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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069099
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】変色性プランター
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240514BHJP
【FI】
A01G9/02 101U
A01G9/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179908
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 明雄
(72)【発明者】
【氏名】梅本 寛
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC37
2B327ND01
(57)【要約】
【課題】 工業的な管理ができない家庭用の植物栽培においても、培地の水分量を視覚的に確認することができ、適切なタイミングで水やりを行うことが可能となる利便性に優れた変色性プランターを提供する。
【解決手段】 不織布により形成される植物育成用のプランター2であって、外側面の少なくとも一部に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層3を設けてなり、植物5への水やりによって培地4を介して水分がプランターの内面から外面に漏出することで多孔質層3が様相変化する変色性プランター1。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布により形成される植物育成用のプランターであって、外側面の少なくとも一部に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層を設けてなり、
植物への水やりによって培地を介して水分がプランターの内面から外面に漏出することで多孔質層が様相変化する変色性プランター。
【請求項2】
前記多孔質層とプランター外側面の間に着色層を設けてなる請求項1記載の変色性プランター。
【請求項3】
前記多孔質層が基材表面に設けられた変色性不織布の裏面が、プランター外側面と接触した状態でニードルパンチ法により一体化してなる請求項1記載の変色性プランター。
【請求項4】
前記多孔質層と基材の間に着色層を設けてなる請求項3記載の変色性プランター。
【請求項5】
基材表面に前記多孔質層と着色層が順に積層された変色性不織布の表面が、プランター外側面と接触した状態でニードルパンチ法により一体化してなる請求項1記載の変色性プランター。
【請求項6】
プランターを構成する不織布の目付量が、変色性不織布の基材の目付量よりも大きいことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の変色性プランター。
【請求項7】
前記変色性不織布の基材の目付量が30~100g/mの範囲にある請求項3乃至6のいずれかに記載の変色性プランター。
【請求項8】
前記プランターを構成する不織布の目付量が101~1000g/mの範囲にある請求項1乃至7のいずれかに記載の変色性プランター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色性プランターに関する。詳細には、土壌中の水分の有無を外側表面から視認可能な変色性プランターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を栽培するプランター(植木鉢)としては、陶器やプラスチックからなるものが広く用いられてきたが、軽量で破損し難く、通気性と保湿性に優れることから、近年は不織布等からなる布製のプランターの需要が高まっている。
布製のプランターは、植物栽培時に壁面を介して、土壌や不織布等の培地へ外気を取り込み易いため、植物の根はりが良くなり、育成速度を速めるとして、家庭栽培のみならず、工業的な庭園システムにも用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-169550号公報
【特許文献2】特開2011-130757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような庭園システムにより、工業的に栽培される場合、複数のプランターを同じ条件でシステム的に管理するため、一律で決まった条件での環境付加や水やりを行うことができる。そのため、水やりのタイミングを気にすることなく布製プランターを用いることができるものであるが、特許文献2のような家庭用プランターにおいては、配置する場所によって、日光やエアコン等の風が当たる位置では培地が乾燥しやすく、日陰になる位置では培地の水分が蒸発し難いという差異が生じるため、水分量の確認がし難いという欠点を有している。水分量の確認のためには、プランター表面に触れて濡れ具合を確認する必要があるので、触れる箇所によって濡れ具合が異なるような条件での設置時には、適切な水分量の確認がし難く、水やりのタイミングを計ることが困難であった。
【0005】
