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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069066
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】半導体装置及びテスト方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20240514BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240514BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G05F1/56 310Q
H01L27/04 H
H01L27/04 T
G01R31/28 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179850
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーファン
【テーマコード(参考)】
2G132
5F038
5H430
【Fターム(参考)】
2G132AA12
2G132AF02
2G132AK07
5F038BH02
5F038BH19
5F038DT04
5F038DT20
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430FF04
5H430FF13
5H430HH03
(57)【要約】
【目的】半導体ICチップ内の配置位置に拘わらず、負帰還増幅回路の発振を抑えることが可能な半導体装置及びテスト方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、第1及び第2のパッドと、入力電圧と帰還電圧との差分に対応した電流を第1の配線を介して第1のパッドに送出することで容量性の負荷に供給する出力電圧を生成する帰還増幅回路と、第2のパッドで受けた電圧を第1の配線とは非接続の第2の配線を介して受け、第2の配線を介して受けた電圧を分圧した電圧を帰還電圧として生成する帰還抵抗と、が形成されている半導体ICチップを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のパッドと、
入力電圧と帰還電圧との差分に対応した電流を第1の配線を介して前記第1のパッドに送出することで容量性の負荷に供給する出力電圧を生成する帰還増幅回路と、
前記第2のパッドで受けた電圧を、前記第1の配線とは非接続の第2の配線を介して受け、前記第2の配線を介して受けた電圧を分圧した電圧を前記帰還電圧として生成する帰還抵抗と、が形成されている半導体ICチップを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体ICチップを収容するパッケージを含み、
前記パッケージは、
容量性の負荷の一端を外部接続する為の第1の外部端子と
第2の外部端子と、
前記第1のパッドと前記第1の外部端子とを接続する第1のボンディングワイヤと、
前記第2のパッドと前記第2の外部端子とを接続する第2のボンディングワイヤと、
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子とを短絡する金属配線と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記帰還抵抗は、前記第2の配線に一端が接続されている第1の抵抗、前記第1の抵抗の他端に一端が接続されている第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗同士の接続点に生じている電圧を前記帰還電圧として生成し、
前記半導体ICチップは、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗に直列に接続されている電圧補償用抵抗を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電圧補償用抵抗は、
dR2=R2・Ri2/R1
dR2:前記電圧補償用抵抗の抵抗値
R1:前記第1の抵抗の抵抗値
R2:前記第2の抵抗の抵抗値
Ri2:前記第2の配線の配線抵抗
にて表される抵抗値を有する抵抗であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体ICチップは、前記第1のパッドに一端が接続されており前記第2のパッドに他端が接続されているパッド間抵抗を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体ICチップを収容するパッケージを含み、
前記パッケージは、
容量性の負荷の一端を外部接続する為の第1の外部端子と
前記第1のパッドと前記第1の外部端子とを接続する第1のボンディングワイヤと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記帰還抵抗は、前記第2の配線に一端が接続されている第1の抵抗、及び前記第1の抵抗の他端に一端が接続されている第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗同士の接続点に生じている電圧を前記帰還電圧として生成し、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗各々を、
R2t=[1+(Ri2+2・Rp)/Ra]・R2b
R1t=Ra-R2t
Ra=R1b+R2b=R1t+R2t
R1b:トリミング前の前記第1の抵抗の抵抗値
R1t:トリミング後の前記第1の抵抗の抵抗値
R2b:トリミング前の前記第2の抵抗の抵抗値
R2t:トリミング後の前記第2の抵抗の抵抗値
