(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069069
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240514BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240514BHJP
C23F 1/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/306 R
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 645D
C23F1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179859
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】林 宗儒
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
4K057WA10
4K057WB01
4K057WD01
4K057WE08
4K057WN01
5F043AA26
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5F157DB02
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】四酸化ルテニウムが生成されることなく、ルテニウム含有層を適切にエッチングする。
【解決手段】基板処理方法は、ルテニウム含有層93が表面に設けられた基板9を準備する工程と、塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液71を基板9上のルテニウム含有層93に接触させる工程と、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する工程とを備える。これにより、ガス状の四酸化ルテニウムが生成されることなく、ルテニウム含有層93を適切にエッチングすることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
a)ルテニウム含有層が表面に設けられた基板を準備する工程と、
b)塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液を前記基板上の前記ルテニウム含有層に接触させる工程と、
c)前記エッチング液が接触している前記ルテニウム含有層に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記c)工程において、ルテニウムおよび塩素を含む水溶性化合物が生成されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記エッチング液が界面活性剤を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記励起光の波長が270nm以下であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記b)工程において、前記エッチング液が前記基板の周縁部に接触し、
前記c)工程において、前記周縁部に前記励起光が照射されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記ルテニウム含有層が前記基板の一の主面に設けられ、
前記b)工程において、前記エッチング液のパドルが前記基板の前記主面に形成され、
前記c)工程において、前記主面に前記励起光が照射されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
基板処理装置であって、
ルテニウム含有層が表面に設けられた基板を保持する基板保持部と、
塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液を前記基板上に供給して、前記ルテニウム含有層に接触させる液供給部と、
前記エッチング液が接触している前記ルテニウム含有層に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する光照射部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、基板の主面に導電膜を形成した後に、当該基板のベベル部等に付着した導電膜を除去する処理が行われる。近年、基板上のデバイスの微細化等に伴い、当該導電膜の材料としてルテニウム(Ru)が注目されている。ルテニウムは、塩酸や水酸化ナトリウムのような酸またはアルカリの水溶液中に単に浸漬するだけでは除去することが難しい。そこで、特許文献1では、ルテニウムをエッチング処理するために、オルト過ヨウ素酸およびアンモニアを含み、pHが4.5であるルテニウム用エッチング液(表1、実施例A32)が提案されている。
【0003】
なお、特許文献2では、基板周縁部から良好に膜を除去する基板処理装置が開示されている。当該装置は、回転する基板の周縁部に対して液体を供給する液体供給手段と、周縁部の一部に対して近接配置され、周縁部との間隙空間に液体を一時的に保持して間隙空間を液密状態とする液体保持部材と、周縁部のうち液体により覆われた部位に液体を介してレーザー光を入射させ、膜を除去するレーザー照射手段とを備える。また、非特許文献1では、物質表面を極性溶液が覆う場合に、光電効果における仕事関数が低下することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/138814号
