(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069104
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】企業価値評価システム、サーバ装置、及び企業価値評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20240514BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179916
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】520395916
【氏名又は名称】株式会社企業評価総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】米澤 恭子
(72)【発明者】
【氏名】境野 晋哉
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】事業承継方法の比較検討を含む経営判断に資するために、企業価値を多面的に評価する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、財務情報、非財務情報の入力を受付ける入力処理部11bと、財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部11cと、価値評価の結果を出力する出力部11eと、取引事例の情報を記憶した記憶部13とを有し、価値評価部11cは、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行するサーバ装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
財務情報、非財務情報の入力を受け付ける入力処理部と、
前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部と、
前記価値評価の結果を出力する出力部と、
少なくとも取引事例の情報を記憶した記憶部と、を有し、
前記価値評価部は、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する
サーバ装置。
【請求項2】
前記価値評価部は、前記類似取引事例の選定にあたっては、事業所所在地域、都市の規模による区分である地理的要因、業種、業界による区分である業種別要因、売上高、総資産額の会社規模による区分である財務的要因のそれぞれについてスコアリングを実行し類似取引事例を選定する
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記非財務情報には、評価対象企業が調剤薬局である場合には処方箋枚数、評価対象企業が運送業界である場合にはトラックの種類及び保有台数、評価対象企業が建設業界である場合には公共工事の有無及び資格保有人数の情報を含む
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項4】
端末装置とサーバ装置とからなる企業価値評価システムであって、
前記サーバ装置は、
前記端末装置からの財務情報、非財務情報を受信する第1受信部と、
前記財務情報、非財務情報の入力を受け付ける入力処理部と、
前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部と、
前記価値評価の結果に係る表示データを生成する生成部と、
前記表示データを前記端末装置に送信する第1送信部と、
少なくとも取引事例の情報を記憶した記憶部と、を有し、
前記端末装置は、
前記サーバ装置に財務情報、非財務情報を送信する第2送信部と、
前記サーバ装置からの表示データを受信する第2受信部と、
前記表示データに基づく表示を行う表示部と、を有し、
前記価値評価部は、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する
企業価値評価システム。
【請求項5】
前記価値評価部は、前記類似取引事例の選定にあたっては、事業所所在地域、都市の規模による区分である地理的要因、業種、業界による区分である業種別要因、売上高、総資産額の会社規模による区分である財務的要因のそれぞれについてスコアリングを実行し類似取引事例を選定する
請求項4に記載の企業価値評価システム。
【請求項6】
前記非財務情報には、評価対象企業が調剤薬局である場合には処方箋枚数、評価対象企業が運送業界である場合にはトラックの種類及び保有台数、評価対象企業が建設業界である場合には公共工事の有無及び資格保有人数の情報を含む
請求項4に記載の企業価値評価システム。
【請求項7】
端末装置とサーバ装置とからなる企業価値評価システムによる企業価値評価方法であって、
前記端末装置が、
財務情報、非財務情報を前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、
記憶部に取引事例の情報を少なくとも記憶し、
前記端末装置からの財務情報、非財務情報を受信し、
前記財務情報、非財務情報の入力を受け付け、
前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行し、
前記価値評価の結果に係る表示データを生成し、
前記表示データを前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、
前記サーバ装置からの表示データを受信し、表示し、
