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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069080
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20240514BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16B35/00 Q
F16B35/00 P
F16B5/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179873
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】門田 有史
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA06
3J001GB01
3J001GB06
3J001HA02
3J001HA07
3J001HA09
3J001JA10
3J001KA12
3J001KB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容易に精度良くボルト等の締結部材を位置決めすることが可能な締結構造を提供する。
【解決手段】締結構造1は、樹脂部材10を締結部材により被締結部に締結するためのものであり、樹脂部材10に形成され、締結部材20を挿通可能な挿通孔12と、挿通孔12に挿入可能なカラー部材40と、樹脂部材10がカラー部材40よりも径方向内側に向けて突出するように形成された少なくとも1つの突出部14と、を備える。締結部材20は、挿通孔12の周縁と係合可能な頭部22と、樹脂部材10を介して被締結部30に締結可能なネジ溝部24と、頭部22及びネジ溝部24の間に形成された胴部26と、を有する。胴部26は、頭部22側からネジ溝部24側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部28を有しており、突出部14における内径が、傾斜部28における最大径よりも小さく形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材を締結部材により被締結部に締結するための締結構造であって、
前記樹脂部材に形成され、前記締結部材を挿通可能な挿通孔と、
前記挿通孔に挿入可能なカラー部材と、
前記樹脂部材が前記カラー部材よりも径方向内側に向けて突出するように形成された少なくとも1つの突出部と、
を備え、
前記締結部材は、
前記挿通孔の周縁と係合可能な頭部と、
前記樹脂部材を介して前記被締結部に締結可能なネジ溝部と、
前記頭部及び前記ネジ溝部の間に形成された胴部と、
を有し、
前記胴部は、前記頭部側から前記ネジ溝部側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部を有しており、
前記突出部における内径が、前記傾斜部における最大径よりも小さく形成されていることを特徴とする締結構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記挿通孔の周方向において、互いに対向する少なくとも2か所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記突出部は、前記締結部材の前記被締結部への締結に伴い、前記傾斜部により押圧されて少なくとも一部が押し潰されることを特徴とする請求項1又は2に記載の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材をボルト等の締結部材で締結する締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンにおいて、合成樹脂製のシリンダヘッドカバー(以下、単に樹脂部材と称する)が、エンジンに組み付けられている(例えば、特許文献1)。上述した特許文献1に記載の樹脂部材の組み付けは、例えば、当該樹脂部材に形成されたボルト孔(挿通孔に相当)にボルト等を挿通し、当該ボルトをエンジン側のフランジに締結することで行われている。ここで、ボルト孔には、強度を維持するための金属カラー(カラー部材と称する)が挿入されている。
【0003】
また、ミッションケース等の組み付けにおいては、組み付け精度を高めるために位置決めピンが利用されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-170604号公報