【特許文献2】特開2016-107272号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L I Korshunov、外2名、「The Photoelectric Effect at the Metal-Electrolyte Boundary」、Russian Chemical Reviews、1971年、40巻、8号、699-714頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のエッチング液を用いてルテニウムのエッチングを行う場合、高いエッチングレートが得られるが、毒性を有するガス状の四酸化ルテニウム(RuO4)が生成されるおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、四酸化ルテニウムが生成されることなく、ルテニウム含有層を適切にエッチングすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、基板処理方法であって、a)ルテニウム含有層が表面に設けられた基板を準備する工程と、b)塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液を前記基板上の前記ルテニウム含有層に接触させる工程と、c)前記エッチング液が接触している前記ルテニウム含有層に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する工程とを備える。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の基板処理方法であって、前記c)工程において、ルテニウムおよび塩素を含む水溶性化合物が生成される。
【0010】
本発明の態様3は、態様1(態様1または2であってもよい。)の基板処理方法であって、前記エッチング液が界面活性剤を含む。
【0011】
本発明の態様4は、態様1(態様1ないし3のいずれか1つであってもよい。)の基板処理方法であって、前記励起光の波長が270nm以下である。
【0012】
本発明の態様5は、態様1ないし4のいずれか1つの基板処理方法であって、前記b)工程において、前記エッチング液が前記基板の周縁部に接触し、前記c)工程において、前記周縁部に前記励起光が照射される。
【0013】
本発明の態様6は、態様1ないし4のいずれか1つの基板処理方法であって、前記ルテニウム含有層が前記基板の一の主面に設けられ、前記b)工程において、前記エッチング液のパドルが前記基板の前記主面に形成され、前記c)工程において、前記主面に前記励起光が照射される。
【0014】
本発明の態様7は、基板処理装置であって、ルテニウム含有層が表面に設けられた基板を保持する基板保持部と、塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液を前記基板上に供給して、前記ルテニウム含有層に接触させる液供給部と、前記エッチング液が接触している前記ルテニウム含有層に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する光照射部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、四酸化ルテニウムが生成されることなく、ルテニウム含有層を適切にエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】基板処理システムのレイアウトを示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【
図6】基板処理装置における基板の処理の流れを示す図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【
図9】基板処理装置における基板の処理の流れの一部を示す図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【
図11】基板の上面における複数の分割領域を示す図である。
【
図12A】基板に設けられるルテニウム含有層を示す断面図である。
【
図12B】基板に設けられるルテニウム含有層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、基板処理システム10のレイアウトを示す図である。基板処理システム10は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を処理するシステムである。基板処理システム10は、インデクサブロック101と、インデクサブロック101に結合された処理ブロック102とを備える。
【0018】
インデクサブロック101は、キャリア保持部104と、インデクサロボット105と、IR移動機構106とを備える。キャリア保持部104は、それぞれが複数枚の基板9を収容可能な複数のキャリア107を保持する。複数のキャリア107(例えば、FOUP)は、所定のキャリア配列方向に配列された状態でキャリア保持部104に保持される。IR移動機構106は、キャリア配列方向にインデクサロボット105を移動させる。インデクサロボット105は、基板9をキャリア107から搬出する搬出動作、および、キャリア107に基板9を搬入する搬入動作を行う。基板9は、インデクサロボット105によって水平な姿勢で搬送される。
【0019】
処理ブロック102は、基板9を処理する複数(例えば、4つ以上)の処理ユニット108と、センターロボット109とを備える。複数の処理ユニット108は、平面視において、センターロボット109を取り囲むように配置される。複数の処理ユニット108では、基板9に対する様々な処理が施される。後述する基板処理装置は、複数の処理ユニット108のうちの1つである。センターロボット109は、インデクサロボット105との間で基板9の受け渡しを行う。また、センターロボット109は、処理ユニット108に基板9を搬入する搬入動作、および、基板9を処理ユニット108から搬出する搬出動作を行う。センターロボット109は、複数の処理ユニット108間での基板9の搬送も行う。基板9は、センターロボット109によって水平な姿勢で搬送される。
【0020】
図2は、第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。