前記価値評価の実行では、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する
企業価値評価方法。
【請求項8】
前記価値評価の実行において、前記類似取引事例の選定にあたっては、事業所所在地域、都市の規模による区分である地理的要因、業種、業界による区分である業種別要因、売上高、総資産額の会社規模による区分である財務的要因のそれぞれについてスコアリングを実行し類似取引事例を選定する
請求項7に記載の企業価値評価方法。
【請求項9】
前記非財務情報には、評価対象企業が調剤薬局である場合には処方箋枚数、評価対象企業が運送業界である場合にはトラックの種類及び保有台数、評価対象企業が建設業界である場合には公共工事の有無及び資格保有人数の情報を含む
請求項7に記載の企業価値評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業承継方法の比較検討を含む経営判断に資するために、企業価値を評価する企業価値評価システム、サーバ装置、及び企業価値評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、企業のM&Aや事業承継にあたっては、専門家によるデューデリジェンスが実行され、例えば財務情報等に基づいて譲渡等の対象企業の資産価値を評価し、事業譲渡や企業譲渡等に係る経営判断に資するのが一般的である。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1では、企業の過去所定年数分の財務データと、企業の外的環境データとを入力し、経営シミュレーションをするための必要十分な財務科目と、それらの初期値を提示し、ユーザに確認あるいは入力させるシミュレーション条件入力支援手段と、シミュレーション条件を入力し、財務データ計算ルールモジュールを参照して企業の将来的な財務データを算出する経営シミュレーション手段と、キャッシュフロー計算ルールモジュールを参照して企業のシミュレーション期間の各年分のキャッシュフローを算出するキャッシュフロー算出手段と、企業価値計算モジュールを参照し、キャッシュフローから、修正した企業の現在価値を評価する企業価値評価手段と、を備えた経営意思決定支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、事業譲渡、企業譲渡等に係る経営判断を正確に行うために、企業価値を多面的に評価するシステムは従来存在しない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば事業承継方法の比較検討を含む経営判断に資するために、企業価値を多面的に評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るサーバ装置は、財務情報、非財務情報の入力を受け付ける入力処理部と、前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部と、前記価値評価の結果を出力する出力部と、少なくとも取引事例の情報を記憶した記憶部と、を有し、前記価値評価部は、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する。
【0008】
本発明の第2の態様に係る企業価値評価システムは、端末装置とサーバ装置とからなる企業価値評価システムであって、前記サーバ装置は、前記端末装置からの財務情報、非財務情報を受信する第1受信部と、前記財務情報、非財務情報の入力を受け付ける入力処理部と、前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部と、前記価値評価の結果に係る表示データを生成する生成部と、前記表示データを前記端末装置に送信する第1送信部と、少なくとも取引事例の情報を記憶した記憶部と、を有し、前記端末装置は、前記サーバ装置に財務情報、非財務情報を送信する第2送信部と、前記サーバ装置からの表示データを受信する第2受信部と、前記表示データに基づく表示を行う表示部と、を有し、前記価値評価部は、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する。
【0009】
本発明の第3の態様に係る企業価値評価方法は、端末装置とサーバ装置とからなる企業価値評価システムによる企業価値評価方法であって、前記端末装置が、財務情報、非財務情報を前記サーバ装置に送信し、前記サーバ装置は、記憶部に取引事例の情報を少なくとも記憶し、前記端末装置からの財務情報、非財務情報を受信し、前記財務情報、非財務情報の入力を受け付け、前記財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行し、前記価値評価の結果に係る表示データを生成し、前記表示データを前記端末装置に送信し、前記端末装置は、前記サーバ装置からの表示データを受信し、表示し、前記価値評価の実行では、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば事業承継方法の比較検討を含む経営判断に資するために、企業価値を多面的に評価する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る企業価値評価システムの構成図である。
【
図4】同システムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】端末装置側で表示される画面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1には、本発明の実施形態に係る企業価値評価システムの構成を示し説明する。
