IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社奥村組の特許一覧

<>
  • 特開-爆薬装填装置 図1
  • 特開-爆薬装填装置 図2
  • 特開-爆薬装填装置 図3
  • 特開-爆薬装填装置 図4
  • 特開-爆薬装填装置 図5
  • 特開-爆薬装填装置 図6
  • 特開-爆薬装填装置 図7
  • 特開-爆薬装填装置 図8
  • 特開-爆薬装填装置 図9
  • 特開-爆薬装填装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069102
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】爆薬装填装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/02 20060101AFI20240514BHJP
   F42D 1/08 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E21B7/02
F42D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179912
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 光
(72)【発明者】
【氏名】徳永 満善
(72)【発明者】
【氏名】橘高 豊明
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB13
2D129BA03
2D129BA14
2D129DC15
(57)【要約】
【課題】多くの手間を要することなく、孔荒れを生じた発破孔から岩石等の残留物を除去して、爆薬をスムースに装填できる爆薬装填装置を提供する。
【解決手段】爆薬装填装置10は、孔尻部31a近傍まで挿入可能な長さを有する挿入筒体11と、爆薬32が圧送されるフレキブル配管18が接続される圧送管接続バルブ部12と、挿入筒体11の先端部11aに取り付けられた中空ビット13とを有しており、ドリフタ22に当該爆薬装填装置10を接合させる接続ジョイント部14を備える。穿孔機21によって穿孔形成された後の発破孔31の内部を、挿入筒体11の先端部の中空ビット13及びドリフタ22により孔さらえをした後に、フレキブル配管18及び挿入筒体11を介して爆薬32を圧送して、圧送した爆薬32を、中空ビット13の中空貫通部13aから孔尻部31aに装填する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山岳トンネル工法において切羽面に発破孔を穿孔形成するための、穿孔用重機に搭載された切羽穿孔機の穿孔機本体に取り付けて用いられて、形成された発破孔に爆薬を装填する爆薬装填装置であって、
先端部分を前記発破孔の孔尻部近傍まで挿入可能な長さを有する挿入筒体と、該挿入筒体の後端部分に設けられた、爆薬が圧送されるフレキブル配管が接続される開閉可能な圧送管接続バルブ部と、前記挿入筒体の先端部に取り付けられた、前記挿入筒体の中空内部と同様の断面形状の中空貫通部を備える中空ビットと、前記穿孔機本体を形成するドリフタに、当該爆薬装填装置を、前記挿入筒体を前記ドリフタの進退軸方向と平行に延設させた状態で一体として接合させる接続ジョイント部とを備えており、
前記切羽穿孔機によって穿孔形成された後の前記発破孔の内部を、前記中空ビットが先端部に取り付けられた前記挿入筒体、及び前記ドリフタにより孔さらいをした後に、前記フレキブル配管及び前記挿入筒体を介して爆薬を圧送して、圧送した爆薬を前記中空ビットの前記中空貫通部から前記孔尻部に装填可能となっている爆薬装填装置。
【請求項2】
前記挿入筒体の後端部分に、エア又は水を供給する供給配管が接続される、開閉可能な供給管接続バルブ部が設けられている請求項1記載の爆薬装填装置。
【請求項3】
前記挿入筒体の後端部分に、前記挿入筒体の中空内部に残った水を排出するための、開閉可能な排出バルブ部が設けられている請求項1又は2記載の爆薬装填装置。
【請求項4】
接続基部を介して前記挿入筒体の後端部分に一体として接合されて、前記挿入筒体の後方側に前記挿入筒体と平行に延設する接続アーム部が設けられており、該接続アーム部の後端部に前記接続ジョイント部が取り付けられていると共に、前記挿入筒体の後端部に前記フレキブル配管が接続される前記圧送管接続バルブ部が設けられている請求項1又は2記載の爆薬装填装置。
【請求項5】