図2では、基板処理装置1の構成の一部を、所定の中心軸J1を含む面における断面にて示す。基板処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9の周縁部に対してウェットエッチングを行う。基板9の周縁部は、エッジ端面(apex)、ベベル部、並びに、後述の上面91および下面92におけるベベル部近傍の部位を含む。
【0021】
基板処理装置1は、基板保持部21と、基板回転機構22と、供給ヘッド3と、光照射部4と、液供給部5と、カバー部材6と、ハウジング11と、制御部8とを備える。基板保持部21、基板回転機構22、供給ヘッド3、光照射部4の一部、および、カバー部材6等は、ハウジング11の内部空間に収容される。制御部8は、ハウジング11の外部に配置され、基板処理装置1の各構成を制御する。制御部8は、例えば、CPU、メモリ等を有するコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。制御部8の一部または全部が、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)等により実現されてもよい。
【0022】
図2に示す基板保持部21および基板回転機構22は、略円板状の基板9を保持して回転させるスピンチャックの一部である。基板保持部21は、水平状態の基板9を下側から保持する。基板保持部21は、例えば、基板9を吸着して保持するバキュームチャックである。基板保持部21は、基板9の下側の主面(以下、「下面92」とも呼ぶ。)の中央部に接触して吸着する略円板状のベース部211を備える。ベース部211の直径は、基板9の直径よりも小さい。基板処理装置1の設計によっては、基板保持部21が、メカニカルチャック等により基板9を保持するものであってもよい。
【0023】
基板9の表面には、ルテニウム(Ru)を含有するルテニウム含有層93が設けられる。
図2に示す例では、ルテニウム含有層93は、基板9の上側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)の全体に広がる膜状(すなわち、ルテニウム含有膜)である。
図2では、ルテニウム含有層93を太線にて示す。ルテニウム含有層93は、ルテニウムを含む層であればよく、ルテニウムの単体の層以外に、ルテニウムの化合物を含む層であってもよい。ルテニウム含有層93は、例えば、基板9の上面91および/または下面92の全体に設けられる膜状であってもよく、基板9の表面の一部のみを覆うパターン状であってもよい。本実施の形態では、ルテニウム含有層93は、基板9の上面91全体に設けられるルテニウム含有膜であり、基板9の周縁部も当該ルテニウム含有膜により覆われている。また、ルテニウム含有層93は、その全体がルテニウムの単体により形成されているルテニウム膜である。
図2の基板保持部21は、当該ルテニウム含有膜が形成された上面91を上側に向けた状態で基板9を下方から保持する。なお、ルテニウム含有層93と基板9との間に、拡散防止膜94等が設けられてもよい(後述の
図7参照)。
【0024】
基板回転機構22は、基板保持部21の下方に配置される。基板回転機構22は、上下方向に略平行に延びる中心軸J1を中心として、基板9を基板保持部21と共に回転させる。基板回転機構22は、シャフト221と、モータ222とを備える。シャフト221は、中心軸J1を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。シャフト221は、上下方向に延び、基板保持部21のベース部211の下面中央部に接続される。モータ222は、シャフト221を回転させる電動回転式モータである。なお、基板回転機構22は、他の構造を有するモータ(例えば、中空モータ等)であってもよい。
【0025】
供給ヘッド3は、基板9の中央部の上方に配置される。供給ヘッド3は、基板9の上面91から上方に離間した位置にて、基板9の上面91と上下方向に対向する。供給ヘッド3は、ヘッド下部31と、ヘッド上部32と、センターノズル33とを備える。ヘッド下部31は、中心軸J1を中心とする略円環板状の部位である。ヘッド下部31の下面は、基板9の上面91と略平行に広がる略水平面であり、基板9の上面91と上下方向に対向する。平面視におけるヘッド下部31の外周縁の直径は、基板9の直径よりも小さい。ヘッド上部32は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部位であり、ヘッド下部31の上面から上方へと延びる。ヘッド上部32は、ヘッド下部31を上側から支持する支持部でもある。ヘッド上部32には、アームが接続されており、モータ等を有する機構による当該アームの移動により、供給ヘッド3は、例えば上下方向および径方向(中心軸J1を中心とする径方向)に移動可能である。
【0026】
センターノズル33は、ヘッド下部31の中央部に設けられた貫通孔内に配置される。センターノズル33には、ヘッド上部32の内部に設けられた配管を介して処理液(ここでは、リンス液)が供給される。センターノズル33に供給されたリンス液は、センターノズル33から基板9の中央部に向けて吐出され、回転する基板9の上面91上を周縁部に向かって広がる。基板9の周縁部から飛散したリンス液は、ハウジング11の底面上にて回収され、廃液回収部12に排出される(後述のエッチング液についても同様)。リンス液は、例えば、DIW(脱イオン水)である。リンス液はDIWには限定されず、様々に変更されてよい。また、センターノズル33からは、リンス液以外の様々な種類の処理液が吐出されてもよい。
【0027】
光照射部4は、光源41と、光学系42とを有する。光源41は、ハウジング11の外部に配置される。光源41は、ルテニウムを励起させる光(すなわち、励起光)を出射する。当該光は、例えば、紫外線である。当該光の波長は、好ましくは270nm以下であり、より好ましくは264nm未満である(理由については後述する)。本実施の形態では、光源41は、レーザ光Lを出射するレーザであり、例えば、エキシマレーザ(KrF:波長248nm、ArF:波長193nm)、または、DUV-YAG四倍波レーザ(波長:266nm)等である。当該レーザのパワーは適宜決定されてよい。光源41は、半導体レーザ等であってもよい。ハウジング11の側面部には、窓部111が設けられており、窓部111は、光源41からのレーザ光Lに対して透過性を有する材料(例えば、石英ガラス等)により形成される。レーザ光Lは、窓部111を介してハウジング11内に入射する。