【0014】
同図に示されるように、本システムは、サーバ装置1と、銀行の端末装置2と、コンサルタントの端末装置3と、を有している。そして、サーバ装置1は、インターネット等の通信網4を介して、銀行の端末装置2、コンサルタントの端末装置3と、通信自在となっている。なお、端末装置2,3としては、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等、各種のものを採用することができることは勿論である。
【0015】
このような構成において、銀行の端末2は、評価対象企業の財務情報等に係るCSVデータ等を、通信網4を介して、サーバ装置1に送信する。サーバ装置1では、財務情報等に係るCSVデータ等を受信すると、入力処理を実行し、価値評価を実行する。より詳細には、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行するが、それに先立ち、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数や、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、類似取引事例を選定して参照することで、特定する。
【0016】
サーバ装置1は、これら4通りの評価を実行すると、それらを一覧で表示する画面の表示データを生成し、銀行の端末装置2やコンサルタントの端末装置3等に送信する。これら端末装置2,3等では、この表示データを受信すると、表示部に一覧等を含む画面を表示する。したがって、本システムによれば、多面的な価値評価の結果を、事業承継等に関わる経営判断に資することが可能となる。
【0017】
図2(a)、
図2(b)には、本発明の実施形態に係る企業価値評価システムのサーバ装置の詳細な構成を示し説明する。
【0018】
これらの図に示されるように、サーバ装置1は、制御部11と、通信部12と、記憶部13とを有する。制御部11と、通信部12と、記憶部13とは、バスラインを介して通信可能に接続されている。通信部12は、例えば、ネットワークインタフェースカード等により実現され、インターネット等の通信網4と有線又は無線で接続されることで、端末装置2,3等との間で通信を行う通信インタフェースである。
【0019】
記憶部13は、例えばRAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ、又は光ディスク装置等で実現されるもので、制御部11で実行されるプログラムを予め記憶している。また、記憶部13は、ユーザ情報記憶部14、取引事例情報記憶部15、及び評価結果記憶部16を有する。
【0020】
より詳細には、ユーザ情報記憶部14は、ユーザIDと紐づけて、評価対象企業の名称や所在地、電話番号、業種等の属性情報を含む企業情報や、財務情報、評価履歴(評価ID)等を記憶している。取引事例情報記憶部15は、事例IDと紐づけて、取引事例企業の業種、所在地、規模等の属性情報と、営業権持続年数、EBITDA倍率、割引率等を記憶している。そして、評価結果記憶部16は、評価IDと紐づけて、価値評価部11cによる評価結果をユーザIDと共に記憶している。
【0021】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等で実現される。制御部11は、記憶部13に記憶されているプログラムを実行することで、送受信制御部11a、入力処理部11b、価値評価部11c、生成部11d、出力部11e等として機能する。制御部11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Array)等の集積回路で構成されてよい。
【0022】
このような構成において、送受信制御部11aは、銀行の端末装置2から送信されてきた評価対象企業の財務情報等を、通信部12を介して受信する受信部(第1受信部)、及び評価結果に係る表示データを銀行の端末装置2やコンサルタントの端末装置3に送信する送信部(第1送信部)としての役割を担っている。入力処理部11bは、送受信制御部11aが受信した財務情報等を受け付け、ユーザ情報記憶部14にユーザID発行の上、記憶するなどの処理を行う。
【0023】
価値評価部11cは、ユーザ情報記憶部14より評価対象企業の財務情報等を読み出し企業価値の評価を実行する。この価値評価部11cは、より詳細には、
図2(b)に示されるように、類似取引事例選定部11c-1、パラメータ決定部11c-2、コストアプローチ演算部11c-3、マーケットアプローチ演算部11c-4、インカムアプローチ演算部11c-5、相続税視点演算部11c-6、及び評価レンジ設定部11c-7を有している。
【0024】
類似取引事例選定部11c-1は、取引事例情報記憶部15を参照して、参考にすべき母集団を選定した後、類似度のスコアリングを行い、評価にあたって参考にすべき類似取引事例を選定する。パラメータ決定部11c-2は、類似取引事例選定部11c-1により選定された類似取引事例を参照して、評価に用いる営業権持続年数、EBITDA倍率を選定する。
【0025】
コストアプローチ演算部11c-3は、この例では、時価純資産及び営業権法により企業価値を演算する。これは、時価純資産に、評価対象企業の超過収益力である営業権を考慮することにより、単なる清算価値あるいは再調達価値のみならず、将来の企業価値を加味した継続企業価値を求めることを意味する。より詳細には、
評価額=時価純資産+(創出利益×営業権持続年数)