【特許文献2】特開2017-158457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1で開示されるボルト孔やカラー部材は、樹脂部材やフランジの寸法誤差等を考慮し、通常、ボルトの径よりも大きな径で形成されている。したがって、ボルトをボルト孔に挿入した際に、ボルトが、ボルト孔(カラー部材)の内部で、がたつく懸念があった。そのため、上述した特許文献1で開示されている従来技術では、ボルトの位置決め精度が低下し、結果として樹脂部材の固定精度が低下する懸念があった。また、ボルト孔の軸心とボルトの軸心とがずれた状態でボルトが締結された場合は、外観上の見栄えが悪くなる懸念があった。特に、目視しづらいような場所で、組み付け作業を行う場合は、上記懸念がより顕著になる恐れがある。
【0006】
また、上述した特許文献2に記載の発明は、別途に位置決めピンを設けるためにコストが高く付く懸念がある。また、樹脂部材の組み付け位置次第では、位置決めピンを合わせるのが困難となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、容易に精度良くボルト等の締結部材を位置決めすることが可能な締結構造を提供することを目的とする。また、本発明は、見栄え良く、締結部材を被締結部に締結することが可能な締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の締結構造は、樹脂部材を締結部材により被締結部に締結するための締結構造であって、前記樹脂部材に形成され、前記締結部材を挿通可能な挿通孔と、前記挿通孔に挿入可能なカラー部材と、前記樹脂部材が前記カラー部材よりも径方向内側に向けて突出するように形成された少なくとも1つの突出部と、を備え、前記締結部材は、前記挿通孔の周縁と係合可能な頭部と、前記樹脂部材を介して前記被締結部に締結可能なネジ溝部と、前記頭部及び前記ネジ溝部の間に形成された胴部と、を有し、前記胴部は、前記頭部側から前記ネジ溝部側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部を有しており、前記突出部における内径が、前記傾斜部における最大径よりも小さく形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
上述した締結構造において、締結部材の胴部は、頭部側からネジ溝部側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部を有するものとされている。ここで、締結部材は、ボルトやネジ等が好ましく利用できる。また、上述した締結構造は、挿通孔に形成された突出部の内径が、前記傾斜部における最大径よりも小さく形成されている。したがって、締結部材が挿通孔に挿通された際に、傾斜部が突出部に係合する。これにより、挿通孔が、締結部材よりも大きな径に形成されている場合であっても、締結部材が挿通孔の径方向内側に向けて位置決めされ、被締結部に締結される。そのため、上述した締結構造によれば、作業性の向上が期待できる。ここで、被締結部は、例えば、ナットが取り付けられた被装着部材(例えば、金属や樹脂などの板状部材)や、ナットそのものにより形成するとよい。また、被装着部材に直接的にネジ孔が形成されていてもよい。このように、上述した締結構造によれば、外観上の見栄えが向上する。また、傾斜部が突出部に係合するので、挿通孔内での締結部材のがたつきを抑制できる。また、上述した締結構造は、挿通孔にカラー部材が設けられているので、挿通孔の強度を維持できる。したがって、上述した締結構造は、樹脂部材(挿通孔)の損傷等を抑制できる。ここで、カラー部材は、例えば、樹脂部材よりも硬質な金属、セラミックス、樹脂等を素材として形成すればよい。
【0010】
(2)上述した本発明の締結構造において、前記突出部は、前記挿通孔の周方向において、互いに対向する少なくとも2か所に形成されていることを特徴とするとよい。
【0011】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、締結部材の挿通孔への進入に伴って、当該締結部材が挿通孔の中心に向けて位置決め(以下、センタリングとも称する)される。ここで、互いに対向する突出部の挿通孔の径方向内側に向けての突出度合いは、それぞれ均等となるようにするとよい。これにより、上述した締結構造は、より精度の良い締結部材のセンタリングが期待できる。
【0012】
(3)上述した本発明の締結構造において、前記傾斜部は、前記胴部から前記頭部の下面側に亘って形成されると共に、前記胴部から前記頭部に向かうにつれ拡径するように傾斜形成されていることを特徴とするとよい。
