(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069091
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】発酵促進装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/10 20060101AFI20240514BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12M1/10
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179886
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】522439504
【氏名又は名称】株式会社土と野菜
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷川 巧
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA11
4B029BB01
4B029CC01
4B029EA02
4B029GB02
(57)【要約】
【課題】樹脂フィルムで収容部を構成する際に、内部に螺旋状の凹凸を形成することができるとともに、収容器の形状を保った状態で回転させることができるようにした発酵促進装置を提供する。
【解決手段】内部に糞尿や食品残渣物を投入できるようにした円筒状の樹脂フィルムで構成された収容部2と、当該樹脂フィルムで構成された収容部2の外周部分に巻き付けられ、円筒状の樹脂フィルムの内部に螺旋状の凹凸を形成する螺旋部材3と、当該螺旋部材3を取り付けた樹脂フィルムを回転させる回転装置4とを備える。そして、収容部2をベース71に投入された液体の浮力で浮かしながら回転させるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に糞尿や食品残渣物を投入できるようにした円筒状の樹脂フィルムで構成された収容部と、
当該樹脂フィルムで構成された収容部の外周部分に巻き付けられ、円筒状の樹脂フィルムの内部に螺旋状の凹凸を形成する螺旋部材と、
当該螺旋部材を取り付けた樹脂フィルムを回転させる回転装置と、
を備えた発酵促進装置。
【請求項2】
前記回転装置が、前記螺旋部材を回転させるようにしたものである請求項1に記載の発酵促進装置。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの外側に設けられたカバー体を備え、
当該カバー体と前記樹脂フィルムとの間に液体を収容するようにした請求項1に記載の発酵促進装置。
【請求項4】
前記螺旋部材を加熱させる加熱手段を設けた請求項1に記載の発酵促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞尿や食品残渣物などを発酵させるようにした発酵促進装置に関するものであって、発酵による収容部の腐食を防止するとともに、発酵対象物を均一に発酵させるようにした発酵促進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜の糞尿や食品残渣物など(以下、「発酵対象物」と称する)を発酵させる場合、
図7に示すような装置を用いて発酵させている。
【0003】
図7において、符号91は、円筒状の収容部であって、内部に発酵対象物を投入できるようにしたものである。また、符号92は、撹拌装置であって、収容部91の中に投入された発酵対象物を定期的に撹拌させるようにしたものであり、また、符号93は、温水などを通す加熱装置であって、内部を一定温度に保温して、発酵を促進させるようにしたものである。
【0004】
そして、このような装置を用いて発酵対象物を発酵させる場合、収容部91の中に発酵対象物を投入し、加熱装置93で一定温度に保った状態で定期的に内部を撹拌させ、全体を発酵させた後に、内部から発酵対象物を取り出すようにしている。
【0005】
しかしながら、このような装置で発酵対象物を発酵させる場合、次のような問題を生ずる。
【0006】
すなわち、このような装置では、収容部内の発酵対象物を取り除いた後でなければ、次の発酵対象物を投入することができない。このため、発酵対象物の量が多い場合は、収容部を複数用意しておかなければならない。
【0007】
これに対して、下記の特許文献1には、横長円筒状の内部に螺旋状の爪を有する収容部を設け、順次、上流側から発酵対象物を投入して収容部を回転させ、撹拌と発酵をさせながら、下流側に発酵対象物を排出させるようにした装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献に示されるような装置において、収容部内を螺旋状に構成する場合、内壁に螺旋状の突起を設けておかなければならず、製造コストが掛かってしまう。また、このような収容部や螺旋状の突起を金属などで構成した場合、金属が腐食してしまうため、定期的に、金属部分を塗装したり、部品を交換したりしなければならないといった問題も生ずる
【0010】