図2では、レーザ光Lの経路を、同じ符号を付す一点鎖線にて示す(後述のレーザ光L1,L2の経路についても同様)。光源41から出射される光は、レーザ光以外であってもよい。
【0028】
光学系42は、ハウジング11の内部に配置され、ビームスプリッタ421と、複数の反射ミラー422,423,424とを備える。ハウジング11内に入射したレーザ光Lは、ビームスプリッタ421により2つの光線L1,L2(以下、同様に「レーザ光」という。)に分岐される。2つのレーザ光L1,L2のうち一方のレーザ光L1は、反射ミラー422にて反射し、基板9の斜め上方から上面91の周縁部に入射する。反射ミラー422と基板9との間のレーザ光L1の経路(光軸)は、基板9の上面91に対して傾斜する。また、他方のレーザ光L2は、反射ミラー423,424にて順に反射し、基板9の斜め下方から下面92の周縁部に入射する。反射ミラー424と基板9との間のレーザ光L2の経路(光軸)は、基板9の下面92に対して傾斜する。後述するように、レーザ光L1,L2は、カバー部材6を介して基板9の周縁部に照射される。
図2の光照射部4の構成は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。例えば、上面91の周縁部にレーザ光を照射する光源と、下面92の周縁部にレーザ光を照射する光源とが個別に設けられてもよい。この場合、ビームスプリッタ421の省略等、光学系42の構成を簡略化することが可能である。
【0029】
図3ないし
図5は、カバー部材6の構造を説明するための図である。
図3は、基板9の上方から下側を向いて見た、すなわち、平面視した基板9およびカバー部材6を示す。
図4は、
図3中の矢印IV-IVの位置(後述の上流側端部611)における基板9およびカバー部材6の断面を示す。
図5は、
図3中の矢印V-Vの位置(後述の下流側端部612)における基板9およびカバー部材6の断面を示す。
【0030】
図3に示すように、カバー部材6は、カバー部61と、液導入部62とを有する。カバー部61は、基板9の周縁部に沿って延びる円弧状の部位である。平面視した場合に、カバー部61は基板9の周縁部の一部と重なる。カバー部61は、上流側端部611と、下流側端部612とを有する。
図3の例では、矢印A1にて示すように、基板9は反時計回りに回転しており、基板9の回転による周縁部の移動方向に関して、上流側端部611の下流側に下流側端部612が位置する。すなわち、基板9の周縁部の各部位は、カバー部61の位置を通過する際に、上流側端部611から下流側端部612に向かって移動する。
【0031】
図4および
図5に示すように、径方向に平行な断面におけるカバー部61の形状は、基板9の周縁部に沿う円弧状である。換言すると、カバー部61は、基板9の周縁部を取り囲むようにC字状に湾曲した断面形状を有する。カバー部61において基板9の周縁部に対向する対向面616と、当該周縁部との間にはギャップ空間Gが形成される。カバー部61の対向面616と基板9の周縁部との間隔は、例えば0.5mm~1mmである。当該間隔は、後述のエッチング液の表面張力の大きさ等に応じて適宜変更されてよい。カバー部材6には、アームが接続されており、モータ等を有する機構による当該アームの移動により、カバー部材6は、例えば上下方向および径方向に移動可能である。
【0032】
図3および
図4に示すように、液導入部62は、管状であり、カバー部61の上流側端部611から径方向外方に向かって延びる。液導入部62の一端は、カバー部61の対向面616において開口し、ギャップ空間Gに接続する。液導入部62の他端には、液供給部5からエッチング液が供給される。これにより、エッチング液71がギャップ空間Gに注入され、ギャップ空間Gがエッチング液71により満たされた状態(液密状態)となる。換言すると、液供給部5により、カバー部材6を介して基板9の周縁部にエッチング液71が供給される。既述のように、基板9の周縁部の各部位は、上流側端部611、すなわち、液導入部62の開口側からカバー部61内(ギャップ空間G)に進入する。
【0033】
ここで、液供給部5により供給されるエッチング液71は、塩素系電解液であり、塩素および水(溶媒)を含む。エッチング液71の一例は、塩化水素(HCl)または塩化アンモニウム(NH4Cl)等を溶質として含む水溶液である。当該溶質の濃度は、例えば、0.7wt%以上であり、好ましくは、1.8wt%以上である。当該溶質の濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、3.6wt%である。エッチング液71は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の一例は、エタノールまたはイソプロピルアルコール(IPA)等である。また、後述する理由により、エッチング液71は、酸化剤を含まない。本明細書における酸化剤は、ルテニウムと反応してルテニウム酸化物を生成するものである。
【0034】
図5に示すカバー部61は、光照射部4からのレーザ光L1,L2に対して透過性を有する材料(例えば、石英ガラス等)により形成される。また、エッチング液71も、レーザ光L1,L2に対して透過性を有する。レーザ光L1,L2は、カバー部61の下流側端部612、および、ギャップ空間Gのエッチング液71を介して基板9の周縁部に照射される。
図5に示す基板9の断面において、レーザ光L1の照射範囲は、基板9のエッジ端面から上面91におけるベベル部近傍の部位まで広がる。また、レーザ光L2の照射範囲は、基板9のエッジ端面から下面92におけるベベル部近傍の部位まで広がる。エッジ端面では、レーザ光L1の照射範囲とレーザ光L2の照射範囲とが重なる。したがって、基板9の断面において、上面91におけるベベル部近傍の部位からエッジ端面を経由して下面92におけるベベル部近傍の部位までの範囲、すなわち、当該断面における周縁部の全体が、レーザ光L1,L2の照射範囲に含まれる。