Ri2:前記第2の配線の配線抵抗
Rp:前記半導体ICチップのテスト時に前記第1のパッドに当接させ るプローブ針の寄生抵抗
にて表される抵抗値になるようにトリミングすることで前記出力電圧を調整することを特徴とする請求項1又は5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体ICチップは、オンオフ制御信号を自身のゲートで受け、前記オンオフ制御信号に応じてオン状態に設定された場合には前記第1のパッド及び前記第2のパッド間を自身のオン抵抗を介して接続する一方、前記オンオフ制御信号に応じてオフ状態に設定された場合には前記第1のパッド及び前記第2のパッド間の電気的接続を遮断するトランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体ICチップは、
電源電圧を一端で受けるプルアップ抵抗と、前記プルアップ抵抗の他端が自身の一端に接続されており自身の他端に接地電圧が印加されているヒューズ素子と、を含み、前記プルアップ抵抗の一端に生じた電圧を有する信号を前記オンオフ制御信号として前記トランジスタのゲートに供給する制御回路を有することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記帰還抵抗は、前記第2の配線に一端が接続されている第1の抵抗、及び前記第1の抵抗の他端に一端が接続されている第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗同士の接続点に生じている電圧を前記帰還電圧として生成し、
前記半導体ICチップは、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗に直列に接続されており、自身の抵抗値が抵抗指定データによって指定された抵抗値に設定される可変抵抗と、
夫々が異なる抵抗値を指定する第1~第N(Nは2以上の整数)のデータ片が各アドレスに対応付けして予め記憶されており、1の前記アドレスを受けた場合に前記第1~第Nのデータ片のうちから前記1の前記アドレスに対応したデータ片を読み出し、これを前記抵抗指定データとして前記可変抵抗に供給するメモリと、を有することを特徴とする請求項1、5又は8のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体ICチップを第1及び第2のプローブ針を有するテスタでテストするテスト方法であって、
前記第1及び第2のプローブ針は、テスト用の容量性の負荷の一端に共通に接続されており、
前記第1のプローブ針の針先端を請求項1に記載の前記半導体ICチップの前記第1のパッドに当接させると共に、前記第2のプローブ針の針先端を請求項1に記載の前記半導体ICチップの前記第2のパッドに当接させた状態でテストを行うことを特徴とするテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特に、外部接続されている負荷に電圧を供給する回路が形成されている半導体装置及びテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置として、電圧値一定の電圧を生成しこれを出力電圧として出力する定電圧回路を含むものが製品化されている。
【0003】
また、当該定電圧回路として、基準電圧を自身の非反転入力端で受け、出力電圧を抵抗で分圧した帰還電圧を非反転入力端で受ける差動増幅器と、この差動増幅器の出力に応じた電流を上記抵抗に供給することで出力電圧を生成するトランジスタと、を含むものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この定電圧回路は、基準電圧と自身の出力電圧との差分に対応した電流を出力することで、当該出力電圧の電圧値が基準電圧と等しくなるように動作する負帰還増幅回路であり、発振を防止する位相補償回路が内蔵されている。
【0004】
このような負帰還増幅回路に含まれる位相補償回路は、当該負帰還増幅回路に要求される利得及び出力電流や、接続される負荷の特性等を考慮して、発振を防ぐための位相マージンを確保するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-13726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような負帰還増幅回路を他の回路群と共に1つの半導体ICチップに形成すると、当該負帰還増幅回路を半導体ICチップ内に配置する位置によっては発振してしまう場合があった。
【0007】
よって、発振が生じない位置に負帰還増幅回路を配置する配慮が必要になる。更に、これにより他の回路群を配置する位置の自由度が低くなるので、半導体ICチップ内にデッドスペースが生じる可能性が高くなる。したがって、チップサイズの大型化を招くおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、半導体ICチップ内の配置位置に拘わらず、負帰還増幅回路の発振を抑えることが可能な半導体装置及びテスト方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、第1及び第2のパッドと、入力電圧と帰還電圧との差分に対応した電流を第1の配線を介して前記第1のパッドに送出することで容量性の負荷に供給する出力電圧を生成する帰還増幅回路と、前記第2のパッドで受けた電圧を、前記第1の配線とは非接続の第2の配線を介して受け、前記第2の配線を介して受けた電圧を分圧した電圧を前記帰還電圧として生成する帰還抵抗と、が形成されている半導体ICチップを有する。
【0010】