一方、腐食を防止するために、収容部を樹脂などで構成することも考えられるが、樹脂は熱伝導性が悪いために、外部から熱を効率的に伝えることができない。これに対して、樹脂をフィルム状に薄くして外部からの熱を伝達させるようにしてもよいが、このように樹脂を薄くすると、内部に螺旋状の凹凸部分を形成することができず、また、フィルムの可撓性により、収容器の形状を保った状態で回転させることが困難になる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、樹脂フィルムで収容部を構成する際に、内部に螺旋状の凹凸を形成することができるとともに、収容器の形状を保った状態で回転させることができるようにした発酵促進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、内部に糞尿や食品残渣物を投入できるようにした円筒状の樹脂フィルムで構成された収容部と、当該樹脂フィルムで構成された収容部の外周部分に巻き付けられ、円筒状の樹脂フィルムの内部に螺旋状の凹凸を形成する螺旋部材と、当該螺旋部材を取り付けた樹脂フィルムを回転させる回転装置と、を備えるようにしたものである。
【0013】
このように構成すれば、樹脂フィルムによって収容部の腐食を防止することができるとともに、その収容部の外側に巻き付けられた螺旋部材によって、内部に螺旋状の凹凸を形成し、収容部を回転させて発酵対象物を撹拌させながら下流側に搬送させることができるようになる。また、収容部を薄い樹脂フィルムで構成しているため、外部からの熱を発酵対象物に伝えて、発酵を促進させることができるようになる。
【0014】
また、このような発明において、前記回転装置として、螺旋部材を回転させるようにする。
【0015】
このように構成すれば、薄い樹脂フィルムで収容部を構成した場合であっても、螺旋部材を用いて樹脂フィルムで構成された収容部を回転させることができるようになる。
【0016】
さらに、前記樹脂フィルムの外側に設けられたカバー体を備え、当該カバー体と前記収容部との間に液体を収容するようにする。
【0017】
このように構成すれば、液体による浮力によって収容部の撓みを防止しつつ、液体を介して発酵対象物を一定温度にしておくことができるようになる。
【0018】
また、前記螺旋部材を加熱させる加熱手段を設けることもできる。
【0019】
このように構成すれば、螺旋部材を介して、内部の発酵対象物を加熱させることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内部に糞尿や食品残渣物を投入できるようにした円筒状の樹脂フィルムで構成された収容部と、当該樹脂フィルムで構成された収容部の外周部分に巻き付けられ、円筒状の樹脂フィルムの内部に螺旋状の凹凸を形成する螺旋部材と、当該螺旋部材を取り付けた樹脂フィルムを回転させる回転装置と、を備えるようにしたので、収容部の腐食を防止することができるとともに、その収容部の外側に巻き付けられた螺旋部材によって、内部を螺旋状にして、収容部を回転させて発酵対象物を撹拌させながら下流側に搬送させることができるようになる。また、収容部を薄い樹脂フィルムで構成しているため、外部からの熱を発酵対象物に伝えて、発酵を促進させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態における発酵促進装置の側面概略図
【
図6】他の実施の形態における螺旋部材と連結棒を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
この実施の形態における発酵促進装置1は、家畜の糞尿や食品残渣物などを順次投入しながら下流側に搬送し、撹拌や加熱をさせながら発酵させるようにしたものであって、
図1に示すように、横長円筒状に構成された収容部2と、この収容部2の外周部分に巻き付けられる螺旋部材3と、この螺旋部材3を回転させる回転装置4と、収容部2を覆うように設けられたカバー体7とを設けるようにしたものである。そして、このように構成することによって、収容部2を薄い樹脂フィルムで構成した場合であっても、収容部2の内部に螺旋状の凹凸を形成することができ、回転装置4で収容部2を回転させて、発酵対象物を撹拌させながら下流側に搬送させるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
まず、収容部2は、横長円筒状に構成されるものであって、可撓性を有する薄い樹脂フィルムで構成される。この樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ナイロンなど、種々の素材を用いることができるが、ここでは、フッ素樹脂フィルムを用いるようにしている。このフッ素樹脂フィルムは、化学的安定性に優れており、適度な可撓性や伸縮性を有し、また、非粘着性を有しているため、収容部2に発酵対象物を収容させた際に、発酵対象物をスムーズに撹拌・搬送させることができる。そして、このような素材を横長円筒状に構成し、左右両端に開口部21を形成できるようにしている。
【0025】
螺旋部材3は、この収容部2の外側に巻き付けられるものであって、金属などの部材で構成される。そして、この螺旋部材3で樹脂フィルムの外周部分から強く締め付けることで、収容部2の内側に、螺旋状の凹凸を形成できるようにしている。この螺旋部材3としては、
図5に示すように、金属部材の軸線方向に沿って中空部31を設けておき、その中空部に一定温度の液体や気体を通して、収容部2の外側から発酵対象物を加熱させるようにしてもよく、あるいは、このような中空部31を設けることなく、金属の熱伝導性を用いて収容部2を加熱させてもよい。そして、この螺旋部材3を二本設けて、二重螺旋構造にして、螺旋部材3を回転させるようにしている。
【0026】
回転装置4は、この螺旋部材3の長手方向に沿った軸を中心として、螺旋部材3を回転させるようにしたものであって、螺旋部材3の両端部に設けられた回転円板41(
図2および
図3参照)を回転させるように構成されている。この回転円板41を回転させる場合、回転円板41の表面にギアを噛み合わせておき、そのギアを介して回転させるようにしておく。この回転円板41の中央部分には、収容部2の左右両端の開口部21に対応した中央開口部42が設けられており、この中央開口部42に樹脂フィルムの端部を取り付け、発酵対象物を通せるようにしている。そして、左右両端に設けられた回転円板41を回転装置4で回転させることによって、螺旋部材3を介して収容部2を回転させるようにしている。