【0013】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、締結部材を樹脂部材における挿通孔に挿入する際に、締結部材における傾斜部が、挿通孔における突出部に沿って案内される。これにより、締結部材が挿通孔の中心に向けて精度良くセンタリングされる。
【0014】
(4)上述した本発明の締結構造において、前記突出部は、前記締結部材の締結部材側中心軸線が、前記挿通孔の挿通孔側中心軸線と一致するように前記締結部材の径方向への移動を規制するものであることを特徴とするとよい。
【0015】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、締結部材の被締結部への締結に伴って、締結部材が、挿通孔側中心軸線と一致するように位置決めされる。そのため、挿通孔の径やカラー部材の径にマージンが設けられている場合であっても、上述した締結構造は、締結部材を正確に挿通孔や被締結部における中心に位置決めすることができる。
【0016】
(5)上述した本発明の締結構造において、前記締結部材の頭部は、前記胴部側の端部において拡径された拡径部を有しており、前記傾斜部は、前記胴部から前記拡径部の下面側に向かうにつれ拡径するように傾斜形成されていることを特徴とするとよい。
【0017】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、拡径部をより広く樹脂部材の上面に係合させることができる。そのため、上述した締結構造は、挿通孔が締結部材の胴部やネジ溝部の径よりも大きい径に形成されていても、確実に樹脂部材を被締結部に固定できる。また、上述した締結構造は、傾斜部が、前記胴部から前記拡径部の下面側に向かうにつれ拡径するように傾斜形成されているので、拡径部に合わせて、傾斜部の最大径を大きく採れる。そのため、上述した締結構造は、より確実に傾斜部を挿通孔12の周縁に係合させることができる。
【0018】
(6)上述した本発明の締結構造は、前記突出部の軸方向における長さが、前記傾斜部の軸方向における長さよりも長いことを特徴とするとよい。
【0019】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、傾斜部が突出部を乗り越えて必要以上に挿通孔の内部方向に進入することを抑制できる。また、上述した締結構造は、突出部の強度が確保しづらい場合であっても突出部の長さを確保することにより強度を維持できる。そのため、上述した締結構造は、傾斜部が突出部を押し潰し過ぎることを抑制できる。
【0020】
(7)上述した本発明の締結構造において、前記突出部は、前記挿通孔の軸線方向外部側から軸線方向内部側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された突出部側傾斜部を有することを特徴とするとよい。
【0021】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、締結部材の挿通孔への進入に伴って、より確実に締結部材を挿通孔や被締結部における径方向中心に位置決めできる。すなわち、突出部側傾斜部の傾斜に沿って締結部材が案内される。
【0022】
(8)上述した本発明の締結構造において、前記突出部は、前記締結部材の前記被締結部への締結に伴い、前記傾斜部により押圧されて少なくとも一部が押し潰されることを特徴とするとよい。
【0023】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、押し潰された突出部により挿通孔と締結部材との隙間が埋められる。これにより、上述した締結構造は、締結部材の挿通孔内でのがたつきを抑制できる。
【0024】
(9)上述した本発明の締結構造において、前記傾斜部は、前記締結部材の前記被締結部への締結に伴い、前記カラー部材の挿入端と当接することを特徴とするとよい。
【0025】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、傾斜部がカラー部材の挿入端に当接して支持される。そのため、上述した締結構造は、より精度良く樹脂部材を被締結部に締結(支持)できる。
【0026】
(10)上述した本発明の締結構造において、前記カラー部材は、一端側において、周方向の一部に切欠部を有しており、前記突出部は、前記切欠部において、前記カラー部材よりも径方向内側に向けて突出するように形成されていることを特徴とするとよい。
【0027】