本発明は、前述の不具合を解消するものであり、工業的な管理ができない家庭用の植物栽培においても、培地の水分量を視覚的に確認することができ、適切なタイミングで水やりを行うことが可能となる利便性に優れた変色性プランターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不織布により形成される植物育成用のプランターであって、外側面の少なくとも一部に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層を設けてなり、植物への水やりによって培地を介して水分がプランターの内面から外面に漏出することで多孔質層が様相変化する変色性プランターを要件とする。
更に、前記多孔質層とプランター外側面の間に着色層を設けてなることを要件とする。
更に、前記多孔質層が基材表面に設けられた変色性不織布の裏面が、プランター外側面と接触した状態でニードルパンチ法により一体化してなること、前記多孔質層と基材の間に着色層を設けてなることを要件とする。
更に、基材表面に前記多孔質層と着色層が順に積層された変色性不織布の表面が、プランター外側面と接触した状態でニードルパンチ法により一体化してなることを要件とする。
更には、プランターを構成する不織布の目付量が、変色性不織布の基材の目付量よりも大きいこと、前記変色性不織布の基材の目付量が30~100g/mの範囲にあること、前記プランターを構成する不織布の目付量が101~1000g/mの範囲にあることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、植物栽培時に培地の水分量を視覚的に確認することが容易にできるようになるため、水量の過不足なく、適切なタイミングで水やりを行うことが可能となる利便性に優れた変色性プランターが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の変色性プランターの一実施例の説明図である。
図2図1の要部断面説明図である。
図3】本発明の変色性プランターの他の実施例の要部断面説明図である。
図4】本発明の変色性プランターの他の実施例の要部断面説明図である。
図5】本発明の変色性プランターの他の実施例の要部断面説明図である。
図6】本発明の変色性プランターの他の実施例の要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の変色性プランターは、植物とともに植物育成用の培地を収容する容器であり、不織布により形成される。プランター(容器)の外側面(外気と触れる部分)には、少なくとも一部に多孔質層が設けられる。前記構成により、植物への水やりによって注がれた水分が、培地を介してプランターの内面(培地収容空間)から外面(外気と触れる部分)に漏出することで、多孔質層が様相変化し、水分の有無を視覚的に確認することが可能なものとなる。
【0010】
プランター(容器)を構成する不織布は、繊維を集積させたウェブから繊維を結合させる方法によって、複数の種類に分けられる。ウェブの繊維を結合させる方法には、樹脂接着剤によって繊維の交点を接着するケミカルボンド法、熱可塑性樹脂を混合しておき熱圧着により繊維同士を融着させるサーマルボンド法、ニードルで繰り返し突き刺して繊維同士を交絡させるニードルパンチ法、高圧の水流を噴射することにより繊維同士を交絡させる水流交絡法がある。
本発明でプランターへ多孔質層を形成する際に、多孔質層を設けた変色性不織布を用いる場合、変色性不織布と重ね合わされた状態でニードルを突き刺すことにより、不織布の繊維の一部を引き出して、変色性不織布の目を通過させると共に、変色性不織布の糸と交絡されるため、ニードルで突き刺したときに繊維が引き出され易いという点で、ニードルパンチ法または水流交絡法によって繊維同士が交絡されている不織布が望ましい。
【0011】
不織布を構成する繊維の原料は特に限定されず、綿、麻、羊毛などの天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、これらのうちの二種以上の混合繊維とすることができる。尚、JIS規格では、獣毛を湿熱処理することにより繊維同士を交絡させたフェルトは不織布に含めず、合成繊維100%または合成繊維を混合した繊維同士をニードルパンチ法で交絡させたフェルトは不織布に含めているが、本発明では、何れのフェルトも不織布に含められるものとして定義する。
【0012】
前記不織布は、土壌等の培地を収容した状態で変形することなく形状保持されるものであり、水やり後の吸液保持力を備えた不織布が用いられる。目付量としては101~1000g/m、好ましくは120~500g/mの範囲のものが適用され、更に好ましくは150~420g/mの範囲のものが適用される。目付量が101g/mより小さいとプランターとしての強度が弱まる虞があり、更に水分保持性能も低下する虞がある。1000g/mより大きいと製品重量が大きくなったり、給水時の重量が大きくなり、取り扱い性が低下する虞がある。
【0013】
前記プランター(容器)外側面には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層が設けられる。特に、開口部近傍よりも土壌等の培地を収容する箇所(高さ)に設けることが好ましい。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及び/又は珪酸塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