【0027】
これらの回転円板41の一方側に設けられた投入部5(
図2参照)には、発酵対象物を投入できるようにしたホッパー51が設けられており、このホッパー51や回転円板41の中央開口部42を介して、発酵対象物を収容部2に順次投入できるようになっている。
【0028】
一方、他方の回転円板41側には、
図3に示すように、発酵した発酵対象物を排出できるようにした排出口61を有する排出部6が設けられており、この排出部6を介して発酵対象物やガスなどを排出できるようにしている。
【0029】
このように構成された収容部2の外側には、収容部2を覆うカバー体7が設けられる。このカバー体7は、収容部2との間に断熱層を形成して、収容部2の内部を保温させるようにしたものであって、床面に設置させるベース71と、このベース71の上方に設けられる半円筒状の被覆体72などによって構成される。このうち、ベース71は、液体73を収容できるようにした壁面を外周部分に起立して設けており、下方に設けられた加熱装置8を介して液体73を加熱し、その液体73を介して間接的に収容部2を一定温度にできるようにしている。一方、被覆体72は、収容部2との間に断熱層を形成できるようにしたものであって、日光を通すことができるとともに、内部の発酵状態を視認できるような透明な部材で構成される。
【0030】
次に、このように構成された発酵促進装置1の使用方法について説明する。
【0031】
まず、発酵対象物を投入部5のホッパー51から投入する。すると、その発酵対象物は、ホッパー51を介して、回転円板41の中央開口部42を通り、収容部2に入り込む。
【0032】
その状態で、回転装置4を駆動させて回転円板41を回転させると、螺旋部材3が回転し、その螺旋部材3などに保持されている収容部2も一緒に回転する。このとき、回転速度としては、排出口61に搬送されるまでの間に発酵が完了する速度に設定しておき、例えば、数日に一回転程度の速度で回転させる。
【0033】
このように収容部2を回転させると、螺旋部材3によって螺旋状に形成された凹凸によって、発酵対象物が長手方向に搬送され、また、収容部2の回転によって上下に撹拌されるようになる。
【0034】
このように撹拌させながら発酵対象物を搬送させていく途中において、加熱装置8を用いて収容部2内の発酵対象物の発酵を促進させる。このとき、螺旋部材3を介して収容部2を加熱させてもよく、あるいは、ベース71に収容された液体73を介して間接的に加熱させてもよい。そして、これらの温度が低下しないように、被覆体72で断熱しておく。
【0035】
そして、順次、ホッパー51から発酵対象物を投入し、温度を一定に保ちながら、撹拌させて搬送していく。
【0036】
このとき、発酵対象物を収容部2に収容させていると、収容部2の中央部分が撓んでしまうことになるが、ベース71に収容された液体73による浮力よって収容部2を浮かすことができるため、ベース71と収容部2を接触させることなく、収容部2を回転させることができるようにする。
【0037】
そして、このように発酵させた発酵対象物を排出口61から排出していく。
【0038】
このように上記実施の形態によれば、内部に糞尿や食品残渣物を投入できるようにした円筒状の樹脂フィルムで構成された収容部2と、当該樹脂フィルムで構成された収容部2の外周部分に巻き付けられ、円筒状の樹脂フィルムの内部に螺旋状の凹凸を形成する螺旋部材3と、当該螺旋部材3を取り付けた樹脂フィルムを回転させる回転装置4と、を備えるようにしたので、収容部2の腐食を防止することができるとともに、その収容部2の外側に巻きつけられた螺旋部材3によって、内部を螺旋状にして、収容部2を回転させて発酵対象物を撹拌させながら下流側に搬送させることができるようになる。また、収容部2を薄い樹脂フィルムで構成しているため、外部からの熱を発酵対象物に伝えて、発酵を促進させることができるようになる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0040】
例えば、上記実施の形態では、横長状に螺旋部材3を設ける場合、螺旋部材3の中央部分が撓んでしまうため、
図6に示すように、螺旋部材3の外側に連結棒31を設けておき、その連結棒31と螺旋部材3を連結させて、螺旋部材3の撓みを防止させるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、ベース71に収容された液体73によって収容部2を浮かせて回転させるようにしたが、螺旋部材3の外周部分に、間欠的に筒状の部材を設けておき、この筒部材の外周にローラーを取り付けて、撓みを防止させながら回転させるようにしてもよい。
【0042】
さらに、上記実施の形態では、発酵対象物を排出口61から排出させるようにしたが、発酵時に発生するガスと固形物とを分離して回収できるようにしてもよい。
【0043】
なた、上記実施の形態では、回転円板41を回転させるようにしたが、螺旋部材3の外周に円筒状の部材を設け、この円筒状の部材にローラーを接触させて、回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・発酵促進装置
2・・・収容部
21・・・開口部
3・・・螺旋部材
31・・・連結棒
4・・・回転装置
41・・・回転円板
42・・・中央開口部
5・・・投入部
51・・・ホッパー
6・・・排出部
61・・・排出口
62・・・カーテン
7・・・カバー体
71・・・ベース
72・・・被覆体
73・・・液体
8・・・加熱装置