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特開2024-69090推定装置、推定モデル生成装置、推定方法、推定モデル生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069090
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】推定装置、推定モデル生成装置、推定方法、推定モデル生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179885
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】522439490
【氏名又は名称】アイラト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】角谷 倫之
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 凌太
(72)【発明者】
【氏名】神宮 啓一
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐利
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健二
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC01
4C082AE03
4C082AN01
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】放射線治療計画からより少ない手順で安全性の検証結果を作成する。
【解決手段】放射線治療計画に関するデータを入力として、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する推定モデルに放射線治療計画に関するデータを入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する、推定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画に関するデータを入力として、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する推定モデルに放射線治療計画に関するデータを入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する、
推定装置。
【請求項2】
前記放射線治療計画に関するデータは、放射線に関するデータと、前記放射線を照射する放射線治療装置のパラメータを含む、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記放射線治療装置のパラメータは、前記放射線治療装置において出力する放射線を遮蔽する遮蔽物に関するパラメータを含む、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記安全性の検証結果は、ガンマパス率である、
請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項5】
放射線治療計画に関するデータを入力サンプルとし、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力サンプルとするデータセットを取得するデータセット取得部と、
前記データセットを用いて、放射線治療計画に関するデータから放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する推定モデルを生成する生成部と、
を備える推定モデル生成装置。
【請求項6】
放射線治療計画に関するデータを入力として、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する推定モデルに放射線治療計画に関するデータを入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する、
推定方法。
【請求項7】
放射線治療計画に関するデータを入力サンプルとし、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力サンプルとするデータセットを取得するデータセット取得ステップと、
前記データセットを用いて、放射線治療計画に関するデータから放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する推定モデルを生成する生成ステップと、
を有する推定モデル生成方法。
【請求項8】
コンピュータに請求項6に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータに請求項7に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定モデル生成装置、推定方法、推定モデル生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)を用いた放射線治療を行う機器の中に強度変調放射線治療を行う機器がある。強度変調放射線治療を行う機器は、例えば線源と照射対象の間にマルチリーフコリメータ(Multileaf collimator: MLC)と呼ばれる遮蔽物を備え、MLCの位置を変えること及び出力する放射線ビームの強さを調節することで患者に照射する放射線の位置や強さを制御することができる。これにより、放射線治療装置は、特定の場所に集中して放射線を照射することができ、腫瘍のみに高線量を与えつつ、周辺の正常組織の線量を下げることで有害事象を減らすことができる。