本発明に係るテスト方法は、上記半導体ICチップを第1及び第2のプローブ針を有するテスタでテストするテスト方法であって、前記第1及び第2のプローブ針は、テスト用の容量性の負荷の一端に共通に接続されており、前記第1のプローブ針の針先端を請求項1に記載の前記半導体ICチップの前記第1のパッドに当接させると共に、前記第2のプローブ針の針先端を請求項1に記載の前記半導体ICチップの前記第2のパッドに当接させた状態でテストを行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負帰還増幅回路の半導体ICチップ内での配置位置に拘わらず当該負帰還増幅回路の発振を抑えることができるので、デッドスペースが生じないように負帰還増幅回路及び他の回路群を半導体ICチップ内に配置することが可能となり、チップサイズの小型化が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施例としての半導体装置100の構成を示す図である。
図2】従来のレギュレータ回路、半導体ICチップのパッド電極、パッケージの外部端子及び容量性の負荷間を接続する各配線の配線抵抗を抵抗器の記号で表す等価回路図である。
図3】半導体ICチップ内においてパッド電極の近傍の領域にレギュレータ回路が配置されている場合のレギュレータ回路の周波数特性の一例を示すボーデ線図である。
図4】レギュレータ回路の半導体ICチップ内での配置位置を概略的に表すレイアウト図である。
図5】半導体ICチップ内においてパッド電極から離間した領域にレギュレータ回路が配置されている場合のレギュレータ回路の周波数特性の一例を示すボーデ線図である。
図6図1に示すレギュレータ回路10、半導体ICチップ20、パッケージ30及び負荷CL間を接続する各配線の配線抵抗を抵抗器の記号で表す等価回路図である。
図7】半導体ICチップ20をテストする際のテストシステムの構成を示す図である。
図8】第2の実施例としての半導体装置100Aの構成を示す図である。
図9】第3の実施例としての半導体装置100Bの構成を示す図である。
図10】半導体ICチップ20Aをテストする際のテストシステムの構成を示す図である。
図11図10に示すテストシステムにおいて、レギュレータ回路10、半導体ICチップ20A、パッケージ30及び負荷CLq間を接続する各配線の配線抵抗を抵抗器の記号で表す等価回路図である。
図12】第4の実施例としての半導体装置100Cの構成を示す図である。
図13】半導体ICチップ20Bをテストする際のテストシステムの構成を示す図である。
図14】第5の実施例としての半導体装置100Dの構成を示す図である。
図15】メモリMEの記憶内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は、本発明に係る第1の実施例としての半導体装置100の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、半導体装置100は、レギュレータ回路10及びその他の回路群(図示せず)が形成されている半導体ICチップ20と、当該半導体ICチップ20を収容するパッケージ30を含む。
【0016】
レギュレータ回路10は、所定の基準電圧に対応した電圧値を有する定電圧を生成し、これをパッケージ30の外部端子T1(T2)及びTgに外部接続される容量性の負荷CLに供給する。
【0017】
レギュレータ回路10は、差動増幅器OP、PチャネルMOS型の出力トランジスタQ1、帰還抵抗R1及びR2を含む負帰還形増幅回路である。
【0018】
差動増幅器OPは、帰還抵抗R1及びR2で生成された帰還電圧FBを自身の反転入力端で受けると共に、所定の基準電圧Vbgを自身の非反転入力端で受ける。差動増幅器OPは、当該帰還電圧FBと基準電圧Vbgとの差分に対応した電流を自身の出力端に供給する。差動増幅器OPは、自身の出力端に生じた電圧を有する出力信号GTを出力トランジスタQ1のゲートに供給する。尚、差動増幅器OPには、自身の利得及び出力電流や、負荷CLの特性等を考慮して、発振を防ぐための位相マージンを確保するように設計されている位相補償回路(図示せず)が内蔵されている。
【0019】
出力トランジスタQ1のソースには電源電圧VDDが印加されており、そのドレインはチップ内配線L1を介して、半導体ICチップ20のパッド電極Pd1に接続されている。
【0020】
帰還抵抗R1の一端は、チップ内配線L2を介して半導体ICチップ20のパッド電極Pd2に接続されている。帰還抵抗R1の他端は、帰還抵抗R2の一端に接続されており、当該帰還抵抗R2の他端は、半導体ICチップ20のパッド電極Pdg及び他の回路群(図示せず)に接続されている。パッド電極Pdg及び帰還抵抗R2の他端には接地電圧VSSが印加されている。
【0021】
パッド電極Pd1は、ボンディングワイヤW1を介してパッケージ30の外部端子T1に接続されている。パッド電極Pd2は、ボンディングワイヤW2を介してパッケージ30の外部端子T2に接続されている。パッド電極Pdgは、ボンディングワイヤWgを介してパッケージ30の外部端子Tgに接続されている。外部端子T1及びT2は金属配線JPによって短絡されている。
【0022】
かかる構成により、出力トランジスタQ1は、基準電圧Vbgと帰還電圧FBとの差分に対応した電流を、チップ内配線L1、ボンディングワイヤW1、金属配線JP、ボンディングワイヤW2及びチップ内配線L2を介して帰還抵抗R1の一端に供給する。これにより、パッケージ30の外部端子T1(T2)には、基準電圧Vbgと帰還電圧FBとの差分に対応した電圧(出力電圧と称する)が生成され、この出力電圧が、当該外部端子T1(T2)及びTgに接続されている容量性の負荷CLに供給される。この際、生成された出力電圧が帰還抵抗R1及びR2によって分圧された電圧が帰還電圧FBとして差動増幅器OPの反転入力端に供給されることで、当該出力電圧の電圧値が基準電圧Vbgに対応した一定の電圧値に維持される。
【0023】