上述した締結構造は、かかる構成とすることにより、カラー部材と、樹脂部材における突出部との干渉を抑制できる。そのため、上述した締結構造は、カラー部材の形状に応じて、突出部を様々な形態で形成できる。なお、カラー部材における切欠部は、突出部の形状に応じて形成するとよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、精度良くボルト等の締結部材を位置決めすることが可能な締結構造を提供することができる。また、本発明によれば、見栄え良く、締結部材を被締結部に締結することが可能な締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る締結構造の正面方向断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る締結構造において、締結部材を取り外した状態を表す正面方向断面図である。
図3】(a)は、本発明の締結構造を採用する樹脂部材の一部を拡大した斜視図であり、(b)は、(a)の締結構造を下面側から見た斜視図である。
図4】(a)は、変形例に係る締結構造を採用する樹脂部材を上面側から見た斜視図であり、(b)は、(a)の樹脂部材を下面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る締結構造1の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0031】
図1及び図2に示すように、締結構造1は、樹脂部材10をボルト20(締結部材20とも称する)により、被締結部30に締結するものである。締結構造1は、樹脂部材10、ボルト20、被締結部30、及びカラー部材40を備えるものとされている。締結構造1は、前記の他、樹脂部材10に形成された挿通孔12及び突出部14等を備えるものとされている。
【0032】
図3(a)は、自動車等の車両の室内に配されるシフトレバー等のカバーの一部を描いたものである。樹脂部材10は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の各種の素材の樹脂材料で構成されている。樹脂部材10は、例えば、全体が略矩形状に形成されており、樹脂部材10の四隅に本発明の締結構造1が採用された挿通孔12,12,12,12が形成されている。なお、以下では、樹脂部材10の表面側を上方側、裏面側を下方側と称することがある。
【0033】
図1図3に示すように、樹脂部材10には、挿通孔12が形成されている。挿通孔12は、樹脂部材10を上下方向に貫通するように形成されている。本実施形態では、挿通孔12が円形孔として形成されている。挿通孔12は、樹脂部材10や被締結部30等の寸法誤差等を考慮して、後述するボルト20よりも大径に形成されている。したがって、挿通孔12は、ボルト20の挿通が可能なものとされている。また、挿通孔12には、下方側からカラー部材40が挿入されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、被締結部30は、ベース部材32と、ナット34と、を有している。ベース部材32は、例えば、車室におけるインストルメントパネル(図示せず)の近傍に設けられている。ベース部材32は、樹脂や金属等を素材として形成されており、本実施形態では、板状部材として形成されている。ベース部材32には、挿通孔12と対応する位置に開孔32Aが形成されている。また、開孔32Aの裏面側には、ナット34が溶接や接着等により取り付けられている。なお、ナット34を排し、ベース部材32に直接的にネジ孔が設けられていてもよい。
【0035】
カラー部材40は、例えば、樹脂部材10よりも硬質な金属、セラミックス、樹脂等を素材として形成されている。カラー部材40は、挿通孔12の強度を維持するために設けられている。カラー部材40は、図3(a)に示すように、一端側において、周方向の一部に切欠部42を有している。本実施形態では、切欠部42が、周方向の互いに対向する2か所に形成されている。カラー部材40は、予め挿通孔12に圧入等により挿入され固定される。
【0036】
図1及び図2に示すように、ボルト20(締結部材20)は、例えば、金属を素材として形成されている。ボルト20は、挿通孔12の周縁と係合可能な頭部22と、樹脂部材10を介してナット34に締結可能なネジ溝部24と、頭部22及びネジ溝部24の間に形成された胴部26等を有している。
【0037】
頭部22は、上面視(図示せず)において六角形状をなす頭部本体22Aと、頭部本体22Aの下面に配された拡径部22B等を有している。
【0038】
頭部本体22Aは、ボルト20をナット34に締結する際にボルト20を締め込むために設けられている。頭部本体22Aは、用途に応じて様々な形状や大きさに形成できる。
【0039】