【0003】
強度変調放射線治療を行うとき、理想的な治療を行うためには複雑な計算や機器の動きを必要とするため、従来の単純な原体照射と比較して誤差が生じる可能性がある。そのため、安全性検証が必要とされている。安全性の検証はいくつかの方法により行われる。1つは線量分布を用いる方法である。この方法において、治療計画装置を用いて患者体内における線量分布を計算した後、ファントムの画像上で分布の再計算を行うことでファントム内においてどのような線量分布になるかをシミュレーションする。その後、実際に放射線治療装置を使用して放射線をファントムに照射することで、シミュレーションとの一致度を確認することで安全性を検証している。
【0004】
また、線量分布の測定には線量測定用フィルム(ガフクロミックフィルム(登録商標))が用いられることもある。また、線量分布でなく、EPID(Electronic Portal Imaging Device)を使用して取得されたフルエンス分布を計算することにより安全性を検証する方法もある。
【0005】
さらに、安全性の検証方法としては、評価点線量検証と呼ばれる方法もある。評価点線量検証において、所定の点における線量を計算し計画線量を算出し、電離箱線量計などを使用して、当該点における絶対線量を測定し、計画線量と絶対線量を比較する。
【0006】
放射線治療装置において深層学習を用いた研究としては、深層学習を用いて、ファントムに実際に放射線を照射せずに、ファントムにおいてシミュレーションした線量分布のみからシミュレーションと実際の照射結果との一致度予測する技術がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tomori S, Kadoya N, Takayama Y, Kajikawa T, Shima K, Narazaki K, Jingu K. A deep learning-based prediction model for gamma evaluation in patient-specific quality assurance. Med Phys. 2018 Jul 31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1の方法においてもファントムにおいてシミュレーションした線量分布を計算する必要がある。シミュレーションにより作成した線量分布は安全性の検証のためだけに作成するものであり、実際の患者への照射に直接用いるものではない。そのため、依然として治療計画から検証結果を作成するには時間と労力を要する。
本発明の目的は、より少ない手順で放射線治療計画から安全性の検証結果を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、放射線治療計画に関するデータを入力として、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する推定モデルに放射線治療計画に関する情報を入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する、推定装置である。
【0010】
本発明の一態様は、放射線治療計画に関するデータを入力サンプルとし、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力サンプルとするデータセットを取得するデータセット取得部と、前記データセットを用いて、放射線治療計画に関するデータから放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する推定モデルを生成する生成部と、を備える推定モデル生成装置である。
【0011】
本発明の一態様は、放射線治療計画に関するデータを入力として、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する推定モデルに放射線治療計画に関する情報を入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する、推定方法である。
【0012】
本発明の一態様は、放射線治療計画に関するデータを入力サンプルとし、前記放射線治療計画の安全性の検証結果を出力サンプルとするデータセットを取得するデータセット取得ステップと、前記データセットを用いて、放射線治療計画に関するデータから放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する推定モデルを生成する生成ステップと、を有する推定モデル生成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射線治療計画からより少ない手順で安全性の検証結果を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る推定モデル生成装置1の構成を示す図である。
図2】2次元の行列で表現されるMLCの位置情報の一例である。