ところで、半導体装置100では、レギュレータ回路10に含まれる出力トランジスタQ1のドレインと、帰還抵抗R1の一端とを直接接続せず、図1に示すように、チップ内配線L1、パッド電極Pd1、ボンディングワイヤW1、外部端子T1、金属配線JP、外部端子T2、ボンディングワイヤW2及びチップ内配線L2を介して接続している。
【0024】
本発明は、このような配線形態を採用することで、レギュレータ回路10の半導体ICチップ20内での配置位置に拘わらず、当該レギュレータ回路10の発振を抑えることが可能となる。
【0025】
以下に、図1に示す構成を採用することで発振が抑制される理由について説明する。
【0026】
先ず、従来のレギュレータ回路が形成されている半導体装置に容量性の負荷が外部接続されている状態で当該レギュレータ回路に発振が生じるケースについて説明する。
【0027】
図2は、従来のレギュレータ回路、半導体ICチップのパッド電極、パッケージの外部端子及び容量性の負荷間を接続する各配線の配線抵抗を抵抗器の記号で表す等価回路図である。
【0028】
尚、図2に示すように、レギュレータ回路は、図1に示すレギュレータ回路10と同様に、差動増幅器OP、出力トランジスタQ1及び帰還抵抗(R1、R2)から構成される。ただし、図2に示す従来のレギュレータ回路では、出力トランジスタQ1のドレインと帰還抵抗R1の一端とをチップ内配線で接続し、その接続ノードn1に生じた電圧をチップ内配線L1、半導体ICチップのパッド電極Pd1、ボンディングワイヤW1を介して、パッケージの外部端子T1に接続されている容量性の負荷CLに供給している。
【0029】
この際、チップ内配線L1は配線抵抗Ri1を有し、ボンディングワイヤW1は配線抵抗Rw1を有するものとする。尚、ボンディングワイヤW1の配線抵抗Rw1は0.1オーム程度の低抵抗であるので、実質的に負荷CLには、レギュレータ回路及びパッド電極Pd1間を接続するチップ内配線L1の配線抵抗Ri1が直列に接続された形態となる。
【0030】
図3は、半導体ICチップ20内の図4の破線にて囲まれた領域、つまりパッド電極Pd1の近傍の領域にレギュレータ回路10が配置されている場合のレギュレータ回路の周波数特性の一例を示すボーデ線図である。
【0031】
尚、図3において、一点鎖線は差動増幅器OPに含まれる位相補償回路によって位相補償が行われている場合での特性を表し、実線は位相補償が行われていない場合の特性を表している。
【0032】
図3の実線に示すように、位相補償が行われていない場合、レギュレータ回路のゲインは周波数P1(以降、ポール周波数P1と称する)以下の場合には一定のゲインGdcが得られ、ポール周波数P1を極点として周波数が高くなるにつれ、20[dB/dec]の傾斜で低下する。更に、ポール周波数P1よりも高い周波数P2(以降、ポール周波数P2と称する)を極点として周波数が高くなるにつれ、40[dB/dec]の傾斜でゲイン低下が生じる。
【0033】
また、図3の実線に示すように、その位相は、ポール周波数P1の1/10の周波数P1bを極点として周波数が高くなるにつれて遅れ、ポール周波数P1の10倍の周波数で90°の遅れ一定となる。そして、ポール周波数P2の1/10の周波数を極点として引き続き周波数が高くなるにつれてその位相が遅れて行く。
【0034】
一方、図3の一点鎖線に示すように、位相補償が行われている場合、レギュレータ回路のゲインはポール周波数P1よりも低い所定の第1の周波数を極点として、その周波数が高くなるにつれ20[dB/dec]の傾斜で低下する。
【0035】
また、図3の一点鎖線に示すように、その位相は、上記した周波数P1bよりも低い所定の第2の周波数を極点として周波数が高くなるにつれて遅れ、ポール周波数P1で90°の遅れ一定となる。そして、ポール周波数P2の1/10の周波数を極点として引き続き周波数が高くなるにつれてその位相が遅れて行く。
【0036】
ところで、差動増幅器OPは、帰還電圧FBに生じる位相遅れが360°且つゲインが1以上の場合に発振する。この際、帰還抵抗での位相遅れ分が180°であるため、発振を抑えるためには出力の位相遅れを、180°未満のできるだけ小さくする必要がある。
【0037】
位相補償が行われることで、図3の一点鎖線の特性に示されるように、所望のゲインGrが得られる周波数が低くなるものの、このゲインGrが得られる周波数での位相遅れを、図3の実線にて示す位相補償を行わなかった場合での位相遅れよりも位相差MGの分だけ小さくすることができるので、発振を抑制することが可能となる。
【0038】
しかしながら、図4の実線にて囲まれた領域、つまりパッド電極Pd1から離間した領域にレギュレータ回路が配置される場合には、位相補償回路による位相補償が行われていてもレギュレータ回路が発振する場合があった。
【0039】
その原因は、レギュレータ回路とパッド電極Pd1とを接続するチップ内配線L1の配線長が長くなると配線抵抗Ri1が大きくなり、直列に接続されている配線抵抗Ri1及び負荷CLからなるCR発振回路により、伝達関数がゼロになる、いわゆる「ゼロ」が現れることである。
【0040】
図5は、「ゼロ」が表れた場合におけるレギュレータ回路の周波数特性の一例を示すボーデ線図である。尚、図5において、実線は配線抵抗Ri1が低い場合、一点破線は配線抵抗Ri1が高い場合での従来のレギュレータ回路の周波数特性を示している。
【0041】
「ゼロ」が現れることで、図5に示すように、ゼロ周波数(Z:配線抵抗Ri1が低い場合、Zc:配線抵抗Ri1が高い場合)でゲインの低下が止まり、当該ゼロ周波数から第2のポール周波数P2までの間に亘りゲインが一定となる。これにより、図5に示すように、一定となっていた位相が、ゼロ周波数(Z又はZc)を含む前後の周波数帯域内で周波数が高くになるにつれて進む位相進み状態に移行し、その周波数が次のポール周波数に近づくと、周波数が高くなるにつれて遅れる位相遅れ状態に移行する。