拡径部22Bは、頭部22における胴部26側の端部が拡径されることにより形成されている。拡径部22Bは、挿通孔12の周縁(上面)と係合することができる。したがって、上述した締結構造1は、拡径部22Bをより広く樹脂部材10の上面に係合させることができる。そのため、上述した締結構造1は、挿通孔12がボルト20の胴部26やネジ溝部24の径よりも大きい径に形成されていても、確実に樹脂部材10をベース部材32に固定できる。
【0040】
胴部26は、頭部22側からネジ溝部24側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部28を有している。また、胴部26は、本実施形態では、外径がネジ溝部24の外形よりも大径に形成されている。なお、胴部26は、外形がネジ溝部24の外形よりも大径のものだけではなく、外径がネジ溝部24と同径のものなど各種の形状や径に形成できる。
【0041】
傾斜部28は、胴部26から頭部22(拡径部22B)の下面側に亘って形成されると共に、胴部26から頭部22(拡径部22B)に向かうにつれ拡径するように傾斜形成されている。すなわち、傾斜部28は、正面視において逆傘状に形成されている。傾斜部28は、後述する樹脂部材10における突出部14と係合することができる。また、上述したように、本実施形態では、拡径部22Bが設けられると共に、傾斜部28が、胴部26から拡径部22Bの下面側に向かうにつれ拡径するように傾斜形成されている。したがって、上述した締結構造1は、傾斜部28の最大径を、拡径部22Bに合わせて大きく採ることができる。そのため、上述した締結構造1は、より確実に傾斜部28を挿通孔12の周縁に係合させることができる。
【0042】
ネジ溝部24は、ナット34と螺合可能なように、ナット34と対応するネジ溝が形成されている。ネジ溝部24の少なくとも一部は、挿通孔12を貫通して、挿通孔12の下方側から突出することでナット34と螺合可能なものとされている。
【0043】
突出部14は、樹脂部材10の一部として形成されている。突出部14は、図3(a)及び図3(b)に示すように、カラー部材40の切欠部42において、カラー部材40よりも径方向内側に向けて突出するように形成されている。すなわち、切欠部42は、突出部14と、カラー部材40との干渉を抑制することができる。これにより、上述した締結構造1は、カラー部材40の形状に応じて、突出部14を様々な形態で形成できる。なお、カラー部材40における切欠部42は、突出部14の形状に応じて形成すればよい。
【0044】
突出部14における内径は、傾斜部28における最大径よりも小さく形成されている。突出部14は、例えば、樹脂部材10を成型により形成する際に、樹脂部材10と一体的に形成することができる。なお、突出部14は、樹脂部材10を成型後に、後から形成してもよい。突出部14は、本実施形態では、挿通孔12の周方向において、互いに対向する2か所に形成されている。詳細は後述するが、突出部14は、図1及び図2に示すように、ボルト20をナット34に締結するに伴って、ボルト20の傾斜部28と係合する。また、ボルト20のナット34への締結がさらに進行することにより、突出部14は、傾斜部28によって、その一部が押し潰されるものとされている。
【0045】
突出部14は、挿通孔12における軸方向の長さが、傾斜部28の軸方向(ボルト20の長手方向)における長さよりも長くなるように形成されている。そのため、ボルト20をナット34に締結した際に、傾斜部28が突出部14を乗り越えて必要以上に挿通孔12の内部方向に進入することを抑制できる。また、かかる構成とすることにより、上述した締結構造1は、突出部14の強度が確保しづらい場合であっても突出部14の長さを確保することにより強度を維持できる。そのため、上述した締結構造1は、傾斜部28が突出部14を押し潰し過ぎることを抑制できる。
【0046】
また、突出部14は、ボルト20の締結部材側中心軸線が、挿通孔12の挿通孔側中心軸線と一致するようにボルト20の径方向への移動を規制するものとされている。言い換えると、ボルト20は、ベース部材32(ナット34)への締結に伴って、挿通孔12の中心に向けて位置決め(センタリングとも称する)される。そのため、挿通孔12の径やカラー部材40の径にマージンが設けられている場合であっても、上述した締結構造1は、ボルト20を正確に挿通孔12やナット34における中心にセンタリングすることができる。
【0047】
また、上述したように、突出部14は、挿通孔12の周方向において、互いに対向する2か所に形成されている。したがって、上述した構成によれば、ボルト20の挿通孔12への進入に伴って、ボルト20が挿通孔12の中心に向けて位置決めされる。ここで、互いに対向する突出部14,14における挿通孔12の径方向内側に向けての突出度合いは、それぞれ均等となるようにするとよい。これにより、より精度の良い締結部材20のセンタリングが期待できる。