図3】推定モデルの生成方法の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る推定装置2の構成の一例を示す図である。
図5】推定モデル生成装置1の動作を示すフローチャートである。
図6】推定装置2の動作を示すフローチャートである。
図7】本実験において使用した推定モデルを示す図である。
図8】交差検証の結果を示す図である。
図9】本実施形態の方法におけるMAEと相関関数を示す図である。
図10】本実施形態の方法(提案法)と従来の方法により推定した場合のMAEと相関係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る推定モデル生成装置1の構成を示す図である。推定モデル生成装置1は、データセット取得部10、生成部12、推定モデル出力部14及び記憶部19を備える。
【0016】
データセット取得部10は、データセットを取得する。データセットは、放射線治療計画に関するデータを入力サンプルとし、放射線治療計画の安全性の検証結果を出力サンプルとするデータセットである。データセット取得部10は取得したデータセットを記憶部19に記録する。
【0017】
放射線治療計画に関するデータは、例えば患者に照射する放射線に関するデータを含む。放射線に関するデータは、例えば放射線分布(線量分布やフルエンス分布)である。放射線分布は、治療計画に基づいて医師の指示通りに放射線が照射されるように作成される。放射線分布は、放射線治療における放射線分布であればよく、CTにおける放射線分布であってもMRIにおける放射線分布であってもよい。データセットにおける放射線分布は、異なる断面(例えば、矢上断、冠状断及び軸位断)における放射線分布を複数含んでもよい。データセットにおける放射線分布は、同じ種類の断面であるが異なる位置の断面における放射線分布を複数含んでもよい。
【0018】
放射線分布は、例えば2次元行列により表現される。放射線分布が同じ種類の断面であるが異なる位置の断面における放射線分布を複数含む場合、放射線分布は3次元行列により表現されてもよい。
【0019】
放射線分布が3次元行列により表現されるとき、各次元における要素の数は、放射線を照射する患者の大きさに依存する。そのため、放射線分布の各次元における要素の数が異なることがある。この問題に対処するために、放射線分布の各次元における要素をゼロパディングしてもよい。これにより、放射線分布の各次元における要素の数を同じにすることができる。
放射線分布が2次元行列により表現される場合であっても、同様にしてゼロパディングにより処理してもよい。
【0020】
放射線の関するデータは、例えば電離箱線量計により測定された絶対線量であってもよい。
【0021】
また、放射線治療計画に関するデータは、放射線を照射する放射線治療装置のパラメータを含む。放射線治療装置のパラメータは、例えばMLCの位置情報である。放射線治療装置のパラメータは、例えば放射線治療装置が出力する放射線の量である。放射線治療装置はMLCの位置や出力する放射線の量を制御することで、照射対象が照射される放射線の量や照射される位置などを制御する。
【0022】
MLCの位置情報は、例えば2次元の行列で表現される。1つの次元は各々のMLCを示し、もう1つの次元は放射線照射中の各々のタイミングを示す。2次元の行列で表現されるMLCの位置情報は、例えば放射線照射中の各々のタイミングにおける各々のMLCの基準位置から移動した距離を示す。
【0023】
図2は、2次元の行列で表現されるMLCの位置情報の一例である。行列の要素は、放射線照射中の各々のタイミングにおける各々のMLCの基準位置から移動した距離である。
【0024】
放射線治療装置のパラメータは、例えばJawの位置情報を含む。JawもMLC同様開閉することで出力する放射線の量を調整する。放射線治療装置のパラメータは、例えば放射線治療装置の種類を含む。放射線治療装置のパラメータは、例えば放射線治療装置のQA(Quality Assurance)結果を含む。QA結果は以前のQA結果と比較することで放射線治療装置の異常や故障の発見に使用されることから、安全性の検証結果に使用することができると考えられる。
【0025】
放射線治療計画に関するデータは、放射線治療計画を作成する治療計画装置3のパラメータを含んでもよい。治療計画装置3のパラメータは、治療計画装置3を受け入れた時のコミッショニングデータ、治療計画装置3が使用する線量計算アルゴリズム、治療計画装置3の種類などを含んでもよい。
【0026】
放射線治療計画に関するデータは、治療に使用するビームのエネルギーを含んでもよい。放射線治療計画に関するデータは、治療における投与線量を含んでもよい。
【0027】
放射線治療計画の安全性の検証結果は、例えばガンマパス率(GPR)である。また、放射線治療計画の安全性の検証結果は、点線量、DD(Dose Difference)やDTA(Distance to Agreement)であってもよい。
【0028】
生成部12は、記憶部19に記憶されたデータセットに基づいて推定モデルを生成する。推定モデルは、放射線治療計画に関するデータを入力として、放射線治療計画の安全性の検証結果を出力する。生成部12は、機械学習の手法により推定モデルを生成する。機械学習の手法は特に限定されず、例えばニューラルネットワークモデルを用いる手法であってもよく、バギングやブースティングと呼ばれる手法により複数の決定木を作成し、複数の決定木から解を得る推定モデルを作成してもよい。