前記接続アーム部には、前記ドリフタを進退軸方向に案内するガイドシェルに係止させて、前記ドリフタに対する前記挿入筒体の周方向への相対的な位置ずれを防止させる回転防止手段が設けられている請求項4記載の爆薬装填装置。
【請求項6】
前記中空ビットの外周面は、先端に向かって外径を縮径させたテーパー形状部分を備えている請求項1又は2記載の爆薬装填装置。
【請求項7】
前記挿入筒体に、エアパッカー部材が装着されており、該エアパッカー部材は、前記供給配管からエア又は水が供給されて膨張した際に、前記挿入筒体の外周面に密着すると共に前記切羽面における前記発破孔の開口縁部に密着するようになっており、且つ該エアパッカー部材を貫通する耐圧ホースの一端部から、前記挿入筒体の外周面と前記発破孔の孔壁面との間にエア又は水を送り込むようになっている請求項2記載の爆薬装填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬装填装置に関し、特に、山岳トンネル工法において、切羽面に形成された発破孔に爆薬を装填する爆薬装填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工法においては、岩盤等による切羽面の地盤を、爆薬を用いた発破によって崩落させながら掘削する工法が採用される場合がある。岩盤等による切羽面の地盤を、爆薬を用いた発破によって崩落させるには、切羽面における複数の所定の位置に発破孔を穿孔形成して、形成した発破孔に爆薬を装填した後に、雷管によって装填した爆薬を起爆させることになるが、このための発破孔を穿孔形成するための重機として、切羽穿孔機を搭載した例えばドリルジャンボなどの公知の穿孔用重機が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
穿孔用重機では、搭載した切羽穿孔機が、穿孔機本体として、接続した機材を例えば1分間に3600回程度の高速で前後に往復移動させる機能と、回転させる機能とを併せ持つドリフタを有しており、このドリフタに、先端部に穿孔ビットを有する穿孔ロッドを接続することで、穿孔ビットによって打撃を加えながら、岩盤等による切羽面の地盤に穿孔ロッドを押し込んでゆくことによって、発破孔を穿孔形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3461600号公報
【特許文献2】特許第4621149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、穿孔形成した発破孔に爆薬を装填する作業は、例えば特許文献1では、切羽穿孔機とは別途に搭載した装填装置を用いて、穿孔形成した発破孔に装填ホースを挿入し、挿入した装填ホースの基端部側の供給口から爆薬を供給した後に、供給した爆薬を押し棒を用いて装填ホースの中空内部を介して押し込むことで、発破孔の孔尻部分に爆薬を装填するようになっている。また、特許文献2では、例えば穿孔用重機に装備された、切羽面に対して昇降及び前後左右に移動可能な作業床を足場として、作業員が切羽面に近づいた状態で、装填ホース及び装填パイプを通して爆薬を圧送することで、発破孔の孔尻部分に爆薬を装填するようになっている。
【0006】
しかしながら、上記の従来の発破孔に爆薬を装填する方法によれば、好ましくは穿孔形成した後の発破孔の孔壁面が安定している場合には、装填ホースや装填パイプを発破孔の孔尻部分までスムーズに挿入することが可能であるが、例えば隣接する発破孔を穿孔する際の影響で、孔壁が崩れて孔荒れが生じている場合には、崩れた岩石等が障害となって、装填ホースや装填パイプを孔尻部分までスムーズに挿入することが困難になる。
【0007】
特に、通常は所定数の発破孔を、所定の設計ラインに沿って複数連設して形成してから、爆薬を装填する作業に切り替えることになるため、切羽面の地盤が脆くなっている場合には、先に穿孔した発破孔の周囲に新たな発破孔を穿孔する際に、先に穿孔した発破孔の孔壁面に肌落ち等による孔荒れを生じや易くなる。
【0008】
発破孔に孔荒れが生じた場合、爆薬を装填する作業に先立って、崩れた岩石等の障害となる残留物を発破孔から除去する必要があることから、従来は、作業員が切羽面の近くに立ち入って、発破孔から岩石等の残留物を除去する作業を行っていたが、このような除去作業には多くの手間を要すると共に、特に切羽面の地盤が脆くなっていると、切羽面からの肌落ちが懸念されるため、切羽面の周囲での作業は避けるようにすることが望ましい。
【0009】