【0042】
この際、図5に示すように、所望のゲインGrが得られる周波数は、配線抵抗が小さい場合での周波数f1よりも配線抵抗が大きい場合での周波数f2が高くなり、当該周波数f1での位相a1は、周波数f2での位相a2よりも位相遅れが大きい。
【0043】
つまり、レギュレータ回路とパッド電極との間を接続するチップ内配線の配線抵抗が大きい場合には小さい場合に比べて、帰還電圧の位相遅れが大となり、発振に対するマージンが図5に示す位相差MGの分だけ小さくなる。
【0044】
上記したことから、本願発明者は、容量性の負荷が接続されるパッド電極とレギュレータ回路とを接続する半導体ICチップ内の配線の配線長が長くなると、その配線抵抗が大となり、等価的に、当該配線抵抗が負荷に直列に接続されたRC発振回路が形成され、当該RC発振回路によりレギュレータ回路が図5に示すゼロの状態になることを発見した。更に、本願発明者は、図5に示すようなゼロの状態では、パッド電極とレギュレータ回路とを接続するチップ内配線が長くなるほど、レギュレータ回路における帰還電圧の位相遅れが大きくなり、発振が生じ易くなることを発見した。
【0045】
そこで、図1に示す実施例では、レギュレータ回路10の出力トランジスタQ1のドレインと帰還抵抗R1の一端とを半導体ICチップ20内のチップ内配線では接続せずに、両者をチップ内配線(L1、L2)及びパッド電極(Pd1、Pd2)を介して、半導体ICチップ20の外部の配線(W1、W2、JP)によって接続している。
【0046】
図6は、図1に示すレギュレータ回路10、半導体ICチップ20のパッド電極Pd1及びPd2、パッケージ30の外部端子T1、Tg、及び負荷CL間を接続する各配線の配線抵抗を抵抗器の記号で表す等価回路図である。
【0047】
図6に示すように、図1に示す半導体装置100では、負荷CL及びレギュレータ回路10間を接続する配線には、チップ内配線L1及びL2夫々の配線抵抗である抵抗Ri1及びRi2、ボンディングワイヤW1及びW2夫々の配線抵抗である抵抗Rw1及びRw2が介在する。
【0048】
しかしながら、図1に示す半導体装置100では、ボンディングワイヤW1及びW2各々の一端を金属配線JPで接続(短絡)し、その接続点を負荷CLの一端と接続することで、負荷CLに直列に接続される抵抗成分を排除している。
【0049】
これにより、チップ内配線L1及びL2による配線抵抗Ri1及びRi2の大きさに拘わらず、レギュレータ回路10の負帰還経路中にRC発振回路が形成されなくなる。よって、レギュレータ回路10には、図5に示すようなゼロの状態が現れなくなり、当該ゼロに伴うレギュレータ回路10の発振を抑制することが可能となる。
【0050】
したがって、本発明によれば、半導体ICチップ20内のいずれの位置にレギュレータ回路10を配置してもレギュレータ回路10の発振を抑えることができるので、他の回路群を半導体ICチップ20内に配置する位置の自由度が高くなる。これにより、半導体ICチップ20内にデッドスペースが生じる可能性が低くなり、チップサイズの小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0051】
尚、図1は製品出荷時における半導体装置100の形態を示しているが、製品出荷前の半導体ICチップ20単独のテストでも、図1に示す半導体ICチップ20の構成によれば、レギュレータ回路10の発振を抑えた状態でテストを行うことが可能となる。
【0052】
図7は、半導体ICチップ20を単独テストする際のテストシステムの構成を示す図である。
【0053】
図7に示すように、半導体ICチップ20に形成されているレギュレータ回路10のテストを行う場合、負荷CLと同一特性を有する容量性の負荷CLqを用意する。
【0054】
次に、半導体ICチップ20のテストを行うテスタTSTの2つのプローブ針PB1及びPB2の電極を互いに接続し、その接続点をテスト用の負荷CLqの一端に接続する。そして、プローブ針PB1の針先端を半導体ICチップ20のパッド電極Pd1に当接させると共に、プローブ針PB2の針先端をパッド電極Pd2に当接させてテストを開始する。
【0055】
ここで、プローブ針PB1及びPB2における抵抗成分(寄生抵抗)は、チップ内配線の抵抗よりも高い。しかしながら、図7に示すように、テスト用の負荷CLqに直列に接続される抵抗成分は存在しないので、レギュレータ回路10の負帰還経路中にRC発振回路が介在しなくなり、レギュレータ回路10が上記したゼロの状態にはならない。
【0056】
よって、図1に示される半導体ICチップ20によれば、レギュレータ回路10に対して発振を抑えた状態でテストを行うことが可能となる。
【実施例0057】
図8は、本発明に係る第2の実施例としての半導体装置100Aの構成を示す図である。
【0058】
尚、図8に示す構成では、レギュレータ回路10に代えてレギュレータ回路10Aを採用した点を除く他の構成は図1に示されるものと同一である。
【0059】
図8に示すレギュレータ回路10Aでは、帰還抵抗R1及び接地電圧VSS間に直列に電圧補償用の抵抗dR2を設けた点を除く他の構成は、図1に示すレギュレータ回路10と同一である。
【0060】
抵抗dR2は、レギュレータ回路10Aの配置位置によって生じる出力電圧の誤差分を消去するという役目を担う抵抗である。
【0061】
すなわち、レギュレータ回路10Aとパッド電極Pd1及びPd2の各々とを接続するチップ内配線L1及びL2の配線長は、半導体ICチップ20内に配置する位置によって異なる。つまり、チップ内配線L1及びL2の配線長が半導体ICチップ20内のレギュレータ回路10Aの配置位置によって異なり、その配線長に伴う配線抵抗(Ri1、Ri2)の抵抗値もレギュレータ回路10Aの配置位置によって異なる。これにより、レギュレータ回路10Aから出力される出力電圧には誤差が生じる。