【0035】
後述の処理では、基板9上のルテニウム含有層93のうち、レーザ光が照射される部位がエッチングされる。したがって、基板9の周縁部において、上面91側または下面92側の一方のみにルテニウム含有層93が存在する場合には、一方のレーザ光L1,L2のみが利用されてもよい。カバー部材6では、カバー部61と液導入部62とが同じ材料により一体的に形成されてもよく、両者が別体として形成されてもよい。カバー部61と液導入部62とが別体として形成される場合、両者が異なる材料により形成されてもよい。
【0036】
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れについて、
図6を参照しつつ説明する。基板9が処理される際には、まず、基板処理装置1に基板9が搬入され、基板保持部21により略水平に保持される(ステップS11)。これにより、表面にルテニウム含有層93(本実施の形態では、ルテニウム膜)が存在する基板9が準備される。ステップS11では、基板9の中心と中心軸J1とが平面視において一致するように、基板9の位置が調整される。基板9の搬入時には、供給ヘッド3およびカバー部材6は、基板9の搬出入を阻害しない退避位置(例えば、平面視において基板9から径方向外方に離間した位置)に配置される。基板9が基板保持部21により保持されると、基板回転機構22による基板9の回転が開始される。また、カバー部材6が、上述の退避位置から
図2に示す位置へと移動され、カバー部61の対向面616と、基板9の周縁部との間にギャップ空間Gが形成される。
【0037】
続いて、制御部8が液供給部5を制御することにより、カバー部材6の液導入部62へのエッチング液71の導入が開始され、カバー部61の上流側端部611においてギャップ空間Gにエッチング液71が供給される。ギャップ空間G内のエッチング液71は、基板9の回転により周縁部の移動方向における下流側に運ばれ、カバー部61の下流側端部612の下流側においてギャップ空間Gの外部に排出される。排出されたエッチング液71は、遠心力により振り切られ、基板9の周縁部から径方向外方に飛散する。実際には、液供給部5がギャップ空間Gにエッチング液71を連続的に供給することにより、ギャップ空間Gがエッチング液71により満たされた状態が維持される。このようにして、エッチング液71が基板9の周縁部上のルテニウム含有層93と接触する(ステップS12)。なお、エッチング液71が接触するのみでは、ルテニウム含有層93のエッチングはほとんど進行しない。
【0038】
このとき、基板9の回転による遠心力により、周縁部に付着したエッチング液71が径方向内方に向かって流れることが抑制される。また、中心軸J1を中心とする周方向においてエッチング液71が広がる範囲は、カバー部61と対向する周縁部の範囲におよそ制限される。基板処理装置1では、
図2の位置に配置された供給ヘッド3から基板9の中央部に向かって不活性ガス(例えば、窒素ガス)が噴出され、周縁部に付着したエッチング液71が径方向内方に向かって流れることがより確実に抑制されてもよい。また、基板9の回転速度は、ギャップ空間Gにエッチング液71を充填することが可能な範囲にて適宜変更されてよい。
【0039】
続いて、制御部8が光照射部4を制御することにより、光照射部4からのレーザ光L1,L2が、カバー部61の下流側端部612、および、ギャップ空間Gのエッチング液71を介して基板9の周縁部に連続的に照射される(ステップS13)。換言すると、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93にレーザ光L1,L2が照射される。このとき、基板9が回転していることにより、基板9の周縁部において、エッチング液71に接触し、かつ、レーザ光L1,L2が照射される部位が、周方向に沿って順に切り替わる。レーザ光L1,L2の照射は、間欠的(パルス照射)であってもよい。
【0040】
図7は、基板9の一部を示す断面図である。
図7の例では、ルテニウム含有層93と基板9の本体との間に、拡散防止膜94等が設けられる。既述のように、レーザ光L1,L2は、ルテニウムを励起させる励起光であり、レーザ光L1,L2の照射による光電効果により、
図7に示すように、ルテニウム含有層93に含まれるルテニウムの表面から光電子(e
-)が放出され、ホール(h
+)が形成される。そして、エッチング液71がホールと反応し、ルテニウム含有層93のエッチングが進行する。
【0041】
ルテニウム含有層93のエッチングに係る化学反応は必ずしも明確ではないが、
Ru+HCl+h+→(Ru(III)-Cl(aq))+H+・・・(1)
2H++2e-→H2・・・(2)
で表される反応が生じていると想定される。上記化学反応式(1)において、(Ru(III)-Cl(aq))は、ルテニウムおよび塩素を含む水溶性化合物(以下、「Ru-Cl水溶性化合物」という。)を示す。Ru-Cl水溶性化合物は、RuCl2+、RuCl2
+、RuCl3、RuCl4
-等である。
【0042】
反応生成物であるRu-Cl水溶性化合物は、エッチング液71に溶解し、エッチング液71と共に基板9上から排除される。これにより、ルテニウムおよび塩素を含む生成物が、基板9の表面に残留することが抑制される。典型的には、Ru-Cl水溶性化合物は、毒性を有しない。また、エッチング液71が酸化剤を含まないため、ガス状の四酸化ルテニウム(RuO4)が生成されることはない。仮に、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含むエッチング液を用いる場合、ルテニウム含有層93の表面に二酸化ルテニウム(RuO2)の層が生成され、エッチングレートが大幅に低下する、または、エッチングが不十分となることがある。一方、次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類を含まない上記エッチング液71では、二酸化ルテニウムの層が生成されることが抑制または防止される。