本発明は、作業員が切羽面の近くに立ち入ることなく、また多くの手間を要することなく、孔荒れが生じた発破孔から岩石等の障害となる残留物を除去して、爆薬をスムースに装填することのできる爆薬装填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、山岳トンネル工法において切羽面に発破孔を穿孔形成するための、穿孔用重機に搭載された切羽穿孔機の穿孔機本体に取り付けて用いられて、形成された発破孔に爆薬を装填する爆薬装填装置であって、先端部分を前記発破孔の孔尻部近傍まで挿入可能な長さを有する挿入筒体と、該挿入筒体の後端部分に設けられた、爆薬が圧送されるフレキブル配管が接続される開閉可能な圧送管接続バルブ部と、前記挿入筒体の先端部に取り付けられた、前記挿入筒体の中空内部と同様の断面形状の中空貫通部を備える中空ビットと、前記穿孔機本体を形成するドリフタに、当該爆薬装填装置を、前記挿入筒体を前記ドリフタの進退軸方向と平行に延設させた状態で一体として接合させる接続ジョイント部とを備えており、前記切羽穿孔機によって穿孔形成された後の前記発破孔の内部を、前記中空ビットが先端部に取り付けられた前記挿入筒体、及び前記ドリフタにより孔さらいをした後に、前記フレキブル配管及び前記挿入筒体を介して爆薬を圧送して、圧送した爆薬を前記中空ビットの前記中空貫通部から前記孔尻部に装填可能となっている爆薬装填装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の爆薬装填装置は、前記挿入筒体の後端部分に、エア又は水を供給する供給配管が接続される、開閉可能な供給管接続バルブ部が設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の爆薬装填装置は、前記挿入筒体の後端部分に、前記挿入筒体の中空内部に残った水を排出するための、開閉可能な排出バルブ部が設けられていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の爆薬装填装置は、接続基部を介して前記挿入筒体の後端部分に一体として接合されて、前記挿入筒体の後方側に前記挿入筒体と平行に延設する接続アーム部が設けられており、該接続アーム部の後端部に前記接続ジョイント部が取り付けられていると共に、前記挿入筒体の後端部に前記フレキブル配管が接続される前記圧送管接続バルブ部が設けられていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の爆薬装填装置は、前記接続アーム部には、前記ドリフタを進退軸方向に案内するガイドシェルに係止させて、前記ドリフタに対する前記挿入筒体の周方向への相対的な位置ずれを防止させる回転防止手段が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の爆薬装填装置は、前記中空ビットの外周面は、先端に向かって外径を縮径させたテーパー形状部分を備えていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の爆薬装填装置は、前記挿入筒体に、エアパッカー部材が装着されており、該エアパッカー部材は、前記供給配管からエア又は水が供給されて膨張した際に、前記挿入筒体の外周面に密着すると共に前記切羽面における前記発破孔の開口縁部に密着するようになっており、且つ該エアパッカー部材を貫通する耐圧ホースの一端部から、前記挿入筒体の外周面と前記発破孔の内壁面との間にエア又は水を送り込むようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の爆薬装填装置によれば、作業員が切羽面の近くに立ち入ることなく、また多くの手間を要することなく、孔荒れが生じた発破孔から岩石等の障害となる残留物を除去して、爆薬をスムースに装填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る爆薬装填装置を取り付けて用いる、切羽穿孔機が搭載された穿孔用重機を例示する略示側面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る爆薬装填装置を説明する略示側面図である。
図3】切羽穿孔機に取り付けた、穿孔ロッド及び穿孔ビットによって発破孔を穿孔形成する状況を説明する略示側面図である。
図4】穿孔ロッド及び穿孔ビットに代えて、切羽穿孔機に爆薬装填装置を取り付ける状況を説明する略示側面図である。
図5】切羽穿孔機に取り付けた爆薬装填装置によって、孔さらいをする状況を説明する略示側面図である。
図6】切羽穿孔機に取り付けた爆薬装填装置によって、爆薬を装填する状況を説明する略示側面図である。
図7】(a)は中空ビットの正面図、(b)は(a)のA-Aに沿った断面図である。
図8】回転防止機構の説明図である。
図9】他の形態の爆薬装填装置を説明する要部略示側面図である。