【0062】
そこで、レギュレータ回路10Aでは、その誤差分を、帰還抵抗R1及びR2に直列に接続した抵抗dR2で消去するのである。
【0063】
尚、抵抗dR2の抵抗値は、以下のように決定する。
【0064】
先ず、配線抵抗Ri1及びRi2各々の抵抗値をゼロとしたレギュレータ回路10Aの理想的な出力電圧Voは、
Vo=I・(R1+R2)/R2
I:出力電流
となる。
【0065】
一方、配線抵抗Ri1及びRi2を考慮したレギュレータ回路10Aの実際の出力電圧VoAは、
VoA=I・(R1+R2+dR2+Ri2)/(R2+dR2)
となる。
【0066】
ここで、理想的な出力電圧Voと、実際の出力電圧VoAとの間の誤差をなくすために、
Vo=VoA
とすると、
dR2=R2・Ri2/R1
と表される。
【0067】
よって、上記のように表される抵抗値を有する抵抗dR2を設けることで、配線抵抗Ri1及びRi2によるレギュレータ回路10の出力電圧の誤差を低減させる。
【実施例0068】
図9は、本発明に係る第3の実施例としての半導体装置100Bの構成を示す図である。
【0069】
尚、図9に示す構成では、半導体ICチップ20及びパッケージ30に代えて、半導体ICチップ20A及びパッケージ30Aを採用した点を除く他の構成、つまりレギュレータ回路10については図1に示されるものと同一である。
【0070】
パッケージ30Aは、図1に示すパッケージ30からボンディングワイヤW2、金属配線JP及び外部端子T2を省いたものである。半導体ICチップ20Aは、パッド電極Pd1及びPd2間を、安定性補償用のパッド間抵抗Rsで接続した点を除く他の構成は図1に示す半導体ICチップ20と同一である。
【0071】
すなわち、半導体装置100Bでは、パッド電極Pd1及びPd2間を接続するパッド間抵抗Rsを設けることで、図1に示す構成では2つ必要であったボンディングワイヤ(W1、W2)を、単一のボンディングワイヤW1だけにしている。
【0072】
ところで、パッド電極Pd1及びPd2間を単純に金属配線で短絡することでも、ボンディングワイヤを1本にすることができる。
【0073】
しかしながら、半導体ICチップ20Aの単独テスト時には、比較的高い寄生抵抗(数十オーム)を有するプローブ針をパッド電極Pd1又はPd2に当接させるので、プローブ針の寄生抵抗が容量性の負荷に直列に接続されることになる。よって、これらプローブ針の寄生抵抗及び容量性の負荷によってRC発振回路が形成され、それに伴いレギュレータ回路が上記したゼロの状態になる。したがって、テスト時においてレギュレータ回路が発振するおそれが生じる。
【0074】
そこで、図9に示す半導体ICチップ20Aでは、パッド電極Pd1及びPd2間を、比較的高い抵抗値を有するパッド間抵抗Rsにて接続している。
【0075】
半導体ICチップ20Aのテスト時には、図10に示すように、テスタTSTの2つのプローブ針PB1及びPB2の針先端をパッド電極Pd1及びPd2に夫々当接させてテストを開始する。尚、プローブ針PB1及びPB2は、図10に示すように互いの電極同士が接続されており且つその接続点がテスト用の負荷CLqの一端に接続されている。
【0076】
これにより、寄生抵抗を有するプローブ針PB1及びPB2が介在しても、テスト用の負荷CLqに直列に接続される抵抗成分がなくなるので、上記したゼロの状態が回避され、レギュレータ回路10を発振させることなくテストを行うことが可能となる。
【0077】
尚、図6に示すように、チップ内配線(L1、L2)の配線抵抗(Wi1、Wi2)と共にボンディングワイヤ(W1、W2)の寄生抵抗も負荷(CL、CLq)に直列に接続されることになるが、この寄生抵抗は十分に低いので、実質的にRC発振回路を形成するには至らない。
【0078】
ただし、パッド電極Pd1及びPd2間を接続するパッド間抵抗Rsの抵抗値を高くし過ぎると、差動増幅器OPと出力トランジスタQ1の最大動作範囲を超えてしまい負帰還のゲイン低下を招くことになる。すると、帰還電圧FBが基準電圧Vbgに追従しきれなくなり、出力電圧が不安定となる。
【0079】
そこで、パッド間抵抗Rsの抵抗値を、
10・Rp<Rs<R1+R2
Rp:プローブ針PB1、PB2の寄生抵抗
となるように設定する。
【0080】
ところで、図9に示す構成を採用した場合、そのテスト時には、チップ内配線L1の配線抵抗Ri1、チップ内配線L2の配線抵抗Ri2、プローブ針PB1及びPB2各々の寄生抵抗Rp、並びに安定性補償用のパッド間抵抗Rsが介在することになる。
【0081】
図11は、図10に示すテストシステムにおいて、レギュレータ回路10、半導体ICチップ20Aのパッド電極Pd1及びPd2、パッケージ30の外部端子T1、Tg、及び負荷CLq間を接続する各配線の配線抵抗Ri1、Ri2、寄生抵抗Rpを抵抗器の記号で表す等価回路図である。
【0082】
これらパッド間抵抗Rs、配線抵抗Ri1及びRi2、並びにプローブ針PB1及びPB2各々の寄生抵抗Rpにより、レギュレータ回路10の出力電圧には誤差が生じる。
【0083】
そこで、その誤差分を除去するように、帰還抵抗R1及びR2の抵抗値を以下のようにトリミングして決定する。
【0084】
先ず、これら配線抵抗Ri1及びRi2、並びにプローブ針PB1及びPB2各々の寄生抵抗各々の抵抗値をゼロとした場合のレギュレータ回路10の理想的な出力電圧Voは、
Vo=I・(R1+R2)/R2
I:出力電流
となる。
【0085】
尚、パッド間抵抗Rs、プローブ針PB1の寄生抵抗Rp及びプローブ針PB2の寄生抵抗Rpにより、図11に示す帰還経路中に介在する抵抗は2・Rpとみなせる。
【0086】
次に、帰還抵抗R1及びR2をトリミングして得られるレギュレータ回路10の実際の出力電圧VoAは、
VoA=(R1t+R2t+Ri2+2・Rp)・I/R2t