【0029】
推定モデル出力部14は、生成される推定モデルを後述する推定装置2に出力する。
【0030】
図3は、推定モデルの生成方法の一例を示す図である。推定モデル生成装置1は、線量に関するデータ、放射線治療装置のパラメータ、ガンマパス率に基づいて推定モデルを生成する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る推定装置2の構成の一例を示す図である。推定装置2は、治療計画データ取得部20、推定部24、推定結果出力部26及び記憶部29を備える。記憶部29は、推定モデル生成装置1から入力される推定モデルを記憶する。
【0032】
治療計画データ取得部20は、放射線治療計画を作成する治療計画装置3から放射線治療計画に関するデータを取得する。
【0033】
推定部24は、推定モデルに放射線治療計画に関するデータを入力することで、放射線治療計画の安全性の検証結果を推定する。推定結果出力部26は、推定部24による推定結果を出力する。推定結果出力部26は、例えば表示装置に推定結果を出力することで、推定結果を表示装置に表示させる。
【0034】
図5は、推定モデル生成装置1の動作を示すフローチャートである。初めにデータセット取得部10がデータセットを取得する(ステップS10)。その後、生成部12は、データセットに基づいて推定モデルを生成する(ステップS12)。推定モデル出力部14は、生成された推定モデルを出力する(ステップS14)。
【0035】
図6は、推定装置2の動作を示すフローチャートである。治療計画データ取得部20は、治療計画装置3から放射線治療計画に関するデータを取得する(ステップS20)。推定部24は、推定モデルを使用して、安全性を推定する(ステップS24)。推定結果出力部26は、推定結果を出力する(ステップS26)。
【0036】
(実験例)
以下、実験例を説明する。データセットとして96個の症例を用意した。入力サンプルとして患者CT上の線量分布とMLCの位置情報(MLC motion map)を用意した。出力サンプルとして、実測されたガンマパス率(GPR)を用意した。
トレーニングデータとテストデータが3:1になるようにデータセットを分割し、4分割交差検証を行った。推定モデル生成装置1は、トレーニングデータを用いて推定モデルを生成した。テストデータを用いて推定モデルによる推定精度を検証した。トレーニングデータの20%をバリデーションデータとして用いて過学習を監視した。
【0037】
図7は、本実験において使用した推定モデルを示す図である。本実験においては、線量分布として矢状断、冠状断及び軸位断のそれぞれ1枚の線量分布、計3枚の線量分布を用いた。GPRは、全照射点に対し、実測した線量が計画した線量の±N%の範囲に入り、実測した照射点が計画した照射点から±Mmmの範囲に入る照射点の割合として表現した。つまり、GPRの2%3mmは、全照射点に対し、実測した線量が計画した線量の±2%の範囲に入り、実測した照射点が計画した照射点から±3mmの範囲に入る照射点の割合である。
推定モデルは、矢状断、冠状断及び軸位断のそれぞれ1枚の線量分布とMLC motion mapが入力され、GPRとしてN=1,2,3及びM=1,2,3の場合の計9つの値が出力される。線量分布とMLC motion mapは2次元ベクトルとして表現される。線量分布とMLC motion mapはそれぞれ畳み込み層、プーリング層(Max Pooling)、活性化関数層(ReLU)、バッチ正規化層に3度通され、アフィン層で全結合された後、加算される。その後、出力される9つの値に対応する全結合、活性化が行われた後、ガンマパス率が出力される。
損失関数としてはHuber損失を使用した。エポック数は200であった。バッチサイズは4であった。学習率は0.001であった。
【0038】
矢状断の線量分布は68×146の2次元の行列であり、最初の畳み込み層で68×146×16の3次元の行列に変換され、最初のプーリング層で22×48×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、2番目の畳み込み層で20×46×16の3次元の行列に変換され、2番目のプーリング層で6×15×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、3番目の畳み込み層で4×13×16の3次元の行列に変換され、3番目のプーリング層で1×4×16の3次元の行列に変換される。その後、ドロップ層を経て、アフィン層で全結合され、20×1の2次元の行列に変換される。
【0039】
冠状断の線量分布は64×200の2次元の行列であり、最初の畳み込み層で64×200×16の3次元の行列に変換され、最初のプーリング層で21×66×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、2番目の畳み込み層で19×64×16の3次元の行列に変換され、2番目のプーリング層で6×21×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、3番目の畳み込み層で4×19×16の3次元の行列に変換され、3番目のプーリング層で1×6×16の3次元の行列に変換される。その後、ドロップ層を経て、アフィン層で全結合され、20×1の2次元の行列に変換される。