【0048】
また、上述したように、ボルト20の胴部26には傾斜部28が形成されているので、ボルト20を樹脂部材10における挿通孔12に挿入する際に、傾斜部28が、挿通孔12における突出部14に沿って案内される。これにより、ボルト20が挿通孔12の中心により精度良くセンタリングされる。
【0049】
以上が、本発明の一実施形態に係る締結構造1の構成であり、次に、本発明の締結構造1を利用したボルト20のベース部材32への締結の方法について、以下に説明する。
【0050】
図2に示すように、ボルト20とベース部材32との間に樹脂部材10が配され、挿通孔12が、ベース部材32におけるナット34と一致するように重ね合わされる。続いて、ボルト20が挿通孔12に挿入される。また、ボルト20が、ナット34に螺合(締結)されるに伴って、挿通孔12の内部方向に進行する。ボルト20がねじ込まれるに伴って、ボルト20の傾斜部28が、突出部14に当接(係合)しながらさらに内部方向に進行する。
【0051】
これに伴い、突出部14は、傾斜部28により押圧されて少なくとも一部が押し潰される。これにより、押し潰された突出部14により挿通孔12とボルト20との隙間が埋められる。したがって、上述した締結構造1は、ボルト20の挿通孔12内でのがたつきをより一層抑制できる。なお、ボルト20のねじ込みは、必要に応じ、突出部14との係合する位置で留めることもできる(例えば、ボルト20と挿通孔12との間の隙間が少ない場合など)。
【0052】
また、ボルト20のナット34への締結に伴い、傾斜部28が、カラー部材40の挿入端(上端部)と当接するものとされている。これにより、傾斜部28がカラー部材40の挿入端に当接して支持される。そのため、上述した締結構造1は、より精度良く樹脂部材10をベース部材32(被締結部30)に締結(支持)できる。これにより、上述した締結構造1は、樹脂部材10(挿通孔12)の強度を維持しながら、樹脂部材10を被締結部30と締結させることができる。
【0053】
以上が、本発明の締結構造1を利用したボルト20のベース部材32への締結の方法であり、次に本発明の一実施形態に係る締結構造1の作用効果について説明する。
【0054】
上述した締結構造1において、ボルト20(締結部材20)の胴部26は、頭部22側からネジ溝部24側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された傾斜部28を有するものとされている。また、上述した締結構造1は、挿通孔12に形成された突出部14の内径が、傾斜部28における最大径よりも小さく形成されている。したがって、ボルト20が挿通孔12に挿通された際に、傾斜部28が突出部14に係合する。これにより、挿通孔12が、ボルト20よりも大きな径に形成されている場合であっても、ボルト20が挿通孔12の径方向内側に向けて位置決めされ、ベース部材32(被締結部30)に締結される。そのため、上述した締結構造1によれば、作業性の向上が期待できる。また、上述した締結構造1によれば、外観上の見栄えが向上する。また、傾斜部28が突出部14に係合するので、挿通孔12内でのボルト20のがたつきを抑制できる。また、上述した締結構造1は、挿通孔12にカラー部材40が設けられているので、挿通孔12の強度を維持できる。したがって、上述した締結構造1は、樹脂部材10(挿通孔12)の損傷等を抑制できる。
【0055】
以上が、本発明の一実施形態に係る締結構造1の構成及び作用効果であり、次に本発明の変形例に係る締結構造100の構成及び作用効果について説明する。なお、変形例に係る締結構造100は、締結構造1における突出部14の構成が異なる以外は、締結構造1と同様であるので、同様の部分の説明は省略する。また、締結構造1における構成部材と同一の構成部材は、同一の符号を用いていることに留意されたい。
【0056】
図4(a)及び図4(b)に示すように、変形例に係る締結構造100は、挿通孔12の円周方向において、互いに向き合う4つの突出部14、14,14,14を有するものとされている。具体的には、カラー部材40に一対の切欠部42,42が設けられており、一対の切欠部42,42の間には、それぞれ一対の突出部14,14が互いに向き合うように配されている。
【0057】
したがって、上述した締結構造100は、ボルト20を4つの突出部14,14,14,14で、挿通孔12の内径方向中心に向けて位置決めできる。そのため、上述した締結構造100は、より精度良く、ボルト20を挿通孔12にセンタリングできる。これにより、より一層外観上の見栄えの向上が期待できる。
【0058】