図10】他の形態の爆薬装填装置を用いて残留物を除去する状況を説明する部分破断略示側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい一実施形態に係る爆薬装填装置10(図2参照)は、例えば図1に示すような、切羽面の地盤30に発破孔31を穿孔形成する切羽穿孔機21が搭載された穿孔用重機20において、切羽穿孔機21の穿孔機本体であるドリフタ22に取り付けられた、先端部に穿孔ビット23を有する穿孔ロッド24と置き代えて取り付けられて(図4照)、穿孔形成された発破孔31(図3図5参照)の最深部である孔尻部31aに、爆薬32として、親ダイ32a及び増ダイ32bを、アンコ材32cと共に装填するための装置として用いることができる(図6参照)。本実施形態の爆薬装填装置10は、例えば切羽面30aの地盤30に穿孔形成された発破孔31の孔壁が崩れて、孔荒れが生じていることで、孔内において崩れた岩石等の障害となる残留物が残っている場合でも、切羽面30aから離れた領域での作業によって、多くの手間を要することなく、孔荒れが生じた発破孔31から障害となる残留物を除去して、爆薬32をスムーズに装填できるようにする機能を備えている。
【0020】
そして、本実施形態の爆薬装填装置10は、山岳トンネル工法において切羽面30aの地盤30(図3図5参照)に発破孔31を穿孔形成するための、穿孔用重機20に搭載された切羽穿孔機21の穿孔機本体であるドリフタ22に取り付けて用いられて、形成された発破孔31に爆薬32を装填する装填装置であって、図2に示すように、先端部11aを発破孔31の孔尻部31a近傍まで挿入可能な長さを有する挿入筒体11と、挿入筒体11の後端部分11bに設けられた、爆薬32が圧送されるフレキブル配管18が接続される開閉可能な圧送管接続バルブ部12と、挿入筒体11の先端部11aに取り付けられた、挿入筒体11の中空内部と同様の断面形状の中空貫通部13a(図7参照)を備える中空ビット13と、穿孔機本体22を形成するドリフタに、当該爆薬装填装置10を、挿入筒体11をドリフタ22の進退軸方向Xと平行に延設させた状態で一体として接合させる接続ジョイント部14とを備えている。穿孔機21によって穿孔形成された後の発破孔31の内部を、中空ビット13が先端部11aに取り付けられた挿入筒体11、及びドリフタ22により孔さらいをした後に、フレキブル配管18及び挿入筒体11を介して爆薬32を圧送して、圧送した爆薬32を、中空ビット13の中空貫通部13aから孔尻部31aに装填可能となっている。
【0021】
また、本実施形態では、好ましくは挿入筒体11の後端部分11bに、エア又は水を供給する供給配管19が接続される、開閉可能な供給管接続バルブ部15が設けられていると共に、挿入筒体11の中空内部に残った水を排出するための、開閉可能な排出バルブ部16が設けられている。
【0022】
さらに、本実施形態では、好ましくは接続基部17aを介して挿入筒体11の後端部分11bに一体として接合されて、挿入筒体11の後方側に挿入筒体11と平行に延設する接続アーム部17が設けられている。この接続アーム部17の後端部に、ドリフタ22との接続ジョイント部14が取り付けられていると共に、挿入筒体11の後端部に、フレキブル配管18が接続される圧送管接続バルブ部12が設けられている。
【0023】
本実施形態では、切羽穿孔機21が搭載された穿孔用重機20は、例えばドリルジャンボとして知られる公知の穿孔用の重機と略同様の構成を備えており、図1に示すように、走行部を備える重機本体25や、重機本体25に搭載された上述の切羽穿孔機21に加えて、コンプレッサ、水タンク、水供給装置、制御盤等の他、作業床としてのマンゲージ26等を含んで構成されている。穿孔用重機20は、走行部によって、切羽穿孔機21をトンネル内の切羽面30aに対向させる位置まで移動させた後に、アウトリガー25aにより安定させた状態で接地固定されて、発破孔31を穿孔形成する作業や、形成した発破孔31に爆薬32を装填する作業を、行わせることができるようになっている。
【0024】
切羽穿孔機21もまた、公知の穿孔用重機に搭載されるものと略同様の構成を備えており、穿孔機本体であるドリフタ22や、ドリフタ22に接続された、穿孔ビット23を有する穿孔ロッド24の他、重機本体25から俯仰及び旋回可能に支持された穿孔用ブーム21aや、ドリフタ22の進退軸方向Xに沿った進退移動を案内するガイドシェル21bや、ロータリアクチュエータ21c、スライドシリンダ21d、ドリフタ22を進退させる進退機構(図示せず)等を含んで構成されている。切羽穿孔機21は、図示しない供給配管から送られる水等を穿孔ロッド24の先端から吐出させると共に、穿孔ロッド24が接続されたドリフタ22を、高速で前後に往復移動させると共に回転させながら、切羽面30aの地盤30に向けて進退させることによって、発破孔31を、所定の深さで穿孔形成できるようになっている(図3参照)。本実施形態の爆薬装填装置10は、発破孔31が穿孔形成された後に、穿孔ビット23を有する穿孔ロッド24と置き代えて、ドリフタ22に取り付けて用いられ、穿孔された発破孔31を孔さらいする作業と、爆薬32を装填する作業とを、効率良く実施できるようになっている。