【0040】
軸位断の線量分布は143×242の2次元の行列であり、最初の畳み込み層で143×242×16の3次元の行列に変換され、最初のプーリング層で47×80×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、2番目の畳み込み層で45×78×16の3次元の行列に変換され、2番目のプーリング層で15×26×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、3番目の畳み込み層で13×24×16の3次元の行列に変換され、3番目のプーリング層で4×8×16の3次元の行列に変換される。その後、ドロップ層を経て、アフィン層で全結合され、20×1の2次元の行列に変換される。
【0041】
MLC motion mapは110×178の2次元の行列であり、最初の畳み込み層で110×178×16の3次元の行列に変換され、最初のプーリング層で36×59×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、2番目の畳み込み層で34×57×16の3次元の行列に変換され、2番目のプーリング層で11×19×16の3次元の行列に変換される。その後、活性化されバッチ正規化された後、3番目の畳み込み層で9×17×16の3次元の行列に変換され、3番目のプーリング層で3×5×16の3次元の行列に変換される。その後、ドロップ層を経て、アフィン層で全結合され、20×1の2次元の行列に変換される。
【0042】
3つの線量分布とMLC motion mapの入力から生成された4つの20×1の2次元の行列は、それぞれの要素が加算される。その後、出力される9つのガンマパス率に対応するアフィン層、活性化層、アフィン層を通り1つの値に変換される。最終的に変換され出力される値がガンマパス率の推定値である。
【0043】
治療計画の作成にはEclipse(登録商標)を使用した。放射線治療装置にはTrueBeam STxを使用した。ファントムには1220型ArcCHECKを使用した。
【0044】
推定モデルの精度の指標として、平均絶対誤差(MAE)と相関係数を用いた。MAEは、推定したGPRと実測したGPRとの差の絶対値の平均値である。相関係数はPearsonの相関係数を使用した。
【0045】
図8は、交差検証の結果を示す図である。同じデータセットを使用して4度交差検証を行ったが、いずれにおいても学習が収束し、バリデーションエラーが上昇せず、過学習が起きていないことが示された。
【0046】
図9は、本実施形態の方法におけるMAEと相関関数を示す図である。図10は、本実施形態の方法(提案法)と従来の方法により推定した場合のMAEと相関係数を示す図である。従来の方法とは非特許文献1に記載の方法である。本実施形態の方法は、従来の方法と比較して、検証結果としてガンマパス率の推定結果を線量分布とMLCの位置情報からすぐに出力することができるが、MAEは少し劣り、相関係数はほぼ同じ値である。
【0047】
このように、本実施形態によれば、推定装置2は、ファントムにおいて線量分布をシミュレーションすることなく、治療計画において作成される放射線治療計画に関するデータに基づいて、放射線治療計画の安全性を推定することができる。これにより、推定装置2は、放射線治療計画から、より少ない手順で安全性の検証結果を作成することができる。
特に、放射線治療計画において作成される放射線分布は、複雑であるときGPRが低下することが知られている。放射線分布が複雑であるとは、例えば腫瘍と正常な組織とが重なっている部分において線量に勾配がついている場合である。つまり、放射線分布にはGPRが低下する要因が含まれているということができる。そのため、放射線分布からGPRを推定することができると考えることができる。
また、放射線分布は放射線の照射を完了したときに全体としてどのような分布になるかを示しているのに対し、MLCの位置情報や出力される放射線の量など放射線を照射する放射線治療装置のパラメータは、照射される放射線に関する情報を含む。そのため、放射線分布とともに放射線治療装置のパラメータを推定モデルの入力とすることで、推定モデルは照射される放射線に関する情報に基づいてGPRを推定することができ、より精度高くGPRを推定できると考えられる。
【0048】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0049】
放射線治療計画における線量分布は、患者においてシミュレーションされた線量分布であるが、ファントムにおいてシミュレーションされた線量分布を含んでもよい。
【0050】
上述した実施形態における推定モデル生成装置1及び推定装置2の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、推定モデル生成装置1及び推定装置2の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 推定モデル生成装置、10 データセット取得部、12 生成部、14 推定モデル出力部、19 記憶部、2 推定装置、20 治療計画データ取得部、24 推定部、26 推定結果出力部、29 記憶部、3 治療計画装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10