で評価することになるが、この営業権持続年数として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。ここで、創出利益とは、複数期(原則直近3期)の税引後営業利益の加重平均のことを意味する。
【0026】
マーケットアプローチ演算部11c-4は、この例では、類似会社比準法により企業価値を演算する。これは、評価対象企業と規模や業種が類似する企業を複数選定し、それら企業の株価、利益、及び純資産等をベンチマークすることにより、株式等価値を計算することを意味する。より詳細には、
評価額=事業価値(EBITDA×倍率)+非事業用資産-有利子負債
で評価することになるが、この倍率として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。
【0027】
インカムアプローチ演算部11c-5は、この例では、ディスカウンテッドキャッシュフロー法により企業価値を演算する。これは、企業が将来獲得すると期待されるキャッシュフローを現在価値に還元した合計額を基礎に株式等価値を計算することを意味する。
より詳細には、
評価額=事業価値(将来キャッシュフロー/割引率)+非事業用資産-有利子負債
で評価することになる。この割引率として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。
【0028】
このほか、相続税視点演算部11c-6は、事業を相続する場合には、税法(例えば相続税法)に関連する通達の計算方法に則って、企業価値を評価することになる。そして、評価レンジ設定部11c-7は、上記各手法で算出された評価額に対して、評価レンジ(例えば、上限/下限)を設定する。価値評価部11cは、前述した一連の評価の後、その評価結果を評価結果記憶部16に記憶させる。
【0029】
図2(a)の説明に戻り、生成部11dは、価値評価部11cによる評価結果に基づいて、表示データをHTML形式等で生成する。出力部11eは、この表示データ等を外部装置に出力する。
【0030】
図3には、本発明の実施形態に係る企業価値評価システムの端末装置の詳細な構成を示し説明する。ここでは、銀行の端末装置2の構成例を示すが、コンサルタントの端末装置3についても、同様の構成である。
【0031】
同図に示されるように、この端末装置2は、制御部21と、通信部22と、操作部23と、表示部24と、記憶部25とを有する。各部21~25は、バスラインを介して通信自在に接続されている。通信部22は、例えば、NIC等により実現されるもので、インターネット等の通信網4と有線又は無線で接続され、サーバ装置1等との間で通信を行う通信インタフェースである。
【0032】
操作部23は、マウスやキーボード等で実現され、ユーザによる各種操作入力を受け付ける。表示部24は、液晶ディスプレイ等により実現され、各種表示を行う。操作部23と表示部24とをタッチパネルとして一体に構成してもよい。
【0033】
記憶部25は、例えば、RAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD、または光ディスク装置等で実現されるもので、制御部21で実行されるプログラムを記憶している。制御部21は、CPUやMPU等で実現され、記憶部25に記憶されているプログラムを実行することで、主制御部21a、表示制御部21b、送受信制御部21cとして機能する。
【0034】
このような構成において、主制御部21aは、端末装置全体の制御を司る。表示制御部21bは、送受信制御部21cが受信した企業価値評価結果等に関わる表示データに基づく表示部24での表示を制御する。送受信制御部21cは、財務情報等のCSV形式のデータ等をサーバ装置1に送信する送信部(第2送信部)、及びサーバ装置1からの表示データ等を受信する受信部(第2受信部)、として機能するものである。
【0035】
以下、
図4のフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る企業価値評価システムによる処理の流れを詳細に説明する。
【0036】
サーバ装置1は、送受信制御部11aが、端末装置2,3から送られた財務情報、非財務情報を受信すると、入力処理部11bが、財務情報の入力を受け付け(S1)、非財務情報としての業種固有情報の入力を受け付け(S2)、ユーザ情報記憶部14に、ユーザIDと紐づけて記憶させる。財務情報としては、例えばB/S、P/Lの直近の3期分等を受け付ける。一方、非財務情報としての業種固有情報としては、例えば、以下のような情報を受け付ける。
・調剤薬局における処方箋枚数
・運送業界におけるトラックの種類、保有台数
・建設業界における公共工事の有無や資格保有人数
【0037】
続いて、類似取引事例選定部11c-1は、取引事例情報記憶部15を参照して、参考にすべき母集団を選定した後、類似度のスコアリングを行い、評価にあたって参考にすべき類似取引事例を選定する(S3)。ここで、母集団選定にあたっては、下記の視点で選定を実行することとしてもよい。
・事業所所在地域、都市の規模による区分(地理的要因)
・業種、業界による区分(業種別要因)
・売上高、総資産額等の会社規模による区分(財務的要因)
類似度のスコアリングにあたっては、地理的要因、業種別要因、財務的要因、非財務的要因ごとに類似度が高いと判定されたら、加点する。
【0038】
続いて、パラメータ決定部11c-2は、類似取引事例選定部11c-1により選定された類似取引事例を参照して、評価に用いる営業権持続年数、EBITDA倍率、割引率の統計処理を実行する(S4)。このとき、所定の上限及び下限数値を定めて、範囲外のものを対象から外すようにしてもよい。そして、事例の営業権持続年数、EBITDA倍率、及び割引率の加重平均を計算して、評価に用いる営業権持続年数、EBITDA倍率、割引率を選定する(S5)。