【0025】
そして、本実施形態の爆薬装填装置10は、図2に示すように、挿入筒体11と、圧送管接続バルブ部12と、中空ビット13と、接続ジョイント部14とを含んで構成されており、また好ましくは、供給管接続バルブ部15と、排出バルブ部16と、接続アーム部17とを備えている。挿入筒体11は、例えば内径が34mm程度、外径が42mm程度の太さの、中空の円形断面を有する鋼製またはアルミ製のパイプ部材からなり、先端部11aが発破孔31の孔尻部31aの近傍に至るまで挿入可能な長さとして、例えば3,000~3,500mm程度の長さを有している。挿入筒体11の先端部11aには、中空ビット13が一体として取り付けられている。
【0026】
中空ビット13は、図7(a)、(b)に示すように、好ましくは先端部分の外周面に超硬チップ13bが埋め込まれた、金属製(鋼製)の成形品となっており、円筒形状の接続基端側部分13cと、接頭円錐筒形状の先端側部分13dとを有していると共に、これらの軸方向に貫通して、好ましくは挿入筒体11の内径と同様の内径を有する中空貫通部13aが設けられている。接頭円錐筒形状の先端側部分13dの外周面は、先端に向かって外径を縮径させたテーパー形状部分13eとなっている。このように、中空ビット13の外周面(挿入筒体との接続部では外径が例えば42mm)が、先端に向かって外径を縮径させたテーパー形状部分13eを備えている(先端部では外径が例えば40~41mm)ことで、挿入筒体11を発破孔31に挿入し易くなると共に、岩石等の障害となる残留物を破砕しつつ発破孔31の孔さらいをする際に、破砕された岩石等が、発破孔31の孔壁面と中空ビット13の外周面との間の隙間を介して後方に送られる中で、より細かく破砕されることになるので、発破孔31と挿入筒体11との隙間を通過させて、破砕された岩石等を、発破孔31の外に排出させ易くなる。
【0027】
本実施形態では、挿入筒体11をドリフタ22に接続させる接続ジョイント部14は、好ましくは接続アーム部17の後端部に取り付けられている。接続アーム部17は、挿入筒体11の中心軸を、好ましくはドリフタ22の進退軸方向Xから外して、挿入筒体11の後端部に、爆薬32が圧送されるフレキブル配管18を直線状に接続できるようにするために設けられる部分である。接続アーム部17は、接続基部17aを介して挿入筒体11の後端部分11bに一体として接合されて、挿入筒体11の後方側に挿入筒体11と平行に延設して設けられるようになっており、後端部には、例えば接続スリーブ17bを介在させて、ドリフタ22との公知の接続ジョイント部14が取り付けられている。これによって挿入筒体11は、ドリフタ22の進退軸方向Xと平行な中心軸に沿って、高速で前後に往復移動しながら、ガイドシェル21bに沿って、ドリフタ22と共に進退移動できるようになっている。
【0028】
また、本実施形態では、爆薬装填装置10を用いた孔さらい及び爆薬を装填する作業を行なう際には、ドリフタ22による挿入筒体11を回転させる機能を停止した状態で実施することになっているが、さらに、これらの作業中における、ドリフタ22に対する挿入筒体11の周方向への相対的な位置ずれを防止するための、回転防止手段27が設けられていることが好ましい。回転防止手段27は、回転防止治具として、例えば図2及び図8に示すように、接続アーム部17に溶接等により固着された、下方のガイドシェル21b側にハの字形状となるように張り出した状態で延設する、一対の係止ロッド27aによるものとすることができる。回転防止手段27は、一対の係止ロッド27aが、ガイドシェル21bを挟んだ両側に配置されるようになっており、いずれか一方の係止ロッド27aが、ガイドシェル21bの側部に当接することによって、作業中における、ドリフタ22に対する挿入筒体11の周方向への相対的な過度な位置ずれを、回避できるようになっている。
【0029】