R1b+R2b=R1t+R2t=Ra
R1b:トリミング前の帰還抵抗R1の抵抗値
R1t:トリミング後の帰還抵抗R1の抵抗値
R2b:トリミング前の帰還抵抗R2の抵抗値
R2t:トリミング後の帰還抵抗R2の抵抗値
と表される。
【0087】
ここで、理想的な出力電圧Voと、実際の出力電圧VoAとの間の誤差をなくすために、
Vo=VoA
とすると、
R2t=(Ra+Ri2+2・Rp)・R2b/Ra
=[1+(Ri2+2・Rp)/Ra]・R2b
R1t=Ra-R2t
となる。
【0088】
よって、図9に示す帰還抵抗R1の抵抗値をR1t、帰還抵抗R2の抵抗値をR2tに設定することで、レギュレータ回路10の出力電圧に生じている誤差分を消去する調整が為される。
【0089】
以上のように、図9に示す半導体装置100Bによれば、図1に示す半導体装置100と同様に、半導体ICチップ20A内におけるレギュレータ回路10の配置位置に拘わらず、製品出荷後のみならず、半導体ICチップ20A単独のテスト時においてもレギュレータ回路10の発振を抑制することが可能となる。
【0090】
更に、図9に示す構成を採用することで、ボンディングワイヤの数を1本減らすことができるので、製品コストを更に下げることが可能となる。
【実施例0091】
図12は、本発明に係る第4の実施例としての半導体装置100Cの構成を示す図である。
【0092】
尚、図12に示す構成では、レギュレータ回路10及び半導体ICチップ20Aに代えて、レギュレータ回路10B及び半導体ICチップ20Bを採用した点を除く他の構成、つまりパッケージ30Aについては図9に示されるものと同一である。
【0093】
また、図12に示す半導体ICチップ20Bは、パッド電極Pd1及びPd2間を接続するパッド間抵抗Rsに代えてNチャネルMOS型のトランジスタQsを採用した点を除く他の構成は図9に示す半導体ICチップ20Aと同一である。また、図12に示すレギュレータ回路10Bは、上記トランジスタQsのオンオフを制御する制御回路15を新たに設けた点を除く他の構成(OP、Q1、R1、R2)は図9に示すレギュレータ回路10と同一である。
【0094】
図12において、トランジスタQsは、そのドレインがパッド電極Pd1に接続されており、ソースがパッド電極Pd2に接続されている。
【0095】
制御回路15は、プルアップ抵抗Rv及びヒューズ素子Huを含む。プルアップ抵抗Rvはその一端で電源電圧VDDを受け、その他端がヒューズの一端及びトランジスタQsのゲートに接続されている。ヒューズ素子Huの他端には接地電圧VSSが印加されている。
【0096】
制御回路15は、ヒューズ素子Huが非切断状態にある場合には接地電圧VSSを有するオンオフ制御信号をトランジスタQsのゲートに供給する。一方、ヒューズ素子Huが切断状態にある場合には制御回路15は、電源電圧VDDを有するオンオフ制御信号をトランジスタQsのゲートに供給する。
【0097】
トランジスタQsは、制御回路15から電源電圧VDDを有するオンオフ制御信号を受けた場合にはオン状態となり、自身のオン抵抗を介してパッド電極Pd1及びPd2間を接続する。また、トランジスタQsは、制御回路15から接地電圧VSSを有するオンオフ制御信号を受けた場合にはオフ状態となり、パッド電極Pd1及びPd2間の電気的接続を遮断する。尚、制御回路15は、ヒューズ素子Huを用いることで、トランジスタを用いて上記したオンオフ制御信号を生成する場合に比べて、コストを抑えることができる。
【0098】
ここで、制御回路15のヒューズ素子Huは半導体ICチップ20Bの製造直後は非切断状態にあり、トランジスタQsはオフ状態にある。尚、ヒューズ素子Huが非切断状態にある場合には、このヒューズ素子Huを介してプルアップ抵抗Rvに電流が流れるが、その電流値はプルアップ抵抗Rvの抵抗値によって抑えることができるので、消費電力の増加を抑えることが可能となる。
【0099】
図13は、半導体ICチップ20Bをテストする際のテストシステムの構成を示す図である。
【0100】
尚、図13に示すテストシステムは、半導体ICチップ20に代えて半導体ICチップ20Bをテスト対象としている以外の他の構成は図7に示されるものと同一である。
【0101】
図13に示すように、半導体ICチップ20Bの単独テスト時には、制御回路15のヒューズ素子Huは非切断状態にあるので、トランジスタQsはオフ状態である。よって、互いに電気的接続が遮断されている状態にあるパッド電極Pd1及びPd2に夫々、図13に示すようにプローブ針PB1及びPB2の針先端を当接させた状態でテストが行われる。この際、オフ状態のトランジスタQsの等価抵抗はプローブ針PB1及びPB2における抵抗成分(寄生抵抗)よりも高いが、図13に示すように、負荷CLqに直列に接続される抵抗成分は存在しない。よって、レギュレータ回路10Bの負帰還経路中にRC発振回路が含まれず、レギュレータ回路10Bは上記したゼロの状態にはならない。したがって、レギュレータ回路10Bを発生させることなくテストを行うことが可能となる。
【0102】
そして、上記した半導体ICチップ20B単独のテスト終了後、制御回路15のヒューズ素子Huを切断し、以下のパッケージ処理が為される。つまり、図12に示すように、半導体ICチップ20Bをパッケージ30に固定設置し、半導体ICチップ20Bのパッド電極Pd1及びPd2と、パッケージ30の外部端子T1及びT2との間をボンディングワイヤW1及びW2で接続する。
【0103】
よって、パッケージ処理後は、制御回路15のヒューズ素子Huは切断されているので、トランジスタQsはオン状態に維持され、半導体ICチップ20Bのパッド電極Pd1及びPd2間は、トランジスタQsのオン抵抗を介して接続される。これにより、パッケージ30の外部端子T1及びT2間に接続される負荷CLに対して直列に接続される抵抗成分が排除され、レギュレータ回路10Bの負帰還経路中にRC発振回路が介在しなくなる。よって、レギュレータ回路10Bが上記したゼロの状態にはならないので、レギュレータ回路10Bの発振が抑制される。