尚、前記珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0014】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2質量部であり、より好ましくは、0.8~1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、形成される多孔質層の実用的な皮膜強度を得難くなる傾向にあり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪化する虞がある。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、バインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。また、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、容器の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30質量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、更に皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層中には着色剤を含有させることもできる。
【0015】
前記多孔質層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等によりプランター外側面へ直接形成できる。
更に、別体からなる不織布等の布を基材とし、前述の方法により基材へ多孔質層を配設した変色性不織布を形成した後、プランター外側面と一体化する方法が適用できる。一体化の手段としては、接着、圧着等も可能であるが、不織布間で繊維同士を絡合させて固着する特性からプランター外側面と変色性不織布が強固に密着できるとともに、水分が多孔質層側へ流出する微細孔を複数形成できることから、ニードルパンチ法を用いることが好ましい。尚、変色性不織布は、裏面(多孔質層を設けていない面)をプランター外側面と接触させて一体化することもできるし、基材の厚さや透過率や目付量に応じて表面(多孔質層を設けた面)をプランター外側面と接触させて一体化することもできる。
前述の変色性不織布を用いた製造は、均等な膜厚の多孔質層が形成し易く、製造効率が高くなることから、特に好適である。
【0016】
前記多孔質層中に着色剤を含有させたり、プランター外側面と多孔質層の間に着色剤を含む水透過性の着色層を設けることもできる。更に、変色性不織布を用いる場合には、基材と多孔質層の間や、多孔質層の表面、基材の裏面(多孔質層を設けていない面)に着色層を設けることもできる。尚、着色層は図柄や模様等の形態(像)で形成することも可能であり、より付加価値を高めることができる。
着色層は、プランター外側面や変色性不織布の基材とは異なる色相の有色着色剤を含有させることにより、多孔質層が吸液した状態でプランターや基材の色相とは異なる、着色層による色相を視認でき、プランター内部の水分の有無をより明瞭に視覚判別することが可能となる。
【0017】
また、多孔質層には撥水性樹脂層を設けることもできる。
撥水性樹脂層は、シリコン系、パラフィン系、ポリエチレン系、アルキルエチレン尿素系、フッ素系等の撥水性樹脂から選ばれる撥水性樹脂を含む撥水処理液を多孔質層上に適宜形状の像を形成するよう付着させ、浸透乾燥して得られる多孔質層に内在し、共存する層である。
撥水性樹脂層は多孔質層の一部に内在し、共存状態に配設されているので、前記撥水性樹脂層の共存箇所の多孔質層は撥水効果により吸水状態が形成されず、不透明状態が保持される。
従って、乾燥状態では判別し難い撥水性樹脂層と多孔質層が、撥水性樹脂層の非配設部分の多孔質層への吸液により、判別可能となる。
ここで、多孔質層に共存状態に配設される撥水性樹脂層は、多孔質層の上層から容器外表面に位置する多孔質層の下層まで撥水性樹脂層が共存した状態の他、多孔質層の上層から多孔質層の中間まで撥水性樹脂層が共存した状態、多孔質層の中間に撥水性樹脂層が共存した状態、多孔質層の中間から多孔質層の下層まで撥水性樹脂層が共存した状態が挙げられる。
【0018】
更に、多孔質層中に透明性芯物質を金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料やカラーフロップ性を有する透明性金属光沢顔料を含有させて乾燥状態においては低屈折率顔料による色が視認されると共に、吸液状態では透明性金属光沢顔料による金属光沢色が視認される変色性プランターを得ることもできる。
透明性金属光沢顔料としては、天然雲母、合成雲母、ガラス、アルミナを芯物質とし、その表面にチタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、鉄等の金属酸化物を被覆した顔料が挙げられる。
カラーフロップ性を有する透明性金属光沢顔料としては、コレステリック液晶型透明性金属光沢顔料、酸化珪素を一種又は二種以上の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料が挙げられる。
尚、吸液状態で明瞭な金属光沢色を視認するためには、前記着色層中に金属光沢顔料を含有させることが好ましい。
【0019】
更に、多孔質層中に可逆熱変色性材料や光変色性材料を含有させたり、プランター外側面と多孔質層の間に可逆熱変色性材料や光変色性材料を含む層を設けることにより、温度変化や光照射により多彩な色変化を付与することもできる。
【0020】