【0043】
また、本実施の形態では、エッチング液71が界面活性剤(ここでは、エタノール)を含んでいることにより、エッチング後のルテニウム含有層93の表面に大きな凹凸が生じることが抑制または防止される。この理由は、必ずしも明確ではないが、界面活性剤を含まないエッチング液71では、生成される水素ガス(H2)(上記化学反応式(2)参照)が、ルテニウム含有層93の表面において気泡として滞留(存在)して、ルテニウムのエッチングの進行を阻害するのに対し、界面活性剤の存在により表面張力が低下したエッチング液71では、水素の気泡の滞留が抑制されるためであると考えられる。
【0044】
通常、ルテニウムの表面にホール(h+)を形成するには、ルテニウムの仕事関数(4.71eV)よりも大きい光子エネルギが必要であり、この場合、ルテニウムに照射される光の波長は264nm未満であることが求められる。一方、L I Korshunov、外2名による「The Photoelectric Effect at the Metal-Electrolyte Boundary」(Russian Chemical Reviews、1971年、40巻、8号、699-714頁)(上記非特許文献1)に記載のように、物質表面を極性溶液が覆う場合に、光電効果における仕事関数が低下することが知られている。したがって、ルテニウム含有層93の表面がエッチング液71により覆われる本処理例では、光照射部4からのレーザ光L1,L2の波長が、264nm以上である場合でも、ルテニウムの表面から光電子が放出される。ルテニウム含有層93の表面においてホールをより確実に形成するという観点では、レーザ光L1,L2の波長が、270nm以下であることが好ましく、264nm未満であることがより好ましい。
【0045】
基板9の周縁部に対するレーザ光L1,L2(励起光)の照射開始から所定の時間が経過すると、周縁部に対するエッチング液71の供給、および、レーザ光L1,L2の照射が停止される。これにより、ルテニウム含有層93のエッチングが停止される。その後、カバー部材6は、
図2に示す位置から、上述の退避位置へと移動する。なお、基板9の周縁部を撮像するカメラ等が設けられ、撮像画像に基づいて周縁部に対するエッチングの終点が自動的に検出されてもよい(以下同様)。
【0046】
続いて、供給ヘッド3が
図2に示す位置に配置され(事前に配置されていてもよい。)、センターノズル33から基板9の上面91の中央部にリンス液が供給される。また、基板回転機構22による基板9の回転速度が増大される。これにより、リンス液が基板9の上面91全体に広がり、基板9の周縁部に付着しているエッチング液71等を洗い流すリンス処理が行われる(ステップS14)。リンス液は、基板9の回転による遠心力によって基板9の周縁部から径方向外方へと飛散し、廃液回収部12により回収される。
【0047】
基板9に対するリンス処理が所定の時間行われると、センターノズル33からのリンス液の供給が停止される。その後、基板9の回転速度がさらに増大され、基板9上のリンス液が振り切られて除去される。すなわち、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS15)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1から搬出される。なお、基板9のリンス処理および乾燥処理は、上述の例とは異なる方法により行われてもよい。
【0048】
図8は、第2の実施の形態に係る基板処理装置1aの構成を示す図である。基板処理装置1aでは、
図2の基板処理装置1と比較して、カバー部材6が省略される。また、液供給部5が、供給ヘッド3のセンターノズル33に接続され、センターノズル33から、エッチング液71およびリンス液が選択的に吐出される。基板処理装置1aの他の構成は、基板処理装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0049】
本実施の形態では、基板9の上面91全体にルテニウム含有層93が設けられ、ルテニウム含有層93上に保護膜97が設けられる。保護膜97は、例えばSOG(spin-on-glass)膜であり、基板9の上面91において周縁部を除く領域全体に設けられる。保護膜97の平面視における形状は略円形である。
【0050】
基板処理装置1aにおける基板9の処理の流れは、上述のリンス処理(ステップS14)と乾燥処理(ステップS15)との間において、
図9に示すステップS21,S22が行われる点を除き、
図6に示すものと同様である。具体的には、まず、ルテニウム含有層93上に上述の保護膜97が設けられた基板9が、基板保持部21に保持されて準備される(
図6:ステップS11)。また、基板回転機構22により基板9の回転が開始される。
【0051】
続いて、制御部8が液供給部5を制御することにより、供給ヘッド3のセンターノズル33から基板9の上面91の中央部に向けてエッチング液71が連続的に吐出される。エッチング液71は、基板9の回転による遠心力によって保護膜97上を径方向外方へと広がり、基板9の周縁部において、保護膜97から露出しているルテニウム含有層93に接触する(ステップS12)。エッチング液71は、基板9の下面92側にも回り込み、周縁部のほぼ全体がエッチング液71に覆われる。また、制御部8が光照射部4を制御することにより、光照射部4からのレーザ光L1,L2が、エッチング液71を介して基板9の周縁部に照射される(ステップS13)。これにより、ルテニウム含有層93に含まれるルテニウムの表面にホールが形成され、エッチング液71がホールと反応して、ルテニウム含有層93のエッチングが進行する。このとき、ルテニウム含有層93のうち保護膜97に被覆されている領域はエッチングされない。
【0052】
基板9の周縁部に対するレーザ光L1,L2の照射開始から所定の時間が経過すると、エッチング液71の供給、および、レーザ光L1,L2の照射が停止される。これにより、ルテニウム含有層93のエッチングが停止される。続いて、センターノズル33から基板9の中央部にリンス液が供給されるとともに、基板回転機構22による基板9の回転速度が増大され、リンス処理が行われる(ステップS14)。