圧送管接続バルブ部12は、例えば上述の特許文献2(特許第4621149号公報)の爆薬の装填方法及び装填装置において用いられる、装填ホースと同様のフレキブル配管18を、挿入筒体11の後端部に開閉可能に接続するための、公知の構成を備える接続バルブ部となっており、後述するように当該圧送管接続バルブ部12を開いた状態で、フレキブル配管18を介して圧送されて来る爆薬32を通過させ、挿入筒体11を経て中空ビット13の中空貫通部13aから、発破孔31の孔尻部31aに爆薬32を装填させることができるようになっている。フレキブル配管18は、圧送される爆薬32の位置がわかるように、内部を視認可能な例えば透明又は半透明な配管(ホース)となっていることが好ましい(図6参照)。
【0030】
供給管接続バルブ部15は、爆薬装填装置10の挿入筒体11によって穿孔形成された発破孔31の孔さらいをする際に、例えば切削時の摩擦等を低減するためのエア又は水を中空ビット13に供給する供給配管19を、開閉可能に接続するための接続バルブ部となっている。本実施形態では、供給管接続バルブ部15は、挿入筒体11の後端部分11bにおいて、外側に突出して設けられた供給枝管15aに取り付けて用いられるようになっており、例えば圧送管接続バルブ部12や後述する排出バルブ部16を閉じた状態で、開いた状態とすることで、供給配管19から挿入筒体11の中空内部に、エア又は水を供給させることができるようになっている。また挿入筒体11の中空内部に供給されたエアや水は、中空ビット13や挿入筒体11(例えばφ42mm)と、発破孔31の内壁面(例えばφ45mm)との間の隙間を介して、孔さらいによって除去される岩石等の障害となる残留物と共に、発破孔31の外に排出されるようになっている。
【0031】
排出バルブ部16は、穿孔形成された発破孔31の孔さらいを行った後、フレキブル配管18から挿入筒体11に爆薬32を圧送するのに先立って、挿入筒体11に残留した、特に水を排除するためのバルブ部となっている。本実施形態では、排出バルブ部16は、挿入筒体11の後端部分11bにおいて、斜め下方に向けて突出する排出枝管16aに取り付けて用いられるようになっており、例えば圧送管接続バルブ部12や供給管接続バルブ部15を閉じた状態で、開いた状態とすることで、好ましくは自然流下によって、挿入筒体11の中空内部に残留する水を、スライム等と共に挿入筒体11の外に排出できるようになっている。挿入筒体11の中空内部に残ったスライム等を十分に排出できない場合には、例えば、一旦、挿入筒体11を発破孔31から引き出した後に、排出バルブ部16を閉じて供給管接続バルブ部15を開くことでエア又は水を供給して、中空ビット13の先端から残留するスライム等を押し出すことによって、これらのスライム等を排出することが可能になる。
【0032】
上述の構成を備える本実施形態の爆薬装填装置10を用いて、発破孔31の孔尻部31aに爆薬32を装填するには、切羽穿孔機21のドリフタ22に、先端部に穿孔ビット23を有する穿孔ロッド24を取り付けて、切羽面30aの地盤30に発破孔31を穿孔形成した後に(図3参照)、図4に示すように、穿孔ロッド24と置き換えて、当該爆薬装填装置10を、ドリフタ22に取り付けると共に、圧送管接続バルブ部12にフレキブル配管18を接続し、供給管接続バルブ部15に供給配管19を接続する。しかる後に、圧送管接続バルブ部12及び排出バルブ部16を閉じた状態で、図5に示すように、挿入筒体11を、これの中空内部に供給配管19からエア又は水を供給しながら、穿孔形成した発破孔31に、先端部11aの中空ビット13が孔尻部近傍に至るまで、ドリフタ22によって高速で前後に往復移動させて打撃を加えつつ挿入することによって、発破孔31の内部の岩石等の障害となる残留物を破砕して除去する、孔さらいを行なう。発破孔31の孔さらいを行なったら、供給管接続バルブ部15を閉じ、圧送管接続バルブ部12を開いた状態で、図6に示すように、フレキブル配管18介して挿入筒体11に爆薬32を圧送すると共に、圧送された爆薬32を中空ビット13の中空貫通部13aから発破孔31に押し込んで、押し込んだ爆薬を孔尻部31aに装填する。
【0033】
ここで、本実施形態では、装填される爆薬32のうち親ダイ32aは、好ましくは切羽面30aの近傍での結線作業を要しない無線式の点火回路(無線式雷管)を用いたものとなっており、好ましくは圧送時の保護のために、厚紙等による紙筒で覆った状態で使用することができる。親ダイ32aは、増ダイ32bやアンコ材32cと共に、上述の特許文献2(特許第4621149号公報)の爆薬の装填方法及び装填装置で使用したものと同様の装填機を用い、連設させてフレキブル配管18の内部に装着した状態で、好ましくは一体として圧送されることで、挿入筒体11及び中空ビット13を介して、発破孔31の孔尻部31aに順次装填されるようになっている。
【0034】