以上が、本発明の一実施形態に係る締結構造1及び締結構造100の構成及び作用効果であるが、本発明の締結構造1及び締結構造100は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0059】
本実施形態では、樹脂部材10が、車両におけるシフトレバーのカバーとして形成されたものを例示したが、樹脂部材10には、各種の素材、形状、大きさのものが利用できる。また、本実施形態では、被締結部30が、ベース部材32とナット34との組み合わせで構成されているが、被締結部30は、ベース部材32単体で形成されていてもよい。かかる場合は、ベース部材32に直接的にネジ孔を形成すればよい。また、ベース部材32やナット34は、各種の形状や大きさのものが利用できる。また、本実施形態では、樹脂部材10に形成される挿通孔12が円形のものを例示したが、挿通孔12は、必要に応じ、各種の形状や大きさに形成できる。例えば、挿通孔12が楕円形状に形成されていてもよい。かかる場合は、カラー部材40や突出部14の形状や配置を変更すればよい。また、本実施形態では、カラー部材40として金属を素材とするものを例示したが、カラー部材40には、各種の素材、形状、大きさのものが利用できる。
【0060】
また、突出部14は、少なくとも1つが形成されていればよく、2つ以上の突出部14が形成されていてもよい。かかる場合は、締結部材20が、挿通孔12の挿通孔側中心軸線に近付くように、突出部14が均等に配されるようにすることが望ましい。
【0061】
また、本実施形態では、突出部14における上端側が平坦に形成されているが、本発明は、これには限定されない。例えば、上述した本発明の締結構造1において、突出部14は、挿通孔12の軸線方向外部側から軸線方向内部側に向かうにつれ縮径するように傾斜形成された突出部側傾斜部を有することを特徴としてもよい。かかる構成とすることにより、上述した締結構造1は、締結部材20の挿通孔12への進入に伴って、より確実に締結部材20を挿通孔12や被締結部30における径方向中心にセンタリングできる。すなわち、突出部側傾斜部の傾斜に沿って締結部材20が案内される。
【0062】
また、締結部材20は、本実施形態では、ボルトが用いられているが、これには限定されず、ネジなど各種のものが利用できる。また、締結部材20における頭部22、ネジ溝部24、及び胴部26は、上述した実施形態に限定されず、各種の形状、大きさ、ピッチのものが利用できる。また、本実施形態では、頭部22に拡径部22Bが設けられているが、拡径部22Bは、必要に応じて設ければよく、拡径部22Bを有しないものとすることもできる。また、傾斜部28の傾斜角や最大径は、発明の目的を達成可能な範囲で各種の傾斜角や最大径のものが利用できる。
【0063】
また、本実施形態や変形例では、突出部14が、挿通孔12の周方向において、互いに対向するように配されているが、本発明は、これには限定されず、各種の位置に突出部14を配することができる。かかる場合は、締結部材20が、できるだけ挿通孔12の径方向中心に向けて位置決めされるように配することが望ましい。
【0064】
また、本実施形態では、突出部14の軸方向における長さが、傾斜部28の軸方向における長さよりも長く形成されているが、本発明は、これには限定されない。例えば、突出部14の軸方向における長さが、傾斜部28の軸方向における長さよりも短く形成されているものや同等の長さに形成されているものも利用可能である。
【0065】
また、本実施形態では、突出部14が、締結部材20の被締結部30への締結に伴い、傾斜部28により押圧されて少なくとも一部が押し潰されるものとしたが、本発明は、これには限定されない。かかる場合は、突出部14が、締結部材20と係合するものとすればよい。また、本実施形態では、傾斜部28が、締結部材20の被締結部30への締結に伴い、カラー部材40の挿入端と当接するものとしたが、傾斜部28が、間接的にカラー部材40に支持されるものとしてもよい。また、カラー部材40に設けられる切欠部42は、突出部14の形状や数量等に応じて、各種の形状、大きさ、数量で形成することができる。
【0066】
以上が、本発明に係る締結構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の締結構造は、各種の樹脂部品等を組み付ける際に利用することができる。また、本発明の締結構造は、自動車等の車両におけるカバー等の樹脂部品を組み付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 :締結構造
10 :樹脂部材
20 :締結部材(ボルト)
22 :頭部
22B :拡径部
24 :ネジ溝部
26 :胴部
30 :被締結部
40 :カラー部材
42 :切欠部
100 :締結構造
図1
図2
図3
図4