用いて、作業者の技りょうに関係なく液密性を確保しつつ、凍結管2の施工性を向上させることができる。
【0057】
第3の態様に係る凍結管用継手4では、第1の態様において、凍結管本体3の中心軸方向において、ねじ部44に並ぶようにして配置された液密部を更に備える。この態様によれば、より高い液密性を得ることができる。
【0058】
第4の態様に係る凍結管用継手4では、第1~第3のいずれか1つの態様において、最も外径が大きい部分の外面は、凍結管本体3の径方向において、凍結管本体3の肉厚内に位置している。この態様によれば、凍結管用継手4の内径を可能な限り大きくすることができ、凍結管2内を流れる流体(例えば、ブライン)の流量が損なわれるのを抑制できる。
【0059】
第5の態様に係る凍結管用継手4では、第1~第4のいずれか1つの態様において、外筒体41は、凍結管本体3の一方の端部に接続される内嵌め部411と、内嵌め部411から中心軸に沿って延びて凍結管本体3の対向する端部の間に位置し、内筒体42の外周面と対向する被接続部412と、を有する。被接続部412が、外筒体41のうちの最も外径が大きい部分を含む。この態様によれば、凍結管本体3に対して外筒体41を内嵌め部411で接続しながらも、内筒体42に対して接続する部分の強度が低下するのを抑制できる。
【0060】
第6の態様に係る凍結管2は、中心軸が一直線上に配置された複数の凍結管本体3と、複数の凍結管本体3の隣り合う端部同士をねじ部によって接続する凍結管用継手4と、を備える。凍結管用継手4の最も外径が大きい部分の外径が、凍結管本体3の外径以下となるように形成されている。
【0061】
この態様によれば、作業者の技りょうに関係なく液密性を確保しつつ、凍結管2の施工性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ケーシングチューブ
2 凍結管
3 凍結管本体
4 凍結管用継手
41 外筒体
411 内嵌め部
412 被接続部
42 内筒体
421 内嵌め部
422 接続部
43 シール材(液密部)
44 ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングチューブ内に挿入される凍結管を構成するために、複数の凍結管本体の端部同士を、ねじ部によって接続する凍結管用継手であって、
前記凍結管本体の一方の端部に接続される外筒体と、
前記凍結管本体の他方の端部に接続され、前記外筒体内に嵌め込まれて前記ねじ部で接続されることで前記凍結管本体の端部同士を接続する内筒体と、
を備え、
前記外筒体が前記凍結管用継手における最も外径が大きい部分を有し、
前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている、凍結管用継手。
【請求項2】
前記凍結管本体の中心軸方向において、前記ねじ部に並ぶようにして配置された液密部を更に備える、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項3】
前記最も外径が大きい部分の外面は、前記凍結管本体の径方向において、前記凍結管本体の肉厚内に位置している、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項4】
前記外筒体は、
前記凍結管本体の一方の端部に接続される内嵌め部と、
前記内嵌め部から中心軸に沿って延びて前記凍結管本体の対向する端部の間に位置し、前記内筒体の外周面と対向する被接続部と、
を有し、
前記被接続部が、前記外筒体のうちの最も外径が大きい部分を含む、
請求項1に記載の凍結管用継手。
【請求項5】
中心軸が一直線上に配置された複数の凍結管本体と、
前記複数の凍結管本体の隣り合う端部同士をねじ部によって接続する凍結管用継手と、を備え、
前記凍結管用継手は、
前記凍結管本体の一方の端部に接続される外筒体と、
前記凍結管本体の他方の端部に接続され、前記外筒体内に嵌め込まれて前記ねじ部で接続されることで前記凍結管本体の端部同士を接続する内筒体と、
を備え、
前記外筒体が前記凍結管用継手における最も外径が大きい部分を有し、
前記凍結管用継手の最も外径が大きい部分の外径が、前記凍結管本体の外径以下となるように形成されている、凍結管。