【0053】
基板9に対するリンス処理が所定の時間行われると、基板9に対するリンス液の供給が停止され、基板9からの保護膜97の除去が行われる(
図9:ステップS21)。上述のように、保護膜97がSOG膜である場合、ステップS21では、例えば、フッ化水素(HF)が保護膜97に供給されることにより保護膜97が除去される。フッ化水素は、センターノズル33から吐出されてもよく、専用のノズルから吐出されてもよい。なお、保護膜97の種類、および、保護膜97の除去方法は様々に変更されてよい。
【0054】
保護膜97の除去が終了すると、センターノズル33から基板9の中央部にリンス液が供給され、基板9のリンス処理が行われる(ステップS22)。その後、基板9の回転速度が増大され、基板9の乾燥処理が行われる(
図6:ステップS15)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1aから搬出される。
【0055】
以上に説明したように、第1および第2の実施の形態に係る基板処理方法は、ルテニウム含有層93が表面に設けられた基板9を準備する工程(ステップS11)と、塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液71を基板9上のルテニウム含有層93に接触させる工程(ステップS12)と、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する工程(ステップS13)とを備える。これにより、毒性を有するガス状の四酸化ルテニウムや、エッチングが困難な二酸化ルテニウムの層が生成されることなく、ルテニウム含有層93を適切にエッチングすることができる。
【0056】
上記第1および第2の実施の形態では、ステップS12において、エッチング液71が基板9の周縁部に接触し、ステップS13において、当該周縁部に励起光が照射される。これにより、周縁部のルテニウム含有層93のみを適切に(すなわち、周縁部以外におけるルテニウム含有層93がエッチングされることなく)エッチングすることができる。
【0057】
好ましくは、ステップS13において、ルテニウムおよび塩素を含む水溶性化合物が生成される。これにより、生成物をエッチング液71と共に基板9上から排除し、ハウジング11の外部に排出することができる。その結果、ルテニウムを含む生成物が基板9上およびハウジング11内に残存することを抑制して、四酸化ルテニウムの発生をより確実に防止または抑制することができる。
【0058】
好ましくは、エッチング液71が界面活性剤を含む。これによりエッチング後の表面の凹凸を低減する、すなわち、均一なエッチングを実現することができる。
【0059】
好ましくは、上記励起光の波長が270nm以下である。これにより、ルテニウム含有層93をより確実にエッチングすることができる。なお、ルテニウムを励起させることが可能であるならば、励起光の波長が270nmより大きくてもよい。
【0060】
第1および第2の実施の形態に係る基板処理装置1は、ルテニウム含有層93が表面に設けられた基板9を保持する基板保持部21と、塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液71を基板9上に供給して、ルテニウム含有層93に接触させる液供給部5と、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する光照射部4とを備える。これにより、ガス状の四酸化ルテニウム等が生成されることなく、ルテニウム含有層93を適切にエッチングすることができる。
【0061】
図10は、第3の実施の形態に係る基板処理装置1bの構成を示す図である。基板処理装置1bは、基板9の上面91の配線部に対してウェットエッチングを行う装置である。基板処理装置1bでは、
図2の基板処理装置1と比較して、カバー部材6が省略されるとともに、液供給部5(図示省略)が供給ヘッド3のセンターノズル33に接続される。また、光照射部4aがハウジング11の上方に配置され、光照射部4aを移動する照射部移動機構49が設けられる。基板処理装置1bの他の構成は、基板処理装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0062】
光照射部4aは、光源および光学系を含み、ルテニウムを励起させる光(すなわち、励起光)を出射する。ハウジング11の上面部には、窓部112が設けられており、窓部112は、光照射部4aからの光に対して透過性を有する材料(例えば、石英ガラス等)により形成される。当該光は窓部112を介してハウジング11内に入射し、基板保持部21に保持された基板9の上面91において所定の大きさの領域に照射される。照射部移動機構49は、モータ等を駆動源として有し、上面91に略平行、かつ、互いに交差する2方向に光照射部4aを移動可能である。これにより、
図11に示すように、基板9の上面91を分割した複数の分割領域911のそれぞれに対して、光照射部4aからの光が照射される。
【0063】
図12Aおよび
図12Bは、基板9の上面91に設けられるルテニウム含有層93を示す断面図である。基板9上には絶縁膜95が設けられており、配線パターンである配線部96が絶縁膜95中に形成される。配線部96と絶縁膜95との間には、例えば、窒化タンタル(TaN)により形成された拡散防止膜94が設けられる。
図12Aの左側の例では、配線部96の本体(配線本体)がルテニウム含有層93である。
図12Bの左側の例では、配線部96の本体は、銅(Cu)等により形成される金属部961であり、金属部961の側面および底面を被覆する金属膜(例えば、ライナー膜)が、ルテニウム含有層93である。
【0064】
次に、基板処理装置1bにおける基板9の処理の流れについて、