【0104】
このように、図12に示される半導体装置100Cによれば、図9に示される半導体装置100Bと同様に、半導体ICチップ20B内におけるレギュレータ回路10Bの配置位置に拘わらず、製品出荷後のみならず、半導体ICチップ20B単独のテスト時においてもレギュレータ回路10Bの発振を抑制することが可能となる。
【0105】
更に、図12に示す構成を採用することで、図1に示す構成に対してボンディングワイヤの数を1本減らすことができるので、製品コストを更に下げることが可能となる。
【実施例0106】
図14は、本発明に係る第5の実施例としての半導体装置100Dの構成を示す図である。
【0107】
尚、図14に示す構成では、レギュレータ回路10に代えて、レギュレータ回路10Cを採用した点を除く他の構成、つまり半導体ICチップ20A及びパッケージ30Aについては図9に示されるものと同一である。
【0108】
また、レギュレータ回路10Cでは、帰還抵抗R2及び接地電圧VSS間に直列に電圧補償用の可変抵抗回路VR2を設けると共に、可変抵抗回路VR2の抵抗値を制御するメモリMEを設けた点を除く他の構成(OP、Q1、R1、R2)は、図9に示すレギュレータ回路10と同一である。
【0109】
可変抵抗回路VR2は、例えばN(Nは2以上の整数)段階にて自身の抵抗値を第1~第Nの抵抗値のうちの1の抵抗値に設定可能な可変抵抗であり、メモリMEから読み出された抵抗指定データによって指定された抵抗値に設定される。
【0110】
メモリMEには、例えば図15に示すようにアドレスADに対応付けして、可変抵抗回路VR2における第1~第Nの抵抗値を個別に指定する抵抗指定データが予め格納されている。
【0111】
すなわち、メモリME及び可変抵抗回路VR2は、アドレスADによって、自身の抵抗値が第1~第Nの抵抗値のうちの任意の抵抗値に設定される可変抵抗であり、図8に示される抵抗値固定の抵抗dR2に代えて設けたものである。
【0112】
つまり、図8に示される抵抗dR2は、その抵抗値が固定であるため、製造バラツキにより、チップ内配線(L1、L2)の配線抵抗(Wi1、Wi2)やプローブ針(PB1、PB2)の寄生抵抗(Rp)が変動すると、レギュレータ回路の出力電圧も変動してしまう。
【0113】
そこで、レギュレータ回路10Cでは、半導体ICチップ20Aの単独テスト時やパッケージ処理後に、アドレスADによって可変抵抗回路VR2の抵抗値を変化させることで、レギュレータ回路10Cの出力電圧を理想値に調整できるようにしている。尚、メモリME及び可変抵抗回路VR2について、図14に示す半導体ICチップ20Aのみならず、図1に示す半導体ICチップ20又は図12に示す半導体ICチップ20Bにおいて、図14に示す形態と同様な形態で設けるようにしても良い。
【0114】
以上、詳述したように、実施例1~5に示す半導体ICチップ(20、20A、20B)では、レギュレータ回路(10、10A~10C)に含まれる出力トランジスタQ1と帰還抵抗R1とを直接接続していない。つまり、出力トランジスタQ1をチップ内配線L1を介してパッド電極Pd1に接続し、帰還抵抗R1をチップ内配線L2を介してパッド電極Pd2に接続した構成を採用し、パッド電極Pd1及びPd2間、或いはパッド電極Pd1及びPd2を介した半導体ICチップの外部で両者を電気的に接続するようにしている。
【0115】
つまり、パッド電極Pd1及びPd2間を、図1に示すようにボンディングワイヤW1、W2、パッケージ30の外部端子T1及びT2を介して金属配線JPで接続する。或いは、パッド電極Pd1及びPd2間を、図9に示すように抵抗Rsで接続する又は図12に示すようにトランジスタQsで接続する。そして、その接続点を負荷CLと接続する。これにより、レギュレータ回路の負帰還経路中において、負荷CLに直列に接続される抵抗成分がなくなる。よって、半導体ICチップ内でのレギュレータ回路の配置位置に拘わらず、当該レギュレータ回路がゼロの状態になることが回避され、レギュレータ回路の発振を抑えることが可能となる。
【0116】
尚、実施例1~5では、定電圧を生成するレギュレータ回路(10、10A~10C)を例にとって、その発振を防止する構成を説明したが、発振防止の対象となる回路はレギュレータ回路に限定されない。すなわち、本発明では、入力電圧(Vbg)と帰還電圧(FB)との差分に対応した電流を送出することで出力電圧を生成する、いわゆる負帰還増幅回路が発振防止の対象となっていれば良いのである。
【0117】
要するに、本発明に係る半導体装置(100、100A~100D)としては、以下のような負帰還増幅回路及び帰還抵抗が形成されている半導体ICチップを有するものであれば良い。
【0118】
すなわち、負帰還増幅回路(例えば差動増幅器OP及び出力トランジスタQ1)は、入力電圧(Vbg)と帰還電圧(FB)との差分に対応した電流を第1の配線(L1)を介して第1のパッド(Pd1)に送出することで、容量性の負荷(CL)に供給する出力電圧を生成する。帰還抵抗(例えば帰還抵抗R1、R2)は、第2のパッド(Pd2)で受けた電圧を、第1の配線とは非接続の第2の配線(L2)を介して受け、この第2の配線を介して受けた電圧を分圧した電圧を帰還電圧(FB)として生成する。
【符号の説明】
【0119】
10、10A~10C レギュレータ回路
20、20A、20B 半導体ICチップ
30、30A パッケージ
100、100A~100D 半導体装置
CL、CLq 負荷
OP 差動増幅器
Q1 出力トランジスタ
Qs トランジスタ
R1、R2 帰還抵抗
Rs パッド間抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15