また、本実施形態では、爆薬32の親ダイ32aとして、脚線の付いた結線式の雷管によるものを用いることもできる。この場合、孔さらいを終了した後に、挿入筒体11を一旦発破孔31から引き抜いて、先端部11aの中空ビット13の中空貫通部13aに、脚線が延設する親ダイ32aを装着した状態とする。この状態で、中空ビット13や挿入筒体11と、発破孔31の内壁面との間の隙間を介して、脚線を発破孔31の外まで引き出しつつ、先端部11aが孔尻部31aの近傍に至るまで、挿入筒体11を発破孔31に挿入し直して、エアを圧送することにより、親ダイ32aを孔尻部31aに装填する。しかる後に、増ダイ32b及びアンコ材32cを、上述と同様の方法によって、フレキブル配管18及び挿入筒体11を介して圧送して、中空ビット13の中空貫通部13aから発破孔31に押し込むことで、親ダイ32aと増ダイ32bとアンコ材32cとが連設する爆薬32を、発破孔31の孔尻部31aに装填することできる。
【0035】
これらによって、本実施形態の爆薬装填装置10によれば、作業員が切羽面30aの近くに立ち入ることなく、また多くの手間を要することなく、孔荒れを生じた発破孔31から岩石等の障害となる残留物を除去して、爆薬32を孔尻部31aにスムースに装填することが可能になる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、接続基部を介して挿入筒体の後端部分に一体として接合された、挿入筒体と平行に延設する接続アーム部が設けられている必要は必ずしも無く、挿入筒体の後端部の接続ジョイント部を取り付けて、挿入筒体をドリフタに直接接合するようにしても良い。この場合、フレキブル配管は、挿入筒体の外周面から外側に突出して設けられた枝管に圧送管接続バルブ部を取り付けて、圧送管接続バルブ部及び枝管を介して挿入筒体の中空内部と連通させることができる。また、接続アーム部に回転防止手段を設ける必要は必ずしも無く、中空ビットは、外周面にテーパー形状部分を備えている必要は必ずしもない。
【0037】
爆薬は、圧送時の摩擦や孔尻部に衝突した際の衝撃によって、爆発することがない程度の速度で、フレキブル配管や挿入筒体の中空内部を移動させるようにすることが好ましい。増しダイは、エマルジョンタイプのものを用いることができる。穿孔形成された発破孔に孔荒れがない場合には、孔さらいを行わずに爆薬を圧送して、発破孔の孔尻部に爆薬を装填することもできる。また、作業員が切羽面に近づいて作業を行なう必要がないように、供給管接続バルブ部や排出バルブ部や圧送管接続バルブ部は、遠隔操作が可能な電磁バルブ等を用いることが好ましい。
【0038】
そして、本発明では、他の形態の爆薬装填装置10’として、図9に示すように、例えば上述の実施形態の爆薬装填装置10における挿入筒体11の所定の位置に、エアパッカー部材35を装着したものを用いることができる。すなわち、図9に示す爆薬装填装置10’は、上述の実施形態の爆薬装填装置10と同様の構成を備えていることに加えて、エアパッカー部材35が設けられている。エアパッカー部材35は、エア又は水が好ましくは圧送供給されて膨張した際に(図10参照)、挿入筒体11の外周面に密着すると共に、切羽面30aにおける発破孔31の開口縁部と挿入筒体11の外周面との間の隙間を閉塞した状態で、当該切羽面30aに密着する、好ましくは立体ドーナツ形状となるように変形可能に形成されている。エアパッカー部材35は、膨張する前の状態で、挿入筒体11に沿ってこれの軸方向にスライド移動可能に装着されている。
【0039】
また、図9に示す爆薬装填装置10’では、例えば挿入筒体11の後端部分11bに設けられた供給管接続バルブ部15に接続される供給配管19に、供給管接続バルブ部15との接続部分と枝分れして、補助供給バルブ36が取り付けられている。この補助供給バルブ36には、一端部がエアパッカー部材35を貫通して当該エアパッカー部材35の中空ビット13側に開口する(図10参照)耐圧ホース37の、他端部が接続されている。
【0040】
耐圧ホース37は、図9に示す爆薬装填装置10’では、好ましくは補助供給バルブ36と接続する他端部から枝分かれして、複数本設けられている。各々の耐圧ホース37は、一端部が、図10に示すように、好ましくは挿入筒体11に沿って延設した状態で、エアパッカー部材35を貫通して配置されている。各々の耐圧ホース37の一端部の開口端面は、エアパッカー部材35の中空ビット13側の側面に、外部に向けて開口しており、この開口端面部分には、制御弁37aが取り付けられている。また各々の耐圧ホース37の一端部の、エアパッカー部材35を貫通している部分には、エアパッカー部材35の内部に向けて開口する、開口穴37bが形成されている。補助供給バルブ36を介して供給配管19から圧送供給されるエア又は水を、開口穴37bからエアパッカー部材35の内部に流入させて、エアパッカー部材35を好ましくは立体ドーナツ形状に膨張させることにより、膨張させたエアパッカー部材35を、挿入筒体11の外周面や、切羽面30aにおける発破孔31の開口周縁部分に、強固に密着させることができるようになっている。