前記変色性不織布を構成する基材は、表面に多孔質層や着色層を形成するための不織布であるので、表面凹凸が小さい目付量の低いものが用いられる。前記目付量としては30~100g/m、好ましくは40~80g/mの範囲のものが適用される。目付量が30g/mより小さいと多孔質層や着色層を印刷塗工で形成する際に印刷塗工用インキが裏面に抜けてしまい充分な厚みの層が形成し難くなる傾向にある。100g/mより大きいと不織布表面の凹凸が大きくなり均等な厚みの多孔質層を形成し難くなる虞がある。
また、前記目付量であれば吸液によって不織布自体が透過性を発現して下層が視認可能となるため、基材が最外面となるような構成(すなわち、基材に積層した多孔質層側がプランター外側面と接触した状態)であっても、吸液時の色相変化の視認を妨げることなく、多孔質層表面を保護することができると共に、触れた際の風合いが良いものとなる。
【実施例0021】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(図1、2参照)
プランター(容器)2となる十字型(1辺が10cmの正方形パネル5面からなる)の灰色不織布(ポリエステル製、目付量330g/m)の表面に、青色水性スクリーン印刷用インキを用いてパネル3面分に跨るように幅3cmの帯状にベタ状印刷を施すことで着色層32を形成した後、該着色層32上にシリカ微粉末とアクリル樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ状印刷し、乾燥硬化させて白色の多孔質層3を形成した。
多孔質層3が内面となるように、十字型正方形パネルの4面を底面となるパネルに対して垂直に立て、それぞれ接触する辺を縫製することで容器形状とした後、多孔質層側が外面になるように折り返すことで、変色性プランター1を得た。
【0022】
得られた変色性プランター1には、プランター(容器)2の内部に土壌や不織布等の培地4を収容することができ、培地4には種子や苗木等の植物5を植えて水をやることで栽培可能な形態である。
栽培形態において、植物5への水やりで培地4へ水分が浸透していき、培地4が十分な量を蓄えたところで、プランター2の内面から外面に水分が露出していく。その際、水やり前は多孔質層3を設けた箇所は、白色の帯状装飾として視認されていたものが、水分の露出に伴って容器外表面まで水が滲み出すことから、プランター外側面に設けた多孔質層3は水を吸液して透明化し、吸液した部分は下層(着色層32)の青色が視認されるため、プランター内に十分な水分が存在していることを目視により容易に判断することが可能となる。青色の状態は水分が存在する限り永続的に視覚することができ、培地4の水分が減少してプランター外側面が乾燥してくると青色に変色した部分が元の白色に戻っていった。この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0023】
実施例2(図3参照)
実施例1で用いた着色層32を除き、多孔質層3を形成するスクリーン印刷用インキ中に、ピンク色顔料を添加する以外は同様にして変色性プランター1を得た。
【0024】
得られた変色性プランター1には、プランター(容器)2の内部に土壌や不織布等の培地4を収容することができ、培地4には種子や苗木等の植物5を植えて水をやることで栽培可能な形態である。
栽培形態において、植物5への水やりで培地4へ水分が浸透していき、培地4が十分な量を蓄えたところで、プランター2の内面から外面に水分が露出していく。その際、水やり前は多孔質層3を設けた箇所は、淡ピンク色の帯状装飾として視認されていたものが、水分の露出に伴って容器外表面まで水が滲み出すことから、プランター外側面に設けた多孔質層3は水を吸液し、吸液した部分はプランターの灰色と多孔質層3のピンク色が混ざって赤茶色に視認されるため、プランター内に十分な水分が存在していることを目視により容易に判断することが可能となる。赤茶色の状態は水分が存在する限り永続的に視覚することができ、培地4の水分が減少してプランター外側面が乾燥してくると淡ピンク色に変色した部分が元の淡ピンク色に戻っていった。この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0025】
実施例3(図4参照)
ポリエチレンテレフタレート90%とレーヨン10%からなる目付量60g/mの不織布を基材31とし、その表面に、赤色水性スクリーン印刷用インキを用いて帯状の花柄印刷を施すことで着色層32を形成した後、該赤色着色層32上に、シリカ微粉末とウレタン樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いて幅3cmの帯状にベタ状印刷し、乾燥硬化させて白色の多孔質層3を形成することで、花柄32が多孔質層3で隠蔽された変色性不織布6を得た。
【0026】
プランター(容器)2となる十字型(1辺が13cmの正方形パネル5面からなる)の灰色不織布(ポリエステル製、目付量180g/m)の表面(側壁となるパネルのいずれか1面)に、先に得られた変色性不織布6の裏面が重なるように積層して、ニードルパンチ法により二種の不織布を一体化することで変色性積層体を得た。
得られた積層体の多孔質層3が内面となるように、十字型正方形パネルの4面を底面となるパネルに対して垂直に立て、それぞれ接触する辺を縫製することで容器形状とした後、多孔質層側が外面になるように折り返すことで、変色性プランター1を得た。
【0027】
得られた変色性プランター1には、プランター(容器)2の内部に土壌や不織布等の培地4を収容することができ、培地4には種子や苗木等の植物5を植えて水をやることで栽培可能な形態である。