図6に準じて説明する。まず、ルテニウム含有層93を上面91に有する基板9が、基板保持部21に保持されて準備される(ステップS11)。続いて、供給ヘッド3のセンターノズル33から基板9の上面91の中央部に向けてエッチング液71が一定時間吐出され、その後、エッチング液71の吐出が停止される。これにより、水平状態で保持された基板9の上面91上に、エッチング液71のパドル(エッチング液71の液膜)が形成され、エッチング液71が上面91のルテニウム含有層93に接触した状態が維持される(ステップS12)。典型的には、エッチング液71のパドルは、上面91の全体を覆う。エッチング液71のパドルの形成では、基板9が低速で回転されてもよい。
【0065】
供給ヘッド3が退避位置に移動した後、基板9の回転が停止した状態で、複数の分割領域911に対して、光照射部4aから光が順次照射される(ステップS13)。すなわち、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93に対して励起光が照射される。これにより、ルテニウム含有層93に含まれるルテニウムの表面にホールが形成され、エッチング液71がホールと反応して、ルテニウム含有層93のエッチングが進行する。
図12Aの右側の例では、ルテニウム含有層93がエッチングされ、リセスが形成される。
図12Bの右側の例では、金属部961およびルテニウム含有層93がエッチングされ、リセスが形成される。
【0066】
複数の分割領域911に対する励起光の照射が所定回数行われると、供給ヘッド3が
図10に示す位置に戻され、センターノズル33から基板9の中央部にリンス液が供給される。また、基板回転機構22により基板9の回転が開始される。これにより、基板9上のエッチング液71等を洗い流すリンス処理が行われる(ステップS14)。
【0067】
基板処理装置1bにおける基板9の処理では、リンス処理後、センターノズル33からIPA等の有機溶剤が基板9の上面91の中央部に供給されることが好ましい。このように、リンス液を表面張力が小さい有機溶剤に置換することにより、基板9の乾燥時におけるパターンの倒壊が防止される。センターノズル33からの有機溶剤の供給が停止された後、基板9の回転速度がさらに増大され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS15)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1から搬出される。
【0068】
以上に説明したように、第3の実施の形態に係る基板処理方法は、ルテニウム含有層93が表面に設けられた基板9を準備する工程(ステップS11)と、塩素および水を含み、酸化剤を含まないエッチング液71を基板9上のルテニウム含有層93に接触させる工程(ステップS12)と、エッチング液71が接触しているルテニウム含有層93に対して、ルテニウムを励起させる励起光を照射する工程(ステップS13)とを備える。これにより、ガス状の四酸化ルテニウム等が生成されることなく、ルテニウム含有層93を適切にエッチングすることができる。
【0069】
上記第3の実施の形態では、ルテニウム含有層93が基板9の上面91に設けられる。そして、ステップS12において、エッチング液71のパドルが基板9の上面91に形成され、ステップS13において、当該上面91に励起光が照射される。これにより、上面91の配線部96に含まれるルテニウム含有層93を適切にエッチングすることができる。もちろん、基板9の周縁部にも励起光が照射され、周縁部のルテニウム含有層93がエッチングされてもよい。
【0070】
ところで、上記リセスを、仮にドライエッチングにより形成する場合、その異方性により、側面に沿ってエッチング残差(サイドエフェクト)が生じることがある。これに対し、上記基板処理方法では、等方性を有するウエットエッチングが行われるため、エッチング残差の発生を抑制する、換言すると、エッチング深さの均一性を確保することができる。
【0071】
上記基板処理方法および基板処理装置1,1a,1bでは様々な変形が可能である。
【0072】
エッチング液71の種類等によっては、ステップS13にて生成される生成物は、ルテニウムおよび塩素を含む水溶性化合物以外であってもよい。また、エッチング液71が界面活性剤を含まなくてもよい。
【0073】
基板9の周縁部のルテニウム含有層93をエッチングする基板処理装置1,1aにおいて、基板9の側方、または、下面92側にノズルが設けられ、当該ノズルから周縁部にエッチング液が供給されてもよい。また、ルテニウム含有層93が設けられた主面を下方に向けた状態で、基板9が基板保持部21に保持されてもよい。
【0074】
基板処理装置1,1aにおいて、複数のカバー部材6が周方向に配列され、各カバー部材6において基板9の周縁部に対するエッチング液71の供給、および、励起光の照射が行われてもよい。さらに、
図10のように、光照射部4aが移動することにより、停止した基板9の周縁部に対して励起光が照射されてもよい。
【0075】
基板9の上面91のルテニウム含有層93をエッチングする基板処理装置1bにおいて、例えば、基板9の中央部から径方向外方に延びる線状領域に励起光を照射する光照射部が設けられ、基板9を回転することにより、上面91の略全体に励起光が照射されてもよい。この場合に、エッチング液71が基板9の上面91に連続的に供給されてもよい。
【0076】
基板処理装置1,1a,1bでは、エッチング液71を加熱するヒータが設けられてもよい。当該ヒータの一例は、基板9の周縁部の下方に配置されて基板9の下面92と対向する電熱ヒータである。
【0077】
基板処理装置1,1a,1bにおいて処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。また、基板の形状は、円板状以外であってもよい。
【0078】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0079】
1,1a,1b 基板処理装置
4,4a 光照射部
5 液供給部
9 基板
21 基板保持部
71 エッチング液
91 (基板の)上面
93 ルテニウム含有層
S11~S15,S21,S22 ステップ