【0041】
また、耐圧ホース37の一端部の開口端面部分に取り付けられた制御弁37aは、供給配管19から圧送供給されたエア又は水が、開口穴37bからエアパッカー部材35の内部に流入して、エアパッカー部材35を膨張させた後、膨張したエアパッカー部材35の内部が所定の内圧に達した際に、当該制御弁37aが解放されて、エアパッカー部材35の中空ビット13側の側面から、例えば発破孔31の孔壁面と挿入筒体11の外周面との間の隙間に、圧送供給されたエアや水を送り込むことができるように設定されたものとなっている。
【0042】
図9に示す爆薬装填装置10’では、例えば中空ビット13によって、発破孔31の孔内に残留する岩石等の障害となる残留物を、例えば発破孔31の孔壁面と中空ビット13の外周面との間の隙間を介して後方に送ることが可能な大きさまで、十分に細かく破砕できないことで、排出しきれなかった場合に、例えばこれらの残留物を中空ビット13の中空貫通部13aを介して挿入筒体11に取り込み、挿入筒体11の中空内部を通過させて、排出枝管16aから排出させるようにすることが可能になっている。
【0043】
すなわち、好ましくは孔さらいを終了した後に、排出枝管16aの排出バルブ部16を開放すると共に供給管接続バルブ部15を閉塞した状態で、補助供給バルブ36を開放して、耐圧ホース37から送られるエア又は水を圧送供給することによって、例えば発破孔31の開口周縁部の付近に移動させたパッカー部材35を膨張させて、切羽面30a及び挿入筒体11の外周面に密着させることで、切羽面30aにおける挿入筒体11の外周面と発破孔31の開口縁部との隙間を閉塞した状態とすることができる。また例えば膨張したパッカーの内部の圧力が所定の内圧に達したら、好ましくは制御弁37aが自動的に解放されることで、発破孔31の孔壁面と挿入筒体11の外周面との間の隙間にエアや水を流入させることが可能になる。これによって、例えば挿入筒体11の外周面と発破孔31の孔壁面との間に残った十分に細かく破砕できなかった残留物は、流入したエア又は水によって押し流されて、エア又は水と共に中空ビット13の中空貫通部13aを介して挿入筒体11の内部に運び込まれ、挿入筒体11の中空内部を通過するようにして後方に押し出された後に、排出枝管16aの解放された排出バルブ部16から、排出されることが可能になる。
【0044】
ここで、挿入筒体11の内部に運び込まれた残留物によって、挿入筒体11が詰まった場合には、補助供給バルブ36を閉塞して耐圧ホース37を介したエア又は水の供給を停止した後に、排出バルブ部16を閉塞して挿入筒体11を発破孔31から一旦引き抜いてから、挿入筒体11の内部にエア又は水が供給されるように供給管接続バルブ部15を開放することによって、詰まった残留物を中空ビット13の先端から排出させることが可能になる。残留物を挿入筒体11の内部から排出したら、供給管接続バルブ部15及び排出バルブ部16を閉じ、圧送管接続バルブ部12を開放した状態とすることによって、爆薬の装填を開始することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
10,10’ 爆薬装填装置
11 挿入筒体
11a 先端部
11b 後端部分
12 圧送管接続バルブ部
13 中空ビット
13a 中空貫通部
13b 超硬チップ
13c 接続基端側部分
13d 先端側部分
13e テーパー形状部分
14 接続ジョイント部
14a 接続スリーブ
15 供給管接続バルブ部
16 排出バルブ部
16a 排出枝管
17 接続アーム部
17a 接続基部
18 フレキブル配管
19 供給配管
20 穿孔用重機
21 切羽穿孔機
21b ガイドシェル
22 ドリフタ(穿孔機本体)
23 穿孔ビット
24 穿孔ロッド
25 重機本体
25a アウトリガー
26 マンゲージ(作業床)
27 回転防止手段
27a 係止ロッド
30 切羽面の地盤
30a 切羽面
31 発破孔
31a 孔尻部
32 爆薬
32a 親ダイ
32b 増ダイ
32c アンコ材
35 パッカー部材
36 補助供給バルブ
37 耐圧ホース
37a 制御弁
37b 開口穴
X 進退軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10