栽培形態において、植物5への水やりで培地4へ水分が浸透していき、培地4が十分な量を蓄えたところで、プランター2の内面から外面に水分が露出していく。その際、水やり前は多孔質層3を設けた箇所は、白色の帯状装飾として視認されていたものが、水分の露出に伴って容器外表面まで水が滲み出すことから、プランター外側面に設けた多孔質層3は水を吸液して透明化し、吸液した部分は下層(着色層32)の赤色の花柄が視認されるため、プランター内に十分な水分が存在していることを目視により容易に判断することが可能となる。花柄の表示状態は水分が存在する限り永続的に視覚することができ、培地の水分が減少してプランター外側面が乾燥してくると花柄表示部分が元の白色に戻っていった。この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0028】
実施例4(図5参照)
レーヨン60%とポリエチレンテレフタレート40%からなる目付量50g/mの不織布を基材31とし、その表面に、シリカ微粉末とウレタン樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ状印刷し、乾燥硬化させて白色の多孔質層3を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、青色水性スクリーン印刷用インキを用いて複数のスマイルマークを等間隔で全面印刷し、着色層32を形成することで、多孔質層上に複数のスマイルマークが施された変色性不織布6を得た。
【0029】
得られた変色性不織布6を、灰色ポリエステル製の大判不織布(目付量350g/m)の表面に、着色層32が接触するように(すなわち、変色性不織布の表面側を接触載置する)全面を覆い、ニードルパンチ法により二種の不織布を一体化することで変色性積層体を得た。更に、1辺が13cmの正方形パネル5面からなる十字型に打ち抜くことで、プランター(容器)2となる不織布積層体とし、変色性不織布側が内面となるように、十字型正方形パネルの4面を底面となるパネルに対して垂直に立て、それぞれ接触する辺を縫製することで容器形状とした後、多孔質層側が外面になるように折り返すことで、変色性プランター1を得た。
【0030】
得られた変色性プランター1には、プランター(容器)2の内部に土壌や不織布等の培地4を収容することができ、培地4には種子や苗木等の植物5を植えて水をやることで栽培可能な形態である。
栽培形態において、植物5への水やりで培地4へ水分が浸透していき、培地4が十分な量を蓄えたところで、プランター2の内面から外面に水分が露出していく。その際、水やり前は表面全体が基材31の白色不織布として視覚されるが、水分の露出に伴って容器外表面まで水が滲み出すことから、変色性不織布6に設けた多孔質層3は水を吸液して透明化し、吸液した部分は下層(着色層32)青色のスマイルマークが基材を介して視認されるため、プランター内に十分な水分が存在していることを目視により容易に判断することが可能となる。スマイルマークの表示状態は水分が存在する限り永続的に視覚することができ、培地4の水分が減少してプランター外側面が乾燥してくるとスマイルマークの表示部分が元の白色に戻っていった。この様相変化は繰り返し行うことができた。
本構成においては、変色性不織布6として基材31に積層された着色層32や多孔質層3が外面に露出することなく、基材31によって覆われた状態で存在するため、長期使用による剥離や劣化等を抑制することが可能なものとなる。
【0031】
実施例5(図6参照)
ポリエチレンテレフタレート100%からなるピンク色に着色された目付量80g/mの不織布を基材31とし、その表面に、シリカ微粉末とアクリル樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ状印刷し、乾燥硬化させることで白色の多孔質層3を形成することで変色性不織布6を得た。
【0032】
プランター(容器)2となる十字型(1辺が10cmの正方形パネル5面からなる)の灰色不織布(ポリエステル製、目付量400g/m)の表面(側壁となるパネル4面)に、先に得られた変色性不織布6の裏面が重なるように積層して、ニードルパンチ法により二種の不織布を一体化することで変色性積層体を得た。
得られた積層体の多孔質層3が内面となるように、十字型正方形パネルの4面を底面となるパネルに対して垂直に立て、それぞれ接触する辺を縫製することで容器形状とした後、多孔質層側が外面になるように折り返すことで、変色性プランター1を得た。
【0033】
得られた変色性プランター1には、プランター(容器)2の内部に土壌や不織布等の培地4を収容することができ、培地4には種子や苗木等の植物5を植えて水をやることで栽培可能な形態である。
栽培形態において、植物5への水やりで培地4へ水分が浸透していき、培地が十分な量を蓄えたところで、プランター2の内面から外面に水分が露出していく。その際、水やり前は多孔質層3の白色が視認されていたものが、水分の露出に伴って容器外表面まで水が滲み出すことから、プランター外側面(基材表面)に設けた多孔質層3は水を吸液して透明化し、吸液した部分は基材31のピンク色が視認されるため、プランター内に十分な水分が存在していることを目視により容易に判断することが可能となる。ピンク色の状態は水分が存在する限り永続的に視覚することができ、培地4の水分が減少してプランター外側面が乾燥してくるとピンク色の視認部分が元の白色に戻っていった。この様相変化は繰り返し行うことができた。
【符号の説明】
【0034】
1 変色性プランター
2 プランター(容器)
3 多孔質層
31 基材
32 着色層
4 培地
5 植物
6 変色性不織布
図1
図2
図3
図4
図5
図6