【0039】
次いで、価値評価部11cが価値評価を実行する(S6)。
【0040】
具体的には、コストアプローチ演算部11c-3は、この例では、時価純資産及び営業権法により企業価値を演算する。これは、時価純資産に、評価対象企業の超過収益力である営業権を考慮することにより、単なる清算価値あるいは再調達価値のみならず、将来の企業価値を加味した継続企業価値を求めることを意味する。より詳細には、
評価額=時価純資産+(創出利益×営業権持続年数)
で評価することになるが、この営業権持続年数として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。
【0041】
マーケットアプローチ演算部11c-4は、この例では、類似会社比準法により企業価値を演算する。これは、評価対象企業と規模や業種が類似する企業を複数選定し、それら企業の株価、利益、及び純資産等をベンチマークすることにより、株式等価値を計算することを意味する。より詳細には、
評価額=事業価値(EBITDA×倍率)+非事業用資産-有利子負債
で評価することになるが、この倍率として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。
【0042】
インカムアプローチ演算部11c-5は、この例では、ディスカウンテッドキャッシュフロー法により企業価値を演算する。これは、企業が将来獲得すると期待されるキャッシュフローを現在価値に還元した合計額を基礎に株式等価値を計算することを意味する。
より詳細には、
評価額=事業価値(将来キャッシュフロー/割引率)+非事業用資産-有利子負債
で評価することになる。この割引率として、パラメータ決定部11c-2が決定した値を用いる。
【0043】
相続税視点演算部11c-6は、事業を相続する場合には、税法(例えば相続税法)に関連する通達の計算方法に則って、企業価値を評価することになる。そして、評価レンジ設定部11c-7は、上記各手法で算出された評価額に対して、評価レンジ(例えば、上限/下限)を設定する(S7)。価値評価部11cは、以上の一連の評価の後、その評価結果を評価結果記憶部16に記憶させる(S8)。
【0044】
こうして、得られた評価結果に基づいて、生成部11dが表示データを生成し、送受信制御部11aが、端末装置2,3へと送信する。端末装置2では、送受信制御部21cが表示データを受信すると、表示制御部21bの制御の下、表示部24に評価結果の画面が表示される。その様子は、例えば、
図5に示される通りである。この
図5に示されるように、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、相続税視点の評価結果が評価レンジと共に、可視化された対比可能に表示される。
【0045】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0046】
本発明によれば、財務情報、非財務情報の入力を受け付ける入力処理部11bと、財務情報、非財務情報に基づいて価値評価を実行する価値評価部11cと、価値評価の結果を出力する出力部11eと、少なくとも取引事例の情報を記憶した記憶部13とを有し、価値評価部11cは、コストアプローチで用いる基準となる営業権持続年数と、マーケットアプローチで用いる基準となるEBITDA倍率と、インカムアプローチで用いる基準となる割引率の値を、前記記憶部を参照して類似する取引事例を選定し特定することで、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、及び相続税視点の評価を実行するサーバ装置、及びそれを用いた企業価値評価システム、方法が提供される。従って、類似取引事例をスコアリングによる適切に特定して、その営業権持続年数、EBITDA倍率、割引率を計算に用いることで、適正な企業価値評価を実行することが可能となる。
【0047】
価値評価部11cは、類似取引事例の選定にあたっては、事業所所在地域、都市の規模による区分である地理的要因、業種、業界による区分である業種別要因、売上高、総資産額等の会社規模による区分である財務的要因のそれぞれについてスコアリングを実行し類似取引事例を選定してよい。従って、より適切に参照すべき類似取引事例を選定することが可能となるので、試算精度がより一層向上する。
【0048】
さらに、非財務情報には、例えば、評価対象企業が調剤薬局である場合には処方箋枚数、評価対象企業が運送業界である場合にはトラックの種類及び保有台数、評価対象企業が建設業界である場合には公共工事の有無及び資格保有人数の情報を含む。従って、参照すべき類似取引事例選定の精度がより一層向上する。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1…サーバ装置、2…銀行の端末装置、3…コンサルタントの端末装置、4…通信網、11…制御部、11a…送受信制御部、11b…入力処理部、11c…価値評価部、11c-1…類似取引事例選定部、11c-2…パラメータ決定部、11c-3…コストアプローチ演算部、11c-4…マーケットアプローチ演算部、11c-5…インカムアプローチ演算部、11c-6…相続税視点演算部、11c-7…評価レンジ設定部、11d…生成部、11e…出力部、12…通信部、13…記憶部、14…ユーザ情報記憶部、15…取引事例情報記憶部、16…評価結果記憶部、21…制御部、21a…主制御部、21b…表示制御部、21c…送受信制御部、22…通信部、23…操作部、24…表示部、25…記憶部。